【実施例】
【0062】
実験
重合は、100mlの丸底ガラス管中のオイルバス中で、機械的攪拌を行いながら、そして窒素空気中で実行された。D’L−α−トコフェロール(0.01重量%)、ビニルコモノマー(例えばテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン(MV4)(0.01重量%)、又はビニルコポリマー、及びエンドブロッカー(例えばテトラメチルジビニルジシロキサン)等の、モノマー及び原料ケミカルが、前記管中に加えられた。原料ケミカル間の化学量論の変化を通じて、ポリマーの分子量、及び生産されたエラストマーの架橋密度が変化し得る。重合温度は、150℃であり、そしてかなり激しく混合(200〜400rpm)された。反応溶液の温度が150℃に到達したとき、50ppmの1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ
5,4Δ
5−カテナジ(ホスファゼン)触媒が、マイクロシリンジで、隔壁を通してその溶液の表面の下に添加された。開環重合は、すぐに開始され、そして即座に終了するか、又は約30分間徐々になされるかいずれかであった。重合が目的とするところまで達したとき、触媒は、同量のリン酸トリス(トリメチルシリル)の添加により不活性化された。反応の早期の段階で、その粘性は急速に上昇し、そして幾つかの実験においては、その粘性は重合中に僅かに低下し始めた。この現象は、重合がその熱力学的平衡に進行したときの、低分子量の環状分子及び直鎖状分子の量の増大に起因していた。
【0063】
実施例1
原料ケミカル
置換基:アリルエチルエーテル(Aldrich)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ
5,4Δ
5−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−α−トコフェロール(Roche)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV
4(Gelest)
エンドブロッカー:ビニル終末化(terminated)ポリ(ジメチルシロキサン)、DMS−V21(ABCR)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
【0064】
モノマー合成
ヘプタメチルシクロテトラシロキサン及びアリルエチルエーテルは、還流冷却器に備え付けられている50ml丸底ガラス管中で量り取られ、使用された化学量論的関係は、1.1:1(ビニル:SiH)であった。前記管はオイルバス中に置かれ、そして前記管を通して窒素が除去された。前記オイルバスは、65℃まで加熱され、そして触媒(20ppmのPt)が、マイクロシリンジで、隔壁を通してその反応溶液中に加えられた。数分後、発熱が認められ、そして前記媒体の色が透明から茶色に変化した。前記反応は、SiH(2100cm
−1)及びビニル(1650cm
−1)の吸収の消失により、FT−IRで追跡された。サンプルは、基本的に毎時間採取され、そして、FTIRによると、2.5時間後に、前記反応は終了した(1650cm
−1にあるビニルのピークが消失した)。
【0065】
こうして生産されたモノマー(1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテル−シクロテトラシロキサン)は、減圧下(P<10mbar)で蒸留された。未蒸留液の殆どは、未反応のヘプタメチルシクロテトラシロキサンであることが見出された。また、蒸留は、前記モノマー(蒸留液)から白金を除去するためにも実行された。前記モノマーの純度は、ガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies 6890 N network GC System, FID detector)で解析され、そして、95%の純度(領域%)であることが見出された。
【0066】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
開環重合は、100mLの丸底ガラス管中で、転倒攪拌により、窒素空気中で実行された。重合温度は、150℃に設定された。前記管には、25gのモノマー(98.69重量%)、0.01重量%のD’L−α−トコフェロール、0.10重量%のMV
4、及び1.20重量%のエンドブロッカーが加えられた。前記反応媒体が目標の温度に達したとき、ホスファゼン触媒(50ppm)が隔膜を通して添加された。重合はゆっくりと始まり、10分後までは、粘性の顕著な増大が認められた。重合は、ゆっくりと混合しながら30分間続けられ、その後、触媒は、同量のリン酸トリス(トリメチルシリル)により不活性化された。
【0067】
そして、前記ポリマーは、短経路の拭浄された薄膜蒸留装置中で(P<1mbar、T=90℃)、揮発性成分から抜き取られた。これは、未反応のモノマー及び低分子量の環状及び直鎖状分子をポリマーから除去するために実行された。
【0068】
実施例2
原料ケミカル
置換基:n−ブチルビニルエーテル(BASF)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ
5,4Δ
5−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV
4(Gelest)
エンドブロッカー:1,1,3,3−テトラビニルジメチルジシロキサン (ABCR)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
【0069】
モノマー合成
実施例1におけるものと同一の段階が、本モノマー合成に使用された。使用された置換基(n−ブチルビニルエーテル)は、その反応をより迅速に進行させ(合計時間0.5時間)、そして完了させた。FTIRによると、余分なSi−H(2050cm
−1で)は認められなかった。生産物である1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンは、蒸留により精製された。
【0070】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
実施例1におけるものと同一の段階が、本ポリマー合成に使用された。加えられた原料ケミカルは、25gの1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサン(99.4重量%)、0.10重量%のビニルコモノマー(MV
4)、及び0.80重量%のエンドブロッカーであった。重合を開始するために、必要となる触媒の量は100ppmであり、これは30分置きに2段階、隔膜を通して加えられた。重合の結果、実施例1と比較して、より低分子量のポリマーが生じた。
【0071】
実施例3
原料ケミカル
置換基:n−ブチルビニルエーテル(BASF)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ
5,4Δ
5−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−αートコフェロール(Roche)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV
4(Gelest)
エンドブロッカー:1,1,3,3−テトラビニルジメチルシロキサン (ABCR)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
【0072】
モノマー合成
実施例1におけるものと同一の段階が、本モノマー合成に使用された。異なる置換基(n−ブチルビニルエーテル)で行われる今回の反応は、かなり迅速であり、そしてそれは0.5時間後には終了した。FT−IRによると、Si−H基は残留していなかった。
【0073】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
実施例1におけるものと同一の段階が、本重合に使用された。重合はより迅速に開始され(粘性により)、そして、実施例1及び2よりも徹底的であった。
【0074】
実施例4
原料ケミカル
置換基:2−アリルシクロヘキサノン(Aldorich)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ
5,4Δ
5−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−αートコフェロール(Roche)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV
4(Gelest)
【0075】
モノマー合成
実施例1におけるものと同一の段階が、本モノマー合成に使用された。ヒドロシル化反応が、2時間の間に徐々に生じ(FTIRによる)、色が同時に黄色になった。生産物である1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルシクロヘキサノン−シクロテトラシロキサンが、蒸留により精製ざれた。
【0076】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルシクロヘキサノン−シクロテトラシロキサンの重合
実施例1におけるものと同一の段階が、本重合に使用された。重合は、触媒の量が800ppmになるまで(徐々に添加された)開始されなかった。重合は、実施例1=3におけるものより緩慢に進行した。
【0077】
実施例5
原料ケミカル
置換基:n−ブチルビニルエーテル(BASF)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ
5,4Δ
5−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−α−トコフェロール(DSM)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV
4(Gelest)
エンドブロッカー;1,1,3,3−テトラビニルジメチルシロキサン、(Fluka Chimika)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
【0078】
モノマー合成
実施例1におけるものと同一の段階が、本モノマー合成に使用された。反応時間は、実施例1及び2よりも迅速で、約10分であった。FTIRによると、反応が終了した時点で、前記媒体には、SiH基が全く含まれていなかった。生産物である1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンが、蒸留により精製ざれた。
【0079】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
実施例1におけるものと同一の段階が、本重合に使用された。重合反応は、成功した。
【0080】
実施例6
原料ケミカル
置換基:アリルエチルエーテル(Aldrich)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ
5,4Δ
5−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−α−トコフェロール(Roche)
ビニルコモノマー:1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロ
トリシロキサン、MV
3(Gelest)
エンドブロッカー;ビニル終末化ポリ(ジメチルシロキサン)、DMS−V21(ABCR)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
強化ヒュームドシリカ:Aerosil R106(Degussa)
硬化剤:テルトブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、あるいはTBPEH(Interchim Austria)
【0081】
アリルエチルエーテル及びヘプタメチルシクロテトラシロキサンは、還流冷却器に備え付けられている50ml丸底ガラス管中で量り取られた。ビニル/SiHの化学量論は、1.1:1であった。前記管はオイルバス中に置かれ、そしてその反応物は窒素空気中に置かれた。オイルバスは、65℃まで加熱され、そして触媒(20ppmのPt)が、隔壁を通して添加された。数分後、発熱が認められ、そして同時に、反応媒体の色が透明から茶色に変化した。前記反応は、SiH(2100cm
−1)及びビニル(1650cm
−1)の吸収の消失により、FT−IRで追跡された。サンプルは、基本的に毎時間採取され、そして、FTIRによると、2.5時間後に、前記反応は終了した(1650cm
−1にあるビニルのピークが消失した)。こうして生産されたモノマー(1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテル−シクロテトラシロキサン)は、減圧下(p<10mbar)で蒸留された。未蒸留液の殆どは、未反応のヘプタメチルシクロテトラシロキサンであることが見出された。また、蒸留は、前記モノマー(蒸留液)から白金を除去するためにも実行された。前記モノマーの純度はGCで解析され、そして、95%の純度(領域%)であることが見出された。
【0082】
1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
開環重合は、100mLの丸底ガラス管中で、転倒攪拌により、窒素空気中で実行された。重合温度は、150℃に設定された。前記管には、25gのモノマー(98.09重量%)、0.01重量%のD’L−α−トコフェロール、0.70重量%のMV
3、及び1.20重量%のエンドブロッカーが加えられた。前記反応媒体が目標の温度に達したとき、ホスファゼン触媒(50ppm)が隔膜を通して添加された。重合はゆっくりと始まり、10分後までは、粘性の顕著な増大が認められる。重合は、ゆっくりと混合しながら30分間続けられ、その後、触媒は、同量のリン酸トリス(トリメチルシリル)により不活性化された。
【0083】
そして、前記ポリマーは、短経路の拭浄された薄膜蒸留装置中で(P<1mbar、T=90℃)、揮発性成分から抜き取られた。これは、未反応のモノマー及び低分子量の環状及び直鎖状分子をポリマーから除去するために実行された。
【0084】
エラストマーの生産
前記抜き取られたポリマーは、25重量%のヒュームドシリカ、及び1.5重量%のTBPEH−ペルオキシドと共に、混練ミル(mill)中で混ぜ合わされる。前記ミル中の基材が均質となったとき、放出フィルムの間の加熱プレス(120℃)中で、異なる厚さのシートを生産するために使用された。次に、これらのシートは、ペルオキシド分解生産物を除去するため、真空オーブン(100℃、P<10mbar、1時間)中で後硬化された。
【0085】
例7〜16
これらの
例において、重合が可能な、親水性に改変されたモノマーが生産された。そして、これらのモノマーは、ビニル−機能性コモノマーと共に共重合された。次に、生産されたポリマーは、シリカと共に混合され、そして、ビニル−特異性ペルオキシドを使用して硬化され、それから、薬物の放出に関する医療用途におけるそれらの使用が試験された。
【0086】
モノマーの生産
使用されるモノマーは、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(HMCTS、Clariant)のヒドロシル化により合成され、そして二重結合を含む親水性分子が選択された。親水基は主に、末端に二重結合を有するエーテル様構造であった。白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン(Pt−DVTMDS、ABCR)複合体は、ヒドロシル化の触媒として使用され、また、場合によっては、固体白金及びパラジウム触媒も試験された。ビニル/Si−Hの比は、最も通常は、1.1:1であった。反応は、第一に、8mLのバイアル中で、その反応溶液をオイルバス中で攪拌しながら、単純に加熱することにより実行された。この小スケールの実験が成功したときは、次の段階は、前記反応をスケールアップし、そして蒸留及び重合に十分な材料を生産することであった。最も通常の温度は65℃であり、使用される触媒の量は20ppmであった。
【0087】
幾つかの成分は、それらの略称と共に下に記載される。例えば、
HMCTSは、ヘプタメチルシクロテトラシロキサンを表し、
Pt−DVTMDSは、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体を表し、
MV
4は、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを表し、
MV
3は、1,3,5,トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンを表し、
D4gAMEは、1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−プロピルメチルエーテルシクロテトラシロキサンを表し、
D4gAEEは、1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテルシクロテトラシロキサンを表し、
D4gBVEは、1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテルシクロテトラシロキサンを表し、
D4gACHNは、1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−プロピルシクロヘキサノンシクロテトラシロキサンを表し、
DMS−V21は、ビニル末端化ポリジメチルシロキサンを表し、及び、
TBPEHは、テルト−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートを表す。
【0088】
これらの例において、4つの異なる誘導体が、モノマー合成について試験された。それらの構造、名称、略称、及び生産者は、表1に示されている。
【0089】
【表1】
【0090】
ヒドロシル化は、末端の二重結合において最も容易に起こるため、試験された全ての分子は、それを有していた。
図1は、モノマー合成の一例として、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン及びアリルメチルエーテルから、ヒドロシル化を経てされる、D4gAMEモノマーの合成の反応式を示す。
【0091】
ヒドロシル化反応は、FT−IR(Nicolet 760)によりモニターされた。前記反応は、2100cm
−1におけるSi−H IRの強力な吸収、又は1650cm
−1におけるC−Cの吸収が消失するときに、開始したと認識された。殆どの場合において、反応時間は、約3時間であり、幾らかの未反応の材料が残る。しかしながら、ブチルビニルエーテルは、30分以内に完全にヒドロシル化され、反応溶液に残余Si−H基を残さない。
【0092】
【表2】
【0093】
モノマー合成は、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、n−ブチルビニルエーテル及びアリルシクロヘキサノンにおいて、成功裡に実行された。これら全ては、20ppmのPt−DVTMDS触媒と共に、65℃で、十全に反応した。反応時間は、表2から見られるように、かなり大きく異なっていた。大スケール(100g)の反応は、還流冷却機及び窒素吸入口が取り付けられた、250mLの丸底フラスコ中で実行された。ヒドロシル化の第一段階の間に顕著に発熱するため、触媒は、反応混合物に慎重に添加されなければならなかった。
【0094】
モノマーの精製
重合の前に、モノマーは、少なくとも95%の純度(ガスクロマトグラフィーのピークからの領域%として判定される)を達成するため、蒸留されなければならなかった。蒸留は、小型蒸留装置、オイルバス、及び吸引ポンプを使用して遂行された。圧力は、10mbar以下まで減圧され、そして最も通常は、オイルバスの温度は、主要な生産物が蒸留されるまで、約110℃まで高められなければならなかった。蒸留後、集められたモノマー蒸留物は、GC−MSで純度を再び測定され、そして、モノマーの容器に20容積%の4Åのモレキュラーシーブを添加することにより、乾燥させられた。
【0095】
重合
重合実験は、8mLのバイアルに、約2gの乾燥したモノマー及び50ppmの触媒を入れて、開始された。異なるモノマー及び反応条件について試験が行われた。前記反応は、アニオン性開環重合であり、カリウムシラノレートとホスファゼン塩基の両方の触媒が、有用であり得た。
図2は、D
4AEEのアニオン性開環重合の模式図を示す。この小スケールの実験において成果が挙げられた後、10〜50gという、より大きなバッチが、30mLのバイアル及び100mLの三つ首フラスコにおいて、エンドブロッカー、ビニルコモノマー、及び任意的にD’L−α−トコフェロール等の添加剤等が加えられて作られた。
【0096】
試験された全ての試薬、及び重合におけるそれらの用途は、表3に示されている。1つの実験において、各型の1つのみが使用された。
【0097】
【表3】
【0098】
重合は、窒素空気中で、そして激しく攪拌して、行われた。温度は、150℃に設定された。重合の時間は、30分から2時間まで様々であり、モノマー及び温度に依存していた。殆どの反応はかなり迅速であるが、最高の重合の程度及び終了を達成するために、重合が起こった後も30分間攪拌及び加熱が継続された。最後に、前記反応は、リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)でクエンチされた。
【0099】
1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(MV
4)等のビニルコモノマーが、前記反応媒体に添加された。また、他のビニル含有物質も試験された(表3を参照されたい)。良好なポリマーは、ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン−コポリマーを使用して達成されたが、これらのポリマーが保管された時、数日後にある程度の架橋が生じた。この問題に対する好ましい解決方法は、抗酸化剤及び安定化剤である、D’L−α−トコフェロール(ビタミンE)を添加することであった。それは、望ましくない架橋を防止し、そして、重合における共触媒効果をも有していた。開環重合を開始するために、より少量の触媒が必要となる。表4において、D4gBVEを使用した幾つかの開環重合実験が示されている。ここで、D’L−α−トコフェロールの有無により実験結果に差異が生じたことが、容易に見て取れる。
【0100】
【表4】
【0101】
表5において、全ての誘導体化されたモノマーについてされた重合実験の要約が示されている。
【0102】
【表5】
【0103】
低分子量化合物の除去
低分子量化合物は、更なる工程の前にポリマーから除去されなければならなかった。もしこれらの化合物が残存していると、得られるエラストマーが、低い引張強度、及び過剰な量の抽出可能物を有することとなる。小スケールでは、低分子量物質は、小型蒸留装置及び吸引ポンプを使用して、ポリマーから蒸発させられた。これは、揮発性物質を除去するための最も有効な手段ではなかった。なぜなら、幾つかのポリマーサンプルは、短経路蒸留装置(VTA−VKL70−4−SKR−T Short Path Distillation Unit)の使用に十分な大きさの体積を作り出すことが出来るように組み合わされたからであった。短経路蒸留ユニットは、吸引−及び分散ポンプ、並びに油循環(oil circulating)系(Huber, Unistat 385w Circulation Thermolat)と共に設置された。
【0104】
小スケールにおいて、小型蒸留装置が使用されたとき、温度は120℃まで上昇し、及び圧力は2mbar未満まで低下した。より大きなスケールにおいて、短経路蒸留装置が使用されたとき、温度は90度、圧力は0.2mbarであった。
【0105】
エラストマーの生産
抜き取り後、前記ポリマーは、小型の研究室用混合機中で、25重量%の乾燥したシリカ(Aerosil R 106)及び1.5重量%のテルト−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)と混ぜ合わせられる。シリカは、0.5gずつ徐々に加えられ、そして、その基材は、均質な材料を得るため、15分間混合された、
【0106】
浸透性試験のためのサンプル膜は、研究室用の加熱プレス(Enerpac)を使用して、厚さが0.4mmの円形スペーサー成型(round spacer mould)で生産された。材料は、放出ライナー(release liner)と金属盤の間で100barの油圧がかけられ、120℃で6分間圧縮された。
【0107】
機械試験のための厚板は、浸透性サンプルと同様に生産された。しかし、厚さが2mmの長方形(6.1cm×8.2cm)スペーサーが使用された点が異なる。
【0108】
続いて、エラストマーフィルムは、100倍で、及び100mbarの圧力を掛けて、1時間、後硬化された。特に、ポリ(D
4gAEE)の厚さ2mmのフィルムは、後硬化の間に僅かに黄色になる。
【0109】
特徴付け
GC−MSによるモノマーの分析
ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)装置(Agilent Technologies)は、合成されたモノマーを特徴付けるために使用された。サンプルは、n−ヘキサン中に希釈され(約0.1mg/ml)、そして各サンプルから、2つの注射物がとられた。収量及び純度は、CGピークの領域%として推定され、そして必要な場合、主要な不純物及び副産物は、MSスペクトルから同定された。全ての実験における最大の不純物は、開始材料の、ヘプタメチルシクロテトラシロキサンであった。
【0110】
GPCによるポリマーの分析
数平均及び質量平均モル質量、並びに多分散性は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた合成ポリマーから判定される。使用されたGPC装置は、ポンプ(Waters 515)、インジェクター(Waters 717Pius)RI−Detector(Waters 2414)、及びカラムオーブン(Perkin−Elmer Model 101 LC Colmun Oven)から構成されていた。分析は、5つのカラム及びポリスチレンスタンダードにより実行された。モル質量は、162〜1000000g/molの範囲で判定された。
【0111】
サンプルは、ポリマーをトルエン(J. T. Baker)で希釈することにより生産された。また、トルエンは、キャリア溶液としても使用された。フローは、0.3ml/分に設定された。トルエンは、フローを安定化させ、そしてカラム及びインジェクターを洗浄するために、測定が行われる前夜から前記装置内を循環させられた。
【0112】
薬物浸透性の解析
薬物浸透性解析は、
図3において模式的に示された、隣り合った分散セルを使用して実行された。この系は、ドナーセル1及びレセプターセル2とされる2つの類似したガラスチャンバー、それらを取り囲むウォータージャケット3、並びにそれらに備え付けられるマグネチックスターラー4から構成されていた。前記ドナーセル1は、飽和濃度のエストラジオールが存在する1%シクロデキストリン溶液(参照番号6)が充填されていた。エストラジオールは、セルの間に設置されたエラストマー膜5を透過して、溶液(1%シクロデキストリン)を含むレセプターセル2に拡散した。使用された膜の厚さは0.2mm及び0.4mmであり、各膜は、正確に測定された。
【0113】
試験時間は5日間であり、そして、毎日2.8μlのサンプルが前記レセプターセル溶液から、サンプリングポート7を通じて採取された。サンプリングの後、取り出された分の溶液は、純粋な37℃のシクロデキストリンで置換された。温度は、ヒト体内の条件を模倣するため、ウォーターバス(Lauda)で、37℃に定常的に維持された。
【0114】
採取された溶液サンプルは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により、エストラジオールが分析された。HPLCによる濃度分析の結果から、透過性は、時間に対する測定濃度をプロットし、そしてプロットされた点の傾向直線の傾きを求めることにより計算された。
【0115】
引張強度及び伸長
引張強度測定のためのサンプルは、所望の厚さ(2mm)のプレスされたエラストマーの断片から打ち抜かれた。試験サンプルは、2型ISO37試料であった。引張強度は、Mosanto T2000装置を100N又は1kNセルで使用して測定された。伸長の測定を可能とするため、高い伸び計(high extensometer)(ゲージ長20mm)が前記装置に取り付けられた。伸び率は、500mm/分であった。解析の前に、前記サンプルは、一定の室温及び湿度(23℃、50%)で24時間維持された。
【0116】
抽出可能物
エラストマーからのヘキサンに抽出可能物の量は、0.3gのエラストマーを量り取り、30mlのバイアルに入れ、そして20mlのn−ヘキサンを加えることにより判定された。3つの測定が、並行して実行された。サンプルは、室温で24時間振盪され、そして翌日、ヘキサン溶液が回収された。固体のサンプルは、新しいヘキサンでもう一度洗浄され、そして40℃、及び圧力が10mbarより低い吸引オーブン中で1時間乾燥させられた。乾燥後、サンプルは、室温でもう一時間安定化され、それから計量された。抽出可能物は、処理前と処理後との間のサンプルの質量の違いのパーセンテージとして計算された。
【0117】
加えて、抽出可能物は、抽出された溶液中の通常の環式化合物(common cyclic)(D
4〜D
6)及び抽出された化合物種の生じ得るより大きな断片の量を評価することが出来るように、GPC及びGC(Agilent Technologies 6890 N Network GC System, FID detector)で分析された。
【0118】
結果
合成及びポリマー
試験された4つの誘導体化モノマー候補物質の全てのうち、結果的に2つが、モノマーからエラストマーへの全合成経路を進行させられた。
【0119】
ポリマー合成は、D
4gAEE及びD
4gBVEにおいて、成功裡に実行された。モル質量は、殆どが140,000g/mol程度であった。
【0120】
薬物透過性
目的の透過性は、参照エラストマー(非修飾PDMS)の透過性の10倍であった。
図4において、ポリ(D
4gAEE)、ポリ(D
4gBVE)、及び参照PDMSエラストマー膜におけるエストラジオール透過性測定値のプロット結果が示されている。時間(hour)単位の時間は横座標に示され、そしてμg単位の放出されたエストラジオールの量は縦座標に示される。正方形はポリ(D
4gAEE)を表し、三角形はポリ(D
4gBVE)を表し、及びダイヤ形は参照PDMSエラストマーを表す。
【0121】
引張強度及び伸張
引張強度及び伸張測定の結果は、表6に示されている。最初のサンプルは、後硬化をさせずに、そして1kNのセルで測定された。他のサンプルは、後硬化後に、そして100kNのセルで解析された。後硬化サンプルに使用されたポリマーは、より有効な短経路蒸留ユニットで抜き取られた。
【0122】
【表6】
【0123】
抽出可能物
抽出可能物は、後硬化された場合とされない場合との両方において測定された。結果は、表7に示されている。後硬化サンプルに使用されたポリマーは、より有用な短経路蒸留ユニットで抜き取られた。
【0124】
【表7】