(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化合物(a)の使用量が0.01〜30質量%、前記化合物(b)の使用量が0.01〜30質量%、前記化合物(c)の使用量が10〜80質量%、前記化合物(d)の使用量が、化合物(a)〜(c)の合計の全活性水素と化合物(d)のイソシアネート基との当量比が0.8〜1.1になる量であり、数平均分子量が2,000〜500,000である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子線硬化型または紫外線硬化型インキ用バインダー。
【背景技術】
【0003】
従来、ソルダーレジストインキは、プリント配線板の表面を覆い、回路パターンを保護する絶縁保護膜として使用され、絶縁保護膜として埃、熱および湿気などから回路パターンを保護し、回路のショートを防止することを目的に使用されている。
【0004】
ソルダーレジストインキに要求されるスペックとしては、印刷適性、成膜性、高解像度、耐薬品性、(はんだ)耐熱性、基板との密着性、硬度、電気絶縁性、耐水性(耐湿気)、低移行性および耐衝撃性などが挙げられる。
【0005】
また、アルカリ現像型ソルダーレジストのプロセスは、回路パターンが形成された基板にソルダーレジストを印刷塗布した後、ネガフィルムを通して露光(露光したソルダーレジスト部分は硬化)し、アルカリ現像液で未硬化の部分を洗浄しソルダーレジストのパターンを形成させるのが一般的である。
【0006】
近年、デジタル化の発展により電子機器の高機能化やダウンサイジングに伴い、小型化、薄型化および軽量化の要望が強くなってきている。そのために電子機器のダウンサイジングによるプリント配線板における回路パターンは、より薄膜化や微細化がなされ、基板の軽量化および薄型化が図られている。絶縁保護膜は埃、熱および湿気などの外部環境から回路パターンを保護し電子機器を安定に作動させている。さらには、絶縁保護膜には、薄膜化する際には硬化収縮が少なく反らないことや、フレキシブルな配線基板などに対しては柔軟性を有する素材が求められている。
【0007】
また、汎用基板の回路パターンの厚みは、50〜200μm程度であったのに対して、特にパッケージ基板においては薄膜化傾向にあり、20〜50μm以下の成形を望むところが多い。
【0008】
このようなソルダーレジスト被膜を形成する材料としては、1分子中に2個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物と1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂化合物と希釈剤とを含む感光性樹脂組成物などが提案されている。
【0009】
不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂化合物と希釈剤とを主体とする感光性樹脂組成物は、硬化収縮が大きく、硬化する際に薄型基板などの場合は、その基板が反ってしまうという問題がある(特許文献1)。
【0010】
また、ソルダーレジスト被膜として、2個以上のカルボキシル基とポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂とエポキシ成分とを含む熱硬化性樹脂組成物が提案されている。このような熱硬化システムでは高温で長時間反応させるので、製造工程上CO
2が多く発生して環境負荷上好ましくない。また、未反応物や低分子量不純物の残存によりアウトガス量が増加する製品が生起するので好ましくない(特許文献2)。
【0011】
上記の組成物からなる硬化物は、ソルダーレジスト被膜としての耐熱性や耐湿気性に優れているが、可撓性や柔軟性に劣る。薄型プリント配線板やFPC基板などにソルダーレジスト被膜を形成した場合、基板の反りやねじれが発生するという問題が生じる。また、硬いソルダーレジスト被膜の場合、外部からの衝撃により硬化被膜に割れが発生して、部品の実装時にはんだが不必要な部分へ付着したり、導体間の絶縁性の低下や腐食が発生することもあり、信頼性が低下する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明に使用する光硬化型ウレタン系樹脂(以下単に「本発明の樹脂」という場合がある)は、化合物a(少なくとも1個のアルカリ可溶性基とは、例えば、カルボキシル基またはスルホン酸基)と、化合物bと、化合物cと、必要に応じて鎖伸長剤と、化合物dとを反応させて得られる。
【0021】
上記において化合物a〜dの使用量は、化合物aを0.01〜30質量%、好ましくは1〜15質量%、化合物bを0.01〜30質量%、好ましくは1〜15質量%、化合物cを10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%とし、かつ化合物dは、化合物a〜cの合計の全活性水素と化合物dのイソシアネート基とを当量比が0.8〜1.1、好ましくは0.85〜1.0となる使用量である。なお、上記化合物a〜cは、上記範囲内でかつ化合物a〜cの合計量が100質量%になる比率にして使用する。
【0022】
本発明の樹脂においては、樹脂全体を100質量%としたときに上記化合物aからなるセグメントaの含有量が0.01〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜15質量%である。該含有量が0.01質量%未満では、アルカリ洗浄性や基板との密着性などの点で不十分であり、一方、上記含有量が30質量%を超えると樹脂の耐水性の低下などを引き起こすことや、形成被膜が硬くなり耐衝撃性の低下を引き起こす。また、樹脂全体を100質量%としたときに上記化合物bからなるからなるセグメントbの含有量が0.01〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜15質量%である。該含有量が0.01質量%未満では、電子線照射または紫外線照射して分子内・分子間架橋や、架橋剤と硬化反応した場合に目的とする被膜性能にならず、一方、上記含有量が30質量%を超えると架橋密度が高まり、硬化収縮により基板が反ったり、被膜にクラックが発生し、ショートやクラックした場所から湿気によりさびが発生する場合がある。
【0023】
なお、上記セグメントa〜cの含有量は、上記範囲内でかつ化合物a〜cの合計量が100質量%になる比率とする。また、上記樹脂の数平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレン換算)は、2,000〜500,000であることが好ましい。より好ましくは、5,000〜200,000である。該分子量が2,000未満では、樹脂にタックがあり(タックフリーでなければならない)、耐水性や耐熱性に劣る点などが不十分であり、一方、上記分子量が500,000を越えると、本発明の樹脂をインキ用バインダー化したときにインキ用バインダーとしての塗装適性などが劣るとともに、被膜の硬化不良を引き起こす。
【0024】
上記化合物aとしては、スルホン酸系、カルボン酸系、燐酸系などの化合物を用いることができる。該化合物aは、本発明の樹脂においてアルカリ洗浄性を高めることが主目的であるが、基板に対する密着性付与効果や顔料の分散性付与効果、成膜性の付与効果および被膜強靭性を向上させる機能を与える。
【0025】
スルホン酸系の化合物aとしては、下記化合物およびその誘導体などが挙げられる。
【0026】
また、カルボン酸系の化合物aとしては、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸およびそれらのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)やこれらの化合物のγ−カプロラクトン低モル付加物(数平均分子量500未満)、酸無水物とグリセリンから誘導されるハーフエステル類、水酸基と不飽和基を含有するモノマーとカルボキシル基と不飽和基を含有するモノマーとをフリーラジカル反応により誘導される化合物などが挙げられる。特に好ましい化合物aは、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノスルホン酸である。これらの化合物の使用量は、得られるポリウレタン系樹脂の酸価の範囲が5〜60mgKOH/gになる量であることが好ましい。
【0027】
以上は本発明において使用される好ましい化合物aの例示であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。したがって、上述の例示化合物のみならず、その他現在市販されていて、市場から容易に入手できる化合物aは、いずれも本発明に使用することができる。
【0028】
上記化合物aのセグメントaを含む本発明の樹脂は、使用に際し当該樹脂を露光後のアルカリ洗浄を容易にするために一部中和させてもよい。化合物aのセグメントaが、アニオン性(スルホン酸系、カルボン酸など)である場合には、例えば、有機アミン類(アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノールなど)、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウムなど)、無機アルカリ類(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)などによって中和される。
【0029】
前記化合物bとしては、特に制限されず、公知のものから1種以上のものを使用することができる。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンモノメタクリレートなどが挙げられる。好ましい化合物は、1個の不飽和基と2個の水酸基を有する化合物である。特に好ましい化合物は、グリセリンモノアリルエーテルやグリセリンモノメタクリレートなどであり、さらに該化合物の原材料由来である塩素成分を除去した化合物を使用することが好ましい。
【0030】
また、同一分子内にアミノ基と不飽和基とを有する化合物としては、例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。
【0031】
前記化合物cは、ポリカーボネート系ポリオールである。以下に好ましい化合物cを例示するが、本発明は、これらの例示化合物に限定されない。
(1)ポリアルキレンカーボネート(a−1)
【0032】
(2)ポリアルキレンカーボネート(a−2)
【0033】
(3)ポリアルキレンカーボネート(a−3)
【0034】
(4)ポリアルキレンカーボネート(a−4)
【0035】
前記化合物cには他のポリオールを併用できる。併用できる高分子ポリオールを以下に示す。
(5)ポリエーテルポリオール、例えば、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)および/または複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールなど、
【0036】
(6)ポリエステルポリオール、例えば、脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸など)と低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものが例示され、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールなど、
【0037】
(7)ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンジオールおよびポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなど、
(8)ポリオレフィンポリオール、例えば、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物など、
(9)ポリメタクリレートジオール、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
【0038】
これらのポリオールの構造および分子量は特に限定されないが、通常数平均分子量は500〜4,000程度が好ましく、これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ただし、エーテル系ポリオールを用いたポリウレタン樹脂は耐熱性に乏しいことや、エチレンオキサイドを含む化合物は親水性が高く耐水性能を低下させる。ポリエステル系ポリオールを用いたポリウレタン樹脂は耐加水分解性に劣るといった欠点がある。これに対してポリカーボネート系ポリオールを用いたポリウレタン樹脂は、耐熱性、耐水性および耐加水分解性が高く、外部環境に対する耐久性があり、使用する高分子ポリオールとして最も好ましい。
【0039】
本発明では、前記化合物a〜cに加えて鎖伸長剤を必要に応じて使用できる。鎖伸長剤としての短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)などの化合物が挙げられる。
【0040】
また、多価アルコール系化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタンおよび1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
ポリアミンとしては、例えば、短鎖ジアミン、脂肪族系、芳香族系ジアミン、長鎖ジアミン類およびヒドラジン類などが挙げられる。短鎖ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などが挙げられる。
【0042】
長鎖ジアミンとしては、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどが挙げられる。また、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびフタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類が挙げられる。これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
前記化合物dとしては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているものがいずれも使用でき特に限定されない。ポリイソシアネート化合物として好ましいものは、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加MDIおよび水素添加XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、或いはこれらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。特に好ましいのはノンホスゲン法で製造されるイソシアネート化合物であり、塩素化合物を含まない原材料が好ましい。
【0044】
前記化合物a〜dを用いる本発明の樹脂の製造方法については特に限定されず、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いることができる。例えば、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下、または不存在下に、前記化合物aと化合物bと化合物cと化合物dとを、必要に応じて鎖伸長剤を併用して、化合物dのイソシアネート基と、化合物a〜c(および鎖伸長剤)の活性水素との当量比が、通常、1.0またはその前後(0.8〜1.1)となる配合で、ワンショット法、または多段法により、通常、20〜150℃、好ましくは60〜110℃で、生成物のNCOがなくなるまで反応させて得ることができる。
【0045】
本発明では、上記ウレタン合成において、必要に応じて触媒を使用できる。例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、テトラn−ブチルチタネート、ジルコニウム系化合物などの金属と有機および無機酸の塩、および有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。
【0046】
なお、本発明の樹脂は無溶剤で合成しても、必要であれば有機溶剤を用いて合成してもよい。有機溶剤として好ましい溶剤としては、イソシアネート基に不活性であるか、または反応成分よりも低活性なものが挙げられる。例えば、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、芳香族系炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、スワゾール(コスモ石油株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)、ソルベッソ(エクソン化学株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)など)、脂肪族系炭化水素溶剤(n−ヘキサンなど)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなど)、エーテル系溶剤(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル系溶剤(エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなど)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ラクタム系溶剤(N−メチル−2−ピロリドンなど)が挙げられる。これらの内、好ましくは、溶媒回収、ウレタン合成時の溶解性、反応性、沸点、水への乳化分散性を考慮すれば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、およびテトラヒドロフランなどである。
【0047】
本発明の樹脂は無溶剤で合成しても、必要であれば反応性希釈剤を媒体として用いて合成してもよい。好ましい反応性希釈剤としては、イソシアネート基に不活性であるか、または反応成分よりも低活性なものが挙げられる。
【0048】
本発明で使用する希釈剤は、露光する際に架橋させることができる。架橋の方法としては、以上の本発明のポリウレタン樹脂に、さらに反応性希釈剤および/または光硬化型架橋剤と、光重合開始剤(紫外線硬化システムの場合のみ)とを配合し塗布した後、電子線または紫外線を照射して被膜を硬化させればよい。
【0049】
ここで使用する反応性希釈剤および/または光硬化型架橋剤としては、ラジカル重合系の単官能アクリレート化合物、多官能アクリレート化合物またはカチオン重合系化合物などがあるが、ラジカル重合系の単官能アクリレート化合物としては、例えば、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ビニルカプロラクタム、エチルカルビトールアクリレート、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、スチレン、メチルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸エステル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、グリセリンモノアリルエーテル、2−フェノキシジエチルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボニルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート(ジオール成分と酸二無水物とを反応させたハーフエステル類)およびそれら誘導体などが挙げられる。また、市販されている疎水性のラジカル重合系の単官能アクリレート化合物も使用できる。
【0050】
また、多官能アクリレート化合物としては、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、疎水性の多官能アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタトリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、カチオン重合系希釈剤としては、例えば、エポキシ化合物、オキタセン化合物、ビニルエーテル化合物などが挙げられる。その他、アクリルオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、変性フェノールエポキシアクリレートオリゴマー、変性フルオレンエポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、およびそれらの誘導体なども使用できる。
【0051】
本発明では、樹脂合成工程においては、ポリマー末端に、イソシアネート基が残った場合、イソシアネート末端の反応停止剤を加えてもよい。例えば、モノアルコールやモノアミンのように単官能性の化合物ばかりでなく、イソシアネート基に対して異なる反応性をもつ2種の官能基を有するような化合物であっても使用することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどのモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどが挙げられ、このなかでもアルカノールアミンが反応を制御しやすいという点で好ましい。
【0052】
本発明の樹脂の製造に当たり、必要に応じて添加剤を加えてもよい。例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、金属不活性剤などやこれら2種類以上が挙げられる。
【0053】
また、多官能ポリイソシアネートと活性水素基含有アクリレートおよび/または活性水素基含有メタクリレート化合物を反応させた光硬化型架橋剤や、一分子鎖中にアルカリ可溶基(アニオン性基)と1個以上の不飽和基を含有する光硬化型ウレタン系架橋剤も使用できる。本発明の樹脂100質量部に対して120質量部以下、好ましくは1〜50質量部の範囲内で使用できる。
【0054】
さらに、光硬化型架橋剤と併用して熱硬化型の架橋剤も使用できる。例えば、ポリイソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、無機系架橋剤、カチオン重合系架橋剤(エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル系架橋剤)などが挙げられる。特に本発明では、ウレタン基および/またはカルボキシル基などのアルカリ可溶性基の反応性を利用した架橋方法が好ましいが、特に限定されない。ラジカル重合とカチオン重合、ラジカル重合と熱硬化型架橋剤などの併用は、種々の真空成型などの複雑な加工に対し、架橋反応の差(デュアルキュアシステム)を利用するシステムに有効である。
【0055】
ウレタン基を利用する架橋方法としては、例えば、ポリイソシアネート架橋剤による架橋が挙げられるが、ポリイソシアネート架橋剤としては、従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、多官能芳香族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート架橋剤は、適量であれば被膜とプラッスチック基板との密着性が向上し有効であるが、使用量が多すぎると未反応イソシアネートが残留して問題となるため、本発明の樹脂100質量部に対して120質量部以下、好ましくは1〜50質量部の範囲内である。
【0056】
アルカリ可溶基、例えば、カルボキシル基を利用する架橋方法としては、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキセタン系架橋剤、ビニルエーテル系架橋剤または金属錯体系架橋剤などの従来から使用されている公知のものが使用でき、特に限定されない。例えば、エポキシ系架橋剤としては、「エピコート」(油化シェルエポキシ社製)などの従来公知の市販されているエポキシ樹脂が挙げられる。カルボジイミド系架橋剤としては、「カルボジライト」の商品名(日清紡社製)の市販品を入手して使用することができる。
【0057】
前記架橋剤は、カルボジイミド基とカルボキシル基が反応してN−アシルウレアを形成し被膜性能が向上する。オキサゾリン系架橋剤としては、「エポクロス」の商品名(日本触媒社製)、WS−300、WS−500、W−700、WS−R10などの市販品を入手して使用することができる。これらの架橋剤は、架橋剤のオキサゾリン基と樹脂のカルボキシル基が反応してアミドエステルを形成し架橋構造をとる。また、オキセタン系架橋剤としては、「エタナコール」の商品名(宇部興産社製)の市販品を入手して使用することができる。ビニルエーテル系架橋剤としては、BASF社、アイエスピー・ジャパン社、丸善石油化学社、日本触媒社など、市販品を入手して使用することができる。
【0058】
前記架橋剤は、カチオン重合で反応したり、マイケル付加反応にてアルコキシエステル体を形成する。これらの架橋剤は、本発明の樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部以下、好ましくは1〜40質量部の範囲内である。上記架橋剤の使用量が、上記範囲よりも低いと架橋剤の効果が得られず、一方、架橋剤の使用量が上記範囲よりも高いとブロッキングの発生、成型性の低下およびコストアップとなる。
【0059】
金属錯体系架橋剤としては、チタン有機化合物系、「オルガチックス」の商品名(松本製薬工業社製)で市販されているジルコニウム有機化合物系が入手可能であり、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、バナジウム、亜鉛、インジウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、セリウム、ストロンチウム、パラジウム、バリウム、モリブデニウム、ランタン、「ナーセム」の商品名(日本化学産業社製)で市販されているスズのアセチルアセトン錯体が入手して使用できる。
【0060】
また、シラノール系架橋剤(シリル型架橋剤)においては自己縮合により被膜性能が向上する。該シランカップリング架橋剤としては、「KBM−、KBE−シリーズ」の商品名(信越化学社製)で市販されている。これらの架橋剤は、適量であれば耐久性の向上に特に有効であるが、使用量が多すぎると著しい可使時間の短命化や被膜の脆化を引き起こすため、該ポリウレタン系樹脂100質量部に対して40質量部以下、好ましくは0.5〜20質量部の範囲内の使用が好ましい。
【0061】
また、本発明において紫外線硬化システムの場合のみ光重合開始剤を使用する。該光重合開始剤としては、光によりラジカルを発生しラジカルが重合性不飽和化合物と反応するものが望ましい。特に限定するものではないが、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタノールなどが挙げられる。また、カチオン系重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩型化合物、スルホニウム塩型化合物、ヨードニウム塩型化合物などが挙げられる。これら化合物の配合は併用してもかまわない。
【0062】
本発明のインキ用バインダーは必要に応じて各種の添加剤を加えることができる。例えば、硬化収縮時の緩和剤として有機微粒子、無機微粒子や難燃剤、顔料やその他の添加剤を適宜使用することができる。有機微粒子、無機微粒子としては、例えば、シリカ、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、シリコーン変性ウレタン系樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子などを含み得る。
【0063】
また、基板(銅形成プリント基板)上に本発明のインキ用バインダーを使用したソルダーレジストインキをスクリーン印刷機にて全面に直接塗工して、プレキュア(80〜100℃、20〜30分間)し、ネガフィルムを通して露光し、アルカリ現像液にて未硬化部分を洗浄し、ポストキュア(150℃前後、60分間)し基板を形成させる。
【0064】
本発明のインキ用バインダーを使用したソルダーレジストインキをスクリーン印刷機にて塗布する際の固形分厚みは5〜100μm、好ましくは5〜40μm程度の厚みが良好である。
【0065】
以上の本発明のインキ用バインダーを含むインキは、電子線照射または紫外線照射により硬化反応することで高解像度、アルカリ洗浄性、耐熱性、耐水性、基板との密着性、耐薬品性および電気絶縁性などが向上し、さらには非塩素素材、低硬化収縮、柔軟性、高伸度および加工性に優れる被膜を有するプリント基板が提供される。
【実施例】
【0066】
以下に製造例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0067】
本発明に使用するウレタン系樹脂の合成例1〜5を示す。
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、アルカリ可溶基(アニオン性基)含有化合物(化合物a)、不飽和基含有化合物(化合物b)、カーボネートジオール(化合物c)、およびシクロヘキサノンを所定量加え、均一に溶解させ、溶液濃度を調節した。続いてポリイソシアネート化合物(化合物d)を所定量(NCO/OH=1.0)の当量比で加えて80℃で反応を行い、NCO基がなくなるまで反応を行った。上記ポリウレタン系樹脂の原料組成配合を表1に示す。
【0068】
【0069】
注)
化合物a:
・a−1:ジメチロールブタン酸
・a−2:ジメチロールプロパン酸
【0070】
化合物b:
・GMAE:グリセリンモノアリルエーテル(ダイソー社製)
・GMA:グリセリンモノメタクリレート(日本油脂社製)
化合物c:
・PCD(1):プラクセルCD220、ポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業社製、平均分子量2,000)
・PCD(2):PCDL T4672、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、平均分子量2,000)
・PCD(3):PCDL T5652、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、平均分子量2,000)
【0071】
化合物d:
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
・H
12MDI:水素添加MDI(ノンホスゲン製法)
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(ノンホスゲン製法)
【0072】
前記合成例で得たポリウレタン系樹脂を用いて、以下のようにして本発明のソルダーレジストインキを調製した(表2)。
【0073】
【0074】
(注)
・重合開始剤;イルガキュアー184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
【0075】
・オリゴマー1:エポキシアクリレート、2官能、Tg=75
・オリゴマー2:変性ビスフェノールA・エポキシアクリレート、2官能、Tg=60
【0076】
上記実施例1〜4および比較例1で作製したソルダーレジストをインキ基板(銅形成プリント基板)上に、
1.スクリーン印刷機にて全面に直接塗工(固型分厚み40μm)した後、
2.プレキュア(80℃、20分間)し、ネガフィルムを通して露光(200mJ/cm
2)し、
3.アルカリ現像液(Na
2CO
3、1質量%水溶液、30℃、60秒)にて未硬化部分を洗浄し、
4.ポストキュア(150℃前後、60分間)しソルダーレジストを形成させる。
【0077】
実施例1〜4および比較例1で作製したソルダーレジスト基板に関して以下の項目で評価した。
<現像性>
前記したNo3工程でのアルカリ現像液(Na
2CO
3、1質量%水溶液、スプレー圧0.2MPa、30℃、60秒)にて未硬化部分の洗浄性を確認した。
○:上記条件で合格。
×:60秒以上を必要とする。
【0078】
<はんだ耐熱性>
前記試験基板に、フローはんだ(260℃のはんだ槽に10秒間)浸漬後、セロハン粘着テープによる密着性試験を行い硬化被膜の状態を確認した。
○:硬化被膜に変化がなかったもの。
×:硬化被膜が剥離したもの。
【0079】
<硬化収縮性>
ポリイミドフィルム(厚さ25μm)に、上記実施例1〜4および比較例1で作製したソルダーレジストインキを塗布(固型分厚み;25μm)し、露光(200mJ/cm
2)したものを、7cm×7cmの試験片に作製し、室温で24時間放置した後の反りを確認した。
○:試験片に反りが見られない。
×:試験片に反りが見られる。
【0080】
<折り曲げ性>
上記試験で作製した試験片を、硬化被膜が外側になるように180°折り曲げ、折り曲げ部を顕微鏡で観察した。
○:硬化被膜にクラック発生がないもの。
×:硬化被膜にクラック発生があるもの。
【0081】
<耐熱衝撃性>
上記試験で作製した試験片を、−65℃/30分間⇔125℃/30分間を1サイクルとして、100サイクル行った際の外観変化を観察した。
○:外観に変化がない。
×:外観に異常がある。
【0082】
<耐塩酸性>
上記試験で作製した試験片を、塩酸溶液に25℃/5分間浸漬した後の外観変化を観察した。
○:外観に変化がない。
×:外観に異常がある。
【0083】