(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1濃度演算手段は、前記第2ポンピング電流に基づいて第2NOx濃度を演算すると共に、該第2NOx濃度を前記NOxセンサ毎に予め設定される圧力変動補正情報に基づき補正し、補正後の前記第2NOx濃度を前記第1NOx濃度として算出すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のNOx検出装置。
第1測定室の内部と外部に設けられた一対の第1電極を有すると共に、前記第1測定室に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し又は汲み入れを行い、前記第1測定室の内部の酸素濃度を調整する第1ポンピングセルと、前記第1測定室に連通するNOx測定室の内部と外部に設けられた一対の第2電極を有すると共に、前記第1測定室にて酸素濃度が調整された前記被測定ガス中のNOx濃度に応じた第2ポンピング電流が前記一対の第2電極間に流れる第2ポンピングセルと、を備えるNOxセンサと、
前記NOxセンサに接続されて前記被測定ガス中のNOx濃度を検出するNOx検出装置と、
を備えるNOxセンサシステムであって、
前記NOx検出装置として、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のNOx検出装置を備えること、
を特徴とするNOxセンサシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、単一のNOxセンサであっても、圧力変動による出力バラツキの大きさが、被測定ガスのNOx濃度毎に異なる場合があり、上述の圧力補正情報を用いてNOx濃度を補正した場合に、NOx濃度のうち一部の濃度範囲においてはガス検出精度の低下が抑制できるものの、一部の濃度範囲以外の濃度範囲ではガス検出精度の低下が十分に抑制できない(つまり、濃度範囲全体にわたってガス検出精度の低下を抑制できない)可能性がある。
【0009】
ここで、従来のNOx検出装置において、NOx濃度(評価では、NOガスのみを使用)が90[ppm]の場合における「圧力補正無し」および「圧力補正あり」それぞれのNOx濃度の検出結果を、
図8に示し、また、NOx濃度(評価では、NOガスのみを使用)が1500[ppm]の場合における「圧力補正無し」および「圧力補正あり」それぞれのNOx濃度の検出結果を、
図9に示す。
【0010】
まず、
図8に示すように、NOx濃度が90[ppm]の場合、「圧力補正無し」では、圧力変化によってNOx濃度の検出結果が変動しているのに対して、圧力補正情報を用いて補正を行った「圧力補正あり」では、圧力変化に関わらずNOx濃度の検出結果がほぼ90[ppm]となり、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【0011】
他方、
図9に示すように、NOx濃度が1500[ppm]の場合、圧力補正情報を用いて補正を行った「圧力補正あり」のうち、被測定ガス圧力が110[kPa]以下の圧力領域では、NOx濃度の検出結果が1450〜1550[ppm]の範囲内であり実際のNOx濃度(1500[ppm])との誤差が小さいことから、圧力補正情報を用いた補正の効果が確認できる。しかし、被測定ガス圧力が110[kPa]以上の圧力領域では、「圧力補正あり」でのNOx濃度の検出結果は、実際のNOx濃度(1500[ppm])との差が大きいことから、圧力補正情報を用いて補正した場合であっても、ガス検出精度が低下することが判る。
【0012】
このように、単一のNOxセンサであっても、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度毎に異なる場合には、従来のような圧力補正情報に基づく補正では、一部の濃度範囲ではNOx濃度を適切に補正できるものの、その「一部の濃度範囲」以外の濃度範囲ではNOx濃度を適切には補正できない場合があり、濃度範囲全体にわたるガス検出精度の低下を抑制できない可能性がある。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度によって異なる場合であっても、全濃度範囲にわたるガス検出精度の低下を抑制できるNOx検出装置及びNOxシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のNOx検出装置は、NOxセンサに接続されて被測定ガス中のNOx濃度を検出するNOx検出装置であって、NOxセンサは、第1測定室の内部と外部に設けられた一対の第1電極を有すると共に、第1測定室に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し又は汲み入れを行い、第1測定室の内部の酸素濃度を調整する第1ポンピングセルと、第1測定室に連通するNOx測定室の内部と外部に設けられた一対の第2電極を有すると共に、第1測定室にて酸素濃度が調整された被測定ガス中のNOx濃度に応じた第2ポンピング電流が一対の第2電極間に流れる第2ポンピングセルと、を備えており、第2ポンピング電流に基づいて第1NOx濃度を演算する第1濃度演算手段と、前記第1NOx濃度の補正度合を決定するための濃度変動補正情報を、第1NOx濃度を用いて設定する補正情報設定手段と、外部より入力される被測定ガス圧力情報と、濃度変動補正情報とに基づき、第1NOx濃度を補正することで、NOx濃度を算出する補正演算手段と、を備えることを特徴とするNOx検出装置である。
【0015】
このNOx検出装置では、第2ポンピング電流に基づいて第1NOx濃度を演算して、その第1NOx濃度を用いて濃度変動補正情報を設定するため、被測定ガスに実際に含まれるNOx濃度に応じて濃度変動補正情報を設定できる。
【0016】
そして、このNOx検出装置は、第1NOx濃度を補正するにあたり、被測定ガス圧力情報に加えて、濃度変動補正情報を用いるため、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度によって異なる場合であっても、被測定ガスに実際に含まれるNOx濃度の変化状態に応じて第1NOx濃度を補正できる。
【0017】
つまり、このような補正を行うことで、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度毎に異なる場合であっても、全濃度範囲にわたる被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減することが可能となる。
【0018】
よって、本発明のNOx検出装置によれば、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度によって異なる場合であっても、全濃度範囲にわたる被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減でき、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【0019】
なお、補正演算手段は、予め定められたマップあるいは計算式などを用いて、第1NOx濃度を補正しても良い。
例えば、本発明においては、補正演算手段は、被測定ガス圧力情報についてのn次関数を用いて第1NOx濃度を補正しており、n次関数は二次以上の関数であり、濃度変動補正情報はn次関数の各項の係数である、という構成を採ることができる。
【0020】
つまり、被測定ガス圧力情報についてのn次関数を用いることで、被測定ガスの圧力変動状態に応じて第1NOx濃度を補正でき、また、濃度変動補正情報としてのn次関数の各項の係数が補正情報設定手段にて第1NOx濃度に基づいて設定されることで、被測定ガスに実際に含まれるNOx濃度に応じてn次関数の各項の係数を変更できる。
【0021】
よって、本発明のNOx検出装置によれば、このような補正を行うことで、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度毎に異なる場合であっても、全濃度範囲にわたる被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減することができ、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【0022】
さらに、第1濃度演算手段は、第2ポンピング電流に基づいて第2NOx濃度を演算すると共に、該第2NOx濃度をNOxセンサ毎に予め設定される圧力変動補正情報に基づき補正し、補正後の第2NOx濃度を第1NOxとして算出する、という構成を採ることができる。
【0023】
このように、センサの個体差(個々の特性)に応じて圧力変動補正情報を設定し、この圧力変動補正情報を用いて第2NOx濃度を補正し、補正後の第2NOx濃度を第1NOx濃度として算出することで、圧力変動補正情報による補正が反映された第1NOx濃度を用いて濃度変動補正情報を設定できる。これにより、濃度変動補正情報の設定精度が向上し、被測定ガスの圧力変動によるガス検出精度の低下をより抑制することができる。
【0024】
また、上記発明においては、第1NOx濃度が予め定められた特定濃度範囲であるか否かを判定する特定濃度判定手段と、NOxセンサ毎に予め設定される特定濃度補正情報を用いて第1NOx濃度を補正する第1濃度補正手段と、を備えており、補正情報設定手段は、特定濃度判定手段での判定結果が肯定判定の場合には、第1濃度補正手段による補正後の第1NOx濃度に基づいて濃度変動補正情報を設定し、特定濃度判定手段での判定結果が否定判定の場合には、第1濃度補正手段による補正前の第1NOx濃度に基づいて濃度変動補正情報を設定する、という構成を採ることができる。
【0025】
つまり、特定濃度範囲においてセンサ出力に誤差が生じるNOxセンサを用いる場合であっても、第2ポンピング電流に基づいて演算した第1NOx濃度が特定濃度範囲に含まれる場合には、第1濃度補正手段が第1NOx濃度を補正することで、センサ出力の誤差の影響を低減しつつ、NOx濃度を検出できる。
【0026】
そして、補正情報設定手段は、特定濃度判定手段での判定結果が肯定判定の場合には、第1濃度補正手段による補正後の第1NOx濃度に基づいて濃度変動補正情報を設定する。このため、このNOx検出装置は、センサ出力の誤差の影響を低減しつつ、濃度変動補正情報を設定することができ、ひいては、センサ出力の誤差の影響を低減しつつ、NOx濃度を検出できる。
【0027】
よって、本発明によれば、特定濃度範囲においてセンサ出力に誤差が生じるNOxセンサを用いる場合であっても、センサ出力の誤差の影響を低減しつつNOx濃度を検出できるとともに、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度によって異なる場合であっても、全濃度範囲にわたる被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減でき、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【0028】
なお、特定濃度判定手段は、判定方法として、第1NOx濃度が予め定められた特定濃度よりも高濃度であるか否かを判定する方法を採ることもできる。この場合、特定濃度判定手段にて第1NOx濃度が高濃度であると判定されると、濃度補正手段による第1NOx濃度の補正を行い、特定濃度判定手段にて第1NOx濃度が高濃度ではないと判定されると、濃度補正手段による第1NOx濃度の補正を行わない、という構成となる。
【0029】
このような構成のNOx検出装置は、特定のNOx濃度よりも高濃度でセンサ出力に基づくガス検出値に誤差が生じる場合であっても、ガス検出精度の低下を抑制できる。
次に、上記目的を達成するための本発明のNOxセンサシステムは、第1測定室の内部と外部に設けられた一対の第1電極を有すると共に、第1測定室に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し又は汲み入れを行い、第1測定室の内部の酸素濃度を調整する第1ポンピングセルと、第1測定室に連通するNOx測定室の内部と外部に設けられた一対の第2電極を有すると共に、第1測定室にて酸素濃度が調整された被測定ガス中のNOx濃度に応じた第2ポンピング電流が一対の第2電極間に流れる第2ポンピングセルと、を備えるNOxセンサと、NOxセンサに接続されて被測定ガス中のNOx濃度を検出するNOx検出装置と、を備えるNOxセンサシステムであって、NOx検出装置として、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のNOx検出装置を備えること、を特徴とするNOxセンサシステムである。
【0030】
このNOxセンサシステムは、NOx検出装置として、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のNOx検出装置を備えるため、上述のNOx検出装置と同様の作用効果を奏するものである。
【0031】
よって、本発明のNOxセンサシステムによれば、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度によって異なる場合であっても、全濃度範囲にわたる被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減でき、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度によって異なる場合であっても、全濃度範囲にわたる被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減でき、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るNOxセンサシステム1の構成を示すブロック図である。この実施形態は、排気ガスの圧力に応じて、NOxセンサシステム1が酸素濃度換算値およびNOx濃度換算値の圧力補正を行う例である。
【0035】
NOxセンサシステム1は、少なくともNOxセンサ制御装置10(以下、「NOx検出装置10」ともいう)と、NOxセンサ100と、を備えている。
NOx検出装置10は、図示しない内燃機関(以下、エンジンともいう)を備える車両に搭載され、NOxセンサ100が有するコネクタ180に電気的に接続されている。コネクタ180の内部には、後述するNOxセンサ100毎に設定される各種係数を格納するROM等からなる半導体メモリ181(以下、「記憶手段181」ともいう)が搭載されている。
【0036】
又、NOx検出装置10は、車両側制御装置200(以下、適宜「ECU200」ともいう)に電気的に接続されている。
ECU200は、NOx検出装置10で補正された排気ガス中の酸素濃度およびNOx濃度のデータを受信し、それに基づいてエンジンの運転状態の制御や触媒に蓄積されたNOxの浄化などの処理を実行する。又、ECU200は、圧力センサ300から、排気管内を流れる排気ガスの圧力情報を取得し、NOx検出装置10に送信するよう構成されている。
【0037】
なお、排気ガスの圧力情報は、必ずしも圧力センサ300から取得する構成に限定されず、例えば、ECU200にて別途にエンジン回転数とエンジン負荷を読み込み、これらの情報から予めROM203に記憶させておいたマップ又は計算式を用いて、圧力情報を割り出すようにしても良い。
【0038】
ECU200は、ECU側CPU201(中央演算処理装置201)、RAM202、ROM203、信号入出力部204、および図示しないクロックを備え、ROM等に予め格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0039】
NOx検出装置10は、回路基板上に制御回路58とマイクロコンピュータ60とを備えている。マイクロコンピュータ60はNOx検出装置10の全体を制御し、CPU61(中央演算処理装置61)、RAM62、ROM63、信号入出力部64、A/Dコンバータ65、および図示しないクロックを備え、ROM等に予め格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0040】
制御回路58は、基準電圧比較回路51、Ip1ドライブ回路52、Vs検出回路53、Icp供給回路54、Ip2検出回路55、Vp2印加回路56、ヒータ駆動回路57を備える。制御回路58は、NOxセンサ100を制御すると共に、NOxセンサ100に流れる第1ポンピング電流、第2ポンピング電流を検出してマイクロコンピュータ60に出力する。
【0041】
次に、NOxセンサ100の構成について説明する。NOxセンサ100は、NOxセンサ素子101、NOxセンサ素子101を収容するハウジング、NOxセンサ素子101とNOx検出装置10とを接続するためのコネクタ180、およびNOxセンサ素子101と接続されるリード線を含むものであるが、センサ自体の構成は公知である。そのため、以下では、
図1に示すNOx検出装置10のうちNOxセンサ素子101の断面図を参照して説明する。
【0042】
NOxセンサ素子101は、第1固体電解質層111、絶縁層140、第2固体電解質層121、絶縁層145、第3固体電解質層131、および絶縁層162、163をこの順に積層した構造を有する。第1固体電解質層111と第2固体電解質層121との層間に第1測定室150が画成され、第1測定室150の入口(
図1の左端)に配置された第1拡散抵抗体151を介して外部から被測定ガスGMが導入される。
【0043】
第1測定室150のうち入口と反対端には第2拡散抵抗体152が配置され、第2拡散抵抗体152を介して第1測定室150の右側には、第1測定室150と連通する第2測定室160(本発明の「NOx測定室」に相当)が画成されている。第2測定室160は、第2固体電解質層121を貫通して第1固体電解質層111と第3固体電解質層131との層間に形成されている。
【0044】
絶縁層162、163の間にはNOxセンサ素子101の長手方向に沿って延びる長尺板状のヒータ164が埋設されている。ヒータ164はガスセンサを活性温度に昇温し、固体電解質層の酸素イオンの伝導性を高めて、ガスセンサの動作を安定化させるために用いられる。
【0045】
絶縁層140,145はアルミナを主体とし、第1拡散抵抗体151および第2拡散抵抗体152はアルミナ等の多孔質物質からなる。又、ヒータ164は白金等からなる。
第1ポンピングセル110は、酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主体とする第1固体電解質層111と、これを挟持するように配置された内側第1ポンピング電極113および対極となる外側第1ポンピング電極112とを備え、内側第1ポンピング電極113は第1測定室150に面している。内側第1ポンピング電極113および外側第1ポンピング電極112はいずれも白金を主体とし、各電極の表面は多孔質体からなる保護層114でそれぞれ覆われている。
【0046】
酸素濃度検出セル120は、ジルコニアを主体とする第2固体電解質層121と、これを挟持するように配置された検知電極122および基準電極123とを備える。検知電極122は、内側第1ポンピング電極113より下流側で第1測定室150に面している。検知電極122および基準電極123は、いずれも白金を主体としている。
【0047】
なお、絶縁層145は、第2固体電解質層121に接する基準電極123が内部に配置されるように切り抜かれ、その切り抜き部には多孔質体が充填されて基準酸素室170を形成している。そして、酸素濃度検出セル120にIcp供給回路54を用いて予め微弱な一定値の電流を流すことにより、酸素を第1測定室150から基準酸素室170内に送り込み、酸素基準とする。
【0048】
第2ポンピングセル130は、ジルコニアを主体とする第3固体電解質層131と、第3固体電解質層131のうち第2測定室160に面した表面に配置された内側第2ポンピング電極133および対極となる第2ポンピング対電極132とを備えている。内側第2ポンピング電極133および第2ポンピング対電極132はいずれも白金を主体としている。
【0049】
なお、第2ポンピング対電極132は、第3固体電解質層131上における絶縁層145の切り抜き部に配置され、基準電極123に対向して基準酸素室170に面している。
そして、内側第1ポンピング電極113、検知電極122、内側第2ポンピング電極133はそれぞれ基準電位に接続されている。外側第1ポンピング電極112はIp1ドライブ回路52に接続され、基準電極123はVs検出回路53およびIcp供給回路54に並列に接続されている。又、第2ポンピング対電極132はIp2検出回路55およびVp2印加回路56に並列に接続されている。ヒータ駆動回路57はヒータ164に接続されている。
【0050】
制御回路58における各回路は、以下のような機能を有する。
Ip1ドライブ回路52は、内側第1ポンピング電極113および外側第1ポンピング電極112の間に第1ポンピング電流Ip1を供給しつつ、その際の第1ポンピング電流Ip1を検出する。このとき、内側第1ポンピング電極113および外側第1ポンピング電極112の間に電圧Vp1が生じる。
【0051】
Vs検出回路53は、検知電極122および基準電極123の間の電極間電圧Vsを検出し、検出結果を基準電圧比較回路51に出力する。
基準電圧比較回路51は、基準電圧(例えば、425mV)とVs検出回路53の出力とを比較し、比較結果をIp1ドライブ回路52に出力する。そして、Ip1ドライブ回路52は、電極間電圧Vsが上記基準電圧に等しくなるようにIp1電流を制御し、NOxが分解しない程度に、第1測定室150内の酸素濃度を調整する。
【0052】
Icp供給回路54は、検知電極122および基準電極123の間に微弱な電流Icpを流し、酸素を第1測定室150から基準酸素室170の内部に送り込み、基準電極123を基準となる所定の酸素濃度に晒させる。
【0053】
Vp2印加回路56は、内側第2ポンピング電極133および第2ポンピング対電極132の間に、被測定ガスGM中のNOxガスが酸素(O
2)と窒素(N
2)に分解する程度の一定電圧Vp2(例えば、450mV)を印加し、NOxを窒素と酸素に分解する。
【0054】
Ip2検出回路55は、NOxの分解により生じた酸素が第2測定室160から汲み出されるように第2ポンピングセル130に流れる第2ポンピング電流Ip2を検出する。
Ip1ドライブ回路52は、検出した第1ポンピング電流Ip1の値をA/Dコンバータ65に出力する。又、Ip2検出回路55は、検出した第2ポンピング電流Ip2の値をA/Dコンバータ65に出力する。
【0055】
A/Dコンバータ65はこれらの値をデジタル変換し、信号入出力部64を介してCPU61に出力する。
次に、制御回路58を用いたNOxセンサ100の制御の一例について説明する。まず、エンジンが始動されて外部電源から電力の供給を受けると、ヒータ駆動回路57を介してヒータ電圧Vhが印加されたヒータ164が作動し、第1ポンピングセル110、酸素濃度検出セル120、第2ポンピングセル130を活性化温度まで加熱する。又、Icp供給回路54は、検知電極122および基準電極123の間に微弱な電流Icpを流し、酸素を第1測定室150から基準酸素室170内に送り込み、酸素基準とする。
【0056】
そして、各セル110,120,130が活性化温度まで加熱されると、第1ポンピングセル110は、第1測定室150に流入した被測定ガス(排ガス)GM中の酸素を内側第1ポンピング電極113から外側第1ポンピング電極112へ向かって汲み出す。
【0057】
このとき、第1測定室150の内部の酸素濃度は、酸素濃度検出セル120の電極間電圧Vs(端子間電圧Vs)に対応したものとなるため、この電極間電圧Vsが上記基準電圧になるように、Ip1ドライブ回路52が第1ポンピングセル110に流れる第1ポンピング電流Ip1を制御し、第1測定室150内の酸素濃度をNOxが分解しない程度に調整する。
【0058】
酸素濃度が調整された被測定ガスGMは第2測定室160に向かってさらに流れる。そして、Vp2印加回路56は、第2ポンピングセル130の電極間電圧(端子間電圧)として、被測定ガスGM中のNOxガスが酸素とN2ガスに分解する程度の一定電圧Vp2(酸素濃度検出セル120の制御電圧の値より高い電圧、例えば450mV)を印加し、NOxを窒素と酸素に分解する。そして、NOxの分解により生じた酸素が第2測定室160から汲み出されるよう、第2ポンピングセル130に第2ポンピング電流Ip2が流れる。この際、第2ポンピング電流Ip2とNOx濃度の間には直線関係があるため、Ip2検出回路55が第2ポンピング電流Ip2を検出することにより、被測定ガス中のNOx濃度を検出することができる。
【0059】
[1−2.NOx濃度の圧力補正]
本発明の第1の実施形態に係るNOx検出装置10においては、以下の[数1]に従ってNOx濃度の圧力補正を行う。
【0061】
ただし、Rnoが補正後のNOx濃度であり、NOx
p0は[数2]に示す演算式で表されるものであり、また、ΔNOは、[数3]に示す演算式で表されるものである。
【0064】
なお、[数2]においては、NOx
pは圧力補正前の圧力PでのNOx濃度(第2ポンピング電流に基づく第2NOx濃度)であり、NOx
p0は圧力補正後の圧力P0でのNOx濃度(第1NOx濃度)であり、Pは被測定ガスの圧力(kPa)であり、P
0は大気圧(=101.3kPa)であり、k
1はNOx圧力補正係数(NOx圧力補正情報)である。[数3]における補正係数a,bは、後述する圧力補正処理のステップS16またはステップS20での処理により決定される。なお、[数3]においては、ΔPは、被測定ガスの圧力Pから大気圧P
0を引いた値であり、定数Cは、NOxセンサ100ごとに予め定められている個体情報であり、半導体メモリ181に記憶されている。
【0065】
なお、第2ポンピング電流Ip2は被測定ガス中のNOx濃度と一定の関係を有するため、第2ポンピング電流Ip2に基づいて圧力Pでの第2NOx濃度NOx
pを計算することができる。マイクロコンピュータ60は、ROM63からIp2と被測定ガス中のNOx濃度との関係式を読み出してこの計算を行う。
【0066】
ここで、NOx圧力補正係数(k
1)は、
図2に示されるマップから選ばれ、個々のNOxセンサ毎に割当てられたランクに対応したk
1が、そのNOxセンサのNOx圧力補正係数として設定される。なお、個々のNOx検出装置においては、上記補正ランクのうち1つのみを用いる。この場合、NOx検出装置を出荷する前、個々のNOxセンサの半導体メモリ181には
図2のマップが予め記憶されている。
【0067】
そして、外部検査機器に個々のNOxセンサを接続し、基準ガスを用いて複数の既知のガス圧力下で第2ポンピング電流Ip2に基づくNOx濃度換算値を算出し、k
1を決定する。例えば、2点で測定した場合は、k
1を直線の傾きとして設定する。この時のk
1が
図2のマップのk
1のいずれに近似するかを判定し、判定したランクをそのNOxセンサに用いる。例えばマップにそのランクを示すフラグを設定することにより、マップ内の1つの補正ランクに該当するデータのみが参照される。なお、基準ガスとしては、NOが90ppm、H
2Oが3%、O
2が9%、残部がN
2の構成からなるものを用いた。このようにして、個々のNOxセンサに対するk
1の値が半導体メモリ181に記憶される。
【0068】
なお、3点以上の既知のガス圧力下で測定した場合は、k
1を所定の曲線、又は圧力範囲毎に係数が割当てられたマップとして設定してもよい。
圧力補正の方法は、[数1]〜[数3]のような関数を用いる方法に限定されず、例えば、圧力範囲毎に補正量が割当てられたマップを用いてもよい。
【0069】
また、本発明の第1の実施形態に係るNOx検出装置10においては、以下の[数4]に従って酸素濃度の圧力補正を行う(但し、Op;圧力補正前の圧力Pでの酸素濃度(第1ポンピング電流に基づく酸素濃度換算値)、Op
0;圧力補正後の圧力P
0での酸素濃度(酸素濃度換算値)、P;被測定ガスの圧力(kPa)、P
0;大気圧(=101.3kPa)、k
2;酸素圧力補正係数(酸素圧力補正情報))。
【0071】
なお、第1ポンピング電流Ip1は被測定ガス中の酸素濃度と一定の関係を有するため、第1ポンピング電流Ip1から圧力Pでの補正前酸素濃度Opを計算することができる。具体的には、マイクロコンピュータ60にて、ROM63から第1ポンピング電流Ip1と被測定ガス中の酸素濃度との関係式を読み出してこの計算を行う。
【0072】
ここで、酸素圧力補正係数(k
2)は、
図2と同様なマップから選ばれ、個々のNOxセンサ毎に割当てられたランクに対応したk
2がそのNOxセンサの酸素圧力補正係数として設定される。そして、半導体メモリ181には、いずれかのk
2の値が記憶される。なお、このk
2は、上述したk
1と同様に、外部検査機器に個々のNOxセンサを接続し、基準ガスを用いて複数の既知のガス圧力下で第1ポンピング電流Ip1に基づく酸素濃度換算値を算出して決定する。
【0073】
[1−3.圧力補正処理]
次に、本発明の第1の実施形態に係るNOx検出装置10における圧力補正処理の処理内容について、
図3のフローチャートを参照して説明する。なお、圧力補正処理は、マイクロコンピュータ60で実行される。
【0074】
圧力補正処理が開始されると、まず、ステップS2を実行するマイクロコンピュータ60は、NOxセンサ100のコネクタ180に搭載されている半導体メモリ181にアクセスし、半導体メモリ181の内部の酸素圧力補正係数(k
2)を取得する。
【0075】
次のステップS4を実行するマイクロコンピュータ60は、半導体メモリ181にアクセスし、半導体メモリ181の内部のNOx圧力補正係数(k
1)を取得する。
続くステップS6を実行するマイクロコンピュータ60は、ECU200を介して、被測定ガスの圧力(圧力情報)を取得する。
【0076】
続いてステップS8を実行するマイクロコンピュータ60は、酸素濃度の算出・補正・出力処理を実行する。
具体的には、ステップS8を実行するマイクロコンピュータ60は、まず、Ip1ドライブ回路52から第1ポンピング電流Ip1の値(実際には、第1ポンピング電流Ip1を電圧変換した検出信号)を取得する。そして、マイクロコンピュータ60は、ROM63から第1ポンピング電流Ip1と被測定ガスの酸素濃度との関係式を読み出して、圧力補正前の酸素濃度Op(酸素濃度換算値Op)を算出する。次に、マイクロコンピュータ60は、ステップS2およびステップS6で取得した酸素圧力補正係数および被測定ガスの圧力を上記[数4]に代入し、圧力補正後の酸素濃度Op
0を算出する。ここで、Op
0は、圧力P
0(大気圧)での値に換算されたものである。そして、マイクロコンピュータ60は、算出した酸素濃度Op
0を、信号入出力部64を介してECU200に出力(送信)する。
【0077】
次のステップS10を実行するマイクロコンピュータ60は、Ip2検出回路55から第2ポンピング電流Ip2の値(実際には、第2ポンピング電流Ip2を電圧変換した検出信号)を取得する。
【0078】
そして、ステップS12を実行するマイクロコンピュータ60は、ROM63から第2ポンピング電流Ip2と被測定ガスのNOx濃度との関係式を読み出して、圧力補正前の圧力Pでの第2NOx濃度NOx
pを算出する。
【0079】
続いてステップS13を実行するマイクロコンピュータ60は、圧力補正後の圧力P0での第1NOx濃度NOx
p0の算出・出力処理を実行する。
具体的には、ステップS13を実行するマイクロコンピュータ60は、第2NOx濃度NOx
p、ステップS4およびステップS6で取得したNOx圧力補正係数および被測定ガスの圧力を上記[数2]に代入し、圧力補正後の第1NOx濃度NOx
p0を算出する。ここで、第1NOx濃度NOx
p0は、圧力P
0(大気圧)での値に換算されたものである。そして、マイクロコンピュータ60は、算出した第1NOx濃度NOx
p0を、信号入出力部64を介してECU200に出力(送信)する。
【0080】
次に、ステップS14を実行するマイクロコンピュータ60は、第1NOx濃度NOx
p0が予め定められた特定濃度範囲であるか否かを判定し、肯定判定する場合にはステップS18に移行し、否定判定する場合にはステップS16に移行する。なお、本実施形態のNOx検出装置10では、特定濃度範囲として「90[ppm]以上の濃度範囲」が設定されている。
【0081】
ステップS14で否定判定すると、ステップS16を実行するマイクロコンピュータ60は、予め用意されたマップデータを半導体メモリ181から読み出し、そのマップデータを用いて、第1NOx濃度NOx
p0に基づいて補正係数a,bをそれぞれ演算する。補正係数a,bは、上述の[数3]における係数であり、[数3]は後述するステップS22での補正処理に用いられる。
【0082】
この演算処理に用いるマップデータの一例を、
図4に示す。補正係数a,bに関するマップデータは、それぞれNOxセンサ100ごとに予め設定されており、NOx検出装置を出荷する前、個々のNOxセンサの半導体メモリ181にはマップデータが予め記憶されている。
【0083】
ステップS14で肯定判定すると、ステップS18を実行するマイクロコンピュータ60は、NOxセンサ100ごとに予め設定される特定濃度補正用演算式を用いて、第1NOx濃度NOx
p0を補正する。具体的には、[数5]に示す特定濃度補正用演算式を用いて補正を行う。
【0085】
ここで、[数5]のうち、変数Xが「補正前の第1NOx濃度」(第1NOx濃度NOx
p0)であり、変数Yは「補正後の第1NOx濃度」である。また、係数α,β,γは、それぞれNOxセンサ100ごとに予め設定されており、NOx検出装置を出荷する前、個々のNOxセンサの半導体メモリ181には係数α,β,γの各値が予め記憶されている。
【0086】
具体的には、外部検査機器に個々のNOxセンサを接続し、判定用ガスを用いて既知のガス濃度下で第2ポンピング電流Ip2に基づくNOx濃度換算値を算出し、既知のガス濃度とNOx濃度換算値との誤差(出力低下率[%])を検出し、その出力低下率と
図5に示すマップデータとに基づいて係数α,β,γの各値を定める。
【0087】
なお、
図5に示すマップデータは、外部検査機器に記憶されており、出力低下率の検出結果に応じて、個々のNOxセンサに対する係数α,β,γの各値が半導体メモリ181に記憶される。
図5は、判定用ガスとしてNOx濃度が1500[ppm]のガスを用いたときの出力低下率に基づいて係数α,β,γの各値を特定するためのマップデータの一例である。
【0088】
次に、ステップS20を実行するマイクロコンピュータ60は、予め用意されたマップデータを用いて、ステップS18での補正後の第1NOx濃度NOx
p0に基づいて補正係数a,bをそれぞれ演算する。
【0089】
なお、ステップS20で用いるマップデータは、ステップS16で用いるマップデータと同じものである。
ステップS16またはステップS20の後に、ステップS22を実行するマイクロコンピュータ60は、NOxセンサ100ごとに予め設定される圧力変動補正用演算式を用いて、第1NOx濃度NOx
p0を補正する。具体的には、上述した[数1]が圧力変動補正用演算式であり、この演算式のΔNOに[数3]を代入した演算式を用いて補正後NOx濃度Rnoを演算する。
【0090】
次のステップS24では、ステップS22で演算した補正後NOx濃度Rnoを「NOx濃度」として、信号入出力部64を介してECU200に対して出力(送信)する処理を行う。
【0091】
続くステップS26では、圧力補正処理を終了するか否かについて判定しており、肯定判定する場合には本処理を終了し、否定判定する場合には再びステップS8に移行して、肯定判定するまでステップS8からステップS26までの各処理を繰り返し実行する。
【0092】
このようにして圧力補正処理を実行することで、NOxセンサ100の第2ポンピング電流Ip2に基づき検出されるNOx濃度を補正することができる。
[1−4.比較測定]
本実施形態のNOx検出装置10による補正の効果を確認するために、従来の装置との比較測定を実施した。測定結果について説明する。
【0093】
まず、第1の比較測定では、NOx濃度が1500[ppm]の環境下で被測定ガスの圧力を変動させた場合において、本実施形態による補正後のNOx濃度と、従来技術による補正後のNOx濃度と、をそれぞれ測定した。
【0094】
なお、従来技術による補正後のNOx濃度とは、上述した[数2]のみを用いてNOx濃度を補正したものである。つまり、従来技術による補正後のNOx濃度とは、上述した[数1]のうち[数3]の効果が反映されることなく補正されたものである。
【0095】
第1比較測定の測定結果を
図6に示す。
図6に示すように、本実施形態による補正後のNOx濃度は、被測定ガスの圧力変化に拘わらず実際のNOx濃度(1500[ppm])とほぼ等しい値を示しており、被測定ガスの圧力変化の影響を低減してNOx濃度を検出できることが判る。
【0096】
他方、従来技術による補正後のNOx濃度は、被測定ガス圧力が60〜120[kPa]の範囲では、実際のNOx濃度(1500[ppm])との差が小さく補正の効果が認められる。しかし、被測定ガス圧力が120[kPa]を超える範囲では、圧力が上昇するに従い実際のNOx濃度との差が大きくなることが判る。
【0097】
このことから、本実施形態のNOx検出装置10は、NOx濃度が1500[ppm]の環境下において被検出ガスの圧力が変動する場合であっても、精度良くガス検出できる。
【0098】
なお、本実施形態のNOx検出装置10は、従来のNOx検出装置と同様に、NOx濃度が90[ppm]の場合には、
図8の「圧力補正あり」と同様の検出結果を得られるため、被測定ガスの圧力変化に関わらずNOx濃度の検出結果がほぼ90[ppm]となる。換言すれば、本実施形態のNOx検出装置10は、NOx濃度が90[ppm]の場合においても、被測定ガスの圧力変化の影響を抑えることができ、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【0099】
つまり、本実施形態のNOx検出装置10は、NOx濃度が90[ppm]の場合、およびNOx濃度が1500[ppm]の場合のそれぞれにおいて、被検出ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を抑えつつ、NOx濃度を検出できる。
【0100】
次に、第2の比較測定では、被測定ガスの圧力が一定の環境下でNOx濃度を変動させた場合において、上記の[数5](特定濃度補正用演算式)を用いた補正前および補正後のそれぞれのセンサ出力低下率を測定した。
【0101】
なお、この測定では、試料ガスとして、NOが0〜1500[ppm]、H
2Oが4%、O
2が7%、残部がN
2の構成からなるものを用いた。また、第2の比較測定は、55個のNOxセンサについて実施した。さらに、ここでのセンサ出力低下率の算出方法に関しては、まず、検出したNOx濃度から実際のNOx濃度(以下、NOx実濃度ともいう)を差し引いた差分値を算出し、NOx実濃度に対する差分値の割合[%]をセンサ出力低下率として算出する方法を採用している。
【0102】
第2比較測定の測定結果を
図7に示す。
図7に示すように、[数5]を用いた補正前のセンサ出力低下率は、NOx実濃度が200[ppm]以上の範囲では、センサ出力低下率の絶対値が0.2[%]を超えるものが少なくとも1個以上存在しており、NOx実濃度が大きくなるほど、検出したNOx濃度とNOx実濃度との誤差が大きくなることが判る。
【0103】
他方、[数5]を用いた補正後のセンサ出力低下率は、NOx実濃度の全範囲で、全てのNOxセンサに関して、センサ出力低下率の絶対値が0.2[%]よりも小さくなっており、NOx実濃度の変化に拘わらず、検出したNOx濃度とNOx実濃度との誤差が小さくなることが判る。
【0104】
これらのことから、[数5]を用いた補正を行うことで、NOx実濃度が200[ppm]を超える濃度範囲であっても、検出したNOx濃度とNOx実濃度との誤差を小さくできることが判る。
【0105】
[1−5.効果]
以上説明したように、本実施形態のNOx検出装置10(あるいはNOxセンサシステム1)は、第2ポンピング電流Ip2に基づいて第2NOx濃度NOx
pを演算し(ステップS12)、その第2NOx濃度NOx
pの補正後の値を第1NOx濃度NOx
p0として算出し(ステップS13)、この第1NOx濃度NOx
p0を用いて補正係数a,b(濃度変動補正情報)を設定する(ステップS16,S20)。このため、NOx検出装置10は、被測定ガスに実際に含まれるNOx濃度に応じて補正係数a,b(濃度変動補正情報)を設定できる。
【0106】
そして、NOx検出装置10は、第1NOx濃度NOx
p0を補正するにあたり、補正係数a,b(濃度変動補正情報)により定まる[数3]を用いる。このため、NOx検出装置10は、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度によって異なる場合であっても、全濃度範囲にわたる被測定ガスに実際に含まれるNOx濃度の変化状態に応じて第1NOx濃度NOx
p0を補正できる。
【0107】
つまり、NOx検出装置10は、このような補正を行うことで、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度毎に異なる場合であっても、全濃度範囲にわたる被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減することが可能となる。
【0108】
よって、本実施形態のNOx検出装置10によれば、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度によって異なる場合であっても、全濃度範囲にわたる被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減でき、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【0109】
また、本実施形態は、第1NOx濃度NOx
p0を補正するための[数1]において、被測定ガスの圧力P(被測定ガス圧力情報)についての二次関数([数3])を用いており、被測定ガスの圧力変動状態に応じて第1NOx濃度NOx
p0を補正できる。また、[数3]の二次関数における各項の係数(補正係数a,b)は、ステップS16またはS20での処理により、第1NOx濃度NOx
p0に基づいて設定されることから、被測定ガスに実際に含まれるNOx濃度に応じて変更される。
【0110】
よって、本実施形態のNOx検出装置10によれば、[数1]を用いた補正を行うことで、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度毎に異なる場合であっても、被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減することができ、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【0111】
また、本実施形態は、第2NOx濃度NO
pを、圧力補正情報(K
1)に基づき補正し、補正後の値を第1NOx濃度NOx
p0として算出している。これにより、圧力変動補正情報(k
1)による補正が反映された第1NOx濃度NOx
p0を用いて補正係数a,b(濃度変動補正情報)を設定できるため、補正係数a,b(濃度変動補正情報)がより精度が向上し、被測定ガスの圧力変動によるガス検出精度の低下をより抑制することができる。
【0112】
また、本実施形態のNOx検出装置10は、第2ポンピング電流Ip2に基づいて演算した第1NOx濃度NOx
p0が「90[ppm]以上の濃度範囲」(特定濃度範囲)に含まれる場合には、[数5]に示す特定濃度補正用演算式を用いて第1NOx濃度NOx
p0の補正を行う。これにより、「90[ppm]以上の濃度範囲」(特定濃度範囲)においてセンサ出力に誤差が生じるNOxセンサを用いる場合であっても、NOx検出装置10は、[数5]に示す特定濃度補正用演算式を用いて第1NOx濃度NOx
p0の補正を行うことで、センサ出力の誤差の影響を低減しつつ、NOx濃度を検出できる。
【0113】
なお、[数5]に示す特定濃度補正用演算式を用いた補正の効果は、上述した第2の比較測定の測定結果(
図7)に示されている。
そして、NOx検出装置10は、第1NOx濃度NOx
p0が「90[ppm]以上の濃度範囲」(特定濃度範囲)となる場合には(ステップS14で肯定判定)、[数5]に示す特定濃度補正用演算式を用いて第1NOx濃度NOx
p0の補正を行う(ステップS18)。続くステップS20では、ステップS18での補正後の第1NOx濃度NOx
p0(NOx濃度換算値)に基づいて補正係数a,bをそれぞれ演算する。
【0114】
このため、NOx検出装置10は、センサ出力の誤差の影響を低減しつつ、補正係数a,b(濃度変動補正情報)を設定することができ、ひいては、センサ出力の誤差の影響を低減しつつ、NOx濃度を検出できる。
【0115】
よって、本実施形態によれば、特定濃度範囲においてセンサ出力に誤差が生じるNOxセンサを用いる場合であっても、センサ出力の誤差の影響を低減しつつNOx濃度を検出できるとともに、圧力変動による出力バラツキの大きさがNOx濃度によって異なる場合であっても、被測定ガスの圧力変動による出力バラツキの影響を低減でき、ガス検出精度の低下を抑制できる。
【0116】
[1−6.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
内側第1ポンピング電極113および外側第1ポンピング電極112が「一対の第1電極」の一例に相当し、内側第2ポンピング電極133および第2ポンピング対電極132が「一対の第2電極」の一例に相当し、第2測定室160がNOx測定室の一例に相当する。
【0117】
ステップS12及びステップS13を実行する実行するマイクロコンピュータ60が第1濃度演算手段の一例に相当し、ステップS16またはステップS20を実行する実行するマイクロコンピュータ60が補正情報設定手段の一例に相当し、ステップS22を実行する実行するマイクロコンピュータ60が補正演算手段の一例に相当する。
【0118】
NOx圧力補正係数(k
1)が圧力変動補正情報の一例に相当し、被測定ガスの圧力Pが被測定ガス圧力情報の一例に相当し、補正係数a,bが濃度変動補正情報の一例に相当する。
【0119】
ステップS14を実行する実行するマイクロコンピュータ60が特定濃度判定手段の一例に相当し、ステップS18を実行する実行するマイクロコンピュータ60が第1濃度補正手段の一例に相当し、[数5]が特定濃度補正情報の一例に相当する。
【0120】
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0121】
例えば、上記実施形態では、ステップS14における特定濃度範囲として「90[ppm]以上の濃度範囲」が設定されているが、ステップS14における特定濃度範囲は、この濃度範囲に限られることはなく、NOxセンサの特性や測定環境などに応じて任意の濃度範囲を設定することができる。
【0122】
また、ステップS22での補正処理は、[数1]〜[数3]のような関数を用いる方法に限定されず、NOx濃度を補正するための他の方法(例えば、圧力範囲毎に補正量が割当てられたマップを用いた方法など)を用いてもよい。
【0123】
ステップS16およびS20において補正係数a,bの演算処理に用いるマップデータは、
図4に示すものに限られることはなく、NOxセンサの特性や測定環境などに応じて任意のマップデータを用いることができる。同様に、ステップS18において係数α,β,γの演算処理に用いるマップデータは、
図5に示すものに限られることはなく、NOxセンサの特性や測定環境などに応じて任意のマップデータを用いることができる。
【0124】
また、本実施形態では、ステップS13にて、圧力補正前の第2NOx濃度NOx
pおよび[数2]を用いて、圧力補正後の圧力P0での第1NOx濃度NOx
p0の算出・補正・出力処理を実行し、ステップS22にて、[数1]を用いて、補正後NOx濃度Rnoを演算している。しかしながら、これに限られず、ステップS13を削除し、ステップS14〜ステップS20までは、圧力補正前の第2NOx濃度NOx
pを第1NOx濃度とみなして各処理を実行し、その後、ステップS22にて、[数1]に[数2]及び[数3]を代入した演算式を用いて補正後NOx濃度Rnoを演算してもよい。