特許第5718934号(P5718934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718934
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】光散乱を推定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 15/80 20110101AFI20150423BHJP
   G06F 19/00 20110101ALI20150423BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   G06T15/80
   G06F19/00 110
   G01N21/47 Z
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-540364(P2012-540364)
(86)(22)【出願日】2010年11月18日
(65)【公表番号】特表2013-511785(P2013-511785A)
(43)【公表日】2013年4月4日
(86)【国際出願番号】EP2010067727
(87)【国際公開番号】WO2011064132
(87)【国際公開日】20110603
【審査請求日】2013年11月18日
(31)【優先権主張番号】0958288
(32)【優先日】2009年11月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ゴートロン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ユード マービー
(72)【発明者】
【氏名】シリル デラランドレ
【審査官】 真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−503060(JP,A)
【文献】 特開2005−122735(JP,A)
【文献】 倉地 紀子,ボリュームレンダリングって・・・・・・・,CG WORLD vol.66,日本,株式会社ワークスコーポレーション,2004年 2月 1日,第66巻,P.38-41
【文献】 徳吉 雄介 丸山 稔,異方性散乱媒質が存在するシーンの高速レンダリング手法,情報処理学会論文誌 第46巻 第11号,日本,社団法人情報処理学会,2005年11月15日,第46巻 第11号,P.2795-2803
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種成分からなる関与媒質によって散乱された光の量の計算のための方法であって、
2つの連続する階層のレベルの間で少なくとも1つの方向にしたがって、前記媒質中の前記光の減衰差を表す誤差情報の少なくとも1つの項目にしたがって空間細分割の複数の階層のレベルの中から前記媒質の空間細分割の少なくとも1つのレベルを選択するステップと、
少なくとも1つの散乱方向に沿った前記媒質のサンプリングによって散乱された前記光の量を計算するステップであって、前記サンプリングは前記少なくとも1つの選択した空間細分割レベルに依存する、前記計算するステップと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの散乱方向に沿った位置にある前記媒質の少なくとも1つの点によって散乱された前記光の前記減衰を表す少なくとも第1の値を計算するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの散乱方向に沿った位置にある前記少なくとも1つの点内で前記光の少なくとも1つの放出方向にしたがって少なくとも1つの光源から受け取られる前記光の前記減衰を表す少なくとも第2の値を計算するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
誤差情報の前記少なくとも1つの項目は、2つの第1の値の比較によって決定され、前記2つの第1の値は前記媒質の2つの連続する階層の空間細分割レベルに対してそれぞれ計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
誤差情報の前記少なくとも1つの項目は、2つの第2の値の比較によって決定され、前記2つの第2の値は前記媒質の2つの連続する階層の空間細分割レベルに対してそれぞれ計算される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記誤差情報をしきい値と比較するステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
誤差情報の前記少なくとも1つの項目が前記しきい値よりも小さい場合には、選択した前記空間細分割レベルは、最も高い階層の位置の前記レベルに対応する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
異種成分からなる関与媒質によって散乱された光の量の計算のために構成された装置であって、
2つの連続する階層のレベルの間で少なくとも1つの方向にしたがって、前記媒質中の前記光の減衰差を表す誤差情報の少なくとも1つの項目にしたがって空間細分割の複数の階層のレベルの中から前記媒質の空間細分割の少なくとも1つのレベルを選択するための手段と、
少なくとも1つの散乱方向に沿った前記媒質のサンプリングによって散乱された光の前記量を計算するための手段であって、前記サンプリングは前記少なくとも1つの選択した空間細分割レベルに依存する、前記計算するための手段と
を備える、前記装置。
【請求項9】
ンピュータ上で実行されるときに請求項1から7のいずれか一項に記載の前記方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムコードの命令を備える、プログラム。
【請求項10】
コンピュータによって読取り可能な記憶装置であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の前記方法のステップを実行するために前記コンピュータによって実行可能なプログラムコードの命令を記憶する、前記記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンセシス画像合成(synthesis image composition)の分野に関し、より具体的には、異種成分からなる関与媒質中の光散乱シミュレーションの分野に関する。また本発明は、ライブ(live)合成のための特別な効果に関して理解される。
【背景技術】
【0002】
先行技術によれば、例えば、霧、煙、塵または雲などの関与媒質中の光の散乱をシミュレーションするために、様々な方法が存在する。関与媒質は、特にトラジェクトリ(trajectory)および強度を変更する光と相互作用する浮遊状態の粒子から構成される媒質に対応する。
【0003】
関与媒質を、2つのグループ、すなわち、水などの均質な媒質および煙または雲などの異種成分からなる媒質に分類することができる。均質な媒質のケースでは、光源によって送出された光の減衰を解析的に計算することが可能である。事実、それ自体の均質な性質のために、これらの媒質は、媒質の任意の点において一定である光吸収係数または光散乱係数などのパラメータを有する。逆に、光吸収特性および光散乱特性は、異種成分からなる関与媒質中では点ごとに変化する。かかる異種成分からなる媒質中での光の散乱をシミュレーションするために要求される計算は、非常に費用がかかるものであり、異種成分からなる関与媒質によって散乱される光の量を解析的にライブで計算することはしたがって不可能である。それに加えて、媒質によって散乱される光の量を散乱しない媒質は、光の散乱方向、換言すると、人が媒質を見る方向にしたがってやはり変化する。媒質の実際的なディスプレイを得るために、散乱される光の量を推定する計算を、人間による媒質の各観察方向について繰り返さなければならない。
【0004】
異種成分からなる関与媒質のライブディスプレイを生成するために、ある方法は、異種成分からなる関与媒質を表すいくつかのパラメータの事前計算を実行する。これらの方法は、例えば、ポストポロダクション(post−production)におけるスタジオ使用のために完璧に適合しており、良い品質のディスプレイをもたらしうるが、ライブ会話型概念の状況および異種成分からなる関与媒質の合成には、これらの方法は適合していない。当業者に良く知られているレイマーチングアルゴリズム法(例えば、非特許文献1に記載されている)などの他の方法は、光の散乱方向および/または透過方向にしたがって異種成分からなる関与媒質をサンプリングするものであり、媒質の多数の点(点の数はサンプリングの精度に依存する)における光の減衰を推定する。かかるサンプリングは、特にサンプリングが非常に細かいときならびに/またはサンプリングした媒質が複雑であるおよび/もしくは広範囲に及ぶときには、計算に非常に費用がかかる。
【0005】
対話型シミュレーションゲームおよびアプリケーションの出現で、特に、3次元(3D)では、異種成分からなる関与媒質の実際的なディスプレイを提供するライブシミュレーション方法に対して、必要性が感じられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S. Chandrasekhar, "Radiative Transfer Equation", 1960, Dover Publications
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、先行技術のこれらの欠点のうちの少なくとも1つを克服することである。
【0008】
さらに具体的に本発明の目的は、異種成分からなる関与媒質中の光の散乱の実際的なディスプレイを合成するために必要な計算時間を特に最適化することである。
【0009】
本発明は、異種成分からなる関与媒質によって散乱された光の量を推定するための方法に関係し、本方法は、2つの連続する階層のレベルの間で少なくとも1つの方向にしたがって、媒質中の減衰差を表す誤差情報の少なくとも1つの項目にしたがって空間細分割(spatial subdivision)の複数の階層のレベルの中から媒質の空間細分割の少なくとも1つのレベルを選択するステップと、少なくとも1つの散乱方向に沿った前記媒質のサンプリングによって散乱された光の量を推定するステップであって、サンプリングは少なくとも1つの選択した空間細分割レベルに依存する推定するステップとを含む。
【0010】
有利には、本方法は前記少なくとも1つの散乱方向に沿った位置にある媒質の少なくとも1つの点によって散乱された光の減衰を表す少なくとも第1の値を推定するステップを含む。
【0011】
特定の特徴によれば、本方法は、少なくとも1つの散乱方向に沿った位置にある少なくとも1つの点において光の少なくとも1つの放出方向にしたがって少なくとも1つの光源から受け取った光の減衰を表す少なくとも第2の値を推定するステップを含む。
【0012】
都合の良いことに、誤差情報の少なくとも1つの項目は、2つの第1の値の比較によって決定され、2つの第1の値は、媒質の2つの連続する階層の空間細分割レベルに対してそれぞれ推定される。
【0013】
もう1つの特徴によれば、誤差情報の少なくとも1つの項目は、2つの第2の値の比較によって決定され、2つの第2の値は、媒質の2つの連続する階層の空間細分割レベルに対してそれぞれ推定される。
【0014】
具体的な特徴によれば、本方法は、誤差情報をしきい値と比較するステップを含む。
【0015】
都合の良いことに、誤差情報の少なくとも1つの項目がしきい値よりも小さい場合には、選択した空間細分割レベルは、最も高い階層の位置レベルに対応する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付した図面を参照して下記の説明を読むと、本発明がより良く理解され、他の具体的な特徴および利点が明らかになりうる。
【0017】
図1】本発明の特定の実施形態による、光を散乱する異種成分からなる関与媒質を図式的に示す図である。
図2A】本発明の特定の実施形態による、図1の媒質の空間細分割ツリーを表示する図である。
図2B】本発明の特定の実施形態による、図1の媒質の空間細分割ツリーを表示する図である。
図3A】本発明の特定の実施形態による、光の散乱方向に応じた図1の媒質のいくつかの空間細分割レベルを示す図である。
図3B】本発明の特定の実施形態による、光の散乱方向に応じた図1の媒質のいくつかの空間細分割レベルを示す図である。
図4A】本発明の特定の実施形態による、光の散乱方向に応じた図1の媒質のいくつかの空間細分割レベルを示す図である。
図4B】本発明の特定の実施形態による、光の散乱方向に応じた図1の媒質のいくつかの空間細分割レベルを示す図である。
図5】本発明の特定の実施形態による、光の放出方向に応じた図1の媒質のいくつかの空間細分割レベルを示す図である。
図6】本発明の特定の実施形態による、図1の媒質によって散乱された光の量を推定するための方法を実装している装置を示す図である。
図7】本発明の特定の実施形態による、図1の媒質によって散乱された光の量を推定するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、異種成分からなる関与媒質10、例えば雲を示す。関与媒質は、光を吸収し、放出しおよび/または拡散させる浮遊状態の多数の粒子から構成される媒質である。その最も単純な形体では、関与媒質は、光、例えば太陽などの、例えば光源11から受け取る光だけを吸収する。これは、媒質10を通過する光が減衰することを意味し、減衰は媒質の濃度に依存する。異種成分からなる媒質は、換言すると、例えば媒質を構成する粒子の濃度などの媒質の物理的な特性が、媒質中で点ごとに変化する。関与媒質が光と相互作用する小さな粒子から構成されるので、入射光、つまり、1つの方向ωin110にしたがって光源11から受け取る光は、吸収されるだけでなく、散乱される。等方的散乱に関与媒質中では、光はすべての方向に一様に散乱される。図1に示した雲10などの、非等方的散乱に関与媒質中では、光散乱は、入射方向ωin110と光の散乱方向ωout120との間の角度に依存する。散乱方向ωout120において媒質10の点M13のところで散乱される光の量が、次の式によって計算される。
【0019】
Q(M,ωout)=D(M).σs.p(M,ωout,ωin).Lri(M,ωin
式1
方向ωout120における空間の点Cのところの位置にいる観察者12の目に到達する媒質の点M13によって散乱された光の量、換言すると、点Mによって散乱された光の量は、トラジェクトリM−P上の媒質10によって減衰し、点Pは、観察者12の方向において媒質10と方向ωoutとの交点のところの位置にあり、そのときには、
【0020】
【数1】
【0021】
ここでは、
・σsは媒質の散乱係数であり、
・σaは媒質の吸収係数であり、
・σt=σs+σaは媒質の消衰係数であり、
・D(M)は所与の点のところの媒質の濃度であり、媒質10が異種成分からなるので、濃度は点ごとに変化し、
・p(M,ωout,ωin)は、入射方向ωinから来る光が点Mのところで散乱方向ωoutにどれだけ散乱されるかを記述する位相関数であり、
・Lri(M,ωin)は、入射方向ωin110から来る点Mのところの減少した光強度であり、線分K−M上の媒質10中の光のトラジェクトリに起因する減衰後に、点Mのところに達する入射光の量を表し、Kは媒質10と入射レイωin110との間の交点であり、その値は次式である、
【0022】
【数2】
【0023】
【数3】
は、P15からM13までの経路に沿った吸収および散乱に起因する散乱した光の減衰を表す。
【0024】
式2は、点Mによって散乱され、方向ωout上の位置にいる観察者12の目に到達する光の量を計算することを可能にする。方向ωoutにおいて見ている観察者によって受け取られる光の量を計算するために、軸ωout上の位置にある媒質の点のセットのすべての寄与の合計を計算しなければならず、換言すると、点が線分P−Mmax上の位置にあり、PおよびMmaxは媒質10と方向ωout120との間の2つの交点である。単純な散乱に起因して方向ωout120からP15のところに達するこの散乱した光の総量は、次式である、
【0025】
【数4】
【0026】
ここでは、トラジェクトリC−Pをカバーする光が減衰せず、光が媒質10の外では減衰しないものと考える。
【0027】
この散乱した光の総量は、方向としてωoutを有するレイ上のPとMmaxとの間の位置にあるすべての点からの寄与を積分することによって求められる。かかる積分式を、一般的には解析的に解くことができず、散乱した光の量のライブ推定の場合にはなおさらである。レイマーチングとして知られる方法を使用して、積分をディジタル的に算出する。この方法では、積分領域を、区間ごとに濃度が変化するサイズσMの複数の区間へと離散化し、次式が得られる、
【0028】
【数5】
【0029】
同様に、異種成分からなる関与媒質10中の光源11からの光の減衰が、レイマーチング法の適用によって都合よく計算される。したがって、減衰した後で点Mのところに達する入射光の量を表す点Mのところの光強度の減衰AttL(M)13は、次の式によって表される、
【0030】
【数6】
【0031】
レイマーチング法にしたがって点Mのところの光の減衰を推定するために、媒質10中の光レイ110の入力点K14と媒質10の検討する点M13との間で検討する入射方向110上の位置にある積分領域を、サイズσsの一連の区間へと離散化する。その上、濃度が、入射方向(また、光放出方向とも呼ばれる)に沿って点ごとに(すなわち、言い換えると、区間σsごとに)やはり変化する。下記の式が、したがって得られる、
【0032】
【数7】
【0033】
都合の良いことに、明確にする理由で図1では2次元で示した異種成分からなる関与媒質10は、3次元要素である。
【0034】
変形形態によれば、媒質10は、複数の光源、例えば、1000個、100,000個または1,000,000個の光源によって照らされ、光源は光環境を形成する。いくつかの遠隔光源からの光の推定を、当業者には知られている環境マッピング法を使用して実行する。環境マッピング法にしたがえば、光環境のすべての光源は、媒質10の点に関して光学的に無限のところの位置にあると考えられる。したがって、媒質の検討するいかなる点であっても、取り上げた方向が同一であると考えることが可能である。媒質の異なる点を分離する距離に起因する視差効果を、したがって無視できる。この変形形態によれば、点Mのところの入射光の減衰を推定するために、光環境を表す入射方向のセットについて式7を用いて光の減衰を計算することが必要であり、これが計算を著しく増加させる。
【0035】
もう1つの変形形態によれば、媒質の散乱係数σsおよび/または媒質の吸収係数σaなどの媒質10の物理的な特性は、濃度が変化するように、媒質10中で点ごとにやはり変化する。補足的な変形形態によれば、2つの係数σsおよびσaのうちの一方だけまたは両方が媒質中で変化し、濃度は、媒質中で均質である。
【0036】
図2Aおよび図2Bは、本発明の特定の実施形態にしたがった、表示の2つの異なるモードによる媒質10の空間細分割ツリーを示す。
【0037】
明確化および単純化の理由で、媒質10は、図2A中の正方形または長方形などの単純な2次元の幾何学的形体2(図2Aおよび図2Bの説明では媒質2と呼ばれる)によって表される。媒質2の表面は、同一のサイズのセルへと階層的に細分割されて、「クオッドトリー(quadtree)」タイプの構造を形成する。同じセルに属する媒質2の点は、同一の物理的な特性を有し、例えば、媒質の濃度は、同じセルの媒質2の各点において同じである。物理的な特性は、都合の良いことにセルごとに変化する。変形形態によれば、媒質2のいくつかのセルの物理的な特性は、同一の物理的な特性を有し、媒質2は全体的に異種起源のままであり、換言すると、少なくとも2つのセルが異なる物理的な特性を有する。最も高い階層のレベルが、媒質2の空間細分割の第1のレベル21を形成する単一のセル[1]によって表され、この唯一のセルが媒質2の表面と同じ表面を有する。第1のレベルの直下の階層のレベル(媒質2の空間細分割の第2のレベル22と呼ばれる)は、セル[1]のサイズの4分の1に対応する同一のサイズの4個のセル[2]、[3]、[4]および[5]によって表される。より低い階層のレベルからなり第2のレベル22に続く媒質2の空間細分割の第3のレベル23は、同一のサイズの16個のセル、例えば、セル[6]から[17]によって表される。セル[6]から[17]の各々のサイズは、セル[2]から[5]のサイズの4分の1に対応し、各セル[2]から[5]が、同一のサイズの4個のセルへとそれぞれ分割されている。より低い階層のレベルからなり第3のレベル23に続く媒質2の空間細分割の第4のレベル24は、同一のサイズの64個のセル、例えば、セル[18]から[25]によって表される。セル[18]から[25]の各々のサイズは、セル[6]から[17]のサイズの4分の1に対応し、第3のレベル23の各セル[6]から[17]が、同一のサイズの4個のセルへとそれぞれ分割されている。この構造を一般化して、レベルXより直ぐ低い空間表示のレベルYを形成するために、レベルXのセルの数を4倍してレベルYを形成するセルの数を求めることを、これは意味する。
【0038】
レベルのこの階層が、空間細分割の階層のレベルがツリー構造の形体で現れる図2Bに関してより明確に現れ、セルがツリーのノードを形成する。媒質2の空間細分割の第1のレベル21は、単一のセル[1]を含む。(第1のレベルよりも低い階層の位置の)媒質2の空間細分割の第2のレベル22は、第1のレベルよりも4倍多いセル、すなわち、4個のセル[2]から[5]を含む。(第2のレベルよりも低い階層の位置の)媒質2の空間細分割の第3のレベル23は、第2のレベルよりも4倍多いセル、すなわち、16個のセル[6]から[17]を含む。(第3のレベルよりも低い階層の位置の)媒質2の空間細分割の第4のレベル24は、第3のレベルよりも4倍多いセル、すなわち、64個のセル[18]から[25]を含み、セル[18]から[21]が、例えば第3のレベルのセル[12]の細分割に対応し、セル[22]から[25]が、例えば第3のレベルのセル[15]の細分割に対応する。媒質2の空間表示の第5のレベル(図2Aおよび図2Bには図示せず)は、したがって、第4のレベルよりも4倍多いセルを含むはずであり、媒質2の空間表示の第6のレベル(図2Aおよび図2Bには図示せず)は、したがって、第5のレベルよりも4倍多いセルを含むはずである、等々。
【0039】
3次元要素中の異種成分からなる媒質10に関与するときに、媒質2は、それ自体3次元要素であり、媒質は、同一の寸法、したがって同一の体積のセルへと階層的に細分割されて、「オクトリー(octree)」タイプの構造を形成する。媒質2を形成する同一の寸法(および体積)のセルは、都合の良いことに「ボクセル(voxel)」と呼ばれ、「ボクセル」は体積要素に対応する。3次元媒質2のケースでは、空間細分割の第1のレベル(最も高い階層の位置)は、体積が媒質2の体積に等しい単一の「ボクセル」を含む。第2の空間細分割レベルは、同一の寸法(および体積)の8個の「ボクセル」を含み、第3の空間細分割は、第2のレベルに対して8倍多い「ボクセル」、すなわち512個の体積を含む、等々。同じ「ボクセル」の点は、同一の物理的な特性を有し、換言すると、これらは同じ吸収係数、同じ散乱係数、および同じ濃度を有し、「ボクセル」内の体積は結果として均質である。都合の良いことに、第1の「ボクセル」に属する点の物理的な特性は、第1の「ボクセル」に隣接する「ボクセル」に属する点の物理的な特性とは異なり、例えば、第1の「ボクセル」の点は隣接する「ボクセル」の点とは異なる濃度D1を有する。変形形態によれば、媒質2の「ボクセル」は、互いに異なる特性を有する。もう1つの変形形態によれば、媒質2のいくつかの「ボクセル」は、同一の物理的な特性を有する。媒質2を構成するいくつかの「ボクセル」が同一の物理的な特性、例えば同一の濃度Diを有する場合でさえ、媒質2は全体としては異種起源のままである。
【0040】
説明の残りの部分では、空間細分割要素が図中では明確化の理由のために2次元のセルによって表される場合でさえ、用語「ボクセル」を、媒質2の空間細分割要素を明示するために使用する。2次元要素に関して、セルという用語を、用語「ボクセル」で置き換え、説明した推論を、セルおよび「ボクセル」に同じように適用する。濃度値は、媒質10を表すために媒質10のすべての点において、当業者には知られた任意の方法にしたがって、例えば流体力学シミュレーションアプリケーションを使用してまたは媒質10についての特定のディスプレイの効果を生み出すように誰かが望むことによって、最初に計算され、この濃度値は、ある点の初期濃度と呼ばれる。ある「ボクセル」に属する点に与えられた濃度値が、「ボクセル」を構成する点の各々から以前に計算した初期濃度の平均に対応するようにそれから計算される。例えば、単一の「ボクセル」がある空間細分割の第1のレベル(最も高い階層)に関して、「ボクセル」のすべての点に与えられる濃度値は、媒質2の初期濃度の平均値に対応する。媒質2が8個の「ボクセル」へと細分割される第2のレベルに関して、点の平均濃度は、「ボクセル」に属する点の初期濃度の平均を使用して計算され、この平均値が検討する「ボクセル」のすべての点に与えられ、操作が7個の他の「ボクセル」に対して繰り返される。同じ推論が、媒質2の空間細分割の各レベルに対して適用される。
【0041】
「ボクセル」の点の初期濃度の平均を計算して「ボクセル」を形成するすべての点にこの平均値を与えることは、濃度推定誤差を導入することを含み、媒質2の空間細分割が粗くなるにつれて、誤差が大きくなる、換言すると、媒質2を形成する「ボクセル」の数が小さくなるにつれて、誤差が大きくなる。空間細分割の2つの階層的に連続するレベルの間の濃度推定誤差が、例えば、下記の数式を使用して計算される、
【0042】
【数8】
【0043】
ここで、Derrは、より低い階層のレベル(n+1)に対して階層のレベルnの濃度推定誤差を表し、
n+1,iは、階層のレベルnの直ぐ下の階層のレベル(n+1)の「ボクセル」iの点の平均濃度を表し、
Dnは、より低いレベル(n+1)のところで8個の「ボクセル」へと分解される空間細分割のレベルnのノードによって表された「ボクセル」の点の平均濃度を表す。
【0044】
注意として、「ボクセル」を横切る光の減衰は、下記の数式によって与えられる、
【0045】
【数9】
【0046】
ここで、xminおよびxmaxは、空間細分割レベルnの検討する「ボクセル」と光散乱方向または光放出方向の第1の交点および第2の交点にそれぞれ対応し、
Dは、濃度を表す。
【0047】
例えば、数式8によって計算される濃度誤差を検討すると、「ボクセル」中の減衰の下限および上限が、推測される、
【0048】
【数10】
【0049】
【数11】
【0050】
図3A図3B図4Aおよび図4Bは、本発明の特定の実施形態による、光の散乱方向に応じた図1の媒質10のいくつかの空間細分割レベルを示す。図3A図3B図4Aおよび図4Bは、本発明の特定の実施形態による、光の1つの散乱方向ωout120に沿った媒質2(単純な幾何学的形体による媒質10を表している)の空間細分割レベルの選択のための方法をやはり図示する。
【0051】
図3Aは、例えば、図2Bに示したレベル24またはもっと低いレベルに対応する媒質2の最も低い空間細分割レベルの2次元での表示である。媒質2は、n個の「ボクセル」30001から30nにより構成される。光散乱方向ωout120が横切る「ボクセル」、例えば「ボクセル」30225および30064は、図3Aには影付きで現れる。媒質2を横切る光の散乱ωoutを表す右の部分は、レイマーチングとして知られる方法を使用してこの散乱方向に沿った光の減衰の推定のために、m個の点のセットM031、M132、M233...Mi34...Mm35へとサンプリングされる。
【0052】
図3Bは、図3Aに示した空間細分割レベルの階層的に直上の空間細分割レベル、例えば図2Aがレベル24を表す場合にはレベル23の2次元の表示である。したがって示した媒質2は、p個の「ボクセル」3001から30pを含み、図2Bの各「ボクセル」が図2Aの8個の「ボクセル」の併合に対応し、これら8個の「ボクセル」は、媒質2の空間細分割レベルのツリー構造を表しているオクトリーではこれらの階層的に上方の「ボクセル」に接続される。散乱方向ωout120が横切る「ボクセル」、例えば「ボクセル」3049および3016が、やはり影付きで現れる。図3Aおよび図3Bに共通な要素は、同じ参照符号、例えば方向ωout120のサンプリングを形成するm個の点のセットM031、M132、M233...Mi34...Mm35を有する。
【0053】
散乱された光の量の推定の計算速度/精度間の最善の妥協点を形成する空間細分割のレベル、換言すると、散乱された光の量の推定のために引き起こされる誤差がディスプレイの観点から容認可能である(換言すると、例えば、人間の目には見えない)階層的に最も高い空間細分割のレベルを選択するために、点M031を介して散乱される光の量を、図1に関して説明した方法を使用することによって、換言すると、空間細分割の最も低い階層的なレベルで、つまり、図2Aに関して説明したレベルで、点M0のところの入射光の減衰を計算することによって、最初に推定する。この計算した値は、散乱された光の量の第1の基準値を形成する。2番目に、点M132を介して散乱された光の量を、階層的に空間細分割の最も低いレベルで(点M1のところの入射光の減衰の計算の後で)同じ方法にしたがって計算する。点M0のところでM1およびM0を介して散乱された光の総量を推定するために、M1とM0との間の光の減衰を、その後この値から計算し、減衰値は、式6および式9によれば、濃度およびしたがって横切った「ボクセル」に依存する。3番目に、点M132を介して散乱された光の量を、最も低いレベルよりも階層的に直ぐ高い空間細分割のレベル、換言すると、図2Bに関して表されたレベルで同じ方法にしたがって計算する。次にこの値を使用して、点M0のところでM1およびM0を介して散乱された光の総量を推定するために、M1とM0との間の光の減衰が計算されるが、M0とM1との間を横切る「ボクセル」が空間細分割の1つのレベルから空間細分割の階層的に2番目に高いレベルまで同じではないので、この減衰値は2番目に計算したものとは異なる。2つの連続する空間細分割について、点M0のところで点M1およびM0を介して散乱された光の総量の値を比較することによって、媒質2の代表差にリンクした(換言すると、異なる連続した空間細分割レベルを介した)誤差を表す値が、求められる。誤差を表すこの値を、最終的にしきい値(このしきい値は、例えば人間の目には見えない許容される欠陥の代表値である)と比較する。誤差がしきい値よりも小さい場合には、計算を削減しながら、散乱された光の量の推定のためにほとんど誤差を導入しないので、最も高い空間細分割レベルが選択され、「ボクセル」がより大きなサイズのものであり、濃度がしたがって媒質2中では頻繁には変化せず、複雑さが濃度変化に直接的に依存する光の減衰の計算を削減することを、これは意味する。
【0054】
誤差がしきい値よりも大きい場合には、より高い階層のレベルが、例えば人間の目に見える大きすぎる誤差をもたらすことを、これは意味するので、最も低い、換言すると最も多い「ボクセル」を有する空間細分割レベルが選択されたことを、これは意味する。同じ計算を、その後、次の点M233について実行する。点M2を介して散乱された光の量を、最も低い空間細分割レベルについて計算し、それから、経路M20上の光減衰を計算して、最も低い空間細分割レベルについて点M0のところでM2を介して散乱された光の量を推定する。点M0のところでM2を介して散乱された光の量を比較する基準値は、方向120上のM2から上流の位置にある点、すなわち点M0およびM1、によって散乱された光の量である。それから、点M0のところでM2を介して散乱された光の量を、階層の直ぐに高い空間細分割のレベル、すなわち図2Bに示されたものについて同じ方法で推定する。光のこの量を、最も低い空間細分割レベル、すなわち図2Aのものについて点M0およびM1を介して散乱された光の量によって構成される基準とその順番になって比較する。空間細分割の2つの連続するレベルについて、M2を介して散乱された光の量をM0およびM1を介して散乱された光の量と比較することによって、2つのレベルの各々について推定した減衰差の代表となる推定誤差を決定する。この誤差がしきい値よりも小さい場合には、細分割の最も高いレベルが正しい推定のために十分であることを、これは意味する。そうでなければ、この誤差がしきい値よりも大きい場合には、細分割の最も高いレベルが不十分であり、細分割の最も細かいレベル、すなわち2つの階層のうちの最も低いレベルを保存すべきであり、同じ操作を次に点Mi34について実行する。最も粗い細分割レベルがMiにとって十分である場合には、Mmのところまで散乱方向上でMiの下流の位置にある点のすべてに対して、最も粗い細分割レベルが十分である。実際に、媒質2中へとさらに進むと点を介して散乱された光の減衰が大きくなり、これらの点によって散乱される光の量が少なくなることは、M0において散乱される光の総量に対して大きい。したがって、誤差が点Miについて許容できる場合には、Mmに向かって下流の位置にある点Mi+1についてはなおさら許容可能である。これは図4Bに示され、点M0からM2に関して、より高い階層のレベルの次の点が選択されるにもかかわらず、最も低い階層のレベルが選択されることが理解できる。Miに関して、最も低いレベルの直上の階層のレベルが容認可能な誤差のマージンで散乱される光の量の推定値を求めるために十分である場合には、問われる質問は、2番目に高い階層のレベルが、それ自体やはり十分であるどうかである。これが図4Aに示されている。点Mi34、それからMi+136、それからMi+237、それからMi+338に関して、図3Bに表された細分割のレベルについて点M0に考えられる点を介して散乱された光の量を、これらの点のために選択した細分割のレベルを有する上流の位置にある点を介して散乱される光の量に対して比較する。それから、これらの同じ点に対して、次々に、細分割の連続するより高いレベル、例えば(レベル23が図2Bに表されている場合に)レベル22について、点M0までこれらの点を介して散乱される光の量を、上流の点を介して点M0のところで散乱された光の量を表している同じ基準値とそれ自体やはり比較する。2つの連続するレベル間の光の減衰差を表す誤差情報の項目を、これから推測する。この誤差がしきい値よりも大きい点について、2つのうちの最も高い細分割レベルが散乱された光の量の正しい推定のためには不十分であることを、これは意味する。ある点に関して、この誤差がしきい値よりも小さいときには、この点のところで最も高い細分割レベルが十分であり、光の減衰の推定のために必要な電力および/または計算時間の観点から費用がかからないとしてこのレベルが選択され、点ごとの濃度変化が階層的により低い細分割レベルに対するものよりも少ない。この最後の点に続く点(換言すると、誤差がしきい値よりも小さい最初の点)に関して、細分割の最も高いレベルが、やはり十分であり、細分割の階層的により高いレベルがやはり十分であるかを見出すために、および方向ωout120における媒質2の限界のところの点Mm35のところにこれが達するまで、疑問がそのときには提示される。
【0055】
このようにして、Mm35に向かって進んでいる方向ωout120に沿って媒質2中へとさらに進むので、空間細分割のレベルが階層的により高くなる図4Bの表示に達する。必要とされる計算能力と散乱方向に沿って散乱された光の量の推定値の品質との間の最善の妥協点がこのようにして見出される。
【0056】
図5は、本発明の一実施形態による、入射光の方向ωin110に沿った空間細分割のいくつかのレベルを有する異種成分からなる関与媒質10の代表である媒質2を示す。図3A図3B図4Aおよび図4Bに関して説明してきたように、散乱方向(やはり観察方向として知られる)ωout120に沿って媒質2を介して放出された光の量が、レイマーチングとして知られる方法を使用して理解される。散乱方向ωout120の点、例えば点Mi34を介して散乱された光の量を計算するために、この点Mi34のところの入射光の減衰を、最初に推定しなければならない。点Miのところの入射光の減衰の推定を、レイマーチング法を使用してやはり実行し、図3A図3B図4Aおよび図4Bに関して説明したものと同じ推論を適用して、入射光方向ωin110に沿った最適な空間細分割レベルを選択する。最初に、空間細分割の最も細かいレベル、換言すると、階層的に最も低いレベルを、方向ωin110に沿って媒質2に適用し、方向ωin110に沿った点Miのところの光減衰を、図1に関して説明したようにレイマーチング法を使用して推定する。この減衰値は、第1の基準値を表す。それから、点N0のところの光減衰を、空間細分割の階層的に最も低いレベルについて、それから、最も低いレベルの直ぐ上のレベルについて推定する。これらの値を、基準値と比較する、換言すると、これらの値が点Miのところの全減衰の中で表す部分を抽出し、点N0のところの減衰推定誤差を推測する。この誤差が第2のしきい値よりも小さい場合には、2つのうちの空間細分割の最も高いレベル(換言すると、最も少ない「ボクセル」を有するレベル)が、光減衰の良い品質推定のために十分であると考えられる。この誤差が第2のしきい値よりも大きい場合には、空間細分割の最も高いレベルが近すぎる点N0のところの減衰の推定値をもたらすので、空間細分割の最も高いレベルは選択されない。空間細分割の最も高いレベルが、より細かな空間細分割について行った推定と比較したときに第2のしきい値よりも、この点のところの減衰(またはより具体的に、点Miのところの全減衰に対するこの点のところの減衰部分)においてより小さな推定誤差をもたらすので、2つのうちの空間細分割の最も高いレベルが十分である点Niのところに達するまで、同じ操作を、点N1に関して、それからN2、それからNiについて引き続いて実行する。点N0からN2に関して、最も低いレベルの空間細分割を選択し、Miまで点Ni以降について、空間細分割のオクトリー表示のバックアップを行う階層的に連続する空間細分割の2つのレベルについて、入射光の減衰を再び推定して、空間細分割のどのレベルが、必要とされる計算の削減と第2のしきい値と比較して入射光減衰の推定値の正確さとの間の最善の妥協点を提供するかを決定する。最後に、最も細かい空間細分割レベルが入射方向N0からN2の第1の点に対して適用される瞬間が到来し、それから、階層の観点から最も低いレベルの直ぐ上の空間細分割の第2のレベルを、続く点、すなわちNiおよびNi+1に対して適用し、それから、第2のレベルの直ぐ上の空間細分割の第3のレベルを、点Miまで点Ni+1に続く点に対して適用する。
【0057】
入射光の方向ωin110に沿った空間細分割のいくつかの層の選択は、計算を最小にし、かつ入射レイωin110が横切る「ボクセル」の数を最適に削減しながら(これは濃度が変化する点の数を削減することと同じであり、計算の複雑さは、点ごとの濃度変化に直接リンクする)、例えば第3のしきい値よりも小さな最小の誤差で点Miのところの光の全減衰の推定値を保存するという利点を提供する。
【0058】
都合の良いことに、媒質2は、1個よりも多くの光源11によって照らされる。散乱方向ωout120の各点Miは、したがって、いくつかの入射レイを受け取り、点Miによって受け取られた光の量は、受け取られた基本の入射光の(換言すると、入射光の各レイについての)量の総和に対応する。点Miのところの光の減衰を計算するために、上に説明した操作を入射光の各方向について繰り返す。
【0059】
図6は、異種成分からなる関与媒質10によって散乱された光の量の推定のために適合し、1つまたはいくつかの画像のディスプレイ信号の生成のところの装置6のハードウェア実施形態を図式的に示す。装置6は、例えばパーソナルコンピュータPC、ラップトップまたはゲーム機に対応する。
【0060】
装置6は、クロック信号もまた搬送し、アドレスおよびデータのバス65によって互いに接続された下記の構成要素を含む。
【0061】
−マイクロプロセッサ61(またはCPU)、
−下記を含むグラフィックスカード62、
・いくつかのグラフィコルプロセッサユニット(Graphicole Processor Unit)(すなわちGPU)620、
・グラフィカルランダムアクセスメモリ(GRAM)621、
−ROM(リードオンリーメモリ)タイプの不揮発性メモリ66、
−ランダムアクセスメモリすなわちRAM67、
−例えば、キーボード、マウス、ウェブカメラなどの1つまたはいくつかのI/O(入力/出力)装置64、および
−電源68。
【0062】
装置6は、グラフィックスカード62に直接接続されたディスプレイ画面タイプのディスプレイ装置63をやはり含み、例えばライブである、計算され、グラフィックスカード中で合成された、特に合成した画像のディスプレイを表示する。ディスプレイ装置63をグラフィックスカード62に接続する専用のバスの使用は、はるかに大きなデータ伝送ビットレートを有し、したがってグラフィックスカードによって合成された画像を表示するための待ち時間を短縮するという利点を提供する。変形形態によれば、ディスプレイ装置は、装置6に対して外部にあり、ディスプレイ信号を伝送するケーブルによって装置6に接続される。装置6、例えばグラフィックスカード62は、例えばLCDもしくはプラズマ画面またはビデオプロジェクタなどの外部ディスプレイ手段へディスプレイ信号を伝送するように適合した伝送または接続用の手段(図6には図示せず)を含む。
【0063】
メモリ62、66および67の説明において使用する語「レジスタ」が、述べたメモリの各々で、低容量のメモリゾーン(いくつかのバイナリデータ)ならびに大容量のメモリゾーン(全体のプログラムを記憶すること、または計算したデータを表すデータのすべてもしくは一部分を表示することを可能にする)の両方で指定することに、留意する。
【0064】
スイッチを入れると、マイクロプロセッサ61は、RAM67中に含まれたプログラムの命令をロードし、実行する。
【0065】
ランダムアクセスメモリ67は、下記を特に含む、
−レジスタ670中では、装置6のスイッチを入れることに責任があるマイクロプロセッサ61のオペレーティングプログラム、
−異種成分からなる関与媒質10を表すパラメータ671(例えば、濃度の、光吸収係数の、光散乱係数のパラメータ)。
【0066】
本発明に特有な方法のステップであり、以降に説明するステップを実施するアルゴリズムを、これらのステップを実施する装置6に付随するグラフィックスカード62のメモリGRAM67中に記憶する。スイッチを入れ、媒質を表すパラメータ670が一旦RAM67中へとロードされると、グラフィックスカード62のグラフィックプロセッサ620は、これらのパラメータをGRAM621中へとロードし、例えば、HLSL(High Level Shader Language)言語またはGLSL(OpenGL Shading Language)を使用する「シェーダ(shader)」タイプのマイクロプログラムの形式でこれらのアルゴリズムの命令を実行する。
【0067】
ランダムアクセスメモリGRAM621は、特に下記を含む、
−レジスタ6210中には、媒質10を表すパラメータ、
−媒質2の異なる空間細分割レベルを表す空間細分割パラメータ6211、
−媒質2、10の点のセットについての光強度減衰値6212、
−2つの連続する階層の空間細分割レベル間の光減衰差を表す誤差情報の項目6213、および
−1つまたはいくつかのしきい値6214。
【0068】
変形形態によれば、GRAM621中の利用可能なメモリ記憶空間が不十分である場合には、パラメータ6211、値6212および6214、ならびに誤差情報の項目6213の記憶のために、RAM67の一部がCPU61によって割り当てられる。この変形形態は、しかしながら、GPUからGRAMへおよびその逆のデータの伝送にためにグラフィックスカード中で利用可能な伝送能力に対して伝送能力が一般的に劣るバス65を通過することによって、データを、グラフィックスカードからランダムアクセスメモリ67へと伝送しなければならないので、GPU中に含まれるマイクロプログラムから合成する媒質2、10の代表値を含む画像の合成においてより大きな待ち時間を生じさせる。
【0069】
もう1つの変形形態によれば、電源68が、装置6の外部にある。
【0070】
図7は、本発明の第2の非限定的な特に有利な実施形態による、装置6中に実装された異種成分からなる関与媒質10によって散乱された光の量を推定するための方法を示す。
【0071】
開始ステップ70の間に、装置6の様々なパラメータを更新する。特に、異種成分からなる関与媒質10を表すパラメータを、任意の方法で初期化する。
【0072】
それから、ステップ71の間に、媒質10を表す媒質2の1つまたはいくつかの空間細分割レベルを、1つもしくはいくつかの散乱方向ωout120(観察方向とも呼ばれる)に沿っておよび/または1つもしくはいくつかの入射光方向(光放出方向とも呼ばれる)ωin110に沿って選択する。このまたはこれらの(1つまたは複数の)細分割レベルを、2つの階層的に連続する空間細分割レベル間で媒質2中の光の減衰の差を表す情報の1つまたはいくつかの項目にしたがって、オクトリー(または2次元媒質2に対してクォータナリ(quarternary)ツリー)中に階層的に順序付けられた複数の空間細分割方向21から24の中から選択する。1つの光散乱方向ωoutに沿って、媒質2と方向ωoutとの交点を介して散乱される光の減衰を表す値を、媒質2の最も低い階層の空間細分割レベル(換言すると、媒質の最も細かい表示レベル、つまり最も多くの数の「ボクセル」を含むレベル)について推定し、この値は基準値として働く。それから、その方向の点のセット(点のこのセットはレイマーチング法の適用のために実行した散乱方向のサンプリングに対応する)のうちの第1の点を介して散乱された光の減衰を表す第1の値を、最も低い空間細分割レベルについて推定する。それから、同じ第1の点に対して、散乱された光の減衰を表す値のもう1つの推定値を、最も低いレベルの階層的に直ぐ上の空間細分割レベルについて推定する。これら2つの第1の値を基準値と比較して、媒質と方向ωoutの交点のところの全減衰の中でこの第1の点の光の減衰の(これら2つの第1の値の各々の)部分を決定する。散乱された光の全減衰の中のこれら2つの部分を比較することによって、散乱された光の減衰の計算において最も高い空間細分割レベル(より少ない「ボクセル」を含むので2つのうちの最も粗いもの)を介して引き起こされた誤差を表す誤差情報の項目を推測することが、したがって可能である。この誤差にしたがって、第1の点についての適合した空間細分割レベル、換言すると、例えば、人間の目には見えない許容可能な誤差を引き起こすもの、を選択する。これらの操作を、観察の方向に媒質2中へと進む散乱方向の各サンプリング点について点ごとに繰り返す。所与の点に対して、2つの空間細分割のうちの最も高いレベルが十分である場合には、そのレベルが続く点のすべてに対して十分であると判断する。この所与の点から、最も低いレベルの直ぐ上のレベルに対しておよびこの後者の直ぐ上のレベルについて減衰を推定し、最も高いレベルによって引き起こされるであろう誤差を推定する。これらの操作を、媒質2の終端限に達するまで観察方向ωoutのすべてのサンプリング点について繰り返す。いくつかの空間細分割層を、媒質2を介した光散乱方向に沿って都合の良いように選択する。同じ推測を、光源から受け取った光の減衰を表す第2の値を2つの階層的に連続する細分割レベルについて推定する入射光方向のサンプリング点に対して適用して、引き起こされる誤差が容認可能であると判断される入射光方向に沿った空間細分割レベルを選択する。
【0073】
変形形態によれば、図7には示していない比較ステップの間に、散乱された光の2つの第1の減衰値が計算される2つの階層的に連続する空間細分割レベルのうちの一方または他方を選択するために、散乱方向のサンプリング点を介して散乱された光を表す第1の値の比較によりもたらされる第1の誤差情報と呼ばれる誤差情報を、第1のしきい値と比較する。誤差情報の第1の項目が第1のしきい値よりも小さい場合には、第1の階層的に最も高い空間細分割レベルが選択され、これは、計算コストがより低いレベル(より低いレベルは媒質中により多くの「ボクセル」を有し、したがって媒質2の物理的な特性の、特に濃度のより大きな変動を有する)に対して発生するコストより少ないままで、最も高いレベルが、光減衰の推定の際に容認可能な誤差を結果としてもたらすことを示す。第1の誤差情報が第1のしきい値よりも大きい場合には、空間細分割の最も低い階層のレベルが選択され、これは、最も高いレベルが、光の減衰の推定の際に、例えば人間の目に見える容認できない誤差を結果としてもたらすことを示す。
【0074】
もう1つの変形形態によれば、図7には示していない比較ステップの間に、散乱した光の2つの第2の減衰値が計算される2つの階層的に連続した空間細分割レベルのうちの一方または他方を選択するために、入射光方向のサンプリング点のところで光源から受け取った光の減衰を表す第2の値の比較によりもたらされる第2の誤差情報と呼ばれる誤差情報を、第2のしきい値と比較する。誤差情報の第2の項目が第2のしきい値よりも小さい場合には、階層的に最も高い空間細分割レベルが選択され、これは、計算コストがより低いレベル(より低いレベルは媒質中により多くの「ボクセル」を有し、したがって媒質2の物理的な特性の、特に濃度のより大きな変動を有する)に対して発生するコストより少ないままで、最も高いレベルが、受け取った光減衰の推定の際に容認可能な誤差を結果としてもたらすことを示す。第2の誤差情報が第2のしきい値よりも大きい場合には、空間細分割の最も低い階層のレベルが選択され、これは、最も高いレベルが、受け取った光の減衰の推定の際に、例えば人間の目に見える容認できない誤差を結果としてもたらすことを示す。
【0075】
都合の良いことに、誤差情報の第1の項目および第2の項目は、異なる値を有する。変形形態によれば、誤差情報の第1の項目および第2の項目は、同じ値のものである。もう1つの変形形態によれば、誤差情報の第1の項目(それぞれ第2の項目)は、比較される空間細分割レベルにしたがって値を変える。
【0076】
それからステップ72の間に、媒質2を介して散乱された光の量を、あるサンプリング方法、都合の良いことにレイマーチング法を使用して推定する。都合の良いことに、散乱方向に沿った「ボクセル」ごとにサンプリング点があるように、サンプリングを選択する。変形形態によれば、細分割レベルが細かいときにより細かくなり、細分割レベルが階層的に上昇するにつれてより粗くなるような方法で、サンプリングを選択する。もう1つの変形形態によれば、サンプリングは規則的であり、換言すると、サンプリング点が規則的に間隔を空けて配置される。この最後の変形形態は、それに加えて、濃度が同じ「ボクセル」の点ごとに変化しないので計算の観点からそれほどコストがかかることはない。
【0077】
ステップ71および72は、観察者12が媒質10の周りを移動するにつれて都合の良いことに繰り返され、画像が媒質10のディスプレイを形成し、媒質10の周りの観察者12の各要素の変位に対して再合成される。変形形態によれば、媒質環境の条件が変化するとき、特に(1つまたは複数の)光源が変化するときに、ステップ71および72を繰り返す。
【0078】
当然ながら、本発明は、これまでに説明した実施形態に限定されない。
【0079】
特に、本発明は、異種成分からなる関与媒質によって散乱される光の量を推定するための方法に限定されないだけでなく、本方法を実装する任意の装置、特に少なくとも1つのGPUを含む任意の装置にやはり拡張される。散乱された光の量の入射方向および放出方向の光強度の低下の推定のために、図1から図5に関連して説明した式の実装が、シェーダタイプのマイクロプログラムにやはり限定されないだけでなく、任意のプログラムタイプ、例えばCPUタイプのマイクロプロセッサ中で実行することが可能なプログラム中に実装するように拡張される。
【0080】
本発明の使用は、ライブ利用に限定されないだけでなく、例えば、シンセシス画像のディスプレイ用の、例えばレコーディングスタジオにおけるポストプロダクション処理として知られる処理のための任意の別の利用に拡張される。ポストプロダクションにおける本発明の実施は、特に、必要な計算時間を削減しつつ、現実性の観点から優れた視覚ディスプレイを実現するという利点を提供する。
【0081】
本発明は、異種成分からなる関与媒質によって散乱される光の量を計算する2次元または3次元のビデオ画像、および結果が画像のピクセル(各ピクセルが観察方向ωoutにしたがった観察方向に対応する)を表示するために使用する光を表す情報の合成のための方法にやはり関係する。画像のピクセルの各々による表示のために計算した光の値を、観察者の様々な観察点に適合するように再計算する。
【0082】
本発明は、関与する異種成分からなる媒質を表す1つまたはいくつかの空間細分割レベルを選択するための方法にやはり関係する。
【0083】
本発明をビデオゲームアプリケーションにおいて、例えば、PCもしくは携帯型コンピュータにおいて、またはライブで画像を生成し表示する専門化したゲーム機において実行することができるプログラムを介してであろうとなかろうと、使用することができる。図6に関して説明した装置6は、キーボードおよび/またはジョイスティックなどの対話手段、やはり可能である例えば音声認識などの命令の導入のための別のモードを都合の良いことに装備する。
(付記1)
異種成分からなる関与媒質によって散乱された光の量の推定のための方法であって、
2つの連続する階層のレベルの間で少なくとも1つの方向にしたがって、前記媒質中の前記光の減衰差を表す誤差情報の少なくとも1つの項目にしたがって空間細分割の複数の階層のレベルの中から前記媒質の空間細分割の少なくとも1つのレベルを選択するステップと、
少なくとも1つの散乱方向に沿った前記媒質のサンプリングによって散乱された前記光の量を推定するステップであって、前記サンプリングは前記少なくとも1つの選択した空間細分割レベルに依存する推定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
(付記2)
前記少なくとも1つの散乱方向に沿った位置にある前記媒質の少なくとも1つの点によって散乱された前記光の減衰を表す少なくとも第1の値を推定するステップを含むことを特徴とする付記1に記載の方法。
(付記3)
前記少なくとも1つの散乱方向に沿った位置にある前記少なくとも1つの点内で前記光の少なくとも1つの放出方向にしたがって少なくとも1つの光源から受け取った前記光の前記減衰を表す少なくとも第2の値を推定するステップを含むことを特徴とする付記2に記載の方法。
(付記4)
誤差情報の前記少なくとも1つの項目は、2つの第1の値の比較によって決定され、前記2つの第1の値は前記媒質の2つの連続する階層の空間細分割レベルに対してそれぞれ推定されることを特徴とする付記2に記載の方法。
(付記5)
誤差情報の前記少なくとも1つの項目は、2つの第2の値の比較によって決定され、前記2つの第2の値は前記媒質の2つの連続する階層の空間細分割レベルに対してそれぞれ推定されることを特徴とする付記3に記載の方法。
(付記6)
前記誤差情報をしきい値と比較するステップを含むことを特徴とする付記1から5のいずれか一項に記載の方法。
(付記7)
誤差情報の前記少なくとも1つの項目が前記しきい値よりも小さい場合には、選択した前記空間細分割レベルは、最も高い階層の位置の前記レベルに対応することを特徴とする付記6に記載の方法。
図6
図7
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5