(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5718511
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】鋳物砂用連続ミキサーの清掃方法
(51)【国際特許分類】
B22C 5/04 20060101AFI20150423BHJP
B22C 5/06 20060101ALI20150423BHJP
B22C 5/18 20060101ALI20150423BHJP
B22C 1/00 20060101ALI20150423BHJP
B01F 15/00 20060101ALI20150423BHJP
B01F 7/00 20060101ALI20150423BHJP
B01F 15/02 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
B22C5/04 D
B22C5/06
B22C5/18
B22C1/00 B
B01F15/00 D
B01F7/00 Z
B01F15/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-124030(P2014-124030)
(22)【出願日】2014年6月17日
【審査請求日】2014年7月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591159262
【氏名又は名称】株式会社清田鋳機
(74)【代理人】
【識別番号】100081824
【弁理士】
【氏名又は名称】戸島 省四郎
(72)【発明者】
【氏名】矢野 勇一
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−193239(JP,A)
【文献】
特開昭64−022333(JP,A)
【文献】
米国特許第05393138(US,A)
【文献】
米国特許第05372424(US,A)
【文献】
米国特許第04329063(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 5/00−5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造用砂型に使用される鋳造用天然硅砂又は鋳造用人工硅砂の原料砂とバインダーとなる添加材を投入口からトラフ内に投入し、同トラフ内の混練羽根で混練しながら搬送し、得られた鋳物砂を排出口から排出する構造の鋳物砂用連続ミキサーの清掃方法であって、前記原料砂となりうる砂の粒状物を外径10〜30mmの塊状に焼結した複数の転動体を前記投入口又は投入口とは別に設けた清掃用投入口からトラフ内に投入して混練羽根を回転させ、転動体を搬送しながら転動させてトラフの内面と混練羽根の表面に接触させ、その接触でトラフの内面と混練羽根の表面に付着している鋳物砂と添加材を剥離し、その後転動体と剥離した鋳物砂及び添加材を排出口から排出することで、トラフ内に残留して付着している鋳物砂と添加材を除去するようにしたことを特徴とする、鋳物砂用連続ミキサーの清掃方法。
【請求項2】
連続ミキサーが鋳物用の原料砂として直前に使用した砂と同じ砂の粒状体を用いて、焼結して作製した転動体をトラフ内に投入するようにした、請求項1記載の鋳物砂用連続ミキサーの清掃方法。
【請求項3】
排出口の下方に鋳物砂は通過できるが転動体は通過できない大きさの網目を有する篩を配置し、排出口から排出した転動体と剥離した鋳物砂及び添加材を篩で分級して転動体を回収し、その回収した転動体を清掃用として再使用するようにした、請求項1又は2記載の鋳物砂用連続ミキサーの清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物砂の製造に使用される連続ミキサーの内部清掃を簡単に行えるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状のトラフ内でパドルが回転する構造の連続ミキサーは、自硬性鋳造業界で広く普及している。トラフに原料砂を連続して投入し、内部のパドルで攪拌しながら搬送し、その途中で硬化剤や樹脂を添加し、混練して排出するものである。必要なときに必要な量の鋳物砂が得られるので便利ではあるが、毎日の混練作業終了後に狭いトラフ内を清掃しなければならない。
【0003】
この清掃作業を容易にするために、トラフの開放部を大きくしたり両開きにして作業性を良好にしたり、トラフの内面に予め離型剤等を塗布して付着物を剥離しやすくする工夫が行われている。しかし、現状では強固に密封されたトラフを開放し、その狭い空間の内面とパドル一枚一枚を手作業で清掃するのに多大な時間を要している。また、作業場は微粉の発生等で作業者にとって快適でない環境となり、作業場も汚れてさらなる清掃作業を必要としている。
【0004】
このような清掃作業の削減は直接生産性の向上に結びつかないので対策が進んでいない。実際には連続ミキサーが機能する限り清掃を先送りにしたり、簡易な清掃で済ませたりして、連続ミキサーとして使える限り不具合が起こらない限り使い続けているのが現状である。
【0005】
この改善策として、トラフ内にフッ素樹脂シートを貼り、付着の防止と剥離を容易にして作業時間の短縮を図る方法(例えば特許文献1参照)があるが、毎日トラフを開けて清掃する作業は変わっていない。また、フッ素樹脂シートの耐久性が不十分で、頻繁な貼り替え作業を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−142891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、連続ミキサーの清掃作業を自動で行えるようにし、作業者のきつい作業からの開放と清掃時間の大幅な短縮を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 鋳造用砂型に使用される鋳造用天然硅砂又は鋳造用人工硅砂の原料砂とバインダーとなる添加材を投入口からトラフ内に投入し、同トラフ内の混練羽根で混練しながら搬送し、得られた鋳物砂を排出口から排出する構造の鋳物砂用連続ミキサーの清掃方法であって、前記原料砂となりうる砂の粒状物を外径10〜30mmの塊状に焼結した複数の転動体を前記投入口又は投入口とは別に設けた清掃用投入口からトラフ内に投入して混練羽根を回転させ、転動体を搬送しながら転動させてトラフの内面と混練羽根の表面に接触させ、その接触でトラフの内面と混練羽根の表面に付着している鋳物砂と添加材を剥離し、その後転動体と剥離した鋳物砂及び添加材を排出口から排出することで、トラフ内に残留して付着している鋳物砂と添加材を除去するようにしたことを特徴とする、鋳物砂用連続ミキサーの清掃方法
2) 連続ミキサーが鋳物用の原料砂として直前に使用した
砂と同じ砂の粒状体を用いて、焼結して作製した転動体をトラフ内に投入するようにした、前記1)記載の鋳物砂用連続ミキサーの清掃方法
3)
排出口の下方に鋳物砂は通過できるが転動体は通過できない大きさの網目を有する篩を配置し、排出口から排出した転動体と剥離した鋳物砂及び添加材を篩で分級して転動体を回収し、その回収した転動体を清掃用として再使用するようにした、前記1)又は2)記載の鋳物砂用連続ミキサーの清掃方法
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の前記1)記載の構成によれば、砂径より大きい転動体が混練羽根で転動しながらトラフの内面及び撹拌羽根に付着した鋳物砂・添加材と接触してこれらを剥ぎ落すので、転動体の投入と回収の作業のみで清掃が自動的に行われる。したがって、従来のように作業者がトラフを開放して手作業で内部を清掃する工程が不要となり、清掃時間が大幅に短縮され、作業場を汚すこともない。しかも、転動体が接触で徐々に減耗しても、転動体の成分は鋳物用砂として使用される鋳造用天然硅砂又は鋳造用人工硅砂の原料砂の成分であるから、分離した転動体の粒がトラフ内に残留しても、次回の鋳物砂の製造に悪影響はない。
【0011】
本発明の前記3)記載の構成によれば、使用済みの転動体を容易に回収でき、次回の清掃作業に再使用できる。また、篩で分級された鋳物砂には分離した転動体の粒が含まれていることがあるが、その成分は鋳物用として使用できる砂と同じであるから、回収して次回の鋳物砂の製造に影響なく再使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例の連続ミキサーの一部切欠き側面図である。
【
図4】実施例の転動体と剥離した鋳物砂の排出を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を代表的な実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0014】
本実施例の連続ミキサー1を
図1〜4に示す。図中、2はトラフ、3は投入口、4は排出口、5はパドル(混練羽根)、6はモーター、7は清掃用投入口、8は篩、Aは転動体、Sは鋳物砂である。
【0015】
トラフ2は横向きの筒状で、後端部の上面に投入口3を備え、前端部の下面に排出口4を備えている。パドル5は、回転軸5aに多数突設されてトラフ2内に前後に渡って横向きに軸支され、トラフ2の後端部に取り付けられたモーター6で駆動されるようになっている。この連続ミキサー1が例えばホッパーの吐出口(図示は省略)に投入口3と連通するように取り付けられ、ホッパー内の原料砂が投入口3を通じて直接トラフ2内へ投入されるようになっている。
【0016】
清掃用投入口7は、投入口3の側方位置に設けて投入口3の途中位置と連通させた。この清掃用投入口7は、転動体Aを投入口3から投入できる場合は不要である。篩8は、10メッシュのものを用いた。
【0017】
鋳物用砂型の原料として使用できる原料砂としては、アルバニーサンド・パールサンド・オリビンサンド・クロマイトサンド・ダモンサンド等の鋳造用天然硅砂があり、又エスパール・アールサンド・サンパール・ルナモス・セラミック砂・アルミナ砂等の鋳造用人工硅砂がある。
【0018】
従って、転動体の焼結に使用する粒状物は、上記の鋳造用天然硅砂か鋳造用人工硅砂の砂又はそれらの組み合せの砂を使った粒状物が使用される。
連続ミキサーが製造している鋳物砂に同じ種類の砂を使用することが定まっている場合は、それと同じ砂の粒状物を転動体の焼結する粒状物とすることが好ましい。連続ミキサーが種々の鋳造用の原料砂を使用する場合は、直前に使用した原料砂と同じ種類の砂の粒状体を転動体の粒状体として使用するか、連続ミキサーが清掃する前に多くの回数使用してきた種類の砂の粒状物を使用するのが好ましい。
【0019】
本実施例は、鋳物用砂の原料砂として二酸化ケイ素を主成分にした天然硅砂を使用し、又転動体も同天然硅砂の砂の粒状物を使用する。この二酸化ケイ素を主成分とした粒状物を外径20mmのサイコロ状に焼結したものを用いた。10mm以下であると重量が不足して接触力が劣ることがあり、30mm以上であると重すぎてトラフ2の上面に接触しにくくなることがある。外形状はサイコロ状の他、三面体や六面体など角を有するものであれば良い。球状でも可能ではあるが、接触力が劣ることがある。
【0020】
まず、鋳物砂Sの製造の終了後、
図4に示すように、排出口4の下方に篩8を配置し、
図2,3に示すように、転動体Aを清掃用投入口7からトラフ2内に投入する。転動体Aの投入量は、連続ミキサー1の混練能力に応じて適宜調整されるが、概ね混練能力の1/3程度で十分な清掃を実現できる。
【0021】
次に、モーター6を作動させてパドル5を回転させると、
図3に示すように、投入された転動体Aがパドル5との接触による反動や自重でトラフ2内を転動する。パドル5の回転数は600〜700rpmである。その接触でトラフ2の内面とパドル5の表面に付着している鋳物砂S及び添加材が剥離・粉砕してトラフ2の底面に落下し、パドル5の回転で転動体Aとともに前方へ搬送される。このとき、転動体Aは接触で徐々に減耗することがあるが、転動体Aの成分は原料砂の砂の粒状物が使用されるのと同じであるから、分離した転動体Aの粒がトラフ2内に残留しても、次回の鋳物砂Sの製造に悪影響はない。また、転動体Aの外面の角部によって転動時の接触力が強くなり、鋳物砂S及び添加材が効果的に剥離される。
【0022】
その後、転動体Aが前端部まで搬送されると、
図4に示すように、剥離した鋳物砂S及び添加材とともに排出口4から排出され、篩8に落下する。篩8では転動体Aが網目に残り、鋳物砂Sと添加材が網目を通過して分級される。分級された鋳物砂Sには分離した転動体Aの粒が含まれていることがあるが、前述したように成分が使用した原料砂の主成分と同じであるから、回収して次回の鋳物砂Sの製造に再使用できる。以上の工程を1回又は必要に応じて複数回繰り返す。篩8に残った転動体Aは次回の清掃作業に再使用し、不足分は補充する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の技術は、他分野の混練機にも応用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 連続ミキサー
2 トラフ
3 投入口
4 排出口
5 パドル(混練羽根)
5a 回転軸
6 モーター
7 清掃用投入口
8 篩
A 転動体
S 鋳物砂
【要約】
【課題】原料砂及びバインダーとなる添加材を投入口から横筒状のトラフ内に投入し、これをパドルで混練しながら横方向へ搬送し、得られた鋳物砂を排出口から排出する鋳物砂用連続ミキサーにおいて、鋳物砂の製造後、連続ミキサー内に付着している鋳物砂と添加材を自動的に除去できるようにする。
【解決手段】連続ミキサー1に投入口3とは別の清掃用投入口8を設けて投入口3と連通する。二酸化ケイ素を主成分とした原料砂と同じ砂の粒状物を外径10〜30mmの塊状に焼結して転動体Aを作製する。この転動体Aを前記清掃用投入口8からトラフ2内に複数投入してパドル5を回転させ、転動体Aを横方向へ搬送しながら転動させてトラフ2の内面とパドル5の表面に接触させ、その接触でトラフ2の内面とパドル5の表面に付着している鋳物砂と添加材を剥離し、その後転動体Aと剥離した鋳物砂及び添加材を排出口から排出して、連続ミキサー内部を清掃する。
【選択図】
図3