(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718583
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】タンク取付構造
(51)【国際特許分類】
F17C 13/08 20060101AFI20150423BHJP
B60K 15/07 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
F17C13/08 301A
B60K15/07
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-98608(P2010-98608)
(22)【出願日】2010年4月22日
(65)【公開番号】特開2011-226608(P2011-226608A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2013年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100096976
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 純
(72)【発明者】
【氏名】山下 顕
(72)【発明者】
【氏名】稲木 秀介
(72)【発明者】
【氏名】林 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康行
【審査官】
白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−220680(JP,A)
【文献】
特開平07−164933(JP,A)
【文献】
特表2008−518827(JP,A)
【文献】
特開2008−049961(JP,A)
【文献】
米国特許第06536722(US,B2)
【文献】
特開2003−025858(JP,A)
【文献】
米国特許第04223899(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/08
B60K 15/063−15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状のガスタンクを車両内に固定するタンク取付構造であって、
前記ガスタンクの長軸方向の両端を支持する一対の支持ユニットであって、それぞれが前記ガスタンクの長軸方向端部と前記車両内の固定部材とを連結する一対の支持ユニットを備えており、
前記一対の支持ユニットのうち少なくとも一方は、
前記ガスタンクの端部に取り付けられ、前記ガスタンクに負荷がかかっていないノミナル状態からみて前記ガスタンクが膨張したり、前記ノミナル状態に戻るべく前記膨張状態から縮小したりする際に、当該ガスタンクの端部とともに長軸方向に進退するタンク側部材と、
前記固定部材に取り付けられるとともに、前記タンク側部材を長軸方向に進退可能に保持する保持側部材と、
を備え、
前記タンク側部材は、前記ガスタンクの端部から長軸方向に突出した状態で、前記ガスタンクの端部に螺合締結されるボルトであり、
前記保持側部材は、
前記固定部材に連結されたブラケットであって、前記固定部材との反対側端部に前記ボルトの外周囲に配置された保持部を備えるブラケットと、
前記ボルトが挿通され、当該ボルトにより前記ガスタンクの端部に固定されるブッシュであって、前記保持部の内部に組みつけられるブッシュと、
前記保持部と前記ブッシュとの間に配されて、前記ブッシュの外周面および前記保持体の内周面に密着する弾性体であって、前記ブッシュの保持部に対する長軸方向への移動に際して、その内周面は前記ブッシュとともに長軸方向に移動し、その外周面は前記保持部とともに静止する弾性体と、
を備え、
前記ノミナル状態において、前記弾性体のタンク側端部と前記ガスタンクの端部との間に間隙がある、
ことを特徴とするタンク取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のタンク取付構造であって、
前記ノミナル状態において、前記弾性体のタンク側端部と前記ガスタンクの端部との間に間隙は、前記ガスタンクの端部の長軸方向への変位量以上である、ことを特徴とするタンク取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略円筒形状のガスタンクを車両内に取り付けるタンク取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然ガス等の気体燃料を内燃機関に供給する車両が知られている。また、近年、水素ガスなどの気体燃料を燃料電池に供給して、その電池で発電した電力により走行する車両も知られている。これら車両においては、気体燃料を高圧状態で収容するガスタンクを搭載する必要がある。
【0003】
ここで、車両に搭載されるガスタンクは、多くの場合、略円筒形である。この略円筒形のガスタンクを車両内に安定して取り付けるための技術が従来から多数提案されている。例えば、特許文献1,2には、ガスタンクの周面に複数のバンドを巻回し、当該バンドを車両内の固定部材に締結することでガスタンクを車両内に取り付ける技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、ガスタンクに接しつつ軸方向に延びる複数対の保持部材でガスタンクを挟み込むようにして保持し、当該保持部材の両端を固定部材に締結することでガスタンクを固定する技術が開示されている。また、特許文献4には、ガスタンクの軸方向両端を支持する支持装置であって、ガスタンクのうち首部を有さない側の端部を弾性部材を介して軸方向に支持する支持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−291666号公報
【特許文献2】特開2005−114022号公報
【特許文献3】特開2009−214782号公報
【特許文献4】特開2004−257413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした従来技術は、それなりの利点もあるものの、ガスタンクの長軸方向の変形を十分に吸収できないという問題があった。すなわち、ガスタンクは、燃料ガスの充填・放出により、膨張・収縮、すなわち変形することが知られている。こうした変形を吸収する形態でガスタンクを取り付けないと、ガスタンクや取付器具に過大な負荷がかり、部品寿命低下などの問題を招く。しかし、従来の取付構造では、ガスタンクの径方向の変形はある程度吸収できても、長軸方向の変形は十分に吸収できなかった。
【0007】
また、特許文献1,2のように、バンドを用いる取付構造では、車両搭載時の位置決めが困難であったり、タンクが回転したりするといった問題もあった。また、特許文献3,4のようにガスタンクの両端を支持する従来の取付構造では、構成が複雑になりがち、コストが高くなるという問題もあった。
【0008】
そこで、本実施形態では、ガスタンクの長軸方向の変形を十分に吸収しつつ簡易に当該ガスタンクを取り付けでき得るタンク取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタンク取付構造は、略円筒形状のガスタンクを車両内に取り付けるタンク取付構造であって、前記ガスタンクの長軸方向の両端を支持する一対の支持ユニットであって、それぞれが前記ガスタンクの長軸方向端部と前記車両内の固定部材とを連結する一対の支持ユニットを備えており、前記一対の支持ユニットのうち少なくとも一方は、前記ガスタンクの端部に取り付けられ、
前記ガスタンクに負荷がかかっていないノミナル状態からみて前記ガスタンクが膨張したり、前記ノミナル状態に戻るべく前記膨張状態から縮小したりする際に、当該ガスタンクの端部とともに長軸方向に進退するタンク側部材と、前記固定部材に取り付けられるとともに、前記タンク側部材を長軸方向に進退可能に保持する保持側部材と、を備え
、前記タンク側部材は、前記ガスタンクの端部から長軸方向に突出した状態で、前記ガスタンクの端部に螺合締結されるボルトであり、前記保持側部材は、前記固定部材に連結されたブラケットであって、前記固定部材との反対側端部に前記ボルトの外周囲に配置された保持部を備えるブラケットと、前記ボルトが挿通され、当該ボルトにより前記ガスタンクの端部に固定されるブッシュであって、前記保持部の内部に組みつけられるブッシュと、前記保持部と前記ブッシュとの間に配されて、前記ブッシュの外周面および前記保持体の内周面に密着する弾性体であって、前記ブッシュの保持部に対する長軸方向への移動に際して、その内周面は前記ブッシュとともに長軸方向に移動し、その外周面は前記保持部とともに静止する弾性体と、を備え、前記ノミナル状態において、前記弾性体のタンク側端部と前記ガスタンクの端部との間に間隙がある、ことを特徴とする。
【0010】
好適な態様では、
前記ノミナル状態において、
前記弾性体のタンク側端部と前記ガスタンクの端部との間に間隙は、前記ガスタンクの端部の長軸方向への変位量以上である
。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的簡易な構成でありながらガスタンクの長軸方向の変形を十分に吸収できる。また、本発明によれば、ガスタンクの回転を防止でき、簡易にガスタンクの位置決めができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態であるタンク取付構造の概略構成図である。
【
図2A】ノミナル状態におけるガスタンク後端周辺の概略断面図である。
【
図2B】膨張状態におけるガスタンク後端周辺の概略断面図である。
【
図3A】第二実施形態を示す図面であり、ノミナル状態におけるガスタンク後端周辺の概略断面図である。
【
図3B】第二実施形態を示す図面であり、膨張状態におけるガスタンク後端周辺の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態であるタンク取付構造10の概略構成図である。このタンク取付構造10は、略円筒形のガスタンク100を車両内に取り付けるための構造である。
【0015】
はじめに、このタンク取付構造10について説明する前に、当該タンク取付構造10が取り付け対象とするガスタンク100について簡単に説明する。ガスタンク100は、水素ガスや天然ガスといった車両の燃料として用いられる燃料ガスを高圧状態で収容するタンクである。このガスタンク100は、充填された燃料ガスの圧力を均等に受けるために、通常、略円筒形、より正確には、円筒の両端に略半球が接続された略繭形となっている。ガスタンク100の長軸方向の一端100a(以下「前端100a」という)には、当該ガスタンク100からの燃料ガスの流出を制御するバルブ102が設けられている。このバルブ102には、さらに、燃料電池や内燃機関に燃料ガスを供給する燃料配管(図示せず)が接続されている。ガスタンク100の長軸方向の他端100b(以下「後端100b」という)は、半球面で閉塞されている。
【0016】
本実施形態のタンク取付構造10は、かかるガスタンク100を車両内の固定部材(例えばフレームやフレームに固着された部材など)に取り付けるための構造である。本実施形態では、このガスタンク前端100aおよび後端100bの両方を支持して固定する両端支持形式となっている。すなわち、本実施形態のタンク取付構造10は、ガスタンク前端100aを支持する前側支持ユニット12と、ガスタンク後端100bを支持する後側支持ユニット14と、を備えている。
【0017】
このように、ガスタンク100の胴部ではなく、両端100a,100bを支持することにより、ガスタンク100の転動を容易に防止できる。すなわち、従来のタンク取付構造の中には、略円筒形のガスタンクの胴部にバンドを巻きつけ、このバンドを固定部材に固定するものがある。かかる構成の場合、固定時に、ガスタンクがバンドに対して転動してしまい、搭載時の位置決めが困難という問題があった。一方、本実施形態のように、二つの支持ユニット12,14によりガスタンク100の両端100a,100bを支持する構成とした場合、ガスタンク100の転動を効果的に防止することができ、搭載時の位置決めが容易となる。
【0018】
次に、前側支持ユニット12について、説明する。前側支持ユニット12は、ガスタンク前端100aを支持するもので、具体的には、前側ブラケット16のみで構成される。前側ブラケット16は、固定部材とガスタンク前端100aとを連結し、当該前端100aを支持する金具である。この前側ブラケット16で支持されることにより、固定部材に対するガスタンク前端100aの位置が固定されることになる。換言すれば、本取付構造10によれば、ガスタンク前端100aの位置は不変となっている。なお、前側支持ユニット12(前側ブラケット16)は、公知の技術で構成できるため、その具体的構成についての詳説は省略する。
【0019】
次に、
図2Aを参照して後側支持ユニット14について説明する。
図2Aは、ノミナル状態におけるガスタンク後端100b周辺の概略断面図である。なお、ここで、ノミナル状態とは、ガスタンク100の内圧が気圧前後で、ガスタンク100に負荷がかかっておらず、膨張変形していない状態を指す。
【0020】
後側支持ユニット14は、ガスタンク後端100bを支持するもので、タンク側部材と、保持側部材と、に大別される。タンク側部材は、ガスタンク100端部に取り付けられる部材で、具体的には、ガスタンク端部に螺合締結されるボルト30からなる。ボルト30は、少なくとも、その先端に雄ネジが形成され、ガスタンク100を支える程度の強度があるボルトであればよく、市販の汎用品を流用することができる。このボルト30は、後述する保持側部材のブッシュ22に挿通したうえで、ガスタンク後端100bに螺合締結される。そして、このボルト30の頭部とガスタンク後端100bとでブッシュ22を挟持するようにボルト30を締め付けることでブッシュ22がガスタンク100に連結される。また、このようにボルト30をガスタンク後端100bに螺合締結することにより、ガスタンク100膨張・縮小に伴うガスタンク後端100bの長軸方向への変位に連動して、このボルト30も長軸方向に進退するようになっている。なお、当然ながら、ボルト30とガスタンク後端100bとの締結部分周辺には、ガス流出を防止するための構造が設けられている。
【0021】
保持側部材は、固定部材に連結されるとともに、ボルト30を進退自在に支持する部材である。この保持側部材は、具体的には、後側ブラケット18、弾性管体24、および、ブッシュ22から構成されている。後側ブラケット18は、固定部材に連結された金具で、固定部材とは反対側の端部には、ボルト30の外周囲を覆う円筒形の保持部20が設けられている。この保持部20の内部には、ブッシュ22が挿通されており、当該ブッシュ22と保持部20との間隙には、弾性管体24が圧入されている。
【0022】
ブッシュ22は、ボルト30の外径より僅かに大きい内径を有した金属製の管体で、市販の汎用品を流用することができる。このブッシュ22は、保持部20の内部に組みつけられており、ボルト30によりガスタンク後端100bに固定される。弾性管体24は、ゴムなどの弾性材料からなり、その内周面はブッシュ22の外周面に、外周面は保持部20の内周面に、それぞれ密着している。また、この弾性管体24は、ガスタンク100の膨張・縮小に応じて進退するボルト30の動きを吸収するべく、変形できるようになっている。なお、この弾性管体24、ブッシュ22、および、後側ブラケット18は、互いに組みつけられた一つの組部品として構成されている。
【0023】
図2Aから明らかなとおり、ブッシュ22は、非変形状態の弾性管体24よりも長く、その前端および後端が弾性管体24から突出して露出している。また、弾性管体24は、保持部20よりも長く、その前端および後端が保持部20から露出している。したがって、弾性管体24が非変形状態の場合、ブッシュ22の先端をガスタンク後端100bに接触させたとしても、当該弾性管体24の前端とガスタンク後端100bとの間には適度な距離が生じるようになっている。ここで適度な距離とは、ガスの充填・放出に伴うガスタンク後端100bの長軸方向への変位量以上を意味している。
【0024】
かかる構成の後側支持ユニット14で、ガスタンク100を固定支持する場合には、まず、後側ブラケット18に組み込まれたブッシュ22の内部にボルト30を挿通する。そして、その状態で、当該ボルト30をガスタンク後端100bに螺合し、ブッシュ22の先端がガスタンク後端100bに接するまで締め付ける。これにより、ブッシュ22がガスタンク100に固定されることになる。ブッシュ22がガスタンク100に固定されれば、最後に、後側ブラケット18を、固定部材に締結する。以上で、ガスタンク後端100bが、後側支持ユニット14により支持されることになる。
【0025】
かかる取付構造10で支持された場合の動作について
図2A、
図2Bを参照して説明する。既述したとおり、
図2Aは、ノミナル状態におけるガスタンク100周辺の概略断面図である。また、
図2Bは、ガスタンク100にガスが充填されて、内圧が高まり、ガスタンク100が膨張した膨張時におけるガスタンク後端100b周辺の概略断面図である。
【0026】
図2Aに示すように、ノミナル状態においては、弾性管体24は、変形することなく、規定の形状を保っている。一方、
図2Bのようにガスタンク100が膨張した場合を考える。この場合、ガスタンク前端100aは、前側支持ユニット12により位置不変に支持されているため、ノミナル状態と同様の位置で静止している。一方、ガスタンク後端100bは、ガスタンク100の膨張に伴い、長軸方向に変位する。この変位に伴い、当該後端に螺合締結されていたボルト30および当該ボルト30によりガスタンク後端100bに取り付けられたブッシュ22も、長軸方向に移動することになる。一方で、後側ブラケット18は、固定部材に取り付けられているため、ノミナル状態のときと同じ位置で静止している。このとき、弾性管体24の外周面は、静止する後側ブラケット18と密着している関係上、その位置で静止しようとする。一方で、弾性管体24の内周面は、移動するブッシュ22と密着している関係上、ブッシュ22とともに長軸方向に移動しようとする。その結果、弾性管体24は、
図2Bのように変形することになる。そして、この弾性管体24の変形により、ガスタンク後端100bの変位が吸収され、ガスタンク100膨張時であっても、安定してガスタンク100が保持されることになる。
【0027】
その後、ガスの放出に伴い、ガスタンク100が縮小したとする。この場合、ガスタンク前端100aは、位置不変のままであるが、ガスタンク後端100b、ひいては、ボルト30およびブッシュ22は前側に移動する。この移動も、非変形状態に戻ろうとする弾性管体24の変形により吸収されることになる。その結果、ガスタンク100が縮小する場合であっても、安定してガスタンク100が保持されることになる。
【0028】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、ガスタンク100の長軸方向の変形を吸収できるため、両端支持構成であっても、安定してガスタンク100を保持することができる。すなわち、従来においても、ガスタンク100の両端を支持する両端支持形式の取付構造は知られていたが、構造が複雑であったり、長軸方向の変形が吸収できなかったりといった問題があった。長軸方向の変形が吸収できない場合、取付構造やガスタンク後端100bに過大な負荷がかかり、安定してガスタンク100が保持できなかったり、部品の寿命低下などといった問題を招いていた。一方、本実施形態によれば、ガスタンク100の長軸方向の変形を吸収できるため、各部品にかかる負荷が低減できるため、安定してガスタンク100が保持でき、また、部品の寿命低下を防止できる。また、本実施形態のタンク取付構造10は、汎用品のブッシュ22や弾性管体24、ボルト30を用いただけのシンプルな構成であるため、簡易かつ低コストで実現することができる。また、両端支持構造であるため、ガスタンクの回転が確実に防止でき、ひいては、車両搭載時における位置決めが容易となる。
【0029】
次に、第二実施形態について
図3A、
図3Bを参照して説明する。
図3A、
図3Bは、第二実施形態のタンク取付構造10のうちガスタンク後端100b周辺の概略断面図であり、
図3Aはノミナル時、
図3Bは膨張時をそれぞれ示している。
【0030】
本実施形態のタンク取付構造10も、第一実施形態と同様に、前側支持ユニット12および後側支持ユニット14を備えている。前側支持ユニット12は、ガスタンク前端100aと固定部材とを連結する前側ブラケット16から構成されている。前側ブラケット16は、ガスタンク前端100aを支持し、当該ガスタンク前端100aを規定の位置に固定する。
【0031】
後側支持ユニット14は、保持側部材として機能する後側ブラケット18と、タンク側部材として機能するボルト30と、から構成されている。ボルト30は、市販のボルトを流用することができ、その先端は、ガスタンク後端100bに螺合締結される。そして、ガスタンク100の膨張・縮小に伴うガスタンク後端100bの長軸方向の変位により、このボルト30も長軸方向に移動することになる。
【0032】
後側ブラケット18は、固定部材に連結される金具で、その固定部材とは反対側の端部には、ボルト30が挿通される保持部20が設けられている。この保持部20は、ボルト30の外径より僅かに大きい内径を有しており、内部に挿通されたボルト30が当該保持部20に対してスライドできるようになっている。なお、このスライドをよりスムーズに行うために、保持部20の内周面にコロ(球体)を配置し、保持部20を、いわゆる軸受のように構成してもよい。また、保持部20の内周面に磨耗に強い特殊コーティング(例えばセラミックコーティングなど)を施してもよい。いずれにしても、その場合、ボルト30は、その先端にのみ雄ネジが形成され、保持部20と接触する範囲は、雄ネジが形成されていない丸棒状態であることが望ましい。
【0033】
ガスタンク100を取り付ける際には、この保持部20にボルト30を挿通したうえで、当該ボルト30をガスタンク後端100bに螺合締結する。そして、保持部20の先端とガスタンク後端100bとの間に、適度な距離が保たれるような位置関係で、後側ブラケット18を固定部材に連結する。ここで、適度な距離とは、ガスタンク100が膨張に伴うガスタンク後端100bの長軸方向に変位量以上の距離を指す。
【0034】
この状態において、ガスタンク100が膨張し、ガスタンク後端100bが長軸方向に変位すると、当該ガスタンク後端100bに螺合締結されたボルト30も長軸方向に移動する。一方で、後側ブラケット18、ひいては、保持部20は、ノミナル状態と同じ位置に静止したままとなる。したがって、ガスタンク100膨張時、ボルト30は、静止する保持部20内をスライド移動することになる。その結果、後側ブラケット18は、ボルト30の長軸方向移動の影響を受けず、ガスタンク100が膨張変位したとしても、当該ガスタンク100を安定して保持し続けることができる。また、ガスの放出に伴いガスタンク100が縮小した場合であっても、ボルト30は、保持部20内をスライドして前側に移動することができる。その結果、ガスタンク100が縮小する場合であっても、安定してガスタンク100が保持されることになる。
【0035】
以上の説明から明らかなとおり、第二実施形態のタンク取付構造10においても、ガスタンク100の長軸方向の変形を吸収できるため、両端支持構成であっても、安定してガスタンク100を保持することができる。また、本実施形態のタンク取付構造10は、汎用品であるボルト30等を用いただけのシンプルな構成であるため、簡易かつ低コストで実現することができる。さらに、ガスタンクの回転が防止できるため、車両搭載時における位置決めが容易となる。
【0036】
なお、これまで説明した構成は一例であり、ガスタンク端部に取り付けられたタンク側部材と、当該タンク側部材を長軸方向に進退自在に保持する保持側部材と、を備えているのであれば、他の構成であってもよい。また、これまでの説明では、いずれも、ガスタンク後端100bにのみ、長軸方向変位を吸収し得る支持ユニットを配している。しかし、ガスタンク前端100a、あるいは、ガスタンク前端100aとガスタンク後端100bの両方に、長軸方向変位を吸収し得る支持ユニットを配してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 タンク取付構造、12 前側支持ユニット、14 後側支持ユニット、16 前側ブラケット、18 後側ブラケット、20 保持部、22 ブッシュ、24 弾性管体、30 ボルト、100 ガスタンク、102 バルブ。