特許第5718809号(P5718809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718809
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】加工品の破壊を防止する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20150423BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20150423BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   H01L21/26 T
   H01L21/265 602B
   H01L21/324 T
【請求項の数】28
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2011-508781(P2011-508781)
(86)(22)【出願日】2009年5月15日
(65)【公表番号】特表2011-522400(P2011-522400A)
(43)【公表日】2011年7月28日
(86)【国際出願番号】CA2009000681
(87)【国際公開番号】WO2009137940
(87)【国際公開日】20091119
【審査請求日】2012年5月15日
(31)【優先権主張番号】61/071,764
(32)【優先日】2008年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513011661
【氏名又は名称】マトソン テクノロジー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カム、デーヴィッド、マルコム
(72)【発明者】
【氏名】シブレ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート、グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】マッコイ、スティーブ
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−351871(JP,A)
【文献】 特開平09−126913(JP,A)
【文献】 特表2007−519232(JP,A)
【文献】 特開平08−045922(JP,A)
【文献】 特開平07−235574(JP,A)
【文献】 特開2007−317732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/265
H01L 21/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)半導体加工品の熱処理中に半導体加工品の変形を測定するステップであって、当該加工品は半導体ウェーハを含み、加工品の変形の測定は前記ウェーハの熱処理中の変形の測定を含み、かつ変形の測定はウェーハの曲率の測定を含み、
b)前記ウェーハの前記変形の測定に応答し、前記ウェーハの熱処理に関連した行動をとるステップであって、当該行動をとるステップは、前記熱処理中の前記ウェーハの温度測定に対し、変形補正を実施することを含む
方法。
【請求項2】
変形補正を実施する前記ステップは、前記温度測定値を得るのに使用した反射率の測定値に変形補正を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
行動をとる前記ステップは、前記ウェーハの熱処理を変更することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱処理を変更する前記ステップは、前記ウェーハの所望する変形の測定に応答し、前記ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱処理を変更する前記ステップは、前記ウェーハ内の熱暴走を防止するステップを含み、当該熱暴走を防止するステップは、前記ウェーハの裏側に供給されている照射パワーを増加させること、および前記ウェーハの上側に供給されている照射パワーを減少させることの内の少なくとも1つを含む
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記熱処理を変更する前記ステップは、前記ウェーハと、このウェーハの下方にある支持プレートとの間の間隔を広げることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理を変更する前記ステップは、ウェーハの初期形状に対する前記ウェーハの変形を小さくするステップを含み、当該変形を小さくするステップは、前記ウェーハのより低温側に供給されている照射パワーを増加させること、および前記ウェーハのより高温側に供給されている照射パワーを減少させることの内の少なくとも1つを含む
前記請求項3に記載の方法。
【請求項8】
曲率を測定する前記ステップは、前記ウェーハが反射した像の変化を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
像の変化を測定する前記ステップは、前記ウェーハが反射した像の倍率の変化を測定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
像の変化を測定する前記ステップは、前記ウェーハの表面に対する少なくとも2つの法線を識別することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記変形の測定は、前記ウェーハの表面上の複数の位置のウェーハの変形を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
行動をとる前記ステップは、前記ウェーハの1つの側に供給されている照射パワーを選択的に増加させることにより、前記ウェーハの所望する変形を誘導することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
変形を誘導する前記ステップは、前記ウェーハをドーム形状に変形させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ウェーハの所望する変形が誘導されたときに、前記ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
a)半導体加工品を熱処理するように構成されている熱処理システムであって、当該加工品は半導体ウェーハを含み、
b)熱処理システムによるウェーハの熱処理中に前記ウェーハの変形を測定するように構成されている測定システムであって、当該測定システムは前記ウェーハの曲率を測定するよう構成され、
c)前記熱処理システムおよび前記測定システムと協働し、前記ウェーハの前記変形を測定する前記測定システムに応答し、前記ウェーハの前記熱処理に関連した行動をとるように構成されているプロセッサ回路とを備え、当該プロセッサ回路は、前記熱処理中の前記ウェーハの温度測定に対し、変形補正を実施するように構成されている
半導体加工品を熱処理するための装置。
【請求項16】
前記プロセス回路は、前記温度測定値を得るために使用される、反射率の測定値に対して変形補正を実施するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセッサ回路は、前記測定システムによる前記ウェーハの変形の測定に応答し、前記ウェーハの前記熱処理を変更するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記熱処理システムは、照射フラッシュ源を含み、前記プロセッサ回路は、前記熱処理システムを制御し、前記測定システムによる前記ウェーハの所望する変形の測定に応答し、前記ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始するように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセッサ回路は、前記熱処理システムを制御し、前記ウェーハの裏側に供給されている照射パワーを増加させること、および前記ウェーハの上側に供給されている照射パワーを減少させることの内の少なくとも1つにより、前記ウェーハにおける熱暴走を防止するように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサ回路は、前記熱処理システムを制御し、前記ウェーハと前記ウェーハの下方に位置する支持プレートとの間の間隔を広げるように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサ回路は、前記熱処理システムを制御し、前記ウェーハのより低温側に供給されている照射パワーを増加させること、および前記ウェーハのより高温側に供給されている照射パワーを減少させることの内の少なくとも1つにより、その初期形状に対する前記ウェーハの変形を低減するように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項22】
前記測定システムは、前記ウェーハが反射した像の変化を測定するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項23】
前記測定システムは、前記ウェーハが反射した像の倍率の変化を測定するように構成されている、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記測定システムは、前記ウェーハの表面に対する少なくとも2つの法線を識別するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項25】
前記測定システムは、像源と前記ウェーハの表面による前記像源の反射を検出するように構成されている検出器とを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項26】
前記測定システムは、前記ウェーハの表面上の複数の位置におけるウェーハの変形を測定するよう構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項27】
前記プロセッサ回路は、前記ウェーハの所望する変形を誘導するように前記ウェーハの1つの側に供給されている照射パワーを選択的に増加させることにより、前記熱処理システムを制御するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項28】
前記プロセッサ回路は、前記熱処理システムを制御し、前記ウェーハの所望する変形が誘導されたときに、前記ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始するように構成されている、請求項27に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、加工品、例えば半導体ウェーハを熱処理するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
加工品の熱処理に多数の出願が、関係している。例えばマイクロプロセッサのような半導体チップの製造にあたり、加工品は、アニールまたは他の熱処理目的のための熱処理チャンバ内に支持された半導体ウェーハを一般に含む。本願出願人が権利者の1人となっている米国特許第7,501,607号(本明細書ではこの米国特許を参考例として援用する)は、かかる半導体ウェーハをアニールするための熱処理技術の例について述べている。ここでウェーハは、まず中間温度となるように予備的に加熱され、その後、表の面またはデバイス側の面がアニール温度まで急速に加熱される。初期の予備的な加熱ステージは、ウェーハを通過する熱伝導時間よりもかなり低いレートで行われ、この予備的な加熱ステージは、アークランプまたは他の照射デバイス(irradiance device)を用いてウェーハの裏面または基板側の面を照射し、例えば毎秒400℃未満のランプ関数レートでウェーハを加熱することによって達成される。その後の表面加熱ステージは、ウェーハのバルクがより低温の中間温度の近くに維持された状態で、デバイスの側面だけを最終アニール温度まで加熱するように、ウェーハを通る熱伝導時間よりもかなり急速に行われる。かかる表面加熱はフラッシュランプまたはフラッシュランプのバンクからの、例えば1ミリ秒のような比較的短い時間長さを有する、大パワーの照射フラッシュ(irradiance flash)にデバイスの側面を露出することによって達成できる。次に、ウェーハのより低温のバルクは、デバイスの側面の急速な冷却を促進するためのヒートシンクとして働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,501,607号
【特許文献2】米国公開特許出願第2004/0178553号
【特許文献3】米国特許第7,445,382号
【特許文献4】米国公開特許出願第2007/0069161号
【特許文献5】米国公開特許出願第2005/0179354号
【特許文献6】米国公開特許出願第2008/0273867号
【特許文献7】米国特許第6,594,446号
【特許文献8】米国特許第6,941,063号
【特許文献9】米国特許第6,303,411号
【特許文献10】米国特許第6,963,692号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】[1] シルビオ・サバレセ、ミン・チェンおよびピエトロ・ペローナ、「ミラー反射からのローカル形状」、インターナショナルジャーナルオブコンピュータビジョン、第64巻第1号、31〜67ページ、2005年(Silvio Savarese, Min Chen, and Pietro Perona, "Local shape from mirror reflections", International Journal of Computer Vision, vol. 64, no. 1 , pp. 31-67, 2005.)
【非特許文献2】[2] S・サバレセおよびP・ペローナ、「固有表面の3D再構成のためのローカル分析」、コンピュータビジョンおよびパターン認識に関するIEEE会議の議事録、米国、カワイ、2001年12月(S. Savarese and P. Perona, "Local analysis for 3D reconstruction of specular surfaces", in Proc. of IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, Kawa'i, USA, December 2001.)
【非特許文献3】[3] S・サバレセおよびP・ペローナ、「固有表面の3D再構成のためのローカル分析−第2部」、コンピュータビジョンの欧州会議の議事録、デンマーク、2002年5月(S. Savarese and P. Perona, "Local analysis for 3D reconstruction of specular surfaces - part II", in Proc. of European Conference of Computer Vision, Denmark, May 2002.)
【非特許文献4】[4] S・サバレセおよびP・ペローナ、「規則的グリッドの反射からのミラー表面のローカル形状の回復」、コンピュータビジョンの欧州会議の議事録、デンマーク、2004年5月(M. Chen S. Savarese and P. Perona, "Recovering local shape of a mirror surface from reflection of a regular grid", in Proc. of European Conference of Computer Vision, Prague, May 2004.)
【非特許文献5】[5] シルビオ・サバレセ、影および反射からの形状の再構成、博士論文、電気工学、カルフォルニア工科大学、カルフォルニア、パサディナ、2005(Silvio Savarese, Shape Reconstruction from Shadows and Reflections, Ph.d. thesis, electrical engineering, CalTech, Pasadena, California, 2005.)
【非特許文献6】[6] ピーター・コベシ、「表面法線に関連するシェープレットは、表面を発生する」コンピュータビジョンに関する第10回IEEE会議、北京、2005年、994〜1001ページ(Peter Kovesi, "Shapelets correlated with surface normals produce surfaces", in 10th IEEE International Conference on Computer Vision, Beijing, 2005, pp. 994-1001.)
【非特許文献7】[7] ロバート・T・フランコート、ラマ・チェラッパ、「シェーディングから形状のインテグラビリティを実施するための方法」、パターン認識およびマシンインテリジェンスに関するIEEEトランザクション、第10巻、第4号、439〜451ページ、1998年、7月(Robert T. Frankot and Rama Chellappa, "A method for enforcing integrability in shape from shading", IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, vol. 10, no. 4, pp. 439-451 , July 1998.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェーハのデバイス側面をウェーハのバルクよりも実質的に高い温度まで急速に加熱するようなかかるアニール方法は、デバイスの側面をウェーハの他の部分よりも高いレートで熱膨張させる傾向がある。デバイスの側面の温度とウェーハのバルクの温度との間の温度差の大きさによっては、この温度差は「熱的な弓状変形」を生じさせ、よって通常平面状のウェーハを熱変形した形状に変える性質がある。デバイスの側面の加熱ステージの規模および急速性によっては熱変形した形状は、ウェーハの中心がウェーハのエッジ領域に対して急速に立ち上がる状態でドーム形状となる属性を有し得る。熱による弓状変形の加工品の外周部またはエッジ(例えば30cm径のウェーハの外側の2cmまたは4cm)を下方向に急峻にカーブさせ、よってこの熱変形した形状をしたフリスビー(登録商標)のようなフライングディスクに類似したソーサー形状の属性を有し得る。熱変形した形状は、ウェーハの応力が低減された構造を示し、デバイスの側面とウェーハのバルクとの間の熱勾配の結果生じる熱応力を低減する。
【0006】
ウェーハのデバイスの側面を加熱する極端な急速性(1ミリ秒のフラッシュのコースでは、例えばウェーハ内の代表的な熱伝導時間よりもかなり高速であること)に起因し、ウェーハ変形はかなり急速で生じ得るので、ウェーハのエッジは、下方に急速に移動する性質がある。ウェーハがエッジの近くで従来の支持ピンによって支持されている場合、ウェーハの熱による弓状変形により、下向きの大きな力が支持ピンに加えられ、支持ピンとウェーハの双方を潜在的に損傷または破壊し得る。かかる力は、支持ピンからウェーハ自体を垂直上方向に持ち上げることがあり、この結果、ウェーハが元の位置に落下し、ピンに衝突する場合には、ウェーハが更に損傷することがある。
ウェーハが更に径方向内側に位置している支持ピンによって支持されている場合、ウェーハのエッジは急激に下向きに弓状に変化し、ウェーハを上方に支持している支持プレートに衝突し、潜在的にウェーハを損傷または破壊し得る。更に、かかる熱による弓状変化が生じる急速性に起因し、ウェーハの種々の領域に加えられる初期速度は、ウェーハが平衡最小応力形状をオーバーシュートし、急激に振動するように働き、この結果、更に応力が生じ、ウェーハは潜在的に破損または破壊され得る。
【0007】
(発明の概要)
照射フラッシュの結果生じる、半導体ウェーハの急激な熱変形の他に、半導体ウェーハは、加熱中の他の状況でも熱変形し得る。
例えば(ウェーハの片面だけの照射または等しくないパワーでの双方の面の照射の結果として)比較的低速の予備的加熱ステージ中に、ウェーハの厚み方向に熱勾配が存在する場合、ウェーハのより高温の面のほうがより低温の面よりも大きく熱膨張し、よってウェーハはドーム形状となるように変形され、この場合、ドームの外側表面にある面がより高温となる。
更に別の例として、ウェーハの一表面にフィルムが貼付されている場合、この膜がウェーハの反対の面の上にある材料(この反対の面は、ウェーハの基板でもよいし、反対の面に貼付された別の異なるフィルムでもよい)とは異なる熱膨張係数(CTE)を有することがあり得る。このことも、ウェーハの熱変形を生じさせるように働く。
【0008】
本発明者たちは、熱処理中の半導体ウェーハまたはその他の加工品に対するかかる変形の多数の効果を識別した。例えば、本発明者たちは、ウェーハの表面から放出または反射される電磁放射線の測定値は、ウェーハの変形によって生じる測定誤差を生じやすいことを発見した。例えば、ウェーハの表面の反射率を測定している場合、ウェーハによって反射され、検出器が受ける照明放射線の強度は、ウェーハが平面形状からドーム形状に熱変形する際に、ウェーハの熱変形したドーム形状に関連する増幅効果または球面レンズ効果に起因して変化し、測定誤差の原因を生じさせる。かかる反射率の測定が放射率で補償された温度測定値を発生するのに使用されている場合、かかる温度測定値のかかる測定エラーの問題を有する。
【0009】
熱処理時の熱変形の効果の別の例として、本願出願人が出願人の1人となっている米国公開特許出願第2004/0178553号(本明細書において参考例として援用する)は、単一の照射フラッシュを用いるのではなく、2つの連続するフラッシュにより、ウェーハのデバイス側の面を所望するアニール温度まで加熱する一実施形態について開示している。初期の照射フラッシュは、ウェーハをドーム形状に熱変形させ、このドーム形状では、デバイス側の面の中心のほうがウェーハの外周部よりもフラッシュランプに接近している。第2の照射フラッシュは、デバイス側の面が平衡形状に戻り始める前にこのようなドーム形状に熱変形したときにデバイス側の面に入射するようなタイミングで発生される。かかる実施形態により、デバイス側の面は、全体が平坦な形状に維持されながらウェーハを1回のみの照射フラッシュに露光させることにより、デバイス側の面をアニール温度まで加熱した場合よりも、ウェーハが損傷したり、破壊される可能性が低い状態で、所望するアニール温度までデバイス側の面が到達できるようにする。デバイス側の面をアニール温度までフラッシュ加熱する前に、デバイス側の面の中心がウェーハの周辺よりもフラッシュランプに近くなっているようなドーム形状となるように、ウェーハをこのようにあらかじめ変形する結果によって、アニールフラッシュの開始時にウェーハが反対方向にあらかじめ変形され、ウェーハの中心がウェーハの外周部よりもフラッシュランプから離間した場合より損傷または破壊の可能性がより少なくなることも本発明者たちは発見した。従って、ウェーハの中心がフラッシュランプにより近くなっているドーム形状へのウェーハが熱変形することは、特に大パワー照射フラッシュを受けるためのウェーハの準備をする際の予備的ステップとして、ある状況では有利となる得ることを本発明者たちは発見した(用語の理解を容易にするために、ウェーハの中心がウェーハの外周部よりも垂直上方に持ち上げられているようなドーム形状を、本明細書では「正のドーム」または「正の曲率」のドーム形状と称し、逆に、ウェーハの外周部がウェーハの中心よりも垂直上方に持ち上げられているようなドーム形状を、本明細書では「「負のドーム」または「負の曲率」のドーム形状と称す。)
【0010】
しかしながら、熱変形の大きさおよび熱処理システムの物理的パラメータによっては、逆に同じタイプの「正の曲率」の熱変形が不利となり得ることも、本発明者たちは発見した。例えば米国特許第7,501,607号は、ウェーハの熱変形が好ましくない熱の不均一性および熱暴走を生じさせることがあり、この結果、潜在的にウェーハが損傷または破壊され得る。この例では、(例えばデバイス側の面を照射し、ウェーハを予備的に加熱することにより)デバイス側の面がウェーハの裏面よりも過度に高温となるように、裏面を予備的に加熱した場合、この結果生じる熱による弓形変形が本明細書に定義した「正」の方向に生じる傾向があり、ここでウェーハの中心領域は、ウェーハを上方に支持している支持プレートから離間するよう若干上方に移動し、ウェーハの外側エッジは、支持プレートにより接近するように移動する。かかる熱による弓形変形のもとで、ウェーハの裏面の外側エッジが支持プレートに接近するにつれ、裏面の外側エッジから支持プレートへの熱伝導レートが増加し、この結果、デバイス側の面と裏面との間の温度差がより大きくなり、熱による弓形変形効果が更に増大してしまう。更に、外側エッジがウェーハの他の部分に対して低温になるにつれ、外側エッジは収縮する性質があり、このことはウェーハの膨張した高温の中心部を更なる熱により弓形形状にさせる。従って、ウェーハがより弓形形状になればなるほど、ウェーハのエッジから支持プレートへの熱伝導がより大きくなり、このことは更に弓形変形を促進し、エッジにおける熱伝導の損失をより大きくする。このようなシナリオにおいて、熱暴走が生じることがあり、この結果、ウェーハ内の熱勾配は、望ましくないほど大きくなり得る。これら不均一性は、その大きさによってはウェーハを損傷させたり、破壊したりすることさえもある。かかる熱結合および熱暴走効果は、予備的加熱ステージの他に、照射フラッシュ後のその後の冷却ステージでも生じ得る。
【0011】
従って、照射フラッシュの結果生じる破壊の可能性を低減するのに望ましい、ウェーハの一般的な同じタイプの「正の」曲率の変形が、曲率の大きさおよび熱処理システムの他のパラメータによっては、望ましくない熱勾配および潜在的な熱暴走も生じさせるという点でも望ましくないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の図示する実施形態によれば、半導体加工品の熱処理中に半導体加工品の変形を測定するステップと、加工品の変形の測定に応答し、加工品の熱加熱に関してある行動をとるステップを含む方法が提供される。熱処理中の加工品の変形を測定することにより、適当な熱処理方法を強化または変更するためのある行動をとり得ることが望ましい。
【0013】
加工品として、半導体ウェーハを挙げることができ、加工品の変形を測定するステップはウェーハを熱プロセッシング中の変形を測定することを含むことができる。
【0014】
このような行動をとることは、熱プロセッシング中にウェーハの温度測定に対し、変形補正を実施することを含むことができる。この補正を実施することは、温度測定値を得るために使用される反射率の測定値に対する変形補正を実施することを含むことができる。かかる方法は、加工品の熱変形によって生じる測定誤差の補償を可能にすることが好ましい。
【0015】
ある行動をとるステップは、ウェーハの熱処理を変更することを含むことができる。
【0016】
例えば、熱プロセッシングを変更するステップは、ウェーハの所望する変形の測定に応答し、前記ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始することを含むことができる。従って、好ましいことに、ウェーハの変形を測定し、例えば、ウェーハの形状が、所定の曲率範囲内の正のドーム形状とし得る、所望する変形状態にある時に、照射フラッシュを開始することにより、フラッシュの結果生じる、ウェーハが損傷したり、又は破壊されたりする可能性を低減できる。
【0017】
熱プロセッシングを変更するステップは、ウェーハ内の熱暴走を防止することを含むことができる。熱処理を変更するステップは、ウェーハとこのウェーハの下方にある支持プレートとの間の間隔を広げることを含むことができる。熱プロセッシングを変更するステップは、ウェーハの初期形状に対するウェーハの変形を小さくすることを含むことができる。熱プロセッシングを変更するステップは、ウェーハの表面に追加の熱を供給することを含むことができる。熱プロセッシングを変更するステップは、ウェーハの熱プロセスを中止することを含むことができる。
【0018】
変形を測定するステップは、ウェーハの曲率を測定することを含むことができる。曲率を測定するステップは、ウェーハがドーム形状に変形したときの曲率半径を測定することを含むことができる。
【0019】
曲率を測定するステップは、ウェーハが反射した像の変化を測定することを含むことができる。例えば、像の変化を測定するステップは、ウェーハが反射した像の倍率の変化を測定することを含むことができる。上記とは異なり、または上記に加え、像の変化を測定するステップは、ウェーハの表面に対する少なくとも2つの法線を識別することを含むことができる。
【0020】
行動をとるステップは、ウェーハの所望する変形を誘導することを含むことができる。変形を誘導するステップは、ウェーハをドーム形状に変形させることを含むことができる。誘導するステップは、ウェーハの中心のほうがウェーハの外周部よりも照射フラッシュ源により近くなっているドーム形状となるように前記ウェーハを変形させることを含むことができる。ウェーハを変形させるステップは、ウェーハの表面を照射し、表面を熱膨張させることを含むことができる。ウェーハを変形させるステップは、ウェーハの両側の平面を選択的に照射することを含むことができる。ウェーハを変形させるステップは、少なくとも1つのフィルムでコーティングされた表面を有するウェーハを照射することを含むことができる。
【0021】
この方法は、ウェーハの所望する変形が誘導されたときに、ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始するステップを更に含むことができる。
【0022】
本発明の別の説明のための実施形態によれば、半導体加工品を熱処理するための装置が提供される。この装置は、半導体加工品を熱処理するようになっている熱処理システムと、熱処理システムによる熱加工品の熱処理中に前記加工品の変形を測定するようになっている測定システムとを含み、この装置は、熱処理システムおよび測定システムと協働し、測定システムによる加工品の変形を測定することに応答し、加工品の熱処理に関連し、行動をとるように構成されているプロセッサ回路とを更に含む。
【0023】
加工品は、半導体ウェーハを含むことができ、前記熱処理システムは、熱プロセッシングシステムを含むことができる。
【0024】
プロセッサ回路は、熱プロセッシング中のウェーハの温度測定に対し、変形補正を実施するように構成できる。プロセス回路は、温度測定値を得るために使用される、反射率の測定値に対して変形補正を実施するように構成できる。
【0025】
プロセッサ回路は、測定システムによる前記ウェーハの変形の測定に応答し、前記ウェーハの前記熱プロセスを変更するように構成できる。
【0026】
熱処理システムは、照射フラッシュ源を含むことができ、プロセッサ回路は、測定システムによるウェーハの所望する変形の測定に応答し、熱処理システムを制御し、ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始するよう構成できる。
【0027】
プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、ウェーハでの熱暴走を防止するために構成できる。プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、ウェーハとウェーハの下方に位置する支持プレートとの間の間隔を広げるように構成できる。プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、その初期形状に対するウェーハの変形を低減するように構成できる。プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、ウェーハの表面に追加熱を供給するよう構成できる。プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、ウェーハの熱プロセッシングを中止するように構成できる。
【0028】
測定システムは、ウェーハの曲率を測定するように構成できる。測定システムは、ウェーハがドーム形状に変形したときの曲率半径を測定するように構成できる。測定システムは、ウェーハが反射した像の変化を測定するように構成できる。例えば、測定システムは、ウェーハが反射した像の倍率の変化を測定するよう構成できる。測定システムは、像源(image source)と前記ウェーハの表面による像源の反射を検出するように構成できる。検出器は、例えばカメラを含むことができる。上記とは異なり、または上記に加え、測定システムは、ウェーハの表面に対する少なくとも2つの法線を識別するように構成できる。
【0029】
プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、ウェーハの所望する変更を誘導するように構成できる。例えば、プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、ウェーハがドーム形状に変形するように構成できる。このドーム形状は、ウェーハの中心のほうが例えば、前記ウェーハの外周部よりも照射フラッシュ源により近くなっているドーム形状とすることができる。
【0030】
プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、ウェーハの表面を照射し、この表面を熱膨張させるように構成できる。プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、ウェーハの両側の平面を選択的に照射するよう構成できる。プロセッサ回路は、熱処理システムを制御し、フィルムでコーティングされた少なくとも1つの表面を有するウェーハを照射するよう構成できる。
【0031】
プロセッサ回路は、ウェーハの所望する変形が誘導されたときに、熱処理システムを制御し、ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始するよう構成できる。
【0032】
本発明の別の説明のための実施形態によれば、半導体加工品の熱処理中に半導体加工品の変形を測定するための手段と、加工品の変形の測定に応答し、加工品の熱処理に関連し、行動をとるための手段とを備える装置が提供される。
【0033】
加工品は、半導体ウェーハを含むことができ、加工品の変形を測定するための手段は、ウェーハの熱プロセッシング中の変形を測定するための手段を含むことができる。
【0034】
行動をとるための手段は、熱プロセッシング中のウェーハの温度測定値に対し、変形補正を実施するための手段を含むことができる。変形補正を実施するための手段は、温度測定値を得るのに使用した反射率の測定値に変形補正を実施するための手段を含むことができる。
【0035】
行動をとるための手段は、ウェーハの熱処理を変更するための手段を含むことができる。
【0036】
熱プロセッシングを変更するための手段は、ウェーハの所望する変形の測定に応答し、ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始するための手段を含むことができる。
【0037】
熱プロセッシングを変更するための手段は、ウェーハ内の熱暴走を防止するための手段を含むことができる。熱プロセッサを変更する手段は、ウェーハとこのウェーハの下方にある支持プレートとの間の間隔を広げるための手段を含むことができる。
【0038】
熱プロセッシングを変更するための手段は、ウェーハの初期形状に対する前記ウェーハの変形を小さくするための手段を含むことができる。熱プロセッシングを変更するための手段は、ウェーハの表面に追加の熱を供給するための手段を含むことができる。熱プロセッシングを変更するための手段は、ウェーハの熱プロセスを中止するための手段を含むことができる。
【0039】
変形を測定するための手段は、ウェーハの曲率を測定するための手段を含むことができる。曲率を測定するための手段は、ウェーハがドーム形状に変形したときの曲率半径を測定するための手段を含むことができる。
【0040】
曲率を測定するための手段は、ウェーハが反射した像の変化を測定するための手段を含むことができる。例えば、像の変化を測定するための手段は、ウェーハが反射した像の倍率の変化を測定するための手段を含むことができる。像の変化を測定するための手段は、ウェーハの表面に対する少なくとも2つの法線を識別するための手段を含むことができる。
【0041】
行動をとるための手段は、ウェーハの所望する変形を誘導するための手段を含むことができる。所望する変形を誘導するための手段は、ウェーハをドーム形状に変形させるための手段を含むことができる。変形を誘導するための手段は、ウェーハの中心のほうが前記ウェーハの外周部よりも照射フラッシュ源により近くなっているドーム形状となるように前記ウェーハを変形させるための手段を含むことができる。
【0042】
ウェーハを変形させるための手段は、ウェーハの表面を照射し、表面を熱膨張させるための手段を含むことができる。ウェーハを変形させるための手段は、ウェーハの両側の平面を選択的に照射するための手段を含むことができる。変形させるための手段は、少なくとも1つのフィルムでコーティングされた表面を有するウェーハを照射するための手段を含むことができる。
【0043】
本装置は、ウェーハの所望する変形が誘導されたときに、ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始するための手段を更に含むことができる。
【0044】
加工品を熱処理する方法も開示されている。この方法は、加工品を中間温度まで予備的に加熱するステップと、加工品の表面領域を加工品の熱伝導時間よりも短い時間内で中間温度よりも高い所望する温度まで加熱する前に、加工品の所望する変形を誘導するステップとを含む。
【0045】
加工品を熱処理するための装置も開示されている。この装置は、加熱システムとプロセッサ回路とを含む。プロセッサ回路は、加工品を中間温度まで予備的に加熱し、加工品の表面領域だけを加工品の熱伝導時間よりも短い時間内で中間温度より高い所望する温度に加熱する前に、加工品の所望する変形を誘導するように、加熱システムを制御するようになっている。
【0046】
加工品を熱処理するための装置も開示されている。この装置は、加工品を中間温度まで予備的に加熱するための手段と、加工品の所望する変形を誘導するための手段と、加工品の表面領域だけを加工品の熱伝導時間よりも短い時間内で中間温度より高い所望する温度まで加熱する手段とを含む。
【0047】
当業者が添付図面を参照し、かかる実施形態の次の説明を検討すれば、本発明の実施形態の上記以外の特徴および様相が明らかとなろう。
添付図面は本発明の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】2つの垂直正面壁が除かれた状態で示された、本発明の第1実施形態に係わる高速熱プロセッシング(RTP)システムの斜視図である。
【0049】
図2図1に示されたシステムの高速熱プロセッシングシステムのコンピュータ(RSC)のブロック図である。
【0050】
図3図2に示されたRSCのプロセッサ回路によって実行される熱処理および変形制御ルーチンのフローチャートである。
【0051】
図4】像源、反射半導体ウェーハおよび検出器の説明のための配置を示す。
【0052】
図5】2つの異なる説明上のウェーハ温度(T=500℃およびT=1050℃であり、後者のカーブは、より急峻な傾斜のついたカーブである)に対するウェーハのデバイス側の面の温度と裏面の温度との間の差に対してプロットされた反射率の測定値の補正(パーセント)のグラフである。
【0053】
図6】既知のシーン像源と、反射半導体ウェーハと、カメラの別の説明のための配置を示す。
【0054】
図7】球面に対する2つの法線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(詳細な説明)
図1を参照すると、本発明の第1実施形態に係わる加工品を熱処理するための装置は、全体が番号100で示されている。この実施形態では、装置100は、加工品106を熱処理するようになっている熱処理システムと、熱処理システムによる加工品の熱処理中の加工品の変形を測定するようになっている測定システムと、プロセッサ回路110とを備える。プロセッサ回路110は、熱処理システムおよび測定システムと協働し、測定システムによる加工品の変形の測定に応答し、加工品の熱処理に関するある行動をとるようになっている。
【0056】
この実施形態では、熱処理システムは、後により詳細に説明する裏面加熱システム150と、表の面加熱システム180とを含む。
【0057】
この実施形態でも、測定システムは、後により詳細に説明する複数の測定デバイス、例えば番号160、162、164および102で示されているデバイスも含む。
【0058】
加工品
この実施形態では、加工品106は、半導体ウェーハ120を含み、熱処理システムは熱プロセッシングシステムを含む。より詳細にはこの実施形態では、ウェーハ120は、例えばマイクロプロセッサのような半導体チップを製造するのに使用するための300ミリ径のシリコン半導体ウェーハである。この実施形態では、加工品106の第1表面104は、ウェーハ120の表の面、すなわちデバイス側の面122を含む。同様に、この実施形態では、加工品の第2表面118は、ウェーハ120の背面、すなわち基板側の面124を含む。
【0059】
この実施形態では、ウェーハ120を装置100へ挿入する前に、ウェーハのデバイス側の面122は、イオン打ち込みプロセスを受け、このプロセスによりウェーハのデバイス側の面の表面領域内に不純物原子すなわち、ドーパントが導入される。このイオン打ち込みプロセスは、ウェーハの表面領域の結晶格子構造に損傷を与え、電気的にアクティブでない空隙サイト内に打ち込まれたドーパント原子を残す。
【0060】
格子内の空隙サイトにドーパント原子を侵入させ、これらサイトを電気的にアクティブにし、かつイオン打ち込み中に生じる結晶格子構造体に対する損傷を修復するために、本明細書に記載するように、ウェーハのデバイス側の面の表面領域を熱処理することによってこの領域をアニールする。
【0061】
測定システム
この実施形態では、装置100の測定システムは、ウェーハ120の曲率を測定し、すなわち後により詳細に説明するように、ウェーハがドーム形状に変形したときの曲率半径を測定するようになっている。
【0062】
この実施形態では、装置100の測定システムは複数の測定デバイスを含む。より詳細には、この実施形態では、測定システムは、像源とウェーハの表面による像源の反射を検出するようになっている検出器とを備える。
【0063】
より詳細には、この実施形態では、像源は、診断照明源160を備え、検出器はウェーハ120の裏面の表面124による診断照明源160の反射を検出するようになっている像形成デバイス162を含む。この実施形態では、測定システムは、第2検出器を更に含み、この第2検出器は、この実施形態では、高速ラジオメータ164となっている。
【0064】
この実施形態では、本明細書に記載されている場合を除き、本願出願人が権利者の1人となっている米国特許第7,445,382号(本明細書で参考例として援用する)により詳細に記載されているように、診断照明源160と、像形成デバイス162と、高速ラジオメータ164とが構成され、配置されている。従って、この実施形態では、像形成デバイス162は、カメラを含み、このカメラはこの実施形態ではウェーハ120の裏面124の像を発生するように作動する赤外線カメラとなっている。この実施形態では、赤外線カメラはダイオードアレイ、またはより詳細にはフォトダイオードフォーカルプレーンアレイを含む。この実施形態では、赤外線カメラは12ビットの感度を有する、320×256ピクセルの砒化インジウムガリウム(InGaAs)フォトダイオードアレイを含む。このカメラは合焦光学系(図示せず)も含み、更に、約1450nmを中心とする狭バンドのフィルタを含み、その結果、このカメラは、1450nmの診断波長にのみ反応し、この波長を中心とする極狭バンド幅(例えば±15nm)を有する。この実施形態でも、診断照明源は1450nmの診断波長で診断フラッシュを発生するように作動する短アークキセノンアークランプを含む。この実施形態では、デバイス160、162および164は、すべて水冷式ウィンドー156をバイパスするように位置し、よって水冷式ウィンドー156は、診断照明源160が発生する照明放射線をフィルタで除去せず、かつ像形成デバイス162または高速ラジオメータ164が受信する放射線もフィルタで除去しない。米国特許第7,445,382号に詳細に記載されているように、診断照明源160の作動と像形成デバイス162の作動とを同期化するように、シンクロナイザーも設けられている。簡潔にするために、本明細書では米国特許第7,445,382号に記載されている測定システムのうちの種々のコンポーネントの更なる細部については省略する。
【0065】
本実施形態において、米国特許第7,445,382号に開示されている測定方法を好ましく改善するために、後により詳細に説明するように、熱処理中のウェーハ120の変形を測定し、像形成デバイス162によって得られるウェーハの裏面の表面の反射率の測定値に対して適用される変形補正量を発生するために、診断照明源160および像形成デバイス162が使用されている。
【0066】
この実施形態では、像形成デバイス162に対する診断照明源160のロケーションは、米国特許第7,445,382号に開示されているような相対的構造と比較して、若干変更されている。より詳細には、この実施形態では、診断照明源160と像形成デバイス162とはウェーハの裏側124の中心領域により、像形成デバイス162に診断照明源160の像が反射されるような角度で、かつ対称的に位置している。
【0067】
装置100の測定システムは、ウェーハ120のデバイス側の面122の温度を測定するため、または他の目的のために使用できる表の面測定システム102を更に含むことができる。
【0068】
これとは異なり、所望する場合、所定の実施形態から表の面の測定システム102を省略してもよい。
【0069】
熱処理システム
一般に本明細書に説明したものを除き、本実施形態の装置100は、本明細書で参考例として援用する、本願出願人が譲受人の1人となっている米国公開特許出願第2007/0069161号に記載の熱処理装置と同一である。従って、簡潔にするために米国公開特許出願第2007/0069161号に開示されている装置100の多数の細部については省略する。
【0070】
米国公開特許出願第2007/0069161号に詳細に説明されているように、この実施形態では、装置100は、チャンバ130を含む。このチャンバ130は、放射線を選択的に吸収する頂部壁132と、底部壁134とを含み、これら壁は、それぞれ選択的に吸収する水冷式ウィンドー186および156を含む。チャンバ130は、正反射性側壁も含み、この側壁のうちの2つは、番号136および138で示されており、その他の2つは説明の目的からは省略されている。加工品106は石英の複数のピン(図示せず)によりチャンバ130の内側支持プレート140の石英ウィンドーよりも上方に支持でき、更に、追加の後退可能な複数のピン(図示せず)により、熱処理位置に移動させたり、この位置から移動できるようになっている。これとは異なり、本明細書で参考例として援用する米国公開特許出願第2004/0178553号に開示されているものに類似する、加工品支持システム(図示せず)または他の任意の適当な手段によって加工品を支持してもよい。本例において、循環水冷システムを含む冷却システム144は、チャンバ130の種々の表面を冷却するように働く。
【0071】
本実施形態では、本装置100の加熱システムは、ウェーハ120の裏面124を加熱するための裏面加熱システム150を含む。この裏面加熱システム150は、米国公開特許出願第2007/0069161号に、より詳細に説明されているように、高強度アークランプ152と、水冷式ウィンドー156の下方に配置された反射システム154とを含む。
【0072】
これから分かるように、本明細書に記載したような新規の機能および構造以外の本発明100の更なる細部およびその構造的コンポーネント、およびそれらの機能を米国公開特許出願第2007/0069161号に見ることができる。
【0073】
本実施形態では、装置100の加熱システムは、表の面加熱システム180を更に含む。この実施形態では、表の面加熱システム180は、フラッシュランプシステムを含む。より詳細には、この実施形態では、表の面加熱システム180は、第1フラッシュランプ182、第2フラッシュランプ183、第3フラッシュランプ185および第4フラッシュランプ187、並びにチャンバ130の水冷式ウィンドー186のすぐ上に位置する反射システム184を含む。
【0074】
これとは異なり、4つよりも少ない数のフラッシュランプ、例えば単一のフラッシュランプを使用することもできる。逆に、4つより多いフラッシュランプ、例えばより多数のフラッシュランプのアレイを使用してもよい。
【0075】
この実施形態では、フラッシュランプ182の各々は、本明細書で参考例として援用する、本願出願人が譲受人の1人となっている米国公開特許出願第2005/0179354号に記載されているものに類似する、カナダ、バンクーバーのマットソンテクノロジーカナダインコーポレーションによって製造された液冷式フラッシュランプを含む。この点に関し、この特定タイプのフラッシュランプは、例えば熱プロセッシングの改良された一貫性および繰り返し性を有する従来のフラッシュランプよりも多数の利点を有することが分かっている。これとは異なり、他のタイプのフラッシュランプに置き換えてもよい。より一般的には、フラッシュランプの代わりに他のタイプの照射パルス発生器、例えばマイクロ波パルス発生器またはパルス状、もしくは走査レーザーに置き換えてもよい。
【0076】
更に、この実施形態では、フラッシュランプ182、183、185および187の各々は、所望すれば、直流の定常状態のモードで作動するようにも構成されている。従って、1回以上の照射フラッシュによりウェーハ120のデバイス側の面122を急激に加熱することに加え、フラッシュランプは(フラッシュ中のパワーよりもかなり少ないパワーで)デバイス側の面を連続的に照射するためのDCアークランプとして効果的に作動することもできる。従って、更に別の実施形態では、他のタイプの非パルス状照射源を補足してもよいし、フラッシュランプのうちの1つ以上の代わりに他のタイプの非パルス状照射源に置き換えてもよい。
【0077】
本実施形態では、反射システム184は、2つの外側フラッシュランプ、例えば第1フラッシュランプ182と第4フラッシュランプ187が同時に点灯されたときに、ウェーハ120のデバイス側の面122を均一に照射するようになっている。この実施形態では、反射システム184は2つの内側フラッシュランプのうちのいずれか、例えば第2フラッシュランプ183または第3フラッシュランプ185がアイソレートされた状態で点灯されたときに、デバイス側の面122を均一に照射するようにもなっている。かかる反射システムの一例は、カナダ、バンクーバーのマットソンテクノロジーカナダ社によって、フラッシュでアシストされた高速熱プロセッシング(fRTP(登録商標))システムのコンポーネントとして製造されている。
【0078】
本実施形態では、表の面加熱システム180は、フラッシュランプ182、183、185および187に電力を供給し、照射フラッシュを発生するための給電システム188を更に含む。この実施形態では、給電システム188は、個々のフラッシュランプ182、183、185および187に電力をそれぞれ供給するための個々の給電システム189、191、193および195を含む。
【0079】
より詳細には、この実施形態では、給電システム188のうちの給電システム189、191、193および195の各々は、フラッシュランプ182、183、185、187のうちのそれぞれ1つのための給電システムとして作動し、所望する照射フラッシュを発生するためにそれぞれのフラッシュランプに入力電力の「スパイク」を供給するよう、あらかじめ充電され、次に急激に放電できるパルス放電ユニットを含む。更に詳細には、本実施形態では、パルス放電ユニットの各々は、一対の7.9mFのコンデンサ(図示せず)(パルス放電ユニット当たり15.8mF)を含み、このコンデンサは、3500Vで充電され、96.775のkJの電気エネルギーを蓄積すると共に、かかる蓄積されたエネルギーを、例えば0.5〜1.5msまでの短い時間の間にそれぞれのフラッシュランプに放電できるようになっている。従って、この実施形態では、表の面加熱システム180は、387.1kJまでの電気エネルギーを蓄積でき、加工品106の熱伝導時間よりも短い全時間長さを有する放射パルス内でフラッシュランプ182、183、185および187を通して、かかるエネルギーを放電できる。これとは異なり、より大きい電源または小型の電源、またはその他のタイプの電源に置き換えてもよい。
【0080】
所望する場合には、給電システム189、191、193および195の各々は、各照射フラッシュを発生するパルス放電のフィードバック制御するためにパルス放電ユニットおよびそれぞれのフラッシュランプと通信する電力制御回路を含むことができる。これとは異なり、特定の実施形態において、かかる電力制御回路およびフィードバック制御が望まれない場合には、これらを省略してもよい。本明細書において、参考例として援用する、本願出願人が譲受人の1人となっている米国公開特許出願第2008/0273867号には、かかるフィードバック制御を行うための電力制御回路の例が記載されている。
【0081】
上記米国公開特許出願第2007/0069161号には、個々の給電システム189、191、193および195の更なる細部だけでなく、かかる対応する電力制御回路の詳細も開示されている。
【0082】
RTPシステムのコンピュータ(RSC)
図1および2を参照する。図2には、あるRTPシステムコンピュータ(RSC)112がより詳細に示されている。この実施形態ではRSCは、プロセッサ回路110を含み、このプロセッサ回路は、本実施形態ではマイクロプロセッサ210を含む。しかしながら、より一般的には、この実施形態では「プロセッサ回路」なる用語は、本明細書に記載の機能を実行するために、本明細書および一般的な知識に基づき当業者がマイクロプロセッサ210の代わりに使用できる任意のタイプのデバイスまたはそれらの組み合わせを広義に含み得る。かかるデバイスは、例えば、他のタイプのマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、他の集積回路、他のタイプの回路もしくは回路の組み合わせ、ロジックゲートまたはゲートアレイ、もしくは任意の種類のプログラマブルデバイスのうちの単独、もしくは同一ロケーションにあるか、または離間したロケーションにある他のかかるデバイスとの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0083】
本実施形態では、マイクロプロセッサ210は、記憶デバイス220と通信でき、この記憶デバイス220は、この実施形態ではハードディスクドライブを含む。この記憶デバイスは、本明細書に記載された種々の機能をマイクロプロセッサ210に実行させるようにコンフィギュアまたはプログラムされた1つ以上のルーチンを記憶するように使用される。より詳細には、この実施形態では、記憶デバイス220は、後により詳細に説明する熱処理および変形制御ルーチン240を形成している。この実施形態では、マイクロプロセッサ210によって受信され、または使用される、種々のタイプのデータを記憶するよう、記憶デバイス220を使用することもできる。所望すれば、記憶デバイス220は別の機能を実行するための別のルーチンおよびデータ、例えば上記本出願人が譲受人の1人となっている米国公開特許出願第2007/0069161号および同第2008/0273867号に記載されているようなルーチンおよびデータのいずれかを含むこともできる。
【0084】
本実施形態ではマイクロプロセッサ210は、メモリデバイス260とも通信でき、このメモリデバイスは、本実施形態ではランダムアクセスメモリ(RAM)を含む。この実施形態では、記憶デバイス220に記憶されている種々のルーチンは、変形パラメータ記憶装置278および変形補正レジスタ282だけでなく、他の記憶装置および/またはレジスタ(図示せず)を含む、マイクロプロセッサ210によって測定され、計算され、または使用される種々の特性またはパラメータを記憶するために、RAM内の種々のレジスタまたは記憶装置を構成するように、マイクロプロセッサ210をコンフィギュアする。
【0085】
本実施形態のマイクロプロセッサ210は、表の面測定システム102(設けられている場合)および表の面加熱システム180だけでなく、他のシステムコンポーネント、例えば裏面加熱システム150、診断照明源160、像形成デバイス162、高速ラジオメータ164および種々のユーザー入力/出力デバイス(図示せず)、例えばキーボード、マウス、モニタ、1つ以上のディスクドライブ、例えばCD−RWドライブおよびフロッピー(登録商標)ディスクドライブ並びにプリンタも含む、図1に示された装置100のうちの種々のデバイスと通信するように入出力(I/O)インターフェース250と更に通信できる。この実施形態では、I/Oインターフェース250は、光ファイバーネットワーク(図示せず)を介し、これらデバイスの少なくとも一部(例えば高速ラジオメータ164および表の面測定システム102)と通信し、裏面加熱システム150および表の面加熱システム180が必要とする大電流および急激な放電の結果生じる電磁妨害および電気ノイズによる問題を解消するための光−電気コンバータを含む。
【0086】
作動
熱処理および変形制御ルーチン
図2および3を参照すると、図3には、熱処理および変形制御ルーチンの全体が番号240で示されている。
【0087】
この実施形態では、熱処理および変形制御ルーチン240は、本願出願人が譲受人の1人となっている米国公開特許出願第2008/0273867号に開示されている態様に類似するが、以下により詳細に説明するように、加工品変形測定、変形制御および関連する動作を含むよう変形された態様で、加工品を熱処理するために熱処理システムを制御するためのプロセッサ回路110をプログラムまたはコンフィギュアするようになっている。本実施形態を簡潔にし、かつ本実施形態の新規の特徴をより良好に理解できるようにするために本願出願人が譲受人の1人となっている米国公開特許出願第2008/0273867号に開示されているかかる熱処理サイクルの多数の細部を省略しつつ、熱処理サイクルの予備的加熱およびフラッシュ加熱の部分について、以下簡潔に説明する。上記とは異なり、数例を挙げるとすれば、本願出願人が譲受人の1人となっている米国公開特許出願第2007/0069161号または本願出願人が権利者の1人となっている米国特許第6,594,446号、同第6,941,063号、同第6,963,692号および同第7,445,382号に開示されているような他の熱処理サイクルと組み合わせて、本実施形態の変形測定および制御の特徴を使用してもよい。
【0088】
一般に、この実施形態では熱処理および変形制御ルーチン240は、プロセッサ回路110が測定システムを制御し、熱処理システムによる加工品の熱処理中に加工品の変形を測定するように、プロセッサ回路110を構成する。この熱処理および変形制御ルーチン240は、プロセッサ回路110が熱処理システムおよび測定システムと協働し、加工品の測定された変形に応答して加工品の熱処理に関して動作をとるようにも、プロセッサ回路110を構成する。以下、後により詳細に説明するように、かかる動作は、熱処理を制御するために得られ、使用される反射率および/または温度測定に対し、変形補正を適用することを含むことができる。上記の他に、または上記に加え、かかる動作は、照射フラッシュの開始前のウェーハの所望する変形を誘導することにより、ウェーハと支持プレートとの間の間隔を変えることにより、または熱処理サイクルを中止することにより、より直接的な介入を含むことができる。
【0089】
この実施形態では、熱処理および変形制御ルーチン240は、熱処理システムを制御し、加工品106に対する中間温度までの予備的加熱を開始するように、プロセッサ回路110に命令する、コードの第1ブロック301により開始する。より詳細には、この実施形態では、ブロック301は、裏面加熱システム150を制御し、ウェーハ120の裏面、すなわち基板側の面124への照射を開始し、ウェーハの熱伝導時間よりも低いランプ関数レート(例えば150℃/秒)でウェーハを中間温度まで予備的に加熱することを、プロセッサ回路に命令する。この実施形態では、予備的加熱ステージの初期部分の間では、表の面加熱システム180は使用されず、ブロック312に関連して以下説明するように、照射フラッシュの開始前に加工品の所望する変形を誘導するように予備的加熱ステージの終了近くで附勢される。従って、予備的加熱ステージの初期部分の間で、裏面124のほうが表の面120よりも若干高温となるような熱勾配がウェーハ内に存在し、よってウェーハは(図4に示されている曲率方向とは反対の)負の曲率形状に変形される。好ましいことに、かかる負の曲率の形状は、予備的加熱ステージ中に熱膨張を防止するように働く。
【0090】
この実施形態では、コードの次のブロック302は、測定システムが熱処理システムによる加工品の熱処理中に加工品の変形を測定するようプロセッサ回路110が測定システムを制御することをプロセッサ回路に命令する。より詳細には、この実施形態では、ブロック302は、測定システムがウェーハの曲率を測定するように測定システムを制御することをプロセッサ回路に命令する。更に詳細には、この実施形態では、ブロック302は、ウェーハがドーム形状に変形したときの曲率半径を測定するよう、測定システムを制御することをプロセッサ回路に命令する。
【0091】
これに関し、図2、3および4を参照すると、図4には初期の平面ディスク形状402となっており、その後に熱変形されたドーム形状404(このドーム形状は説明のために変形部が強調されており、縮尺どおりではない)となっているウェーハ120が示されている。加工品が300mm径のシリコン半導体ウェーハとなっている本実施形態では、温度差dTが表の面122の温度と裏面124の温度の間にあり、この温度差dTの大きさが約100℃未満となっている場合、かかる温度勾配は、ウェーハ120を球面ドーム形状に熱変形させるように働く。ウェーハは、約100ms(その振動周期の10倍)で、かかるドーム形状に弛緩する傾向がある。温度差dTの変化レートがこの置換時間と比較して低速であることを条件に、ウェーハは曲率半径RCを有する球形ドーム形状を維持する傾向がある。この条件は、(好ましくは約250℃/秒未満で)予備加熱をし、一定温度でソーキングまたは冷却する高速の熱処理サイクルの一部の間で一般に満たされるので、かかる条件が満たされるとき、ウェーハの厚み方向の温度勾配は、ウェーハを球形のドーム形状に熱変形すると仮定できる。(dTの変化レートは上記弛緩時間よりもかなり高速であり、温度差dTの大きさは100℃よりもかなり大きく、よって表の面のかかる高速かつ強い断熱加熱中には球形ドーム形状の仮定は有効ではないので、デバイスの面を所望するアニール温度まで加熱するためのその後の照射フラッシュ中にはこれら条件は満たされない。更に、球形ドーム形状としてウェーハの変形をモデル化することは、便宜的な一次近似にすぎず、このような近似は多くの用途(必ずしも可能なすべてではない)に対して適当である。実際に当該熱処理サイクルによってはウェーハは、非ドーム形状、例えば半径の2つの垂直ラインに沿った曲率が例えば逆符号となるような作動形状に変化し得る。従って、これとは異なり、ウェーハの円形形状のより正確なマップを提供するために、単一ロケーションではなく、複数のロケーションにおけるウェーハの変形を測定するような本実施形態の他のより複雑な変形例に置換してもよい。)
【0092】
説明のため、図4に示された熱変形したドーム形状404は、表の面の温度が裏面温度よりも高くなっていることに対応し、ウェーハの中心領域がウェーハの外周部よりも垂直方向に高くなっている「正」の曲率を有する。この実施形態では、かかる「正の曲率」形状は、照射フラッシュ直前の所望する変形に対応する。この実施形態では、ブロック312に関連して後述するように、予備的加熱サイクルの終了時にこのような所望する変形が誘導される。これとは異なり、裏面の温度が表の面の温度を超えることに対応し、ウェーハの中央領域は、ウェーハの外周部に対して垂直方向に下がっている「負」の方向にウェーハ120がカーブし得る。この実施形態では、ブロック301においてこれまで述べたように、予備的ステージの初期部分の間で、かかる「負」の曲率が誘導され、この初期部分の間ではウェーハの裏面124が放射により加熱される。別の例として、ウェーハを通る温度勾配を必ずしも必要とすることなく、異なる熱膨張係数を有するか、または実施時に異なる残留応力を有するウェーハに1枚以上のフィルムを使用することによって、かかるウェーハの変形を誘導または生じさせることができる。
【0093】
この実施形態では、ブロック302は、測定システムを制御し、ウェーハ120がドーム形状、例えば正のドーム形状404または負のドーム形状の鏡像に変形したときのウェーハ120の曲率半径RCを測定するように、プロセッサ回路110に命令する。より詳細には、ブロック302は、ウェーハが反射する像の変化を測定することにより、曲率半径を測定システムが測定するように、制御システムを制御することをプロセッサ回路に命令する。より詳細には、ブロック302は、ウェーハが反射した像の倍率の変化を測定するために測定システムを制御するように、プロセッサ回路に命令する。
【0094】
これに関し、曲率半径RCは、次の式で示される。
【数1】
【0095】
ここでDは、ウェーハの厚さであり、dTは、ウェーハの表の面と裏面との間の温度差であり、αは、ウェーハの熱膨張係数である。しかしながら、曲率半径を計算するのに測定された温度差dTに依存することは望ましいことではなく、むしろ後述するように、加工品の放射率が補償された温度の値を測定するのに使用される反射率の測定値に対する変形補正量を計算し、適用することができるように、曲率半径RCを別々に得ることが望ましい。
【0096】
実際の寸法に対する診断照明源160の反射像の寸法の比となっている倍率Mは、概ね次の式によって示される。
【数2】
【0097】
ここで、Sは照明源からウェーハの裏面124の中心領域までの距離である。
【0098】
この実施形態では、診断照明源160の反射像の面積の変化を測定することにより、像形成源162により倍率Mを直接測定する。より詳細には、ウェーハ120が初期平面形状402にあるときの時間tにおける初期面積Aを診断照明源160の反射像が有すると像形成デバイス162が観測し、ウェーハ120が変形ドーム形状404となっているときのその後の時間tにおいて面積Aを診断照明源160の反射像が有すると観測した場合に、次の式で示されるように、倍率Mを推定できる。
【数3】
【0099】
従って、この実施形態では、プロセッサ回路110により各時間ブロック302を実行し、ブロック302は、ウェーハ120の裏面124の中心領域によって反射された診断照明源160の像の面積Aを測定するよう像形成デバイス162を制御することをプロセッサ回路に命令する。かかる第1像面積の値Aは、ウェーハ120がまだ初期の平面形状402にあるときの熱処理サイクルを開始した時間tに対応し、ブロック302は、図2に示されたRAM260内の変形パラメータ記憶装置278内に初期の値(A、t)を記憶させるよう、プロセッサ回路110に命令する。その後に測定された像面積の値Aは、熱処理サイクル中のその後の時間tに対応する。
【0100】
各像面積の値A、Aは、診断照明源が発生する診断フラッシュの面積の測定値を示すことができる。これとは異なり、診断照明源が附勢されていないときにカメラが診断照明源の面積を測定するのに、チャンバ内に十分な周辺照明が存在する場合、診断照明源を附勢しないときでも、各像面積の値を得ることができる。これとは異なり、ウェーハの曲率を決定するために他の適当な面積または有効面積を測定できる。例えば所望する場合、診断照明源を4つの連続照明源、例えば光ファイバーに置き換えてもよく、この場合、各々の連続源はウェーハの中心領域に向けて光を投影し、四角形の4つのコーナーの像をウェーハの中心領域に投影し、カメラに反射できるようにする。次に、四角形の面積の近似値を得るようカメラにより対角線の倍率を測定してもよい。上記とは異なり、他の任意の適当な方法でウェーハの変形を測定できる。熱処理および変形制御ルーチンの説明を終了した後に、かかる1つの代替方法について、以下、より詳細に説明する。
【0101】
この実施形態では、反射像の面積Aのその後の各測定をするために、ブロック302は、上記式(3)からの対応する倍率の値Mだけでなく、上記式(2)から得られる下記の曲率半径RCも計算するよう、プロセッサ回路110に命令する。
【数4】
【0102】
ブロック302は、図2に示される変形パラメータ記憶装置278内に、かかる各データセット(A、t、M、RC)を記憶するよう、プロセッサ回路に命令する。ウェーハの中心がウェーハの外周部領域よりも垂直方向上方に持ち上がっている状態の、図4内の番号404で示されるような「正のドーム」の曲率に対し、A>A、M>1、RC<0であり、RCは、AがAに近似するにつれ、負の無限に近似し、平面状のウェーハ形状に近似する。逆に、ウェーハの中心がウェーハの外周部の領域よりも垂直方向下方に下がっている「負のドーム」曲率の場合、A<A、0<M<1、RC>0であり、RCは、AがAに接近するにつれ、正の無限に近似し、平面状のウェーハ形状に近似する。従って、記憶されている曲率半径の値RCの符号は、ウェーハが変形した方向を示し(負の値は正のドームの曲率を意味し、正の値は、負のドームの曲率を意味する)、更に、記憶されている曲率半径の値RCの大きさは、ドームの曲率を示す(極めて大きい値は仮想的に平面状の形状を意味し、より小さい値は次第にカーブが大きくなっているドーム形状を意味する)。
【0103】
図3および4を参照する。ブロック302の実行後に、ブロック304は、熱処理中のウェーハの温度測定値に対し、変形補正を適用するよう、プロセッサ回路110に命令する。より詳細には、この実施形態では、ブロック304は、温度測定値を得るのに使用された反射率の測定値に変形補正を適用するよう、プロセッサ回路に命令する。
【0104】
この点に関し、一般にウェーハの反射率で補償された温度測定値を得るのに、反射率の測定値を使用して熱処理中のウェーハの反射率を決定できる。この反射率の測定値は、表面に入射する線源の放射線の強度に対する、ウェーハ表面に反射した検出放射線の比を測定することによって得ることができる。例えば本明細書で参考例として援用する、本願出願人が権利者の1人となっている米国特許第6,303,411号には、放射率によって補償された温度測定値を得るための1つの説明上の方法が開示されており、米国特許第7,445,382号には、更に複雑な別の方法が開示されており、この方法では、診断照明源160によって1450nmの診断波長で発生された診断照明フラッシュの裏面124での反射を測定することにより、像形成デバイス162がウェーハ120の裏面124の指向性反射率を測定できるように、診断照明源160および像形成デバイス162が構成され、同期化されている。次に、測定された指向性反射率測定値に対し、散乱補正を適用し、裏面124の反射率の測定値を発生し、次にこの反射率の測定値を使って裏面124の温度の放射率で補償された温度測定値を発生する。
【0105】
一般に、反射する裏面の表面124の形状が、例えば初期の平面形状402から、次の変形したドーム形状404に変化した場合、測定誤差を生じやすい。より詳細には像形成デバイス162がウェーハの裏面124の中心領域によって反射された診断照明源160の反射像を観察するとき、反射像に対し、像形成デバイスが検出する放射線の量は、反射像が形成する立体角に比例する。ブロック302に関連してこれまで説明したように、時間tにおいて、ウェーハ120が、その初期平面形状402から変形したドーム形状404に変化した場合、像形成デバイス162で受けた反射像は倍率Mだけ有効に増幅される。従って、この実施形態では、ブロック304は次のような補正された反射率の値RCORnを得るために、未処理の反射率の測定値RRAWnに対して変形補正を実施することをプロセッサ回路110に命令する。
【数5】
【0106】
反射率の測定値に対するかかる変形補正の適用は、任意の適当な方法によって達成できる。例えばこの実施形態では、ブロック304を実施するごとに、ブロック304は、時間tにおけるウェーハ120のそのときの変形形状に関連するそのときの倍率Mに対応する図2に示されたRAM260内の変形補正レジスタ282内の更新された変形補正値1/Mを記憶するよう、プロセッサ回路110に命令する。米国特許第7,445,382号に開示されているように、ウェーハの裏面124の指向性反射率RWAFを測定する本実施形態では、反射率の測定方法が変更されている。すなわちこの実施形態では、変形補正された反射率の値に到達するよう、変形補正レジスタ282内に記憶されている変形補正値1/Mで、測定された指向性反射率の値RWAFを乗算するよう、ブロック304がプロセッサ回路110に命令する。次に、最終反射率の値を得るように、この変形補正された反射率の値に対して散乱補正を適用し、次に最終反射率の値を使用して、放射率で補償された温度測定値を得る。従って、この実施形態では、指向性反射率の値に対して変形補正を適用することは、裏面124の温度測定値に対し、変形補正を適用することになる。
【0107】
図2、3および5を参照する。図5には、反射率の値に適用すべき代表的な変形補正方法が番号500で示されている。第1カーブ502は、ウェーハが500℃となっているときの、表の面と裏面との温度差に対し、反射率の変形補正量をプロットしたものであり、他方、第2カーブ504は、ウェーハが1050℃の場合の同じ表の面と裏面との温度差に対し、反射率の変形補正量をプロットしたものである。これら2つのカーブは、温度と共にシリコンの温度膨張係数が変化することに起因し、互いに異なっている。双方のカーブは、フィルムを貼付していないウェーハに対応しており、よってウェーハを通る熱勾配だけがウェーハの変形の原因となっている。従って、双方のカーブのX軸とY軸の交点から分かるように、表の面と裏面の温度差が0であるとき、かかるケースではウェーハは平面状となるので、反射率の測定値に対し、変形補正は不要である。(表の面の温度から裏面の温度を引いた値が0よりも大となるように)表の面の温度が裏面の温度を超え、よってウェーハが本明細書で説明したように「正のドーム」形状に変形すると、像形成デバイス162が見るような診断照明源160の反射像の倍率を補償するように、負の反射率の補正を適用する。逆に、裏面の温度が表の面の温度を超え、よってウェーハが本明細書で説明するような「負のドーム」形状に変形すると、像形成デバイスが見るような診断照明源の反射像の小さくなったサイズを補償するように、正の反射率の補正を適用する。2つのカーブを比較すると、表の面と裏面所定の温度差に対し、必要とされる補正の大きさはウェーハの平均温度に比例し、このことは、頂部と底部の所定の温度差がより低温のウェーハよりも、より高温のウェーハにおいて、より大きい変形曲率を発生することを示す。
【0108】
図3に戻ると、この実施形態では、ブロック306は熱暴走条件が検出されたかどうかを判断することをプロセッサ回路110に命令する。これを達成するために、この実施形態では、RAM260内の変形パラメータ記憶装置278内に最新に記憶された曲率半径の値RCを検討するよう、プロセッサ回路110に命令する。そのときのウェーハの曲率半径の値RCが負であり、ウェーハの中心がウェーハの外周部に対して垂直方向に持ち上がっているような「正のドーム」曲率を示し、RCが所定の最小径のスレッショルド値RMINより小さい絶対的な大きさを有し、ウェーハの曲率が過度であることを示す場合、熱暴走条件が検出されたと見なす。
【0109】
例えば米国特許第7,501,607号に記載されているように、デバイス側の面がウェーハの裏面よりも過度に高温となるようにウェーハが予備的に加熱されている場合、かかる熱暴走条件が生じ得る。かかるケースでは、ウェーハの中心領域が、上方にウェーハを支持しているプレートから若干上方に離間し、ウェーハの外側エッジが支持プレートにより接近するような、本明細書で定義した「正」の方向に、熱による過度の弓形変形が生じる傾向がある。ウェーハとこのウェーハを上方に支持している支持プレート140との間の熱伝導は、ウェーハと支持プレートとの間の温度差に直接比例し、かつこれらの間の距離に逆比例する。代表的な熱処理では、熱処理サイクルの極初期と極終期を除き、全体にわたり、ウェーハのほうが支持プレートよりも高温となる。実際に、支持プレートの中心はエッジよりも高温となり、この結果、ウェーハと支持プレートとの間の温度差は、中心部よりも外周部でより大きくなる傾向があり、このことは次に、中心部と比較して外周部においてウェーハによるより大きい熱損失を促進する。かかる熱による弓形変形下で、ウェーハの裏面の外側エッジが支持プレートに接近するにつれ、裏面124の外側エッジから支持プレート140への熱伝導レートが増加し、この結果、デバイス側と裏面との間の温度差はより大きくなり、熱による弓形変形効果を更に悪化させる。更に、外側エッジがウェーハの他の部分に対して低温になるにつれ、外側エッジは収縮する性質があり、このことは、ウェーハの膨張した高温中心部が、更に熱により弓形変形される。従って、ウェーハが弓形変形すればするほど、ウェーハのエッジから支持プレートへの熱伝導がより大きくなり、このことは、更なる弓形変形を生じさせ、かつエッジにおける熱伝導損失をより大きくする。このシナリオにおいて、熱暴走が発生することがあり、この結果、ウェーハ内に望ましくないほど大きな熱の不均一性が生じる。これら不均一性は、それらの大きさによってはウェーハを損傷させたり、破壊したりすることがある。予備的加熱ステージの他に、照射フラッシュに続くその後の冷却ステージにおいても、かかる熱結合および熱暴走効果が生じ得る。
【0110】
従って、ブロック306は、最新に記憶されたウェーハの曲率半径の値RCが負であり、所定の最小スレッショルドの半径値よりも小さい絶対値を有するかどうかを判断することにより、熱暴走条件が検出されたかどうかを判断することを、プロセッサ回路110に命令する。この実施形態では、所定の最小半径スレッショルド値は、RMIN=6.2mであり、これに関し、300mm径のウェーハでは−6.2mの曲率はウェーハの中心がそれらのエッジよりも約1mm上方に高くなっている正のドーム形状に対応する。これとは異なり、別の適当なスレッショルドに置換してもよい。本実施形態では、裏面加熱システム150だけがウェーハを積極的に加熱するような、ブロック301においてこれまで説明した予備的加熱サイクル初期部分の間で、この結果生じる温度勾配がウェーハの曲率半径の値RCを正(このことは、ウェーハの中心がその外周部よりも垂直方向下方にある「負のドーム」の曲率を示す)にすると予想され、この場合、ブロック306は、熱暴走条件を検出しない。しかしながら、裏面、表の面、または双方に1枚以上のフィルムが貼付されている場合、予備的ステージの初期部分の間でも「正のドーム」の曲率が生じることがあり、ブロック306で熱暴走が検出されず、下記のブロック308で補正されることがない場合でも、潜在的に熱暴走が生じ得る。同様に、表の面122を照射することにより、ウェーハの一部または全体を予備的加熱するような別の実施形態では、予備的加熱ステージ中にかかる「正のドーム」形状、すなわち負の曲率が容易に生じることがあり、この場合、ブロック306および308で熱暴走が検出されず、かつ補正されなくても、熱暴走が潜在的に生じ得る。
【0111】
上記とは異なり、熱暴走条件を識別するのに他の基準を使用することもできる。例えば特定の実施形態において、ウェーハの真の形状がドーム形状、例えばサドル形状の一次近似とは大幅に異なると予想される場合、ウェーハの裏面124上の複数のそれぞれの測定ポイントにおいて、複数の変形測定値を得ることができ、ウェーハの外側エッジ領域のいずれかがウェーハの中心よりも支持プレートに対してスレッショルド差よりも多く接近している場合に、熱暴走条件を識別できる。
【0112】
この実施形態では、ブロック306において熱暴走条件が検出された場合、ブロック308は、ウェーハの測定された変形に応答してウェーハ120の熱処理を変更するために、熱処理システムを制御するよう、プロセッサ回路に命令する。より詳細には、ブロック308は、ウェーハ内の熱暴走に反作用するために、熱処理システムを制御するよう、プロセッサ回路に命令する。
【0113】
これを達成するために、本実施形態ではブロック308は、ウェーハの表面に追加の熱を供給するため、熱処理システムを制御することをプロセッサ回路に命令する。より詳細には、この実施形態では、ブロック308は、ウェーハ102の両面を選択的に照射するよう、熱処理システムを制御することをプロセッサ回路110に命令する。更に詳細には、この実施形態では、表の面加熱システム180によってウェーハの表の面122に対し、供給される照射パワーを減少しながら、裏面加熱システム150によりウェーハの裏面124に供給される照射パワーを同じ度合いで増加することを、ブロック308はプロセッサ回路に命令する。このことは、表の面122の熱暴走を減少させながらウェーハの裏面124の熱暴走を増加させ、よってウェーハ120の全体の「正のドーム」曲率を減少させると共に、熱暴走効果を防止するように働く。
【0114】
上記とは異なり、ブロック308は、別の方法で熱暴走を防止するように加熱システムを制御することをプロセッサ回路110に命令できる。例えば別の実施形態では、変更されたブロック308は、ウェーハ120とこのウェーハを上方に支持している支持プレート140の間の間隔を広げるように、熱処理システムを制御することをプロセッサ回路110に命令する。これを達成するために、変更されたブロック308は、後退可能な装填ピン(図示せず)を支持プレート140から上方に伸長させ、よって支持プレートよりも上方に高くウェーハ120を持ち上げることを、プロセッサ回路に命令する。このことはウェーハと支持プレートとの間の結合効果を減少させ、次にこのことは熱暴走効果を低減させる。変更されたブロック308は、次にウェーハが支持プレートよりも更に上方に離間した状態で、熱プロセッシングサイクルを続行するように熱処理システムを制御することをプロセッサ回路に命令する。更に別の例として、別の実施形態では、変更されたブロック308は、裏面加熱システム150および表の面加熱システム180をシャットダウンし、ウェーハを支持プロセッサ140から上方に離間させるようにウェーハを持ち上げるよう、後退可能な装填ピンを伸長させることによって、ウェーハ120の熱プロセッシングを中止させるように熱処理システムを制御することを、プロセッサ回路110に命令する。更に別の例として、単一の実施形態において、これら対策の2つ以上を組み合わせてもよい。例えばウェーハの曲率半径RCの絶対値が所定の第1スレッショルドRT1未満であり、かつ所定の第2スレッショルドRT2よりも大である場合、ブロック308は、上記のように裏面および表の面に入射する照射パワーを選択的に調節することをプロセッサ回路に命令し、よってウェーハが受ける初期形状に対する変形量を低減でき、ウェーハの曲率半径RCが所定の第2のスレッショルドRT2未満である場合、ブロック308は上記のように熱プロセッシングサイクルを中止することをプロセッサ回路に命令できる。
【0115】
ブロック306(および使用できる場合にはブロック308)の実行後に、この実施形態ではブロック310〜314は、ウェーハの所望する変形を誘導することをプロセッサ回路110に命令し、かつウェーハの所望する変形量を測定システムが測定することに応答し、ウェーハの表面に入射する照射フラッシュを開始するよう、加熱処理システムを制御することを命令する。
【0116】
この実施形態では、ウェーハが所望する中間温度にほとんど達したかどうかを判断するように、高速ラジオメータ164から受信した温度測定信号をモニタすることをまずプロセッサ回路110に命令し、その後、照射フラッシュを開始すべきである。より詳細には、この実施形態では、ウェーハ120は所望する中間温度に到達することに先行する所定の時間インターバル内にあるかどうかを判断することを、ブロック310は、プロセッサ回路に命令する。更により詳細には、この実施形態では、ブロック310は、ウェーハ120が中間温度に到達してから4×10−1秒未満の時間内にあるかどうかを判断することをプロセッサ回路に命令する。この実施形態では、所望する中間温度、ウェーハのそのときの温度およびウェーハが加熱されているそのときのランプレートを検討することをプロセッサ回路に命令することによってこれを達成する。例えばウェーハが所望する700℃の中間温度まで150℃/秒のランプレートで加熱されている場合、ウェーハが640℃の温度に達したときに、あと0.4秒で所望する中間温度に到達するとプロセッサ回路は判断する。この実施形態では、中間温度に到達するまで0.4秒というインターバルが選択されているが、これは加熱システムによってウェーハがその形状を所望するフラッシュ前の変形(この変形は一般に、例えば約0.1秒で達成できる)に変化できるのには十分長いが、それでも十分短い時間なので、所望するフラッシュ前の変形が熱暴走(この熱暴走は一般に、約1秒よりも短い時間では無視できる)を生じさせるには不十分な時間となっている。従って、好ましいことに本実施形態によって照射フラッシュの直前に「正のドーム」形状を誘導することが可能であり、よってフラッシュがウェーハを損傷または破壊し得る可能性を低減すると同時に、ウェーハが全予備的加熱ステージ中にこのような「正のドーム」形状となっている場合に生じ得る潜在的な熱暴走効果を防止できる。
【0117】
ウェーハがほとんど所望する中間温度に達したとのブロック310における判断の次に、ブロック312は、所望する予備的フラッシュ変形を誘導し、ウェーハ120が所望する予備的フラッシュ変形をしたかどうかを判断することを、プロセッサ回路110に命令する。
【0118】
より詳細には、本実施形態における所望する予備的フラッシュ変形を誘導するために、ブロック312は表の面の加熱システム180を附勢し、ウェーハの表の面122の連続照射を開始しながら、同時にウェーハの裏面124を裏面加熱システム150が照射するパワーを低減するよう、加熱システムを制御することをプロセッサ110に命令する。より詳細には、この実施形態では、ブロック312は裏面照射システム150に供給されるパワーを半分より多く低減し、表の面加熱システム180に均等な量のパワーを供給し始め、連続(DC)アークランプモードでフラッシュランプを作動させ、よって全照射パワー(表の面+裏面)をほぼ一定に維持し、よって平均温度ランプ関数レートを一定に維持することをプロセッサ回路に命令する。これによってウェーハを通る温度勾配が反転し、表の面122の温度が裏面124の温度を超え、よってウェーハは、中心部がウェーハの外周部よりも表の面の加熱システム180により接近した「正のドーム」形状(負のRC)にウェーハを変形させるように働く。
【0119】
この実施形態は、ウェーハ120が現在所望する予備的フラッシュ変形形状に変形されていると判断するために、ブロック302でこれまで説明したのと同じように、新しいウェーハの曲率半径の値RCを測定し、この値を変形パラメータ記憶装置278内に記憶することを、ブロック312がプロセッサ回路110に命令する。この実施形態では、所望する予備的フラッシュ変形は、ウェーハの中心部がウェーハの外周部よりも垂直上方に高くなっているウェーハ120の「正のドーム」曲率となっている。従って、この実施形態では、次の2つの基準が満たされた場合、すなわち(1)そのときの時間tの間、ウェーハの曲率半径の値RCのそのときの値は、所望する「正のドーム」曲率を示す負の値(すなわちRC<0)となっていなければならないこと、および(2)ウェーハの曲率半径の値RCのそのときの値の絶対値は、ウェーハの最小曲率を示す所定の最大半径のスレッショルド値RMAX以下となっていなければならないことが満たされた場合、ウェーハ120は、所望する予備的フラッシュ変形状態となっていると識別される。より詳細には、この実施形態では、最大半径のスレッショルド値RMAXは10mである。換言すれば、この実施形態では、所望する予備的フラッシュ変形は10m以下の半径を有する球面の表面セグメントに対応する正のドーム形状である。しかしながら上記とは異なり、加工品が現在所望する別の形状に変形しているかどうかを判断するのに、異なる基準を適用してもよい。例えば所望する形状が「平面状」となっている場合、曲率の符号を無視し、許容できる誤差バー内にあるほぼ平面状の形状に対応する所定の大きい値を曲率半径の絶対値が超えていなければならないとする基準にするだけでもよい。更に別の例として、所望する形状が単に「正のドーム」形状である場合、基準が曲率半径の大きさを無視し、単に曲率半径が負でなければならないとするだけでもよい。
【0120】
ウェーハ120が所望する変形形状に一致していないとブロック312で判断された場合、ブロック312は、ウェーハの所望する変形を誘導するように熱処理システムを制御することをプロセッサ回路に命令する。従って、ブロック312において(1)そのときのウェーハの曲率半径の値RCの符号が正であり、ウェーハが「負のドーム」曲率となっていることを示していること、または(2)そのときのRCの値の符号が負であって、ウェーハが「正のドーム」曲率となっていることを示すが、RCの大きさが所定の最大半径スレッショルド値RMAXよりも大であり、ウェーハの曲率が不十分であることを示していると判断された場合、ブロック312はウェーハ120を所望する変形形状に変形させるよう、熱処理システムを制御することを、プロセッサ回路に命令する。
【0121】
これを達成するために、ブロック312は表の面加熱システム180(連続放電、すなわちDCモードで作動している)により、ウェーハの表の面122に供給されている照射パワーの量を更に増加し、それに対応する度合いで、裏面加熱システム150によりウェーハの裏面124へ供給されている照射パワーの量を低減するように、熱処理システムを制御することをプロセッサ回路110に命令する。所望する場合には、表の面のパワーの増加量の大きさは、所望する形状からのずれに比例させることができ、この場合、表の面のパワー最大増加量は、曲率が間違った方向(負のドーム)にあることを示すそのときのウェーハの曲率半径の値RCの正しくない(正の)符号に対応する。ウェーハの曲率半径の値RCが正しい方向(正のドーム)にあるが、大きさが所定の最大半径スレッショルド値RMAXを超えている場合には、RCの大きさとRMAXの大きさとの間の差に比例する比較的少ない表の面のパワー増加量を供給してもよい。これとは異なり、表の面のパワー増加量と裏面のパワー減少量を所定の値、すなわち固定された値にしてもよい。
【0122】
この実施形態では、ブロック312も、ブロック302および304でこれまで説明したのと同じように、裏面の曲率の測定を続行し、新しいデータ値(A、t、M、RC)および新しい変形補正値を発生し、これら値を変形パラメータ記憶装置278および変形補正記憶装置282に記憶することを、プロセッサ回路110に命令する。ブロック312の実行の結果として、ウェーハが所望する変形を誘導するように、変更された熱処理を受けている間、ブロック312は、新しい連続する各ウェーハ曲率半径の値RCを検討し、この値がウェーハの所望する変形に対応する上記2つの同じ基準を満たすかどうかを判断することをプロセッサ回路に命令する。
【0123】
上記とは異なり、一部の実施形態では、表の面122を実質的に照射することなく、ウェーハ120の所望する変形を誘導してもよい。例えば、ウェーハの表の面122または裏面124のいずれかの上にフィルムを設けるか、または表の面および裏面の上に異なるフィルムを設けることによって、表の面122(またはその上のフィルム)は、裏面124よりも大きい熱膨張係数(CTE)を有することができるので、裏面だけ、または主に裏面を照射することにより、ウェーハを予備的に加熱させた結果、裏面が表の面よりも若干高温となっていても、表の面は裏面よりもより大きく熱膨張できる。従って、かかる実施形態では、所望する形状を誘導するための初期の表の面の照射ステップを省略し、ウェーハが現在所望する変形形状となっていないとウェーハの変形測定値が示した場合に限り、表の面の照射ステップを実行するようにできる。
【0124】
ウェーハ120の所望する変形が誘導されたことを示す上記2つの基準を満たすような、そのときのウェーハの曲率半径の値RCを検出するとすぐに、ウェーハ120の表面に入射する照射フラッシュを開始するよう、プロセッサ回路はブロック314に進む。これを行うために、この実施形態では、ブロック314は、例えば本願出願人が権利者の1人となっている米国特許第6,594,446号、同第6,941,063号、同第6,963,692号および同第7,501,607号、または米国公開特許出願2008/0273867号に記載されているのとほぼ同じ態様で、ウェーハの表の面122に入射する照射フラッシュを発生するように表の面加熱システム180を制御することを、プロセッサ回路110に命令する。この実施形態では、ブロック314は、裏面加熱システム150を除勢することもプロセッサ回路に命令するが、所望する場合には、これとは異なり、裏面加熱システム150がフラッシュ中およびその後で、小パワーでウェーハの裏面124を照射することを続けてもよい。従って、この実施形態では、ブロック314はウェーハ120の表の面122を照射フラッシュに露光させ、表の面122を中間温度よりも高い所望するアニール温度まで加熱するように熱処理システムを制御することをプロセッサ回路に命令する。照射フラッシュは、加工品の熱伝導時間よりも短い時間長さ、例えば約2ミリ秒の半値全幅(full-width at half-maximum:FWHM)を有するので、フラッシュはウェーハの表の表面領域だけを所望するアニール温度に加熱するが、加工品のバルクは中間温度に近い温度のままである。次に、加工品のバルクは、照射フラッシュの後でウェーハの表の面を急激に冷却するためのシートシンクとして作動する。この実施形態では、ブロック314は、本願出願人が譲渡人の1人となっている米国公開特許出願第2008/0273867号に、より詳細に説明されているように、照射フラッシュ中にウェーハの表の面122の複数のリアルタイムの温度測定値を得て、照射フラッシュのリアルタイムのフィードバック制御をするために、かかる測定値を使用することを更にプロセッサ回路に命令する。照射フラッシュの他の形態のリアルタイムのフィードバック制御に置き換えてもよい。例えば米国特許第7,501,607号に開示されている方法に置換してもよい。更に上記とは異なり、所望すればフラッシュ中のリアルタイムの測定およびフィードバック制御を省略してもよい。
【0125】
この実施形態では、ブロック310またはブロック314の実行の後で、ウェーハが受けている熱処理サイクルが終了したかどうかを判断することを、ブロック318がプロセッサ回路110に命令する。この実施形態では、加工品の温度を測定し、ブロック314にてフラッシュの実行後の加工品が十分冷却されたかどうかを判断するように測定システムを制御することを、ブロック318がプロセッサ回路に命令する。ウェーハが十分に冷却されていない場合、ウェーハが十分冷却されるまで、上記のように熱処理中のウェーハの変形を測定することを続け、冷却サイクル中に生じ得る熱暴走を防止するようにプロセッサ回路は、ブロック302〜308へ戻る。ウェーハが十分に冷却された時点で熱処理および変形制御ルーチン240は終了する。上記とは異なり、所望する場合にはブロック318を省略し、ブロック314における照射フラッシュの完了直後に熱処理および変形制御ルーチン240を終了させてもよい。
【0126】
その他の説明のための代替例
上記記載は、熱処理中の加工品の変形を測定する説明上の方法について記載しているが、これとは異なり、かかる変形を測定するための別の方法に置き換えてもよい。
【0127】
例えば別の実施形態では、測定システムはウェーハの表面に対する少なくとも2つの法線を識別することにより、ウェーハ120の変形を測定するように構成される。
【0128】
より詳細には、かかる別の実施形態では、変更されたブロック302により次の説明上の方法を使用してもよい。
【0129】
この実施形態では、ウェーハ120の裏面124は、反射性であり、よって簡単なミラーのように作動する。裏面が変形した場合、裏面からの反射像は歪んだ状態になる。反射され、歪んだこの像は、変形した反射表面の形状に対して、ある関係を有する。
【0130】
一般に、ある周囲の反射像から反射表面の形状を推定しようとする試みには問題がある。その理由は、適当に形成されたシーン[1]を仮定した場合、同じ反射像を発生し得る反射表面の形状は、無限数存在するからである。この問題は、適当な組の制限を課すことにより克服できる。かかる2つの制限は、既知のシーンと較正されたカメラとを使用することである。既知のシーンとは、既知の寸法および既知のオブジェクトを有するシーンを意味し、較正されたカメラとは、既知のパラメータ、例えば焦点長さ、位置およびビュー配向を有するカメラを意味する。別の制限については後述する。
【0131】
次の説明では、太い小文字を使ってベクトルを表示し、一方、太い大文字を使ってマトリックスを表示し、太くない文字によってスカラーを表示する。ポイントおよびポイントの差は次のようにベクトルとして表記される。
【数6】
【0132】
上記の一般的な例では、ベクトルwは、N個の要素を有する別ベクトルであり、テキストでは転置演算子Tを使用することによって便宜的に表示できる。しかしながらこの実施形態では、ポイントおよびベクトルは三次元空間内のロケーションを示すので、N=3となる。従って、デカルト座標x、yおよびzを有する三次元空間内のあるポイントは、w=[x、y、z]と表示できる。
【0133】
ベクトルの長さは、演算子
【数7】

によって表記されるI2−ノルム距離計量値によって示される。2つのベクトルの内積およびクロス積は、それぞれ演算子
【数8】

によって表記される。
【0134】
この実施形態では、ウェーハの反射領域を使ってウェーハ120の表面の変形を推定する。極めて高い反射領域は、裏面124と、表の面122の所定の部分を含む。反射率の低い領域を見ることもできるが、この領域は、反射像を見るのに大きな労力が必要である。この実施形態では、像をカメラに反射するようなウェーハの領域に既知のシーンを投影する。
【0135】
図6を参照すると、図6には説明のための測定上の構造全体が番号600で示されている。この実施形態では、表面内のグリッドラインから成る既知のシーンを反射するのに、ウェーハ120の裏面124を使用する。照明源660を使って、ウェーハの裏面124に既知のシーンを投影する。既知のシーンのグリッドラインの交点はシーンの既知のロケーションを示すポイントを形成する。ポイントcに焦点または投影の中心を有し、更に一般に、カメラの検出要素である像形成平面を有するピンホールカメラとして、カメラ662が抽象的に表示されている。像形成平面は、数学的な便宜上、カメラの焦点の前方に示されている。
【0136】
図6は、問題の表記および幾何学的形状も示している。2つのグリッドラインの交点を示す既知のシーンのポイントpは、ウェーハ120の裏面124のポイントrで反射され、ポイントqにおいてカメラ662により撮像される。単位ベクトルdは、ポイントcおよびrによって形成されるラインに沿って向きが定められる。単位ベクトルnは、ポイントrにおけるウェーハの表面の法線を示し、角度θは反射角を示す。
【0137】
一般に、特定のカメラビューに対しては、m個のシーンポイントの1組、すなわちP=[p1、p2、...pM]が存在し、これらポイントはウェーハの裏面124から反射され、カメラ662によって観察される。これらcポイントの物理的ロケーションおよびカメラの解像度は、ウェーハの表面の変形の推定値の精度および解像度を決定する。図6が示唆するような、グリッド上の一定に離間したシーンポイントを使用することは、数学的に便利な1つの可能な設置上の戦略にすぎない。
【0138】
ウェーハ120の表面の変形は、多くのケースでは、カメラ662によって観察される反射ポイントの所定の組から推定できる。これを達成するために、本実施形態では、観察された各反射ポイントにおいて、各反射ポイントrのロケーション、表面の法線の方向n、および反射角θを得るために、表面の法線を決定する。このような表面法線の組は、表面を再構成する任意の数の既知の方法を使用して、ウェーハの表面の推定値を得ることを可能にする。
【0139】
この実施形態では、表面の法線を推定するために別の制限を課す。これら制限を評価するために、表面の法線と単一パラメータの間の関係を誘導する。表面の法線の推定を可能にするように制限されるのはこのパラメータである。かかる単一のパラメータに関連して、表面の法線を表す表記方法については、サベレス氏により、参考文献[1]〜[5]で紹介されている。
【0140】
これまで指摘したように、較正されたカメラの制限は、cのロケーションおよびcと像平面との間の垂直距離が既知であることを意味する。特に、この距離は、カメラの焦点距離を示し、fと表記される。像ポイントqは、cおよびrによって定められたラインと像平面との交点によって示される。ポイントqのロケーションは、カメラによって撮られる像内のqのロケーションを識別することによって直接設定できる。既知のシーンを設けるという制限は、pのロケーションが既知であることを意味する。従って、ポイントr、ベクトルnおよび角度θは未知のものである。追加制限がなければ、rの位置は未知であるが、この位置は共にcおよびqによって形成されるライン上に位置している場合を除く。この状況をより正確に記述するために、rの位置を次のように表すことができる。
【数9】
【0141】
ここで、
【数10】

は、qおよびcによって示されるラインに平行な単位ベクトルであり、
【数11】

は、rとcとの間の未知の距離を示す。この実施形態では、表面の法線を決定できるようにするために制限されているのはこの単一のパラメータsである。
【0142】
依然として図6を参照すると、この実施形態では、c、pおよびrが本明細書で主平面と称す平面を定める。主平面に対する単位法線ベクトルをnと表記し、この単位ベクトルは次の式を使って、所望する方向へのポイントまで得ることができる。
【数12】
【0143】
r−pにより示されるベクトルおよびr−cによって示されるベクトルは、それぞれ入射光線および反射光線を示す。従って、rにおける表面が入射光線および反射光線によって形成される角度2θを2分割する単位法線ベクトルnを有するという条件を、固有の幾何学的形状が決定する。更に、固有の幾何学的形状は入射光線と反射光線によって形成される主平面内にnが存在しなければならないとう条件を決定する。前者の条件は、nと入射光線との間の角度がnと反射光線との間の角度に等しいこと、すなわち次の式を意味する。
【数13】
【0144】
【数14】

から、下記の式が得られることに注目されたい。
【数15】

が主平面内に存在しなければならないという後者の条件は、次の式で表すことができる。
【数16】
【0145】
式(9)および式(10)を使用すると、rにおける表面法線ベクトルは、既知のポイントc、qおよびp、および未知の距離パラメータsの関数として表すことができる。この式の誘導を詳細にするには、このベクトルは
【数17】

によって示されることに留意されたい。次に、入射光線と反射光線の方向を示す単位ベクトルについて検討する。これら単位ベクトルの間の差は、法線ベクトルnに垂直なベクトルである。この差ベクトルと主平面nへの法線とのクロス積は、nであり、次の式で示される。
【数18】
【0146】
【数19】

を使うことにより、rの除去および既知のポイントおよび未知のパラメータsに換算した式(11)の表記が始まる。即ち、
【数20】

ここで、
【数21】

を使用して、[1]との一貫性を維持する。
【0147】
既知のポイントおよび未知のパラメータsに換算して反射角θを表すには、反射光線を示す単位ベクトルと入射光線を示す単位ベクトルとの間の角度は2θであり、次の式を使って表すことができることを思い出していただきたい。
【数22】
【0148】
式(12)および式(13)は、rにおける表面光線を推定できるようにするための根拠となる。ウェーハの反射表面に物理的な制限がない場合、既知のポイントc、qおよびpの単一の組からsを決定することはできない。
【0149】
[5]で証明されているように、単一の像ポイントq、およびrに関連するシーンポイントpの他に、qを通過し、従ってpを通過する少なくとも3つのカーブの配向または方向を決定できる場合、rにおける表面法線を決定することが可能である。これらカーブは、q、従ってpを含む3つの像ポイントを通過するスプラインにより、これらカーブを近似することができ、この近似によってqにおける、従ってpにおけるタンジェントの方向を決定することが可能となる。
【0150】
[1]〜[5]で示される方法は、表面法線を推定するための手段を提供しているが、図6に示された測定構成には、[1]〜[5]に記載された構成と、多数の顕著な違いがある。これら違いによって、好ましいことに別の手段が表面法線を推定することを可能にしている。
【0151】
特定の重要な違いは、完璧に平坦なウェーハに対しては距離sは既に既知であるので、式(7)、(12)および(13)を使って表面の法線を推定できることである。この点に関し、実際のウェーハは完全に平坦であるとはいえないが、実際の反りおよび弓形の程度は、一般に100ミクロン程度よりも小さい。この距離は、数百ミリのオーダーとなり得るsに対して小さい値である。例えばs、nrfおよびθがそれぞれ特定の反射ポイントにおける平らなウェーハの真の距離、法線および角度を示しているものとする。sからの偏差Δsは、一般に数千分の1より小さい、すなわち(Δs/s)<1×10−3である。換言すれば、cから距離sにある反射ポイントだけがnrfおよびθに対して正確な推定値を有する。他の反射ポイントは、推定値に関連した小さい誤差を有する表面法線の推定値を有する。
【0152】
表面法線の推定値における小さい誤差は、スムーズに変化する表面からの推定値におけるノイズとして見ることができる。表面を推定するのに、法線推定値内のノイズに対してロバストな多数の表面再構成方法を適用できる[6][7]。実際のウェーハ表面がスムーズに変化していると仮定した場合、予想されるウェーハ変形に一致するように設定できるスムーズさを有する表面に対して表面再構成推定値を得ることができる。次に、これら表面推定値を使用し、各反射ポイントにおけるsに対して別の推定値を得ることができ、式(7)、(12)および(13)を使って、表面法線を再度推定できる。再び別の表面を得ることができ、最終表面と比較できる。表面推定値が所定の値又はユーザーの定めた値より多くは変化しなくなるまで、このプロセスを繰り返すことができる。
【0153】
この実施形態では、図6に示された測定構成と参考文献[1]〜[5]に記載されているものとの更に別の差は、本実施形態では、短いインターバルの後にウェーハの別の像を得ている点にある。この時間インターバルは、20μ秒のオーダーで十分短く設定されているので、変形ウェーハの変化も再び小さくなっている。これによって前の場合からの表面および法線推定値を次の場合のために初期推定値として使用することが可能となっている。このように既知の組の値から常にわずかにずれた表面および法線推定値が得られる。
【0154】
更に別の差は、反射像と同時に参考文献[1]〜[5]内のシーンポイントが観察され、他方、図6では、カメラビュー内にシーンポイントが直接存在しないことである。このことは、本実施形態では問題を生じさせない。その理由は、ウェーハおよびシーンを保持するツールが良好に制御され、シーンポイントのロケーションを高度に正確にすることを可能にするような既知の寸法上の特性を有しているからである。
【0155】
この実施形態では、シーンポイントの位置、カメラの解像度および画質によって、表面法線推定値の変化を区別することが可能となると考えられる。
【0156】
上記のように、一組の表面法線推定値が得られるので、球面モデルを使用し、2つの法線しか含まない小さい領域にわたるウェーハ120の変形した裏面の表面124を近似することが可能である。これによって、任意の狭い領域にわたり、ウェーハ曲率のより簡単な推定が可能となる。
【0157】
従って、図6および7を参照する。本実施形態では、2つの表面法線の方向および位置、並びに法線の間の表面の形状の仮定を使用することにより、裏面の表面124のカーブを決定する。球面の上に2つの表面法線があるケースでは、図7は半径Rを有する球面上で互いに距離Lだけ離間している単位法線
【数23】

を示している。次のようにドット積を使用して2つの法線の間の角度を決定できる。
【数24】
【0158】
ここでcos−1は、アークコサインの演算子を示す。基本幾何学的形状を使用することにより、距離Lは次の式で示される。
【数25】
【0159】
この式によって半径または曲率半径を次の式で示すことが可能となる。
【数26】
【0160】
定義により、曲率κを曲率半径の約数とする。すなわち
【数27】
【0161】
従って、この実施形態では、式(16)からRとしてウェーハの曲率半径の値RCを得ることができ、これまで説明したように式(17)から対応する曲率を得ることができる。
【0162】
より詳細には、ウェーハ120の変形を測定する他の適当な方法に置換してもよい。以上で本発明の特定の実施形態に説明し、図示したが、これら実施形態は特許請求の範囲に従って考えられるように、単に発明を説明するためのものであり、発明を限定するものではないと見なすべきである。
【0163】
本願は、2008年5月に出願された米国特許出願第61/071、764号に基づく優先権を主張するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7