(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718784
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】コンバインの穀粒回収タンク構造
(51)【国際特許分類】
A01F 12/46 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
A01F12/46
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-222943(P2011-222943)
(22)【出願日】2011年10月7日
(62)【分割の表示】特願2010-92434(P2010-92434)の分割
【原出願日】2004年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-5504(P2012-5504A)
(43)【公開日】2012年1月12日
【審査請求日】2011年10月13日
【審判番号】不服2014-2364(P2014-2364/J1)
【審判請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】杉本 茂文
(72)【発明者】
【氏名】戸成 厚史
(72)【発明者】
【氏名】古野 文雄
(72)【発明者】
【氏名】日田 定範
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雅行
(72)【発明者】
【氏名】熊取 剛
(72)【発明者】
【氏名】乙宗 拓也
【合議体】
【審判長】
本郷 徹
【審判官】
住田 秀弘
【審判官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−113378(JP,A)
【文献】
特開平11−28016(JP,A)
【文献】
特開2000−188941(JP,A)
【文献】
特開平10−84761(JP,A)
【文献】
特開平10−234223(JP,A)
【文献】
特開2004−248581(JP,A)
【文献】
特開平8−163916(JP,A)
【文献】
実開平4−124048(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のタンク本体の前壁上部が、前記タンク本体の前方側に位置する原動部の側へ、前記タンク本体の前壁の下部よりも張り出して位置するように設けられているとともに、
前記前壁上部は後側ほど高くなる傾斜面に形成され、その傾斜面に透明樹脂材からなる透視窓が装備され、前記透視窓は、前記傾斜面から前方に膨出した形状に形成され、
前記タンク本体の上壁の前部に前方側ほど低くなる前下がり傾斜面が形成され、前記上壁の前下がり傾斜面に開閉可能な上蓋が装備され、
前記上蓋が、前記原動部に設けた運転座席に対して左右方向で重複する位置に配設されているとともに、前記透視窓が左右方向で運転座席の左右幅内に配設され、かつ前記運転座席は、その上端位置が前記透視窓の下端位置近くに位置するように配設され、
前記タンク本体の前壁の下側部分を、側面視で、前記タンク本体の前側となる箇所に配備され且つキャビンを備えずに外部に露出された前記運転座席が上部に配備される前記原動部の側壁の後縁に沿って後側に凹ませてあるコンバインの穀粒回収タンク構造。
【請求項2】
前記タンク本体の上部では、前記原動部の横側壁部の最後端位置よりも前記透視窓が前方に位置するように、前記タンク本体の前壁上部が前方へ膨出されている請求項1記載のコンバインの穀粒回収タンク構造。
【請求項3】
前記原動部の横側壁部の上端が、前記運転座席の上端及び前記透視窓の下端よりも低く、かつ前記横側壁部の上端から前方側の部位が前下がり形状に形成されている請求項1又は2記載のコンバインの穀粒回収タンク構造。
【請求項4】
前記透視窓は、機体前方側の斜め上向きに膨出する複曲面状に形成されている請求項1〜3のいずれか一項記載のコンバインの穀粒回収タンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒タンクを用いて脱穀装置から搬出されてきた穀粒を穀粒タンクに貯留回収するよう構成したコンバインの穀粒回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記穀粒回収装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、脱穀装置から搬出されてきた穀粒を貯留する穀粒回収タンクを、貯留した穀粒をアンローダの下部へ搬出する底スクリューが横架支承された下部ケースと、これに脱着自在に連結される樹脂製のタンク本体とで構成したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−92918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
【0005】
【0006】
本発明は、タンク本体の内部の視認性を高めながらタンク前壁の強度を確保できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、樹脂製のタンク本体の前壁上部が、前記タンク本体の前方側に位置する原動部の側へ、前記タンク本体の前壁の下部よりも張り出して位置するように設けられているとともに、前記前壁上部は後側ほど高くなる傾斜面に形成され、その傾斜面に透明樹脂材からなる透視窓が装備され、前記透視窓は、前記傾斜面から前方に膨出した形状に形成され、前記タンク本体の上壁の前部に前方側ほど低くなる前下がり傾斜面が形成され、前記上壁の前下がり傾斜面に開閉可能な上蓋が装備され、
前記上蓋が、前記原動部に設けた運転座席に対して左右方向で重複する位置に配設されているとともに、前記透視窓が左右方向で運転座席の左右幅内に配設され、かつ前記運転座席は、その上端位置が前記透視窓の下端位置近くに位置するように配設さ
れ、
前記タンク本体の前壁の下側部分を、側面視で、前記タンク本体の前側となる箇所に配備され且つキャビンを備えずに外部に露出された前記運転座席が上部に配備される前記原動部の側壁の後縁に沿って後側に凹ませてあることを特徴とする。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
第2の発明は、上記
第1の発明において、前記タンク本体の上部では、前記原動部の横側壁部の最後端位置よりも前記透視窓が前方に位置するように、前記タンク本体の前壁上部が前方へ膨出されているものである。
【0012】
【0013】
第3の発明は、上記第1
又は2の発明において、前記原動部の横側壁部の上端が、前記運転座席の上端及び前記透視窓の下端よりも低く、かつ前記横側壁部の上端から前方側の部位が前下がり形状に形成されているものである。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
第4の発明は、上記第1
〜3のいずれかの発明において、前記透視窓は、機体前方側の斜め上向きに膨出する複曲面状に形成されているものである。
【0018】
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】タンク本体を傾動させた状態の穀粒回収装置を示す正面図
【
図6】タンク本体を回倒接地させた状態の穀粒回収装置を示す正面図
【
図7】タンク本体を分離した状態の穀粒回収装置を示す正面図
【
図10】底スクリュー駆動構造の一部を切欠いた正面図
【
図11】底スクリュー駆動構造の一部を示す横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1および
図2に、本発明に係る穀粒回収装置を備えた自脱型のコンバインの側面および平面がそれぞれ示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に、2条刈り仕様の刈取り部3が昇降自在に連結され、前記走行機体2の右側前部に図示されていないエンジンを内装した原動部4および運転部5が配備されるとともに、走行機体2の左側に脱穀装置6が搭載され、かつ、脱穀装置6の右側で運転部5の後側となる箇所にタンク貯留式の穀粒回収装置7が配備された構造となっている。刈取り部3で刈取った穀稈を脱穀装置6に供給して脱穀処理し、脱穀装置6で選別回収した穀粒をスクリュー式の揚穀装置8によって揚送して前記穀粒回収装置7に備えられた穀粒
回収タンク9に上部から投入するとともに、脱穀装置6から搬出された排ワラを排ワラカッタ10で細断して圃場に放出するように構成されている。原動部4の右横側部には横側壁部4Aが備えられており、運転部5には運転座席5Aが備えられている。
【0021】
前記穀粒回収装置7における穀粒回収タンク9は、上向きに開放された板金構造の下部ケース11と、これに脱着自在に連結される樹脂製のタンク本体12とで構成されており、この穀粒回収タンク9の後方に、貯留した穀粒を揚送した後、横搬送して機外に搬出するスクリュー式のアンローダ13が配備されている。
【0022】
前記下部ケース11は、略V形に形成された底板11bの前後に前板11fと後板11rとを連結して構成されており、その内部には、貯留した穀粒を後方に搬送して前記アンローダ13の下端部に供給搬送する底スクリュー14が前後水平に支承されるとともに、前板11fと後板11rに亘って支架した支軸15に、底スクリュー14の上方に沿う山形断面形状の流下案内板16が取り付けられている。また、底板11bの機体外側方には、貯留した穀粒を直接に取り出して袋詰めする場合などに用いるスライドシャッタ付きの取出し口17が備えられている。
【0023】
前記タンク本体12は、その左右側壁の下部が前記下部ケース11における底板11bに直線的に連なるように傾斜されるとともに、タンク本体12の下端開口部に下部ケース11の開口端に内嵌する嵌合部12aが形成されている。また、タンク本体12の前壁上部における傾斜面12Aには、透明樹脂材からなる透視窓18が付設されており、窓面積を大きくして内部の視認性を高めながらタンク前壁の強度を確保するために、透視窓18が外方に膨出した形状に成形されている。また、タンク本体12における上壁の前寄り箇所に、前方側ほど低くなる前下がり傾斜面12Bが形成され、その前下がり傾斜面12Bに、前端側を持上げ揺動開放可能な上蓋19が装着されるとともに、バックル式の掛け金具20が装備されている。この掛け金具20は、前記揚穀装置8の上端に設けられた吐出ケース8aとタンク本体12の接続口21とを穀粒の漏れ出しなく接続しておくためのものであり、吐出ケース8aに備えた係止金具22に引っ掛けられる。
【0024】
また、タンク本体12における右側壁の下部にはフック形状に形成された前後一対の金属製の係止部23が連結されるとともに、下部ケース11の右側上部には、前記係止部
23を係合支持する係止棒24が前後方向に沿って架設固定されており、係止部23と係止棒と24の係合点を支点にしてタンク本体12を横外方に回倒することが可能となっている。
【0025】
ここで、タンク本体12の適所には、タンク本体12を下部ケース11に対して起伏および脱着する際に使用する取っ手が備えられている。つまり、タンク本体12の横倒し方向である機体外側方の上部には横取っ手25が付設されるとともに、タンク本体12の機体内側方の上部と下部とには上部取っ手26と下部取っ手27がそれぞれ付設されている。
【0026】
前記横取っ手25は、主としてタンク本体12を下部ケース11に対して起伏させる際に使用するものであり、掛け金具20を係止金具22から外した上で、横取っ手25を持って機体外方に引くと、タンク本体12は係止部23と係止棒と24の係合点を支点にして横外方に回倒されることになり、必要に応じて上部取っ手26に持ち替えてタンク本体12を大きく倒し込むことができる。この場合、タンク本体12が起立している連結状態では、係止部23の開口が横向きとなっており、係止部23が係止棒24に引っ掛かることでタンク本体12の上方移動が阻止されている。そして、タンク本体12を大きく横倒しした状態では係止部23の開口が下向きとなり、横倒れ姿勢のタンク本体12の下部を持ち上げることで係止部23を係止棒24から離脱させて、タンク本体12を下部ケース11から取外すことができる。
【0027】
上記のようにタンク本体12を横倒しした状態では、上部取っ手26と下部取っ手27はタンク上方に露出することになり、下部取っ手27を持ってタンク本体12の下部を持ち上げて係止部23を係止棒24から離脱させた後、二人の作業者で上部取っ手26と下部取っ手27を持って運び出すことができる。
【0028】
ここで、
図3に示すように、上部取っ手26と下部取っ手27とはタンク本体12に対して略対角状に配備されており、両取っ手26,27を持って持ち上げられた横倒し姿勢のタンク本体12は傾くことなくバランスよく運ぶことができる。
【0029】
また、下部取っ手27は、タンク本体12の下部に形成された機体内側の穀粒流下案内用の傾斜壁部12bに配備されており、タンク本体12を下部ケース11に連結起立させた状態において、下部取っ手27は前記傾斜壁部12bの下方空間に隠されて位置し、脱穀装置6や近傍の構造物に干渉することがない。
【0030】
前記アンローダ13は、底スクリュー14の後端に連通接続されたスクリュー式の縦搬送部13Aと、この縦搬送部13Aの上端に起伏揺動可能に連通接続されたスクリュー式の横搬送部13Bとから構成されており、このアンローダ13が全体的に縦搬送部のスクリュー軸心である縦軸心Pを中心にして所定角度範囲内で旋回可能となっている。なお、アンローダ13の旋回駆動は図示されていない電動モータで、また、横搬送部13Bの起伏揺動駆動はシリンダ29によって夫々行われるようになっている。
【0031】
図3,
図9に示すように、前記下部ケース11の後端には底スクリュー14の後端を軸支する搬出ケース31が連結されるとともに、機体フレーム30上に前記縦軸心Pと同心に立設した支点軸32に前記搬出ケース31の下端が回動可能に外嵌されて、下部ケース11が縦軸心P周りに旋回可能に支持されている。また、下部ケース11の前板11fには底スクリュー14の前端部を軸支した入力ケース33が取り付けられるとともに、この前板11fの下端部が機体フレーム30の上面に載置されてボルト34で連結されており、ボルト34を取外すことで下部ケース11の旋回が可能となる。
【0032】
図10に示すように、前記入力ケース33には、底スクリュー14の前端に動力伝達する一対のベベルギヤ35,36が装備されるとともに、その入力用ベベルギヤ35に、機体側に配備された横向き片持ち状の伝動軸37の先端が挿入されている。前記伝動軸37は、原動部4にテンションクラッチ付きのベルト伝動機構38を介して連動されたプーリ39に軸心方向にスライド可能に挿通支持されるとともに、バネ40によって外端側にスライド付勢された六角軸として構成されている。従って、下部ケース11が横外方に旋回揺動されると、入力ケース33が自動的に伝動軸37から外れ、また、下部ケース11が所定の穀粒回収位置に旋回復帰されると、伝動軸37の先端部が自動的に入力用ベベルギヤ36の中心六角孔に挿入される。なお、下部ケース11が所定の穀粒回収位置に旋回復帰された際に、伝動軸37と入力用ベベルギヤ35との回転位相が合わないと、伝動軸37はベベルギヤ35の中心六角孔に挿入されることなくバネ40に抗して後退変位され、ベルト伝動機構38のテンションクラッチを入れて伝動軸37を回転させると、回転位相が合ったところで伝動軸37が付勢スライドしてベベルギヤ36の中心六角孔に自動的に係合挿入されて動力伝達がなされるようになっている。
【0033】
また、入力ケース33の前側には出力用ベベルギヤ36に一体連結した偏心カム41がされるとともに、前記流下案内板16を備えた支軸
15の前端に操作アーム42が固着され、その下部に形成した長孔42aに前記偏心カム41に係入されている。従って、出力用ベベルギヤ36が一定方向に回転駆動されて底スクリュー14が送り作動するのに連動して偏心カム41が回転し、操作アーム42を介して支軸15が小角度で往復回動され、これによって流下案内板16が往復揺動されて、流下案内板16の左右端と下部ケース底板11bとの間に形成された穀粒流下通路の間隔が繰返し変更され、ブリッジ現象に起因する詰まりの発生なく穀粒が円滑に流下して横送り搬出されるようになっている。
【0034】
なお、上記構成の穀粒回収タンク9が正規の回収位置にある時には、タンク下部の横外側に化粧カバー45が脱着自在に取付けられてタンク外観が整えられるようになっている。前記化粧カバー45における内面上部の前後には一対の係止具46が装着されるとともに、化粧カバー45における内面下部の前後には突出長さの異なる一対のフック47が装着され、前側のフック47を下部ケース11における前板11fの側辺に形成したスリット48に挿入係止するとともに、後側のフック47を下部ケース11における後板11rに取付けたピン49に上方から係止し、その係止部位を支点にして化粧カバー45をタンク側に揺動させることで、前後の係止具46が下部ケース11に取付けられたループ状の係止金具50に自動的に弾性係合されて、化粧カバー45が装着固定されるようになっている。また、化粧カバー45を取外す場合には、先ず、カバー外側の取っ手を操作して係止具46を係止金具50から外し、その後、化粧カバー45を動かしてスリット48およびピン49からフック47を外すことになる。
【符号の説明】
【0038】
4 原動部
4A 横側壁部
5A 運転座席
9 穀粒回収タンク
12 タンク本体
12A 傾斜面
12B 前下がり傾斜面
18 透視窓
19 上蓋