特許第5718747号(P5718747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718747
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20150423BHJP
   H02P 29/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   F23N5/24 104
   H02P5/00 P
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-150004(P2011-150004)
(22)【出願日】2011年7月6日
(65)【公開番号】特開2013-15298(P2013-15298A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小代 卓史
(72)【発明者】
【氏名】平賀 忠幸
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−215658(JP,A)
【文献】 特開2008−51428(JP,A)
【文献】 特開2002−317929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、
前記バーナに燃焼用空気を供給すると共に、前記バーナの排ガスを排出するファンと、
前記バーナに燃料を供給する燃料供給部と、
前記ファンの回転速度を検出する回転速度検出部と、
前記ファンの通電電流を検出する電流検出部と、
所定の基準設置条件における、前記ファンの回転速度と通電電流との相関関係を示す基準電流ラインのデータを保持した記憶部と、
前記バーナの燃焼運転時に、前記ファンを所定回転速度で作動させたときの前記電流検出部による検出電流と、該所定回転速度に対応する前記基準電流ラインでの通電電流との相違に基づいて、前記ファンの回転速度を補正するファン制御部と
を備えた燃焼装置において、
前記燃焼装置に電源が投入されたときに、前記バーナへの燃料供給を停止した状態で前記ファンを所定の負荷検出用回転速度で作動させ、該負荷検出用回転速度で前記ファンが作動しているときの前記電流検出部による検出電流と、該負荷検出用回転速度に対応する前記基準電流ラインでの通電電流である基準電流との相違度合に応じて、前記基準電流ラインを補正する基準電流ライン補正部を備えることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置において、
前記基準電流ライン補正部は、前記ファンを前記負荷検出用回転速度で作動させた状態で、前記電流検出部による検出電流の変動幅が所定の許容範囲内に第2所定時間以上維持されたときに、該維持された時点での前記電流検出部による検出電流と前記基準電流との相違度合に応じて、前記基準電流ラインを補正することを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃焼装置において、
前記バーナの総燃焼時間を累積する総燃焼時間累積部を備え、
前記基準電流ライン補正部は、前記バーナの総燃焼時間が所定の設置判定時間以下である状態で、前記燃焼装置に電源が投入されたときに限定して、前記基準電流ラインを補正することを特徴とする燃焼装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の燃焼装置において、
前記基準電流ライン補正部は、前記ファンを前記負荷検出用回転速度で作動させたときの前記電流検出部による検出電流と、前記基準電流との乖離度合が所定レベル以上となったときに、異常報知を行なうことを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナに燃焼用空気を供給すると共にバーナの排ガスを排出するファンを備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バーナに燃焼用空気を供給すると共にバーナの排ガスを排出するファンを備えた燃焼装置において、給排気管の閉塞等による燃焼用空気の供給不足を改善するために、ファンを所定回転速度で作動させたときのファン電流(ファンモータの通電電流)の変化に基づいて、バーナの目標燃焼量に対するファンの回転速度を補正するようにした燃焼装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−94575号公報
【特許文献2】特開平6−300246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンの負荷は、給排気路の閉塞による場合の他に、燃焼装置が設置された場所の標高や、燃焼装置に接続される給排気管の長さや曲がり数等の設置条件によっても変動する。そのため、燃焼装置の設置条件に応じてファンの補正条件を設定する必要がある。そして、燃焼装置の設置条件の相違によるファンの負荷の変動を、ファンを所定回転速度で作動させたときのファン電流の変化により精度良く検知するためには、ファンの回転速度を高くしてファン電流を増加させることが有効である。
【0005】
しかし、特許文献1,2に記載された燃焼装置においては、燃焼運転中のファンの回転速度と通電電流の関係に基づいて、ファン回転速度を補正している。そのため、ファンの回転速度は、目標燃焼量に応じた回転速度付近でしか作動させることができず、燃焼装置の設置条件の相違に応じたファンの負荷変動を精度良く検知することが難しい。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、設置条件の相違によるファンの負荷変動に応じて、バーナの目標燃焼量に対するファンの回転速度の補正条件を精度良く設定する燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、バーナと、前記バーナに燃焼用空気を供給すると共に、前記バーナの排ガスを排出するファンと、前記バーナに燃料を供給する燃料供給部と、前記ファンの回転速度を検出する回転速度検出部と、前記ファンの通電電流を検出する電流検出部と、所定の基準設置条件における、前記ファンの回転速度と通電電流との相関関係を示す基準電流ラインのデータを保持した記憶部と、前記バーナの燃焼運転時に、前記ファンを所定回転速度で作動させたときの前記電流検出部による検出電流と、該所定回転速度に対応する前記基準電流ラインでの通電電流との相違に基づいて、前記ファンの回転速度を補正するファン制御部とを備えた燃焼装置の改良に関する。
【0008】
そして、前記燃焼装置に電源が投入されたときに、前記バーナへの燃料供給を停止した状態で前記ファンを所定の負荷検出用回転速度で作動させ、該負荷検出用回転速度で前記ファンが作動しているときの前記電流検出部による検出電流と、該負荷検出用回転速度に対応する前記基準電流ラインでの通電電流である基準電流との相違度合に応じて、前記基準電流ラインを補正する基準電流ライン補正部を備えることを特徴とする(第1発明)。
【0009】
第1発明によれば、前記燃焼装置が家屋の敷地等に設置されて電源が投入されたときに、前記基準電流ライン補正部は、前記バーナへの燃料供給を停止した状態で前記ファンを前記負荷検出用回転速度で作動させる。この場合、前記バーナは消火状態に維持されるため、前記負荷検出用回転速度を、前記バーナの燃焼域での前記ファンの回転速度の上限よりも高く設定することができる。また、前記バーナの燃焼量の変化による前記ファンの回転速度の変動が生じないため、前記ファンの回転速度を前記負荷検出用回転速度に安定して維持することができる。
【0010】
そのため、前記基準電流ライン補正部により、前記燃焼装置の実際の設置条件(標高、給排気管の仕様等)と、前記基準設置条件との相違に基づく前記ファンの負荷の変動を反映させて、前記基準電流ラインを補正することによって、設置条件の相違によるファンの負荷変動、及び前記燃焼装置自体の個体ばらつきによるファンの負荷変動に応じて、バーナの目標燃焼量に対するファンの回転速度の補正条件を精度良く設定することができる。
【0011】
また、第1発明において、前記基準電流ライン補正部は、前記ファンを前記負荷検出用回転速度で作動させた状態で、前記電流検出部による検出電流の変動幅が所定の許容範囲内に第2所定時間以上維持されたときに、該維持された時点での前記電流検出部による検出電流と前記基準電流との相違度合に応じて、前記基準電流ラインを補正することを特徴とする(第2発明)。
【0012】
第2発明によれば、例えば、前記燃焼装置が給排気管を介して屋外の大気に連通し、給排気管への風の吹き込み等により前記ファンの負荷が変動するような場合に、風の影響がなくなったタイミングを見計らって、安定した前記ファンの通電電流を検出することができる。そして、この検出電流を用いることにより、前記基準電流ラインをより精度良く補正することができる。
【0013】
また、第1発明又は第2発明において、前記バーナの総燃焼時間を累積する総燃焼時間累積部を備え、前記基準電流ライン補正部は、前記バーナの総燃焼時間が所定の設置判定時間以下である状態で、前記燃焼装置に電源が投入されたときに限定して、前記基準電流ラインを補正することを特徴とする(第3発明)。
【0014】
第3発明によれば、前記燃焼装置の設置作業者等が、前記燃焼装置を使用場所に設置して電源を投入したときには、前記燃焼装置は工場等おける試運転等を除けば、前記バーナは燃焼していないため、前記バーナの総燃焼時間は僅かなものとなる。そこで、前記基準電流ライン補正部による前記基準電流ラインの補正を、前記バーナの総燃焼時間が所定の設置判定時間以下である状態で、前記燃焼装置に電源が投入されたときに限定して行うことにより、前記燃焼装置の設置時以外に、不必要な前記基準電流ラインの補正が行われることを回避することができる。
【0015】
また、第1発明から第3発明のうちのいずれかにおいて、前記基準電流ライン補正部は、前記ファンを前記負荷検出用回転速度で作動させたときの前記電流検出部による検出電流と、前記基準電流との乖離度合が所定レベル以上となったときに、異常報知を行なうことを特徴とする(第4発明)。
【0016】
第4発明において、前記基準設置条件の設定間違いや、前記燃焼装置の設置不良(給排気管の外れ等)により、前記基準設置条件が実際の前記燃焼装置の設置状況に対応していないものになると、前記ファンを前記負荷検出用回転速度で作動させたときの前記電流検出部による検出電流と、前記基準電流との乖離度が前記所定レベル以上となる。そこで、この場合に異常報知を行なうことによって、前記燃焼装置の設置作業者等に前記基準設置条件の設定不良や前記燃焼装置の設置不良を認識させて、これらの訂正を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の燃焼装置であるガス給湯装置の構成図。
図2】基準電流ラインの補正処理のフローチャート。
図3】設置条件及び外気温度に応じた基準電流の設定表。
図4】「平地−排気管短」の設置条件での基準電流ラインの説明図。
図5】「平地−排気管短」の設置条件での基準電流ラインの補正処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図1図5を参照して説明する。図1を参照して、本発明の燃焼装置であるガス給湯装置1は、屋内に設置される本体ハウジング3と、本体ハウジング3内に収容された燃焼ハウジング14と、燃焼ハウジング14内の下部に配置されたバーナ2と、バーナ2に燃料ガスを供給するガス供給管8(本発明の燃料供給部に相当する)と、台所や浴室等に湯を供給する通水管5と、バーナ2に燃焼用空気を供給すると共にバーナ2の燃焼により生じる排ガスを排出するファン4と、ガス給湯装置1の全体的な作動を制御する制御ユニット7と、制御ユニット7に接続されたリモコン6とを備えている。
【0019】
ガス給湯装置1は給排気管40と接続され、給排気管40を介してバーナ2への燃焼用空気の供給とバーナ2の排ガスの排出を行う。給排気管40は、排気路41を内部に形成する内管42と、内管42に略同心に外挿されて内管42との間の空間に燃焼用空気の給気路43を形成する外管44とにより、二重管構造に形成されて、屋内の本体ハウジング3の上部箇所から屋外にかけて延設されている。
【0020】
給排気管40の外管44の屋内側の端部は、本体ハウジング3の上部に形成された開口18に接続されている。ここで、本体ハウジング3は略密閉構造に形成されており、本体ハウジング3の内部は、燃焼ハウジング14の下部に形成された給気口19の箇所に設けられたファン4を介して、燃焼ハウジング14に連通している。これにより、給気路43は、本体ハウジング3の内部とファン4を介して燃焼ハウジング14の内部に連通している。
【0021】
ファン4は、ファンモータ17により回転して、バーナ2の燃焼用空気を、給気路43から本体ハウジング3内の吸気口15を介して燃焼ハウジング14内に供給する。ファンモータ17には、図示しない回転速度センサ(エンコーダ、レゾルバ等)が備えられている。
【0022】
また、給排気管40の内管42の屋内側の端部は、外管44内から本体ハウジング3内に導入され、燃焼ハウジング14の上部に形成された排気口16に接続されている。これにより、内管42の内部の排気通路41は、排気口16を介して燃焼ハウジング14の内部に連通している。
【0023】
なお、給排気管40の内管42及び外管44の屋外側の端部は、大気中に開口している。また、本体ハウジング3内の上部には、外気温度を検出する外気温度センサ31が設けられている。
【0024】
ガス供給管8には、上流側から順に開閉電磁弁12と比例電磁弁13が設けられている。開閉電磁弁12は、図示しない駆動コイルへの通電の有無に応じてガス供給管8を開閉し、バーナ2への燃焼ガスの供給と遮断を切り替える。比例電磁弁13は、図示しない駆動コイルへの通電量に比例した開度で開弁して、バーナ2への燃料ガスの供給流量を変更する。バーナ2の付近には、イグナイタ10により高電圧が印加されて火花放電を生じる点火電極9と、バーナ2の燃焼炎の状態を検出するフレームロッド11とが設けられている。
【0025】
通水路5は、上流側が上水道(図示しない)に接続された給水路20と、上流側が給水路20に接続された熱交換通水路5aと、上流側が熱交換通水路5aに接続されると共に下流側が給湯栓21に接続された給湯路22と、給水路20から分岐して給湯路22に合流するバイパス路23とにより構成されている。
【0026】
給水路20には、上流側から順に、給水路20の通水流量を検出する流量センサ25と、上水道から給水路20に供給される水の温度を検出する給水温度センサ26と、給水路20の通水流量を調節する水量サーボ弁24とが設けられている。熱交換通水路5aには、燃焼ハウジング14内においてバーナ2の上方に配置された熱交換器27と、熱交換器27から出湯される湯の温度を検出する出湯温度センサ29とが設けられている。給湯路22には、バイパス路23との合流箇所の下流側に、給湯路22から給湯栓21に供給される湯の温度を検出する給湯温度センサ30が設けられている。
【0027】
制御ユニット7は、CPU(図示しない)やメモリ59(本発明の記憶部に相当する)等により構成された電子ユニットであり、フレームロッド11の燃焼状態検出信号、流量センサ25の流量検出信号、給水温度センサ26の温度検出信号、出湯温度センサ29の温度検出信号、給湯温度センサ30の温度検出信号、及び外気温度センサ31の温度検出信号が入力される。
【0028】
また、制御ユニット7から出力される制御信号によって、ファン4、イグナイタ10、開閉電磁弁12、比例電磁弁13、及び水量サーボ弁24の作動が制御される。さらに、制御ユニット7には、リモコン6により設定される目標給湯温度のデータ等が入力される。
【0029】
制御ユニット7は、ファン4の通電電流を検出する電流検出部51と、ファンモータ17に設けられた回転速度センサから入力される速度検出信号に基づいてファン4の回転速度を検出する回転速度検出部52とを備えている。また、メモリ59に保持されたガス給湯装置1の制御用プログラムを、CPUで実行することによって、バーナ2の総燃焼時間を累積してそのデータをメモリ59に記録する総燃焼時間累積部53、ガス給湯装置1の基準設置条件を設定する基準設置条件設定部54、ファン4の回転速度の補正の要否を判断するための基準電流ラインを補正する基準電流ライン補正部55、バーナ2の目標燃焼量に応じてファン4の回転速度を制御するファン制御部56として機能する。
【0030】
また、制御ユニット7には、ガス給湯装置1が設置されている場所の標高と、ガス給湯装置1に接続されている給排気管40の仕様を入力するための設置条件入力スイッチ58が備えられている。
【0031】
基準電流ライン補正部55は、ガス給湯装置1が屋内に設置されたときに、ファン4の負荷に応じて基準電流ラインを補正する処理を行う。以下、図2に示したフローチャートに従って、この処理の実行手順について説明する。
【0032】
作業者等により、ガス給湯装置1が屋内に設置されて電源が投入されると、制御ユニット7が起動して、基準電流ライン補正部55は、図2のフローチャートによる処理を開始する。
【0033】
図2のSTEP1で、基準電流ライン補正部55は、メモリ59に保持されたバーナ2の総燃焼時間のデータを読出し、バーナ2の総燃焼時間が20時間(本発明の設置判定時間に相当する)以下であるか否かを判断する。ここで、この20時間は、ガス給湯装置1が設置されたときの電源投入であることを判断するためのものであり、工場での試験運転等に伴う燃焼時間を考慮して設定されたものである。
【0034】
STEP1で、バーナ2の総燃焼時間が20時間を超えているときは、ガス給湯装置1が設置された後に、給湯運転によるバーナ2の燃焼がある程度以上行われた状況であり、後述するSTEP2以降の基準電流ラインの補正が既に行われていると想定される。そのため、STEP9に分岐し、この場合は基準電流ラインの補正は行われない。
【0035】
一方、バーナ2の総燃焼時間が20時間以下であるときは、ガス給湯装置1が設置されてから最初の電源投入であるか、或いは設置時の調整や動作確認のための電源投入であると想定される。そのため、この場合はSTEP2に進み、基準電流ライン補正部55は、基準設置条件設定部54により設定された基準設置条件と、外気温度センサ31の検出温度とに基づいて、基準電流を決定する。
【0036】
ここで、基準設置条件設定部54は、設置条件入力スイッチ58の入力に応じて、ガス給湯装置1の設置場所の標高と給排気管40の仕様を、基準設置条件として設定する。図3の設定表に示したように、設置場所の標高hは、平地(0m≦h≦750m)、高地1(750m<h≦1500m)、高地2(1500m<h≦2250m)という3段階で設定される。また、給排気管の仕様は、短(1m1曲り〜3m2曲り)、長(3m2曲り超〜7m3曲り)の2段階で設定される。
【0037】
基準電流ライン補正部55は、図3に示した設定表に、基準設置条件(標高及び給排気管の仕様)と、外気温度センサ31により検出される外気温Teを適用して、基準電流を決定する。ここで、外気温Teは、−10℃≦Te≦0℃、0℃<Te≦10℃、10℃<Te≦20℃、20℃<Te≦30℃という4段階に区分される。例えば、基準設定条件の標高が平地で給排気管の仕様が短、外気温が15℃の場合には、基準電流が1330mAに決定される。
【0038】
ここで、図4は基準設置条件の標高が平地で給排気管の仕様が短(「平地−排気管短」)であるときの、基準電流ラインAbを示しており、ファン4の回転速度が350Hz(本発明の負荷検出用回転速度に相当する)であるときのファン電流が、外気温Te毎(−10℃≦Te≦0℃、0℃<Te≦10℃、10℃<Te≦20℃、20℃<Te≦30℃)の基準電流P1〜P4として設定されている。
【0039】
なお、メモリ59には、各基準設置条件(「平地−排気管短」、「平地−排気管長」、「高地1−排気管短」、「高地1−排気管長」、「高地2−排気管短」、「高地2−排気管長」)の基準電流ラインのデータが保持されている。基準電流ラインは、実験やコンピュータシミュレーション等によって設定される。
【0040】
STEP3で、基準電流ライン補正部55は、ファン4を350Hzで作動させ、続くSTEP4で第1所定時間の経過を待つ。そして、次のSTEP5で、ファン電流の検出値が所定範囲内(例えば、第1所定時間の経過時からの変動幅が数%以内等)に第2所定時間以上維持されたときにSTEP6に進む。
【0041】
STEP6で、基準電流ライン補正部55は、ファン電流の検出値が図4に示した「エラー電流値 下側」から「エラー電流値 上側」までの範囲内に入っているか否かを判断する。「エラー電流値 下側」と「エラー電流値 上側」は、基準設置条件毎に設定されている。
【0042】
なお、ファン電流の検出値が「エラー電流値 下側」よりも小さくなったとき、及びファン電流の検出電流が「エラー電流値 上側」よりも大きくなったときが、本発明の電流検出部による検出電流と基準電流との乖離度が所定レベル以上になったときに相当する。
【0043】
そして、ファン電流の検出値が「エラー電流値 下側」から「エラー電流値 上側」までの範囲から外れたときは、基準設置条件の設定が誤っている可能性が高い。そのため、この場合はSTEP20に分岐し、基準電流ライン補正部55は、リモコン6の表示部65にエラー表示をし、設置作業者に設置条件の確認を促す。
【0044】
一方、STEP6で、ファン電流の検出値が「エラー電流値 下側」から「エラー電流値 上側」までの範囲内であったときにはSTEP7に進む。以下の説明では、ファン電流の検出値Ifsが1320mAであったときを想定している。STEP7で、基準電流ライン補正部55は、図5に示したように、ファン電流の検出値Ifsと基準電流Ifbとの比率(Ifs/Ifb=1320/1330=0.99248)に応じて、基準電流ラインを補正する。
【0045】
図5では、回転速度350Hzに対応するファン電流を、基準電流ラインAbの1250mAから、1241mA(=1250mA×0.99248)に変更し、回転速度230Hzに対応するファン電流を、基準電流ラインAbの440mAから437mA(440mA×0.99248)に変更して、基準電流ラインAbをA1に補正する。
【0046】
そして、STEP8に進み、基準電流ライン補正部55は、基準電流ラインの補正が完了したことをリモコン6の表示部65に表示して、STEP9に進み、処理を完了する。
【0047】
制御ユニット7は、給湯栓21等が開栓されて、流量センサ25の流量検出信号によって給水路20への通水を検知したときにバーナ2の点火処理を行って、給湯運転を開始する。制御ユニット7は、給湯運転中に、給湯温度センサ30により検出される給湯路22に供給される湯の温度が、リモコン6により設定された目標給湯温度となるように、バーナ2の目標燃焼量を決定する。そして、ファン制御部56は、バーナ2の目標燃焼量に応じたファン4の目標回転速度を決定し、ファン4の回転速度が目標回転速度となるようにファン電流を制御する。
【0048】
なお、バーナ2の目標燃焼量に応じてファン4の目標回転速度を設定するための、各基準設置条件毎の「目標燃焼量−目標回転速度」の対応テーブルのデータが、メモリ59に保持されている。
【0049】
また、ファン制御部56は、給湯運転中に補正基準電流ラインA1を用いてファン4の回転速度を補正する処理を行う。すなわち、ファン制御部56は、ファン4の回転速度を目標回転速度に制御したときのファン電流の検出値が、図5に示した補正基準電流ラインA1におけるこの目標回転速度に対応するファン電流よりも小さくなったときに、この小さくなった分に応じてファン4の回転速度を目標回転速度よりも高く制御する。そして、これにより、給排気管40の閉塞等によるバーナ2の燃焼用空気の不足を補填する。
【0050】
なお、本実施形態では、本発明の燃焼装置としてガス給湯装置を例示したが、ファンによりバーナに燃焼用空気を供給すると共にバーナの排ガスを排出する仕様の燃焼装置であれば、本発明の適用が可能である。
【0051】
また、本実施形態では、図2のSTEP1の処理により、ガス給湯装置1に電源が投入されたときに、バーナの累積燃焼時間が20時間以内であるか否かを判断し、バーナの累積燃焼時間が20時間以内であるときに限定して、基準電流ラインの補正を行った。しかし、バーナの累積燃焼時間が20時間以内であるか否かの判断をせずに、電源が投入されたときには、無条件に基準電流ラインの補正を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…ガス給湯装置(燃焼装置)、2…バーナ、4…ファン、5…通水路、6…リモコン、7…制御ユニット、8…ガス供給管(燃料供給部)、40…給排気管、51…電流検出部、52…回転速度検出部、53…総燃焼時間累積部、54…基準設置条件設定部、55…基準電流ライン補正部、56…ファン制御部、59…メモリ(記憶部)。
図1
図2
図3
図4
図5