(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718893
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】近接場光利用ヘッド及びそれを備えた情報記録再生装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/31 20060101AFI20150423BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
G11B5/31 Z
G11B5/02 T
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-501758(P2012-501758)
(86)(22)【出願日】2011年2月18日
(86)【国際出願番号】JP2011053437
(87)【国際公開番号】WO2011105286
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2013年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2010-37988(P2010-37988)
(32)【優先日】2010年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】平田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 徳男
(72)【発明者】
【氏名】大海 学
(72)【発明者】
【氏名】篠原 陽子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 幸子
(72)【発明者】
【氏名】田中 良和
【審査官】
斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−152897(JP,A)
【文献】
特開2003−006803(JP,A)
【文献】
特開2003−114184(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/008488(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/00−5/024
G11B 5/31
G11B 7/12−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を近接場光によって加熱するとともに前記記録媒体に対して記録磁界を与えることにより、磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光利用ヘッドであって、
前記記録媒体の表面に対向配置されたスライダと、
前記スライダに固定され、光束を伝搬するコアを有する光導波路と、
前記記録媒体側の前記コアの先端部の少なくとも光軸が横切る部分を覆う遮光膜と、
前記コアの先端部の前記遮光膜で覆われていない部分に備えられた基部と、
前記記録媒体に露出した光散乱体先端部とを備えており、
前記基部と前記光散乱体先端部を構成するとともに、前記コア及び前記基部の境界部分に前記光束が照射されることにより、前記境界部分を介して生じる表面プラズモンを用いて前記光散乱体先端部から近接場光を発生させる光散乱体とを備えることを特徴とする近接場光利用ヘッド。
【請求項2】
前記光導波路は、前記コアの先端部に向うにつれて前記光束のスポットサイズを絞り込むスポットサイズ変換器であることを特徴とする請求項1に記載の近接場光利用ヘッド。
【請求項3】
前記遮光膜は、前記光散乱体に対して斜めに備えられており、前記コアの前記記録媒体側に向うにつれて前記遮光膜と前記光散乱体との間隔が狭くなるように備えられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の近接場光利用ヘッド。
【請求項4】
前記スライダに固定され、前記光導波路の前記記録媒体側とは逆側の端側に前記光束を導入するレーザを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の近接場光利用ヘッド。
【請求項5】
前記スライダに固定され、前記光導波路の前記記録媒体側とは逆側の端側に前記光束を導入する第2の光導波路を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の近接場光利用ヘッド。
【請求項6】
前記基部と前記光散乱体先端部とが異なる幅を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の近接場光利用ヘッド。
【請求項7】
前記基部が前記コアの先端部と同じ幅を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の近接場光利用ヘッド。
【請求項8】
前記基部が前記コアの先端部の側面に設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の近接場光利用ヘッド。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の近接場光利用ヘッドと、前記記録媒体とを有する情報記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を利用して記録媒体に各種の情報を記録再生するヘッド及びそれを備えた情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器におけるハードディスクドライブ等の情報記録再生装置は、より大量かつ高密度情報の記録再生を行いたい等のニーズを受けて、さらなる高密度化が求められている。そのため、隣り合う磁区同士の影響や、熱揺らぎを最小限に抑えるために、保磁力の強いものを記録媒体として採用することが考えられている。そのため、記録媒体に情報を記録することが困難になっていた。
【0003】
そこで、上述した不具合を解消するために、近接場光を利用して磁区を局所的に加熱して一時的に保磁力を低下させ、その間に記録媒体への書き込みを行う熱アシスト磁気記録方式の情報記録再生装置が考案され開発が進められている。
【0004】
熱アシスト磁気記録方式による情報記録再生装置には、近接場光を発生させるための近接場光素子およびそれを駆動させるための光学系が必要となる。これら近接場光素子と光学系は、各種のものが考案されている。
【0005】
例えば特許文献1および特許文献2に示されるように、主磁極に隣接するように近接場光を発生する金等からなる光散乱体を設け、レーザからの光を光散乱体に照射する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−004901号公報
【特許文献2】特開2008−159158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術による近接場光利用ヘッドでは、高い記録密度に対応することが困難である。特許文献1においては
図3や
図18に示すように、レーザからの光を空中伝搬によって光散乱体に照射している。レーザからの光をレンズで絞ってはいるが、光散乱体の寸法は小さいため、光散乱体に照射されない漏れ光成分が多くなってしまう。漏れ光の多くは記録媒体に照射され記録媒体を加熱してしまう。本来、近接場光により記録媒体の微小領域を加熱することで高密度記録を実現する熱アシスト磁気記録であるが、漏れ光のために微小領域だけを加熱することができず、そのために高密度記録を実現できないおそれがある。
【0008】
また、特許文献2のような構成においては
図6に示すように、光導波路の出射端面に光散乱体(近接場光散乱板)を設けており、レーザからの光を光導波路を介して光散乱体に照射している。しかし、光導波路の光路となる部分の断面積が光散乱体よりも大きくなるため、特許文献1と同様に漏れ光が発生してしまい、同様に高密度記録を実現できないおそれがある。
【0009】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、漏れ光をなくし近接場光成分のみで記録媒体を加熱できるような構成を提案し、それにより高密度記録を実現できる近接場光利用ヘッド及びそれを備えた情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、記録媒体を近接場光によって加熱するとともに記録媒体に対して記録磁界を与えることにより、磁化反転を生じさせ、情報を記録させるものであり、記録媒体の表面に対向配置されたスライダと、スライダに固定され、光束を伝搬するコアを有する光導波路と、記録媒体側のコアの先端部の少なくとも光軸が横切る部分を覆う遮光膜と、コアの先端部の遮光膜で覆われていない部分に備えられた基部と、記録媒体に露出した光散乱体先端部とを備えており、コア及び基部の境界部分に光束が照射されることにより、境界部分を介して生じる表面プラズモンを用いて光散乱体先端部から近接場光を発生させる光散乱体とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、コアにより伝搬された光束は遮光膜によって漏れ出ることなく、一度光散乱体上の表面プラズモンを介して、近接場光として初めてスライダ表面に発生する。よって、記録媒体には近接場光のみが照射され、コアからの伝搬光が照射されることがない。よって、記録媒体のうち近接場光のサイズに対応した微小領域のみが加熱されるため、記録媒体に書き込む情報の密度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、コアの先端部に向うにつれて光束のスポットサイズを絞り込む光導波路がスポットサイズ変換器であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、スポットサイズ変換器を伝搬する光のスポットサイズを縮小できるため、微小寸法の光散乱体に効率よく光を照射することができる。よって、エネルギー効率の良い情報記録を実現することができる。
【0014】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいて、遮光膜は、光散乱体に対して斜めに備えられており、コアの記録媒体側に向うにつれて遮光膜と光散乱体との間隔が狭くなるように備えられていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、コアを伝播してきた光を、遮光膜によって光散乱体に寄せるように集中させることができるため、より多くの光を光散乱体に照射することができ、より高い効率で近接場光を発生させることができる。
【0016】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、スライダに固定され、光導波路の記録媒体側とは逆側の端側に光束を導入するレーザを備えることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、レーザをスライダの直近に配することができるため、効率よくレーザの光を光導波路に伝えることができる。よって、エネルギー効率の良い情報記録を実現することができる。
【0018】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、スライダに固定され、光導波路の記録媒体側とは逆側の端側に光束を導入する第2の光導波路を備えることを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、レーザをスライダから遠方に配置し、第2の光導波路を用いてレーザと光導波路を接続できるため、レーザ搭載箇所の自由度が向上する。スライダよりも大きなレーザを用いることが容易になり、大きなエネルギーを光導波路に供給できる。よって、SNの高い情報記録を実現することができる。
【0020】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、基部と光散乱体先端部とが異なる幅を有することを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、大きな基部で光導波路からの光束を効率よく受け止め、小さな光散乱体先端部で微小な近接場光を発生させることができる。よって、エネルギー効率が良く、かつ高密度な情報記録を実現することができる。
【0022】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、基部がコアの先端部と同じ幅を有することを特徴とするものである。
【0023】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、基部で光導波路からの光束を効率よく受け止めることができる。よって、エネルギー効率の良い情報記録を実現することができる。
【0024】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、基部がコアの先端部の側面に設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、基部で光導波路からの光束を効率よく受け止めることができる。よって、エネルギー効率の良い情報記録を実現することができる。
【0026】
また、本発明に係る情報記録再生装置は、上記本発明の熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドと、記録媒体と、を有することを特徴とするものである。
【0027】
本発明に係る情報記録再生装置においては、本発明の熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドを備えているので、高い記録密度を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドによれば、光源および導波路からの漏れ光をなくし近接場光成分のみで記録媒体を加熱でき、それにより高密度記録を実現できる情報記録再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る情報記録再生装置を示す構成図である。
【
図2】
図1に示すヘッドジンバルアセンブリの斜視図である。
【
図4】
図3のうち導光部303と主磁極310の記録媒体D近傍の一部を拡大した図である。
【
図5】
図4をスライダ2のABSから見た下面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るスライダ2の流出端側から再生素子304とクラッド312および遮光膜314を透過して、コア311と光散乱体313を見た図である。
【
図11】
図9の別のバリエーションを示す図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係るヘッドジンバルアセンブリを示す斜視図である。
【
図15】
図14のうち導光部501と主磁極310の記録媒体D近傍の一部を拡大した図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係るヘッドジンバルアセンブリの断面図である。
【
図17】
図16のうち導光部と主磁極310の記録媒体D近傍の一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態を、
図1から
図8を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る情報記録再生装置1を示す構成図である。なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、磁気記録層を有する記録媒体Dに対して、熱アシスト磁気記録方式で書き込みを行う装置である。
【0031】
図1に示すように本実施形態の情報記録再生装置1において、スライダ2が固定されたサスペンション3が、キャリッジ11に固定されている。スライダ2とサスペンション3を合わせて、ヘッドジンバルアセンブリ12と呼ぶ。円盤状の記録媒体Dはスピンドルモータ7によって所定の方向に回転する。キャリッジ11はピボット10を中心に回転可能になっており、制御部5からの制御信号によって制御されるアクチュエータ6によって回転し、スライダ2を記録媒体D表面の所定の位置に配置することができる。ハウジング9はアルミニウムなどから成る箱状(
図1では説明を分かりやすくするため、ハウジング9の周囲を取り囲む周壁を省略している)ものであり、上記の部品をその内部に格納している。スピンドルモータ7はハウジング9の底面に固定されている。スライダ2は記録媒体Dに向けて磁場を発生させる記録素子(図示略)と、近接場光を発生する導光部(図示略)と、記録媒体Dに記録された情報を再生する再生素子(図示略)を有している。記録素子と再生素子は、サスペンション3およびキャリッジ11に沿って敷設されたフレキシブル配線13、キャリッジ11側面に設けられたターミナル14およびフラットケーブル4を介して制御部5に接続されている。
【0032】
記録媒体Dは1枚でも良いが、
図1に示すように複数枚設けても良い。記録媒体Dの枚数が増えれば、ヘッドジンバルアセンブリ12の個数も増加する。
図1では記録媒体Dの片面側のみにヘッドジンバルアセンブリ12が設けられている構成を示しているが、両面に設けても良い。よって、ヘッドジンバルアセンブリ12の個数は、最大で記録媒体Dの枚数の倍になる。これにより、情報記録再生装置1台当たりの記録容量の増加を図ることができる。
【0033】
図2は第1実施形態に係るヘッドジンバルアセンブリ12の拡大図である。サスペンション3は、ステンレス薄板を材料とするベースプレート201、ヒンジ202、ロードビーム203、フレクシャ204からなる。ベースプレート201は、その一部に設けられた取り付け穴201aにより、キャリッジ11に固定されている。ヒンジ202はベースプレート201とロードビーム203を接続している。ヒンジ202はベースプレート201とロードビーム203よりも薄くなっており、ヒンジ202を中心としてサスペンション3がたわむようになっている。フレクシャ204はロードビーム203、ヒンジ202に固定された細長い部材であり、ロードビーム203やベースプレート201よりも薄くなっており、たわみやすく出来ている。フレクシャ204の先端には略直方体形状のスライダ2が固定されている。
【0034】
スライダ2の表面のうちフレクシャ204に固定された面の反対面は、記録媒体Dに対向する面である。この面は回転する記録媒体Dによって生じた空気流の粘性から、スライダ2が浮上するための圧力を発生させる面であり、ABS(Air Bearing Surface)と呼ばれている。ABS上には図示を略した凹凸形状が設けられており、スライダ2と記録媒体D間に所望の圧力分布を発生させている。スライダ2を記録媒体Dから離そうとする正圧とスライダ2を記録媒体Dに引き付けようとする負圧と、サスペンション3による押しつけ力の釣り合いで、スライダ2は所望の状態で浮上している。記録媒体Dとスライダ2のすきまの最低値は10nm程度もしくはそれ以下となっている。サスペンション3による押しつけ力は主にヒンジ202の弾性により発生している。また、記録媒体D表面のうねりに対して、ヒンジ202およびフレクシャ204がたわむことで、所望の浮上状態を維持することが出来る。
【0035】
フレクシャ204上にはフレキシブル配線13が設けられている。フレクシャ204は略コ字状の開口部を有しており、この開口部に囲まれて舌状となったパッド部204a上にスライダ2が固定されている。スライダ2の端部のうち、サスペンション3の根本側(キャリッジ11側)は流入端と呼ばれている。その反対のサスペンション3の先端側は、スライダ2の流出端と呼ばれている。これらは、前述の記録媒体Dによる空気流の方向に基づいて名付けられている。サスペンション3の根本側から延設されたフレキシブル配線13は途中から2本に分岐し、前述の開口部およびスライダ2の両側を回り込むように、スライダ2の流出端側に接続されている。
【0036】
図3は
図2のA−A’断面を示す図である。スライダ2はスライダ基部301、記録素子302、導光部303、再生素子304から構成される。スライダ基部301の流出端側の側面に、記録素子302、導光部303、再生素子304が順に積層されている。また、スライダ基部301とパッド部204aに挟まれるようにレーザ305が固定されている。レーザ305は端面発光型レーザであり、レーザ光が出射する端面が導光部303に光学的に接続されている。レーザ305はフレキシブル配線13等を介して制御部5に接続されている。制御部5の電気信号に基づいてレーザ305が発光動作するようになっている。スライダ基部301は略直方体状の部材であり、AlTiC材からなる。
【0037】
記録素子302は、スライダ基部301の流出端側の側面に固定された副磁極306と、ヨーク307を介して副磁極306に接続され記録媒体Dに対して垂直な記録磁界を主磁極310と、ヨーク307を中心としてヨーク307の周囲を螺旋状に巻回するコイル308とを備えている。主磁極310、副磁極306及びヨーク307は、磁束密度が高い高飽和磁束密度(Bs)材料(例えば、CoNiFe合金、CoFe合金等)により形成されている。また、コイル308は、ショートしないように、隣り合うコイル線間、ヨーク307、主磁極310、副磁極306との間に隙間が空くように配置されており、この状態で絶縁体309によってモールドされている。そして、コイル308は、情報に応じて変調された電流が制御部5から供給されるようになっている。よって、主磁極310、副磁極306、ヨーク307及びコイル308は、全体として電磁石を構成している。なお、主磁極310及び副磁極306は、記録媒体Dに対向する端面がスライダ2のABSと面一となるように設計されている。
【0038】
導光部303は、一端側がフレクシャ204側に向くと共に、他端側が記録媒体D側に向いた状態で、記録素子302に隣接して固定されている。より具体的には、主磁極310に隣接して固定されている。この導光部303は、多面体のコア311と、コア311を内部に閉じ込めるクラッド312と、後述の光散乱体313および遮光膜314から構成されており、全体として略板状に形成されている。コア311は光学的に透明でクラッド312よりも屈折率が大きい材料で構成されている。例えばコア311にゲルマニウムをドープしたSiO2を用い、クラッド312に純SiO2を用いることができる。また、コア311にTa2O5を用い、クラッド312にアルミナを用いることもできる。レーザ305からのレーザ光が赤外光であればコア311にシリコンを用いることもできる。コア311の一端側の一部はクラッド312から露出しており、レーザ305の出射端面と接触しており、前述の導光部303とレーザ305との光学的接続を実現している。また、コア311の一端側には反射面311aが設けられており、レーザ305からの光束の向きが略90度変わるように反射させて、コア311長手方向へ光束を入射させている。コア311は一端側から他端側に向かう長手方向に直交する断面が三角形になっており、その断面積が他端側に向かって漸次減少するように絞り成形されており、反射面311aによって反射された光束を集光させながら他端側に向けて伝播させている。つまり、コア311とクラッド312は、導入された光束のスポットサイズを絞るスポットサイズ変換器を構成している。
【0039】
また、再生素子304は、記録媒体Dから漏れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変換する磁気抵抗効果膜である。この再生素子304には、図示しないリード膜等を介して制御部5からバイアス電流が供給されている。これにより制御部5は、記録媒体Dから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することでき、この電圧の変化から信号の再生を行うことができるようになっている。
【0040】
導光部303と主磁極310近傍の詳細構造について
図4および
図5を用いて説明する。
図4は導光部303と主磁極310の記録媒体D近傍の一部を拡大した断面図である。
図5は
図4をスライダ2のABSから見た下面図である。主磁極310はクラッド312に接しているが、記録媒体D近傍ではクラッド312側に埋め込まれるようにせり出した主磁極先端310aを有している。主磁極先端310aの記録媒体Dに対向する端面がスライダ2のABSと面一となっている。主磁極先端310aの一側面上には光散乱体313が構成されている。コア311は他端側の側面がクラッド312から露出した露出部311bを有しており、露出部311bを介して光散乱体313と接している。コア311の他端側は遮光膜314により覆われている。光散乱体313は金、銀、プラチナ等の材料からなっている。遮光膜314はアルミニウム等の材料からなっている。本実施形態では、遮光膜314は、光散乱体313に対して斜めに備えられており、コア311の記録媒体側に向うにつれて遮光膜314と光散乱体313との間隔が狭くなるよう(絞り込み構造)に備えられている。前述のようにコア311とクラッド312はスポットサイズ変換器を構成しているが、絞り込み構造の手前で、コア311とクラッド312界面の全反射による光絞り込みの限界となるコア寸法となっている。具体的にはレーザ305の光束が可視光や近赤外光の場合、コア断面がおおよそ数μm程度の寸法となっている。これ以下になると光束をコア内に閉じこめることが出来ず、漏れ出してしまう。しかし、絞り込み構造に備えられた遮光膜314のために光束が外部に漏れ出ることがなく、遮光膜314とコア311との界面を反射しながら露出部311bに集中し、露出部311bを介して光散乱体313に効率よく照射される。光散乱体313に照射された光束は表面プラズモンに変換されて、光散乱体313表面を伝搬し、光散乱体313の記録媒体D側の端面(光散乱体先端部)で近接場光を発生させる。つまり、コア311の先端部で光束が終端するが、その後は光束が表面プラズモンに変換されて光散乱体313の記録媒体D側の端面から近接場光が発生する。光散乱体313は主磁極先端310aと接しているため、主磁極先端310aからの磁束と、光散乱体313からの近接場光が、極めて近接した形で発生する。
【0041】
図6は
図4と同じ箇所を示す図であり、スライダ2の流出端側から再生素子304とクラッド312および遮光膜314を透過して、コア311と光散乱体313を見た図である。光散乱体313は記録媒体D面と垂直方向に長い略直方体形状を有しており、その幅は数十nm以下である。コア311は、記録素子302側の側面の一部である露出部311bのみで光散乱体313に接している。近接場光のスポットサイズは光散乱体313の記録媒体D側の寸法と同程度である。
【0042】
図7は
図6のバリエーションを示す図である。光散乱体313は記録媒体D側が細くなっている羽子板状の形状を有している。記録媒体D側の光散乱体313の幅は数十nm以下である。光散乱体313のコア311側は、コア311と同じ幅でコア311と接している。
【0043】
図8および
図9は
図6の別のバリエーションを示す図である。コア311の他端側が尖った形状となっている。このようにコア311は光束を伝搬できるような多面体形状であればどのような形状でも良い。また、コア311とクラッド312はスポットサイズ変換器ではなくて単なる光導波路でも良い。光散乱体313は
図8では直線状、
図9では露出部311bと重なる部分が広く、記録媒体Dと対向する側が細いへら状になっている。このように光散乱体313は露出部311bと重なる部分と記録媒体Dに対向する光散乱体先端部を有していればどのような形状でも良い。
【0044】
図10は
図9のバリエーションを示す図である。コア311の他端側がへら状の光散乱体311に平面形状が一致するように、記録媒体Dに対向するところまで延長された延長部311cを有している。
図11は
図9の別のバリエーションを示す図である。このように平面から構成される多面体形状だけでなく曲面から構成されても良い。
【0045】
図12は
図4のバリエーションを示す図である。このようにコア311と遮光膜314の間に第2のコア315をはさんでも良い。この場合、レーザ305からの光束は、遮光膜314と第2のコア315との界面を反射しながら露出部311bに集中する。また、第2のコア315は光散乱体313の一部を覆っており、遮光膜314と光散乱体313の接触を防ぎ、これらの材料が拡散する等の変質を起こすことを防いでいる。
【0046】
本実施の形態によって、コア311により伝搬された光束は遮光膜314によって漏れ出ることなく、一度光散乱体313上の表面プラズモンを介して、近接場光として初めてスライダ2表面に発生する。よって、記録媒体Dには近接場光のみが照射され、コア311からの伝搬光が照射されることがない。よって、記録媒体Dのうち近接場光のサイズに対応した微小領域のみが加熱されるため、記録媒体Dに書き込む情報の密度を向上させることができる。
【0047】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る第2実施形態を、
図13から
図15を参照して説明する。第1実施形態と同一箇所については同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、レーザをスライダから離れた場所に搭載し、レーザとスライダを光ファイバで接続した点と、スライダ中の導光部と記録素子の積層の順序が異なる点である。
【0048】
図13は第2実施形態に係るヘッドジンバルアセンブリ12の拡大図である。フレクシャ204上にはフレキシブル配線403が設けられている。レーザ401はフレクシャ204のうちベースプレート201上に載る部分の一部に設けられている。レーザ401とフレキシブル配線403は電気的に接続され、制御部5の電気信号に基づいてレーザ401が発光動作するようになっている。レーザ401の出射端には光ファイバ402が光学的に接続されている。光ファイバ402のもう一端は、スライダ2に設けられた後述の導光部501と光学的に結合している。また、光ファイバ402はスリーブ404をもちいて光ファイバ402の長手方向が自由になるように支持されている。
【0049】
図14は
図13のB−B’断面である。スライダ2はスライダ基部301、導光部501、記録素子303、再生素子304から構成される。スライダ基部301の流出端側の側面に、導光部501、記録素子303、再生素子304が順に積層されている。また、光ファイバ402がスライダ基部301とパッド部204aに挟まれるように固定されており、その端面は光ファイバ402の長手方向に対して傾斜した反射面402aを形成している。
【0050】
導光部501は、一端側がフレクシャ204側に向くと共に、他端側が記録媒体D側に向いた状態で、スライダ基部301に隣接して固定されている。この導光部501は、多面体のコア504と、コア504を内部に閉じ込めるクラッド503と、光散乱体313および遮光膜314から構成されており、全体として略板状に形成されている。それぞれの材料は第1実施形態と同様である。コア504の一端側はクラッド503から露出しており、光ファイバ402の側面と接触しており、前述の導光部501と光ファイバ402との光学的接続を実現している。光ファイバ402により伝搬された光束は、反射面402aにてその向きが略90度曲げられ、コア504長手方向へ入射する。コア504は一端側から他端側に向かう長手方向に直交する断面が三角形になっており、その断面積が他端側に向かって漸次減少するように絞り成形されており、入射した光束を集光させながら他端側に向けて伝播させている。つまり、コア504とクラッド503は、導入された光束のスポットサイズを絞るスポットサイズ変換器を構成している。
【0051】
記録素子302の形状は第1実施形態と同様であるが、固定される向きが異なり、導光部501側に主磁極310が設けられ、再生素子304側に副磁極306が設けられる。
【0052】
導光部501と主磁極310近傍の詳細構造について
図15を用いて説明する。
図15は導光部501と主磁極310の記録媒体D近傍の一部を拡大した断面図である。主磁極310はクラッド503に接しているが、記録媒体D近傍ではクラッド503側に埋め込まれるようにせり出した主磁極先端310aを有している。主磁極先端310aの一側面上には光散乱体313が構成されている。コア504は前述の他端側の側面がクラッド503から露出した露出部504bを有しており、露出部504bを介して光散乱体313と接している。コア504の他端側は遮光膜314により覆われている。前述のように光ファイバ402からの光束はコア504の一端側から他端側に伝搬するが、遮光膜314のために外部に漏れ出ることがなく、遮光膜314とコア504との界面を反射しながら露出部504bに集中し、露出部504bを介して光散乱体313に照射される。光散乱体313に照射された光束は表面プラズモンに変換されて、光散乱体313表面を伝搬し、光散乱体313の記録媒体D側の端面で近接場光を発生させる。
【0053】
本実施の形態によっても、第1実施形態と同様の効果を実現することができる。また、主磁極310を光散乱体313に対してスライダ2の流出端とは反対側に配しているため、記録媒体Dを光散乱体313からの近接場光で加熱し、その後主磁極310からの磁束で書き込みをおこなうことができ、効率良く情報の記録を実現することができる。
【0054】
(第3実施形態)
以下、本発明に係る第3実施形態を、
図16と
図17を参照して説明する。第1および第2実施形態と同一箇所については同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、主磁極と副磁極の間に導光部を設けている点、またスライダにレーザを直接搭載している点である。
【0055】
図16は第3実施形態に係るヘッドジンバルアセンブリ12の断面図である。記録素子302は、クラッド312a内にモールドされた主磁極310、副磁極306およびコイル308と、主磁極310および副磁極306の間に配置されたヨーク307と、を備えている。
【0056】
副磁極306は、再生素子304上に配置されるとともに、ヨーク307の一端側が接続されている。コイル308は、ヨーク307を中心としてヨーク307の周囲に螺旋状に形成されている。また、ヨーク307には貫通孔307aが形成され、この貫通孔307a内を貫通するようにコア311が配置されている。そして、ヨーク307の他端側には主磁極310が接続されている。
【0057】
スライダ基部301には、レーザ光源601が搭載されている。レーザ光源601は、スライダ基部301の上面に固定されたレーザマウント602と、レーザマウント602の前端面602aに固定された半導体レーザチップ603と、を有している。レーザマウント602は、例えばスライダ基部301と同一材料により構成され、記録媒体Dの面と平行方向における外形がスライダ基部301と同等に形成された板状の部材であり、上面側がフレクシャ204のパッド部204aに固定されている。すなわち、スライダ基部301は、パッド部204aとの間にレーザマウント602を挟持した状態でパッド部204aに固定されている。なお、図示しないがレーザマウント602には電気配線が固定されている。この電気配線によりフレキシブル配線13と半導体レーザチップ603が電気的に接続されている。半導体レーザチップ603は、その出射側端面を下方に向けた状態で、かつコア311の一端側端面に対向するように配置されている。半導体レーザチップ603からの光束はコア311に導入され、コア311の他端側に導かれる。また、半導体レーザチップ603の出射側端面と、コア311との間に間隔を有しているが、この間隔内にコア311と同等の屈折率を有するオイル等を介在させても構わない。
【0058】
図17は導光部と主磁極310の記録媒体D近傍の一部を拡大した断面図である。光散乱体313、コア311、第2のコア315、主磁極310の順に積層されている。主磁極先端310aは、第1および第2実施形態における遮光膜314の役割を兼ねている。
【0059】
本実施の形態によっても、第1実施形態と同様の効果を実現することができる。また、スライダ3における最も前端側に、光散乱体313と主磁極310とを配置できるので、光散乱体313から散乱した近接場光と、主磁極310による磁界を記録媒体Dに最も接近した状態で発生させることができる。これにより、記録媒体Dへの記録をスムーズ、かつ高精度に行うことができる。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせて採用することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
D記録媒体 1情報記録再生装置 2スライダ 3サスペンション 11キャリッジ 12ヘッドジンバルアセンブリ 13フレキシブル配線 204フレクシャ 204aパッド部 306副磁極 308コイル 310主磁極 311コア 311b露出部 312クラッド 313光散乱体 314遮光膜