特許第5718679号(P5718679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718679
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   B32B27/36 102
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-45898(P2011-45898)
(22)【出願日】2011年3月3日
(65)【公開番号】特開2011-201304(P2011-201304A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2014年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-46630(P2010-46630)
(32)【優先日】2010年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】横木 正志
(72)【発明者】
【氏名】北出 拓
(72)【発明者】
【氏名】河野 正彦
(72)【発明者】
【氏名】勝原 一成
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−138436(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/052463(WO,A1)
【文献】 特開2003−039621(JP,A)
【文献】 特開2006−051608(JP,A)
【文献】 特開2006−103169(JP,A)
【文献】 特開2005−014592(JP,A)
【文献】 特開2005−178063(JP,A)
【文献】 特開2008−137311(JP,A)
【文献】 特許第5506437(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式()で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなるポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層し、前記A層に用いるポリカーボネート樹脂中の一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が35モル%以上90モル%以下であり、前記B層に用いる樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなることを特徴とする積層体
【化1】
【請求項2】
記B層の両面に前記A層を積層することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
積層体の両表面のうち、少なくとも一方にハードコート層、反射防止層および防汚層から選ばれる機能付与層を1層以上設けることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
さらに印刷層を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記A層の厚さが30μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体の総厚さが0.15mm以上、3mm以下であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記A層を構成する樹脂組成物100重量%に対し、紫外線吸収剤を1.0重量%以上添加してなることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の積層体を打ち抜き加工して得られるディスプレイカバー。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の積層体を加工して得られる建築材料部材。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の積層体を熱成形して得られる熱成形体。
【請求項11】
請求項1記載の熱成形体を含む自動販売機用模擬缶。
【請求項12】
請求項1に記載の熱成形体を含むプレススルーパック。
【請求項13】
請求項1に記載の熱成形体の表面に溶融樹脂を射出成形して裏打ち層を形成して得られるインモールド成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネート樹脂を含む積層体に関し、特には芳香族ポリカーボネート樹脂シートでは達成できない表面硬度と、アクリル樹脂又はアクリル樹脂を表層に配置する積層体では達成できない耐衝撃性および打ち抜き加工性とを兼備したディスプレイカバー、並びに紫外線吸収機能を付与した芳香族ポリカーボネート樹脂シートでは達成できない耐黄変劣化性を有する、カーポート、樹脂窓および防音壁などの建材に適した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイカバー基材として、ガラス薄板に替わって芳香族ポリカーボネート樹脂が広く用いられるようになっている。芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、打ち抜き加工性、耐熱性、低比重および廉価などの点において優れているが、表面硬度が非常に低く、近紫外〜可視光波長領域で光吸収が起こることに由来して光線透過性または反射特性が不十分とされることがある。特に表面硬度については、基材が低硬度であるとハードコート層を配置しても表層の硬度が十分高くならない傾向が一般にある。
【0003】
そのため、芳香族ポリカーボネート樹脂を基材に用いたディスプレイカバーは耐擦傷性が不十分であり、頻繁に手が触れる携帯電話用ディスプレイカバーおよびタッチパネルなどには好適に用いることが困難である。
【0004】
一方メチルメタクリレートを主成分とする樹脂に代表されるアクリル樹脂も一部用いられる。アクリル樹脂は、表面硬度が高く、芳香族ポリカーボネート樹脂の様な光吸収が無いため透明性および光線透過性に非常に優れるが、耐衝撃性が非常に低く、打ち抜き加工時の歩留まりが低くなる傾向がある。
【0005】
近年、電気電子機器の筐体などで要求される様に、ディスプレイカバーは薄肉化が進んでおり、アクリル樹脂を基材に用いたディスプレイカバーは薄肉化が進むにつれ耐衝撃性および打ち抜き加工性が増々不十分となる。
【0006】
近年はこれら芳香族ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂とを積層体とし、ディスプレイカバー前面側にアクリル樹脂層を配置することで、製品の表面硬度と耐衝撃性とを兼備させる検討がなされている。
【0007】
また、透明建材用途でも芳香族ポリカーボネート樹脂が広く用いられている。芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性および耐衝撃性に優れているが、近紫外〜可視光波長領域で光吸収が起こり、透過光が僅かに黄色味を帯びる。光吸収により樹脂劣化が進行するに連れてこの黄変がさらに顕著になる。こうした事情より、特に屋外で日射に曝される用途を中心に、芳香族ポリカーボネート樹脂に紫外線吸収剤を配合して黄変の進行を抑制する手法がとられている。
【0008】
一方、アクリル樹脂などは、前記光吸収が無い点に関しては、屋外用途に好適と考えられるが、耐熱性が低いため根本的に日射などで高温雰囲気下に曝される用途では使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−321993号公報
【特許文献2】特開2001−134196号公報
【特許文献3】特開2002−232542号公報
【特許文献4】特開2004−130540号公報
【特許文献5】特開2004−143365号公報
【特許文献6】特開2007−237700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記のような積層構造を基材に用いたディスプレイカバーは、現在広く使用されている総厚さ0.4mm以上の肉厚である場合に、比較的良好な表面硬度と耐衝撃性を発現する。しかし、薄肉化が進み、総厚さ0.3mm以下程度の肉厚である場合には、割れやすいアクリル樹脂の特性が顕著になり耐衝撃性が著しく低下する。
【0011】
また、打ち抜き加工性について、アクリル樹脂単層よりは比較的改善されるが、現行厚さであってもヒビ割れおよび切り粉が発生するなど歩留まりが低下する傾向は変わらず、打ち抜き加工性の改良のための検討はなされていない。こちらも薄肉化が進むにつれ解決が増々困難になる。
【0012】
また、一般に紫外線吸収剤は非常に高価な添加剤であり、しかも多量に配合しないと期待する効果が得られないため、添加剤コストが著しく高騰する。さらに紫外線吸収剤自体が紫外線で経年劣化するため効果は永続的ではなく、建材など商品寿命が長い用途に広く展開させる上で解決すべき課題となっている。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、芳香族ポリカーボネート樹脂シートでは達成できない表面硬度と、アクリル樹脂又はアクリル樹脂を表層に配置する積層体では達成できない耐衝撃性および打ち抜き加工性とを兼備したディスプレイカバー、並びに紫外線吸収機能を付与した芳香族ポリカーボネート樹脂シートでは達成できない耐黄変劣化性を有する建材などに適した積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のポリカーボネート樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂とを積層する積層体が、総厚さが現行厚さであり、かつ薄肉化しても歩留まり良く打ち抜き加工が可能であることを見出した。
【0015】
また、特定のポリカーボネート樹脂層が前面側になるよう配置して使用するディスプレイカバーは、製品の表面硬度および耐衝撃性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
さらに少なくとも前面側にハードコート層を配置すると打ち抜き加工性および耐衝撃性を著しく低下させること無く表面硬度をさらに高めることも見出した。
【0017】
一方、本発明に用いる特定のポリカーボネート樹脂は、近紫外〜可視光波長領域で殆ど光吸収が起こらないため、紫外線吸収剤の配合を大幅に低減させたり無くしたりしても黄変劣化の進行が極めて遅速であり、屋外用途であってもその商品寿命を大幅に長くすることができることを見出した。
【0018】
なお、本発明において「主成分とする」とは、当該部位における対象成分の比率が50モル%以上、好ましくは75モル%以上であることをいう。
【0019】
第1の発明によれば、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ
化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層することを特徴とする積層体が提供される。
【0020】
【化1】
【0021】
但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。
【0022】
第2の発明によれば、第1の発明において、前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物である。
【0023】
【化2】
【0024】
第3の発明によれば、第1または第2の発明において、前記B層の両面に前記A層を積層する。
【0025】
第4の発明によれば、第1から第3のいずれか1の発明において、前記積層体の両表面のうち、少なくとも一方にハードコート層、反射防止層および防汚層から選ばれる機能付与層を1層以上設ける。
【0026】
第5の発明によれば、第1から第4のいずれか1の発明において、さらに印刷層を有する。
【0027】
第6の発明によれば、第1から第5のいずれか1の発明において、前記A層の総厚さが30μm以上、100μm以下である。
【0028】
第7の発明によれば、第1から第6のいずれか1の発明において、前記積層体の総厚さが0.15mm以上、3mm以下である。
【0029】
第8の発明によれば、第1から第7のいずれか1の発明において、前記A層を構成する樹脂組成物100重量%に対し、紫外線吸収剤を1.0重量%以上添加してなる。
の発明によれば、第1から第のいずれか1の発明にかかる積層体を打ち抜き加工して得られるディスプレイカバーが提供される。
【0030】
10の発明によれば、第1から第のいずれか1の発明にかかる積層体を加工して得られる建築材料部材が提供される。
【0031】
11の発明によれば、第1から第のいずれか1の発明にかかる積層体を熱成形して得られる熱成形体が提供される。
【0032】
12の発明によれば、第11の発明にかかる熱成形体を含む自動販売機用模擬缶が提供される。
【0033】
13の発明によれば、第11の発明にかかる熱成形体を含むプレススルーパックが提供される。
【0034】
14の発明によれば、第11の発明にかかる熱成形体の表面に溶融樹脂を射出成形して裏打ち層を形成して得られるインモールド成形体が提供される。
【発明の効果】
【0035】
本発明の積層体は、打ち抜き加工時の不具合が極めて少なく、製品の表面硬度と耐衝撃性に優れ、これら特性を損なうことなく製品の薄肉化を図ることができる。また、さらに少なくとも前面側にハードコート層を配置する事でさらに表面硬度を高めることができるため、ディスプレイカバー用途に好適である。
【0036】
また、本発明の積層体は、紫外線吸収剤の配合量を大幅に低減しながら黄変劣化を抑制し商品寿命を長くすることができるため、透明建材に好適である。さらには、熱成形時の絞り性および転写性も良好なため、熱成形して得られる各種製品にも好適である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<ポリカーボネート樹脂層(A層)>
本発明の積層体は、ポリカーボネート樹脂層(A層)を含む。A層に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む。
【0038】
【化3】
【0039】
但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。
【0040】
前記ジヒドロキシ化合物は、二つのヒドロキシル基と、更に前記式(1)の部位を少なくとも含むものを言う。そして、式(1)の部位が有する酸素原子は、ヒドロキシル基の一部ではないものである。
【0041】
前記ジヒドロキシ化合物としては、分子構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物であれば特に限定されるものではない。
【0042】
具体的には、例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンなど、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物が挙げられる。
【0043】
更には、例えば、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール類および下記式(3)で表されるスピログリコールに代表される環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類などのように、エーテル構造を有するものが挙げられる。
【0044】
無水糖アルコール類は、通常、糖類またはその誘導体を脱水環化することにより得られる複数のヒドロキシ基を有するものである。また、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類は、環状エーテル構造を有する構造部分と2つのヒドロキシ基とを有する化合物である。
【0045】
無水糖アルコール類および環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類は、いずれもヒドロキシ基は環状構造に直接結合していてもよいし、置換基を介して環状構造に結合していてもよい。環状構造は単環であっても多環であってもよい。
【0046】
無水糖アルコール類、および分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類では、環状構造が複数あるものが好ましく、環状構造を2つ有するものがより好ましく、当該2つの環状構造が同じものであることがさらに好ましい。
【0047】
より具体的には、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニドおよびイソイデットが挙げられる。
【0048】
また、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類としては、例えば、下記一般式(3)に代表される環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0049】
環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(慣用名:スピログリコール)、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンおよび式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
【化4】
【0052】
【化5】
【0053】
式中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1から炭素数3のアルキル基である。
【0054】
【化6】
【0055】
前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけイソソルビドは、澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これら事情により、イソソルビドが最も好ましい。
【0056】
本発明における、A層に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位を、更に含むこともできる。
【0057】
前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位を更に含むことで、加工容易性、耐衝撃性および芳香族ポリカーボネート樹脂との相互溶解性などを改良することが可能となる。
【0058】
前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位の中では、芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が好ましく用いられる。
【0059】
より具体的には、例えば、国際公開第2004/111106号に記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位および国際公開第2007/148604号に記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
【0060】
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0061】
前記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、5員環構造又は6員環構造を含むものであることが好ましい。6員環構造は共有結合によって椅子形又は舟形に固定されていてもよい。
【0062】
5員環構造又は6員環構造である脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、得られるポリカーボネートの耐熱性を高くすることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
【0063】
前記5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、上述の国際公開第2007/148604号に記載のものを挙げることができる。中でも、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールを好適に例示することができる。
【0064】
これらの中でも、シクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性や耐熱性などから最も好ましく、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いても
よい。
【0065】
尚、シクロヘキサンジメタノールの中でも、工業的に入手が容易である、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0066】
前記A層に用いるポリカーボネート樹脂の、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合としては、35モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、また、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましい。
【0067】
前記含有割合を前記範囲とすることで、該ポリカーボネート樹脂の硬度は芳香族ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂との中間の値を取るようになり、表層にアクリル樹脂層が配置されたディスプレイカバー基材よりも打ち抜き加工性が飛躍的に向上する。
【0068】
具体的には、前記含有割合が90モル%以下であることによって、表面硬度や耐熱性が優れ、かつ耐衝撃性の低下を抑止できるため、打ち抜き加工時の歩留まりの低下およびディスプレイカバーとしての製品を取扱う際の破損などの種々の不具合を防止できる。
【0069】
一方、前記含有割合が35モル%以上であることによって、耐衝撃性や打ち抜き加工性が優れ、かつ表面硬度や耐熱性の低下を抑止できる。また、ハードコート層を配置することでさらに十分な表面硬度を得ることが可能となり、ディスプレイカバーおよび透明建材のいずれの用途向けにも好適である。
【0070】
また、積層体の透明性や、ポリカーボネート樹脂層(A層)と芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)との接着性を特に重要と考える場合には、A層に用いるポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位との共重合体であることが好ましい。中でも、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を50モル%以上有するものが好ましい。
【0071】
前記A層に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、更に脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなることが好ましい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、更にそれら以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が含まれていてもよい。
【0072】
前記A層に用いるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定され、通常45℃以上、155℃以下であることが好ましく、80℃以上、155℃以下であることがより好ましく、100℃以上、155℃以下であることがさらに好ましい。尚、通常は単一のガラス転移温度を有することが好ましい。
【0073】
前記ガラス転移温度は、構造の一部に前記式(1)で表される部位に由来するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の種類や含有量を適宜選択することで調整が可能である。
【0074】
前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を前記範囲とすることによって、搬送時、保管時、使用時などで想定される熱環境に十分耐える積層体を得ることができる。
【0075】
前記A層に用いるポリカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造することができ、ホスゲン法または炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでもよい
。なかでも、重合触媒の存在下に、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法が好ましい。
【0076】
エステル交換法は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、エステル交換反応を行う製造方法である。
【0077】
炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
【0078】
このようにして得られた本発明で用いるポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、0.20dl/g以上が好ましく、0.30dL/g以上がより好ましく、0.35dL/g以上が更に好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
【0079】
なお、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、中央理化社製DT−504型自動粘度計にてウベローデ型粘度計を用い、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度が0.60g/dlになるように精密に調整した後に、温度20.0℃±0.1℃で、下記に基づき測定する。
溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから、下記式:
ηrel=t/t0
より相対粘度ηrelを求め、 相対粘度ηrelから、下記式:
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
より比粘度ηspを求める。
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式:
ηred=ηsp/c
より還元粘度(換算粘度)ηredを求める。
【0080】
前記A層に用いるポリカーボネート樹脂は、近紫外〜可視光波長領域での光吸収が殆ど無いため、特段の紫外線吸収剤を配合しなくても経時的な黄変劣化が起こらない利点がある。しかしA層を透過した紫外線がB層で吸収されてB層が黄変劣化することを抑制するために、A層に必要最低限の紫外線吸収剤を配合することができる。
【0081】
前記紫外線吸収剤としては、公知のもの、例えば各種市販のものを特に制限なく使用できる。中でも、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂への添加に通常用いられるものを好適に用いることができる。例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等のベンゾオキサジン系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、を挙げることができる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120℃〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃以上の紫外線吸収剤を使用することにより、紫外線吸収剤が時間経過とともに成形品表面に凝集するブリードアウト現象により成形体表面が汚れたり、口金や金属ロールを用いて成形する場合には、ブリードアウトによりそれらが汚れたりすることを防止し、成形品表面の曇りを減少させ改善することが容易になる。
より具体的には、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2 '−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル) −5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を好ましく使用でき、これらの中でも、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル) −6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールが特に好ましい。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記紫外線吸収剤の添加量は、A層で用いるポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.0001重量部以上、1重量部以下の割合で添加することが好ましく、0.0005重量部以上、0.5重量部以下の割合で添加することがより好ましく、0.001重量部以上、0.2重量部以下の割合で添加することがさらに好ましい。かかる範囲で紫外線吸収剤を添加することにより、A層表面への紫外線吸収剤のブリードやA層の機械特性低下を生じることなく、本発明の積層体の耐候性を向上することができる。
商業的に入手可能な紫外線吸収剤の一例としては、BASF社製の商品名「チヌビン1577FF」を挙げることができる。
【0082】
芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて屋外用途を想定した透明建材を製造する際に、通常は紫外線吸収剤の配合量を低減させる目的で、高濃度の紫外線吸収剤を配合した極薄い芳香族ポリカーボネート樹脂表層と、低濃度の紫外線吸収剤を配合又は全く含まない芳香族ポリカーボネート樹脂基材層とを積層する積層板を用いる。
【0083】
しかしながら、本発明の積層体はA層を日射が当たる方の表層面又は両表層面に配置されるように使用すれば、そこに添加すべき紫外線吸収剤の配合量を大幅に低減させることができる。
【0084】
本発明におけるA層は、任意の添加成分として、透明着色剤、ブルーイング剤、酸化防止剤および熱安定剤などを、本発明の本質を損なわない範囲で含有してもよい。
【0085】
本発明におけるA層はその共重合成分を調整することにより高表面硬度のものから、比較的低表面硬度だが耐衝撃性に優れるものまで製造することができる。また組成や配合比の異なる複数種の層を積層して、これをA層としてもよい。
【0086】
本発明の積層体におけるA層の厚さは30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。A層の厚さが30μm以上であることにより、積層体の表
面硬度をも向上することが可能であるほか、A層に紫外線吸収剤を配合した場合に、基材側のB層に紫外線が容易に透過することを抑止できる。
【0087】
また、A層の厚さの上限値は、特段の制限はないが、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。A層の厚さが100μm以下であることにより、表面硬度を維持しながら打ち抜き加工性や耐衝撃性を十分確保することができ、また積層体の薄肉軽量化を図ることもできる。
【0088】
本発明におけるA層は単層で製造した後に、後述する芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)と積層してもよいが、工程の簡略化および歩留まり向上などの観点から、前記B層と共押出しして製膜する方法で製造することが好ましい。
【0089】
前記A層を単層で製造する場合の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、Tダイキャスト法およびカレンダー法などの公知の方法を用いることができる。
【0090】
<芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)>
本発明の積層体は、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)を含む。B層に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂は、単独重合体または共重合体のいずれであってもよい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐構造であっても、直鎖構造であってもよいし、さらに分岐構造と直鎖構造との混合物であってもよい。
【0091】
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、例えば、ホスゲン法、エステル交換法およびピリジン法などの公知のいずれの方法を用いてもかまわない。以下一例として、エステル交換法による芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法を説明する。
【0092】
エステル交換法は、2価フェノールと炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、溶融エステル交換縮重合を行う製造方法である。
【0093】
前記2価フェノールの代表例としては、ビスフェノール類が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールAが好ましく用いられる。また、ビスフェノールAの一部又は全部を他の2価フェノールで置き換えてもよい。
【0094】
前記他の2価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォキシドおよびビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどの化合物、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのアルキル化ビスフェノール類、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのハロゲン化ビスフェノール類が挙げられる。
【0095】
前記炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
【0096】
B層に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、力学特性と成形加工性のバランスから、通常、8,000以上、30,000以下であることが好ましく、10,000以上、25,000以下であることがより好ましい。
なお、粘度平均分子量(Mv)はウベローデ型粘度計を用い、ポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン溶液(濃度:0.6g/dl)を調製し、20℃におけるηspを測定し、以下の式(I)及び(II)より求める。
ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp) (I)
[η]=1.23×10-4×(Mv)0.83 (II)
式(I)中、ηspはポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン中20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としては、ポリカーボネート樹脂試料の濃度が0.6g/dlの溶液を使用する。
【0097】
又、前記芳香族ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、A層に用いるポリカーボネート樹脂と同様に測定され、通常、0.23dl/g以上0.72dl/g以下であることが好ましく、0.27dl/g以上0.61dl/g以下であることがより好ましい。
【0098】
また、本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂とは、2価フェノールに由来する構造単位中、50モル%以上(好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上)が一つ以上の芳香環を有するものをいい、前記芳香環は置換基を有していてもよい。
【0099】
又、前記A層に用いるポリカーボネート樹脂、およびB層に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の内、複数に該当するものについては、前記A層に用いるポリカーボネート樹脂に含むものとする。さらに、本発明においては、芳香族ポリカーボネート樹脂を1種のみを単独、又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0100】
A層を構成する樹脂の加工温度とB層を構成する樹脂の加工温度とが離れており、B層を構成する樹脂の加工温度を低下させる必要がある場合、前記芳香族ポリカーボネート樹脂と溶融混練しても可視光透過性を維持するようなガラス転移温度が低い樹脂を混合してもよい。
【0101】
例えば、SK・ケミカル社の「スカイグリーンJ2003」、およびイーストマン・ケミカル社の「イースター・コポリマー6763」などを挙げることができる。通常これら成分はB層を構成する樹脂全体のうち、0重量%以上、30重量%以下の範囲で配合することが好ましい。
【0102】
なお、ここで言う可視光透過性とは、積層体が無色透明と目視観察されることである。
【0103】
B層に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂には、一般に用いられる各種の添加剤を本発明の本質を損なわない範囲で添加してもよく、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、難燃剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤および染顔料などが挙げられる。
【0104】
<本発明の積層体の製造方法>
A層とB層とを積層する本発明の積層体の製造方法は特に制限されるものではないが、より好適な方法は前述の通り両者を共押出しして製膜する方法である。具体的に説明すると、B層を構成する樹脂を供給する主押出機と、A層を構成する樹脂を供給する副押出機とを備える。
【0105】
主押出機の温度設定は通常220℃以上、300℃以下であることが好ましく、220℃以上、280℃以下であることがより好ましい。また、副押出機は通常220℃以上、280℃以下であることが好ましく、220℃以上、250℃以下であることがより好ましい。
【0106】
共押出しする方法としては、例えば、マルチマニホールド方式およびフィードブロック方式などの公知の方法を用いることができる。ダイ温度は通常220℃℃以上、300℃以下であることが好ましく、220℃以上、280℃以下であることがより好ましい。キャストロールは通常100℃以上、190℃以下であることが好ましく、100℃以上、170℃以下であることがより好ましい。ロール配置は縦型または横型のいずれでも構わない。
【0107】
本発明の積層体は、A層とB層を各々少なくとも一層以上積層してあれば、その構成は特に制限されるものではない。例えば、B層の両面にA層を積層し、A/B/A型2種3層の積層体としてもよい。この場合も両者を共押出しして製膜する方法で製造することが好ましい。該積層体は両面のA層厚さを揃えて中心対称構造にすると、環境反りや捻れのおそれを低減させることができるので好適である。
【0108】
<ハードコート処理とその方法>
本発明の積層体は、前記A層が従来の芳香族ポリカーボネート樹脂より表面硬度が高いため、透明建材や電気電子機器の小型表示窓など特段の表面硬度が要求されない用途の場合、そのまま各種用途に用いることができる。
【0109】
また、本発明の積層体は、頻繁に手が触れる携帯電話用ディスプレイカバーおよびタッチパネルなどの耐擦傷性が要求される用途の場合、少なくとも前面側A層の表面にハードコート処理を施すことができる。
【0110】
ハードコート処理の方法は一般に熱硬化又は紫外線硬化がある。熱硬化の場合はポリオルガノシロキサンや架橋型アクリルなどのハードコート剤が好適に用いられる。紫外線硬化の場合は1官能又は多官能アクリレートモノマー又はオリゴマーなどを複数組み合わせ、これに光重合開始剤を硬化触媒として添加したハードコート剤が好適に用いられる。
【0111】
このようなハードコート剤はアクリル樹脂用またはポリカーボネート樹脂用として市販されているものがあり、硬度および取扱性などを考慮して適宜選択する。さらに必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、帯電防止剤および防曇剤などを適宜添加してもよい。
【0112】
積層体が非対称積層構造だったり前面側のみハードコート処理を施したりした結果、積層体が反ったり捻れたりして平板状に製品内に組み込むことが困難になる場合、背面側にもハードコート処理をしてこれを抑制することができる。こうすることで、積層体を取扱う際に背面側に意図せず傷を付けるおそれが少なくなる利点も有る。背面側ハードコート処理は、前面側のものと同様に行うことが好ましい。
【0113】
ハードコート処理を行う方法は、ディッピング、かけ流し、スプレー、ロールコータおよびフローコータなどの他、押出製膜後にインラインでハードコート剤を基材上に連続で塗工して硬化させる方法でもよい。
【0114】
好ましくはインラインコート法であり、さらに好ましくは無溶媒系の紫外線硬化性ハードコート剤を用いたインラインコート法である。このように選択することで、工程の簡略化、溶媒を使用しないことによる環境負荷低減および溶媒揮発のためのエネルギーコスト低減などの効果が見込まれる。
【0115】
本発明の積層体におけるハードコート層の厚さは、下限としては硬化後で1μm以上と
することが好ましく、2μm以上とするのがより好ましい。このような下限値とすることで積層体の表面硬度を十分高めることができる。一方上限としては20μm以下とするのが好ましく、15μm以下とするのがより好ましい。このような上限値とすることで耐衝撃性および打ち抜き加工性などを低下させずに表面硬度を高めることができる。
【0116】
<反射防止層、防汚層>
また、本発明の積層体の前面側A層の表面には、本発明の本質を損なわない範囲で反射防止層または防汚層を設けることもできる。これらの層を設けることで、特に屋外で使用する画像表示装置のディスプレイカバーに本発明の積層体を用いた場合に、画像の視認性をより一層向上させることができる。
【0117】
反射防止層または防汚層は、各々の機能を持つ層をそれぞれ積層することによって設けてもよく、両方の機能を併せ持つ層を積層することによって設けても構わない。
【0118】
前記反射防止層は、反射防止機能を高める層であると同時に、耐磨耗性、帯電防止機能および撥水性の機能を高める層である。反射防止層は、従来公知の材料、例えば、無機物質(光学用フィラー)、バインダー樹脂、添加剤および溶剤などを配合させた液をコーティングして設けることができる。
【0119】
前記防汚層は防汚性を高める層であり、従来公知の材料、例えば、フッ素系シランカップリング剤などを用いることができる。
【0120】
前記反射防止層、または前記防汚層の積層方法は、前記ハードコート層と同様の方法でコーティングによって設けることができる。また、これに限定されるものではなく、あらかじめフィルム、シートなどの形状のものを、必要であれば公知の接着剤を用いて積層して設けてもよい。さらに熱可塑性樹脂であれば、A層およびB層とともに共押出しして設けることもできる。
【0121】
<印刷層>
本発明の積層体には、さらに印刷層を設けることができる。印刷層は、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷およびスクリーン印刷などの公知の印刷の方法で設けられる。
【0122】
印刷層の絵柄は、石目調、木目調、幾何学模様および抽象模様等任意である。部分印刷でも全面ベタ印刷でもよく、部分印刷層とベタ印刷層の両方が設けられていてもよい。
【0123】
また、印刷層は本発明の積層体におけるA層およびB層のいずれの表面に印刷して設けてもよい。印刷層は、積層体の最表面に前記のハードコート層、反射防止層または防汚層を設ける場合は、それらの層を設ける前の工程において印刷層を印刷して設けることが好ましい。さらに印刷層は、前記の反射防止層または防汚層として設けることもできる。
【0124】
印刷層に用いられる印刷用インクに含有される顔料や溶剤は特に限定されること無く、一般的に利用されるものを適用することができる。特に、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含むものは、印刷層を設けた場合においても、本発明の積層体を層間剥離等の支障なく作製することが可能となることから好適である。
【0125】
本発明の積層体の総厚さは、0.15mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、また3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。かかる範囲にあることで、現行使用されている芳香族ポリカーボネート樹脂シートの代替として容易に適用できる。
【0126】
本発明の積層体は表面硬度に優れた積層体であって、その指標である鉛筆硬度は、F以上であることが好ましく、H以上であることがさらに好ましい。鉛筆硬度がかかる範囲にあることで、耐擦傷性に優れ、ディスプレイカバーなどの用途に好適な積層体を提供することができる。
【0127】
例えば、前記A層の厚み、前記機能付与層の厚みまたは前記ポリカーボネート樹脂の組成を、本明細書に記載の好ましい範囲で調整することによって、鉛筆硬度をかかる範囲とすることができる。
【0128】
本発明の積層体は耐衝撃性に優れた積層体であって、その指標である破壊エネルギー(kgf・mm)は、200kgf・mm以上であることが好ましく、500kgf・mm以上であることがより好ましく、800kgf・mm以上であることがさらに好ましい。破壊エネルギーがかかる範囲にあることによって、例えばディスプレイカバーなどの製造時における打ち抜き加工性に優れた積層体を提供することができる。
【0129】
打ち抜き加工性は、後述するように打ち抜き試験片の加工断面が荒れたり、クラックが入ったりしていないかなどの点を目視により定性的に評価することができる。
【0130】
例えば、前記A層の厚み、前記ポリカーボネート樹脂の組成または本発明の積層体の総厚みを、本明細書に記載の好ましい範囲で調整することによって、破壊エネルギーをかかる範囲とすることができる。
【0131】
また、本発明の積層体は前記A層を構成する樹脂組成物への少量の紫外線吸収剤の添加でも耐黄変劣化性に優れた積層体であって、その指標である色差は、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。色差がかかる範囲にあることによって、全光線透過率の低下やヘーズの上昇、さらには外観の悪化を抑制した積層体を提供することができる。
【0132】
例えば、前記A層を構成する樹脂組成物100重量%に対し、好ましくは1.0重量%以上であって最小限の紫外線吸収剤を添加したり、前記A層の厚みを本明細書に記載の好ましい範囲で調整したりすることによって、色差をかかる範囲とすることができる。
【0133】
<本発明の積層体の用途>
本発明の積層体は、前述の製造方法によってフィルム、シートおよびプレートなどの形状に成形される。成形された本発明の積層体は、透明性、表面硬度、耐衝撃性、打ち抜き加工性および耐黄変劣化性に優れる。
【0134】
そのため、本発明の積層体の用途は特に制限されるものではないが、例えば、建材、内装部品、ディスプレイカバーなどの透明シート、樹脂被覆金属板用シート、成形(真空・圧空成形、熱プレス成形など)用シート、着色プレート、透明プレート、シュリンクフィルム、シュリンクラベル、シュリンクチューブ、自動車内装材、家電製品部材およびOA機器部材などに使用できる。
【0135】
本発明の積層体は、成形用シートとして用いて種々の二次加工を施すことができ、加熱成形することによって熱成形体とすることもできる。熱成形の方法としては特に限定されず、例えば、ブリスター成形、真空成形および圧空成形などの公知の成形方法を利用することができる。
【0136】
一般に熱成形用材料として使用されている汎用の芳香族ポリカーボネート樹脂の場合には、表面硬度が低く傷が入りやすいという点や、ガラス転移温度が高いために成形が容易
でないという問題点がある。また、印刷を設ける熱成形用途の場合には、耐溶剤性の悪さに起因する印刷インキによるクラックの発生が生じるなどの問題点がある。
【0137】
一方、本発明のポリカーボネート樹脂を用いた積層体は、芳香族ポリカーボネート樹脂よりもガラス転移温度を低くすることができるため熱成形が容易であり、耐熱性と二次加工性とを兼ね備えたシートを得ることができる。
【0138】
また、本発明の積層体は、構造内に通常芳香族環を有さないか、有している場合でもその存在比率が芳香族ポリカーボネート樹脂より低い。そのため、芳香族環による紫外線吸収とそれに起因する樹脂劣化が生じにくいため耐候性に優れており、表面硬度や耐溶剤性の向上も期待できる。
【0139】
したがって、本発明の積層体は、特に、屋外で使用する場合に劣化を抑えることができ、例えば紫外線硬化型のハードコート層などの紫外線により硬化させる材料を表面に形成する際に紫外線の影響を低く抑えることができる。また、印刷を施し使用したりする熱成形用途に好適に使用することができる。
【0140】
また、本発明の積層体は熱成形が容易であるため深絞りが可能であり、例えば深絞り高さが必要とされる形状または特殊な形状の熱成形用途にも好適に使用することができる。
【0141】
前記の熱成形体の用途も特に限定されないが、例えば、印刷適性、耐候性および耐熱性を必要とする用途としては、自動販売機内で使用される模擬缶(いわゆるダミー缶)およびバックライト付き広告表示板などが挙げられる。また、深絞り適性を必要とする用途としては、例えば、卵パックなどの食品用包装材および医薬品用のプレススルーパック(PTP)などが挙げられる。
【0142】
また、前記の熱成形体にさらに溶融樹脂を射出成形して裏打ち層を形成することにより、意匠性に優れたインモールド成形体を製造することもできる。この場合、熱成形体の一方の面に印刷層を設け、当該印刷面側に射出成形することによって印刷層を保護することができる。
【0143】
なお、一旦熱成形によって二次加工した後に溶融樹脂を射出成形する場合だけでなく、熱成形と射出成形とを金型内で同時に行ってもよく、シート状の積層体を用いて一段階でインモールド成形体を得ることもできる。当該インモールド成形体の用途としては、例えば、自動車内装材、家電製品部材およびOA機器部材などが挙げられる。
【実施例】
【0144】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0145】
実施例で使用した樹脂は以下のとおりである。
(A−1およびA−2)本発明におけるA層を構成する樹脂として、イソソルビドに由来する構造単位と1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位のモル%が表1記載の通りであるポリカーボネート樹脂。(A−1のガラス転移温度:120℃、A−1の還元粘度:0.56dl/g、A−2のガラス転移温度:101℃、A−2の還元粘度:0.57dl/g)
(B−1)本発明におけるB層を構成する樹脂として、芳香族ポリカーボネート樹脂である、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「ユーピロンS3000」。(ガラス転移温度=150℃、還元粘度 0.49dl/g、粘度平均分子量=20,000)
【0146】
一方比較例においては、本発明におけるA層を構成する樹脂として、A−1、A−2の代わりに以下の樹脂を使用した。
(C−1)アクリル樹脂である、三菱レイヨン社製、「アクリペットVH5」。
【0147】
【表1】
【0148】
実施例における各評価および測定は以下の方法で行った。その結果を表2〜表4に示す。
1)表面硬度(鉛筆硬度)
JIS K5400に準拠して、雰囲気温度23度の恒温室内で80mm×60mmに切り出した積層体の表面に対して、鉛筆を45度の角度を保ちつつ1kgの荷重をかけた状態で線を引き、表面状態を目視にて評価した。鉛筆硬度がF以上に硬いものを「○」(合格)とした。
【0149】
2)耐衝撃性(破壊エネルギー)
ハイドロショット高速衝撃試験器(島津製作所社製「HTM−1型」)を用いて、縦方向100mm×横方向100mmの大きさに切り出したシートを試料とし、クランプで固定し、温度23℃でシート中央に直径が1/2インチの撃芯を落下速度3m/秒で落として衝撃を与え、試料が破壊するときの破壊エネルギー(kgf・mm)を測定した。
【0150】
破壊エネルギーが200kgf・mm以上のものを合格とした。また破断面の形状を目視観察し、延性的に変形しているものを「○」、やや脆性的に変形しているが著しい破片の飛散はないものを「△」、脆性破壊し破片が多数飛散しているものを「×」として評価した。
【0151】
3)打ち抜き加工性
シートからJIS K6251に準拠してダンベル1号試験片を打ち抜き、試験片の加工断面が荒れたりクラックが入ったりする不具合が、10回試行中8回以上あるものを「×」、3回以上7回以下前記不具合のあるものを「△」、2回以下前記不具合があるか又は1回も不具合のなかったものを「○」として評価した。
【0152】
4)耐黄変劣化性(色差)
JIS K6744で引用するJIS B7729に規定されるエリクセン試験装置を用いて、サンシャインウェザーメータ促進耐侯性試験機(スガ試験機社製)を用いて促進耐侯性試験を実施した。条件はブラックパネル温度63℃、120分サイクル(照射102分、スプレー18分)とし、曝露600時間後の試料と曝露前の試料との色差を色彩色差計CR−200(ミノルタ社製)で測定し、色差が1.0以下のものを「○」、1.0を超えるものを「×」として評価した。
【0153】
(積層体の製造)
主押出機から設定温度260℃でB層を構成する樹脂(B−1)を供給し、副押出機から設定温度230℃でA層を構成する樹脂(A−1またはA−2またはC−1)を供給し
、フィードブロックを使用してダイヘッド温度260℃、キャストロール温度110℃で積層体を共押出し製膜した。この時の層構成と層厚さを表2〜表4に示す。
【0154】
(ハードコート層)
積層体のハードコート層を設ける面に、アクリル系ハードコート(大日精化社製、「セイカビームEXF001W」)を硬化後厚さで5μmになるようコートし、紫外線光を照射して硬化させ、ハードコート層(D−1)とした。
【0155】
(反射防止層、防汚層)
積層体の反射防止層及び防汚層を設ける面に、反射防止性及び防汚性の加工がなされたトリアセチルセルロース(TAC)未延伸フィルムの片面にアクリル系接着剤層を設けたフィルム(日本油脂社製、「リアルック#8701UV−S」)を、該接着剤層側がくるよう積層し、反射防止層及び防汚層(D−2)とした。
【0156】
表2及び表3記載の層構成及び層厚さの積層体を作製し、鉛筆硬度、耐衝撃性および打ち抜き加工性の試験評価を行った。
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
表2の実施例に示すとおり、本発明の積層体はディスプレイカバーなどで要求される表面硬度、耐衝撃性、打ち抜き加工性の各種物性をバランスよく達成することができ、しかも薄肉化の要請にも応えることができた。一方、表3の比較例においては、実施例に比べて、表面硬度、耐衝撃性および打ち抜き加工性のいずれかが劣っていた。
【0160】
次に、紫外線吸収剤としてBASF社製の商品名「チヌビン1577FF」を表層用樹脂100重量%に対して表4記載の比率で事前に溶融混練したものを表層用樹脂とし、(B−1)の芳香族ポリカーボネート樹脂を基材用樹脂とし、表層80μm、基材層1.8mmの厚さになるよう共押出して成形した。表層側が照射面になるよう耐候性試験を実施した。その結果を表4に示した。
【0161】
【表4】
【0162】
表4に示すとおり、実施例のようなA層を表層に用いた積層体は、少ない紫外線吸収剤の添加量でも優れた耐黄変劣化性を示し、透明建材などの長期間屋外で使用する用途にも好適に用いることができることがわかった。これに対し、比較例のようなB層を表層に用いた積層体では、実施例と同量の紫外線吸収剤では添加量が不足しているため、色差が大きくなる傾向が見られた。
【0163】
以上の結果より、本発明の積層体は、表面硬度、耐衝撃性、打ち抜き加工性および耐黄変劣化性に優れた積層体であることがわかった。
【0164】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。