(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、
図1乃至
図5を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。なお、本明細書で使用する各図においては、共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
図1は、本発明の実施の形態1による気泡発生装置を模式的に示す断面図である。この図に示すように、気泡発生装置1は、水(流体)が流通する配管通路Pに設置されるもので、固定式旋回翼10、縮径部2、空気導入部3及び気泡発生部4を備えている。固定式旋回翼10は、配管通路P内を流れる水に旋回流を発生させるもので、その構成については後述する。
【0010】
縮径部2は、固定式旋回翼10により発生させた旋回流の半径を縮小して旋回流を高速化するもので、固定式旋回翼10(円筒管部11)の流出端に同軸に接続され、当該流出端から略円錐状に縮径している。空気導入部3は、縮径部2の流出端(最縮径部)に径方向外側から空気を導入するための通路であり、縮径部2の流出端に接続されている。気泡発生部4は、例えば流入端側が略円錐状に縮径した円筒管等により形成され、縮径部2の流出端に同軸に接続されている。気泡発生部4は、固定式旋回翼10により発生させた旋回流と、空気導入部3から導入された空気とを利用して、水中に微細気泡を発生させる。
【0011】
次に、気泡発生装置1の基本的な動作について説明する。まず、配管通路P内を軸方向に流れる水が固定式旋回翼10の円筒管部11に流入すると、この水流には、固定式旋回翼10の作用により旋回流が発生する。円筒管部11から流出した旋回流は、縮径部2を通過することにより旋回半径が縮小しつつ、旋回方向の流速が上昇する。この結果、縮径部2と空気導入部3との間には圧力差(負圧)が生じるので、縮径部2の流出端側には、前記圧力差により空気導入部3から空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、旋回流が合一する位置で旋回流によりせん断され、気泡発生部4内に微細気泡を発生させる。
【0012】
次に、
図1乃至
図5を参照しつつ、固定式旋回翼10の構成について説明する。
図2は、固定式旋回翼を流入端側からみた斜視図であり、
図3は、固定式旋回翼を流入端側からみた正面図である。また、
図4は、固定式旋回翼の各翼を
図3中のA−A線に沿って破断した状態を示す断面図であり、
図5は、固定式旋回翼の各翼を
図3中のB−B線に沿って破断した状態を示す断面図である。
【0013】
固定式旋回翼10は、配管通路Pの途中に同軸に接続されて配管通路Pの少なくとも一部を構成する円筒管部11と、円筒管部11の内壁面11Aから径方向内向きに突出した複数の翼12とを備えている。なお、
図2乃至
図5では、例えば4枚の翼12を有する構成を例示したが、本発明における翼の枚数は、2枚以上の任意の枚数に設定することができる。円筒管部11は、
図1に示すように、軸方向の両側が開口した筒状に形成され、軸方向の一端側が流体の流入端となり、軸方向の他側が流体の流出端となっている。また、翼12は、円筒管部11内を軸方向に流通する水に対して旋回力を付与し、旋回流を発生させるもので、翼12の形状及び配置は、以下のように設定されている。
【0014】
翼12は、
図2及び
図3に示すように、例えば略扇形状(略三角形状)の板材により形成されている。そして、翼12は、基端側に位置する2つの頂点12A,12Bと、翼12の突出端部であって円筒管部11の径方向において翼12の最内径部を構成する最内径端部12Cとを有している。翼12の周縁部のうち頂点12A,12Bの間に位置する略円弧状の部位は、円筒管部11の一定の中心角にわたって内壁面11Aに固着されている。また、基端側の一方の頂点12Aは、他方の頂点12Bと比較して円筒管部11の流出端寄りに配置されている。
【0015】
即ち、翼12は、円筒管部11の中心軸線と垂直な平面(横断面)に対して、軸方向に傾斜した状態で配置されている。また、翼12は、
図4及び
図5に示すように、円筒管部11の流出端側に向けて凹んだ凹湾曲状(円弧状)に形成されている。これにより、円筒管部11の流入端側から各翼12に軸方向の水流が衝突すると、この水流は、円筒管部11の内壁面11A及び各翼12の表面(凹湾曲面)に沿って周方向に案内され、旋回流を形成するようになる。
【0016】
一方、各翼12は、
図2及び
図3に示すように、円筒管部11の周方向に沿って一定の間隔で並んだ状態で配置され、互いに隣接する翼12の間には、径方向に延びる翼間流路13が形成されている。ここで、互いに隣接する翼12間の間隔寸法d1は、円筒管部11の内壁面11Aに対応する最外径側の位置、即ち、頂点12A,12B間で最大値となり、内壁面11Aから径方向内向きに離れるほど、前記最大値よりも小さくなるように構成されている。
【0017】
具体例を挙げると、上記間隔寸法d1は、
図5に示すように、円筒管部11の内壁面11Aに対応する位置で最大の間隔寸法d1outとなり、円筒管部11の内径側(中心部の近傍)では、
図4に示すように、間隔寸法d1outよりも小さな間隔寸法d1inとなる(d1out>d1in)。なお、上記間隔寸法d1とは、例えば隣接する翼12間の周方向の間隔寸法と軸方向の間隔寸法とを合成した立体的な寸法である。一方、各翼12の径方向寸法は、内壁面11Aの半径寸法よりも小さく設定され、正面からみた円筒管部11の中心部には、各翼12の最内径端部12Cに取囲まれた中心通路14が形成されている。
【0018】
このように構成される本実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。まず、円筒管部11に流入した水は、円筒管部11の内壁面11A及び各翼12により周方向に案内されて旋回流となる。この旋回流は、
図4及び
図5に示すように、翼12の基端側から先端側まで延在する翼間流路13を、径方向の何れの位置でも通過することができる。即ち、固定式旋回翼10は、翼12の上流側から下流側へと十分な量の水を通過させつつ、旋回流を安定的に発生させることができる。
【0019】
一方、水中に異物が存在すると、この異物は、旋回流と共に旋回するときに遠心力を受けて、円筒管部11の内径側から外径側に向けて移動し、内壁面11Aと接触する最外径側の位置に到達する。この最外径側の位置では、
図5に示すように、各翼12間の間隔寸法d1が最大となっているので、異物は、この位置で各翼12の間を容易に通過して下流側に排出されることになる。これにより、旋回流の乱れを生じさせることなく、上流側から翼12に到達した異物を円滑に除去することができる。従って、水中に異物が存在する環境でも、異物が翼12の間に詰まるのを防止し、固定式旋回翼10を安定的に作動させることができる。この結果、旋回流を利用して微細気泡を安定的に発生させ、気泡発生装置1の性能及び信頼性を向上させることができる。
【0020】
また、複数枚の翼12を設けることにより、翼12間に形成される翼間流路13の個数を増やすことができる。これにより、上流側から翼12に到達した異物が翼間流路13に捕捉される前に円筒管部11の内壁面11Aに沿って旋回する距離を短くすることができる。従って、翼12に到達した異物を翼間流路13から速やかに排出することができる。
【0021】
実施の形態2.
次に、
図6乃至
図9を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、軸方向で重なり合う形状の翼に適用したことを特徴としている。
図6は、本発明の実施の形態2による固定式旋回翼を流入端側からみた斜視図であり、
図7は、この固定式旋回翼を流入端側からみた正面図である。また、
図8は、固定式旋回翼の各翼を
図7中のC−C線に沿って破断した状態を示す断面図であり、
図9は、固定式旋回翼の各翼を
図7中のD−D線に沿って破断した状態を示す断面図である。
【0022】
本実施の形態による固定式旋回翼20は、
図6及び
図7に示すように、実施の形態1と同様の円筒管部11と、複数(例えば4枚)の翼21とを備えている。翼21は、実施の形態1とほぼ同様に、略扇形状(三角形状)に形成され、基端側の頂点21A,21Bと、最内径端部21Cとを有している。そして、翼21は、頂点21A,21B間の周縁部が円筒管部11の内壁面11Aに固着され、最内径端部21C側が径方向内向きに突出している。また、翼21のうち頂点21Aの近傍部位は、頂点21Bの近傍部位と比較して円筒管部11の流出端寄りに配置され、翼21は、円筒管部11の横断面に対して軸方向に傾斜している。
【0023】
また、翼21のうち頂点21Aの近傍部位は、隣接する翼21の頂点21Bの近傍部位と重なり合うように配置され、頂点21Bの近傍部位よりも円筒管部11の流出端寄りに配置されている。即ち、本実施の形態では、互いに隣接する翼21の一部が軸方向で互いに重なり合うように構成している。これにより、各翼21間の翼間流路22は、互いに隣接する翼21同士が重なり合う位置に形成されている。また、隣接する翼12間の間隔寸法d2は、
図8及び
図9に示す如く、前記実施の形態1とほぼ同様に、円筒管部11の内壁面11Aに対応する位置で最大値(=間隔寸法d2out)となり、内壁面11Aから径方向内向きに離れるほど、前記最大値よりも小さな値(例えば、間隔寸法d2in)となるように構成されている(d2out>d2in)。また、円筒管部11の中心部には、各翼21の最内径端部21Cに取囲まれた中心通路23が形成されている。
【0024】
このように構成される本実施の形態でも、前記実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、翼間流路22が軸方向に開口してないので、上流側から翼21に到達する水流を翼間流路22に沿って旋回方向へと急激に屈曲させることができ、強い旋回流を効率よく発生させることができる。
【0025】
実施の形態3.
次に、
図10及び
図11を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
図10は、本発明の実施の形態3による固定式旋回翼を流入端側からみた正面図である。この図では、前記実施の形態1で説明した固定式旋回翼10を例示している。
図10に示すように、本実施の形態では、翼12間の間隔寸法(翼間流路幅)dの最大値dmaxを、内壁面から径方向内向きに突出した翼12の突出寸法(径方向寸法)rよりも小さく設定している(r>dmax)。なお、最大値dmaxは、前述したように、円筒管部11の内壁面11Aに対応する位置での間隔寸法dである。
【0026】
前記実施の形態1では、
図10に示すように、翼12の間隔寸法dが円筒管部11の内壁面11Aに対応する位置で最大となるように設定したので、この位置で翼12の翼弦長Lが小さくなり、翼12による旋回流の発生能力が低下する。これに対し、本実施の形態では、翼間流路幅の最大値dmaxを翼12の径方向寸法rよりも小さくしたので、次のような作用効果を得ることができる。まず、翼12の径方向寸法rが相対的に増加するので、円筒管部11の中心部に近い位置でも旋回流を円滑に発生させることができ、前述した旋回流発生能力の低下を補償することができる。
【0027】
また、
図11は、翼12の径方向寸法rと翼間流路幅dとの比率(r/d)と旋回速度との関係を示す特性線図である。この図から判るように、水流の旋回速度は、比率(r/d)が大きくなるほど増加する。本実施の形態によれば、翼間流路幅のdmaxを径方向寸法rよりも小さくすることにより、翼12の径方向の全長にわたって上記比率(r/d)を増加させることができ、旋回流を高速化することができる。なお、本実施の形態は、前記実施の形態2に適用してもよく、この場合にも上記効果を得ることができる。
【0028】
実施の形態4.
次に、
図12を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。
図12は、本発明の実施の形態4による固定式旋回翼を流入端側からみた正面図である。この図では、前記実施の形態1で説明した固定式旋回翼10を例示している。
図12に示すように、本実施の形態では、翼12間の間隔寸法dの最大値dmaxを円筒管部11の中心(中心軸線)Oと翼12の最内径端部12Cとの間の径方向距離sよりも大きく設定している(dmax>s)。なお、径方向距離sを小さくすることは、翼12の径方向寸法rを大きくすることと同等である。
【0029】
このように構成される本実施の形態によれば、径方向距離sを相対的に小さくすることができるので、中心通路14の流路面積を減少させ、中心通路14における水流の旋回力を低下させることができる。これにより、上流側から翼12に到達した異物を、円筒管部11の外径側(翼12間の間隔寸法dが大きくなる位置)に誘導することができ、異物を翼間流路13から下流側へと容易に排出することができる。なお、本実施の形態は、前記実施の形態2に適用してもよく、この場合にも上記効果を得ることができる。
【0030】
実施の形態5.
次に、
図13を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。
図13は、本発明の実施の形態5による固定式旋回翼を流入端側からみた斜視図である。この図に示すように、本実施の形態による固定式旋回翼30は、実施の形態1と同様の円筒管部11と、複数(例えば4枚)の翼31とを備えている。翼31は、実施の形態1とほぼ同様に、略扇形状(三角形状)に形成され、基端側の頂点31A,31Bを有している。そして、翼31は、頂点31A,31B間の周縁部が円筒管部11の内壁面11Aに固着され、内壁面11Aから径方向内向きに突出している。また、翼31のうち頂点31Aの近傍部位は、頂点31Bの近傍部位と比較して円筒管部11の流出端寄りに配置され、翼31は、円筒管部11の横断面に対して軸方向に傾斜している。
【0031】
また、各翼31は、円筒管部11の周方向に沿って一定の間隔で並んだ状態で配置され、互いに隣接する翼31の間には、径方向に延びる翼間流路32が形成されている。そして、隣接する翼31の間隔寸法d3は、実施の形態1と同様に、円筒管部11の内壁面11Aに対応する最外径側の位置で最大値となるように構成されている。各翼31の最内径部は、互いに連結された最内径連結部33として形成されている。
【0032】
このように構成される本実施の形態によれば、円筒管部11の中心位置でも、水流に旋回力を付与することができる。即ち、円筒管部11の中心部を流れる水流も旋回させることができるので、旋回流を安定的に発生させることができる。
【0033】
実施の形態6.
次に、
図14を参照して、本発明の実施の形態6について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1乃至5の何れかによる固定式旋回翼を備えた気泡発生装置を、風呂給湯装置としての貯湯式給湯機に適用したことを特徴としている。
図14は、本発明の実施の形態6による貯湯式給湯機を示す構成図である。本実施の形態による貯湯式給湯機40は、ヒートポンプユニット41、貯湯タンク42、沸き上げ回路43、熱交換器45、追焚き回路46、浴槽48、風呂側循環回路49、気泡発生装置60等を備えている。
【0034】
ヒートポンプユニット41は、例えば圧縮機、空気冷媒熱交換器、膨張弁、水冷媒熱交換器、冷媒循環配管等を備えており、冷媒サイクル(ヒートポンプサイクル)を構成している。ヒートポンプユニット41と貯湯タンク42とは、両者間に湯水を循環させる沸き上げ回路43を介して互いに接続されており、沸き上げ回路43は、沸き上げ循環ポンプ44を備えている。ヒートポンプユニット41は、貯湯タンク42の下部から沸き上げ回路43を介して取出した低温水を加熱して高温水を生成し、この高温水を沸き上げ回路43から貯湯タンク42の上部に流入させる。
【0035】
貯湯タンク42と熱交換器45の1次側とは、両者間に湯水を循環させる追焚き回路46を介して互いに接続されており、追焚き回路46は、追焚き循環ポンプ47を備えている。また、熱交換器45の2次側と浴槽48とは、両者間に湯水を循環させる風呂側循環回路49を介して互いに接続されている。風呂側循環回路49は、冷めた浴槽水を浴槽48から流出させる行き管50と、熱交換器45により加熱された浴槽水を浴槽48に戻す戻り管51と、例えば行き管50に設けられた風呂側循環ポンプ52とを備えている。
【0036】
気泡発生装置60は、例えば
図1に示す気泡発生装置1と同様の構成を有し、前記実施の形態1乃至5の何れかで例示した固定式旋回翼10,20,30を備えている。そして、気泡発生装置60は、
図14に示すように、戻り管51に設置されている。戻り管51は、
図1中の配管通路Pと同様の構成により、気泡発生装置60に接続されている。
【0037】
次に、気泡発生装置60の動作について説明する。まず、給湯機の追焚き運転時には、追焚き循環ポンプ47及び風呂側循環ポンプ52が作動する。これにより、貯湯タンク42内に貯留された高温水は、熱交換器45の1次側を流通しつつ、追焚き回路46を循環する。また、浴槽48内で冷えた浴槽水は、行き管50を介して熱交換器45の2次側に導入され、1次側の高温水と熱交換することにより加熱された後に、戻り管51及び気泡発生装置60を介して浴槽48に戻される。この浴槽水が気泡発生装置60を通過するときには、気泡発生装置60により浴槽水中に微細気泡が発生され、浴槽48には、暖められた浴槽水と共に微細気泡が放出される。
【0038】
このように構成される本実施の形態によれば、気泡発生装置60により浴槽48内に微細気泡を安定的に放出することができる。そして、この微細気泡が人体に付着することにより、入浴時の熱が体から放散するのを抑制する効果(温浴効果)を得ることができる。また、気泡発生装置60は、実施の形態1乃至5で述べた固定式旋回翼10,20,30を搭載しているので、浴槽水に異物として混入し易い毛髪等が固定式旋回翼に到達した場合でも、前述した翼間流路13,22,32の作用により毛髪を円滑に排出することができ、毛髪が固定式旋回翼の内部に絡まるのを抑制することができる。
【0039】
なお、前記実施の形態1乃至6では、固定式旋回翼10,20,30を気泡発生装置1,60や貯湯式給湯機40に適用する場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば気泡の発生機能をもたせなくても、流体に旋回流を発生させる各種の装置に適用することができる。また、前記実施の形態1乃至6では、それぞれの構成を個別に説明した。しかし、本発明は、各実施の形態の構成に限定されるものではなく、実施の形態1乃至6で例示した各構成のうち、組合わせ可能な複数の構成を組合わせて実現されるシステムも含むものである。