【課題を解決するための手段】
【0016】
(
発明の概要)
[17]以下に記載する本発明の説明のための非限定的な態様は、上の不都合な点および上に記載していないその他の不都合な点を克服するものである。その上本発明は上に記載した不都合な点を克服する必要がなく、以下に記載する本発明の説明のための非限定的な態様は、上に記載したいずれの問題点も克服していなくてよい。
【0017】
[18]本発明の1つの側面は、選択された細胞集団由来の細胞を含有すると推測される細胞集団または組織を、細胞結合物質メイタンシノイド複合体と接触させることを包含する、前記の選択された細胞集団を標的としてメイタンシノイドを向かわせるための方法であり、その場合1つまたはそれより多くのメイタンシノイドが非開裂リンカーを介して細胞結合物質に連結されている。
【0018】
[19]本発明のもう1つの側面は、標的に向かう物質が細胞結合物質である標的療法により治療することのできる、腫瘍、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病、ウイルス感染、寄生体感染、およびその他の疾患の治療のための方法であって、当該方法は1つまたはそれより多くのメイタンシノイドが細胞結合物質に連結されている細胞結合物質メイタンシノイド複合体、または医薬的に受容可能な前記複合体の製剤もしくは溶媒和物の有効量を、治療を必要とする被験者に投与することを包含する、前記方法である。
【0019】
[20]本発明のもう1つの側面は、1つまたはそれより多くのメイタンシノイドが非開裂リンカーを介して細胞結合物質に連結されている、細胞結合物質メイタンシノイド複合体である。
【0020】
[21]本発明のもう1つの側面は、上記記載の複合体を包含する組成物である。
[22]本発明のもう1つの側面は、上記記載の複合体を製造する方法である。
[23]本発明のもう1つの側面は、新規メイタンシノイドエステルである。
【0021】
(
発明の例としての態様の詳細な説明)
[54]当該技術分野は、現存する薬剤をそれらの細胞毒性の効能を低下させずに修飾することが極めて困難であることを露呈している。しかし米国特許第6,441,163 B1号、6,333,410 B1号、5,416,064号および5,208,020号は、開裂可能なリンカー、特にジスルフィド基を含有する開裂可能なリンカーを介して、メイタンシノイドを適当な細胞結合物質に連結することにより、効能ある細胞毒性物質を生成することができることを立証している。細胞結合物質メイタンシノイド複合体は、望ましくない細胞のみ標的とする形で適用して、それにより標的ではない健康な細胞に損傷を与えることによる副作用を避けるための、メイタンシノイドの十分な細胞毒性の作用を可能にする。
【0022】
[55]本発明者らは非開裂リンカーを介して細胞結合物質に連結したメイタンシノイドが、いくつかの重要な点において開裂可能なリンカーを介して連結したメイタンシノイドより優れていることを、意外にも発見した。特に開裂可能なリンカーを含有する複合体と比較した場合、非開裂リンカーを用いた複合体は、in vitro およびin vivoの双方において等しい抗腫瘍活性を示すが、血漿クリアランスの速度および毒性においては著明な低減が立証されている。
【0023】
[56]このように本発明は、副作用を最小限に抑えながら、標的とする細胞、特に破壊すべき細胞、例えば腫瘍細胞(特に固形腫瘍細胞)、ウイルスに感染した細胞、微生物に感染した細胞、寄生体に感染した細胞、自己免疫細胞(自己抗体を産生する細胞)、活性化細胞(移植片拒絶または移植片対宿主病に伴うもの)、または他のあらゆるタイプの罹患した細胞または異常な細胞に関する、改善された方法を提供する。
【0024】
[57]本発明の方法において使用する複合体は、非開裂リンカーを介して細胞結合物質に連結した1つまたはそれより多くのメイタンシノイドを有する。複合体を製造する1つの方法において、細胞結合物質 例えば抗体を、細胞結合物質 例えばSMCCで初めに修飾する。第2のステップでチオール基を有する反応性のメイタンシノイド 例えばDM1を、修飾した抗体と反応させて、抗体−メイタンシノイド複合体を生成する。あるいはメイタンシノイドを架橋試薬で修飾した後、細胞結合物質と反応させることもできる。例えば米国特許第6,441,163 B1号を参照のこと。
【0025】
(
適切なメイタンシノイド)
[58]本発明における使用に適するメイタンシノイドは当該技術分野で周知であり、公知の方法に従って天然素材から単離する、遺伝子工学技術を用いて産生する(Yu et al., 99 PNAS 7968-7973 (2002)を参照のこと)、または公知の方法に従って合成により調製す
ることができる。
【0026】
[59]適切なメイタンシノイドの例は、メイタンシノールおよびメイタンシノール類似体を含む。適切なメイタンシノール類似体の例は、修飾された芳香環を有するもの、および他の位置に修飾を有するものを含む。
【0027】
[60]修飾された芳香環を有する適切なメイタンシノール類似体の具体的な例は以下を含む:
(1)C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサマイトシンP2のLAH還元により調製);
(2)C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ
(米国特許第4,361,650号および4,307,016号)(ストレプトマイセス(Streptomyces)もしくはアクチノマイセス(Actinomyces)を用いての脱メチル化またはL
AHを用いての脱クロロ化により調製);ならびに
(3)C−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロ
ロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いてのアシル化により調製)。
【0028】
[61]他の位置の修飾を有する適切なメイタンシノール類似体の具体的な例は以下を含む:
(1)C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(メイタンシノールのH
2SまたはP
2S
5との反応により調製);
(2)C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH
2OR)(米国特許第4,33
1,598号);
(3)C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH
2OHまたはCH
2OAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカディア(Nocardia)より調製);
(4)C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ス
トレプトマイセスによるメイタンシノールの変換により調製);
(5)C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号および4,315,929号)(トレウィアヌドルフローラ(Trewia nudlflora)より単離);
(6)C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,663号および4,322,348号)(ストレプトマイセスによるメイタンシノールの脱メチル化により調製);ならびに
(7)4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(メイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製)。
【0029】
[62]連結のタイプに依存して、メイタンシノールの多くの位置が結合位置として有用であることが知られている。例えばエステル結合を形成するためには、ヒドロキシル基を有するC−3の位置、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14の位置、ヒドロキシル基で修飾されたC−15の位置、およびヒドロキシル基を有するC−20の位置が、すべて適する。しかしC−3の位置が好ましく、メイタンシノールのC−3の位置が特に好ましい。
【0030】
[63]本発明に従って、好ましいメイタンシノイドはフリーのチオール基を有する。フリーのチオール基を包含する特に好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノールのC−3エステルおよびその類似体である、メイタンシノールのN−メチル−アラニンを含有するエステル、N−メチル−システインを含有するエステルを含む。好ましいエステルは、メイタンシノールのN−メチル−アラニン−を含有するエステル、およびN−メチル−システイン−を含有するエステルを含む。フリーのチオール基を有するメイタンシノールのエステルの合成は、以前に、例えば米国特許第5,208,020号、Chari et al., 52 Cancer Res., 127-131 (1992)、およびLiu et al., 93 Proc Natl. Acad. Sci., 8618-8623 (1996)に記載されている。さらに米国特許第6,333,410、B1号(その全開示を本明細書により参照として援用する)は、細胞結合物質への連結に適するチオールを含有するメイタンシノイドの調製および精製に関する改善された方法を提供している。
【0031】
[64]以下に例示する本発明の複合体の多くは、化学式ではN
2’−デアセチル−N
2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシンと表す、チオールを含有するメイタンシノイドDM1を利用する。DM1は以下の構造式:
【0032】
【化1】
【0033】
で表される。
[65]チオールを含有するメイタンシノイドDM1の合成は以前に記載されている(米国特許第5,208,020号)。
【0034】
[66]米国特許出願10/849,136(その全開示を本明細書により参照として援用
する)は、チオール官能基(funationality)を持つα−炭素上に1つまたは2つのアルキ
ル置換基を持つ、立体障害のチオールを含有するメイタンシノイドについて記載している。加えてスルフヒドリル基を持つメイタンシノイドのアシル化されたアミノ酸側鎖のアシル基は、アミドのカルボニル基とイオウ原子との間に少なくとも3つの炭素原子の直鎖を保有する。これらの新規メイタンシノイドは、本発明における使用に適する。
【0035】
[67]立体障害のチオール基を有するメイタンシノイドの合成は、米国特許出願10/8
49,136号、特に同文献の
図3を参照として記載することができる。
[68]本発明の1つの側面において、メイタンシノイドは立体障害のチオール基を含有し、式(II’−L)、(II’−D)、または(II’−D,L):
【0036】
【化2】
【0037】
により表される。式(II’)において、
Y
1’は
【0038】
【化3】
【0039】
を表す。
A、B、およびDは各々独立して、3から10の炭素原子を有する環式アルキルもしくは環式アルケニル、シンプルなアリールもしくは置換されたアリール、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルのラジカルである。
【0040】
R
1からR
12は各々独立して、1から10の炭素原子を有する直鎖のアルキルもしくはアルケニル、3から10の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルのラジカルであり、そして加えてR
2からR
12はHであることができる。
【0041】
l、m、n、o、p、q、r、s、t、およびuは各々独立して、0または1から5の整数である、ただしl、m、n、o、p、q、r、s、t、およびuの少なくとも2つが双方ともゼロではない。
【0042】
MayはC−3ヒドロキシル、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシルまたはC−20デスメチルに側鎖を持つメイタンシノイドを表す。
[69]本発明に有用なもう1つのメイタンシノイドは、式(II−L)、(II−D)、または(II−D,L):
【0043】
【化4】
【0044】
により表される。式(II)において、
Y
1は
【0045】
【化5】
【0046】
を表す。
R
1からR
8は各々独立して、1から10の炭素原子を有する直鎖のアルキルまたはアルケニル、3から10の炭素原子を有する分枝鎖または環式のアルキルまたはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル、複素環式芳香族またはヘテロシクロアルキルのラジカルであり、そして加えてR
2からR
8はHであることができる。
【0047】
l、m、およびnは各々独立して、1から5の整数であり、そして加えてnは0であることができる。
MayはC−3ヒドロキシル、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシルまたはC−20デスメチルに側鎖を持つメイタンシノールを表す。
【0048】
[70]もう1つの有用なメイタンシノイドを式4
1’:
【0049】
【化6】
【0050】
により表す。式中、置換基は上の式(II’)について定義したとおりである。
[71]もう1つの有用なメイタンシノイドを式4
1:
【0051】
【化7】
【0052】
により表す。式中、置換基は上の式(II)について定義したとおりである。
[72]好ましくは、式中R
1がHでありR
2がメチルである、またはR
1およびR
2がメチルである、上に記載した化合物のいずれかである。
【0053】
[73]特に好ましくは、式中R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7およびR
8が各々Hであり、lおよびmが各々1であり、そしてnが0である;ならびにR
1およびR
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7およびR
8が各々Hであり、lおよびmが1であり、そしてnが0である、上に記載した化合物のいずれかである。
【0054】
[74]さらにL−アミノアシル立体異性体が好ましい。
[75]1から10の炭素原子を有する直鎖のアルキルまたはアルケニルの例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、プロペニル、ブテニルおよびヘキセニルを含むがこれに限定されない。
【0055】
[76]3から10の炭素原子を有する分枝鎖のアルキルまたはアルケニルの例は、イソプ
ロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、1−エチル−プロピル、イソブテニルおよびイソペンテニルを含むがこれに限定されない。
【0056】
[77]3から10の炭素原子を有する環式のアルキルまたはアルケニルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、およびシクロヘキセニルを含むがこれに限定されない。
【0057】
[78]シンプルなアリールは6から10の炭素原子を有するアリールを含み、置換されたアリールは、1から4の炭素原子を含有する少なくとも1つのアルキル置換基、またはアルコキシ置換基 例えばメトキシ、エトキシ、またはハロゲン置換基またはニトロ置換基を有する6から10の炭素原子を有するアリールを含む。
【0058】
[79]6から10の炭素原子を含有するシンプルなアリールの例は、フェニルおよびナフチルを含むがこれに限定されない。
[80]置換されたアリールの例はニトロフェニル、ジニトロフェニルを含むがこれに限定されない。
【0059】
[81]複素環式芳香族ラジカルは、N、OまたはSより選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含有する3から10員環を有する基を含む。
[82]複素環式芳香族ラジカルの例は、ピリジル、ニトロ−ピリジル、ピロリル、オキサゾリル、チエニル、チアゾリル、およびフリルを含むがこれに限定されない。
【0060】
[83]ヘテロシクロアルキルラジカルは、N、OまたはSより選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含有する3から10員環系を包含する環式化合物を含む。
[84]ヘテロシクロアルキルラジカルの例は、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、およびモルホリノを含むがこれに限定されない。
【0061】
[85]立体障害のチオール結合を含有する側鎖を包含する特に好ましいメイタンシノイドは、以下のメイタンシノイド、すなわちN
2’−デアセチル−N
2’−(4−メルカプト
−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM3と呼ぶ)およびN
2’−デアセチル−N
2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM4と呼ぶ)である。DM3およびDM4は以下の構造式:
【0062】
【化8】
【0063】
により表される。
【0064】
(
細胞結合物質)
[86]治療薬としての本発明の化合物の有効性は、適当な細胞結合物質の注意深い選択に依存する。細胞結合物質は、現在知られている、または知られるようになるあらゆる種類の物質でよく、ペプチドおよび非ペプチドを含む。一般にこれらは抗体(特にモノクローナル抗体)、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、ビタミン、栄養素を輸送する分子(例えばトランスフェリン)、または標的に特異的に結合するあらゆるそれ以外の細胞に結合する分子もしくは物質であることができる。
【0065】
[87]使用することのできる細胞結合物質のより具体的な例は以下を含むことができる:
完全なヒトの抗体を含む、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体;
単鎖の抗体(ポリクローナルおよびモノクローナル);
抗体のフラグメント(ポリクローナルおよびモノクローナル)、例えばFab、Fab’、F(ab’)
2、およびFv(Parham, 131 J. Immunol. 2895-2902 (1983); Spring
et al., 113 J. Immunol. 470-478 (1974); Nisonoff et al., 89 Arch. Biochem. Biophys. 230-244 (1960));
キメラ抗体および抗原に結合するそのフラグメント;
ラクダの抗体を含む、ドメイン抗体(dAbs)および抗原に結合するそのフラグメント(Desmyter et al., 3 Nature Struct. Biol, 752, 1996);
新たな抗原受容体と言われるサメの抗体(IgNAR)(Greenberg et al., 374 Nature, 168, 1995; Stanfield et al. 305 Science 1770-1773, 2004);
インターフェロン(例えばアルファ、ベータ、ガンマ);
リンホカイン 例えばIL−2、IL−3、IL−4、IL−6;
ホルモン 例えばインスリン、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)、ステロイドホルモン 例えばアンドロゲンおよびエストロゲン;
増殖因子およびコロニー刺激因子 例えばEGF、TGF−アルファ、FGF、VEGF、G−CSF、M−CSFおよびGM−CSF(Burgess, 5 Immunology Today 155-158 (1984));
トランスフェリン(O’Keefe et al., 260 J. Biol. Chem. 932-937 (1985));および
ビタミン、例えばフォレート。
【0066】
[88]モノクローナル抗体の技術により、特異的なモノクローナル抗体の形で極めて特異的な細胞結合物質を産生することができる。当該技術分野において特に周知なのは、対象の抗原 例えば標的細胞そのもの、標的細胞から単離した抗原、ウイルス全体、弱毒化ウイルス全体、およびウイルスのタンパク質 例えばウイルスのコートタンパク質を用いて、マウス、ラット、ハムスターまたはその他のあらゆる哺乳動物を免疫することにより産生されるモノクローナル抗体を作成するための技術である。感作されたヒトの細胞もまた使用することができる。モノクローナル抗体を作成するもう1つの方法は、scFv(一本鎖可変部断片)、具体的にはヒトscFvのファージライブラリ(例えばGriffiths et
al., 米国特許第5,885,793号および5,969,108号;McCafferty et al., WO 92/01047;Liming et al., WO 99/06587を参照のこと)を使用することである。加えて、米国特許第5,639,641号に開示された表面再修飾した(resurfaced)抗体もまた、ヒト化抗体として使用してよい。
【0067】
[89]適当な細胞結合物質の選択は、標的とすべき特定の細胞集団に依存する選択の問題であるが、一般的なヒトのモノクローナル抗体で、適当な1つが利用できれば好ましい。
[90]例えばモノクローナル抗体J5は、共通急性リンパ芽球性白血病抗原(Common Acute Lymphoblastic Leukemia Antigen)(CALLA)に対して特異的であるネズミIg
G2a抗体(Ritz et al, 283 Nature 583-585 (1980))であるが、標的細胞がCALL
Aを発現する場合、例えば急性リンパ芽球性白血病の疾患において使用することができる。
【0068】
[91]モノクローナル抗体MY9は、CD33抗原に特異的に結合するネズミIgG
1抗体(J.D. Griffin et al 8 Leukemia Res., 521 (1984))であるが、急性骨髄性白血病(AML)の疾患におけるように標的細胞がCD33を発現する場合に使用することができる。
【0069】
[92]同様に、互換性をもってB4とも言われるモノクローナル抗体抗B4は、B細胞上のCD19抗原に結合するネズミIgG
1(Nadler et al, 131 J. Immunol. 244-250 (1983))であるが、標的細胞がB細胞、またはこの抗原を発現する罹患した細胞である場合、例えば非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ芽球性白血病において使用することができる。
【0070】
[93]加えてCanAg抗原に結合するモノクローナル抗体C242(米国特許第5,552,293号)を使用して、CanAgを発現する腫瘍、例えば結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、および胃癌を治療することができる。huC242は、米国特許第5,552,293号に記載されているヒト化モノクローナル抗体C242であり、これに関してはハイブリドーマがECACC同定番号90012601にて保管されている。ヒト化は、CDRグラフティング法(米国特許第5,585,089号;5,693,761号;および5,693,762号)、または表面再修飾する(resurfacing)方法(米国特
許第5,639,641号)のいずれかを適用することにより調製することができる。huC242を使用してもまた、CanAgを発現する腫瘍、例えば結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、および胃癌を治療することができる。
【0071】
[94]さらに抗体のトラスツツマブ(trastuzumab)を使用して、乳癌ならびにHer2抗
原を発現する前立腺癌および卵巣癌のようなその他の癌、を治療することができる。
[95]インスリン増殖因子受容体に結合する抗IGF−IR抗体もまた有用である。
【0072】
[96]卵巣癌および前立腺癌を、例えば各々抗MUC1抗体、例えば抗HMFG−2(Taylor-Papadimitriou et al., 28. Int. J. Cancer 17-21, 1981)またはhCTM01(56 Cancer Res. 5179-5185, 1996)、および抗PSMA(前立腺に特異的な膜抗原)、例
えばJ591(Liu et al. 57 Cancer Res. 3629-3634, 1997)を用いて、それぞれうま
く標的とすることができる。
【0073】
[97]抗体でない分子を使用してもまた特異的な細胞集団を標的とすることができる。例えば骨髄細胞に結合するGM−CSFを細胞結合物質として使用して、急性骨髄性白血病由来の罹患した細胞を標的とすることができる。加えて活性化T細胞に結合するIL−2を、移植片拒絶の予防、移植片対宿主病の治療および予防、および急性T細胞白血病の治療用に使用することができる。メラノサイトに結合するMSHは、黒色腫の治療用に使用することができる。葉酸を使用して、卵巣腫瘍およびその他の腫瘍上に発現される葉酸受容体を標的とすることができる。表皮増殖因子(EGF)を使用して、扁平上皮細胞癌、例えば肺癌ならびに頭部および頸部の癌を標的とすることができる。ソマトスタチンを使用して、神経芽腫およびその他の腫瘍のタイプを標的とすることができる。乳癌および精巣癌は、各々細胞結合物質としてエストロゲン(もしくはエストロゲン類似体)またはアンドロゲン(もしくはアンドロゲン類似体)を用いて、うまく標的とすることができる。
【0074】
(架橋試薬)
[98]メイタンシノイドは、反応させた時にメイタンシノイドおよび細胞結合物質の間に非開裂リンカーを形成する架橋試薬を使って、細胞結合物質に連結される。
【0075】
[99]本明細書において使用する場合“リンカー”は、細胞結合物質を共役結合によりメ
イタンシノイドに連結するあらゆる化学的部分である。一部の場合には、リンカー部分はメイタンシノイドにより提供される。例えばチオールを含有するメイタンシノイドであるDM1(
図2)は、天然のメイタンシノイドであるメイタンシンの誘導体であるが、リンカー部分を提供する。メイタンシンのC−3ヒドロキシル基での側鎖は末端が−CO−CH
3であり、DM1の側鎖は末端が−CO−CH
2−CH
2−SHである。したがって最終的なリンカーは2つの部分、すなわち細胞結合物質に導入された架橋試薬およびDM1由来の側鎖から組み立てられる。
【0076】
[100]開裂可能なリンカーはマイルドな条件下、すなわちメイタンシノイド薬剤の活性
に影響を及ぼさない条件下、で開裂することのできるリンカーである。多くの公知のリンカーがこのカテゴリーに含まれ、そしてこれらを以下に記載する。
【0077】
[101]ジスルフィドを含有するリンカーは、生理学的条件下で起こり得るジスルフィド
交換を通して開裂可能なリンカーである。
[102]酸に不安定なリンカーは、酸性のpHで開裂可能なリンカーである。例えばある
種の細胞内の一区画、例えばエンドソームおよびリソソームは、酸性のpH(pH4−5)を有しており、酸に不安定なリンカーを開裂するのに適する条件を提供する。
【0078】
[103]光に不安定なリンカーは、体表面でおよび光の届き得る多くの体腔において有用
である。さらに赤外光は組織を透過することができる。
[104]いくつかのリンカーはペプチダーゼにより開裂することができる。ある種のペプ
チドのみしか細胞内部または外部で容易に開裂されない。例えばTrouet et al., 79 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 626-629 (1982)およびUmemoto et al. 43 Int. J. Cancer, 677-684 (1989)を参照のこと。さらにペプチドはα−アミノ酸およびペプチド結合から成り、ペプチド結合は化学的には1つのアミノ酸のカルボキシレートおよび第2のアミノ酸のα−アミノ基間のアミド結合である。その他のアミド結合、例えばカルボキシレートおよびリジンのε−アミノ基間の結合は、ペプチド結合ではないと理解されており、開裂可能でないと考えられている。
【0079】
[105]いくつかのリンカーはエステラーゼにより開裂することができる。やはりある種
のエステルのみしか、細胞内部または外部に存在するエステラーゼにより開裂することはできない。エステルはカルボン酸およびアルコールの縮合により形成される。シンプルなエステルは、シンプルなアルコール、例えば脂肪族アルコール、ならびに小さな環式アルコールおよび小さな芳香族アルコールにより生成されるエステルである。例えば本発明では、エステルのアルコール成分であるメイタンシノールが非常に大きく複雑であるため、メイタンシンのC−3のエステルを開裂するエステラーゼを発見することはできなかった。
【0080】
[106]非開裂リンカーは、安定な共有結合の様式でメイタンシノイドを細胞結合物質に
連結することができ、開裂可能なリンカーとして上に列記したカテゴリーに含まれないあらゆる化学的な部分である。したがって非開裂リンカーは、酸に誘発される開裂、光に誘発される開裂、ペプチダーゼに誘発される開裂、エステラーゼに誘発される開裂、およびジスルフィド結合の開裂に対して実質的に耐性がある。
【0081】
[107]開裂に対して“実質的に耐性がある”ことは、細胞結合物質メイタンシノイド複
合体母集団の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも99%のリンカーの化学的結合またはリンカーに隣接する化学的結合が、酸、光感受性(photolabile)開裂物質、ペプチダーゼ、エステラーゼ、または開裂可能なリンカーの化学的結
合(例えばジスルフィド結合)を開裂する化学的化合物もしくは生理学的化合物によって
、上に記載した物質のいずれかによる処理の数時間から数日間の範囲内で、非開裂を維持することを意味する。
【0082】
[108]さらに“非開裂”は、メイタンシノイドまたは細胞結合物質がその活性を失わな
い条件で、酸、光感受性開裂物質、ペプチダーゼ、エステラーゼ、またはジスルフィド結合を開裂する化学的化合物もしくは生理学的化合物により誘発される開裂に耐える、リンカーの化学的結合またはリンカーに隣接する化学的結合の能力を言う。
【0083】
[109]当業者は、開裂可能なリンカーから非開裂リンカーを容易に識別することだろう
。
[110]リンカーが開裂に対して実質的に耐性があるかどうかを検査するための適当なコ
ントロールの一例は、上に記載した物質のいずれかにより開裂されやすい化学的結合、例えばジスルフィド結合を含むリンカーである。リンカーが開裂に対して実質的に耐性があるかどうかは、ELISA、HPLC、またはその他の適切な手段により、数時間から数日間、典型的には4時間から5日間に及ぶ時間にわたり複合体の安定性を測定することにより、検査することができる。ELISAアッセイを使用して、血漿濃度における安定な複合体のレベルを測定することができる。
【0084】
[111]非開裂リンカーはまた、非開裂リンカーを包含する複合体のin vivoの半減期が開裂可能なリンカーを包含する複合体の値より、一般に約20%高いという特徴がある。マウスにおいて、非開裂リンカーを介して連結したIgG−メイタンシノイド複合体のin vivoの半減期は、少なくとも4日である。
【0085】
[112]メイタンシノイドおよび細胞結合物質の間に、非開裂リンカーを形成する適切な
架橋試薬は当業界において周知であり、イオウ原子を包含する(例えばSMCC)またはイオウ原子を含まない非開裂リンカーを形成することができる。
【0086】
[113]メイタンシノイドおよび細胞結合物質の間に非開裂リンカーを形成する好ましい
架橋試薬は、マレイミドまたはハロアセチルを基本とする部分を包含する。本発明に従って、そのような非開裂リンカーはマレイミドまたはハロアセチルを基本とする部分から誘導されると言う。マレイミドを基本とする部分を包含する架橋試薬は、N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、SMCCの“長鎖”類似体であるN−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート) (LC−SMCC)、κ−マレイミ
ドウンデカン酸N−スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル[
AMAS]、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート
(SMPH)、N−スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、およびN−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)を含む(マレイミドを基本とする架橋試薬の代表的な構造については
図15を参照のこと)。これらの架橋試薬はマレイミドを基本とする部分から誘導される非開裂リンカーを形成する。
【0087】
[114]ハロアセチルを基本とする部分を包含する架橋試薬は、N−スクシンイミジル−
4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)およびN−スクシンイミジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)を含む(ハロアセチルを基本とする架橋物質の代表的な構造については
図16を参照のこと)。 これら
の架橋試薬はハロアセチルを基本とする部分から誘導される非開裂リンカーを形成する。
【0088】
[115]
図15および
図16に記載した活性なエステルは、N−ヒドロキシスクシンイミ
ジルおよびスルホスクシンイミジルのエステルから成るが、他の活性なエステル、例えばN−ヒドロキシフタルイミジルエステル、N−ヒドロキシスルホフタルイミジルエステル、オルト−ニトロフェニルエステル、パラ−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、3−スルホニル−4−ニトロフェニルエステル、3−カルボキシ−4−ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、およびスルホニルテトラフルオロフェニルエステルもまた使用することができる。
【0089】
[116]特に好ましい架橋試薬は、イオウ原子を含有しない非開裂リンカーを形成する。
図21は、α、ω−ジカルボン酸(アルカンまたはアルケンが3−24の炭素原子を有するアルカン二酸またはアルケン二酸)から誘導される、架橋物質を用いて誘導体化したメイタンシノイド分子を示す。細胞結合物質と反応させると、架橋試薬はイオウを含まない非開裂リンカー(Sを含有しない非開裂リンカー)を形成することになる。
【0090】
[117]
図21のメイタンシノイド分子は、以下のように製造する。最初にアジピン酸(
ヘキサン二酸または1,6−ヘキサンジカルボン酸としても知られる)のモノエステルを、ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で、1当量の2−トリメチルシリルエタノールを用いて処理することにより調製する。イソブチルクロロホルメートを用いて残っているカルボン酸基を活性化し、続いてN−メチル−L−アラニンと反応させ、アシル化したN−メチル−L−アラニンを提供する。ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび塩化亜鉛の存在下でメイタンシノールと反応させ、続いてテトラブチルアンモニウムフルオリドを用いてトリメチルシリル保護基を除去し、フリーのカルボキシ基を持つメイタンシノイドエステルを提供する。ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下でのスルホN−ヒドロキシスクシンイミドとの反応による、カルボキシル基のエステル化により、細胞結合物質と反応することのできるメイタンシノールの活性なエステルを提供し、イオウ原子を含有しない非開裂複合体を得る。
【0091】
[118]イオウ原子を含有しない非開裂リンカーはまた、上に記載した方法を用いて他の
ジカルボン酸を基本とする部分から誘導することもできる。他の適切なジカルボン酸を基本とする部分として、一般式(IV)のα、ω−ジカルボン酸:
【0092】
【化9】
【0093】
を含むがこれに限定されない。
[119]式(IV)においてXは、2から20の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のア
ルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、Yは3から10の炭素原子を持つシクロアルキル基またはシクロアルケニル基であり、Zは6から10の炭素原子を持つ置換されたもしくは置換されていない芳香族の基、またはヘテロ原子がN、OもしくはSより選択される置換されたもしくは置換されていない複素環式の基であり、そして式中l、mおよびnは各々0または1であるが、ただしそれらすべてが同時に0ではない。
【0094】
[120]Sを含有しない非開裂リンカーを有する複合体を形成するために、細胞結合物質
と直接反応させることのできる活性なエステルを含有する誘導体化したメイタンシノイドは、式5:
【0095】
【化10】
【0096】
により表すことができ、
式中X、Y、Z、l、mおよびnはすべて上の式(IV)について定義したとおりであり、さらに式中Eはカルボニル基と共に活性なエステル、例えばN−ヒドロキシスクシンイミジルおよびスルホスクシンイミジルのエステル、N−ヒドロキシフタルイミジルエステル、N−ヒドロキシスルホフタルイミジルエステル、オルト−ニトロフェニルエステル、パラ−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、3−スルホニル−4−ニトロフェニルエステル、3−カルボキシ−4−ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、およびスルホニルテトラフルオロフェニルエステルを形成する。
【0097】
[121]好ましくは式6により表される誘導体化したメイタンシノイド:
【0098】
【化11】
【0099】
であり、式中nは3から24の整数を表し、Eは式5のメイタンシノイドについてと同様の定義を有する。
[122]より好ましい態様は、式7により表される誘導体化したメイタンシノイド:
【0100】
【化12】
【0101】
であり、
式中RはHまたはSO
3−Na
+である。
[123]式5、6、および7の化合物は、新規メイタンシノイドである。
【0102】
[124]2から20の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、アルケニル基、またはアルキ
ニル基の例は、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、プロペニル、ブテニルおよびヘキセニルを含むがこれに限定されない。
【0103】
[125]2から20の炭素原子を有する分枝鎖のアルキル基、アルケニル基、またはアル
キニル基の例は、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、1−エチル−プロピル、イソブテニル、イソペンテニル、エチニル、プロピニル(プロパルギル)、1−ブチニル、2−ブチニル、および1−ヘキシニルを含むがこれに限定されない。
【0104】
[126]3から10の炭素原子を有するシクロアルキル基またはシクロアルケニル基の例
は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、およびシクロヘプタジエニルを含むがこれに限定されない。
【0105】
[127]6から10の炭素原子を含有する芳香族の基の例は、フェニルおよびナフチルを
含むがこれに限定されない。
[128]置換された芳香族の基の例は、ニトロフェニルおよびジニトロフェニルを含むが
これに限定されない。
【0106】
[129]複素環式芳香族の基は、N、OまたはSより選択される1つまたは2つのヘテロ
原子を含有する、3から10員環を有する基を含むがこれに限定されない。
[130]置換されたおよび置換されていない複素環式芳香族の基の例は、ピリジル、ニト
ロ−ピリジル、ピロリル、オキサゾリル、チエニル、チアゾリル、およびフリルを含むがこれに限定されない。
【0107】
[131]ヘテロシクロアルキルラジカルは、N、OまたはSより選択される1つまたは2
つのヘテロ原子を含有する、3から10員環系を包含する環式化合物を含むがこれに限定されない。
【0108】
[132]ヘテロシクロアルキルラジカルの例は、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、
テトラヒドロピロリル、ピペリジニル、ピペラジニル、およびモルホリノを含むがこれに限定されない。
【0109】
[133]一般式HOOC−X
l−Y
n−Z
m−COOHのα、ω−ジカルボン酸の例は、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、ヘキセン−1,6−二酸、ペンテン−1,5−二酸、シクロヘキサン−二酸、およびシクロヘキセン−二酸を含むがこれに限定されない。
【0110】
(
細胞毒性の複合体の合成)
[134]細胞結合物質およびメイタンシノイドの複合体は、現在公知のまたは今後開発さ
れるあらゆる技術を用いて形成することができる。
【0111】
[135]細胞結合物質をメイタンシノイドと複合体化する方法は、一般に2段階の反応ス
テップを伴う。米国特許第5,208,020号に記載されている1つの方法において、細胞結合物質、例えば抗体を、架橋試薬を用いて修飾して、1つまたはそれより多く、通常1−10の反応基を導入することができる。次に修飾された細胞結合物質を1つまたはそれより多くのチオールを含有するメイタンシノイドと反応させて、複合体を生成する。
【0112】
[136]あるいは米国特許第6,441,163 B1号に開示されているように、チオ
ールを含有するメイタンシノイドを初めに架橋試薬で修飾し、続いて修飾されたメイタンシノイドを細胞結合物質と反応させることができる。例えばチオールを含有するメイタンシノイドを、
図15に記載したマレイミド化合物と、または
図16に記載したハロアセチル化合物と反応させ、活性なスクシンイミジルエステルまたはスルホスクシンイミジルエステルを持つメイタンシノイドチオエーテルを得ることができる。活性化されたリンカー部分を含有するこれらのメイタンシノイドを、細胞結合物質と反応させることにより、非開裂の細胞結合物質メイタンシノイド複合体を生成するもう1つの方法を提供する。
【0113】
[137]本発明のもう1つの側面において、上に開示したように、イオウ原子を含有しな
いメイタンシノイドを、ジカルボン酸を基本とする架橋試薬により初めに誘導体とし、続いて細胞結合物質と反応させて、Sを含有しない非開裂リンカーを介してメイタンシノイドが細胞結合物質に連結されている複合体を形成することができる。
【0114】
[138]典型的には1抗体当たり平均して1−10のメイタンシノイドが連結される。複
合体はSephadex G-25カラムを通して精製することができる。
[139]米国特許第5,208,020号および6,441,163 B1号の全開示を
特に本明細書において参照として援用する。
【0115】
[140]本発明の代表的な複合体は、抗体−メイタンシノイド誘導体、抗体フラグメント
−メイタンシノイド誘導体、増殖因子−メイタンシノイド複合体 例えば表皮増殖因子(EGE)−メイタンシノイド誘導体、ホルモン−メイタンシノイド複合体 例えばメラノサイト刺激ホルモン(MSH)−メイタンシノイド誘導体、甲状腺刺激ホルモン(TSH)−メイタンシノイド誘導体、エストロゲン−メイタンシノイド誘導体、エストロゲン類似体−メイタンシノイド誘導体、アンドロゲン−メイタンシノイド誘導体、アンドロゲン類似体メイタンシノイド誘導体、およびビタミン−メイタンシノイド複合体 例えば葉酸エステル(folate)メイタンシノイドである。
【0116】
[141]抗体、抗体フラグメント、タンパク質のホルモン、タンパク質の増殖因子および
その他のタンパク質のメイタンシノイド複合体も、同様の方法で作成する。例えばペプチドおよび抗体は、上述の非開裂架橋試薬で修飾することができる。文献に記載されているように、バッファー水溶液中の抗体の溶液を過剰モルの抗体を修飾する架橋試薬、例えばスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、スルホ−SMCC、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、スルホ−MBS、スクシンイミジル−ヨードアセテート、またはN−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB
)、SMCCの“長鎖”類似体であるN−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチ
ル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート) (LC−SMCC)、スルホ−LC−SMCC、κ−マレイミドウンデカン酸N−スクシンイミジルエステル(KMUA)、スルホ−KMUA、γ−マレイミド酪酸N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、スルホ−GMBS、ε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、スルホ−EMCS、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル(AMAS)、スルホ−AMAS、スクシンイミジル−6−(β−マレ
イミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、スルホ−SMPH、N−スクシ
ンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、スルホ−SMPH、N−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)、N−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)、およびN−スクシンイミジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)と共にインキュベーションしてよい。Yoshitake et al., 101 Eur. J. Biochem. 395-399 (1979); Hashida et al., J. Applied Biochem. 56-63 (1984); およびLiu et al., 18 690-697 (1979); Uto et al., 138 J. Immunol. Meth. 87-94 (1991); Rich et al. 18 J. Med. Chem.
1004-1010 (1975); Kitagawa and Aikawa, 79 J. Biochem. (Tohyo) 233-236 (1976); Tanimori et al., 62 J. Immunol. Meth. 123-128 (1983); Higashida et al., 6 J. Appl. Biochem. 56-63 (1984); Thorpe et al., 140 Eur. J. Biochem. 63-71 (1984), Chrisey et al. 24 Nucl. Acid Res. 3031-3039 (1996), Annunziato et al., 4 Bioconjugate
Chem. 212-218 (1993), Rector et al., 24 J. Immunol. Meth. 321-336 (1978)、およ
びInman et al. 2 Bioconjugate. Chem. 458-463 (1991)を参照のこと。
【0117】
[142]次に修飾された抗体を、チオールを含有するメイタンシノイド(1.25モル等
量/マレイミド基またはヨードアセチル基)で処理して、複合体を生成する。混合液を一
晩、約4℃でインキュベーションする。抗体−メイタンシノイド複合体を、Sephadex G-25カラムを通してのゲル濾過により精製する。1抗体分子当たりに結合したメイタンシノ
イド分子の数は、分光光度計で252nmおよび280nmの吸光度の比率を測定することにより決定することができる。典型的には1抗体当たり平均して1−10のメイタンシノイドが連結される。
【0118】
[143]好ましい方法は、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサ
ン−1−カルボキシレート(SMCC)で抗体を修飾してマレイミド基を導入し、続いて修飾された抗体の、チオールを含有するメイタンシノイドとの反応により、チオエーテルで連結した複合体を得ることである。やはり1抗体分子当たり1から10の薬剤分子を伴う複合体が得られる。抗体−メイタンシノイド複合体の例を
図17−20に示す。
【0119】
[144]同様に例えば、エストロゲンおよびアンドロゲンの細胞結合物質 例えばエスト
ラジオールおよびアンドロステンジオールは、適当に保護されたチオール基を含有するカルボン酸クロリド 例えば3−S−アセチルプロパノイルクロリドと反応させることにより、C−17ヒドロキシ基でエステル化することができる。エステル化のその他の方法についても、文献(Haslam, 36 Tetrahedron 2400-2433 (1980))に記載されている様に利
用することができる。次に保護されたまたはフリーのチオールを含有するアンドロゲンまたはエストロゲンを、チオールを含有するメイタンシノイドと反応させて、複合体を生成することができる。複合体はシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーまたはHPLCにより精製することができる。
【0120】
[145]特定の好ましい方法は、いかなるイオウ原子も含有しない結合を結果的に得られ
る架橋試薬でメイタンシノールを修飾し、続いて修飾されたメイタンシノイドを抗体と反応させることにより複合体を生成するものである。
【0121】
(
本発明の細胞毒性複合体の治療効能)
[146]本発明の細胞結合物質メイタンシノイド複合体を、in vitro で多様な細胞株の増殖を抑制するそれらの能力について評価することができる。例えば、細胞株 例えばヒト結腸癌株COLO205、ヒト黒色腫細胞株A375、ヒト骨髄性白血病細胞株HL60、ヒト乳癌株SKBR3、またはヒト表皮癌細胞株KBを、これらの複合体の細胞毒性の評定のために使用することができる。評価する細胞を、24時間化合物に暴露させ、生存している細胞の分画を公知の方法による直接的なアッセイで測定することができる。(例えば、Goldmacher et al., 135 J. Immunol. 3648-3651 (1985)、およびGoldmacher et al., 102 J. Cell Biol. 1312-1319 (1986)を参照のこと。)次にIC
50値をアッセイの結果から算出することができる。
【0122】
[147]高い細胞毒性は、in vitroでSKBR3細胞を用いて薬剤への24時間暴露で測
定したときに、約10
−8Mまたはそれ未満のIC
50(0.5の生存している分画が残る毒性物質の阻害濃度)を有する毒性を示すものとして定義することができる。
【0123】
[148]本発明の抗体−メイタンシノイド複合体のin vitroの効能および標的特異性を図
4に示す。架橋試薬SMCCを用いてのhuC242のDM1との複合体は、3.5×10
−12MのIC
50値を有する、抗原陽性のSKBR3細胞を破壊する高い効能がある。反対に抗原陰性のA375細胞には800分の1未満の感受性であり、本発明のメイタンシノイド複合体が高い効能および特異性があることを立証している。
【0124】
[149]huC242−SMCC−DM1複合体は、クローン原性アッセイ(
図6A−C
)および間接的な細胞毒性アッセイ(
図7)において、ジスルフィドを含有するリンカーを用いて調製した複合体と比較した場合、等しいかまたはそれより高い効能があった。SMCCを介してメイタンシノイドに複合体化した抗Her2抗体が特異的な活性を示さなかったことを立証する以前に公開されたデータ(Chari et al., 52 Cancer Res. 127-133
(1992))に基づけば、これらの結果は予想外であった。
【0125】
[150]SMCCという非開裂リンカーを用いて調製された複合体の活性は、huC24
2の複合体に限定されない。in vitroの特異的な活性はまた、抗Her2抗体のトラスツツマブ;抗CD33抗体のMy9−6;抗EGFR抗体のKS77;および抗CD56抗体のN901の、SMCC−DM1複合体でも観察された(
図8A−Dおよび25)。
【0126】
[151]加えてin vitroで特異的な活性を示す非開裂リンカーを用いた複合体は、SMC
Cリンカーに限定されない。非開裂リンカーSIABを用いて合成したDM1のhuC242複合体は、in vitroのクローン原性アッセイにおいて効能および抗原特異的な細胞毒性を示した(
図9)。さらにSIABを用いて合成したDM1のトラスツツマブ複合体もまた、クローン原性アッセイにおいて細胞毒性があった(
図28)。さらにhuC242−Sを含有しない非開裂リンカー−DM1複合体もまた、in vitroのクローン原性アッセイにおいて効能および抗原特異的細胞毒性が立証された(
図22)。
【0127】
[152]SMCCリンカーを用いてのDM1との抗体の複合体は、マウスにおいて、ヒト
腫瘍の異種移植片に対する抗腫瘍効能を示す(
図10A−C)。SNU16胃腫瘍の異種移植片の、huC242−SMCC−DM1による治療での、腫瘍の成長の顕著な阻害が観察された(
図10A)。この抗腫瘍活性は、薬剤の毒性の基準であるマウスの体重に影響を及ぼさない複合体の用量で観察されている。COLO205結腸癌腫瘍の異種移植片を有するマウスの、huC242−SMCC−DM1複合体による治療は、腫瘍の完全な緩解をもたらし、何頭かのマウスは治療後2ヶ月にわたり検出可能な腫瘍が認められないままであった(
図10B)。やはりこの活性も、マウスの体重に影響を示さない複合体の
濃度で観察された。トラスツツマブ−SMCC−DM1複合体もまた、MCF−7乳癌細胞株を用いたマウスの腫瘍異種移植片モデルにおいて、有意な腫瘍の緩解を示した(
図10C)。
【0128】
[153]非開裂リンカーSMCCを用いて合成した抗体−メイタンシノイド複合体の血漿
クリアランスは非常に遅く、抗体単独のクリアランスに匹敵する。このことは、相対的に変化しやすいジスルフィド結合を用いて調製した複合体、例えばhuC242−SPP−DM1の血漿クリアランスと明確な対比をなす。例えばSMCC複合体のクリアランスの半減期はおよそ320時間であり、一方SPP複合体の半減期は40−50時間の範囲内である(
図11)。しかし各タイプの複合体に関する抗体成分のクリアランスは一致しており、測定された複合体のクリアランス速度の差異が、SPP−DM1複合体の場合、抗体複合体からのメイタンシノイドの喪失によるものであることを示唆する。したがって非開裂SMCCの結合はSPP−DM1複合体に比して、in vivo に存在するメイタンシノイド−リンカー開裂活性に対して、はるかに大きな耐性がある。さらにSPP−DM1複合体に比してSMCCで連結した複合体の低下したクリアランス速度は、薬物濃度曲線下面積(AUC)により測定した場合、動物のメイタンシノイドへの暴露全体においてほぼ5倍の増加をもたらすことになる。この増加された暴露が、一部の場合には薬剤の効能への実質的なインパクトを有することができるだろう。
【0129】
[154]非開裂リンカー 例えばSMCCを用いて調製したメイタンシノイド複合体は、
開裂可能なジスルフィドリンカーを用いて調製した複合体と比較して、マウスにおいて予想外の増加した許容性を示す。1回の静脈内投与による急性毒性検査を、メスCD−1マウスにて行った。huC242−SMCC−DM1複合体(非開裂)の、開裂可能なジスルフィド結合を含有するリンカーを用いて調製したhuC242複合体との許容性の比較を、各複合体の一連の4段階の用量増加にわたる、マウスの死亡(
図12AおよびB)および毒性の兆候(
図12CおよびD)をモニターすることにより行った。SMCC−DM1複合体に関する最大耐用量(MTD)は、検査した最大用量(150mg/kg)より
高かったが、ジスルフィドで連結した複合体であるSPP−DM1に関するMTDは、45−90mg/kgの範囲内であった。150mg/kgでSMCC−DM1治療群のすべてのマウスは生存していたが、SPP−DM1治療群のすべてのマウスに関しては治療後96時間までに致死的毒性であることが観察された。
【0130】
[155]メイタンシノイド複合体は、微小管の重合の阻害を通してそれらの細胞を破壊す
る活性を及ぼすと考えられている。この微小管の重合の阻害は、細胞周期を主としてG2/Mで停止させることになる。抗体−メイタンシノイド複合体による細胞の抗原依存性の
G2/M2での停止は、フローサイトメトリーの分析によりモニターすることができる(
図13)。huC242−SPP−DM1複合体またはhuC242−SMCC−DM1複合体によるCOLO205細胞の処理は、6−10時間までにG2/Mでの完全な停止
をもたらす。しかし処理後30時間までに、ジスルフィドで連結したhuC242−SPP−DM1複合体での処理により停止された細胞の一部は、細胞周期の停止から脱して細胞分裂を再開している。驚くことに非開裂複合体で処理した細胞は、この後者のタイムポイントで細胞周期の阻止から脱していない。これら2つの複合体の活性の持続性の差異はまた、トリパンブルーを用いての色素排除アッセイにより判定した場合の、30時間のタイムポイントで死滅した細胞の比率にも反映されている。これらの結果は、非開裂SMCCリンカー複合体での処理により導入される分子レベルの事象の予想外の持続性を立証している。
【0131】
[156]開裂可能なジスルフィドリンカーを有する複合体と比較しての、非開裂リンカー
を用いて調製した複合体の付加的な側面は、本明細書でバイスタンダー効果と言う、抗原陽性細胞に近接している場合に抗原陰性細胞に対する活性、を示さないことである。すな
わち非開裂リンカーを用いて調製した複合体は、最小のバイスタンダー活性を有する。huC242−SPP−DM1(開裂可能)複合体およびhuC242−SMCC−DM1(非開裂)複合体の双方とも、別々に培養した場合には、抗原陽性COLO205細胞株に対して効能のある細胞破壊活性を示し、抗原陰性細胞株であるNamalwaに対しては活性
を有していない。しかしCOLO205細胞およびNamalwa細胞の共培養での、huC2
42−SPP−DM1による処置は、抗原陰性Namalwa細胞に対してさえも複合体の劇的
な細胞破壊活性を現した。反対にhuC242−SMCC−DM1複合体は、これらの条件下でそのようないかなるバイスタンダー活性も示されていない。Namalwa細胞に対して
細胞破壊活性を示さないことが、抗原陽性COLO205細胞と共溶媒した場合でさえも、huC242−SMCC−DM1複合体で観察されている。このin vitroアッセイで測定した際の、非開裂複合体のこの最小のバイスタンダー活性が、急性毒性試験で観察された非開裂リンカーを用いた複合体の増加した許容性に寄与しているのかもしれない。
【0132】
[157]上の実験の結果は、本発明の非開裂リンカーを用いたメイタンシノイド複合体が
、以前に記載された細胞結合物質メイタンシノイド複合体と比較して、大幅に改善された抗腫瘍活性を保有することを立証している。
【0133】
(使用方法)
[158]上に記載した複合体は、選択された細胞集団を標的としてメイタンシノイドを向
かわせるための方法であって、当該方法は選択された細胞集団を含有すると推測される細胞集団または組織を、細胞結合物質メイタンシノイド複合体と接触させることを包含し、その場合1つまたはそれより多くのメイタンシノイドは、非開裂リンカーを介して細胞結合物質に共有結合で連結され、そして当該細胞結合物質が選択された細胞集団の細胞に結合する、前記方法において使用することができる。
【0134】
[159]上に記載した複合体はまた、細胞を破壊する方法であって、当該方法は細胞を、
細胞結合物質メイタンシノイド複合体と接触させることを包含し、その場合1つまたはそれより多くのメイタンシノイドは、非開裂リンカーを介して細胞結合物質に共有結合で連結され、そして当該細胞結合物質が細胞に結合する、前記方法において使用することができる。
【0135】
[160]上に記載した複合体はまた、悪性腫瘍、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿
主病、ウイルス感染、微生物感染、および寄生体感染を含むがこれに限定されない病気の治療法であって、当該方法は治療を必要とする被験者に、細胞結合物質メイタンシノイド複合体の有効量を投与することを包含し、その場合1つまたはそれより多くのメイタンシノイドは、非開裂リンカーを介して細胞結合物質に共有結合で連結され、そして当該細胞結合物質が病気の罹患した細胞または感染した細胞に結合する、前記方法において使用することができる。
【0136】
[161]本発明の方法に従って治療することのできる医学的な状態の例は、例えば肺、乳
房、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、卵巣、およびリンパ系器官の癌;自己免疫疾患、例えば全身性狼瘡、慢性関節リウマチ、および多発性硬化症;移植片拒絶、例えば腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心移植拒絶、および骨髄移植拒絶;移植片対宿主病;ウイルス感染、例えばCMV感染、HIV感染、AIDS等;ならびに寄生体感染、例えばランブル鞭毛虫症、アメーバ症、住血吸虫症、および当業者により決定されるようなその他の疾患を含むあらゆるタイプの悪性疾患を含むがこれに限定されない。
【0137】
[162]本方法は、in vitroまたは in vivoで行うことができる。
[163]上に記載した複合体は、例えば自己由来骨髄細胞を同一患者への移植前に、罹患
した細胞もしくは悪性細胞を破壊する目的で処理する;骨髄細胞もしくはその他の組織を
移植前に、T細胞およびその他のリンパ細胞を破壊し、移植片対宿主病(GVHD)を予防する目的で処理する;標的抗原を発現しない、所望のバリアント以外のすべての細胞を破壊する目的で細胞培養物を処理する;または所望でない抗原を発現するバリアントの細胞を破壊する目的で細胞培養物を処理する;ためのin vitroで使用する方法であって、当該方法は細胞結合物質メイタンシノイド複合体の有効量で細胞を処置することを包含し、その場合1つまたはそれより多くのメイタンシノイドは、非開裂リンカーを介して細胞結合物質に共有結合で連結され、そして当該細胞結合物質が破壊すべき細胞に結合する、前記方法において使用することができる。
【0138】
[164]in vitroで臨床的および非臨床的に使用する状態は、当業者により容易に決定さ
れる。
[165]例えば処置は以下のように実行することができる。骨髄を患者または他の個体か
ら採取した後、本発明の細胞毒性物質を約10pMから1nMの濃度範囲で添加した血清を含有する培地中で、約30分から約48時間の間、約37℃でインキュベーションする。インキュベーションの濃度および時間の正確な条件、すなわち用量は、当業者により容易に決定することができる。インキュベーション後、骨髄細胞を血清を含有する培地で洗浄し、公知の方法に従って静脈より患者に戻すことができる。骨髄採取時および処置した細胞の再注入時の間に、患者が他の治療、例えば破壊的化学療法(ablative chemotherapy)または全身照射のコースを受ける状況では、処置した骨髄細胞を、標準的な医学装置
を用いて液体窒素中に凍結保存することができる。
【0139】
[166]臨床的なin vivoの使用のため、細胞毒性物質は、無菌性およびエンドドキシンレベルについて検査された溶液または凍結乾燥粉末として提供することができる。複合体の投与の適切なプロトコルの例は以下の通りである。複合体は、毎週の静脈内への一括投与として1週1回、4週の間与えることができる。一括投与の用量は、5から10mlのヒト血清アルブミンを添加することのできる50から500mlの通常の生理生理食塩水中にて与えることができる。投与量は、静脈内への1回の投与当たり10mgから2000mg(1日当たり100ngから20mg/kg)とする。4週の治療後、患者は1週に
1回を基本として治療を継続して受けることができる。
【0140】
[167]投与経路、賦形剤、希釈剤、投与量、時間などに関する具体的なin vivoの臨床プロトコルは、臨床的状況が許す範囲で当業者により決定することができる。
[168]所望であれば、他の活性物質、例えば他の抗腫瘍薬を複合体と共に併用してもよ
い。
【0141】
(
新規複合体、組成物および複合体の製造法)
[169]非開裂リンカーにより連結された抗体およびメイタンシノイドのいくつかの複合
体は公知であるが、それ以外は新規である。したがって、非開裂リンカーを介して細胞結合物質に連結した少なくとも1つのメイタンシノイドを有する細胞結合物質メイタンシノイド複合体を提供する、ただし細胞結合物質が抗体である場合、リンカーは以下から成る群:スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、スルホ−SMCC、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、スルホ−MBS、およびスクシンイミジル−ヨードアセテート、より選択される架橋物質から誘導される基を包含しない。
【0142】
[170]新規複合体は上に記載したように製造、使用することができる。
[171]組成物は、細胞結合物質メイタンシノイド複合体および担体を包含する。
[172]担体は、医薬的に受容可能な担体、希釈剤または賦形剤であってよい。
【0143】
[173]適切な医薬的に受容可能な担体、希釈剤、および賦形剤は周知であり、臨床的状
況が許す範囲で当業者により決定することができる。
[174]適切な担体、希釈剤および/または賦形剤の例は以下を含む:(1)約1mg/m
lから25mg/ml ヒト血清アルブミンを含有するまたは含有しない、ダルベッコリ
ン酸緩衝化生理食塩水、pH約7.4、(2)0.9% 生理食塩水(0.9%w/v
NaCl)、および(3)5%(w/v)デキストロース;そしてまた抗酸化剤 例えば
トリプタミン、および安定剤 例えばTween20を含有してもよい。
【0144】
[175]これらの新規複合体について、合成法もまた提供する。
[176]細胞結合物質メイタンシノイド複合体を製造する方法の1つは、以下を包含する
:
(a)細胞結合物質を提供する、
(b)細胞結合物質を架橋物質で修飾する、そして
(c)修飾された細胞結合物質を、メイタンシノイドまたはチオールを含有するメイタンシノイドと複合体化させ、それにより細胞結合物質、およびメイタンシノイドまたはチオールを含有するメイタンシノイドの間に非開裂リンカーを提供して、複合体を生成する。
【0145】
[177]細胞結合物質メイタンシノイド複合体を製造するもう1つの方法は、以下を包含
する:
(a)メイタンシノイドまたはチオールを含有するメイタンシノイドを提供する、
(b)メイタンシノイドまたはチオールを含有するメイタンシノイドを架橋物質で修飾し、それにより非開裂リンカーを形成する、そして
(c)修飾されたメイタンシノイドまたはチオールを含有するメイタンシノイドを、細胞結合物質と複合体化させ、それにより細胞結合物質、およびメイタンシノイドまたはチオールを含有するメイタンシノイドの間に非開裂リンカーを提供して、複合体を生成する。
【0146】
[178]細胞結合物質メイタンシノイド複合体を製造する付加的な方法は、以下を包含す
る:
(a)メイタンシノイドを提供する、
(b)メイタンシノイドを修飾して、活性なエステルを有する、イオウを含有しないメイタンシノールを提供する、そして
[179](c)修飾されたメイタンシノイドを細胞結合物質と複合体化させ、それにより
細胞結合物質およびメイタンシノールの間に、Sを含有しない非開裂リンカーを提供して、複合体を生成する。これらの方法は詳細に上にそして、本明細書に引用した米国特許に記載されており、同文献を特に本明細書において参照として援用する。