【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図5を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の浮体式フラップゲートの概略構成を示した図である。
【0024】
図1において、11は例えば防波堤の、開口部の路面rsに設置される本発明の浮体式フラップゲートである。この浮体式フラップゲート11は、海洋(或いは河川)から生活空間や地下空間に水wが流入しようとする際、流入する水wによって発生する浮力および水圧を利用して、基端側12aを支点として扉体12の先端側12bを起立揺動させて開口部を水密状態に遮断するものである。
【0025】
この浮体式フラップゲート11を構成する扉体12は、遮断する開口部の幅が広い場合は、複数の扉体12を開口部の幅方向に連結した構成とされ、各扉体12間は扉間水密ゴムによって連結されている。また、両側の扉体12の、防波堤の開口部に設けた戸当りと相対する側には水密ゴムが設けられている。
【0026】
図1に示す本発明の浮体式フラップゲート11は、例えば扉体12の先端部の幅方向全域に1本のロッド13が取付けられ、水圧荷重の支持とワイヤロープ14の一端を取付ける機能を有している。
【0027】
前記ワイヤロープ14の他端は、固定及び移動兼用滑車15、固定滑車16、及びカウンタウエイト17を吊り下げた吊り下げ滑車18を介してドラム19に取り付けられている。
【0028】
このうち、固定及び移動兼用滑車15は、戸当り20の、倒伏時の扉体12の先端上方から扉体12の基端側に向けて水平移動が自在なように取り付けられている。また、固定滑車16は、扉体12の基端側の前記固定及び移動兼用滑車15と同一高さ位置に設置されている。
【0029】
一方、ドラム19は、前記固定滑車16を挟んで前記固定及び移動兼用滑車15と反対側に設置され、これらドラム19と固定滑車16の間にカウンタウエイト17の吊り下げ滑車18が昇降自在にワイヤロープ14によって吊り下げられている。
【0030】
21は前記ドラム19の回転機構であり、例えば
図2に示すように、ウォームギヤ減速機の出力軸に取り付けたスプロケット21aとドラム19の回転軸19aに取り付けたスプロケット21b間にチェーン21cで巻き回してドラム19を正逆回転するようになっている。なお、
図2中の22はドラム19を回転自在に支持する軸受である。
【0031】
また、本発明では、前記ドラム19の回転により固定及び移動兼用滑車15が固定滑車16に対して接離移動可能なように構成している。
【0032】
例えば
図2では、固定及び移動兼用滑車15の反固定滑車16側にスプロケット22aを回転自在に配置し、このスプロケット22aと前記回転軸19aに取り付けたスプロケット22b間に巻き回したチェーン22cに固定及び移動兼用滑車15の回転軸15aを取り付けたものを示している。このような構成の場合、ドラム19の回転に同調して固定及び移動兼用滑車15が固定滑車16に対して接離移動するようになる。
【0033】
また、
図2では、前記固定及び移動兼用滑車15の固定滑車16への接離移動を円滑に行うため、固定及び移動兼用滑車15の回転軸15aの両端に車輪22dを取り付け、子の車輪が固定及び移動兼用滑車15と固定滑車16間に敷設されたガイドレール22e上を移動するものを示している。
【0034】
本発明例のように、起立完了時の扉体12の傾斜角θを例えば水平より90度とするならば、常時における前記固定及び移動兼用滑車15は、扉体12が起立揺動したときの水平面に対する傾斜角θ(
図3参照)が例えば45度になった時に前記カウンタウエイト17が最下点となる位置となるようにしている。
【0035】
発明者らの調査結果によれば、起立完了時の扉体傾斜角が水平より例えば90度のフラップゲートでは、カウンタウエイト17が最下点となる前記傾斜角θは10度〜80度の範囲であれば問題がないことが分かっている。なお、起立完了時の扉体傾斜角が水平より90度未満、例えば75度のフラップゲートでは、カウンタウエイト17が最下点となる前記傾斜角θの問題の無い範囲の上限は、起立完了時の扉体傾斜角が水平より90度の場合の80度よりも小さい値になることは言うまでもない。
【0036】
上記構成の本発明の浮体式フラップゲート11では、ドラム19が非回転の常時は、回転機構21は扉体12が倒伏する位置となるようにしておき、ドラム19の回転、及び固定及び移動兼用滑車15がウォームギヤ減速機のセルフロック機構により固定された状態としておく。そして、このような状態下における扉体12の起立時、及び扉体12の倒伏時は、以下に説明するような機能を奏する。
【0037】
(扉体12の起立時)
流入初期は、カウンタウエイト17が降下し、扉体12は起立方向に引っ張られて起立を補助される(
図4(a)参照)。そして、水平面に対する扉体12の傾斜角θが例えば45度になると、扉体12とワイヤロープ14が一直線になり(
図4(b)参照)、カウンタウエイト17は最下端の位置となる。水平面に対する扉体12の傾斜角θが例えば45度を超えると、扉体12の起立揺動により、カウンタウエイト17が上昇するので、カウンタウエイト17が抵抗となって扉体12の起立速度を減速し、起立完了時の衝撃力を緩和する(
図4(c)参照)。
【0038】
(起立状態の扉体12の倒伏時)
倒伏初期は、カウンタウエイト17が下降し、扉体12は倒伏方向に引っ張られて水位の低下に追従して倒伏する(
図4(d)参照)。そして、水平面に対する扉体12の傾斜角θが例えば45度になると、扉体12とワイヤロープ14が一直線になり(
図4(b)参照)、カウンタウエイト17は最下端の位置となる。水平面に対する扉体12の傾斜角が例えば45度より小さくなると、扉体12の倒伏により、カウンタウエイト17が上昇するので、カウンタウエイト17が抵抗となって扉体12の倒伏速度を減速し、倒伏完了時の衝撃力を緩和する(
図4(e)参照)。
【0039】
本発明の浮体式フラップゲート11における上記の扉体12の傾斜角度θとカウンタウエイト20による扉体起立方向の旋回力の関係(例えば起立完了時の扉体傾斜角が水平より90度のフラップゲートの場合)を
図3に示す。
【0040】
上記のように、本発明の浮体式フラップゲート11では、ドラム19が非回転の常時は、カウンタウエイト17を有する起立・倒伏機構を使って複数の機能を働かせることで、扉体12の起立補助、衝撃緩和、水位追従が可能となる。
【0041】
一方、上記構成の本発明の浮体式フラップゲート11では、点検時に起立させたい場合や、事前に起立させておきたい場合等の人為的な扉体12の起伏操作時は、以下に説明するようにして扉体12を起伏させる。
【0042】
先ず、扉体12の起立に先立ち、下限ストッパ23aをセットしてカウンタウエイト17が降下するのを阻止する。上限ストッパ23bは、カウンタウエイト17の上昇を阻止するために、カウンタウエイト17の上昇限位置に固定されている(
図5(a)参照)。
【0043】
(扉体12の起立時)
下限ストッパ23aをセットしてカウンタウエイト17の昇降動を阻止した後は、回転機構21を駆動してドラム19を正回転させる。ドラム19の正回転に伴い、固定及び移動兼用滑車15が、
図5(b)のように固定滑車16に向けて接近移動しつつワイヤロープ14をドラム19に巻き取り、
図5(c)のように倒伏状態の扉体12を起立揺動する。
【0044】
(起立状態の扉体12の倒伏時)
扉体12の倒伏時は、カウンタウエイト17の昇降動を阻止した状態で回転機構21を駆動してドラム19を反転させる。ドラム19の反転に伴い、固定及び移動兼用滑車15が、
図5(d)のように固定滑車16から離反する方向に移動しつつワイヤロープ14をドラムから巻き戻し、
図5(a)のように起立状態の扉体12を倒伏させる。
【0045】
本発明は、前記の例に限るものではなく、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0046】
例えば、前記実施例では、扉体12の先端部の幅方向全域に1本のロッド13を取り付けたものを示したが、扉体12の両側に各々ロッド13を取り付けても良い。また、ロッド13の代わりに、扉体12の先端部に吊りピースを取付け、その吊りピースにワイヤロープ14の一端を取付けても良い。
【0047】
また、前記実施例では、ワイヤロープ14を使用しているが、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、アラミド系、ポリアリレート系、超高密度ポリエチレンなどの繊維ロープを使用しても良い。
【0048】
また、前記実施例では扉体12が単一の浮体で構成された浮体式フラップゲートを示したが、複数の浮体を高さ方向に連結した浮体連結式フラップゲートに適用しても良い。
【0049】
また、前記回転機構21の正逆回転は電動で行うものであっても、手動で行うものであっても良い。また、エンジン等を用いるものでも良い。
【0050】
また、減速機は前記実施例のようにセルフロック機構を有するウォームギヤを使用したものが望ましいが、扉体12の起伏動作時以外にロックする機能があれば、セルフロック機構を有さないギヤを使用したものにブレーキなどを併用したものでも良い。
【0051】
また、回転機構21からドラム19への動力の伝達、ドラム19から固定及び移動兼用滑車15への動力の伝達は、チェーン21c、22cとスプロケット21a,21b、22a,22bに限らず、巻き上げに合わせて位置を規定できるものであれば、ワイヤ駆動、送りねじ駆動等を使用しても良い。