特許第5718804号(P5718804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5718804遊技機用の識別ラベルおよびこれを用いた遊技機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718804
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】遊技機用の識別ラベルおよびこれを用いた遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   A63F7/02 326Z
   A63F7/02 334
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-284403(P2011-284403)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-132395(P2013-132395A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2013年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135210
【氏名又は名称】株式会社ニューギン
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】足立 祐二
(72)【発明者】
【氏名】岩本 勲
(72)【発明者】
【氏名】山元 勲
(72)【発明者】
【氏名】安達 良平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 昇
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐介
【審査官】 藤脇 沙絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−029391(JP,A)
【文献】 特開2008−185674(JP,A)
【文献】 特開平09−253279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
A63F 5/04
G09F 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を透過可能なフィルム部と、
前記フィルム部における一方の面に設けられた接着部と、
前記フィルム部および前記接着部の少なくとも一方に付与され、照射された赤外線を受けて赤外線を発する識別材とを備え、
前記接着部を貼り付けて遊技機の構成部材に取り付けられ、前記フィルム部側から赤外線を照射して前記識別材から発せられた赤外線に基づいて検査が行われると共に、
前記識別材は、合成樹脂製の前記フィルム部からなる保護層または該フィルム部とは別の合成樹脂からなる保護層で覆われ、該保護層は、遊技機の設置環境での温度よりも高い温度域で呈色する呈色材が付与されると共に、遊技機の設置環境での温度よりも高い温度域で変形するよう構成され、該呈色材が呈色変化する温度と該保護層が変形する温度とが異なるように設定された
ことを特徴とする遊技機用の識別ラベル。
【請求項2】
前記呈色材が、該呈色材の呈色変化により情報パターンを形成するように付与された請求項記載の遊技機用の識別ラベル。
【請求項3】
前記フィルム部と前記接着部との間にホログラムを備え、該ホログラムの全部または一部は、該フィルム部側への接合力よりも該接着部側に強く接合される請求項1または2記載の遊技機用の識別ラベル。
【請求項4】
赤外線を透過可能なフィルム部と、
前記フィルム部における一方の面に設けられた接着部と、
前記フィルム部および前記接着部の少なくとも一方に付与され、照射された赤外線を受けて赤外線を発する識別材とを備え、
前記接着部を貼り付けて遊技機の構成部材に取り付けられ、前記フィルム部側から赤外線を照射して前記識別材から発せられた赤外線に基づいて検査が行われると共に、
前記フィルム部と前記接着部との間にホログラムを備え、該ホログラムの全部または一部は、該フィルム部側への接合力よりも該接着部側に強く接合された
ことを特徴とする遊技機用の識別ラベル。
【請求項5】
前記識別材が、該識別材から発せられる赤外線により情報パターンを形成するように付与された請求項1〜の何れか一項に記載の遊技機用の識別ラベル。
【請求項6】
前記請求項1〜の何れか一項に記載の遊技機用の識別ラベルによって封じられた前記構成部材としての基板ケースを備えた
ことを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不正防止対策に用いられる遊技機用の識別ラベルおよびこの識別ラベルを用いた遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機に代表される遊技機は、遊技の進行を制御するための種々の制御基板を構成部材として備えている。これらの制御基板には、遊技内容に関わるプログラムやデータを記憶したROMが搭載されているため、不正なプログラム等が記憶されたROMと交換されることを防ぐことが肝要である。このため、遊技機では、ベース部材とカバー部材とからなる基板ケースに制御基板を収納している。
【0003】
前記基板ケースでは、ベース部材とカバー部材とを係合手段を介して組み付けた後、ベース部材の側壁部分およびカバー部材の側壁部分に突出形成されたカシメ部を介して、締結方向へしか回転できないワンウェイネジ等によりベース部材とカバー部材とが分離不能に固定される(例えば特許文献1参照)。すなわち、このような構成の基板ケースでは、カシメ部を破断しない限り開封することができないから、不正な制御基板との交換を防止することができ、しかも破断時には痕跡が残るので、開封したことを認識できる。
【0004】
しかしながら、近年は不正行為者の不正行為が巧妙化しており、ベース部材側のカシメ部を傷付けることなくカバー部材側のカシメ部のみを破断して除去することで、ベース部材とカバー部材を分離して不正な制御基板に交換した後、別の基板ケースにおいてカバー部材側のカシメ部を傷付けることなくベース部材側のカシメ部のみを破断して除去することで得たカシメ部が残っている別のカバー部材を、カシメ部を残しておいた前記ベース部材に組み付けて再びワンウェイネジ等で固定することで、正規品を装うようにする不正行為が行われる場合がある。このように、制御基板を交換した基板ケースを構成するベース部材またはカバー部材の一方の部材に、別に用意した他方の部材を組み付ける不正行為においては、両部材の何れのカシメ部にも破断時の痕跡が残らないので、開封されたことを認識することができない。
【0005】
また別の不正防止対策として、基板ケースにおけるベース部材とカバー部材とが整合する部分表面に、所定の情報が表示された封印シールを貼り付けることは行われている(例えば特許文献2参照)。すなわち、基板ケースに貼り付けられた封印シールの存在により、目視で正規品であるか否かが簡単に判別可能であり、仮に基板ケースが開かれるなどの不正行為があった際に、封印シールの破断等の痕跡が残るので、不正行為の有無を判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−47400号公報
【特許文献2】特開平9−253279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、封印シールに表示された文字や絵柄などの情報のデータ化、このデータの加工、加工データの印刷等の複写に関する技術が身近になったことにより、封印シール自体が偽造されることがある。例えば、ドライヤなどで加熱して封印シールの接着力を弱め、更に既存の糊剥し液などの薬品を使用して更に接着力を弱め、その状態でカッターナイフ等で封印シールを痕跡を残さないように剥す。そして、制御基板を不正品に取り替えた後に、偽造した封印シールを基板ケースに貼り付けてしまえば、外観からは不正行為の有無を判別することができない。そこで、封印シール自体について、正規品であるか否かを確認できることが求められている。
【0008】
すなわち本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、正規品であるか否かを簡単に確認できる遊技機用の識別ラベルおよびこれを用いた遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の遊技機用の識別ラベルは、
赤外線を透過可能なフィルム部(102)と、
前記フィルム部(102)における一方の面に設けられた接着部(104)と、
前記フィルム部(102)および前記接着部(104)の少なくとも一方に付与され、照射された赤外線を受けて赤外線を発する識別材とを備え、
前記接着部(104)を貼り付けて遊技機(10)の構成部材(70)に取り付けられ、前記フィルム部(102)側から赤外線を照射して前記識別材から発せられた赤外線に基づいて検査が行われると共に、
前記識別材は、合成樹脂製の前記フィルム部(102)からなる保護層(108)または該フィルム部(102)とは別の合成樹脂からなる保護層(108)で覆われ、該保護層(108)は、遊技機(10)の設置環境での温度よりも高い温度域で呈色する呈色材が付与されると共に、遊技機(10)の設置環境での温度よりも高い温度域で変形するよう構成され、該呈色材が呈色変化する温度と該保護層(108)が変形する温度とが異なるように設定されたことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、フィルム部側から赤外線を照射することで、正規の識別ラベルであれば、識別材が赤外線領域で発光するのに対し、不正品に交換されていれば、基準を満たす赤外線は発せられない。すなわち、識別材によって発せられる赤外線を検査することで、赤外線を照射した識別ラベルが正規品であるか否かを簡単に確認できる。しかも、赤外線または赤外線以外の光線をあてても、人の目で識別可能な態様で識別材が発光しないので、不正行為対策を行っていること自体が気づかれ難く、不正行為者の偽造を困難にすることができる。
また、保護層は、例えばドライヤなどの熱源によって遊技機の設置環境で加わるはずもない所定温度以上に加熱されると外観が変化するので、識別ラベルや該識別ラベルの周辺に対して不正行為が行われた痕跡が残る。すなわち、不正行為の有無を見た目によって簡単に確認することができ、また識別ラベルを加熱により剥がしたり、識別ラベルを取り付けた構成部材に加熱により孔を開けたりするなどの不正行為を困難にし得る。
更に、呈色材による呈色変化と保護層の変形とを異なる温度で起こるように設定することで、不正行為者の加熱による不正行為の痕跡を、より幅広い温度範囲で残すことが可能である。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記呈色材が、該呈色材の呈色変化により情報パターンを形成するように付与されたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、呈色材の呈色変化により形成される情報パターンによって、正規品であるか否かを判別することができる。しかも、呈色材の付与パターンが複雑になるので、不正行為者の偽造を困難にすることができる。
請求項3に係る発明では、前記フィルム部(102)と前記接着部(104)との間にホログラム(110)を備え、該ホログラム(110)の全部または一部は、該フィルム部(102)側への接合力よりも該接着部(104)側に強く接合されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、ホログラムによって識別ラベルの偽造をより行い難くし得ると共に、識別ラベルを剥離した際にホログラムが壊れ易いので、剥がした識別ラベルの再利用を防止できる。
【0011】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項に係る発明の遊技機用の識別ラベルは、
赤外線を透過可能なフィルム部(102)と、
前記フィルム部(102)における一方の面に設けられた接着部(104)と、
前記フィルム部(102)および前記接着部(104)の少なくとも一方に付与され、照射された赤外線を受けて赤外線を発する識別材とを備え、
前記接着部(104)を貼り付けて遊技機(10)の構成部材(70)に取り付けられ、前記フィルム部(102)側から赤外線を照射して前記識別材から発せられた赤外線に基づいて検査が行われると共に、
前記フィルム部(102)と前記接着部(104)との間にホログラム(110)を備え、該ホログラム(110)の全部または一部は、該フィルム部(102)側への接合力よりも該接着部(104)側に強く接合されたことを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、フィルム部側から赤外線を照射することで、正規の識別ラベルであれば、識別材が赤外線領域で発光するのに対し、不正品に交換されていれば、基準を満たす赤外線は発せられない。すなわち、識別材によって発せられる赤外線を検査することで、赤外線を照射した識別ラベルが正規品であるか否かを簡単に確認できる。しかも、赤外線または赤外線以外の光線をあてても、人の目で識別可能な態様で識別材が発光しないので、不正行為対策を行っていること自体が気づかれ難く、不正行為者の偽造を困難にすることができる。
また、ホログラムによって識別ラベルの偽造をより行い難くし得ると共に、識別ラベルを剥離した際にホログラムが壊れ易いので、剥がした識別ラベルの再利用を防止できる。
【0012】
請求項に係る発明では、前記識別材が、該識別材から発せられる赤外線により情報パターンを形成するように付与されたことを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、検査時に識別材から発せられる赤外線により形成される情報パターンによって、正規品であるか否かを判別することができる。しかも、識別材の付与パターンが複雑になるので、不正行為者の偽造を困難にすることができる。
【0015】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項に係る発明の遊技機は、
前記請求項1〜の何れか一項に記載の遊技機用の識別ラベル(100)によって封じられた前記構成部材としての基板ケース(70)を備えたことを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、より高度な不正防止対策が必要とされる基板ケースを、識別ラベルによって適切に保護し得る。
【発明の効果】
【0016】
本願発明に係る遊技機用の識別ラベルによれば、正規品であるか否かを簡単に確認できる。また、本願の別の発明に係る遊技機によれば、本願発明に係る識別ラベルによって基板ケースを封じることで、より高度な不正防止対策を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好適な実施例に係るパチンコ機の正面図である。
図2】実施例のパチンコ機の背面図である。
図3】実施例の基板ケースの背面図であり、被覆部材を省略している。
図4】実施例の基板ケースの正面図であり、被覆部材を省略している。
図5図3のA−A線断面図である。
図6図3のB−B線断面図である。
図7】実施例の基板ケースを分解して示す概略斜視図である。
図8】実施例の識別ラベルを表側から示す説明図である。
図9図8のC−C線で破断した状態を示す説明図である。
図10】(a)は、実施例の検査装置を示す概略側面図であり、(b)は(a)のX矢視図である。
図11】実施例の検査装置の制御ブロック図である。
図12】識別ラベルの変更例に係る層構造を示す説明断面図である。
図13】識別ラベルの変更例に係る識別部の配置パターンを示す概略平面図である。
図14】(a)は、変更例の検査装置を示す概略側面図であり、(b)は(a)のY矢視図である。
図15】変更例の検査装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る遊技機用の識別ラベルおよびこれを用いた遊技機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。また、以下の説明において前・後および左・右とは、特に断りのない限り、図1に示すように遊技機を正面側(遊技者側)から見た場合において指称するものとする。
【実施例】
【0019】
(パチンコ機について)
図1および図2に示すように、実施例に係るパチンコ機10は、矩形枠状に形成されて遊技店の図示しない設置枠台に固定される固定枠としての外枠11の開口前面側に、遊技盤30(図1参照)が着脱可能に保持された本体枠としての中枠14が開閉および着脱可能に組み付けられている。中枠14の前面側には、遊技盤30を透視保護するガラス板17を備えた装飾枠としての前枠16が開閉可能に組み付けられると共に、前枠16の下方にパチンコ球を貯留する下球皿20が開閉可能に組み付けられる。そして、前枠16の下部には、下球皿20の上側に位置して、パチンコ球Sを貯留する上球皿21が組み付けられており、前枠16の開閉に合わせて上球皿21も一体的に開閉するよう構成される。また、中枠14には、下球皿20の右側に位置するように回動操作可能なハンドル部材22が配設されており(図1参照)、該ハンドル部材22の回動操作によって中枠14の下部に設けられた球発射装置(図示せず)により上球皿21に貯留したパチンコ球が遊技盤30の遊技領域に向けて打ち出されるようになっている。
【0020】
(遊技盤について)
前記遊技盤30には、遊技領域が前面に設けられるベニヤ板や透明なアクリル板からなる板状本体の後側に配設した裏ユニットとも呼ばれる設置部材32に、各種図柄を変動表示可能な図柄表示部を有する図柄表示装置34が配設されている(図2参照)。遊技盤30には、図柄表示装置34の図柄表示部に対応する位置に前後に開口する表示開口部(図示せず)が開設され、該表示開口部に所要の装飾を施したセンター役物とも称される装飾部材(図示せず)が臨むようになっている。また、遊技盤30の所要位置には、パチンコ球Sの入賞により図柄表示装置34の図柄を変動開始させる始動入賞装置や、大当りの発生時に開放する特別入賞装置(何れも図示せず)等が配設されている。
【0021】
図2に示すように、パチンコ機10の裏側には、各種電気部品を制御する制御基板60を備えた制御装置40,42,44,46,48,50が配設されている。遊技盤30の後面に着脱可能に配設される図柄表示装置34の後面には、遊技盤30に設けられる可動演出装置(図示せず)や発光装置や図柄表示装置34を制御したり、前枠16に設けられるスピーカ24や発光装置26等を制御する統括制御装置42が配設されている。また、図柄表示装置34の後面には、右側(図2では左側)に偏倚した部位に設置された統括制御装置42の左側に、図柄表示装置34の表示を制御する表示制御装置44が配設されている。そして、統括制御装置42は、遊技盤30の後側に配設される主制御装置40に配線接続され、主制御装置40からの制御信号に基づいて所定の制御を実行するようになっている。また、球通出案内部36の後面には、パチンコ機10の電源制御を行う電源装置46や、球発射装置を制御する発射制御装置48や、球通路ユニット38に配設した球払出装置39を制御する払出制御装置50や、外部端末に接続されるインターフェース基板52等が配設されている。なお、これらの各装置46,48,50,52は、主制御装置40に配線接続されている。また、電源装置46、発射制御装置48および払出制御装置50は、主制御装置40からの制御信号に基づいて所定の制御を実行するようになっている。なお、実施例では、表示制御装置44と払出制御装置50との間に主制御装置40が配設されている(図2参照)。
【0022】
実施例のパチンコ機10は、該パチンコ機10を構成する所定の構成部材に、該構成部材を取り換えたりする等の不正行為の有無を識別するために、識別ラベルが付与されている。ここで、主制御装置40において主制御基板(制御基板)60を収納する基板ケース70に識別ラベル100を設ける場合について、以下に説明する。なお、主制御基板60は、統括制御装置42、電源装置46、発射制御装置48、払出制御装置50、インターフェース基板52等に信号を送るパチンコ機全体の制御を統括する重要な制御基板である。
【0023】
(主制御装置について)
図3図7に示すように、主制御装置40は、パチンコ機10の全体を制御する主制御基板60を基板ケース70に収納して構成される。図7に示すように、主制御基板60は、長方形の板状体であって、所要の回路パターンが形成されると共に、半導体記憶装置(実施例ではCPUおよびRAMを内蔵した1チップ素子)62やICチップ64等の電子部品および複数のコネクタソケットが後面(実装面60a)に設置されている(図6では半導体記憶装置62とICチップ64のみ表示)。そして、コネクタソケットには、各種装置や他の制御装置46,48,50,52に接続する配線コネクタ(図示せず)が接続される。
【0024】
(基板ケースについて)
図3図7に示すように、基板ケース70は、設置部材32側に配置されるベース部材72と、このベース部材72の後側に組付けられるカバー部材80とから基本的に構成され、ベース部材72とカバー部材80との間に画成される収納空間70aに主制御基板60が収納される。主制御基板60は、実装面60aをカバー部材80の後述する板状部81に対向させると共に、ROMソケット63やICチップ64等の電子部品の端子がハンダで固定される固定面60bをベース部材72の後述する板状部72aに対向させた姿勢で、基板ケース70の収納空間70aに収納されている(図5および図6参照)。また、基板ケース70は、収納空間70aに収納する主制御基板60の形状に合わせて長方形に形成され、長手を左右方向に延在させた姿勢で設置部材32の下部に着脱可能に取り付けられている(図2参照)。
【0025】
(ベース部材について)
前記ベース部材72は、透明な合成樹脂成形品であって、図6に示すように、主制御基板60の固定面60bに対向する長方形の板状部72aの上下および左の外周縁に、後方(カバー部材80側)へ向けて外壁部72bが立ち上がる略箱状に形成されている。ベース部材72には、上側の外壁部72bおよび下側の外壁部72bの内側に、所定間隔離間して夫々の外壁部72bと平行に内壁部72cが立設されて、上側の内外の壁部72b,72cの間および下側の内外の壁部72b,72cの間に、スライド溝73が夫々画成されている。また、ベース部材72では、右側の外周縁に内外の壁部72b,72cが形成されず、上下のスライド溝73,73の左端部が何れも開放している。
【0026】
上側の内外の壁部72b,72cの間には、板状部72aから所定間隔離間する位置において左右方向に離間して複数の係止部74が形成されると共に、下側の内外の壁部72b,72cの間には、同じく板状部72aから所定間隔離間する位置において左右方向に離間して複数の係止部74が形成されている(図5参照)。なお、ベース部材72において、上下の係止部74は、上下対称な位置関係で配置されて、その形状も上下対称となっている。また、板状部72aの右端部には、上下方向に離間して複数(実施例では2つ)の突片75,75が外方(右側方)に向けて延出して形成されている(図7参照)。更に、ベース部材72の左側の外壁部72bには、上下方向に離間して複数(実施例では2つ)のベース側カシメ部76,76が外方(左側方)に向けて延出して形成されると共に、左側の外壁部72bにおける両ベース側カシメ部76,76の間に、ベース側連結部77が外方(左側方)に向けて延出して形成されている。
【0027】
(カバー部材について)
前記カバー部材80は、透明な合成樹脂成形品であって、図5図7に示すように、主制御基板60の実装面60aに対向する略長方形の板状部81の上下および左右の外周縁の夫々に、前方(ベース部材72側)へ向けて外壁部82が立ち上がる箱状に形成されている。カバー部材80の上下の外壁部82,82は、ベース部材72における上下のスライド溝73,73に夫々収容可能に設定されると共に、カバー部材80の左右の外壁部82,82は、ベース部材72の板状部72aの左右方向の幅寸法と略同一に設定されている。すなわち、基板ケース70では、ベース部材72の上下の外壁部72bの内側にカバー部材80の上下の外壁部82が臨む状態で、ベース部材72とカバー部材80とが組み付けられる。また、カバー部材80は、外壁部82に囲まれた内側に主制御基板60を収納して、該主制御基板60に挿通するピンやネジ等の固定部材により主制御基板60を保持するよう構成される(図6参照)。
【0028】
前記カバー部材80の板状部81は、主制御基板60の実装面60aに対する離間距離の大きな主板面81aと、該板状部81の左上角部および右下角部に形成されて主制御基板60の実装面60aに対する離間距離の小さな副板面81bとからなり、該副板面81bが主板面81aより前側(ベース部材72側)に位置する階段状に形成されている(図7参照)。そして、板状部81の副板面81bには、主制御基板60のコネクタソケット(図示せず)に対応してソケット開口83が開設され、該ソケット開口83を介して基板ケース70の外側に臨むコネクタソケットに配線コネクタ(図示せず)が接続される。なお、副板面81bの外周縁には、後側に延出する規制壁84が形成されており(図7参照)、規制壁84は、ソケット開口83の外側に臨むコネクタソケットに接続されている配線コネクタのコネクタソケットからの抜き外しを困難にして、不正行為者の配線コネクタに対する不正行為を抑制するよう機能する。
【0029】
前記カバー部材80には、板状部81における主制御基板60の半導体記憶装置62に対向する部位に、前方(主制御基板60側)に向けて凹ませて凹状部85が形成されると共に、凹状部85の前面(制御基板60側の面)に前方へ突出した保持片85aが設けられている(図5および図6参照)。保持片85aは、主制御基板60をカバー部材80の前面に取り付けた際に、半導体記憶装置62を位置決め保持するよう構成されている。
【0030】
前記カバー部材80の上下の外壁部82,82には、左右方向に離間してベース部材72の係止部74と同数の切欠部86が形成されると共に、各切欠部86における右端の後端部には右方に延出する引掛部87が突設されている(図7参照)。引掛部87の左方への延出寸法は、切欠部86の左右寸法より小さく設定されており、引掛部87の延出端と切欠部86の左端との間には、係止部74の通過を許容する隙間が前側に開放するよう形成される。また、カバー部材80において、上側の外壁部82の切欠部86および引掛部87と、下側の外壁部82の切欠部86および引掛部87とは、上下対称な位置関係で配置されて、その形状も上下対称となっている。実施例の基板ケース70では、ベース部材72に対してカバー部材80の上下の外壁部82,82を、対応するスライド溝73,73に対して各切欠部86の隙間が係止部74に対応する状態で収容した後、該ベース部材72に対してカバー部材80を左方にスライドすることで、各係止部74に対応する引掛部87が夫々係止して、ベース部材72にカバー部材80が組み付けられる。
【0031】
前記カバー部材80の右側の外壁部82には、ベース部材72の各突片75と対応する位置に、該突片75を挿脱可能な挿通孔(図示せず)が夫々形成されている。そして、カバー部材80の上下の外壁部82,82をベース部材72のスライド溝73,73に収容した状態で、各突片75に対して対応する挿通孔が左方の整列位置に臨み、ベース部材72に対してカバー部材80を左方にスライドすることで、各挿通孔に対応する突片75が挿通するよう構成される。
【0032】
前記カバー部材80の左側の外壁部82には、ベース部材72の各ベース側カシメ部76と対応する位置にカバー側カシメ部88が外方(左側方)に向けて夫々延出して形成されている(図7参照)。そして、締結方向にしか回転操作できないワンウェイネジ89によりベース側カシメ部76とカバー側カシメ部88とを締結することで、両カシメ部76,88が分離不能に固定される。すなわち、ベース側カシメ部76とカバー側カシメ部88とをワンウェイネジ89で一旦締結すると、両カシメ部76,88を破壊しなければ、ベース部材72とカバー部材80とを分離することができず、両者72,80の不正開放を非常に困難にしている。なお、ワンウェイネジ89を締結したカバー側カシメ部88には、ワンウェイネジを覆って操作不能とするキャップ90が嵌め込まれる(図3および図7参照)。カバー部材80の左側の外壁部82には、両カバー側カシメ部88,88の間に、ベース部材72のベース側連結部77と対応するカバー側連結部91が外方(右側方)に向けて延出して形成される。なお、両連結部77,91は、ネジ92で締結される。 そして、ネジで締結された両連結部77,91には、右方に開口する箱状に形成された被覆部材93が着脱自在に取り付けられ、被覆部材93を両連結部77,91から取り外さなければネジ91にアクセスできないようになっている。ここで、被覆部材93は、透明でかつ赤外線を透過可能な合成樹脂の成形品であり、両連結部77,91に跨って貼り付けた後述の識別ラベル100を被覆している。
【0033】
(基板ケースの取り付け構造について)
前記基板ケース70の設置部材32への取付構造について簡単に説明する。基板ケース70は、ベース部材72における板状部72aの右側前面に設けられ、設置部材32の後面に設けた受部(図示せず)に引っ掛ける爪部72d(図4参照)と、カバー部材80における左側の外壁部82の上部に設けられ、設置部材32の後面に設けた位置決めピン(図示せず)が挿通される位置決め孔が形成された取付部94と、左側の外壁部82中央に設けた固定部95とを備えている。なお、固定部95には、ナイラッチ等の取着具96が装着されている(図3参照)。そして、基板ケース70は、設置部材32の受部に爪部72dを引っ掛けると共に、設置部材32の位置決めピンを取付部94の位置決め孔に挿入したもとで、固定部95に装着された取着具96を設置部材32に設けた図示しない保持孔に係合することで、設置部材32に対して着脱可能に組み付けられる。
【0034】
(識別ラベル)
図5および6に示すように、基板ケース70は、ベース部材72とカバー部材80とに跨るように貼り付けられた2枚の識別ラベル100,100によって2箇所で封じられている。すなわち、より高度な不正防止対策が必要とされる基板ケース70を、識別ラベル100によって適切に保護することができる。実施例の基板ケース70では、該基板ケース70の上面略中央部において、ベース部材72における上側の外壁部72bおよびカバー部材80における上側の外壁部82に跨って第1の識別ラベル100が取り付けられると共に、該基板ケースの左側面において左方に突出する連結部77,91に跨って第2の識別ラベル100が取り付けられている。識別ラベル100は、取り付け箇所に合わせた形状とされたシート状物であって、実施例では矩形状に形成されている。複数の識別ラベル100によって基板ケース70等の構成部材を封じる場合、識別ラベル100の層構造および該層構造に由来する情報パターンが同じのものを用いても、該層構造および情報パターンが異なるものを用いてもよく、実施例では、同じ層構造および情報パターンを有する第1および第2識別ラベル100を採用しているので、以下にまとめて説明する。
【0035】
図8および図9に示すように、識別ラベル100は、該識別ラベル100の支持体となるフィルム部102と、このフィルム部102における一方の面側(裏側という)に設けられた接着部104と、フィルム部102に付与された識別部106とを備えている。また、識別ラベル100は、フィルム部102における接着部1044と反対側の他方の面側(表側)に付与された保護層108を有しており、フィルム部102が保護層108で覆われて該識別ラベル100の表側に露出しないようになっている。更に、識別ラベル100は、フィルム部102と接着部104との間にホログラム110を備えており、透明なフィルム部102および保護層108を介してホログラム110を表側から視認可能に構成されている。識別ラベル100は、全体として可撓性を有しており、基板ケース70の取り付け面の形状に合わせて適宜折り曲げて、接着部104の接着力によって基板ケース70に貼り付けられる(図5および図6参照)。なお、識別ラベル100は、後述の検査装置120によって表側から検査が行われ、識別部106の表側を覆うフィルム部102や保護層108などの層が赤外線を透過可能に構成される。
【0036】
(フィルム部)
前記フィルム部102は、透明な合成樹脂製の薄いシート状物であって、可撓性を有している。フィルム部102としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなるポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等からなるポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が用いられる。これらのフィルムは、一軸または二軸方向に延伸加工が施されたものであっても、延伸加工が施されていない未延伸のものの何れであってもよい。また、フィルム部102は、1層(実施例)または2層以上の複層で構成され、例えば2層以上で構成する場合は、同じ材質の層を重ね合わせても、異なる材質の層を重ね合わせてもよい。更に、フィルム部102は、表面処理を施したり、適宜の添加剤を加えることなどにより、帯電防止やその他の機能を有するものを採用できる。
【0037】
(接着部)
前記接着部104としては、例えば、フェノール系樹脂、フラン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂またはその他の熱硬化性樹脂や、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミドまたはその他の熱可塑性樹脂や、ゴム系やデンプンなどの1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、接着部104は、常温固化型、溶剤揮発固化型、紫外線などの光線により固化する光硬化型、熱により硬化する熱硬化型の何れであってもよいが、加熱手段などの機器を用いることなく常温で接着可能なアクリル系等の粘着剤を採用するのが好ましい。
【0038】
(識別部)
前記識別部106は、フィルム部102の裏面に付与された識別材を有し、赤外線の照射を受けて、目視できない赤外線波長域で発光(赤外線を発する)ようになっている。以下の説明において、識別部106に外部から照射される赤外線を「入射赤外線」といい、入射赤外線によって識別部106から発せられる赤外線を「励起赤外線」という。実施例の識別部106は、所定波長域の入射赤外線によって励起されて入射赤外線と異なる特定波長域で発光するよう構成され、例えば識別部106は、800nmの入射赤外線に励起されて、1000nmの励起赤外線を発するようになっている。識別材としては、ZnSを母体とし、Nd等の発光中心をド−プした蛍光体や、WO4、P412、Mo416等の酸化物にNd等をド−プした蛍光体や、Ndの一部をY、Sc、La、Ce等で置換した蛍光体等が用いられる。なお、識別部106は、蛍光体からなる識別材を付着させるバインダとして、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の樹脂を含んでいてもよく、このバインダは赤外線の透過を妨げるものではない。識別部106は、無色透明あるいは付与対象となるフィルム部102と同色とされて、識別ラベル100の外観に影響を与えないよう構成するのが望ましい。実施例では、識別部106が無色透明であって、識別ラベル100において識別部106が形成されている部位と識別部106が形成されていない部位との見分けが付かないようになっている。なお、識別部106は、入射赤外線が照射されると当該入射赤外線を反射や吸収等して、入射赤外線と異なる波長域の励起赤外線を返す構成であってもよい。識別ラベル100は、識別部106の表側に配置されたフィルム部102等が、表側から識別部106に照射される入射赤外線および識別部106で発光される励起赤外線の何れも変調することなく透過可能に構成される。
【0039】
前記識別ラベル100は、フィルム部102に対して識別材を付与する領域と付与しない領域とを設けることで、複数の識別部106が適宜のパターンで形成されている。すなわち、識別材をフィルム部102の全体に付与して全域を識別部106としてもよいが、実施例では、複数の識別部106の配置によって情報パターン(特に区別する場合は識別情報パターンという)を形成している。なお、識別部106により形成される識別情報パターンとしては、文字、模様、図形、線や点等の配列などを選択することができる。図8に示すように、実施例の識別ラベル100は、該識別ラベル100の長手方向に延在する2条の識別部106,106を備え、各識別部106は短手方向に互いに離間している。すなわち、識別ラベル100には、検査装置120を該識別ラベル100の短手方向に移動させた際に、2回の赤外線検知がなされる識別情報パターンが形成されている。
【0040】
(保護層)
前記保護層108は、識別部106が形成されたフィルム部102を保護する層であり、フィルム部102と同様の合成樹脂で構成することができる。また、保護層108は、パチンコ機10の設置環境での温度よりも高い所定温度で外観が変化するよう構成されている。なお、「外観の変化」とは、保護層108における全部または一部の色彩の変化や、保護層108の収縮や展延や穴あきなどによる形状の変化等、目視により確認できる変化を指す。実施例の識別ラベル100では、前記所定温度よりも高い温度域で呈色する呈色材がフィルム部102と保護層108との間に付与されて呈色部109が形成されると共に、保護層108が前記所定温度よりも高い温度域で変形するよう構成されている。そして、呈色部109(呈色材)が呈色変化する温度(呈色温度)と、保護層108が変形する温度(変形温度)とが異なるように設定され、パチンコ機10の通常の設置環境において加わない温度が識別ラベル100または該識別ラベル100の周辺に付加された際に、呈色部109の呈色変化と保護層108の変形とが段階的に生じるようになっている。ここで、実施例では、保護層108が変形する温度域よりも呈色部109の呈色変化が低い温度域で起こるように設定され、見た目で判り易い変化を先に行わせ、不正行為の継続をためらわせるようになっている。呈色温度および変形温度は、ハンダゴテやドライヤ等の加熱手段によって加熱された場合を想定して例えば100℃以上に設定され、ホールなどでのパチンコ機の設置時だけでなく、パチンコ機の保管や搬送時などの通常使用時の環境で想定される温度変動の範囲(例えば40℃以下)において外観が変化しないようになっている。
【0041】
(呈色部)
前記呈色部109は、パチンコ機10の設置環境の温度よりも高い呈色温度の加熱により呈色するよう構成されており、この呈色部109の色彩の変化によって、識別ラベル100に不正な熱が加えられたか否かを目視により確認できるようになっている。ここで、呈色とは、加熱によって色が表れる発色や、加熱によって加熱前の色から他の色に変わる変色や、加熱によって加熱前の色が消える変色や、加熱によって加熱前と同じ色であっても色が濃くなったり薄くなったりする変色等、目視によって確認できる色彩の変化が起こることをいう。識別ラベル100は、呈色材を付与する領域と付与しない領域とを設けることで、複数の呈色部109が適宜のパターンで形成されている。すなわち、呈色材を全体に付与して識別ラベル全域を呈色部109としてもよいが、実施例では、複数の呈色部109の配置によって情報パターンを形成している。なお、呈色部109により形成される情報パターン(特に区別する場合は呈色情報パターンという)としては、文字、模様、図形、線や点等の配列などを選択することができる。図8に示すように、実施例の識別ラベル100は、該識別ラベル100の長手方向に亘って延在する2条の呈色部109,109を備え、両呈色部109,109は短手方向の両縁に形成されている。すなわち、識別ラベル100には、不正な温度が加えられた際に、該識別ラベル100の両縁に2条の色の変化が表れる呈色情報パターンが形成されている。なお、実施例の識別ラベル100では、識別部106と呈色部109との一部領域が厚み方向で重なるように配置されている。
【0042】
前記呈色部109を構成する呈色材としては、温度が元へ戻っても復色しない不可逆性のものと、温度が元に戻れば復色する可逆性のものがあるが、不可逆性のものが望ましい。不可逆性の呈色材としては、Ni、Co、Pb、Ca、Ag、Mn、Fe等の重金属の有機金属塩や複塩を主成分として、所定温度で熱分解することで呈色するものを用いることができる。可逆性の呈色材としては、異分子間の電子授受(例えばラクトン型、ラクタム型などの染料とフェノール化合物との電子授受)を利用したものであって、例えばロイコ染料と顕色剤と溶媒との混合物を用いることができる。可逆性の呈色材としては、コレストリック型液晶をマイクロカプセルの殻に閉じ込めた結晶の分子配向性の変化を用いたものであったり、Hg、Ag、Cu、Pbなど重金属のヨウ化物、またはそれらの錯塩の結晶遷移を利用したものを採用することができる。
【0043】
前記パチンコ機10の設置環境の温度よりも高い変形温度で変形する保護層108としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性合成樹脂を採用することができる。
【0044】
(ホログラム)
前記ホログラム110は、可視光またはレーザー光により立体的な画像が表れるものであって、識別ラベル110の中央部に長手方向に離間して2つのホログラム110,110が識別部106と重ならないように形成されている。ホログラム110としては、平面ホログラムおよび体積ホログラムの何れも使用でき、具体例としては、レリーフホログラム、リップマンホログラム、フルネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、レーザー再生ホログラム、白色光再生ホログラム、カラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子などを採用可能である。実施例のホログラム110は、可視光によって画像が現れるものが好適であり、ホログラムの画像としては、文字、模様、図形、線や点等の配列などを選択することができる。なお、レインボーホログラム等の、金属箔などの反射層によって反射された光で画像を再生するものは、光の回折を起こす回折格子層の裏側に形成される反射層を含めてホログラム110という。
【0045】
前記識別ラベル100は、ホログラム110の全部または一部が、フィルム部102側への接合力よりも該接着部104側に強く接合されて、識別ラベル100を基板ケース70から無理やり剥がした際に、ホログラム110の全部または一部がフィルム部102側に残らないようになっている。実施例の識別ラベル100は、ホログラム110が弱接着層112を介してフィルム部102に接合されており、この弱接着層112が接着部104よりも脆く構成されている。弱接着層112を構成する合成樹脂としては、ポリスチレン等のスチレン樹脂やスチレン共重合体、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、エチルセルロースやニトロセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂など、ホログラムの視認性を損なわないものを採用できる。
【0046】
(検査装置について)
次に、識別ラベル100の適否を検査する検査装置120について説明する。図10および図11に示すように、検査装置120は、識別ラベル100に対して入射赤外線を照射する照射部122と、識別ラベル100の識別部106が発する励起赤外線を検知する検知部124と、この検知部124で検知された励起赤外線を予め設定された照合基準と照合する照合部126と、この照合部126の照合結果に基づいて所定の情報を外部に報知する報知部128とを備えている。また、検査装置120は、検査者が指先操作可能な操作部130を備え、この操作部130の操作によって照射部122による入射赤外線の照射または照射停止を操作し得るようになっている。なお、検査装置120では、識別ラベル100の表側(フィルム部102)から入射赤外線を照射して、識別ラベル100の識別部106から発せられた励起赤外線に基づいて検査が行われる。検査装置120は、ハウジング120aに収納された電池(図示せず)の電力によって、照射部122、検知部124、照合部126および報知部128を作動している。
【0047】
図10に示すように、検査装置120は、携帯可能なサイズのハウジング120aに、照射部122、検知部124、照合部126、報知部128および操作部130が設けられてユニット化されており、検査者が検査装置120を持ち運んで、例示した基板ケース70を取り外すことなく識別ラベル100を検査し得るようになっている。なお、実施例のハウジング120aは、矩形箱状に形成されている(図10参照)。検査装置120は、照射部122および検知部124が、ハウジング102aの端面(検査端面という)に臨むように設けられ、検査装置120は、検査端面を識別ラベル100に向かい合わせて検査を行うようになっている。
【0048】
前記照射部122は、入射赤外線を識別ラベル100に対して照射するものであって、例えば発光ダイオードが用いられる。実施例の照射部122は、識別部106を構成する識別材が反射・吸収・発光させることができる一定波長域の入射赤外線を、操作部130のON操作に基づいて連続的に照射するよう構成され、操作部130のOFF操作により照射を停止するようになっている。
【0049】
前記検知部124は、ハウジング102aにおける照射部122が臨む端面と同じ面に臨むように設けられ、照射部122から照射された入射赤外線によって励起された識別材の励起赤外線を検知するようになっている。検知部124としては、フォトダイオード、フォトトランジスタあるいはCCD等を用いることができ、実施例では検知部124としてフォトダイオードが採用されている。また、検知部124は、識別部106が発する特定波長域の赤外線だけを透過するフィルタが設けられて、検知部124は該特定波長域の赤外線を検知するよう構成されている。ここで、照射部122から照射した入射赤外線が識別部106以外の部位で反射や吸収(変調)されることで、照射した入射赤外線の波長のまま等、識別材が発する特定波長域以外の赤外線が、検査対象から返ってくることが考えられる。実施例の検知部124のように、照射部122からの入射赤外線(例えば800nm)に励起されて識別部106が発する特定波長域(例えば1000nm)だけを検知するよう構成することで、識別部106以外を検知してしまう誤検知を防止できる。
【0050】
前記照合部126は、検知部124と電気的に接続されており(図11参照)、検知部124から励起赤外線の検知信号が入力されるようになっている。照合部126は、フィルタによって透過された特定波長域の励起赤外線の検知受光強度を数値化する変換手段126aと、照合基準が設定・記憶され、変換手段126aで数値化された検知信号値と照合基準とを比較して適否を判断する比較判定手段126bとを備えている。実施例の比較判定手段126bには、適正な識別部106が付与された識別ラベル100に対して照射部122から入射赤外線を照射した際に、検知部124で検知されるべき受光強度の検出信号の値(設定受光強度)が、識別材の付与量の変動や照射部122における入射赤外線の照射強度のばらつき、入射赤外線の安定度、識別部106の表側を覆うフィルム部102や保護層108による減衰等を考慮した所定の幅を持たして記憶されている。比較判定手段1126bは、変換手段126aで数値化された検知受光強度の値と設定受光強度の値とを比較し、検知受光強度の値が設定受光強度の値以上であれば、報知部128に良判定信号を出力する。これに対し、比較判定手段126bは、変換手段126aで数値化された検知受光強度の値と設定受光強度の値とを比較し、検知受光強度の値が設定受光強度の値を下回れば、報知部128に対して何も信号を出力しない。また、比較判定手段126bは、変換手段126aで数値化された検知受光強度の値と設定受光強度の値とを比較し、検知受光強度の値が設定受光強度の値以上であっても、予め比較判定手段126bに設定された所定の上限値(上限値>設定受光強度)よりも検知受光強度が高ければ、報知部128に対して何も信号を出力しない。
【0051】
前記報知部128は、LED等からなる発光手段128aと音出力手段128bとを備え、正常および異常の少なくとも一方の情報を、光と音との両方によって報知し得るよう構成されている。報知部128は、比較判定手段126bから良判定信号が入力されると、発光手段126aを発光すると共に、ビープ音等の機械音や音声等が音出力手段128bから出力され、検査者は報知部128による光および音の報知によって検査対象が正規品であると判断できる。これに対して、報知部128は、比較判定手段126bから良判定信号が入力されないと、発光手段128aを消灯すると共に音出力手段128bから何も出力されないので、検査者は報知部128の無反応により検査対象が正規品ではないと判断できる。また、識別ラベル100において識別部106により識別情報パターンが形成されている場合は、識別ラベル100の表側に沿って検査装置120の検査端面を動かすことで、検知される励起赤外線によって所定の識別情報パターンの報知がなされ、この報知パターンによっても正規品か否かを判別できる。
【0052】
前記検査装置120は、構成部材に付与された識別ラベル100の識別部106に合わせて、照射部122から照射する入射赤外線の波長域や、入射赤外線と異なる波長域の励起赤外線を検知するため検知部124や、照合部126の照合基準が設定されている。このように、識別ラベル100とこの識別ラベル100を検査可能な検査装置120とは、関連付けられており、識別ラベル100と検査装置120とによって検査システムが構成される。なお、実施例の検査装置120は、識別ラベル100から離した状態で検査を行えるので、識別ラベル100に合わせて特別な形状とすることも特に必要はなく、汎用性が高い。
【0053】
(実施例の作用)
前記識別ラベル100は、メーカー以外の設備が整っていない環境(例えばホール等)では識別ラベル100と同じものを製作することが難しく、識別ラベル100の複製は容易ではない。しかも、識別ラベル100に形成されたホログラム110は、高度な設備および技術を有する専門メーカーでしか形成することが困難であるので、識別ラベル100の複製をより難しくすることができる。また、識別ラベル100は、単一の構成ではなく、フィルム部102、保護層108、呈色部109、識別部106、ホログラム110および接着部104を組み合わせた複層構造であるので、識別ラベル100を複製することが一層行い難くなっている。そして、基板ケース70等の構成部材において外側から目視できる位置に識別ラベル100を取り付ければ、不正行為に対する牽制となる。
【0054】
前記識別ラベル100は、接着部104を有しているので、接着部104を基板ケース70等の構成部材の面に貼り付けたり、環状にまるめて一端の接着部104を他端のフィルム部102または接着部104に貼り付けることで、環の内側を通した配線等の長尺物を囲うように取り付けることも可能である。このように、識別ラベル100によれば、取り付け対象に応じた適切な取り付け態様を選択することができ、パチンコ機10の様々な形状の構成部材を幅広く不正行為から保護し得る。
【0055】
前記識別ラベル100は、入射赤外線によって励起された励起赤外線を発する識別部106を備えているので、該識別ラベル100に向けて入射赤外線を照射することで、適正な識別ラベル100であれば、識別部106が赤外線領域で発光するのに対し、外観だけを模倣して識別部106を備えていない不正なラベルに交換されていれば、照合基準を満たす赤外線は該ラベルから発せられない。すなわち、識別部106によって発せられる励起赤外線を検知して照合基準と照合することで、入射赤外線を照射した識別ラベル100が正規品であるか否かを簡単に確認でき、正規の識別ラベル100によって封じられた基板ケース70であれば正規品であることが判る。ここで、識別部106は、入射赤外線と異なる波長域の励起赤外線を発するようにすれば、照射した入射赤外線の単なる反射と区別することができ、識別部106を精度よく検知し得る。
【0056】
ところで、ブラックライトによって紫外線を当てることで可視光を発光する紫外線発光型蛍光体を、偽造等の不正防止のために用いることも考えられる。紫外線発光型蛍光体は、服飾等の広い分野で用いられ、ブラックライトの入手が容易であると共に紫外線発光型蛍光体の存在を検知するセンサーも市販されている。すなわち、紫外線発光型蛍光体は、ブラックライトを当てることで目視によって容易に確認することができる。また紫外線発光型蛍光体は流通していることから、紫外線発光型蛍光体による不正防止対策を複製することは比較的容易である。実施例の識別部106は、入射赤外線によって励起されて励起赤外線を発するので、入射赤外線の照射の有無にかかわらず、識別部106自体が目視できず、仮に赤外線を照射したとしても専用の検査装置120を保有していない者は、識別部106の存在が分からない。このように、識別部106は、入射赤外線または入射赤外線以外の光線(可視光や紫外線)をあてても、人の目で識別可能な態様で識別部106が発光しないので、不正行為対策を行っていること自体が気づかれ難く、不正行為者の識別ラベル100の偽造をより困難にすることができる。
【0057】
前記識別ラベル100は、識別部106の表側がフィルム部102および保護層108で覆われると共に識別部106の裏側が接着部104で覆われているので、これらの被覆の存在により識別部106の削り取りを困難にし得る。例えば識別ラベル100を基板ケース70から剥ぎ取った後に識別部106を削り取ったとしても、フィルム部102を構成する樹脂と識別材との分離が困難であり、同様に接着部104を構成する樹脂と識別材との分離も困難である。すなわち、既存の識別ラベル100から識別材を削り取って、この削り取った識別材を溶媒等に混ぜて別のラベルに再度付着させたとしても、正規(元)の識別部106における識別材の単位面積当たりの存在量(含有量)より再付着させた識別材の単位面積当たりの存在量(含有量)が少なくなる。ここで、識別部106における励起赤外線の発光強度は、識別材の含有量に比例するので、正規の識別部106による励起赤外線の発光強度よりも不正に再生した識別部による励起赤外線の発光強度が小さくなる。励起赤外線(識別部)の適否を判断する照合基準として、発光強度(実施例では検知部124での受光強度)を設定することで、設定された発光強度を下回る励起赤外線であれば、検査対象が不正品であることが分かり、設定された発光強度以上の励起赤外線であれば、検査対象が適正品であることが分かる。すなわち、識別部106を形成する際に、単に識別材を存在させるだけでなく、その存在量もコントロールすることで、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。このように、実施例の識別ラベル100によれば、識別部106の再利用を阻むことができるので、基板ケース70を開封して不正な制御基板に取り換えた後に複製した識別ラベルを取り付けて偽装する不正行為を困難にし得る。また、識別部106における識別材の存在量を、例えばロットや機種や構成部材等で変更し、これらロットや機種や構成部材等に合わせた設定受光強度を照合基準として設定した検査装置120を用意することで、識別部106に合わせた検査装置100を有している者だけが識別ラベル100の真贋判定を行うことができ、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。
【0058】
前記識別ラベル100は、識別部106を所定パターンで形成することで、識別部106から発せられる励起赤外線により形成される識別情報パターンによっても、識別ラベル100が正規品であるか否かを判別することができる。実施例の識別ラベル100は、検査装置120を短手方向に移動させた際に、2箇所で識別部106が検知される識別情報パターンが付与されているので、仮に1箇所でしか識別部106が検知されないのであれば複製のおそれがあることが判り、また識別情報パターンを知らない不正行為者は、当然のことながら正規の識別ラベル100を複製することはできない。しかも、識別情報パターンが付与された識別ラベル100は、フィルム部102全体に識別部106を形成する構成と比べて、識別部106の付与パターンが複雑になることから、不正行為者の識別ラベルの偽造をより高いレベルで防止することができる。また、識別部106の識別情報パターンを、例えばロットや機種や構成部材等で変更することで、これらロットや機種や構成部材等に合わせた識別情報パターン情報を有している者だけが識別ラベル100の真贋判定を行うことができ、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。
【0059】
前記識別ラベル100は、例えばドライヤなどの熱源によってパチンコ機10の設置環境で加わるはずもない所定温度以上に加熱されると外観が変化するので、識別ラベル100や該識別ラベル100の周辺に対して不正行為が行われた痕跡が残る。すなわち、不正行為の有無を見た目によって簡単に確認することができ、また識別ラベル100を加熱により剥がしたり、識別ラベル100を取り付けた基板ケース70に加熱により孔を開けたりするなどの不正行為を困難にし得る。また、識別ラベル100は、保護層108の外観の変化として、呈色材からなる呈色部109による呈色変化と保護層108自体の変形とを異なる温度で起こるように設定することで、不正行為者の加熱による不正行為の痕跡を、より幅広い温度範囲で残すことが可能である。
【0060】
前記識別ラベル100は、爪やへらなどで基板ケース70から全体の構成を保ったまま剥がそうとしても、ホログラム110がフィルム部102側よりも接着部104に接合しているので、接着部104が剥がれる前にホログラム100とフィルム部102の間が剥がれてしまい、ホログラム110が壊れてしまう。すなわち、識別ラベル100は、そっくりそのまま剥がすことができないので、識別部やホログラムなどの所定の識別情報を維持したまま、再度貼り付けることができず、剥がした識別ラベル100を再利用する不正行為を防止できる。
【0061】
(変更例)
なお、遊技機の構成としては、実施例のものに限らず、種々の変更が可能である。
(1)実施例では、識別ラベルが設けられる構成部材として制御装置の基板ケースを例に挙げたが、パチンコ機を構成する構成部材の何れに識別ラベルを取り付けてもよい。例えば主制御基板以外の統括制御基板や払出制御基板などの制御基板自体や該制御基板を収納した基板ケース、あるいは払出制御装置や入賞装置等のパチンコ球の払い出しに関係する装置など、不正行為者によって取り換え等の不正な攻撃を受ける可能性がある構成部材に識別ラベルを取り付けると特に有効である。なお、基板ケースに収納された主制御基板に識別ラベルを貼り付けて、基板ケースの外側から検査装置で検査を行うのであれば、識別ラベルに対向するベース部材またはカバー部材が赤外線を透過可能に構成される。
(2)実施例では、遊技機としてパチンコ機を例示して説明したが、これに限られるものではなく、アレンジボール機やピンボール機、スロットマシン機等の各種遊技機を採用し得る。
【0062】
(3)識別ラベルを構成する層の構成は、フィルム部102および接着部104と、フィルム部および接着部の何れか一方に付与された識別材とを備えていれば、実施例の構成に限定されない。ここで、「付与」されるとは、識別材が表面または内側に層状に付与される態様であっても、フィルム部102または接着部104を構成する合成樹脂中に識別材が分散される構成であってもよい。例えば以下のような識別ラベルの層構成が例示される。
図12(a)に示す変更例1の識別ラベル141は、フィルム部102と、このフィルム部102の裏側に形成された接着部104と、フィルム部102および接着部104の間に層状に付与された識別部106とから構成されている。
図12(b)に示す変更例2の識別ラベル142は、フィルム部102と、このフィルム部102の裏側に形成された接着部104と、フィルム部102の内部に層状に付与された識別部106とから構成されている。なお、フィルム部102は、識別部106を挟んだ複層構造であってもよい。
図12(c)に示す変更例3の識別ラベル143は、フィルム部102と、このフィルム部102の裏側に形成された接着部104と、フィルム部102を構成する合成樹脂中に分散された識別材とから構成されている。すなわち、変更例3では、フィルム部102が識別部としても機能する。
図12(d)に示す変更例4の識別ラベル144は、フィルム部102と、このフィルム部102の裏側に形成された接着部104と、この接着部104を構成する合成樹脂中に分散された識別材とから構成されている。すなわち、変更例4では、接着部104が識別部としても機能する。
【0063】
(4)実施例の如く、フィルム部102と別に保護層108を形成する構成に限られず、フィルム部102を保護層108としてもよい。例えば、図12(d)に示す変更例5の識別ラベル145は、フィルム部102と、このフィルム部102の裏側に形成された接着部104と、フィルム部102および接着部104の間に層状に付与された識別部106とから構成されている。フィルム部102を構成する合成樹脂中に分散された識別材とから構成され、フィルム部102がパチンコ機10の設置環境よりも高い温度で変形すると共に、フィルム部102の表面に付された呈色材からなる呈色部109が呈色変化するようになっている。なお、フィルム部102を保護層108とする場合は、識別部106を該フィルム部102で被覆する構成とするのがよい。
【0064】
(5)呈色材は、保護層108または保護層となるフィルム部102の表面または内側に層状に付与される態様であっても、保護層108またはフィルム部102を構成する合成樹脂中に分散される構成であってもよい。
【0065】
(6)ホログラム110の位置は、実施例に限定されない。例えば、図12(e)に示す変更例6の識別ラベル146は、フィルム部102と、このフィルム部102の裏側に形成された接着部104と、フィルム部102と接着部104との間に形成されたホログラム110と、接着部104側に形成された識別部106とから構成されている。すなわち、変更例6のように、識別部106の表側にホログラム110をを設けてもよい。
(7)フィルム部102と接着部104との間や、その他の層間の一部領域または全部領域に弱接着層を設けることで、識別ラベルを剥離しようとした際に、弱接着層で層が剥離して識別ラベルが層間で壊れる構成であってもよい。
【0066】
(8)識別部106による識別情報パターンは、実施例の構成に限定されず、文字、一次元あるいは二次元コード、または模様等の所定のパターンで設けることができる。例えば図13(a)に示す変更例7の識別ラベル147のように、複数の識別部106の幅を一方から他方に向かうにつれて大きくなるように異ならすことで、検査装置120を一方から他方に移動するように検査した際に、検知範囲が次第に大きくなる識別情報パターンが表れる。また図13(b)に示す変更例8の識別ラベル148のように、識別部106を帯状ではなく、円形に形成された識別部106を並べて配置し、各列で識別部106の配置数を変更してもよい。
(9)呈色部109による呈色情報パターンは、実施例の構成に限定されず、文字、一次元あるいは二次元コード、または模様等の所定のパターンで設けることができる。
【0067】
(10)検査装置は、検査対象に対して可視光を照射するライトを設けてもよい。図14および図15に示す変更例の検査装置150は、実施例で説明した構成に加えて、ハウジング120aにおける検査端面に臨むように配設されて、照射部122と同じ側に可視光を照射し得るLEDなどからなるライト152を備えている。ライト152は、操作部130を押圧するON操作によって光を照射し、操作部130のOFF状態において消灯される。
(11)検査装置は、内蔵された電池の残量を確認できるようにしてもよい。図15に示すように、変更例の検査装置150は、ハウジング120aに収納された電池154の電力によって、照射部122、検知部124、照合部126、報知部128およびライト152を作動している。そして、検査装置150は、ハウジング120aに設けられた確認ボタン156をON操作することで、電池154の残量を表示し得る残量表示部158を備えている。残量表示部158は、LEDなどの発光体による発光によって電池154の残量を表している。例えば残量表示部158は、電池154が十分ある場合は青で発光して、電池154の残りが少なくなると赤で発光する態様や、電池154が十分ある場合は点灯し、電池154の残りが少なくなると点滅する態様などで電池154の残量を表す。なお、確認ボタン156を操作しない限り、残量表示部158は作動しないようになっている。
(12)残量表示部として、報知手段128を用いてもよい。例えば確認ボタン156をON操作した際の報知手段128の発光手段128aの発光態様によって電池154の残量を表したり、確認ボタン156をON操作した際に報知手段128の音出力手段128bによって出力される音で電池154の残量を表してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 パチンコ機(遊技機)
70 基板ケース(構成部材)
100 識別ラベル
102 フィルム部
104 接着部
108 保護層
110 ホログラム
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