(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718864
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】磁性基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/36 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
H01F1/36
【請求項の数】25
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-174749(P2012-174749)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2013-55333(P2013-55333A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2013年9月10日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0087992
(32)【優先日】2011年8月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヨン・スク
(72)【発明者】
【氏名】ホ・カン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】イ・サン・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ヨン・スク
(72)【発明者】
【氏名】クァク・ジョン・ボク
(72)【発明者】
【氏名】ウィ・スン・グォン
【審査官】
田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−283824(JP,A)
【文献】
特開2001−118728(JP,A)
【文献】
特開平07−201570(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/033295(WO,A1)
【文献】
特開昭61−222023(JP,A)
【文献】
特開平04−212713(JP,A)
【文献】
特開平08−306004(JP,A)
【文献】
特開2007−173480(JP,A)
【文献】
特開2001−144438(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/146967(WO,A1)
【文献】
特開2000−315864(JP,A)
【文献】
特開2011−061180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/00
H01F 1/032 − 1/04
H01F 1/055 − 1/057
H01F 1/06 − 1/375
H01F 1/40
H01F 10/00 − 10/32
H01F 17/00 − 21/12
H01F 27/00 − 27/02
H01F 27/06 − 27/08
H01F 27/23
H01F 27/28 − 27/29
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42
H01F 41/00 − 41/04
H01F 41/08 − 41/10
H01F 41/14 − 41/34
H01G 4/00 − 4/015
H01G 4/02 − 4/224
H01G 4/232
H01G 4/255 − 4/40
H01G 13/00 − 17/00
H05K 3/46
B29D 9/00
B32B 1/00 − 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面上に導電パターンが形成されるように提供されており、その内部には導電パターンが存在しない磁性基板であって、
第1の磁性材料から成る第1の磁性層と、
前記第1の磁性層の上面の少なくとも一部と、前記第1の磁性層の下面の少なくとも一部にそれぞれ備えられ、第2の磁性材料から成る第2の磁性層とを含み、
前記第1の磁性材料と前記第2の磁性材料とは同じ材料で、前記第2の磁性材料の粒径が前記第1の磁性材料の粒径よりも大きい磁性基板。
【請求項2】
前記第2の磁性材料の粒径は前記第1の磁性材料の粒径の6〜50倍である請求項1に記載の磁性基板。
【請求項3】
前記第1の磁性材料の粒径は1〜5μmで、前記第2の磁性材料の粒径は30〜50μmである請求項1に記載の磁性基板。
【請求項4】
前記第1の磁性層の厚さは、前記第2の磁性層の厚さの2.5〜14倍である請求項1に記載の磁性基板。
【請求項5】
前記第1の磁性層の厚さは、500〜700μmで、前記第2の磁性層の厚さは、50〜200μmである請求項1に記載の磁性基板。
【請求項6】
前記第1の磁性層の側面に前記第2の磁性層がさらに設けられる請求項1に記載の磁性基板。
【請求項7】
前記第1の磁性層の上面及び下面各々の縁部に前記第2の磁性層が設けられる請求項1に記載の磁性基板。
【請求項8】
前記第1の磁性層の厚さは、前記第2の磁性層の厚さの2〜7倍である請求項7に記載の磁性基板。
【請求項9】
前記第1の磁性層の厚さは、400〜700μmで、前記第2の磁性層の厚さは、100〜200μmである請求項7に記載の磁性基板。
【請求項10】
前記第1の磁性層の長さは、前記第2の磁性層の長さの3.2〜6.7倍である請求項7に記載の磁性基板。
【請求項11】
前記第1の磁性層の長さは、8〜12mmで、前記第2の磁性層の長さは、1.8〜2.5mmである請求項7に記載の磁性基板。
【請求項12】
前記第1の磁性層の厚さは、前記第2の磁性層厚さの2〜7倍で、前記第1の磁性層の長さは、前記第2の磁性層長さの3.2〜6.7倍である請求項7に記載の磁性基板。
【請求項13】
前記第1の磁性層の厚さは、400〜700μmで、その長さは8〜12mmであり、前記第2の磁性層の厚さは、100〜200μmで、その長さは1.8〜2.5mmである請求項7に記載の磁性基板。
【請求項14】
前記第1の磁性層の側面に前記第2の磁性層がさらに設けられる請求項7に記載の磁性基板。
【請求項15】
前記第1の磁性層の内部に少なくとも一つの第2の磁性層が設けられる請求項1に記載の磁性基板。
【請求項16】
前記第2の磁性層の厚さは、50〜200μmである請求項15に記載の磁性基板。
【請求項17】
前記第1の磁性層及び第2の磁性層の厚さは各々、50〜200μmの範囲にある請求項15に記載の磁性基板。
【請求項18】
前記第1の磁性層の側面に前記第2の磁性層がさらに設けられる請求項15に記載の磁性基板。
【請求項19】
その表面上に導電パターンが形成されるように提供されており、その内部には導電パターンが存在しない磁性基板の製造方法であって、
ベース基板の上面に第2の磁性材料を塗布するステップ(A)と、
前記第2の磁性材料の上面に第1の磁性材料を塗布するステップ(B)と、
前記第1の磁性材料の上面に第2の磁性材料を塗布するステップ(C)と、
前記ステップ(C)の後に磁性材料を焼成するステップ(D)とを含み、
前記第2の磁性材料の粒径が前記第1の磁性材料の粒径よりも大きい磁性基板の製造方法。
【請求項20】
前記第1の磁性材料の粒径は1〜5μmで、前記第2の磁性材料の粒径は30〜50μmである請求項19に記載の磁性基板の製造方法。
【請求項21】
前記ステップ(D)は10〜50MPaの圧力で行われる請求項19に記載の磁性基板の製造方法。
【請求項22】
前記ステップ(D)は600〜900℃の温度で行われる請求項19に記載の磁性基板の製造方法。
【請求項23】
前記ステップ(D)は600〜900℃の温度で2〜3時間間行われる請求項19に記載の磁性基板の製造方法。
【請求項24】
前記ステップ(C)の後に、前記ステップ(B)にリターンして、前記ステップ(B)及び前記ステップ(C)を少なくとも1回さらに行った後、前記ステップ(D)を行う請求項19に記載の磁性基板の製造方法。
【請求項25】
その表面上に導電パターンが形成されるように提供されており、その内部には導電パターンが存在しない磁性基板の製造方法であって、
ベース基板の上面上の左側部及び右側部の領域に第2の磁性材料を塗布するステップ(A)と、
前記第2の磁性材料の上面及び前記ベース基板の上面に第1の磁性材料を塗布するステップ(B)と、
前記第1の磁性材料の上面上の左側部及び右側部の領域に第2の磁性材料を塗布するステップ(C)と、
前記ステップ(C)の後に、磁性材料を焼成するステップ(D)とを含み、
前記第2の磁性材料の粒径が前記第1の磁性材料の粒径よりも大きい磁性基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ディジタルTV、スマートフォン、ノートパソコンなどのような電子機器は、高周波帯域でのデータを送受信する場合が多くなっている。今後にも、このような電子機器はUSB、Bluetooth、Zigbeeなど多様な通信方式で接続されて多機能化・複合機能化され、使用頻度が段々増加すると予想される。
【0003】
一方、このようなデータ送受信を早く行うために、過去のメガヘルツ(MHz)帯域の周波数信号を用いたことを徐徐に高周波帯域の信号を用い、最近には主にギガヘルツ(GHz)帯域の高周波数信号を使っている。
【0004】
ところが、機器間で数十〜数百GHzにあたる高周波信号を送受信する場合、信号の遅延、送受信歪みなどの妨害要因によって、データをスムーズに処理するに難しさがあった。
【0005】
特に、ディジタルTVのように、通信、影像及び音響信号ライン等の多様なポート・ツー・ポート(port-to-port)間の接続時、前述の信号遅延及び送受信歪みのような問題がさらに頻繁に発生している。
【0006】
このような問題を解決するために、ノイズ減少装置(EMI対策部品)などを用いている。既存のEMI対策部品は、巻線型または積層型タイプで具現されている。サイズが大きく、また電気的特性が比較的低いため、一部の回路基板など限定領域のみに使われていた。
【0007】
このような巻線型、積層型コモンモードフィルタの問題を解決すると共に、電子機器のスリム化及び小型化の傾向に応じるため、薄膜形コモンモードフィルタへの研究が活発に行われている。
【0008】
薄膜形コモンモードフィルタは、フェライトなどの磁性体を焼結して形成される磁性体基板上に、絶縁層を形成し、これに導電パターンを形成する方式によって製造される。
【0009】
ところが、従来の磁性体基板を焼成する過程において収縮率の差による反り(歪み)が生じる。これは磁性層を形成する磁性材料が、焼成過程で横方向、縦方向、厚さ方向に不規則に成長するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本特許公開第2004-22798号
【特許文献2】韓国公開特許第10−2001−0049529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば、磁性体基板の外郭部分及び中央部分の厚さが異なるため、反りが発生すると、小さな衝撃にもクラックが発生してしまって信頼性が減少される。
【0012】
また、磁性体基板の焼成密度の差が発生することもある。該焼成密度の差によって、フォトリソグラフィ工程などに用いられる化学処理液が磁性体基板内に染みこんで、内部空隙をもたらすかまたは浸食を引き起こす。
【0013】
また、このような磁性体基板上に導電パターンを形成する場合にも、
図1(a)〜
図1(c)に示すように、外郭パターンが崩れるか(
図1(a))、導電パターンと基板との間が割れるか(
図1(b))、導電パターンの上面の形状が変化することになる(
図1(c))。
【0014】
このような場合、コモンモードフィルタの結合係数が減少されるか信頼性が低下するなど、多様な問題をもたらすことになる。
【0015】
下記の特許文献1には、磁性体セラミック素子をめっき液中に入れ、内部導体層が該磁性体セラミック素子の表面に露出する部分からめっき液を内部に浸透させて磁性体セラミック層と内部導体層との間に空隙が生じるような技術が示されているが、磁性体基板の製造工程上、効率が低く、常用化が困難であった。
【0016】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、焼成過程で反りを最小化することができる磁性基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を解決するために、本発明による磁性基板は、第1の磁性材料から成る第1の磁性層と、第2の磁性材料から成る第2の磁性層とを含み、前記第1の磁性材料と前記第2の磁性材料とは同じ材料で、粒径が異なる。
【0018】
前記第2の磁性材料の粒径は、前記第1の磁性材料の粒径の6〜50倍である。
【0019】
前記第1の磁性材料の粒径は1〜5μmで、前記第2の磁性材料の粒径は30〜50μmである。
【0020】
前記第1の磁性層の上面及び下面に各々前記第2の磁性層が設けられる。
【0021】
前記第1の磁性層の厚さは、前記第2の磁性層の厚さの2.5〜14倍である。
【0022】
また、前記第1の磁性層の厚さは、500〜700μmで、前記第2の磁性層の厚さは、50〜200μmである。
【0023】
また、前記第1の磁性層の側面に、前記第2の磁性層がさらに設けられる。
【0024】
また、前記第1の磁性層の上面及び下面各々の縁部に、前記第2の磁性層が設けられる。
【0025】
前記第1の磁性層の厚さは、前記第2の磁性層の厚さの2〜7倍である。
【0026】
また、前記第1の磁性層の厚さは、400〜700μmで、前記第2の磁性層の厚さは、100〜200μmである。
【0027】
また、前記第1の磁性層の長さは、前記第2の磁性層の長さの3.2〜6.7倍である。
【0028】
また、前記第1の磁性層の長さは、8〜12mmで、前記第2の磁性層の長さは、1.8〜2.5mmである。
【0029】
また、前記第1の磁性層の側面に前記第2の磁性層がさらに設けられる。
【0030】
また、前記第1の磁性層の上面及び下面に各々前記第2の磁性層が設けられ、前記第1の磁性層の内部に少なくとも一つの第2の磁性層が設けられる。
【0031】
前記第2の磁性層の厚さは、50〜200μmである。
【0032】
また、前記第1の磁性層及び第2の磁性層の厚さは各々、50〜200μmである。
【0033】
また、前記第1の磁性層の側面に、前記第2の磁性層がさらに設けられる。
【0034】
また、上記目的を解決するために、本発明による磁性基板の製造方法は、ベース基板の上面に第2の磁性材料を塗布するステップ(A)と、前記第2の磁性材料の上面に第1の磁性材料を塗布するステップ(B)と、前記第1の磁性材料の上面に第2の磁性材料を塗布するステップ(C)と、前記ステップ(C)の後に磁性材料を焼成するステップ(D)とを含み、前記第1の磁性材料と前記第2の磁性材料とは,粒径が異なる。
【0035】
また、前記第1の磁性材料の粒径は1〜5μmで、前記第2の磁性材料の粒径は30〜50μmである。
【0036】
前記ステップ(D)は,10〜50MPaの圧力下で行われる。
【0037】
また、望ましくは、前記ステップ(D)は、600〜900℃の温度で行われる。
【0038】
また、望ましくは、前記ステップ(D)は、600〜900℃の温度で、2〜3時間行われる。
【0039】
前記ステップ(C)の後に、前記ステップ(B)にリターンして、前記ステップ(B)及びステップ(C)を少なくとも1回さらに行った後,ステップ(D)を行う。
【0040】
また、上記目的を解決するために、本発明による磁性基板の製造方法は、ベース基板の上面上の左側部及び右側部の領域に第2の磁性材料を塗布するステップ(A)と、前記第2の磁性材料の上面及び前記ベース基板の上面に第1の磁性材料を塗布するステップ(B)と、前記第1の磁性材料の上面上の左側部及び右側部の領域に第2の磁性材料を塗布するステップ(C)と、前記ステップ(C)の後に磁性材料を焼成するステップ(D)とを含み、前記第1の磁性材料と前記第2の磁性材料とは、粒径が異なる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、磁性基板の収縮率のバラツキが従来より減少するという効果が奏する。
【0042】
また、本発明によれば、磁性基板の収縮率のバラツキを減少すると共に、磁性基板全体が同じ材料からなるため、磁性基板の磁化特性が従来より改善されるという効果が奏する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1(a)〜
図1(c)は、従来技術による磁性体基板の収縮率のバラツキによる導電パターンの不良例を概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の多様な実施形態による磁性基板を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の多様な実施形態による磁性基板を概略的に示す断面図である。
【
図4】本発明の多様な実施形態による磁性基板を概略的に示す断面図である。
【
図5】本発明の多様な実施形態による磁性基板を概略的に示す断面図である。
【
図6】本発明の多様な実施形態による磁性基板を概略的に示す断面図である。
【
図7】本発明の多様な実施形態による磁性基板を概略的に示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態による製造工程を概略的に示す断面図である。
【
図9】本発明の他の一実施形態による製造工程を概略的に示す断面図である。
【
図10】
図10(a)は、従来技術による磁性基板の微細構造を示す写真であり、
図10(b)は、本発明の一実施形態による磁性基板の微細構造を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の好適な実施の形態は図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0045】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は文句で特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0046】
以下、添付図面を参照して、本発明の構成及び作用効果について詳記する。
【0047】
本発明の一実施形態による磁性基板は、各々、粒径が異なり同じ材料からなる第1の磁性材料及び第2の磁性材料から成る第1の磁性層及び第2の磁性層で構成される。
【0048】
一般に、粒径が小さいほど粒成長が早く進められ、粒径が大きいほど粒成長が遅く行われる。すなわち、粒成長の速度は粒径と反比例関係にある。
【0049】
これは、粒径が小さいほど該当材料の非表面積が大きくなるようになり、焼結駆動力が大きくなるためである。
【0050】
このような原理を考慮して、粒径が相対的に小さな第1の磁性材料から成る第1の磁性層が第2の磁性層より速かに焼結される。このような第1の磁性層の焼結の時の収縮率の差によって発生する厚さの偏差や長さの偏差は、第2の磁性層の焼結過程で小さくなる。
【0051】
望ましくは、前記第2の磁性材料の粒径が、前記第1の磁性材料の粒径の6〜50倍の範囲で決まる。
【0052】
詳しくは、前記第1の磁性材料の粒径は1〜5μmで、前記第2の磁性材料の粒径は30〜50μmである。
【0053】
第1の磁性材料の粒子大きさが1μmより小さい場合、空隙が発生し、第1の磁性材料の粒子大きさが5μmより大きい場合、粒子間の凝集塊が生じて、局所的な強さの低下をもたらす。
【0054】
また、第2の磁性材料の粒子大きさが30μmより小さい場合、第1の磁性層の収縮率のバラツキによる歪みを抑制しにくく、第2の磁性材料の粒子大きさが50μmより大きい場合、第1の磁性材料との結合力が低下して、相分離、基板内の空隙発生などの問題が発生すると共に、焼成後の層間剥離、即ちデ−ラミネイション(Delamination)が発生することになる。
【0055】
図2〜
図7は、各々、本発明の多様な実施形態による磁性基板を概略的に示す断面図である。
【0056】
図2に示すように、本発明の第1の実施形態による磁性基板100は、第1の磁性層110の上面及び下面に各々第2の磁性層120が設けられる。
【0057】
この第1の磁性層110の厚さは、第2の磁性層120の厚さの2.5〜14倍である。
【0058】
詳しくは、前記第1の磁性層110の厚さは500〜700μmで、前記第2の磁性層120の厚さは、50〜200μmである。
【0059】
第1の磁性層110の厚さに比べて第2の磁性層120の厚さが過度に厚ければ、粒成長が大きく発生して空隙の発生及び焼成密度の低下をもたらす。
【0060】
反対に、第1の磁性層110の厚さに比べて第2の磁性層120の厚さが過度に薄ければ、第1の磁性層110の収縮率のバラツキによる歪みを防止することができなくなる。
【0061】
これによって、第2の磁性層120は、第1の磁性層110の焼結の時に発生する収縮率のバラツキによる磁性基板100の厚さのバラツキを吸収することができるようになる。
【0062】
図3に示すように、本発明の第2の実施形態による磁性基板200は、第1の磁性層210の上面及び下面各々の縁部に第2の磁性層220を備える。
【0063】
第1の磁性層210の厚さは、第2の磁性層220の厚さの2〜7倍であり、第1の磁性層210の長さは、前記第2の磁性層220の長さの3.2〜6.7倍である。
【0064】
詳しくは、第1の磁性層210の厚さは400〜700μm、第2の磁性層220の厚さは100〜200μmである。また、第1の磁性層210の長さは8〜12mmで、第2の磁性層220の長さは1.8〜2.5mmである。
【0065】
第1の磁性層210の厚さに比べて第2の磁性層220の厚さが過度に厚ければ、粒成長が大きく発生し、空隙の発生や焼成密度の低下が生じるという問題がある。
【0066】
反対に、第1の磁性層210の厚さに比べて第2の磁性層220の厚さが過度に薄ければ、収縮率のバラツキによる歪みを充分に抑制することができない。
【0067】
また、第1の磁性層210の長さに比べて第2の磁性層220の長さが過度に長ければ、相分離が発生してクラックやデ−ラミネイションが発生する。
【0068】
反対に、第1の磁性層210の長さに比べて第2の磁性層220の長さが過度に短ければ、収縮率のバラツキによる歪みを充分に抑制することができない。
【0069】
第1の磁性層210の収縮率のバラツキによる磁性基板200の歪みは、一般に、縁部で最大になり、前述のように構成された磁性基板200は、縁部での収縮率のバラツキによる歪みを効果的に減少させることができる。
【0070】
図4を参照して、本発明の第3の実施形態による磁性基板300は、第1の実施形態による磁性基板と異なり、第1の磁性層310の内部に第2の磁性層320が少なくとも一つ形成されている。
【0071】
また、第1の磁性層310及び第2の磁性層320の厚さは全て、50〜200μmの範囲にある。
【0072】
第1の磁性層310及び第2の磁性層320の厚さが過度に薄ければ、割れやすく、収縮がひどく発生してしまい、第1の磁性層310及び第2の磁性層320の厚さが過度に厚ければ、加工や表面粗さの制御が困難である。
【0073】
図5〜
図7は各々、前述の第1〜第3の実施形態と異なり、第1の磁性層の側面にも第2の磁性層が設けられることを示している。
【0074】
そのため、第1の磁性層の収縮率のバラツキによる水平方向の歪みも減少させることができる。
【0075】
図8は、本発明の一実施形態による製造工程を概略的に示す断面図である。
【0076】
まず、ベース基板10の上面に第2の磁性材料120aを塗布する。
【0077】
続いて、第2の磁性材料120aの上面に第1の磁性材料110aを塗布する。
【0078】
続いて、第1の磁性材料110aの上面に第2の磁性材料120aを塗布する。
【0079】
このような過程を完了した後、磁性材料を焼成することによって磁性基板を製造することができる。
【0080】
第1の磁性材料の粒径は1〜5μmで、前記第2の磁性材料の粒径は30〜50μmであってもよい。その他の詳細は前述のことと重複するので説明を略する。
【0081】
前記焼成過程は、望ましくは、押圧板20を用いて押圧することと同時に行われる。この時、10〜50MPaの圧力下で行われることが望ましい。
【0082】
圧力が過度に大きくなれば、クラックが発生しやすく、局所的な収縮率のバラツキが発生することがあり、圧力が過度に小さいと、焼成密度が低く反りが発生することがある。
【0083】
また、望ましくは、前記焼成温度は600〜900℃の温度で、2〜3時間間行われる。
【0084】
前記温度範囲を外すと、即ち900℃を超えると、粒成長によって粒子間の結合力の低下や空隙の発生があり、600℃より小さいと、パウダの粒子間の凝集力の低下によって焼結密度の低下と共に誘電率、透磁率、Q値のような電気的な材料特性の低下が発生する。
【0085】
また、前記時間範囲を外すと、基板の焼結が行われなく、焼成密度が低くなり、結晶相が発生しなくて透磁率、Q値のような特性が低下するという問題がある。
【0086】
図9は、本発明の一実施形態による製造工程を概略的に示す断面図である。
【0087】
この実施形態は、
図3で示す本発明の第2の実施形態による磁性基板200を製造するための工程にあたる。
【0088】
図9に示すように、先に、ベース基板10の上面上の左側部及び右側部の領域に第2の磁性材料220aを塗布する。
【0089】
この第2の磁性材料220aを塗布する方式は、スクリーンプリンティング方式など多様な方式を適用してもよい。
【0090】
続いて、第2の磁性材料220aの上面及び前記ベース基板10の上面に第1の磁性材料210aを塗布する。
【0091】
続いて、第1の磁性材料210aの上面上の左側部及び右側部の領域に第2の磁性材料220aを塗布する。
【0092】
続いて、焼成工程を行って磁性基板を完成することになる。
【0093】
焼成工程の詳細は、前述のようであるため、重複する説明は略することにする。
【0094】
図10(a)は、従来技術による磁性基板の微細構造を示す写真で、
図10(b)は本発明の一実施形態による磁性基板の微細構造を示す写真である。これらの図面を参照して、本発明の一実施形態による磁性基板で磁性体層の粒成長及び収縮が均一になっていることを分かる。
【0095】
一方、第1の磁性層のみからなる磁性基板と本発明の一実施形態による磁性基板との平坦度を比較した結果、本発明の一実施形態による磁性基板の平坦度が、第1の磁性層のみからなる場合に比べて、約4倍以上向上していることが認められた。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
1 磁性体基板
2 導電パターン
10 ベース基板
20 押圧板
110、210、310 第1の磁性層
120、220、320 第2の磁性層
110a、210a、310a 第1の磁性材料
120a、220a、320a 第2の磁性材料