(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718811
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】経口液剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20150423BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20150423BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20150423BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20150423BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20150423BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20150423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/26
A61P25/18
A61K47/02
A61P43/00 114
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-519812(P2011-519812)
(86)(22)【出願日】2010年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2010060204
(87)【国際公開番号】WO2010147144
(87)【国際公開日】20101223
【審査請求日】2013年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2009-144719(P2009-144719)
(32)【優先日】2009年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】大日本住友製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】大仁田 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】鉾之原 和博
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 晃一
【審査官】
澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】
特公平07−047574(JP,B2)
【文献】
SDA雑感,kyupinの日記 気が向けば更新(精神科医のブログ),2007年 9月11日,インターネット<URL:http://ameblo.jp/kyupin/theme3-10005991450.html>,URL,http://ameblo.jp/kyupin/theme3-10005991450.html
【文献】
医薬品インタビューフォーム,「III.有効成分に関する項目 2.物理化学的性質」,ロナセン錠、ロナセン散,2008年,現在は改訂第5版が発行されているが、発売時に発行されたものにおいても指摘箇所に同様の記載があると認め
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72,
A61K31/00−31/80,
A61K47/00−47/48,
A61P1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロオクタ[b]ピリジン(以下「活性成分」という)及び(b)クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸および塩酸からなる群から選択される少なくとも1種である溶解補助剤を含有する澄明な水溶液であって、第15改正日本薬局方に記載の溶出試験(パドル法、50rpm)を行うとき、溶出試験第2液による試験開始5分後の溶出率が80%以上であり、かつ15分後の溶出率が50%以上である経口液剤。
【請求項2】
該水溶液のpHが2〜5である、請求項1に記載の経口液剤。
【請求項3】
水溶液中の活性成分(a)の含有量が、0.1mg/mL〜10mg/mLである請求項1又は2に記載の経口液剤。
【請求項4】
溶解補助剤(b)が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の経口液剤。
【請求項5】
溶解補助剤(b)が、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項4に記載の経口液剤。
【請求項6】
さらに、(c)矯味剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の経口液剤。
【請求項7】
(c)矯味剤がトレハロース及びスクラロースからなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の経口液剤。
【請求項8】
該水溶液のpHが2〜4である請求項1〜7のいずれかに記載の経口液剤。
【請求項9】
更に(d)安息香酸及び安息香酸ナトリウムから選択される1種以上の保存剤を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の経口液剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合失調症の治療薬として用いられている2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン(以下、「ブロナンセリン」又は「活性成分」ということがある)を有効成分として含有する、経口投与のための医療用液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロナンセリンは、ドパミンD
2受容体及びセロトニン5−HT
2受容体に対して強い遮断作用を有し、錐体外路症状、眠気、低血圧、体重増加などの副作用発現が少ない化合物である(特許文献1)。ブロナンセリンについては、既に統合失調症治療薬として「ロナセン錠」および「ロナセン散」という商品名で、大日本住友製薬株式会社より販売されている。また、近年統合失調症治療薬の剤形として、服薬アドヒアランスの改善、治療選択肢の増加という観点から、従来の経口固形製剤だけでなく、1回使いきりタイプの経口液剤のニーズが高まっており、既に経口液剤として販売されているものもある。
【0003】
ブロナンセリンは、水に対する溶解度が酸性では高いものの、中性付近からアルカリ性のpH領域ではその溶解度は極端に低い。具体的には、ブロナンセリンの各pH緩衝液における溶解度は、pH2.2では200mg/mL以上であるのに対し、pH5では約0.5mg/mL、さらにpH7では0.001mg/mL以下である。
【0004】
一般的に医薬品を経口液剤として製剤設計する場合、製品の含量均一性や正確な投与量を確実にする観点などから、完全に溶解した澄明な液剤とすることが求められる。しかしながら、ブロナンセリンを経口液剤として製剤設計するにあたっては、上記のブロナンセリンのpH依存性の溶解度を考慮すれば、必ずしも液剤の調製は容易ではないと考えられる。特に、経口液剤としての一回投与分の液量は製剤容器の取扱いや投与利便性を考慮すれば、少量(例えば、〜6mL程度)にすることが条件となり、溶解性の高いpH2程度あるいはそれ以下のpH領域での調製が必要であると考えられる。しかしながら、pHが低すぎる経口液剤は、製剤の安定性低下の懸念があり、また酸味が強く服用感の点でも問題である。
【0005】
一方、ヒトの消化管内のpHは、部位や個体間で差があり、生体内での薬物の溶解性や吸収性に影響を及ぼす場合がある。例えば、一般的に、ヒトの胃内のpHは空腹時には、pH1.2から1.8程度であるが、食後ではpH3.0から5.0に上昇することが知られている。また、十二指腸潰瘍などの疾患患者ではpHが著しく低下する場合があり、低酸症、無酸症の患者では胃内pHが高くなる場合がある(非特許文献1)。
【0006】
よって、pHにより水への溶解性が大きく変化するブロナンセリンを経口的にヒトに投与する場合、投与時の胃内pHによって薬物の溶解状態に著しい差が生じ、結果として吸収性に影響を及ぼす懸念があった。
また、薬物の溶解状態の違いは、薬物の吸収のみならず、生物学的利用性に大きく影響することが考えられることから(非特許文献2)、ブロナンセリンを消化管から安定に吸収させるためには、ブロナンセリンの溶解度プロファイルを改善し、広いpH領域で安定に一定の溶解状態を発揮する製剤として設計することが必要であった。一般に、医薬品の溶出特性を評価する方法としては、日本薬局方に規定されている溶出試験法が知られており、経口製剤の製剤設計及び製法設計においても広く利用されている。
【0007】
特許文献1には、ブロナンセリンを有効成分として含む錠剤、散剤、注射剤が開示されているが、製剤安定性や種々のpHにおけるブロナンセリンの溶解度、溶出性について一切検討されておらず、また、これまでにブロナンセリンを可溶化するなどにより溶出性を改善し、且つ溶液状態を維持して安定性を有した製剤も示されていなかった。
【0008】
【特許文献1】特公平7―47574
【非特許文献1】薬学生のための生物薬剤学(p34-35、廣川書店、1985年発行)
【非特許文献2】第15改正日本薬局方解説書(B-603-606、廣川書店)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ブロナンセリンを安定に含有し、かつブロナンセリン自身の溶解特性に支配されず、広いpH領域で良好な溶出挙動を示す経口製剤を提供することにある。言い換えれば、ブロナンセリン含有製剤の有効性を高める上で、酸性から中性のpH領域において、ブロナンセリンが製剤から安定に溶出し、かつ一定時間溶解状態が維持されている経口液剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般に、薬物の消化管吸収には溶解度や溶出速度が影響することが知られている。特に、pH値の変動により薬物の溶解度が大きく変化する薬物の場合には、経口液剤であっても薬物の吸収率や効果に影響がでるおそれがある。ブロナンセリンは、特に中性領域における溶解度が極めて低いという特性を有するため、消化管中のpH値に影響されずに、中性領域においても良好な溶解状態を発揮する製剤が求められていた。そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、ブロナンセリンを特定の溶解補助剤を含む水に溶解させることにより、ブロナンセリン自身の溶解特性に支配されず、本来は溶解度が極めて低い中性領域においても良好な溶出挙動を示す製剤安定性に優れたブロナンセリン含有経口液剤を得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記の各種の態様の発明を提供するものである。
【0011】
[1] (a)2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン(以下「活性成分」という)及び(b)溶解補助剤を含有する水溶液であって、第15改正日本薬局方に記載の溶出試験(パドル法、50rpm)を行うとき、溶出試験第2液による試験開始15分後の溶出率が50%以上である経口液剤。
[2] 澄明な水溶液である[1]に記載の経口液剤。
[3] 第15改正日本薬局方に記載の溶出試験(パドル法、50rpm)を行うとき、溶出試験第2液による試験開始5分後の溶出率が80%以上であり、かつ15分後の溶出率が50%以上である[1]又は[2]に記載の経口液剤。
[4] 該水溶液のpHが2〜5である、[1]〜[3]のいずれかに記載の経口液剤。
[5] 水溶液中の活性成分(a)の含有量が、0.1mg/mL〜10mg/mLである[1]〜[4]のいずれかに記載の経口液剤。
[6] 溶解補助剤(b)が、酸である[1]〜[5]のいずれかに記載の経口液剤。
[7] 溶解補助剤(b)が、有機酸または無機酸(好ましくは有機酸)である[6]に記載の経口液剤。
[8] 溶解補助剤(b)が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸及び酢酸からなる群(好ましくは、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群)から選択される少なくとも1種である[6]または[7]に記載の経口液剤。
[9] さらに、(c)矯味剤(好ましくは、糖アルコール類、サッカリン、サッカリンナトリウム水和物、スクラロース及びトレハロースからなる群から選ばれる少なくとも1種)を含む[1]〜[8]のいずれかに記載の経口液剤。
[10] さらに、(d)保存剤(好ましくは、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びパラオキシ安息香酸エステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種)を含む[1]〜[9]のいずれかに記載の経口液剤。
【0012】
[11] (a)活性成分、(b)クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤、及び(c)トレハロース及びスクラロースからなる群から選択される少なくとも1種の矯味剤を含有する水溶液であり、該活性成分(a)の含有量が0.1mg/mL〜10mg/mLであって、該水溶液のpHが2〜5である経口液剤。
[12] (a)活性成分、(b)クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤、及び(c)トレハロース及びスクラロースからなる群から選択される少なくとも1種の矯味剤を含有する水溶液であり、該活性成分(a)の含有量が0.1mg/mL〜5mg/mLであって、該水溶液のpHが2〜4である経口液剤。
[13] (a)活性成分、(b)クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤、及び(c)トレハロース及びスクラロースからなる群から選択される少なくとも1種の矯味剤を含有する水溶液であり、該活性成分(a)の含有量が0.5mg/mL〜4mg/mLであって、該水溶液のpHが2〜3.7である経口液剤。
[14] (a)活性成分、(b)クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤、(c)トレハロース及びスクラロースからなる群から選択される少なくとも1種の矯味剤、及び(d)安息香酸及び安息香酸ナトリウムから選択される1種以上の保存剤を含有する水溶液であり、該活性成分(a)の含有量が0.5mg/mL〜4mg/mLであって、該水溶液のpHが2〜4である経口液剤。
[15] (a)活性成分、(b)クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤、(c)スクラロース、及び(d)安息香酸及び安息香酸ナトリウムから選択される1種以上の保存剤を含有する水溶液であり、該活性成分(a)の含有量が0.5mg/mL〜4mg/mLであって、該水溶液のpHが2〜3.7である経口液剤。
[16] 活性成分(a)の4mg相当量の液を用いて第15改正日本薬局方に記載の溶出試験(パドル法、50rpm)を行うとき、溶出試験第2液による15分後の溶出率が50%以上である、[11]〜[15]のいずれかに記載の経口液剤。
[17] 活性成分(a)の4mg相当量の液を用いて第15改正日本薬局方に記載の溶出試験(パドル法、50rpm)を行うとき、溶出試験第2液による試験開始5分後の溶出率が80%以上であり、かつ15分後の溶出率が60%以上である、[11]〜[15]のいずれかに記載の経口液剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブロナンセリン自身の溶解性が極めて低い中性条件下においても良好な溶出性を発揮する医療用液剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】島津製作所製XRD-6100を用いてCu Kα
1,2線、管電圧30kV、管電流20.0mA、ステップ0.0200°(2θ)、計数時間0.40秒/ステップ、スリットDS1.00度、スリットSS1.00度、スリットRS 0.15mmで測定した、ブロナンセリンの結晶の粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の経口液剤で活性成分(a)として含有する、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン(ブロナンセリン)は、フリー塩基であっても又はその薬理学的に許容される酸付加塩であってもよく、またはその薬理学的に許容される溶媒和物であってもよい。また、本発明の経口液剤において、液剤中に存在する酸とブロナンセリンとで塩を形成した形態も含まれる。
【0016】
ブロナンセリンは、特に中性領域における溶解度が極めて低く、その結果として、経口的に投与された際に胃内のpHの影響を受けて吸収性が影響を受けるおそれがあったが、本発明の経口液剤とすることにより、ブロナンセリンの溶解度が低い中性領域においても良好な溶解性を示すことが明らかとなった。このことは、本願発明の液剤は、溶出試験における溶出率を求めることで特徴付けられることである。本明細書において、溶出試験とは、第15改正日本薬局方の一般試験法として規定されている溶出試験法のパドル法(第2法)であり、溶出試験第2液であるリン酸緩衝液(pH6.8)を試験液として、回転数を50rpm(50回/分)として、37℃における溶出率を経時的に求める方法を意味している。通常、中性付近で難水溶性の薬物を溶液として、溶出試験第2液に添加した場合、第2液はpH6.8の緩衝液であるため、添加後析出してしまうものである。本発明者らは、ブロナンセリンを特定の溶解補助剤を含む水に溶解し、安定な溶液とすることにより、pH6.8の試験条件下においても析出することなく、一定時間溶解状態を維持することを見出した。
【0017】
すなわち、本発明の経口液剤は、ブロナンセリンを活性成分として含有し、かつ溶出試験第2液を用いて溶出試験を行うとき、試験開始15分後の溶出率が50%以上を示す液剤である。
【0018】
さらに、本発明の経口液剤は、第15改正日本薬局方に記載の溶出試験(温度:37℃、試験法:パドル法、回転数:50rpm)を行うとき、ブロナンセリン(フリー塩基)の4mg相当量の液を用いた溶出試験第2液による試験開始5分後の溶出率が80%以上であり、かつ試験開始15分後の溶出率が50%以上を示すものが望ましく、試験開始15分後の溶出率が60%以上であるものがより望ましく、さらには、試験開始15分後の溶出率が70%以上であるものが特に好ましい。
本発明における溶出試験での試験液のサンプリングは、第15改正日本薬局方に記載の溶出試験の方法に従って行い、また、ブロナンセリンの溶出率は、採取した試験液を通常用いられる定量法、例えば吸光度測定法、液体クロマトグラフ法などにより求めることができる。
【0019】
本発明の溶出試験において用いられる溶出試験第2液とは、第15改正日本薬局方の一般試験法、溶出試験法における第2液を意味しており、リン酸二水素カリウム3.40g及び無水リン酸水素二ナトリウム3.55gを水で溶かし、1000mlにしたリン酸塩緩衝液1容量に水1容量を加えた液である。
【0020】
第15改正日本薬局方に記載の溶出試験法とは、錠剤を被検試料とする場合、一般的に1投与単位(1錠〜数錠)を900mLの試験液中に投入して試験を実施するが、本発明の経口液剤は液剤であるため、被検試料としては一般的に経口投与される液剤量として、ブロナンセリン4mg相当量の液を900mLの試験液中に投入して試験を実施した結果に基づいて評価することとする。
【0021】
本明細書に示す経口液剤とは、含有する活性成分の物理的及び化学的安定性のみならず、経口液剤としての物理的及び化学的安定性の点においても、医薬品として適切な品質を有するものであり、溶液としての状態が保存等によって容易に変化しないものであることが望ましい。即ち、本発明において、「液剤」とは、常温で溶液状態を少なくとも24時間維持できるものであって、性状が澄明であることを意味する。
【0022】
本発明の経口液剤は、40℃で、少なくとも1ヶ月の保存状態においても安定である。具体的には、本発明の経口液剤は、40℃、6ヶ月保存後においても、澄明な溶液状態が維持されているだけでなく、活性成分の含量が調製時と比較して90%以上保持されており、医薬用液剤として優れた物理的及び化学的安定性を有している。
【0023】
本発明において、経口液剤のpHは2〜5であることが望ましいが、より好ましくはpH2〜4の範囲であり、更に好ましくはpH2〜3.7の範囲である。液剤のpHが5を超えると、ブロナンセリンを含有する溶液としての物理学的安定性が低下し、結果として、保存条件によって析出が見られ、良好な溶出挙動を示すことができなくなるおそれがあり、逆に、液剤のpHが2未満になると、液剤としての安定性が低下するだけでなく、酸味が強くなり服用感が低下してしまう。
【0024】
本発明の経口液剤において、ブロナンセリンの含有量は0.1mg/mL〜10mg/mLであるが、好ましくは0.1mg/mL〜6mg/mL、より好ましくは、0.1mg/mL〜5mg/mL、さらに好ましくは、0.5mg/mL〜4mg/mL、特に好ましくは、1mg/mL〜3mg/mLの範囲である。ブロナンセリンの含有量が0.1mg/mL未満になると、臨床で使用される薬物投与量での経口液剤の液量が極めて多くなり、服用性、携帯性が低下する。また、含有量が10mg/ml、より現実的には6mg/mLを超えると、ブロナンセリンの溶解性が低下し、結果として、保存条件によって析出が見られ、良好な溶出挙動を示すことができなくなるおそれがある。
【0025】
本発明の経口液剤において使用する溶解補助剤(b)としては、酸が好ましい。具体的には塩酸、リン酸等の無機酸やクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、酢酸等の有機酸が例示でき、好ましくは、塩酸または有機酸であって、より好ましくは有機酸であり、さらに好ましくはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸である。これら各酸の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの溶解補助剤は、含有量に特に制限は無いが、液剤をpH2〜5、より好ましくはpH2〜4、特に好ましくはpH2〜3.7の範囲に調整できる量であればよい。このとき、所望されるpHよりも更に酸性の溶液となるよう過剰の上記酸を配合し、その後水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ性の化合物もしくはその水溶液を添加することにより、溶液のpHを上記範囲に調整してもよい。その結果として、本発明の経口液剤中に上記の無機酸や有機酸のナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩が含まれてもよい。
【0026】
また、本発明の経口液剤においては、本発明の構成を満たし、液剤としての効果を達成する限り、溶解補助剤の他に、一般的に医療用経口液剤に用いられる各種の添加成分を含んでいてもよく、具体的には、矯味剤、安定化剤、界面活性剤、緩衝剤、甘味剤、抗酸化剤、香料、清涼化剤、着香剤、着色剤、等張化剤、pH調整剤、防腐剤、保存剤、溶剤などを使用することができる。
【0027】
たとえば、本発明の経口液剤に使用する矯味剤(c)としては、特に限定されないが、エリスリトール、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、キシリトール、D−ソルビトール、D−ソルビトール液、D−マンニトール、マルチトール、マルチトール液等の糖アルコール類、アスパルテーム、アマチャエキス、液状ブドウ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖、カラメル、D−キシロース、グリシン、グリセリン、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、黒砂糖、サッカリン、サッカリンナトリウム水和物、スクラロース、ステビアエキス、ステビア抽出精製物、精製カンゾウエキス末、精製白糖、単シロップ、トレハロース、乳糖水和物、濃グリセリン、白糖、ブドウ糖、ブドウ糖果糖液糖、マルトース水和物、水アメ、タウマチン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン等が例示でき、これら1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらは医薬品添加物又は食品添加物として市販されているものから適宜選択して使用することができる。これらの中でも、本発明の経口液剤の製剤安定性を考慮すると、糖アルコール類、サッカリン、サッカリンナトリウム水和物、スクラロース、トレハロースなどが望ましい。より好ましくは、スクラロース、トレハロースである。また、これらの添加量は、選択された矯味剤の種類によって異なり、所望の服用性を得るために変えることができる。
【0028】
本発明の経口液剤においては、一般の経口液剤と同様に、微生物の発育を阻止する程度に保存剤を含有することができる。使用する保存剤(d)としては、特に限定されないが、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類等が例示でき、これら1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの添加量は、選択された保存剤の種類や経口液剤のpHによって異なり、所望の防腐効果を得るために変えることができる。
【0029】
本発明で使用する水としては、医薬用途として使用が許容される水であれば特に限定されない。例えば、精製水、滅菌精製水、注射用水等が使用できる。本発明においては、経口液剤としての服用性を考慮すると、基剤となる溶媒には水を使用することが望ましいが、本発明の構成を満たし、効果を達成する限り、水以外の溶媒を含有してもよい。
本発明の経口液剤は、ブロナンセリン又はその薬理学的に許容される塩もしくはその薬理学的に許容される溶媒和物、溶解補助剤、矯味剤、及び必要に応じて添加する任意の成分を通常選択されうる慣用の方法によって各成分を水に添加し、最終的に溶解させることにより製造することができる。
【0030】
本発明の経口液剤は、好ましくは、(a)活性成分、(b)クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤及び(c)トレハロース及びスクラロースからなる群から選択される少なくとも1種の矯味剤を含有し、該活性成分(a)の含有量が0.1mg/mL〜10mg/mLであって、pHが2〜5である水溶液であり、より好ましくは、(a)活性成分、(b)クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤、(c)トレハロース及びスクラロースからなる群から選択される少なくとも1種の矯味剤、及び(d)安息香酸及び安息香酸ナトリウムから選択される1種以上の保存剤を含有し、該活性成分(a)の含有量が0.5mg/mL〜4mg/mLであって、pHが2〜4である水溶液である。
【0031】
また、本発明の経口液剤は、医薬品としての安定性に優れているため、一般に広く使用されているガラス製ボトル、ポリエチレン製ボトルの他、ポリエチレンやアルミ多層フィルムによる分包容器などから適宜選択して使用することができる。
本発明の経口液剤を、適当な担体あるいは容器中に保持あるいは充填することにより更に加工を加え、実質的に外観が半固形ないし固形の経口製剤を調製することもできる。たとえば、上記経口液剤に、ゼラチン、ペクチン、寒天、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム、タマリンドガム、カラーギナンなどのゲル化剤を添加し、加温することで活性成分を含有する均一な液体とし、これを治療単位量含有するように分割した後冷却し、あるいは冷却し硬化させた後に分割することにより、たとえば、ゼリー状の経口製剤(半固形剤)とすることができる。当該経口製剤は、一般的に医療用経口製剤に用いられる各種の添加成分を含んでいてもよく、必要に応じて、甘味剤、矯味剤、香料、清涼化剤、抗酸化剤、安定化剤、保存剤等を含有することができる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、ブロナンセリンは大日本住友製薬株式会社のものを、クエン酸(無水)はナカライテスク株式会社製又は昭和化工株式会社製のものを使用した。また、塩酸はナカライテスク株式会社製のものを、酒石酸、乳酸およびリンゴ酸はそれぞれ昭和化工株式会社製のL−酒石酸、90%乳酸(L−乳酸)およびDL−リンゴ酸を、ソルビトールは日研化成株式会社製のD−ソルビトールを、スクラロースは三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のものを、サッカリンナトリウムは大和化成株式会社製のものを、トレハロースは株式会社林原生物化学研究所製のものを、安息香酸ナトリウムは株式会社伏見製薬所製のものを、それぞれ使用した。
【0033】
ブロナンセリンは以下の製造方法によっても入手できる。2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン(25g)(該化合物は特開平3−7257の参考例86に記載の方法、M. Okaand K. Hino, Drugs of the Future 1992, 17, 9-11に記載の方法、またはこれらに準ずる方法で製造される)及びN−エチルピペラジン(2〜4当量)を160〜226℃で12〜20時間加熱攪拌する。反応混合液を100℃以下に冷却し、攪拌下、トルエン(150〜200mL)を加えて溶解する。トルエン溶液へ水(125〜250mL)を加えて攪拌し、下層の水層を除去する。この操作を2〜4回行う。トルエン層へ1〜5%酢酸水溶液(250〜500mL)を加えて攪拌し、下層の水層を除去する。この洗浄操作を2〜3回行う。トルエン層へ2〜10%水酸化ナトリウム水溶液(125〜250mL)を加えて攪拌し、下層の水層を除去する。必要であれば、水(125〜250mL)を加えて攪拌し、下層の水層を除去する。トルエン層を減圧下、濃縮乾固し、濃縮乾固残渣にエタノール(100〜150mL)を加え、加熱還流下、撹拌溶解する。溶解液を室温まで徐冷し、結晶をろ過し、ブロナンセリン(湿品)を得る。必要であれば、ブロナンセリン(湿品)全量、エタノール(100〜150mL)、活性炭(適量)及びろ過助剤(適量)を加え加熱攪拌し、不溶物をろ過して除く。ろ液を室温まで冷却し、析出した結晶をろ過し、40〜100℃で乾燥する。ブロナンセリンを9〜16g得る。該ブロナンセリンの結晶の粉末X線回折パターンは
図1に示すとおりである。
【0034】
実施例1〜4
精製水にクエン酸(無水)を加え、25mMクエン酸水溶液を調製した。次に、表1の実施例1の処方に従い、このクエン酸水溶液にブロナンセリンを添加し、マグネティックスターラーを用いて室温下でブロナンセリンが溶解するまで攪拌し、ブロナンセリン含有液剤を調製した(実施例1)。調製後、液剤のpHを測定した。
同様に、実施例1の方法に準じて、表1に記載の分量で各成分を仕込み、ブロナンセリン含有液剤(実施例2〜4)をそれぞれ調製した。
【表1】
【0035】
実施例5〜10
実施例1と同様にして、25mMクエン酸水溶液を調製した。次に、このクエン酸水溶液に表2に記載の分量で各成分を加え、実施例1と同様の方法で、ブロナンセリン含有液剤(実施例5〜10)を調製した。
【表2】
【0036】
実施例11〜13
精製水及びリンゴ酸を用いて、50mMリンゴ酸水溶液を調製した。次に、このリンゴ酸水溶液に表3に記載の分量で各成分を加え、実施例1と同様の方法で、ブロナンセリン含有液剤(実施例11〜13)を調製した。
【表3】
【0037】
実施例14〜18
精製水に表4に記載の分量でスクラロース、安息香酸ナトリウムを加え、マグネティックスターラーを用いて溶解するまで攪拌した。次に、この水溶液にブロナンセリン及び各種溶解補助剤(塩酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、又はクエン酸(無水))を少量加え、ブロナンセリンが完全に溶解するまでマグネティックスターラーを用いて攪拌した。溶解補助剤を適宜追加してpHを3付近に調整後、精製水を加えて液量を調整し、ブロナンセリン含有液剤(実施例14〜18)を調製した。
【表4】
【0038】
実施例19〜21
精製水に表5に記載の分量でスクラロース、安息香酸ナトリウムを加え、マグネティックスターラーを用いて溶解するまで攪拌した。次に、この水溶液にブロナンセリン及び各種溶解補助剤(塩酸、酒石酸、又は乳酸)を少量加え、ブロナンセリンが完全に溶解するまでマグネティックスターラーを用いて攪拌した。溶解補助剤を適宜追加してpHを4付近に調整後、精製水を加えて液量を調整し、ブロナンセリン含有液剤(実施例19〜21)を調製した。
【表5】
【0039】
比較例1
乳糖水和物、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウムを用い、ブロナンセリンを4mg含む錠剤を常法に従って製造した。
【0040】
試験例1(調製時の性状の確認)
実施例1〜21で調製したブロナンセリン含有液剤について、調製直後ならびに室温にて1日保存後の性状を目視で観察した結果を表6に示す。なお、性状確認は第15改正日本薬局方 通則に準じた方法で実施した。
【表6】
【0041】
試験例2(溶出試験1)
実施例1〜4、14〜21で調製したブロナンセリン含有液剤から採取したブロナンセリン4mg相当の試料、ならびに比較例1で調製した錠剤1錠を用いて、第15改正日本薬局方に記載の溶出試験(温度:37℃、試験液:溶出試験第2液、試験法:パドル法、回転数:50rpm)を行った。さらに、比較例1で調製した錠剤については錠剤による同条件の溶出試験を行うと共に、実施例1〜4に記載されている25mMクエン酸水溶液2mLを同時に投入した場合についても同様に溶出試験を行った。表7に試験開始5分後、15分後、30分後の溶出率を示す。
【表7】
試験の結果、実施例1〜4、14〜21で調製したブロナンセリン含有液剤は、溶出試験開始15分後の溶出率がいずれも60%以上であり、薬物の溶解度を大幅に上回る高い溶出性を示すことが明らかとなった。一方、同じ4mg相当量の錠剤は、クエン酸の有無に関わらず低い溶出率を示したことから、本発明の溶液製剤化することで溶出性を改善する本発明の特徴が示された。
【0042】
試験例3(保存安定性試験1)
実施例5〜16、18〜21で調製したブロナンセリン含有液剤を、適当なフィルターを用いてろ過後、ガラス製容器に充填・密栓し、60℃で2週間保存し、安定性(含量、性状、pH)を評価した。表8に60℃で1週間ならびに2週間保存した各試料の評価結果を示す。なお、含量は、逆相カラムを用いた液体クロマトグラフィーによって測定し、ブロナンセリン表示量を100%としたときの相対値で示した。また、性状確認は、第15改正日本薬局方 通則に準じた方法で実施した。
【表8】
【0043】
試験例4(保存安定性試験2)
実施例5〜10、18で調製したブロナンセリン含有液剤を、適当なフィルターを用いてろ過後、ガラス製容器に充填・密栓し、40℃で最長6箇月間保存し、試験例3と同様に安定性(含量、性状、pH)を評価した。表9に40℃で3箇月間ならびに6箇月間保存した各試料の評価結果を示す。
【表9】
試験の結果、表8、表9に示すように、本発明の経口液剤は製剤的に優れた安定性を示すことがわかった。
【0044】
実施例22〜28
精製水に表10に記載の分量でスクラロース、安息香酸ナトリウムを加え、マグネティックスターラーを用いて溶解するまで攪拌した。次に、この水溶液にブロナンセリン及び各種溶解補助剤(クエン酸(無水)、リンゴ酸又は酒石酸)を少量加え、ブロナンセリンが完全に溶解するまでマグネティックスターラーを用いて攪拌した。溶解補助剤を適宜追加して表10に記載のpHに調整後、精製水を加えて液量を調整し、ブロナンセリン含有液剤(実施例22〜28)を調製した。
【表10】
【0045】
試験例5(溶出試験2)
実施例22〜28で調製したブロナンセリン含有液剤から採取したブロナンセリン4mg相当の試料を用いて、試験例2に記載の方法と同様にして、第15改正日本薬局方に記載の溶出試験(温度:37℃、試験液:溶出試験第2液、試験法:パドル法、回転数:50rpm)を行った。表11に試験開始5分後、15分後、30分後の溶出率を示す。
【表11】
【0046】
試験例6(保存安定性試験3)
実施例22〜28で調製したブロナンセリン含有液剤を、適当なフィルターを用いてろ過後、ガラス製容器に充填・密栓し、60℃で2週間保存し、安定性(含量、外観、pH)を評価した。表12に60℃で1週間ならびに2週間保存した各試料の評価結果を示す。なお、含量は、逆相カラムを用いた液体クロマトグラフィーによって測定し、ブロナンセリン表示量を100%としたときの相対値で示した。また、性状確認は、第15改正日本薬局方 通則に準じた方法で実施した。
【表12】
リンゴ酸、酒石酸を添加してpH 4.5に調製した液剤は、60℃で1週間保存時点までは澄明な性状を維持し、60℃2週間保存時点で微量の析出物が認められたものの、含量はいずれの保存水準においても、ほぼ100%であった。
【0047】
実施例29〜31
精製水に表13に記載の分量でスクラロース、安息香酸ナトリウムを加え、マグネティックスターラーを用いて溶解するまで攪拌した。次に、この水溶液にブロナンセリン及び各種溶解補助剤(クエン酸(無水)、リンゴ酸又は酒石酸)を25mMとなるように加え、ブロナンセリンが完全に溶解するまでマグネティックスターラーを用いて攪拌した。溶解補助剤を適宜追加してpHを下記表に記載の値に調整後、精製水を加えて液量を調整し、ブロナンセリン4mg/mL含有液剤(実施例29〜31)を調製した。
【表13】
【0048】
試験例7(溶出試験3)
実施例29〜31で調製したブロナンセリン含有液剤から採取したブロナンセリン4mg相当の試料ならびに比較例1で調製した錠剤2錠を用いて、試験例2に記載の方法と同様にして、第15改正日本薬局方に記載の溶出試験(温度:37℃、試験液:溶出試験第2液、試験法:パドル法、回転数:50rpm)を行った。表14に試験開始5分後、15分後、30分後の溶出率を示す。
【表14】
【0049】
試験例8(保存安定性試験4)
実施例29〜31で調製したブロナンセリン含有液剤を、適当なフィルターを用いてろ過後、ガラス製容器に充填・密栓し、60℃で2週間保存し、安定性(含量、外観、pH)を評価した。表15に60℃で1週間ならびに2週間保存した各試料の評価結果を示す。なお、含量は、逆相カラムを用いた液体クロマトグラフィーによって測定し、ブロナンセリン表示量を100%としたときの相対値で示した。また、性状確認は、第15改正日本薬局方 通則に準じた方法で実施した。
【表15】
【0050】
実施例29で調製したブロナンセリン含有液剤に表16の分量で各種ゲル化剤(キサンタンガム、ジェランガム)を加え、精製水で液量を調整した。加温・攪拌後、冷却することによりブロナンセリン含有する半固形製剤を得た。なお、キサンタンガムは三晶株式会社製のケトロールCGを、ジェランガムは大日本住友製薬株式会社製のケルコゲルを使用した。
【表16】
【0051】
以上のように、ブロナンセリンを特定の溶解補助剤を含む水に含有させて液剤として製剤化することにより、本来は溶解度が極めて低い中性領域においても良好な溶出挙動を示すこと、製剤安定性に優れたブロナンセリン含有経口液剤を得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の製剤は、ブロナンセリンを安定に含有し、かつブロナンセリン自身の溶解特性に支配されず、広いpH領域で良好な溶出挙動を示すので、非常に有用な液剤である。