(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
癌を含めた過剰増殖性障害の効果的な治療は、腫瘍学の分野における、引き続き存在する目標である。一般に、癌は、細胞分裂、分化およびアポトーシス細胞死を制御する正常なプロセスの脱調節から生じ、限りのない成長、局所拡大および全身性転移の潜在力を有する悪性細胞の増殖によって特徴づけられる。正常なプロセスの脱調節は、シグナル伝達経路における異常性および正常細胞において見出される因子とは異なる因子への応答を含む。
【0003】
酵素の重要な大ファミリーは、タンパク質キナーゼ酵素ファミリーである。現在、約500の異なる公知のタンパク質キナーゼが存在する。タンパク質キナーゼは、ATP−Mg
2+複合体のγ−リン酸をアミノ酸側鎖へと移すことによって、種々のタンパク質の中のアミノ酸側鎖のリン酸化を触媒する働きをする。これらの酵素は、細胞内部のシグナル伝達プロセスの大部分を制御し、これによりタンパク質の中のセリン、トレオニンおよびチロシン残基のヒドロキシル基の可逆的リン酸化を通して、細胞機能、成長、分化および破壊(アポトーシス)を支配する。研究により、タンパク質キナーゼは、シグナル伝達、転写調節、細胞運動性、および細胞分裂を含めた多くの細胞機能の鍵となる調節因子であるということが示されている。また、いくつかの腫瘍遺伝子はタンパク質キナーゼをコードすることも示されており、これは、キナーゼが発癌においてある役割を果たすということを示唆する。これらのプロセスは、各キナーゼ自身が1以上のキナーゼによって調節されることになる複雑なかみ合った経路によって、高度に調節されることが多い。その結果、異常なまたは不適切なタンパク質キナーゼ活性は、良性および悪性の増殖性障害ならびに免疫系および神経系の不適切な活性化から生じる疾患を含めた、このような異常なキナーゼ活性に関連する疾患の病態の発生に寄与し得る。タンパク質キナーゼの生理学的関連性、多様性および偏在性のため、タンパク質キナーゼは、生化学的研究および医学的研究において、酵素の最も重要かつ広く研究されたファミリーの1つとなった。
【0004】
酵素のタンパク質キナーゼファミリーは、典型的には、それらがリン酸化するアミノ酸残基に基づいて2つの主要なサブファミリーに分類される:タンパク質チロシンキナーゼおよびタンパク質セリン/トレオニンキナーゼ。タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ(PSTK)としては、環状AMPおよび環状GMP依存性タンパク質キナーゼ、カルシウムおよびリン脂質依存性タンパク質キナーゼ、カルシウムおよびカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ、カゼインキナーゼ、細胞分裂周期タンパク質キナーゼなどが挙げられる。これらのキナーゼは、通常、細胞質内にあるかまたはおそらくはタンパク質をつなぎ止めることにより細胞の微粒子分画に結合している。異常なタンパク質セリン/トレオニンキナーゼ活性が、慢性関節リウマチ、乾癬、敗血症性ショック、骨量減少、多くの癌および他の増殖性疾患などのいくつかの病態に関わるとされてきたか、または疑われている。従って、セリン/トレオニンキナーゼおよびそれらが一部をなすシグナル伝達経路は、ドラッグデザインのための重要な標的である。チロシンキナーゼはチロシン残基をリン酸化する。チロシンキナーゼは、細胞制御において同じく重要な役割を果たす。これらのキナーゼは、成長因子およびホルモンなどの分子についてのいくつかの受容体を含み、表皮成長因子受容体、インスリン受容体、血小板由来成長因子受容体などが含まれる。研究により、多くのチロシンキナーゼは膜貫通型タンパク質であり、それらの受容体ドメインが細胞の外側に位置し、それらのキナーゼドメインが内側に位置するということが示されている。チロシンキナーゼの調節因子も同様に特定するために、多くの研究が同様に進行中である。
【0005】
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、細胞成長、増殖および分化を支配する種々のタンパク質(受容体チロシンキナーゼ自身を含む)の中の特定のチロシルアミノ酸残基のリン酸化を触媒する。
【0006】
いくつかのRTKの下流にいくつかのシグナル伝達経路が存在し、その中にRas−Raf−MEK−ERKキナーゼ経路がある。成長因子、ホルモン、サイトカインなどに応答したRas GTPaseタンパク質の活性化がRafキナーゼのリン酸化および活性化を刺激するということが、現在、理解されている。次いでこれらのキナーゼは、細胞内タンパク質キナーゼMEK1およびMEK2をリン酸化して活性化し、このことが、次に、他のタンパク質キナーゼ、ERK1および2をリン酸化して活性化する。分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路または細胞質内のカスケードとしても知られるこのシグナル伝達経路は、成長シグナルに対する細胞応答を媒介する。これの最終的な機能は、細胞膜における受容体活性を、細胞増殖、分化、および生存を支配する細胞質内のまたは細胞核の標的の修飾と結びつけることである。
【0007】
この経路の構成的活性化は、細胞形質転換を誘導するのに十分である。異常な受容体チロシンキナーゼ活性化、Ras変異またはRaf変異に起因するMAPキナーゼ経路の調節不全の活性化は、ヒトの癌においてしばしば見出されており、異常な成長制御を決定する主要な要因を代表する。ヒトの悪性腫瘍においては、Ras変異は一般的であり、癌の約30%において特定されてきた。GTPaseタンパク質(グアノシン三リン酸をグアノシン二リン酸へと変換するタンパク質)のRasファミリーは、活性化された成長因子受容体から、下流の細胞内パートナーへとシグナルを中継する。活性な膜結合Rasによって動員される標的の中で目立つものは、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼのRafファミリーである。このRafファミリーは、Rasの下流エフェクターとして作用する3つの関連するキナーゼ(A−、B−およびC−Raf)から構成される。Rasによって媒介されるRaf活性化は、次に、MEK1およびMEK2(MAP/ERKキナーゼ1および2)の活性化を誘発し、これが、次に、チロシン−185およびトレオニン−183上でERK1およびERK2(細胞外シグナル調節キナーゼ1および2)をリン酸化する。活性化されたERK1およびERK2は転位置し、核の中に蓄積し、この核の中でERK1およびERK2は、細胞成長および生存を制御する転写因子を含めた様々な基質をリン酸化することができる。ヒトの癌の発生におけるRas/Raf/MEK/ERK経路の重要性を考えると、このシグナル伝達カスケードのキナーゼ成分は、癌および他の増殖性疾患における疾患進行の調節のための潜在的に重要な標的として融合しつつある。
【0008】
MEK1およびMEK2は、種々のMAPキナーゼのトレオニンおよびチロシン残基をリン酸化する二重特異性キナーゼ(MEK1−7)という、より大きいファミリーのメンバーである。MEK1およびMEK2は別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、C末端の触媒的キナーゼドメイン内およびほとんどの
N末端調節領域の両方において高い相同性(80%)を共有する。MEK1およびMEK2の発癌性形態はヒトの癌では見出されたことはないが、MEKの構成的活性化が細胞形質転換を生じることは示されている。Rafに加えて、MEKも同様に他の腫瘍遺伝子によって活性化され得る。今までのところ、MEK1およびMEK2の唯一の公知の基質はERK1およびERK2である。チロシンおよびトレオニン残基の両方をリン酸化するというユニークな能力に加えてこの珍しい基質特異性は、MEK1およびMEK2をシグナル伝達カスケードの中の臨界点に置き、このシグナル伝達カスケードは、MEK1およびMEK2が多くの細胞外のシグナルをMAPK経路へと統合することを可能にする。
【0009】
従って、MAPKキナーゼ経路のタンパク質(例えばMEK)の阻害剤は、増殖性または浸潤性の疾患の封じ込めおよび/または治療に使用するための抗増殖性、アポトーシス促進性薬剤および抗浸潤性薬剤の両方として価値があるはずであるということが認識されてきた。
【0010】
さらに、MEK阻害活性を有する化合物がERK1/2活性の阻害および細胞増殖の抑制を効果的に誘導するということも知られており(The Journal of Biological Chemistry,vol. 276,No.4 pp.2686−2692,2001)、そして当該化合物は、腫瘍形成および/または癌などの望ましくない細胞増殖によって引き起こされる疾患に対する効果を示すことが予想される。
【0011】
MAPK経路の持続的および構成的な活性化を導き、最終的には細胞分裂および生存の増大を生じ得る、種々のRas GTPaseおよびB−Rafキナーゼにおける変異が、特定されている。この結果として、これらの変異は、広い範囲のヒトの癌の確立、発生、および進行と強く結びつけられてきた。シグナル伝達におけるRafキナーゼの生物学的役割、特にB−Rafの生物学的役割は、Davies,H.,ら、
Nature (2002) 9:1−6;Garnett,M.J.およびMarais,R.,
Cancer Cell (2004) 6:313−319;Zebisch,A.およびTroppmair,J.,
Cell. Mol. Life Sci. (2006) 63:1314−1330;Midgley,R.S.およびKerr,D.J.,
Crit. Rev. Onc/Hematol. (2002) 44:109−120;Smith,R.A.,ら、
Curr. Top. Med. Chem. (2006) 6:1071−1089;およびDownward,J.,
Nat. Rev. Cancer (2003) 3:11−22に記載されている。
【0012】
MAPK経路シグナル伝達を活性化するB−Rafキナーゼの天然に存在する変異は、高い百分率のヒト黒色腫(Davies (2002) 前出)および甲状腺癌(Cohenら、
J. Nat. Cancer Inst. (2003) 95(8) 625−627およびKimuraら、
Cancer Res. (2003) 63(7) 1454−1457)において見出されており、さらには、より低い頻度ではあるが依然として有意な頻度で、以下のもので見出されている:
バレット腺癌(Garnettら、
Cancer Cell (2004) 6 313−319およびSommererら、
Oncogene (2004) 23(2) 554−558)、胆道癌(Zebischら、
Cell. Mol. Life Sci. (2006) 63 1314−1330)、乳癌(Davies (2002) 前出)、子宮頸癌(Moreno−Buenoら、
Clin. Cancer Res. (2006) 12(12) 3865−3866)、胆管細胞癌(Tannapfelら、
Gut (2003) 52(5) 706−712)、神経膠芽腫、星状細胞腫および上衣腫などの原発性中枢神経系腫瘍を含めた中枢神経系腫瘍(Knobbeら、
Acta Neuropathol. (Berl.) (2004) 108(6) 467−470、Davies (2002) 前出、およびGarnettら、
Cancer Cell (2004) 前出)ならびに続発性中枢神経系腫瘍(すなわち、中枢神経系の外に由来する腫瘍の、中枢神経系への転移)、大腸結腸癌を含めた結直腸癌(Yuenら、
Cancer Res. (2002) 62(22) 6451−6455、Davies (2002) 前出およびZebischら、
Cell. Mol. Life Sci. (2006)、胃癌(Leeら、
Oncogene (2003) 22(44) 6942−6945)、頭頸部扁平上皮癌を含めた頭頸部の癌(Cohenら、
J. Nat. Cancer Inst. (2003) 95(8) 625−627およびWeberら、
Oncogene (2003) 22(30) 4757−4759)、白血病(Garnettら、
Cancer Cell (2004) 前出、特に急性リンパ芽球性白血病(Garnettら、
Cancer Cell (2004) 前出およびGustafssonら、
Leukemia (2005) 19(2) 310−312)、急性骨髄性白血病(AML)(Leeら、
Leukemia (2004) 18(1) 170−172、およびChristiansenら、
Leukemia (2005) 19(12) 2232−2240)、骨髄異形成症候群(Christiansenら、
Leukemia (2005) 前出)および慢性骨髄性白血病(Mizuchiら、
Biochem. Biophys. Res. Commun. (2005) 326(3) 645−651);ホジキンリンパ腫(Figlら、
Arch. Dermatol. (2007) 143(4) 495−499)、非ホジキンリンパ腫(Leeら、
Br. J. Cancer (2003) 89(10) 1958−1960)、巨核芽球性白血病(Eycheneら、
Oncogene (1995) 10(6) 1159−1165)および多発性骨髄腫(Ngら、
Br. J. Haematol. (2003) 123(4) 637−645)を含めた血液癌、肝細胞癌(Garnettら、
Cancer Cell (2004)、
小細胞性肺癌(Pardoら、
EMBO J. (2006) 25(13) 3078−3088)および非小細胞性肺癌(Davies (2002) 前出)を含めた肺癌(Broseら、
Cancer Res. (2002) 62(23) 6997−7000、Cohenら、
J. Nat. Cancer Inst. (2003) 前出およびDavies (2002) 前出)、卵巣癌(RussellおよびMcCluggage
J. Pathol. (2004) 203(2) 617−619およびDavies (2002) 前出)、子宮内膜癌(Garnettら、
Cancer Cell (2004) 前出、およびMoreno−Buenoら、
Clin. Cancer Res. (2006) 前出)、膵臓癌(Ishimuraら、
Cancer Lett. (2003) 199(2) 169−173)、下垂体腺腫(De Martinoら、
J. Endocrinol. Invest. (2007) 30(1) RC1−3)、前立腺癌(Choら、
Int. J. Cancer (2006) 119(8) 1858−1862)、腎癌(Nagyら、
Int. J. Cancer (2003) 106(6) 980−981)、肉腫(Davies (2002) 前出)、および皮膚癌(Rodriguez−Vicianaら、
Science (2006) 311(5765) 1287−1290およびDavies(2002) 前出)。c−Rafの過剰発現はAML(Zebischら、
Cancer Res. (2006) 66(7) 3401−3408、およびZebisch(
Cell. Mol. Life Sci. (2006))および赤白血病(Zebischら、Cell. Mol. Life Sci. (2006)に結びつけられてきた。
【0013】
これらの癌においてRafファミリーキナーゼが果たす役割、およびB−Rafキナーゼ活性の阻害に選択的に標的化した薬剤を含めたある範囲の前臨床の治療薬を用いた予備的な研究(King A.J.ら,(2006)
Cancer Res. 66:11100−11105)に基づいて、1以上のRafファミリーキナーゼの阻害剤は、このような癌またはRafキナーゼに関連する他の病態の治療のために有用であろうということは一般に受け容れられている。
【0014】
B−Rafの変異も、心顔皮膚症候群(cardio−facio−cutaneous syndrome)(Rodriguez−Vicianaら、
Science (2006) 311(5765) 1287−1290)および多発性嚢胞腎疾患(Nagaoら、
Kidney Int. (2003) 63(2) 427−437)を含めた他の病態に関与するとされてきた。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明で使用する、MEK阻害剤であるN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミド、またはその薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物は、式(I)の化合物:
【化15】
【0044】
またはその薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物によって表される。便宜のため、この群の想定される化合物および塩または溶媒和物は、まとめて化合物Aと呼ばれ、これは、化合物Aへの言及は、選択的に当該化合物またはその薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物のうちのいずれかを指すことになるということを意味する。
【0045】
命名法の取り決めに応じて、式(I)の化合物は、正しく
N−{3−[3−シクロプロピル−5−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ]−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロピリド[4,3−
d]ピリミジン−1(2
H)−イル]フェニル}アセトアミドとも呼ばれ得る。
【0046】
本発明で使用する、BRaf阻害剤である
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドまたはその薬学上許容可能な塩は、化合物式(II):
【化16】
【0047】
またはその薬学上許容可能な塩によって表される。便宜のため、この群の想定される化合物および塩は、まとめて化合物Bと呼ばれ、これは、化合物Bへの言及は、選択的に当該化合物またはその薬学上許容可能な塩のうちのいずれかを指すことになるということを意味する。
【0048】
本発明で使用する用語「本発明の組合せ物」は化合物Aおよび化合物Bを含む組合せ物を指す。
【0049】
本発明で使用する用語「新生物」は、細胞または組織の異常成長を指し、良性、すなわち非癌性の成長、および悪性、すなわち癌性の成長を包含すると理解される。用語「新生物性の」は、新生物の、または新生物に関する、を意味する。
【0050】
本発明で使用する用語「薬剤、…薬、…剤」は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト、または他の被験体において所望の効果をもたらす物質を意味すると理解される。従って、用語「抗新生物薬」は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト、または他の被験体において抗新生物効果をもたらす物質を意味すると理解される。「薬剤、…薬、…剤」は、単独の化合物または2以上の化合物の組合せ物もしくは組成物であり得るということも理解されるべきである。
【0051】
本発明で使用する用語「治療すること」およびその派生語は、治療療法を意味する。特定の病態に関連しては、治療することは、(1)その病態、もしくはその病態の生物学的徴候のうちの1以上を寛解させること、(2)(a)その病態につながるかもしくはその病態に関与する生物学的カスケードの中の1以上の点、または(b)その病態の生物学的徴候のうちの1以上を妨げること、(3)その病態に関連する症候、効果もしくは副作用のうちの1以上、またはその病態もしくはその病態の治療に関連する症候、効果もしくは副作用のうちの1以上を緩和すること、または(4)その病態もしくはその病態の生物学的徴候のうちの1以上の進行を遅くすることを意味する。
【0052】
本発明で使用する「予防」は、病態もしくはその生物学的徴候の見込みもしくは重症度を実質的に低減するため、またはそのような病態もしくはその生物学的徴候の発症を遅くするための薬物の予防的投与を指すと理解される。当業者は、「予防」は絶対的なものではないということはわかるであろう。予防的療法は、例えば、被験体が癌の強い家族歴をもつとき、または被験体が発癌性物質に曝露されたことがあるときなど、被験体が癌を発症するリスクが高いと考えられるときに、適切である。
【0053】
本発明で使用する用語「有効量」は、例えば研究者または臨床医によって求められている組織、系、動物またはヒトの生物学的応答または医学的応答を引き出すであろう、薬物または医薬品の量を意味する。さらに、用語「治療上有効量」は、そのような量を投与されたことがない対応する被験体と比較して、疾患、障害、もしくは副作用の改善された治療、治癒、予防、もしくは改善、または疾患または障害の前進の速度の減少を生じるいずれかの量を意味する。また、この用語は、その範囲の内に、正常な生理学的機能を亢進するために有効な量を包含する。
【0054】
化合物Aおよび/またはBは、1以上のキラル原子を含有し得、またはそうでなくとも鏡像異性体として存在することができ得る。従って、本発明の化合物は、鏡像異性体の混合物および精製された鏡像異性体または鏡像異性体が富化された混合物を包含する。また、すべての互変異性体および互変異性体の混合物が化合物Aおよび化合物Bの範囲の内に包含されるということは理解される。
【0055】
また、化合物AおよびBが、別々にまたは両方ともに、溶媒和物として与えられ得るということも理解される。本発明で使用する用語「溶媒和物」は、溶質(本発明においては、式(I)もしくは(II)の化合物またはその塩)および溶媒によって形成される様々な化学量論の複合体を指す。本発明の目的のためのこのような溶媒は、溶質の生物活性を妨げてはならない。好適な溶媒の例としては、水、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノールおよび酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、使用される溶媒は薬学上許容可能な溶媒である。好適な薬学上許容可能な溶媒の例としては、水、エタノールおよび酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、使用される溶媒は水である。
【0056】
化合物AおよびBは、複数の形態で結晶化する能力を有し得、これは、公知の多形性という特徴であり、このような多形形態(「多形」)は化合物AおよびBの範囲の内にあると理解される。多形性は、一般に、温度もしくは圧力またはその両方の変化に対する応答として起こり得るが、結晶化プロセスでの変動からも生じ得る。多形は、x線回折パターン、溶解性、および融点などの当該技術分野で公知の種々の物理的特徴によって区別し得る。
【0057】
化合物Aは、その薬学上許容可能な塩と共に、およびそれらの溶媒和物としても、国際公開第2005/121142号に、特に癌の治療における、MEK活性の阻害剤として有用であると開示されクレームされている。化合物Aは、実施例4−1の化合物である。化合物Aは、国際公開第2005/121142号に記載されているようにして調製され得る。
【0058】
好適には、化合物Aはジメチルスルホキシド溶媒和物の形態にある。好適には、化合物Aはナトリウム塩の形態にある。好適には、化合物Aは、水和物、酢酸、エタノール、ニトロメタン、クロロベンゼン、1−ペンタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールおよび3−メチル−1−ブタノールから選択される溶媒和物の形態にある。これらの溶媒和物および塩の形態は、国際公開第2005/121142号の中の記載から、当業者によって調製され得る。
【0059】
化合物Bは、その薬学上許容可能な塩と共に、PCT特許出願PCT/US09/42682号に、特に癌の治療における、BRaf活性の阻害剤として有用であると開示されクレームされている。化合物Bは、当該出願の実施例58a−58eによって具体的に記載されている。このPCT出願は、2009年11月12日に公開公報国際公開第2009/137391号として公開されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0060】
より具体的には、化合物Bは、下記の方法に従って調製され得る。
【0061】
方法1:化合物B(第1の結晶形態) −
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【化17】
【0062】
N−{3−[5−(2−クロロ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(196mg、0.364mmol)およびアンモニアの7M メタノール溶液(8ml、56.0mmol)の懸濁液を、密封チューブの中で90℃に24時間加熱した。この反応液をDCMで希釈し、シリカゲルを加え、濃縮した。この粗生成物を、シリカゲルでクロマトグラフィーにかけ、100% DCMから1:1[DCM:(9:1 EtOAc:MeOH)]を用いて溶出した。きれいな分画を濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、逆相HPLC(アセトニトリル:水のグラジエント。アセトニトリル、水ともに0.1%TFAを含む)によって再精製した。合わせたきれいな分画を濃縮し、次いでDCMと飽和NaHCO
3との間で分配した。DCM層を分離し、Na
2SO
4で乾燥した。標記の化合物、
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドを得た(94mg、47%収率)。
1H NMR(400MHz,DMSO−
d6) δ ppm 10.83(s,1H),7.93(d,
J=5.2Hz,1H),7.55−7.70(m,1H),7.35−7.43(m,1H),7.31(t,
J=6.3Hz,1H),7.14−7.27(m,3H),6.70(s,2H),5.79(d,
J=5.13Hz,1H),1.35(s,9H)。MS(ESI):519.9[M+H]
+。
【0063】
方法2:化合物B(別の結晶形態) −
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
19.6mgの
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(実施例58aに従って調製され得る)を、室温で、2mLのバイアルの中で、500Lの酢酸エチルと合わせた。このスラリーを、48時間、0−40℃の間で温度サイクルにかけた。得られたスラリーを室温まで冷却し、固体を減圧ろ過によって集めた。この固体をラマン、PXRD、DSC/TGA分析によって分析すると、上記の実施例58aから得られた結晶形態とは異なる結晶形態であることが示された。
【0064】
方法3:化合物B(別の結晶形態、大バッチ) −
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【化18】
【0065】
工程A:3−{[(2,6−ジフルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−2−フルオロ安息香酸メチル
【化19】
【0066】
3−アミノ−2−フルオロ安息香酸メチル(50g、1当量)を反応器の中に入れ、次いでジクロロメタン(250mL、5倍量)を入れた。この内容物を撹拌し、約15℃に冷却し、ピリジン(26.2mL、1.1当量)を加えた。このピリジンの添加後、反応器の内容物を約15℃に調整し、滴下ロートを用いて2,6−ジフルオロベンゼンスルホニルクロリド(39.7mL、1.0当量)の添加を開始した。添加の間、温度を25℃未満に保った。添加終了後、反応器の内容物を20−25℃に加温し、一晩保持した。酢酸エチル(150mL)を添加し、ジクロロメタンを蒸留によって除去した。蒸留が完了すると、次いで反応混合物を酢酸エチル(5倍量)でもう一度希釈し、濃縮した。この反応混合物を酢酸エチル(10倍量)および水(4倍量)で希釈し、すべての固体が溶解するまで、撹拌しながら内容物を50−55℃に加熱した。層を静置させ、分離した。有機層を水(4倍量)で希釈し、内容物を50−55℃に20−30分間加熱した。層を静置させ、次いで分離し、酢酸エチル層を減圧下で約3倍量まで濃縮した。酢酸エチル(5倍量)を添加し、減圧下で約3倍量まで再度濃縮した。次いでシクロヘキサン(9倍量)をこの反応器に加え、内容物を加熱して30分間還流させ、次いで0℃に冷却した。固体をろ過し、シクロヘキサン(2×100mL)で洗った。この固体を一晩風乾し、3−{[(2,6−ジフルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−2−フルオロ安息香酸メチル(94.1g、91%)を得た。
【0067】
工程B:
N−{3−[(2−クロロ−4−ピリミジニル)アセチル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【化20】
【0068】
ほぼ上記の工程Aに従って調製した3−{[(2,6−ジフルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−2−フルオロ安息香酸メチル(490g、1当量)をTHF(2.45L、5倍量)に溶解させ、撹拌し、0−3℃に冷却した。1M リチウムビス(トリメチルシリル)アミドのTHF溶液(5.25L、3.7当量)をこの反応混合物に加え、次いでTHF(2.45L、5倍量)中の2−クロロ−4−メチルピリミジン(238g、1.3当量)を加えた。次いでこの反応液を1時間撹拌した。この反応液を、4.5M HCl(3.92L、8倍量)を用いてクエンチした。水層(下層)を除去し、捨てた。有機層を、減圧下で約2Lまで濃縮した。IPAC(酢酸イソプロピル)(2.45L)をこの反応混合物に加え、次いでこれを約2Lまで濃縮した。IPAC(0.5L)およびMTBE(2.45L)を添加し、N
2下で一晩撹拌した。固体をろ過した。この固体および母ろ液を一緒に戻し、数時間撹拌した。固体をろ過し、MTBE(約5倍量)で洗浄した。この固体を、50℃の真空オーブンの中に一晩置いた。この固体を30℃の真空オーブンの中で週末のあいだ乾燥し、
N−{3−[(2−クロロ−4−ピリミジニル)アセチル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(479g、72%)を得た。
【0069】
工程C:
N−{3−[5−(2−クロロ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【化21】
【0070】
反応器に、
N−{3−[(2−クロロ−4−ピリミジニル)アセチル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(30g、1当量)を入れ、次いでジクロロメタン(300mL)を入れた。この反応スラリーを約10℃に冷却し、N−ブロモスクシンイミド(「NBS」)(12.09g、1当量)を3つのおよそ等しい分量に分けて添加し、各添加の間に10−15分間撹拌した。NBSの最後の添加の後、反応混合物を約20℃に加温し、45分間撹拌した。次いで水(5倍量)をこの反応容器に加え、この混合物を撹拌し、次いで層を分離させた。水(5倍量)をジクロロメタン層に再度加え、この混合物を撹拌し、層を分離させた。ジクロロメタン層を約120mLまで濃縮した。酢酸エチル(7倍量)をこの反応混合物に加え、約120mLまで濃縮した。次いでジメチルアセトアミド(270mL)をこの反応混合物に加え、約10℃に冷却した。2つの等しい分量に分けた2,2−ジメチルプロパンチオアミド(1.3g、0.5当量)を、この反応器の内容物に加え、添加と添加との間で約5分間撹拌した。この反応液を20−25℃に加温した。45分後、反応器の内容物を75℃に加熱し、1.75時間保持した。次いでこの反応混合物を5℃に冷却し、温度を30℃より低く保って、水(270ml)をゆっくり添加した。次いで酢酸エチル(4倍量)を加え、この混合物を撹拌し、層を分離させた。酢酸エチル(7倍量)を水層に再度加え、内容物を撹拌し、分離した。酢酸エチル(7倍量)を水層に再度加え、内容物を撹拌し、分離した。有機層を合わせ、水(4倍量)で4回洗浄し、20−25℃で一晩撹拌した。次いで加熱および真空のもとで有機層を120mLまで濃縮した。次いで反応器の内容物を50℃に加熱し、ヘプタン(120mL)をゆっくり添加した。ヘプタンの添加後、反応器の内容物を加熱して還流させ、次いで0℃に冷却し、約2時間保持した。固体をろ過し、ヘプタン(2×2倍量)で洗った。次いでこの固体生成物を真空下、30℃で乾燥し、
N−{3−[5−(2−クロロ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(28.8g、80%)を得た。
【0071】
工程D:
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
1galの圧力反応器の中で、上記の工程Cに従って調製した
N−{3−[5−(2−クロロ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(120g)、および水酸化アンモニウム(28−30%、2.4L、20倍量)の混合物を、密閉した圧力反応器の中で98−103℃に加熱し、この温度で2時間撹拌した。この反応液を室温(20℃)までゆっくり冷却し、一晩撹拌した。固体をろ過し、最小量の母液で洗浄し、真空下で乾燥した。この固体をEtOAc(15倍量)/水(2倍量)の混合物に添加し、完全に溶解するまで60−70℃で加熱し、水層を除去し、捨てた。このEtOAC層に水(1倍量)を入れ、HCl水溶液を用いてpH 約5.4−5.5まで中和し、水(1倍量)を添加した。60−70℃で水層を除去し、捨てた。60−70℃で有機層を水(1倍量)で洗浄し、水層を除去し、捨てた。有機層を60℃でろ過し、3倍量まで濃縮した。EtOAc(6倍量)をこの混合物に加え、加熱し、72℃で10分間撹拌し、次いで20℃に冷却し、一晩撹拌した。真空蒸留によってEtOAcを除去し、反応混合物を約3倍量まで濃縮した。この反応混合物を、約65−70℃で約30分間維持した。上記の実施例58bでヘプタンスラリーの中で調製した(そして、実施例58bの手順によって調製できる)結晶と同じ結晶形態を有する生成物の結晶を加えた。65−70℃でヘプタン(9倍量)をゆっくり添加した。このスラリーを65−70℃で2−3時間撹拌し、次いで0−5℃にゆっくり冷却した。生成物をろ過し、EtOAc/ヘプタン(3/1 v/v、4倍量)で洗浄し、真空下、45℃で乾燥し、
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(102.3g、88%)を得た。
【0072】
方法4:化合物B(メシル酸塩) −
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド メタンスルホネート
【化22】
【0073】
イソプロパノール(2mL)中の
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(204mg、0.393mmol)の溶液に、メタンスルホン酸(0.131mL、0.393mmol)を添加し、この溶液を室温で3時間撹拌した。白色沈殿物が生成し、スラリーをろ過し、ジエチルエーテルで洗い、標記の生成物を白色の結晶性固体として得た(210mg、83%収率)。
1H NMR(400MHz,DMSO−
d6) δ ppm 10.85(s,1H)7.92−8.05(m,1H)7.56−7.72(m,1H)6.91−7.50(m,7H)5.83−5.98(m,1H)2.18−2.32(m,3H)1.36(s,9H)。MS(ESI):520.0[M+H]
+。
【0074】
方法5:化合物B(別のメシル酸塩実施形態) −
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド メタンスルホネート
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(実施例58aに従って調製し得る)(2.37g、4.56mmol)を、予めろ過したアセトニトリル(5.25倍量、12.4mL)と合わせた。H
2O(0.75当量、1.78mL)中のメシン酸(1.1当量、5.02mmol、0.48g)の予めろ過した溶液を20℃で添加した。低い撹拌速度を維持しながら、得られた混合物の温度を50−60℃に上げた。混合物の温度が50−60℃に到達すると、
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド メタンスルホネートの種スラリー(0.2倍量の予めろ過したアセトニトリルの中でスラリーにした1.0% w/w)を添加し、固体が沈降しないようにするのに十分速い速度で撹拌しながら、この混合物を50−60℃で2時間熟成させた。次いでこの混合物を0.25℃/分で0−5℃まで冷却し、0−5℃で6時間保持した。この混合物をろ過し、湿ったケーキを、予めろ過したアセトニトリルを用いて2回洗浄した。最初の洗液は14.2ml(6倍量)の予めろ過したアセトニトリルからなっており、第2の洗液は9.5ml(4倍量)の予めろ過したアセトニトリルからなっていた。この湿ったケーキを真空下、50℃で乾燥し、2.39g(85.1%収率)の生成物を得た。
【0075】
典型的には、本発明の塩は薬学上許容可能な塩である。用語「薬学上許容可能な塩」の中に包含される塩は、本発明の化合物の無毒な塩を指す。本発明の化合物の塩は、本発明の化合物の中の置換基の上にある窒素から誘導される酸付加塩を含み得る。代表的な塩としては以下の、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルブロミド、硝酸メチル、メチル硫酸塩、マレイン酸一カリウム塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミン、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム、サリチル酸塩、ナトリウム、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド、トリメチルアンモニウムおよび吉草酸塩などの塩が挙げられる。薬学上許容可能ではない他の塩は、本発明の化合物の調製において有用であり得、これらの塩は、本発明のさらなる態様を形成する。塩は、当業者によって容易に調製され得る。
【0076】
療法に使用するために、化合物AおよびBが未加工の化学物質として投与され得ることが可能であるが、この活性成分を医薬組成物として提示することが可能である。従って、本発明は、化合物Aおよび/または化合物Bと、1以上の薬学上許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物をさらに提供する。化合物AおよびBは、上記のとおりである。担体(1種または複数種)、希釈剤(1種または複数種)または賦形剤(1種または複数種)は、製剤の他の成分と適合性であるという意味で許容可能なものでなければならず、医薬製剤化することができるものでなければならず、かつそのレシピエントに対して有害であってはならない。本発明の別の態様によれば、化合物Aおよび/または化合物Bを、1以上の薬学上許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と混合することを含む、医薬組成物の製造方法も提供される。利用される医薬組成物のこのような要素は、別々の薬学的組合せ物の中で提示されてもよいし、または1つの医薬組成物の中で一緒に製剤化されてもよい。従って、本発明は、1つが化合物Aおよび1以上の薬学上許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含む複数の医薬組成物と、化合物Bおよび1以上の薬学上許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含有する医薬組成物の組合せ物をさらに提供する。
【0077】
化合物Aおよび化合物Bは上記のとおりであり、上記の組成物のいずれにおいても利用され得る。
【0078】
医薬組成物は、単位用量あたり所定の量の活性成分を含有する単位用量形態で提示され得る。当業者に公知のように、用量あたりの活性成分の量は、治療しようとする病態、投与経路ならびに患者の年齢、体重および病態に依存するであろう。好ましい単位投薬量組成物は、1日用量もしくは分割日量、またはその適切な一部分、の活性成分を含有する組成物である。さらに、このような医薬組成物は、薬学分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。
【0079】
化合物AおよびBは、いずれかの適切な経路によって投与され得る。好適な経路としては、経口、経直腸、鼻内、局所(口腔内および舌下を含む)、膣内、および非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内、および硬膜外を含む)が挙げられる。好ましい経路は、例えば、組合せ物のレシピエントの病態および治療対象の癌に応じて変わり得るということはわかるであろう。投与される薬剤の各々が、同じまたは異なる経路によって投与され得ること、ならびに化合物AおよびBが医薬組成物の中に一緒に配合され得るということも理解されよう。
【0080】
経口投与に適応させた医薬組成物は、カプセルもしくは錠剤、粉末もしくは顆粒、水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤、食用フォームまたはホイップ、または水中油型乳濁液もしくは油中水型乳濁液などの個別単位として提示され得る。
【0081】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与のために、活性薬物成分は、エタノール、グリセロール、水などの、経口用の、無毒な薬学上許容可能な不活性な担体と合わされ得る。粉末は、当該化合物を好適な微細サイズへと細かく砕き、例えば、デンプンまたはマンニトールなどの食用炭水化物などの、同様に細かく砕いた医薬担体と混合することにより調製される。着香剤、防腐剤、分散剤および着色剤も存在し得る。
【0082】
カプセルは、粉末混合物を上記のように調製し、形成されたゼラチンシースに充填することにより作製される。コロイドシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固体ポリエチレングリコールなどの滑剤および潤滑剤が、充填操作の前に、この粉末混合物に添加され得る。カプセル剤が服用されるときの薬剤の利用能を改善するために、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または溶解補助剤も、加えられ得る。
【0083】
さらに、所望される場合または必要な場合、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤および着色剤も粒状にされ得、粉末混合物は錠剤機に通され得、その結果物は不完全に形成された小塊であり、これが顆粒へと破壊される。この顆粒は潤滑化され上記混合物に組み込まれ得る。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはβ−ラクトースなどの天然の糖、トウモロコシ甘味料、アラビアゴム、トラガントまたはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成のゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形の中で使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、粉末にするかまたは小塊にし、潤滑剤および崩壊剤を添加し、そして錠剤へと押し固めることにより製剤化される。粉末混合物は、当該化合物、好適には細かく砕いた当該化合物を上記のとおりの希釈剤またはベースと、そして必要に応じてカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩もしくはアルギン酸エステル、ゼラチン、もしくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、パラフィンなどの溶解遅延剤、第四級塩などの再吸収促進剤、および/またはベントナイト、カオリンもしくはリン酸二カルシウムなどの吸収剤と混合することにより調製される。この粉末混合物は、シロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液、またはセルロース誘導体もしくは高分子材料の溶液などの結合剤を用いて湿らせ、ふるいに押し通すことにより顆粒化され得る。別の選択肢として、錠剤形成押型への付着を防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油が添加される。この潤滑された混合物は、次いで、錠剤へと圧縮される。また、本発明の化合物は、自由流動性の不活性な担体と合わされて、顆粒化または小塊化の工程を経ることなく直接錠剤へと圧縮され得る。セラックの封止被膜、糖または高分子材料のコーティング、およびワックスの艶出しコーティングからなる透明または不透明な保護コーティングが設けられ得る。異なる単位投薬量を区別するために、色素がこれらのコーティングに添加され得る。
【0084】
液剤、シロップおよびエリキシル剤などの経口用流体は、与えられた量が所定の量の当該化合物を含有するように、投薬単位形態の中に調製され得る。シロップは、当該化合物を好適には風味付きの水性溶液に溶解させることにより調製され得るのに対し、エリキシル剤は、無毒なアルコール性のビヒクルの使用によって調製される。懸濁剤は、当該化合物を無毒なビヒクルに分散させることにより製剤化され得る。エトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなどの可溶化剤および乳化剤、防腐剤、ペパーミント油などの香料添加物、または天然甘味料もしくはサッカリンもしくは他の人工甘味料なども、添加され得る。
【0085】
適宜、経口投与のための組成物はマイクロカプセル化され得る。この組成物は、例えば、微粒子物質をポリマー、ワックスなどでコーティングするかまたは微粒子物質をポリマー、ワックスなどの中に埋め込むことにより、放出を長期化または持続させるためにも調製され得る。
【0086】
本発明に係る使用のための薬剤は、小型単層小胞体(small unilamellar vesicle)、大型単層小胞体(large unilamellar vesicle)および多層小胞体(multilamellar vesicle)などのリポソーム送達システムの形態でも投与され得る。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成され得る。
【0087】
また、本発明に係る使用のための薬剤は、当該化合物分子が対にされる個々の担体としてのモノクローナル抗体の使用によって送達され得る。また、当該化合物は、標的を設定できる薬物担体としての可溶性ポリマーと対にされ得る。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンが挙げられ得る。さらに、当該化合物は、薬物の制御放出を成し遂げることにおいて有用な生分解性ポリマーの1つのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋されたまたは両親媒性のブロック共重合体と対にされ得る。
【0088】
経皮投与に適応させた医薬組成物は、レシピエントの表皮と長期間密接に接触したままであることを意図された個別のパッチとして提示され得る。例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research, 3(6), 318(1986)に一般的に記載されているようなイオントフォレーシスによって、そのパッチから送達され得る。
【0089】
局所投与に適応させた医薬組成物は、軟膏剤、クリーム、懸濁剤、ローション剤、粉末、液剤、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたはオイルとして製剤化され得る。
【0090】
目または他の外部組織、例えば口および皮膚の治療のために、当該組成物は、好ましくは、局所用の軟膏剤またはクリームとして付与される。軟膏剤の中で製剤化されるとき、当該活性成分は、パラフィン系軟膏基剤または水混和性軟膏基剤のいずれかとともに用いられ得る。あるいは、その活性成分は、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤とともにクリームの中で製剤化され得る。
【0091】
目への局所投与に適応させた医薬組成物としては、活性成分が好適な担体、とりわけ水性溶媒に溶解または懸濁されている点眼薬が挙げられる。
【0092】
口腔中での局所投与に適応させた医薬組成物としては、薬用キャンディー、トローチ剤および口腔洗浄薬が挙げられる。
【0093】
直腸投与に適応させた医薬組成物は、座薬または浣腸として提示され得る。
【0094】
担体が固体である鼻内投与に適応させた医薬組成物としては、例えば20−500ミクロンの範囲の粒径を有し、嗅ぎたばこが吸われるようにして、すなわち鼻のすぐ近くで保持された粉末の容器から、鼻内通過を通しての急速な吸入によって、投与される粗粉末が挙げられる。担体が液体である鼻噴霧薬としてまたは点鼻薬としての投与に好適な組成物としては、当該活性成分の水性または油性の液剤が挙げられる。
【0095】
吸入による投与に適応させた医薬組成物としては、種々の種類の定量加圧エアロゾル剤(metered dose pressurized aerosol)、ネブライザーまたは注入器によって発生され得る微細粒子粉またはミストが挙げられる。
【0096】
膣内投与に適応させた医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー組成物として提示され得る。
【0097】
非経口投与に適応させた医薬組成物としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、および製剤を意図されたレシピエントの血液と等張性であるようにする溶質を含有し得る水性および非水性の滅菌注射液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁剤が挙げられる。この組成物は、単位用量容器または複数用量容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアルの中で提示され得、使用直前に、注入のために、滅菌した液体担体、例えば水の添加だけを必要とするフリーズドライの(凍結乾燥された)状態で保存され得る。すぐに使用できる注射液および懸濁剤は、滅菌された粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
【0098】
上で特に触れた成分に加えて、当該組成物は、取り上げる製剤のタイプを考慮して、当該技術分野で慣用的な他の薬剤を含み得、例えば経口投与に適した組成物は着香剤を含み得るということは理解されるべきである。
【0099】
特段の記載がない限り、本明細書に記載されるすべての投薬プロトコルにおいて、投与される化合物のレジメンは、治療の開始とともに開始して、治療の終わりとともにとともに終了する必要はなく、両方の化合物が投与される何日かの連続する日および当該要素化合物の一方のみが投与されてもよい何日かの連続する日、または示された投薬プロトコル(投与される化合物の量を含む)が、治療過程の間のある点で発生することが必要とされるだけである。
【0100】
化合物AおよびBは、両方の化合物を含む単位医薬組成物の中で同時に投与することによって、本発明に従って組合せて用いられ得る。あるいは、その組合せ物は、各々が化合物AおよびBのうちの1つを含む別々の医薬組成物の中で別々に、例えば、化合物Aまたは化合物Bが最初に投与され他方が次に投与される連続的な態様で、投与され得る。このような逐次投与は、時間的に近くてもよいし(例えば同時に)または時間的に離れていてもよい。さらに、それらの化合物が同じ剤形の中で投与されるかどうかは重要ではなく、例えば一方の化合物は局所投与され得、他方の化合物は経口投与され得る。好適には、両方の化合物が経口投与される。
【0101】
従って、1つの実施形態では、1用量以上の化合物Aは、1用量以上の化合物Bと同時にまたは1用量以上の化合物Bとは別々に投与される。
【0102】
特段の記載がない限り、本明細書に記載されるすべての投薬プロトコルにおいて、投与される化合物のレジメンは、治療の開始とともに開始して、治療の終わりとともにとともに終了する必要はなく、両方の化合物が投与される何日かの連続する日および当該要素化合物の一方のみが投与されてもよい何日かの連続する日、または示された投薬プロトコル(投与される化合物の量を含む)が、治療過程の間のある点で発生することが必要とされるだけである。
【0103】
1つの実施形態では、化合物Aの複数回用量は、化合物Bの複数回用量と同時にまたは化合物Bの複数回用量とは別々に投与される。
【0104】
1つの実施形態では、化合物Aの複数回用量は、化合物Bの1用量と同時にまたは化合物Bの1用量とは別々に投与される。
【0105】
1つの実施形態では、化合物Aの1用量は、化合物Bの複数回用量と同時にまたは化合物Bの複数回用量とは別々に投与される。
【0106】
1つの実施形態では、化合物Aの1用量は、化合物Bの1用量と同時にまたは化合物Bの1用量とは別々に投与される。
【0107】
上記の実施形態のすべてにおいて、化合物Aが最初に投与されてもよいし、または化合物Bが最初に投与されてもよい。
【0108】
当該組合せ物は、組合せ物キットとして提供され得る。本発明で使用する用語「組合せ物キット」または「キット・オブ・パーツ(kit of parts)」は、本発明に従って化合物Aおよび化合物Bを投与するために使用される医薬組成物(1つまたは複数)を意味する。両方の化合物が同時に投与されるとき、この組合せ物キットは、化合物Aおよび化合物Bを錠剤などの1つの医薬組成物の中に、または別々の医薬組成物の中に含有し得る。化合物AおよびBが同時に投与されないとき、この組合せ物キットは、化合物Aおよび化合物Bを1つのパッケージの中の別々の医薬組成物の中に、または化合物Aおよび化合物Bを別々のパッケージの中の別々の医薬組成物の中に含有することになろう。
【0109】
1つの態様では、
薬学上許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を伴う化合物Aと、
薬学上許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を伴う化合物Bと、
という構成要素を含むキット・オブ・パーツが提供される。
【0110】
本発明の1つの実施形態では、キット・オブ・パーツは、以下の構成要素:
薬学上許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を伴う化合物Aと、
薬学上許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を伴う化合物Bと、
を含み、これらの要素は、逐次投与、別々の投与および/または同時投与に適した形態で提供される。
【0111】
1つの実施形態では、キット・オブ・パーツは、
薬学上許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を伴う化合物Aを含む第1の容器と、
薬学上許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を伴う化合物Bを含む第2の容器と、
この第1および第2の容器を収容するための容器手段と、
を含む。
【0112】
当該組合せ物キットは、説明書、例えば投薬量および投与の説明書も具え得る。このような投薬量および投与の説明書は、例えば製剤ラベルにより医師に対して提供される種類のものであり得るし、またはこの説明書は、患者への説明書などの、医師によって提供される種類のものであり得る。
【0113】
本発明で使用する用語「負荷投与量」は、例えば薬物の血中濃度レベルを急激に上昇させるために、被験体に投与される維持量よりも高い投薬量を有する、化合物Aまたは化合物Bの単回投与または短期継続レジメンを意味すると理解されよう。好適には、本発明で使用するための短期継続レジメンは、1−14日、好適には1−7日、好適には1−3日、好適には3日間、好適には2日間、好適には1日間となろう。いくつかの実施形態では、「負荷投与量」は、薬物の血中濃度を治療上有効なレベルまで上昇させることができる。いくつかの実施形態では、「負荷投与量」は、その薬物の維持量と併用して、薬物の血中濃度を治療上有効なレベルまで上昇させることができる。「負荷投与量」は、1日あたり1回、または1日あたり複数回(例えば、1日あたり4回まで)投与され得る。好適には、「負荷投与量」は1日1回投与されることになろう。好適には、この負荷投与量は、維持量の2−100倍、好適には2−10倍、好適には2−5倍、好適には2倍、好適には3倍、好適には4倍、好適には5倍の量であろう。好適には、負荷投与量は、1−7日間、好適には1−5日間、好適には1−3日間、好適には1日間、好適には2日間、好適には3日間投与されることになり、そのあと維持量投与プロトコルが続くことになろう。
【0114】
本発明で使用する用語「維持量」は、連続的に投与され(例えば、少なくとも2回)、かつ当該化合物の血中濃度レベルを治療上有効なレベルまでゆっくりと上げるか、またはこのような治療上有効なレベルを維持するかのいずれかが意図されている用量を意味すると理解されよう。この維持量は、一般に、1日あたり1回投与され、この維持量の1日用量は、負荷投与量の全1日用量よりも低い。
【0115】
好適には、本発明の組合せ物は、ある「特定期間」内で投与される。
【0116】
本発明で使用する用語「特定期間」およびその派生語は、化合物Aおよび化合物Bのうちの1つの投与と、化合物Aおよび化合物Bのうちの他方の投与との時間間隔を意味する。特段の記載がない限り、この特定期間は同時投与を含み得る。本発明の両方の化合物が1日1回投与されるとき、この特定期間は、ある1日の中の化合物Aおよび化合物Bの投与を指す。本発明の化合物の一方または両方が1日に複数回投与されるとき、この特定期間は、特定の日の各化合物の最初の投与に基づいて算出される。特定の日の中のこの最初の投与のあとの、本発明の化合物のすべての投与は、この特定の期間を算出するときには考慮されない。
【0117】
好適には、当該化合物がある「特定期間」内で投与され、かつ同時に投与されない場合、それらの化合物は、互いの約24時間以内に両方とも投与される − この場合、特定期間は約24時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約12時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約12時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約11時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約11時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約10時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約10時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約9時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約9時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約8時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約8時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約7時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約7時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約6時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約6時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約5時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約5時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約4時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約4時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約3時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約3時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約2時間以内に投与されることになる − この場合、特定期間は約2時間となる;好適には、それらの化合物は、互いの約1時間以内に両方とも投与されることになる − この場合、特定期間は約1時間となる。本発明で使用する場合、約45分間未満しか離れていない化合物Aおよび化合物Bの投与は同時投与と考えられる。
【0118】
好適には、本発明の組合せ物が「特定期間」のあいだ投与されるとき、これらの化合物は、ある「継続期間」のあいだ同時投与されることになる。
【0119】
本発明で使用する用語「継続期間」およびその派生語は、本発明の両方の化合物が示された数の連続する日のあいだ投与されることを意味する。
【0120】
「特定期間」投与について:
好適には、両方の化合物は、ある特定期間内で少なくとも1日投与されることになり − この場合、継続期間は少なくとも1日ということになり;好適には、治療への過程の間に、両方の化合物は、ある特定期間内で少なくとも連続3日投与されることになり − この場合、継続期間は少なくとも3日ということになり;好適には、治療への過程の間に、両方の化合物は、ある特定期間内で少なくとも連続5日投与されることになり − この場合、継続期間は少なくとも5日ということになり;好適には、治療への過程の間に、両方の化合物は、ある特定期間内で少なくとも連続7日投与されることになり − この場合、継続期間は少なくとも7日ということになり;好適には、治療への過程の間に、両方の化合物は、ある特定期間内で少なくとも連続14日投与されることになり − この場合、継続期間は少なくとも14日ということになり;好適には、治療への過程の間に、両方の化合物は、ある特定期間内で少なくとも連続30日投与されることになり − この場合、継続期間は少なくとも30日ということになる。
【0121】
さらに「特定期間」投与に関して:
好適には、治療過程の間、化合物Aおよび化合物Bは、7日間にわたる期間の間で1−4日の特定期間内に投与されることになり、この7日間のうちの他の日の間に化合物Aが単独で投与される。好適には、この7日プロトコルは、2サイクルの間、すなわち14日間;好適には4サイクルの間、すなわち28日間;好適には継続的な投与のために繰り返される。
【0122】
好適には、治療過程の間、化合物Aおよび化合物Bは、7日間にわたる期間の間で1−4日の特定期間内に投与されることになり、この7日間のうちの他の日の間に化合物Bが単独で投与される。好適には、この7日プロトコルは、2サイクルの間、すなわち14日間;好適には4サイクルの間、すなわち28日間;好適には継続的な投与のために繰り返される。好適には、化合物Bは、この7日の間に、連日投与される。好適には、化合物Bは、各7日の間、一日おきのパターンで投与される。
【0123】
好適には、治療過程の間、化合物Aおよび化合物Bは、7日間にわたる期間の間で3日の特定期間内に投与されることになり、この7日間のうちの他の日の間に化合物Bが単独で投与される。好適には、この7日プロトコルは、2サイクルの間、すなわち14日間;好適には4サイクルの間、すなわち28日間;好適には継続的な投与のために繰り返される。好適には、化合物Aは、この7日の間に連続3日投与されることになる。
【0124】
好適には、治療過程の間、化合物Aおよび化合物Bは、7日間にわたる期間の間で2日の特定期間内に投与されることになり、この7日間のうちの他の日の間に化合物Bが単独で投与されることになる。好適には、この7日プロトコルは、2サイクルの間、すなわち14日間;好適には4サイクルの間、すなわち28日間;好適には継続的な投与のために繰り返される。好適には、化合物Aは、この7日の間に連続2日投与されることになる。
【0125】
好適には、治療過程の間、化合物Aおよび化合物Bは、7日間にわたる期間の間で1日の特定期間内に投与されることになり、この7日間のうちの他の日の間に化合物Bが単独で投与されることになる。好適には、この7日プロトコルは、2サイクルの間、すなわち14日間;好適には4サイクルの間、すなわち28日間;好適には継続的な投与のために繰り返される。
【0126】
好適には、これらの化合物が「特定期間」の間に投与されない場合、それらの化合物は逐次的に投与される。本発明で使用する用語「逐次投与」およびその派生語は、化合物Aおよび化合物Bのうちの1つが連続2日以上投与され、化合物Aおよび化合物Bのうちの他方がそのあと連続2日以上投与されるということを意味する。また、化合物Aおよび化合物Bのうちの1つの逐次投与と、化合物Aおよび化合物Bのうちの他方との間に利用される休薬期間が、本発明において企図される。本発明で使用する「休薬期間」は、化合物Aおよび化合物Bのうちの1つの逐次投与後でかつ化合物Aおよび化合物Bの他方の投与前の日の期間であって、化合物Aも化合物Bも投与されない期間である。好適には、この休薬期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日および14日から選択される日の期間となろう。
【0127】
逐次投与について:
好適には、化合物Aおよび化合物Bのうちの1つが連続1−30日投与され、そのあと休薬期間があってもよく、そのあと連続1−30日の化合物Aおよび化合物Bのうちの他方の投与が続く。好適には、化合物Aおよび化合物Bのうちの1つが連続2−21日投与され、そのあと休薬期間があってもよく、そのあと連続2−21日の化合物Aおよび化合物Bのうちの他方の投与が続く。好適には、化合物Aおよび化合物Bのうちの1つが連続2−14日投与され、そのあと1−14日の休薬期間が続き、そのあと連続2−14日の化合物Aおよび化合物Bのうちの他方の投与が続く。好適には、化合物Aおよび化合物Bのうちの1つが連続3−7日投与され、そのあと3−10日の休薬期間が続き、そのあと連続3−7日の化合物Aおよび化合物Bのうちの他方の投与が続く。
【0128】
好適には、化合物Bがこの一連の過程の中で最初に投与され、そのあと休薬期間があってもよく、そのあと化合物Aの投与が続くことになる。好適には、化合物Bは連続1−21日投与され、そのあと休薬期間があってもよく、そのあと連続1−21日の化合物Aの投与が続く。好適には、化合物Bは連続3−21日投与され、そのあと1−14日の休薬期間が続き、そのあと連続3−21日の化合物Aの投与が続く。好適には、化合物Bは連続3−21日投与され、そのあと3−14日の休薬期間が続き、そのあと連続3−21日の化合物Aの投与が続く。好適には、化合物Bが連続21日投与され、そのあと休薬期間があってもよく、そのあと連続14日の化合物Aの投与が続く。好適には、化合物Bは連続14日投与され、そのあと1−14日の休薬期間が続き、そのあと連続14日の化合物Aの投与が続く。好適には、化合物Bが連続7日投与され、そのあと3−10日の休薬期間が続き、そのあと連続7日の化合物Aの投与が続く。好適には、化合物Bが連続3日投与され、そのあと3−14日の休薬期間が続き、そのあと連続7日の化合物Aの投与が続く。好適には、化合物Bが連続3日投与され、そのあと3−10日の休薬期間が続き、そのあと連続3日の化合物Bの投与が続く。
【0129】
好適には、化合物Aがこの一連の過程の中で最初に投与され、そのあと休薬期間があってもよく、そのあと化合物Bの投与が続くことになる。好適には、化合物Aは連続1−21日投与され、そのあと休薬期間があってもよく、そのあと連続1−21日の化合物Bの投与が続く。好適には、化合物Aは連続3−21日投与され、そのあと1−14日の休薬期間が続き、そのあと連続3−21日の化合物Bの投与が続く。好適には、化合物Aは連続3−21日投与され、そのあと3−14日の休薬期間が続き、そのあと連続3−21日の化合物Bの投与が続く。好適には、化合物Aが連続21日投与され、そのあと休薬期間があってもよく、そのあと連続14日の化合物Bの投与が続く。好適には、化合物Aは連続14日投与され、そのあと1−14日の休薬期間が続き、そのあと連続14日の化合物Bの投与が続く。好適には、化合物Aが連続7日投与され、そのあと3−10日の休薬期間が続き、そのあと連続7日の化合物Bの投与が続く。好適には、化合物Aが連続3日投与され、そのあと3−14日の休薬期間が続き、そのあと連続7日の化合物Bの投与が続く。好適には、化合物Aが連続3日投与され、そのあと3−10日の休薬期間が続き、そのあと連続3日の化合物Bの投与が続く。
【0130】
「特定期間」投与および「逐次」投与のあとに反復投薬が続いてもよく、または交互投薬プロトコルが続いてもよく、そして休薬期間がこの反復投薬または交互投薬プロトコルの前に存在し得るということが理解される。
【0131】
好適には、本発明に係る組合せ物の一部として投与される化合物Aの量(塩を形成していない/溶媒和されていない量の重量に基づく)は、約0.125mg−約10mgから選択される量となり;好適には、この量は約0.25mg−約9mgから選択されることになり;好適には、この量は約0.25mg−約8mgから選択されることになり;好適には、この量は約0.5mg−約8mgから選択されることになり;好適には、この量は約0.5mg−約7mgから選択されることになり;好適には、この量は約1mg−約7mgから選択されることになり;好適には、この量は約5mgとなろう。従って、本発明に係る組合せ物の一部として投与される化合物Aの量は、約0.125mg−約10mgから選択される量となろう。例えば、本発明に係る組合せ物の一部として投与される化合物Aの量は、0.125mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mgであり得る。
【0132】
好適には、本発明に係る組合せ物の一部として投与される化合物Bの量(塩を形成していない/溶媒和されていない量の重量に基づく)は、約10mg−約600mgから選択される量となろう。好適には、この量は約30mg−約300mgから選択されることになり;好適には、この量は約30mg−約280mgから選択されることになり;好適には、この量は約40mg−約260mgから選択されることになり;好適には、この量は約60mg−約240mgから選択されることになり;好適には、この量は約80mg−約220mgから選択されることになり;好適には、この量は約90mg−約210mgから選択されることになり;好適には、この量は約100mg−約200mgから選択されることになり、好適には、この量は約110mg−約190mgから選択されることになり、好適には、この量は約120mg−約180mgから選択されることになり、好適には、この量は約130mg−約170mgから選択されることになり、好適には、この量は約140mg−約160mgから選択されることになり、好適には、この量は150mgとなろう。従って、本発明に係る組合せ物の一部として投与される化合物Bの量は約10mg−約300mgから選択される量となろう。例えば、本発明に係る組合せ物の一部として投与される化合物Bの量は、好適には、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mgおよび300mgから選択される。好適には、選択された量の化合物Bは1日1−4回投与される。好適には、選択された量の化合物Bは1日2回投与される。好適には、化合物Bは150mgの量で1日2回投与される。好適には、選択された量の化合物Bは1日1回投与される。
【0133】
本発明で使用する、化合物Aおよび化合物Bについて特定されるすべての量は、遊離のまたは塩を形成していない化合物の量として示されている。
【0134】
治療方法
本発明の組合せ物は、MEKおよび/またはB−Rafの阻害が有益である障害において有用性を有すると考えられる。
【0135】
従って、本発明は、療法において、特に、MEKおよび/またはB−Rafの活性の阻害が有益である障害、特に癌の治療において使用するための、本発明の組合せ物をも提供する。
【0136】
本発明のさらなる態様は、本発明の組合せ物を投与することを含む、MEKおよび/またはB−Rafの阻害が有益である障害の治療方法を提供する。
【0137】
本発明のさらなる態様は、MEKおよび/またはB−Rafの阻害が有益である障害の治療のための薬剤の製造における、本発明の組合せ物の使用を提供する。
【0138】
典型的には、この障害は、MEKおよび/またはB−Rafの阻害が有益な効果を有するような癌である。本発明の組合せ物を用いた治療に好適な癌の例としては、原発性ならびに転移性の形態の頭頸部癌、乳癌、肺癌、結腸癌、卵巣癌、および前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。好適には、この癌は、脳癌(神経膠腫)、神経膠芽腫、星状細胞腫、多形神経膠芽腫、バナヤン−ゾナナ症候群(Bannayan−Zonana syndrome)、カウデン病、レルミット・デュクロ病、乳癌、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣腫、髄芽腫、結腸癌、頭頸部癌、腎癌、肺癌、肝癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫、甲状腺癌、リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリー細胞白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、AML、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、形質細胞腫、免疫芽球性大細胞型白血病、マントル細胞白血病、多発性骨髄腫 巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病、赤白血病、悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌、外陰癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、上咽頭癌、頬癌、口腔癌、GIST(消化管間葉性腫瘍)および精巣癌から選択される。
【0139】
さらに、治療対象の癌の例としては、バレット腺癌、胆道癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、原発性中枢神経系腫瘍(神経膠芽腫、星状細胞腫(例えば、多形神経膠芽腫)および上衣腫など)、および続発性中枢神経系腫瘍(すなわち、中枢神経系の外に由来する腫瘍の、中枢神経系への転移)を含めた中枢神経系腫瘍、大腸結腸癌を含めた結直腸癌、胃癌、頭頸部扁平上皮癌を含めた頭頸部の癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫および赤白血病などの白血病およびリンパ腫を含めた血液癌、肝細胞癌、小細胞性肺癌および非小細胞性肺癌を含めた肺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、下垂体腺腫、前立腺癌、腎癌、肉腫、黒色腫を含む皮膚癌、ならびに甲状腺癌が挙げられる。
【0140】
好適には、本発明は、脳癌(神経膠腫)、神経膠芽腫、バナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット・デュクロ病、乳癌、結腸癌、頭頸部癌、腎癌、肺癌、肝癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫および甲状腺癌から選択される癌を治療するかまたは癌の重症度を低減するための方法に関する。
【0141】
好適には、本発明は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌および前立腺癌から選択される癌を治療するかまたは癌の重症度を低減するための方法に関する。
【0142】
本発明の組合せ物は、単独または1以上の他の治療薬と組合せて使用され得る。従ってさらなる態様では、本発明は、さらなる治療薬(1つまたは複数)とともに本発明の組合せ物を含むさらなる組合せ物、この組合せ物を含む組成物および薬剤、ならびに療法における、特にMEKおよび/またはキナーゼBの阻害の影響を受けやすい疾患の治療におけるこのさらなる組合せ物、組成物および薬剤の使用を提供する。
【0143】
当該実施形態では、本発明の組合せ物は、癌治療の他の治療方法とともに用いられ得る。特に、抗新生物療法において、他の化学療法剤、ホルモン剤、抗体薬、ならびに上記の薬剤以外の外科治療および/または放射線治療を伴う併用療法が想定される。従って、本発明に係る併用療法としては、化合物Aおよび化合物Bの投与、ならびに必要に応じた他の抗新生物薬を含めた他の治療薬の使用が挙げられる。薬剤のこのような組合せは、一緒にまたは別々に投与され得、別々に投与されるとき、これは、同時に、または時間的に近くてもよく時間的に離れていてもよい任意の順序で逐次的に行われ得る。1つの実施形態では、当該薬学的組合せ物は、化合物Aおよび化合物Bを含み、ならびに少なくとも1つのさらなる抗新生物薬を含んでもよい。
【0144】
示されたように、化合物Aおよび化合物Bの治療上有効量は、上で論じられている。本発明のさらなる治療薬の治療上有効量は、例えば、当該哺乳動物の年齢および体重、治療を必要とする正確な病態、病態の重症度、製剤の性質、および投与経路を含めたいくつかの要因に依存することになろう。最終的には、この治療上有効量は、主治医または主治獣医の判断によることになろう。投与の相対的タイミングは、所望の複合的な治療効果を成し遂げるために選択されることになろう。
【0145】
1つの実施形態では、さらなる抗癌療法は外科的療法および/または放射線療法である。
【0146】
1つの実施形態では、さらなる抗癌療法は、少なくとも1つのさらなる抗新生物薬である。
【0147】
治療しようとする感受性のある腫瘍に対して活性を有するいずれの抗新生物薬も、当該組合せ物の中で利用され得る。典型的な有用な抗新生物薬としては、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドなどの抗微小管薬、白金配位錯体、ナイトロジェンマスタード、オキサアザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、およびトリアゼンなどのアルキル化剤、アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシンなどの抗生物剤、エピポドフィロトキシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤、プリンおよびピリミジン類似体および抗葉酸化合物などの代謝拮抗剤、カンプトテシンなどのトポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシン血管新生阻害剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、ならびに細胞周期シグナル伝達阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
抗微小管薬または有糸分裂阻害薬:抗微小管薬または有糸分裂阻害薬は、細胞周期のM期または有糸分裂期の間、腫瘍細胞の微小管に対して活性な期特異的な(phase specific)薬剤である。抗微小管薬の例としては、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
ジテルペノイドは天然の供給源に由来し、このジテルペノイドは、細胞周期のG
2/M期で作動する期特異的抗癌剤である。このジテルペノイドは、微小管のβ−チューブリンサブユニットと結合することによりこのタンパク質を安定化すると考えられる。そのあとこのタンパク質の分解は阻害され、有糸分裂が停止されて細胞死が続くようである。ジテルペノイドの例としては、パクリタキセルおよびその類似体ドセタキセルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
パクリタキセル、5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサ−ヒドロキシタクス−11−エン−9−オン 4,10−ジアセテート 2−ベンゾエート 13−位で(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとのエステル、は、タイヘイヨウイチイの木
Taxus brevifoliaから単離される天然のジテルペン産物であり、注射液TAXOL(登録商標)として市販されている。それは、テルペンのタキサンファミリーのメンバーである。パクリタキセルは、米国において難治性の卵巣癌の治療(Markmanら,Yale Journal of Biology and Medicine,64:583,1991;McGuireら、Ann. lntem, Med.,111:273,1989)および乳癌の治療(Holmesら,J. Nat. Cancer Inst.,83:1797,1991)における臨床使用について承認されている。パクリタキセルは、皮膚(Einzigら,Proc. Am. Soc. Clin. Oncol.,20:46)および頭頸部癌(Forastireら,Sem. Oncol., 20:56,1990)の新生物の治療のための潜在的な候補である。またこの化合物は、多発性嚢胞腎疾患(Wooら,Nature,368:750. 1994)、肺癌およびマラリアの治療についても可能性を示す。パクリタキセルを用いた患者の治療は、閾値濃度(50nM)を超える投薬の継続期間に関連する骨髄抑制(多数の細胞系統、Ignoff,R.J.ら,Cancer Chemotherapy Pocket Guide,1998)を生じる(Kearns,C.M.ら,Seminars in Oncology,3(6) p.16−23,1995)。
【0151】
ドセタキセル、(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン、N−
tert−ブチルエステル、13−位で5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタクス−11−エン−9−オン 4−アセテート 2−ベンゾエートとのエステル、三水和物、は、TAXOTERE(登録商標)として、注射液として市販されている。ドセタキセルは乳癌の治療に適応がある。ドセタキセルは、セイヨウイチイの木の針状葉から抽出される天然の前駆体、10−デアセチル−バッカチンIIIを使用して調製されるパクリタキセル(上記を参照)の半合成の誘導体である。
【0152】
ビンカアルカロイドは、ツルニチニチソウ植物に由来する期特異的抗新生物薬である。ビンカアルカロイドは、チューブリンに特異的に結合することにより、細胞周期のM期(有糸分裂)で作用する。その結果、結合したチューブリン分子は微小管へと重合できない。有糸分裂は、細胞分裂中期で停止され、そのあと細胞死が続くと考えられる。ビンカアルカロイドの例としては、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
ビンブラスチン、硫酸ビンカロイコブラスチン、は、VELBAN(登録商標)として、注射液として市販されている。ビンブラスチンは、種々の固形腫瘍の第二選択療法として適応の可能性を有するが、ビンブラスチンは、主に、精巣癌およびホジキン病を含めた種々のリンパ腫、ならびにリンパ球性リンパ腫および組織球性リンパ腫の治療に適応がある。骨髄抑制は、ビンブラスチンの用量制限副作用である。
【0154】
ビンクリスチン、ビンカロイコブラスチン、22−オキソ−、硫酸塩、は、ONCOVIN(登録商標)として、注射液として市販されている。ビンクリスチンは、急性白血病の治療に適応があり、ホジキン悪性リンパ腫および非ホジキン悪性リンパ腫のための治療レジメンで使用されてきた。脱毛症および神経学的効果は、ビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、より少ない程度ではあるが骨髄抑制および胃腸の粘膜炎効果が起こる。
【0155】
ビノレルビン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−C’−ノルビンカロイコブラスチン[R−(R
*,R
*)−2,3−ジヒドロキシブタンジオエート(1:2)(塩)]は、酒石酸ビノレルビンの注射液(NAVELBINE(登録商標))として市販されており、これは、半合成のビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、単独の薬剤としてまたはシスプラチンなどの他の化学療法剤と組合せて、種々の固形腫瘍、特に非小細胞性肺癌、進行乳癌、およびホルモン不応性前立腺癌の治療に適応がある。骨髄抑制は、ビノレルビンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0156】
白金配位錯体:白金配位錯体は、DNAと相互作用できる、期特異的でない抗癌剤である。この白金錯体は、腫瘍細胞に進入し、アクア化を受けて、DNAと鎖内および鎖間の架橋を形成し、腫瘍に対して有害な生物学的効果を引き起こす。白金配位錯体の例としては、オキサリプラチン、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
シスプラチン、シス−ジアミンジクロロ白金、は、PLATINOL(登録商標)として、注射液として市販されている。シスプラチンは、主に、転移性の精巣癌および卵巣癌ならびに進行膀胱癌の治療に適応がある。
【0158】
カルボプラチン、白金、ジアミン[1,1−シクロブタン−ジカルボキシレート(2−)−O,O’]、は、PARAPLATIN(登録商標)として、注射液として市販されている。カルボプラチンは、主に、進行卵巣癌の第一選択および第二選択の治療に適応がある。
【0159】
アルキル化剤:アルキル化剤は、期特異的でない抗癌剤かつ強い求電子剤である。典型的には、アルキル化剤は、リン酸、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、カルボキシル、およびイミダゾール基などの、DNA分子の求核的部分を介して、アルキル化によって、DNAへと共有結合を形成する。このようなアルキル化は核酸機能を破壊し、細胞死へと導く。アルキル化剤の例としては、シクロホスファミド、メルファラン、およびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード、ブスルファンなどのアルキルスルホネート、カルムスチンなどのニトロソウレア、ならびにダカルバジンなどのトリアゼンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
シクロホスファミド、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサアザホスホリン 2−オキシド一水和物、は、CYTOXAN(登録商標)として、注射液または錠剤として市販されている。シクロホスファミドは、単独の薬剤としてまたは他の化学療法剤と組合せて、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、および白血病の治療に適応がある。
【0161】
メルファラン、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニン、は、ALKERAN(登録商標)として、注射液または錠剤として市販されている。メルファランは、多発性骨髄腫および切除不可能な卵巣上皮癌の対症療法に適応がある。骨髄抑制は、メルファランの最も一般的な用量制限副作用である。
【0162】
クロラムブシル、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸、は、LEUKERAN(登録商標)錠剤として市販されている。クロラムブシルは、慢性リンパ性白血病、ならびにリンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫、およびホジキン病などの悪性リンパ腫の対症療法に適応がある。
【0163】
ブスルファン、1,4−ブタンジオール ジメタンスルホネート、は、MYLERAN(登録商標)錠剤として市販されている。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の対症療法に適応がある。
【0164】
カルムスチン、1,3−[ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、は、BiCNU(登録商標)として、凍結乾燥された物質の単一バイアルとして市販されている。カルムスチンは、単独の薬剤としてまたは他の薬剤と組合せて、脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病、および非ホジキンリンパ腫のための対症療法に適応がある。
【0165】
ダカルバジン、5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキシアミド、は、DTIC−Dome(登録商標)として、物質の単一バイアルとして市販されている。ダカルバジンは、転移性の悪性黒色腫の治療について、および他の薬剤と組合せてホジキン病の第二選択治療に適応がある。
【0166】
抗生物質抗新生物薬:抗生物質抗新生物薬は、DNAに結合するかまたはインターカレートする、期特異的でない薬剤である。典型的には、このような作用は安定なDNA複合体または鎖切断を生じ、これは核酸の通常の機能を破壊し細胞死を導く。抗生物質抗新生物薬の例としては、ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン、ダウノルビシンおよびドキソルビシンなどのアントラサイクリン、ならびにブレオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
アクチノマイシンDとしても知られるダクチノマイシンは、COSMEGEN(登録商標)として、注射剤型で市販されている。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍および横紋筋肉腫の治療に適応がある。
【0168】
ダウノルビシン、(8S−シス−)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12 ナフタセンジオン塩酸塩、は、DAUNOXOME(登録商標)としてリポソーム注射剤型として、またはCERUBIDINE(登録商標)として注射剤として市販されている。ダウノルビシンは、急性非リンパ球性白血病および進行したHIV関連カポジ肉腫の治療における寛解導入療法に適応がある。
【0169】
ドキソルビシン、(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル,7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12 ナフタセンジオン塩酸塩、は、RUBEX(登録商標)またはADRIAMYCIN RDF(登録商標)として、注射剤型として市販されている。ドキソルビシンは、主に、急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病の治療に適応があるが、いくつかの固形腫瘍およびリンパ腫の治療においても有用な成分である。
【0170】
Streptomyces verticillus(ストレプトマイセス・ベルチシルス)の株から単離される細胞毒性糖ペプチド抗生物質の混合物であるブレオマイシンは、BLENOXANE(登録商標)として市販されている。ブレオマイシンは、単独の薬剤としてまたは他の薬剤と組合せて、扁平上皮癌、リンパ腫、および精巣癌の対症療法として適応がある。
【0171】
トポイソメラーゼII阻害剤:トポイソメラーゼII阻害剤としては、エピポドフィロトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
エピポドフィロトキシンは、マンドレイク植物に由来する期特異的抗新生物薬である。エピポドフィロトキシンは、典型的には、トポイソメラーゼIIおよびDNAと三元複合体を形成してDNA鎖の切断を引き起こすことにより、細胞周期のSおよびG
2期において細胞に影響を及ぼす。この鎖の切断は蓄積し、その後に細胞死が続く。エピポドフィロトキシンの例としては、エトポシドおよびテニポシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
エトポシド、4’−デメチル−エピポドフィロトキシン 9[4,6−0−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]、は、VePESID(登録商標)として、注射液またはカプセルとして市販されており、VP−16として一般に知られる。エトポシドは、単独の薬剤としてまたは他の化学療法剤と組合せて、精巣癌および非小細胞性肺癌の治療に適応がある。
【0174】
テニポシド、4’−デメチル−エピポドフィロトキシン 9[4,6−0−(R)−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]、は、VUMON(登録商標)として、注射液として市販されており、VM−26として一般に知られる。テニポシドは、単独の薬剤としてまたは他の化学療法剤と組合せて、小児の急性白血病の治療に適応がある。
【0175】
代謝拮抗剤新生物薬:代謝拮抗剤新生物薬は、DNA合成を阻害しまたはプリンもしくはピリミジン塩基の合成を阻害しこれによりDNA合成を制限することにより、細胞周期のS期(DNA合成)で作用する、期特異的抗新生物薬である。その結果、S期は進行せず、その後に細胞死が続く。代謝拮抗剤抗新生物薬の例としては、フルオロウラシル、メトトレキセート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、およびゲムシタビンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2,4−(1H,3H) ピリミジンジオン、は、フルオロウラシルとして市販されている。5−フルオロウラシルの投与は、チミジル酸合成の阻害を導き、また、RNAおよびDNAの両方の中へと取り込まれる。その結果は、典型的には細胞死である。5−フルオロウラシルは、単独の薬剤としてまたは他の化学療法剤と組合せて、乳房、結腸、直腸、胃および膵臓の癌の治療に適応がある。他のフルオロピリミジン類似体としては、5−フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)および5−フルオロデオキシウリジン一リン酸が挙げられる。
【0177】
シタラビン、4−アミノ−1−β−D−アラビノフラノシル−2 (1H)−ピリミジノン、は、CYTOSAR−U(登録商標)として市販されており、Ara−Cとして一般に知られる。シタラビンは、シタラビンの、成長するDNA鎖への末端組み込みによってDNA鎖の延長を阻害することにより、S期において細胞期特異性を示すと考えられる。シタラビンは、単独の薬剤としてまたは他の化学療法剤と組合せて、急性白血病の治療に適応がある。他のシチジン類似体としては、5−アザシチジンおよび2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)が挙げられる。
【0178】
メルカプトプリン、1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン一水和物、は、PURINETHOL(登録商標)として市販されている。メルカプトプリンは、いまだ特定されていない機構によってDNA合成を阻害することによりS期において細胞期特異性を示す。メルカプトプリンは、単独の薬剤としてまたは他の化学療法剤と組合せて、急性白血病の治療に適応がある。有用なメルカプトプリン類似体はアザチオプリンである。
【0179】
チオグアニン、2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン、は、TABLOID(登録商標)として市販されている。チオグアニンは、いまだ特定されていない機構によってDNA合成を阻害することによりS期において細胞期特異性を示す。チオグアニンは、単独の薬剤としてまたは他の化学療法剤と組合せて、急性白血病の治療に適応がある。他のプリン類似体としてはペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビン、およびクラドリビンが挙げられる。
【0180】
ゲムシタビン、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン一塩酸塩(β−異性体)、は、GEMZAR(登録商標)として市販されている。ゲムシタビンは、G1/S境界で細胞の進行を遮断することによりS期において細胞期特異性を示す。ゲムシタビンは、シスプラチンと組合せて局所進行非小細胞性肺癌の治療に、および単独で局所進行膵臓癌の治療に適応がある。
【0181】
メトトレキセート、N−[4[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸、は、メトトレキセートナトリウムとして市販されている。メトトレキセートは、プリンヌクレオチドおよびチミジル酸の合成のために必要とされるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を通してDNA合成、修復および/または複製を阻害することにより、特異的にS期において細胞期効果を示す。メトトレキセートは、単独の薬剤としてまたは他の化学療法剤と組合せて、絨毛癌、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫、ならびに乳房、頭部、頸部、卵巣および膀胱の癌の治療に適応がある。
【0182】
トポイソメラーゼI阻害剤:カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含めたカンプトテシンは、トポイソメラーゼI阻害剤として利用できるかまたは開発中である。カンプトテシン細胞傷害活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性と関連すると考えられる。カンプトテシンの例としては、イリノテカン、トポテカン、および下記の7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20−カンプトテシンの種々の光学異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
イリノテカンHCl、(4S)−4,11−ジエチル−4−ヒドロキシ−9−[(4−ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H,12H)−ジオン塩酸塩、は、注射液CAMPTOSAR(登録商標)として市販されている。イリノテカンは、自身の代謝産物SN−38と共に、トポイソメラーゼI−DNA複合体に結合するカンプトテシンの誘導体である。細胞毒性は、トポイソメラーゼI:DNA:イリノテカンまたはSN−38の三元複合体と複製酵素との相互作用によって引き起こされる回復不能な二重鎖の切断の結果として起こると考えられる。イリノテカンは、結腸または直腸の転移性癌の治療に適応がある。
【0184】
トポテカンHCl、(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H,12H)−ジオン一塩酸塩、は、注射液HYCAMTIN(登録商標)として市販されている。トポテカンはトポイソメラーゼI−DNA複合体に結合するカンプトテシンの誘導体であり、DNA分子のねじれ歪みに応答してトポイソメラーゼIによって引き起こされる一重鎖の切断の再連結を防止する。トポテカンは、卵巣癌および小細胞性肺癌の転移性癌の第二選択治療に適応がある。
【0185】
ホルモンおよびホルモン類似体:ホルモンおよびホルモン類似体は、ホルモン(1つまたは複数)と癌の成長および/または成長の欠如との間に関係がある癌を治療するために有用な化合物である。癌治療において有用なホルモンおよびホルモン類似体の例としては、小児の悪性リンパ腫および急性白血病の治療において有用なプレドニゾンおよびプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、副腎皮質癌およびエストロゲン受容体を含有するホルモン依存性乳癌の治療において有用な、アミノグルテチミドならびにアナストロゾール、レトラゾール、ボロゾール、およびエクセメスタンなどの他のアロマターゼ阻害剤、ホルモン依存性乳癌および子宮内膜癌の治療において有用な酢酸メゲストロールなどのプロゲストリン、前立腺癌および良性前立腺肥大の治療において有用な、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロンなどのエストロゲン、アンドロゲン、および抗アンドロゲンならびにフィナステリドおよびデュタステリドなどの5α−レダクターゼ、ホルモン依存性乳癌および他の感受性の癌の治療において有用な、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェンなどの抗エストロゲン剤、ならびに米国特許第5,681,835号、米国特許第5,877,219号、および米国特許第6,207,716号に記載されるものなどの選択的エストロゲン受容体調節因子(SERMS)、ならびに前立腺癌の治療のために黄体形成ホルモン(LH)および/または濾胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激する性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)およびその類似体、例えば、酢酸ゴセレリンおよびリュープロリドなどのLHRHアゴニストおよびアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
シグナル伝達経路阻害剤:シグナル伝達経路阻害剤は、細胞内変化を惹起する化学プロセスを遮断または阻害する阻害剤である。本発明で使用するこの変化は細胞増殖または分化である。本発明で有用なシグナル伝達阻害剤としては、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメインブロッカー、セリン/トレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール−3 キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達、およびRas腫瘍遺伝子の阻害剤が挙げられる。
【0187】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞成長の調節に関与する種々のタンパク質の中の特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。このようなタンパク質チロシンキナーゼは、受容体または非受容体キナーゼとして広く分類され得る。
【0188】
受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通型タンパク質である。受容体チロシンキナーゼは、細胞成長の調節に関与し、一般に成長因子受容体と呼ばれる。例えば過剰発現または変異による、これらのキナーゼのうちの多くの不適切または制御されない活性化、すなわち異常なキナーゼ増殖因子受容体活性は、制御されない細胞成長を生じるということが示されている。従って、このようなキナーゼの異常な活性は、悪性の組織成長に結びつけられてきた。結果として、このようなキナーゼの阻害剤は、癌治療方法を提供し得る。成長因子受容体としては、例えば、表皮成長因子受容体(EGFr)、血小板由来成長因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、ret、血管内皮増殖因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様および表皮成長因子相同ドメインを有するチロシンキナーゼ(TIE−2)、インスリン成長因子−I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkB、およびTrkC)、エフリン(eph)受容体、およびRET癌原遺伝子が挙げられる。成長受容体のいくつかの阻害剤が開発中であり、それらには、リガンドアンタゴニスト、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。成長因子受容体および成長因子受容体の機能を阻害する薬剤は、例えばKath,John C.,Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(6):803−818;Shawverら DDT Vol 2, No. 2 1997年2月;およびLofts,F.J.ら,「Growth factor receptors as targets」,New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, Workman,PaulおよびKerr,David編, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0189】
成長因子受容体キナーゼではないチロシンキナーゼは、非受容体チロシンキナーゼと呼ばれる。抗癌剤の標的または潜在的な標的である本発明で有用な非受容体チロシンキナーゼとしては、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(接着斑キナーゼ)、ブルトン型チロシンキナーゼ、およびBcr−Ablが挙げられる。このような非受容体キナーゼおよび非受容体チロシンキナーゼの機能を阻害する薬剤は、Sinh,S.およびCorey,S.J., (1999) Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research 8(5):465−80;およびBolen,J.B.,Brugge,J.S., (1997) Annual review of Immunology. 15:371−404に記載されている。
【0190】
SH2/SH3ドメインブロッカーは、PI3−K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)およびRas−GAPなどの様々な酵素またはアダプタータンパク質においてSH2またはSH3ドメイン結合を破壊する薬剤である。抗癌剤についての標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall,T.E. (1995), Journal of Pharmacological and Toxicological Methods. 34(3) 125−32で論じられている。
【0191】
Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェンまたは細胞外調節キナーゼ(Mitogen or Extracellular Regulated Kinase、MEK)、および細胞外調節キナーゼ(Extracellular Regulated Kinase、ERK)の遮断薬を含む、MAPキナーゼカスケード遮断薬などのセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤;ならびにPKC(アルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン、ミュー、デルタ、イオタ、ゼータ)の遮断薬などのタンパク質キナーゼCファミリーメンバー遮断薬。IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、aktキナーゼファミリーのメンバー、およびTGFβ受容体キナーゼ。このようなセリン/トレオニンキナーゼおよびその阻害剤は、Yamamoto,T.,Taya,S.,Kaibuchi,K., (1999), Journal of Biochemistry. 126(5) 799−803;Brodt,P,Samani,A.、およびNavab,R. (2000), Biochemical Pharmacology,60. 1101−1107;Massague,J.,Weis−Garcia,F. (1996) Cancer Surveys. 27:41−64;Philip,P.A.、およびHarris,A.L. (1995), Cancer Treatment and Research. 78: 3−27,Lackey,K.ら Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, (10), 2000,223−226;米国特許第6,268,391号;ならびにMartinez−Iacaci,L.ら,Int. J. Cancer (2000), 88(1),44−52に記載されている。
【0192】
PI3−キナーゼ、ATM、DNA−PK、およびKuの遮断薬を含めたホスファチジルイノシトール−3 キナーゼファミリーのメンバーの阻害剤も本発明で有用である。このようなキナーゼは、Abraham,R.T. (1996), Current Opinion in Immunology. 8(3) 412−8;Canman,C.E.,Lim,D.S. (1998), Oncogene 17(25) 3301−3308;Jackson,S.P. (1997), International Journal of Biochemistry and Cell Biology. 29(7):935−8;およびZhong,H.ら,Cancer res, (2000) 60(6),1541−1545で論じられている。
【0193】
ホスホリパーゼC遮断薬およびミオイノシトール類似体などのミオイノシトールシグナル伝達阻害剤も本発明で有用である。このようなシグナル阻害剤は、Powis,G.、およびKozikowski A., (1994) New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy,Paul WorkmanおよびDavid Kerr編, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0194】
別の群のシグナル伝達経路阻害剤は、Ras腫瘍遺伝子の阻害剤である。このような阻害剤としては、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル−ゲラニルトランスフェラーゼ、およびCAAXプロテアーゼの阻害剤、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムおよび免疫療法が挙げられる。このような阻害剤は、野生型変異体rasを含有する細胞においてras活性化を遮断し、これにより抗増殖薬として作用することが示されている。Ras腫瘍遺伝子阻害は、Scharovsky,O.G.,Rozados,V.R.,Gervasoni,S.I. Matar,P. (2000), Journal of Biomedical Science. 7(4) 292−8;Ashby,M.N. (1998), Current Opinion in Lipidology. 9(2) 99−102;およびBiochim. Biophys. Acta, (19899) 1423(3):19−30で論じられている。
【0195】
上で触れたように、受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体アンタゴニストは、シグナル伝達阻害剤としての役割も果たし得る。この群のシグナル伝達経路阻害剤としては、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗体の使用が挙げられる。例えばImclone C225 EGFR特異的抗体(Green,M.C.ら,Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors, Cancer Treat. Rev., (2000),26(4),269−286を参照のこと);Herceptin(登録商標)erbB2抗体(Tyrosine Kinase Signalling in Breast cancer:erbB Family Receptor Tyrosine Kinases, Breast cancer Res.,2000,2(3),176−183を参照のこと);および2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken,R.A.ら,Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti−VEGF antibody blocks tumor growth in mice,Cancer Res. (2000) 60,5117−5124を参照のこと)である。
【0196】
抗血管新生薬:非受容体MEK血管新生阻害剤を含めた抗血管新生薬も有用であり得る。血管内皮成長因子の効果を阻害するものなどの抗血管新生薬(例えば抗血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ[Avastin(商標)]、および他の機構によって働く化合物(例えばリノミド、インテグリンαvβ3機能の阻害剤、エンドスタチンおよびアンジオスタチン)、
免疫療法薬:免疫療法レジメンで使用される薬剤も、式(I)の化合物と組合せて有用であり得る。例えば患者の腫瘍細胞の免疫原性を上昇させるためのex−vivoおよびin−vivoアプローチを含めた免疫療法アプローチ、例えばインターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインを用いた形質移入、T細胞の免疫反応不顕性を低下させるためのアプローチ、サイトカインで形質移入した樹状細胞などの形質移入した免疫細胞を使用するアプローチ、サイトカインで形質移入した腫瘍細胞株を使用するアプローチ、および抗イディオタイプ抗体を使用するアプローチ。
【0197】
アポトーシス促進剤:アポトーシス促進レジメンで使用される薬剤(例えば、bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)も本発明の組合せ物で使用され得る。
【0198】
細胞周期シグナル伝達阻害剤:細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるタンパク質キナーゼのファミリーおよびそれらと、サイクリンと呼ばれるタンパク質のファミリーとの相互作用は、真核細胞周期の進行を制御する。異なるサイクリン/CDK複合体の協調的な活性化および不活化は、細胞周期の正常な進行のために必要である。細胞周期シグナル伝達のいくつかの阻害剤が開発中である。例えば、CDK2、CDK4、およびCDK6を含めたサイクリン依存性キナーゼ、およびそれらについての阻害剤の例は、例えば、Rosaniaら,Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(2):215−230に記載されている。
【0199】
1つの実施形態では、本発明の組合せ物は、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と、抗微小管薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンMEK血管新生阻害剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、および細胞周期シグナル伝達阻害剤から選択される少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0200】
1つの実施形態では、本発明の組合せ物は、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドから選択される抗微小管薬である少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0201】
さらなる実施形態では、この少なくとも1つの抗新生物薬はジテルペノイドである。
【0202】
さらなる実施形態では、この少なくとも1つの抗新生物薬はビンカアルカロイドである。
【0203】
1つの実施形態では、本発明の組合せ物は、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と、白金配位錯体である少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0204】
さらなる実施形態では、この少なくとも1つの抗新生物薬はパクリタキセル、カルボプラチン、またはビノレルビンである。
【0205】
さらなる実施形態では、この少なくとも1つの抗新生物薬はカルボプラチンである。
【0206】
さらなる実施形態では、この少なくとも1つの抗新生物薬はビノレルビンである。
【0207】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの抗新生物薬はパクリタキセルである。
【0208】
1つの実施形態では、本発明の組合せ物は、式Iの化合物およびその塩または溶媒和物と、シグナル伝達経路阻害剤である少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0209】
さらなる実施形態では、シグナル伝達経路阻害剤は、成長因子受容体キナーゼVEGFR2、TIE2、PDGFR、BTK、erbB2、EGFr、IGFR−1、TrkA、TrkB、TrkC、またはc−fmsの阻害剤である。
【0210】
さらなる実施形態では、このシグナル伝達経路阻害剤は、セリン/トレオニンキナーゼrafk、akt、またはPKC−ζの阻害剤である。
【0211】
さらなる実施形態では、このシグナル伝達経路阻害剤は、キナーゼのsrcファミリーから選択される非受容体チロシンキナーゼの阻害剤である。
【0212】
さらなる実施形態では、このシグナル伝達経路阻害剤は、c−srcの阻害剤である。
【0213】
さらなる実施形態では、このシグナル伝達経路阻害剤は、ファルネシルトランスフェラーゼおよびゲラニルゲラニルトランスフェラーゼの阻害剤から選択されるRas腫瘍遺伝子の阻害剤である。
【0214】
さらなる実施形態では、このシグナル伝達経路阻害剤は、PI3Kからなる群から選択されるセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤である。
【0215】
さらなる実施形態では、このシグナル伝達経路阻害剤は、二重EGFr/erbB2阻害剤、例えばN−{3−クロロ−4−[(3−フルオロベンジル)オキシ]フェニル}−6−[5−({[2−(メタンスルホニル)エチル]アミノ}メチル)−2−フリル]−4−キナゾリンアミン(下記の構造)である。
【化23】
【0216】
1つの実施形態では、本発明の組合せ物は、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と、細胞周期シグナル伝達阻害剤である少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0217】
さらなる実施形態では、細胞周期シグナル伝達阻害剤は、CDK2、CDK4またはCDK6の阻害剤である。
【0218】
1つの実施形態では、本発明の方法および使用における哺乳動物はヒトである。
【0219】
好適には、本発明は、Raf、Ras、MEK、およびPI3K/Ptenの各々について野生型または変異体のいずれかである癌を治療するかまたはそのような癌の重症度を低減する方法に関する。これは、RAFについて変異体、RASについて野生型、MEKについて野生型、およびPI3K/PTENについて野生型である癌、RAFについて変異体、RASについて変異体、MEKについて野生型、およびPI3K/PTENについて野生型である癌、RAFについて変異体、RASについて変異体、MEKについて変異体、およびPI3K/PTENについて野生型である癌、ならびにRAFについて変異体、RASについて野生型、MEKについて変異体、およびPI3K/PTENについて野生型である癌を有する患者を含むが、これらに限定されない。
【0220】
当該技術分野で理解される用語「野生型」は、遺伝子改変のない未変性の集団で現れるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を指す。また当該技術分野で理解されるように、「変異体」は、それぞれ野生型ポリペプチドまたはポリヌクレオチドで見出される対応するアミノ酸または核酸と比較して、アミノ酸または核酸に対して少なくとも1つの改変を有するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列を含む。最も一般的に見出される(野生型)核酸鎖と比較して1つの塩基対の相違が核酸鎖の配列に存在する、一塩基多型(SNP)は、用語「変異体」に含まれる。
【0221】
Raf、Ras、MEKについて野生型もしくは変異体のいずれかであるか、またはPI3K/Ptenについて変異体である癌は、公知の方法によって特定される。例えば、野生型または変異体の腫瘍細胞は、DNA増幅および配列決定技術、DNAおよびRNAの検出技術(特に限定されないが、それぞれノーザンブロットおよびサザンブロット、ならびに/または種々のバイオチップおよびアレイ技術が挙げられる)によって特定され得る。野生型および変異体のポリペプチドは、特に限定されないが、ELISA、ウエスタンブロットまたは免疫細胞化学などの免疫診断技術が挙げられる様々な技術によって検出され得る。好適には、加ピロリン酸分解活性化重合(PAP)および/またはPCR方法が使用され得る。Liu,Qら、Human Mutation 23:426−436(2004)。
【0222】
以下の実施例は、説明のためだけに意図されており、本発明の範囲を限定することは決して意図されていない。
【実施例】
【0223】
実施例1 − カプセル剤組成物
本発明の組合せ物を投与するための経口用剤形は、標準的な2片の硬ゼラチンカプセル剤を、下記の表Aに示す割合で成分を充填することにより製造する。
【表1】
【0224】
本発明の好ましい実施形態は上に説明されているが、本発明は本明細書に開示されるまさにそのインストラクションに限定されず、以下の特許請求の範囲の中に包含されるすべての改変に対する権利が留保されるということを理解されるべきである。
【0225】
アッセイ
異なる変異をコードする複数の起源に由来する癌細胞株についてのBRAFおよびMEK阻害剤のin vitro組合せ物研究
A. 濃度範囲A
薬物組合せ物実験を384穴プレートの中で実施した。細胞を、10% FBSおよび1% ペニシリン/ストレプトマイシンを補った各細胞のタイプに適切な培地の中で500細胞/ウェルで384穴プレートにプレーティングし、37℃、5% CO
2で一晩インキュベーションした。各薬物の16の濃度の2倍希釈を、細胞増殖阻害についてマトリクスで試験した。化合物A(遊離形態)について試験した濃度は1μM−0.03nMであり、化合物B(DMSO溶媒和物)については10μM−0.3nMであった。細胞を化合物組合せ物で処置し、37℃で72時間インキュベーションした。製造業者のプロトコルに従ってCellTiter−Glo(登録商標)試薬を使用して細胞成長を測定し、0.5秒読み取りでルミネッセンスモードに設定したPerkinElmer EnVision(商標)読み取り機でシグナルを読み取った。結果は、DMSO処置した細胞と比較した百分率阻害として表され、バックグラウンド補正を、細胞を含有しないウェルからの値を差し引くことにより行った。
【0226】
「a」濃度における化合物「A」の応答(未処置の試料と比較しかつ培地のみに対して正規化した百分率阻害)(Ra)および「b」濃度における化合物「B」の応答(Rb)を、それぞれ「a」および「b」濃度における化合物「A」および「B」の混合物の応答(Rab)と比較する。これらの値を使用して、エクセス・オーバー・ハイエスト・シングル・エージェント(Excess Over Highest Single Agent、EOHSA)を、試験した細胞株の各々の各濃度について算出した:
Rab>RaおよびRbのうちで高いほうの値の10% = 加成性を超える
Rab<RaおよびRbのうちで高いほうの値の−10% = 拮抗作用
この式を使用して、RabがRaとRbとの間の最も高い値よりも10%以上大きい場合、その薬物組合せ物は加成性を超えると考えられる。RabがRaとRbとの間の最も高い値よりも10%以上小さい場合、その薬物組合せ物は拮抗的である。
【0227】
試験した細胞株の各々について、16×16のマトリクスの中での、加成性を超える応答を有する組合せ物(Rabが、RaおよびRbのうちで高いほうの値よりも10%以上高い組合せ物)の数を数えた。(試験した264個のうちで)加成性を超える組合せ物の数を表1に要約する。この表で、試験した組合せ物の20%(試験した256個のうちの51の組合せ物)超が>10% EOHSAを示したならば、与えられた細胞株についての濃度の組合せが特に有益である(灰色の枠)ことが見出されるであろう。
【表2】
【0228】
これらのデータは、化合物Aおよび化合物Bの組合せ物は、MAPKまたはAKT/PI3K/PTEN経路の中の鍵となる腫瘍遺伝子の変異状態によらず、複数の起源由来の複数の癌細胞株について好ましいということを実証する。
【0229】
B. 濃度範囲B
セクションAで生成された、しかし臨床的に関連すると見なす(100nM−3nM)薬物濃度についてのみのデータを使用して、化合物Aおよび化合物Bの組合せ物の上記のセクションAに類似の評価を実施した。これらの濃度を、前臨床マウス異種移植モデルで有効であるが無毒である傾向がある濃度として選んだ。これらの濃度を使用して、合計25の薬物組合せ物を各細胞株について評価し、結果を表2に要約する。
【0230】
25の試験した臨床的に関連する組合せ物のうちの、RaおよびRbのうちで高いほうの値の10%を超えるRabを有する組合せ物の数を算出し、百分率として表2に表す。
【0231】
表2:臨床的に関連する薬物濃度を使用するMEKおよびBRAF阻害剤のin vitro組合せ物
【表3】
【0232】
これらのデータは、化合物Aおよび化合物Bの組合せ物は、関連する臨床薬物濃度では、PI3K/PTEN経路の変異状態によらず、試験したほとんどの細胞株において好ましく、そして試験したすべてのBRAF
V600EおよびKRAS変異体細胞株について非常に好ましいということを実証する。
【0233】
腫瘍細胞株におけるin vitro細胞増殖阻害
方法:
細胞株および成長状態 − ヒト結腸腫瘍株、Colo−205、DLD−1、HCT−8、HT−29、LS−1034、NCI−H508、RKO、SW1417、SW1463、SW480およびSW837、およびヒト黒色腫株A375をATCCから得た。A375PF11はA375由来であった。12R5−1、12R5−3、12R8−1、12R8−3、16R5−2、16R6−3および16R6−4は、1200および1600nMの濃度までの化合物Aの中で成長し、これにより化合物Bに対する獲得された耐性を示すように選択された、A375PF11細胞の混合集団に由来する単一の細胞クローンである。すべての株を、10% ウシ胎仔血清(FBS)を含有するRPMI 1640培地の中で培養した。
【0234】
細胞増殖阻害アッセイおよび組合せデータ解析 − すべての細胞を、細胞のプレーティングの前に、最低72時間培養した。1ウェルあたり1,000細胞で、すべての細胞について、10% FBSを含有するRPMI培地の96穴の組織培養プレート(NUNC 136102)の中で細胞をアッセイした。プレーティングからおよそ24時間後に、10% FBSを含有するRPMI培地の中で、細胞を、10の、3倍の段階希釈の化合物、または1:10 化合物A(DMSO溶媒和物) 対 化合物B(遊離形態)の一定モル 対 モル比の当該2つの薬剤の組合せ物に曝露した。化合物Aについての試験した濃度は、1μM−0.05nMであり、化合物Bについては10μM−0.5nMであった。細胞を、化合物の存在下で3日間インキュベーションした。ATPレベルを、製造業者のプロトコルに従ってCell Titer Glo(登録商標) (Promega)を添加することにより測定した。簡潔に言えば、Cell Titer Glo(登録商標)を各プレートに添加し、30分間インキュベーションし、次いで発光シグナルを、0.5秒の積算時間を用いて、SpectraMax L プレートリーダーで読み取った。
【0235】
細胞成長の阻害を、化合物または化合物の組合せ物を用いた3日間の処置の後に評価し、シグナルをビヒクル(DMSO)を用いて処置した細胞と比較した。細胞成長を、ビヒクル(DMSO)処置した対照のウェルに対して算出した。対照の細胞成長の50%を阻害する化合物の濃度(IC
50)を、方程式、y=(A+(B−A)/(1+(C/x)^D)))(式中、Aは最小応答(y
min)であり、Bは最大応答(y
max)であり、Cは曲線の変曲点(EC
50)であり、DはHill係数である)を用いた非線形回帰を使用して、y=ビヒクル対照の50%であるときに補間した。
【0236】
逆補間した(back−interpolated)IC
50値と、ChouおよびTalalay(1)によって誘導された相互に非排他的な式(mutually non−exclusive equation):
CI = Da/IC
50(a) + Db/IC
50(b) + (Da×Db)/(IC
50(a)×IC
50(b))
(式中、IC
50(a)は化合物AについてのIC
50であり、IC
50(b)は化合物BについてのIC
50であり、Daは、細胞成長の50%を阻害した化合物Bと組合せた化合物Aの濃度であり、Dbは、細胞成長の50%を阻害した化合物Aと組合せた化合物Bの濃度である)とを用いて算出した組合せ指数(Combination Index、CI)を使用して、効力に対する組合せ効果を評価した。一般に、0.9未満、0.9−1.1の間、または>1.1超のCI値は、それぞれ、相乗作用、加成性および拮抗作用を示す。一般に、CI数が小さいほど、相乗作用の強さが大きい。
【0237】
応答スケールに対する組合せ効果を、PetersonおよびNovick(2007)ならびにPeterson(2010)[(2;3)[PetersonおよびNovick,2007;Peterson,2010]によって詳細に記載されている非線形混合の概念に基づいて、エクセス・オーバー・ハイエスト・シングル・エージェント(EOHSA)によって定量化した。EOHSA値は、組合せ物についてのその成分の用量レベルでの最良の単独の薬剤に対する、組合せ物によってもたらされる改善(本発明では「百分率ポイント」(ppts)の差)の増加として定義される。単独の薬剤および併用治療について、細胞を一定用量比で化合物に曝露し、用量反応曲線を実験データにフィッティングし、回帰モデルを使用して分析した。用量反応曲線に沿ったC
50の特定された全用量レベルで、(IC
50に対応する)用量の組合せを、EOHSAの統計的推定を行うために、決定した。より具体的には、組合せ薬物について、用量d1の薬物1および用量d2の薬物2(すなわち、全用量はd1+d2に等しい)が関与する実験は、組合せ物での平均応答が、用量d1の薬物1または用量d2の薬物2に対する平均応答よりも良好である場合、正のEOHSAを有すると言われる。
【0238】
結果:
MEK阻害剤化合物A、BRAF阻害剤化合物Bおよびこれらの組合せ物による細胞増殖阻害の効果を、ヒト腫瘍細胞株のパネルにおいて判定した。(少なくとも2つの独立の実験からの平均IC
50)およびIC
50での組合せ効果を、BRAFおよびKRAS変異状態とともに表3に要約する。
【0239】
表3を参照すると、BRAF V600E変異を有する4つの結腸細胞株は、0.001μM−0.025μMのIC
50値で化合物Aに、および0.018μM−5.654μMのIC
50値で化合物Bに対する感受性を提示した。化合物Aおよび化合物Bの組合せ物は、これらのBRAF V600E変異を有する4つの株において、0.25−0.73のCI値で相乗的であり、かつ/または7−26pptsのEOHSA値で細胞増殖阻害を亢進した。BRAF V600E変異を有しない(BRAF G596RまたはKRAS変異のいずれかを有する)7つの結腸株は、化合物Bに感受性がなかった(IC
50>10μM)が、しかしながら化合物Aによる細胞増殖阻害には非常に敏感であり、IC
50は、この7つの株のうちの6つで0.001−0.093μMの範囲であった。化合物Aおよび化合物Bの組合せ物は、DLD1結腸腫瘍株において亢進された細胞増殖阻害を示し、他の6つの結腸細胞株においては化合物Aの単独化合物治療と比べて最小の利益〜付加された利益なしであった。
【0240】
表3に列挙する黒色腫株については、BRAF V600E変異を有するA375PF11細胞は、化合物A(IC
50=0.001μM)または化合物B(IC
50=0.012μM)のいずれかの単独の薬剤に対して非常に感受性が高かった。A375PF11細胞においては化合物Aおよび化合物Bの組合せ物は相乗的で、CI値は0.3であった。黒色腫株12R8−3、12R8−1、12R5−3、および16R6−3は、化合物Bに対して耐性があり(IC
50>10μM)、化合物Aに対しては0.058μM−0.109の範囲のIC
50で中程度に感受性があり、化合物Aおよび化合物Bの組合せ物に対して、化合物Aについての0.018−0.023μMおよび化合物Bについての0.178−0.234μMの範囲のIC
50で応答した。黒色腫株16R5−2、16R6−4および12R5−1は、化合物Aまたは化合物Bのいずれか単独に対して耐性があるかまたは感受性がなかったが、しかしながら、化合物Aおよび化合物Bの組合せ物に対しては、化合物Aについて0.018−0.039μMおよび化合物Bについて0.177−0.386μMの範囲のIC
50で感受性を示すようになった。また、化合物Aおよび化合物Bの組合せ物は、すべてのこれらの黒色腫株において細胞増殖阻害の亢進を示した。なお、単独の薬剤の値が試験した範囲の外にある場合は、CI値は算出することができず、それゆえ適用なしであった。
【0241】
興味深いことに、BRAF−V600E変異体の結腸細胞株および黒色腫細胞株における化合物Aおよび化合物Bの併用投与は、0.9未満のCI値によって実証される相乗効果を示したか、またはこれらの単独の薬剤のうちの少なくとも1つが試験した範囲内で50%阻害を生じなかった場合でも、単独で投与された化合物Aまたは化合物BのIC50値と比べて低下したIC50値を生じた。
【0242】
表3.ヒト腫瘍細胞株における化合物A、化合物Bおよびこれらの組合せ物による細胞増殖阻害。
【表4】
【0243】
参考文献の一覧
(1)Chou TC,Talalay P. Quantitative analysis of dose−effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors. Adv Enzyme Regul 1984;22:27−55。
【0244】
(2)Peterson JJ,Novick SJ. Nonlinear blending: a useful general concept for the assessment of combination drug synergy. J Recept Signal Transduct Res 2007;27(2−3):125−46。
【0245】
(3)Peterson J. A Review of Synergy Concepts of Nonlinear Blending and Dose−Reduction Profiles. Frontiers of Bioscience S2, 483−503. 2010。
【0246】
マウス異種移植モデルA
A375P F11(BRaf
V600E変異をコードするヒト黒色腫細胞株)細胞を使用する異種移植モデルを、組織培養液の中で成長させた細胞から確立し、トリプシン消化を使用して無菌的に回収した。この腫瘍細胞を、50%マトリゲルの中の5×10
6−10
7細胞で雌の無胸腺マウス(系統
nu/nu)に皮下注射した。腫瘍を確立させた。約200mm
3の平均腫瘍体積に対応する移植から24日目に投薬を始めた。
【0247】
このヒト異種移植腫瘍モデルは、一群あたり8匹のマウスで4群のマウスを利用した。これらの動物を皮下(sc)マイクロチップまたはタトゥーによって特定した。
【0248】
未処置またはプラセボ処置した腫瘍保有の対照動物の第1の群が対照としての役割を果たした。第2の群には、
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(結晶性の遊離塩基形態)(化合物B)を1日1回経口投与した。第3の群には、N−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミド ジメチルスルホキシド溶媒和物(化合物A)を1日1回経口投与した。第4の群には、
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(結晶性の遊離塩基形態)およびN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミド ジメチルスルホキシド溶媒和物の組合せ物を1日1回経口投与した。各薬物を、0.5% HPMC/0.2% TWEEN 80の懸濁液の中で与えた。
【0249】
Vernierカリパスを使用して腫瘍サイズを一週間に2回測定した。扁長楕円体の体積を近似する式:
立方mm単位での腫瘍体積=(長さ×幅
2)×0.5
を使用して二次元測定値から腫瘍体積を算出した。
【0250】
36日の治療後の測定値を
図1に報告する。これらのデータは、MEKおよびB−Raf阻害剤の組合せ物が、個々に投与される各薬剤と比較して有利であるということを示す。
【0251】
マウス異種移植モデルB
A375P細胞を、37℃で5分間、0.25% トリプシン/EDTAに曝露することにより培養フラスコから回収した。剥離した細胞を集め、遠心分離し(1500rpm、5分、4℃)、洗ってトリプシン溶液を除去した。マグネシウムもカルシウムも含まないPBSに細胞を再懸濁させ、数えた。細胞をこれまでのように回転させてPBSを除去し、100μLの皮下注射がマウス1匹あたりに必要とされる細胞数を送達するであろうように、単一の細胞懸濁液を50%マトリゲル:50% PBS(v:v)または100% PBSのいずれかの中で作製した。このA375P黒色腫株を、マウス1匹あたり175万細胞で、8−10週齢の、雌のCD−1
nu/nuマウスに、マトリゲルを用いて皮下注射した。注射後2−4週間以内にすべての細胞株について腫瘍を確立させた(約150−300mm
3)。
【0252】
化合物A(DMSO溶媒和物)および化合物B(遊離形態)を、蒸留水、pH 7.0−8.0中の0.5% HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Sigma カタログ番号H7509)および0.2% Tween 80(Sigma カタログ番号P1754)の中で0.2ml/20グラム体重で、示した用量でマウスに経口投与した。
【0253】
同様のサイズの腫瘍(150−200mm
3)を有するマウスを特定した。腫瘍の長さおよび幅を手持ち式のカリパスによって測定し、卓上体重計を使用してマウスの体重を測定した。適宜にマウスを8匹または7匹の群に分け、ビヒクル、個々の化合物または化合物組合せ物のいずれかを経口投薬した。この研究の継続期間のあいだ、一週間に2回、マウスの体重を測定し、腫瘍を測定した。
図2に提示するデータは、33日間(移植後24−56日)毎日の化合物A(0.1mg/kg)および化合物B(30mg/kg)の組合せ物が各薬剤単独よりも有効であるということを実証する。