(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧供給装置が、前記交流電源系の交流電圧を直流電圧に変換する力行用コンバータ、及び前記回生直流電圧を交流電圧に変換する回生用コンバータを備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動システム。
前記減速レート算出装置が、停止動作の開始時における前記モータの回転数及び前記停止時間を参照して前記可変減速レート及び前記一定減速レートを設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ駆動システム。
前記減速レート算出装置が、前記可変減速レートに従う回転数と時間の関係を表す曲線が前記一定減速レートに従う回転数と時間の関係を表す直線に接するように、前記回生容量の前記一定値を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモータ駆動システム。
停止動作中にモータによって生成される回生交流電圧を回生直流電圧に変換するモータ駆動装置、及び前記回生直流電圧を交流電源系に返還する交流電圧に変換する電圧供給装置を有するモータ駆動システムによるモータ駆動方法であって、
前記モータの回転数の減少率に関して、前記回生直流電圧から交流電圧への変換に必要な前記電圧供給装置の回生容量が一定値であるように設定された可変減速レート、及び、所定の停止時間で前記モータが停止するように一定の減少率が設定され、且つ、前記一定の減少率が前記モータ及び前記モータ駆動装置が電気的或いは機械的に許容できる最大の減少率である一定減速レートを、それぞれ算出するステップと、
前記モータの停止動作の開始時から前記可変減速レートに従って前記モータを減速させるステップと、
前記モータの回転数が前記可変減速レートと前記一定減速レートとで一致する時刻後に、前記可変減速レートから切り替えて前記一定減速レートに従って前記モータを減速させるステップと
を含むことを特徴とするモータ駆動方法。
停止動作の開始時における前記モータの回転数及び前記停止時間を参照して前記可変減速レート及び前記一定減速レートを設定することを特徴とする請求項5に記載のモータ駆動方法。
前記可変減速レートに従う回転数と時間の関係を表す曲線が前記一定減速レートに従う回転数と時間の関係を表す直線に接するように、前記回生容量の前記一定値を設定することを特徴とする請求項5又は6に記載のモータ駆動方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータ駆動システムが使用される中で、非常時の停止時間の短縮や非常停止から復旧までに要する時間の短縮などと同時に、設備導入コストの削減が課題である。例えば、減速時にモータから交流電源系に返還される回生エネルギーを回収するために使用されるコンバータの容量(以下において「回生容量という」。)を低減することが必要である。しかしながら、従来は、回生エネルギーを考慮して回生容量をできるだけ小さくするという目的のために非常停止時のモータ制御は行われていない。このため、モータの非常停止時に必要な回生容量が大きく、設備導入コストの上昇や設備の設置面積の増加という問題があった。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、モータの停止動作における回生容量の大きさを抑制できるモータ駆動システム及びモータ駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、モータを駆動するモータ駆動システムであって、(イ)交流電源系の交流電圧を直流電圧に変換し、且つ、モータ側から入力された回生直流電圧を交流電源系に返還する交流電圧に変換する電圧供給装置と、(ロ)電圧供給装置により変換された直流電圧を駆動交流電圧に変換してその駆動交流電圧によってモータを駆動し、且つ、停止動作中にモータによって生成される回生交流電圧を回生直流電圧に変換して電圧供給装置に出力するモータ駆動装置と、(ハ)モータの回転数の減少率に関して、回生直流電圧から交流電圧への変換に必要な電圧供給装置の回生容量が一定値であるように設定された可変減速レート、及び所定の停止時間でモータが停止するように一定の減少率が設定され
、且つ、一定の減少率がモータ及びモータ駆動装置が電気的或いは機械的に許容できる最大の減少率である一定減速レートを、それぞれ算出する減速レート算出装置と、(ニ)モータの停止動作の開始時からモータの回転数が可変減速レートと一定減速レートとで一致する時刻まで可変減速レートに従ってモータを減速させた後、一定減速レートに従ってモータを減速させるようにモータ駆動装置を制御する制御装置とを備えるモータ駆動システムが提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、停止動作中にモータによって生成される回生交流電圧を回生直流電圧に変換するモータ駆動装置、及び回生直流電圧を交流電源系に返還する交流電圧に変換する電圧供給装置を有するモータ駆動システムによるモータ駆動方法であって、(イ)モータの回転数の減少率に関して、回生直流電圧から交流電圧への変換に必要な電圧供給装置の回生容量が一定値であるように設定された可変減速レート、及び、所定の停止時間でモータが停止するように一定の減少率が設定され
、且つ、一定の減少率がモータ及びモータ駆動装置が電気的或いは機械的に許容できる最大の減少率である一定減速レートを、それぞれ算出するステップと、(ロ)モータの停止動作の開始時から可変減速レートに従ってモータを減速させるステップと、(ハ)モータの回転数が可変減速レートと一定減速レートとで一致する時刻後に、可変減速レートから切り替えて一定減速レートに従ってモータを減速させるステップとを含むモータ駆動方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータの停止動作における回生容量の大きさを抑制できるモータ駆動システム及びモータ駆動方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
本発明の実施形態に係るモータ駆動システム1は、
図1に示すように、電圧供給装置10、モータ駆動装置20、減速レート算出装置30及び制御装置40を備え、モータ100を駆動する。
【0013】
電圧供給装置10は、交流電源系200の交流電圧を直流電圧に変換し、且つ、モータ100側から入力された回生直流電圧を交流電源系に返還する交流電圧に変換する。モータ駆動装置20は、電圧供給装置10により変換された直流電圧を駆動交流電圧に変換してその駆動交流電圧によってモータ100を駆動し、且つ、停止動作中にモータ100によって生成される回生交流電圧を回生直流電圧に変換して電圧供給装置10に出力する。減速レート算出装置30は、モータ100の回転数の減少率に関して、回生直流電圧から交流電圧への変換に必要な電圧供給装置10の回生容量が一定値であるように設定された可変減速レート、及び所定の停止時間でモータ100が停止するように一定の減少率が設定された一定減速レートを、それぞれ算出する。制御装置40は、モータ100の停止動作の開始時からモータ100の回転数が可変減速レートと一定減速レートとで一致する時刻まで可変減速レートに従ってモータ100を減速させた後、一定減速レートに従ってモータ100を減速させるようにモータ駆動装置20を制御する。
【0014】
「可変減速レート」は、モータ100において生成される回生エネルギーを回収して交流電源系200に返還する場合において電圧供給装置10に必要な回生容量が一定値であるように、モータ100の回転数の減少率が調整された減速レートである。このため、可変減速レートにおけるモータ100の回転数の減少率は一定ではなく、モータ駆動装置20から入力された回生直流電圧を交流電圧に変換する際の回生容量が一定であるように回転数の減少率が変化する。回生容量はモータ100の回転数の二乗の変化量に比例するため、P=A×d(Nt
2)/dtのように回生容量Pはモータ100の回転数Ntの関数として表される(Aは定数)。減速レート算出装置30は、停止動作の開始時におけるモータ100の回転数を参照し、可変減速レートを設定する。
【0015】
一方、「一定減速レート」は、モータ100の回転数の減少率が一定である減速レートである。一定減速レートは、非常時に生産設備において要求される非常停止時間である停止時間T
STOPでモータ100が停止するように設定された減速レートであり、常に一定の減少率でモータ100の回転数が減少するように設定される。一定減速レートにおける回転数の減少率は、例えば、モータ駆動装置20やモータ100が電気的或いは機械的に許容できる最大の減少率である。停止時間T
STOPは、生産設備の操作者の要求に応じて予め設定される。
【0016】
図1に示す電圧供給装置10は、力行用コンバータ11と回生用コンバータ12とを有する。力行用コンバータ11はモータ100を駆動するためのコンバータであり、交流電源系200の交流電圧を直流電圧に変換し、その直流電圧をモータ駆動装置20に出力する。回生用コンバータ12は回生エネルギーを回収するためのコンバータであり、モータ駆動装置20から入力される回生直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を交流電源系200に返還する。可変減速レートの設定において目標となる回生容量の一定値は、回生用コンバータ12の回生容量の大きさに応じて決められる。或いは、回生容量値を設定した後に、その値に応じて回生用コンバータ12の回生容量の大きさを決定する場合もある。
【0017】
なお、
図1では、モータ駆動システム1が駆動するモータ100が複数台ある場合を示しているが、モータ駆動システム1が駆動するモータ100が1台であってもよい。モータ駆動装置20は、通常はモータ100毎に1台ずつ配置される。また、複数のモータ100は同一仕様のモータでなくてもよく、例えば生産ラインの各場所においてそれぞれ最適なトルクを発生させるモータが使用され、モータのサイズは互いに異なっていてもよい。
【0018】
モータ駆動装置20は、電圧供給装置10により変換された直流電圧を、任意の周波数及び電圧値の駆動交流電圧に変換する。そして、モータ駆動装置20により、所定の周波数や電圧値の駆動交流電圧がモータ100に供給される。駆動交流電圧の周波数や電圧値は、モータ100のそれぞれの目的や用途に応じて、必要な回転速度やトルクなどが得られるように設定される。
【0019】
モータ100のそれぞれは、モータ100の回転数を検出する回転数検出機構110を有する。回転数検出機構110により、稼動中及び停止動作中のモータ100の回転数がリアルタイムで検出される。検出されたモータ100の回転数は、減速レート算出装置30及び制御装置40に通知される。
【0020】
非常停止信号の入力などによってモータ駆動システム1によるモータ100の停止動作を開始する場合、減速レート算出装置30が、可変減速レート及び一定減速レートを算出する。具体的には、減速レート算出装置30は、回転数検出機構110により検出された、停止動作の開始時点におけるモータ100の回転数を参照する。そして、停止動作開始時点でのモータ100の回転数及び停止時間T
STOPに基づいて可変減速レート及び一定減速レートが算出される。算出された可変減速レート及び一定減速レートは制御装置40に通知される。
【0021】
制御装置40は、可変減速レート及び一定減速レートに従ってモータ100の回転数を減少させるように、モータ駆動装置20を制御する。詳細は後述するが、制御装置40はリアルタイムで検出されるモータ100の回転数を参照して、停止動作の途中で可変減速レートから一定減速レートに減速レートを切り替える。つまり、制御装置40は、停止動作の最初は可変減速レートに従ってモータ100を減速させ、停止動作の途中から、可変減速レートに代えて一定減速レートに従ってモータ100を減速させるように、モータ駆動装置20を制御する。
【0022】
モータ100の停止動作が開始されると、モータ100は回生ブレーキをかける際の交流発電機として作用する。この結果モータ100で発生する回生エネルギーは、以下のようにして、モータ駆動システム1を介して交流電源系200に返還される。即ち、停止動作中のモータ100で生成される回生交流電圧が、モータ駆動装置20によって回生直流電圧に変換される。モータ駆動装置20は、回生直流電圧を電圧供給装置10に出力する。電圧供給装置10は、入力された回生直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を交流電源系200に返還する。
【0023】
図2及び
図3を参照して、モータ駆動システム1によるモータ100の非常停止動作の例を以下に説明する。
【0024】
先ず、時刻t0において、非常停止命令が入力されるなどして、モータ駆動システム1がモータ100の停止動作を開始する。即ち、減速レート算出装置30が、時刻t0におけるモータ100の回転数及び停止時間T
STOPに応じて可変減速レート及び一定減速レートを算出する。可変減速レート及び一定減速レートは、減速レート算出装置30から制御装置40に通知される。そして、可変減速レートに従ってモータ100の回転数が減少するように、制御装置40がモータ駆動装置20を制御する。
【0025】
可変減速レートは、回生容量が予め設定された一定値を維持するように設定され、停止時間T
STOPのみによっては制限されない。可変減速レートに従うモータ100の回転数Raは、
図2に実線で示すように最初はなだらかに減少し、その後急激に減少する。回転数Raである場合の回生容量は、
図3の特性Caに示すように一定値C
F1を維持する
一方、
図2に破線で示すように、一定減速レートに従うモータ100の回転数Rbは、時刻t0から停止時間T
STOP後の時刻tsにおいてモータ100の回転数が零になる直線で表される。一定減速レートの設定においては、回転数の減少率が一定で、且つ時刻tsにおいてモータ100の回転数が零になることが条件である。一定減速レートに従ってモータ100の回転数を減少させる場合には、
図3の特性Cbに示すように、回生容量は直線的に減少する。一定減速レートに従ってモータ100を制御すると、停止開始時に回生容量は最も大きい。
【0026】
時刻t0から始まる、可変減速レートに従ってモータ100の回転数が減少する期間(以下において、「可変減速期間」という。)Taの後、時刻tsでモータ100が停止するために、時刻t1において制御装置40が減速レートを可変減速レートから一定減速レートに切り替える。時刻t1から時刻tsまでの、一定減速レートに従ってモータ100の回転数が減少する期間(以下において、「一定減速期間」という。)Tbの後、時刻tsにおいてモータ100が停止する。
【0027】
減速レートを可変減速レートから一定減速レートに切り替えるタイミングは、以下のように決定される。時刻t0から時刻tsまでのモータ100の回転数を時間に対する関数として考えると、一定減速レートは時刻tsにおいて回転数が零となる直線である。一定減速レートに従う回転数Rbと時間との関係を表すこの直線と、可変減速レートに従う回転数Raと時間との関係を表す曲線とが交差する
図2の時刻t1において、減速レートが可変減速レートから一定減速レートに切り替えられる。つまり、可変減速レートに従うモータ100の回転数と一定減速レートに従うモータ100の回転数とが一致する時刻t1において、減速レートが切り替えられる。
【0028】
図3に示すように、減速レートが一定減速レートに切り替わる時刻t1において、回生容量は最大値C
Fmaxになる。回生用コンバータ12の回生容量の大きさは、最大値C
Fmax以上であることが必要である。
【0029】
上記のように、
図1に示したモータ駆動システム1では、非常停止開始から停止時間T
STOP後にモータ100が停止するまでの減速期間において、回生容量が一定である可変減速レートに従ってモータ100の回転数を減少させる可変減速期間Taが最初に設定される。つまり、停止動作においてモータ100の回転数が最大である停止動作開始時点では、回生容量が一定である可変減速レートに従ってモータ100の回転数が減少する。これにより、停止動作開始時点の回生容量を小さくすることができる。
【0030】
そして、可変減速レートから一定減速レートに切り替える時点におけるモータ100の回転数が停止動作開始時点よりも下がることにより、停止動作全体における回生容量の最大値を抑制することができる。更に、停止動作の途中から一定減速レートに従ってモータ100の回転数を減少させる一定減速期間Tbが設定されることにより、停止動作の開始から所望の停止時間T
STOP後にモータ100を停止させることができる。
【0031】
また、設定された停止時間T
STOPと停止動作開始時のモータ100の回転数とを用いて、
図4に示すように、可変減速レートに従う回転数Raと時間との関係を表す曲線が、一定減速レートに従う回転数Rbと時間との関係を表す直線と接するように、回生容量の一定値を設定してもよい。そして、回転数Raを表す曲線が回転数Rbを表す直線と接する時刻t2において、減速レートが可変減速レートから一定減速レートに切り替えられる。時刻t2は、可変減速レートにおける回転数及び回転数の減少率が、一定減速レートにおける回転数及び回転数の減少率と一致する時刻である。
【0032】
図4に示すようにモータ100の回転数を制御した場合、
図5に示すように、可変減速期間Taにおける回生容量の一定値C
F2が、一定減速レートに切り替える時点における回生容量である。即ち、回生容量の一定値C
F2が、一定減速期間Tbも含めた全減速期間を通して最大の回生容量である。したがって、モータ駆動システム1によるモータ100の非常停止動作における回生容量の最大値を最も小さくすることができる。
【0033】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係るモータ駆動システム1によれば、モータ100の非常停止時における回生容量の大きさを抑制できる。その結果、回生用コンバータ12の回生容量を低減できるので、設備導入コストの上昇や設備の設置面積の増加を抑制できる。
【0034】
なお、モータ100が複数台ある場合に、減速レートはモータ駆動装置20毎に設定できる。モータ駆動装置20の各減速レートは、モータ100の各停止時間T
STOPが共通になるように設定されることが好ましい。
【0035】
各モータ100について停止時間T
STOPを共通とすることにより、複数のモータ100の協調停止が可能である。つまり、各モータ100のそれぞれが個別に停止動作をすることなく、互いに協調を取って停止させることができる。その結果、例えば圧延ラインにおける板破断や絞込みなどの処理対象の板の破損、及び、製造設備の各機器の損害といった2次的な災害を防止することができる。
【0036】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0037】
既に述べた実施形態の説明においては、電圧供給装置10が力行用コンバータ11と回生用コンバータ12の2種類のコンバータを有する場合を示した。しかし、例えば
図6に示すように、電圧供給装置10が力行用コンバータと回生用コンバータの機能を兼ねた一つのコンバータ13のみを有する場合にも、本発明は適用可能である。
【0038】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。