特許第5718935号(P5718935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5718935-タービンエンジン用燃焼室 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718935
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】タービンエンジン用燃焼室
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/42 20060101AFI20150423BHJP
   F23R 3/06 20060101ALI20150423BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   F23R3/42 A
   F23R3/06
   F02C7/00 D
   F02C7/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-542597(P2012-542597)
(86)(22)【出願日】2010年12月2日
(65)【公表番号】特表2013-513777(P2013-513777A)
(43)【公表日】2013年4月22日
(86)【国際出願番号】FR2010052600
(87)【国際公開番号】WO2011070273
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2013年11月19日
(31)【優先権主張番号】0906009
(32)【優先日】2009年12月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルドウー,カロリーヌ・ジヤクリーヌ・ドウニーズ
(72)【発明者】
【氏名】カメリアーノ,ロラン・ベルナール
【審査官】 寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0124572(US,A1)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02659982(CA,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/42−60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状室の端壁(5)によって互いに接続された周回体を形成する内側環状壁および外側環状壁(3、4)を備える、タービンエンジン用の燃焼室(1)であって、その内壁(3)が、前記壁(3)の長手方向軸に沿ってかつ円周方向に変わる厚さ(e1、e2)および/または性質を有、一方でその外側環状壁(4)は、ほぼ一定である厚さを有することを特徴とする、燃焼室(1)。
【請求項2】
の内壁が、より大きい厚さ(e1)のものである大きい温度勾配を有する少なくとも1つの高温ゾーン(23、22)と、より小さい厚さ(e2)のものであるより小さい温度勾配の少なくとも1つの低温ゾーン(21、20)とを有することを特徴とする、請求項1に記載の燃焼室(1)。
【請求項3】
の内壁が、異なる材料から作製された少なくとも2つの隣接するゾーンを有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の燃焼室(1)。
【請求項4】
厚さが変わるその内壁が、機械加工によって作製されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃焼室(1)。
【請求項5】
厚さが変わるその内壁が、金属板を伸張させ、成形することによって作製されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃焼室(1)。
【請求項6】
その内壁の厚さ(e1、e2)および/または性質が変わるゾーンが、噴射装置(12)間に位置するゾーンと、一次空気および希釈空気の穴(16、18;17、19)を含むゾーンと、環状の締め付けフランジ(6、7)を含むゾーンと、多数の穿孔を含むゾーンとを含む群の1つのゾーン形成部分を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の燃焼室(1)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の燃焼室(1)を含む、タービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機ターボプロップまたはターボジェットなどのタービンエンジン用の燃焼室に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような燃焼室は、一方が他方の内側を延び、その上流側端部において、空気供給開口部および燃料を送出するための手段、特に噴射装置によって構成された手段を含む環状室の端壁によって互いに接続される、周回体を形成する同軸の壁を有する。
【0003】
燃焼室の内壁および外壁は、一次空気および希釈空気のための入口オリフィスと、冷却用空気を通すための多数の穿孔を有するゾーンとを有する。
【0004】
極限温度に対してより良好に耐えるために、燃焼室の壁上に熱障壁を取り付けることが知られており、そのような障壁は、当該の壁に対して付着された材料の追加の厚さの形態のものである。
【0005】
特開平06−167245号公報は、内側壁が、一定でありかつ可変厚さの熱障壁としてカバーされた厚さを有する燃焼室を記載している。
【0006】
熱障壁を使用することは、環状室が高温に耐える能力を高めるが、その重量も増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−167245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
市場の要求事項を満足させるために、燃焼室の重量を低減させることが必要である。そうではあるが、燃焼室の寿命は短縮されてはならない。特に、壁は、クリープによって損傷を受けることに耐えるように寸法設定されなければならない。「クリープ」という用語は、十分な期間にわたってかけられた一定の応力によって材料がさらされる不可逆的変形を示すために使用される。この変形は、燃焼室の壁がさらされる高温によってさらに悪化される。
【0009】
本発明の特定の目的は、この問題に対して、簡単で効果的、かつ安価な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的のために、本発明は、環状室の端壁によって互いに接続された周回体を形成する内側環状壁および外側環状壁を備える、航空機ターボプロップまたはターボジェットなどのタービンエンジン用の燃焼室であって、その内壁が、前記壁の長手方向軸に沿ってかつ円周方向に変わる厚さおよび/または性質を有する単一厚さの材料によって構成され、一方でその外側環状壁は、ほぼ一定である厚さを有することを特徴とする、燃焼室を提供する。
【0011】
本発明は、燃焼室の壁を構成する材料の厚さおよび/または性質を局所的に変更することによって、熱障壁を使用することなく、また重量を増大させることなく、燃焼室が極限の温度に耐える能力を高めることを可能にする。
【0012】
外側環状壁は、概して、内側環状壁ほど高温でなく、したがってその構造のいかなる特定の適合も必要としない。
【0013】
本発明の実施形態では、単一厚さの材料によって構成された燃焼室の内壁は、より大きい厚さのものである大きい温度勾配を有する少なくとも1つの「高温」ゾーンと、より小さい厚さのものである小さい温度勾配の少なくとも1つの「低温」ゾーンとを有する。
【0014】
「高温ゾーン」は最大の温度勾配にさらされるゾーンであるため、これらの厚さを増大させることが有利である。
【0015】
本発明の別の特性によれば、単一厚さの材料として構成された燃焼室の内壁は、異なる材料から作製された少なくとも2つの隣接するゾーンを有する。
【0016】
上記で述べられたように、最高温度を有するゾーンまたは最大の温度勾配にさらされるゾーンでは、これらの状態により良好に耐える材料を使用することが局所的に可能であり、より低い温度のものであり、または小さい温度勾配にさらされるゾーンでは、これらの状態にそれほど良好には耐えないが、重量がより軽い材料を使用することが局所的に可能である。
【0017】
好ましくは、可変厚さの燃焼室の内壁は、機械加工によって作製される。
【0018】
機械加工は、燃焼室を作製するために従来使用されている金属板の成形によって得られ得るものより小さい寸法許容差を得ることを可能にする。
【0019】
さらに、機械加工は、内壁の厚さを長手方向軸に沿ってかつ円周方向に変えることを可能にする。
【0020】
一変形形態では、可変厚さの燃焼室の内壁は、金属板を伸張させ、成形することによって作製される。
【0021】
この方法は機械加工より簡単かつ安価なものである。
【0022】
燃焼室の内壁の可変厚さおよび/または可変性質のゾーンは、噴射装置間に位置するゾーンと、一次空気および希釈空気の穴を含むゾーンと、環状締め付けフランジを含むゾーンと、多数の穿孔を含むゾーンとを含む群の1つのゾーン成形部分を含む。
【0023】
本発明はまた、上記で説明されたタイプの燃焼室を含む、航空機ターボプロップまたはターボジェットなどのタービンエンジンも提供する。
【0024】
本発明は、非限定的な例を用いて添付の図を参照してなされる以下の説明を読み取ることにより、より良好に理解されることが可能であり、本発明の他の詳細、特性、および利点は明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】タービンエンジンの環状燃焼室の半分の軸方向断面における概略図である。
図2図1の燃焼室の一部分の斜視図である。
図3図1の燃焼室の内側環状壁の断面の形態の、本発明の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および図2に示されるように、タービンエンジンの環状燃焼室1は、圧縮機(図示せず)の出口にそれ自体位置するディフューザ2の出口に配置され、周回体を構成する内側環状壁3および外側環状壁4を備え、この内側環状壁3および外側環状壁4は、上流側端部において環状室の端壁5によって接続され、その下流側端部は、ディフューザ2の内側の円錐台形シュラウド8および燃焼室1の外側ケーシング9の一方の端部に、それぞれ内側環状フランジ6および外側環状フランジ7によって締め付けされ、ケーシング9の上流側端部は、外側の円錐台形シュラウド10によってディフューザ2に接続されている。
【0027】
環状室の端壁5は、ディフューザ2からの空気が通り抜ける開口部11(図2)を有し、この開口部11は、外側ケーシング9に締め付けられ、環状室の長手方向軸の周りの円周上に規則的に分散された燃料噴射装置12を取り付ける役割を果たす。各噴射装置12は、環状壁5内の開口部11内で心出しされ、開口部11の軸に沿って延びる燃料噴射装置ヘッド13を備える。
【0028】
圧縮機によって送出され、ディフューザ2を離れた空気流の一部は開口部11を通り抜け、燃焼室に供給し、一方で空気流の残りの部分は、燃焼室を過ぎて延びる内側の環状チャネル14および外側の環状チャネル15に供給される。
【0029】
内側チャネル14が、ディフューザ2の内側シュラウド8と燃焼室の内壁3との間に形成され、このチャネルに沿って通過する空気は、内壁3内の一次空気用および希釈空気用のためのオリフィス16および17(図2)を介して燃焼室内に浸透する流れと、燃焼室1の下流側に位置する構成要素(図示せず)を冷却する目的で燃焼室1の内側フランジ6内の穴を通り抜ける流れとの間で共有される。
【0030】
外側チャネル15は、燃焼室1の外側ケーシング9と外壁4の間に形成され、このチャネルに沿って通過する空気は、外壁4内の一次空気用および希釈空気用のためのオリフィス18および19(図2)を介して燃焼室内に浸透する流れと、下流側に位置する構成要素を冷却するために外側フランジ7内の穴を通り抜ける流れとの間で共有される。
【0031】
一次空気の入口オリフィス16および18は、内壁3および外壁4それぞれの円周の周りに規則的に分散され、室1の軸上で心出しされ、希釈空気の入口オリフィス17および19は、内壁3および外壁4それぞれの円周上に規則的に分散され、オリフィス16および18の下流側の、室1の軸上で心出しされる。
【0032】
内側環状壁3および外側環状壁4はまた、冷却用空気を通過させるための微小穿孔(図示せず)も含む。
【0033】
作動においては、外側環状壁4および内側環状壁3は、異なる温度を有するゾーンを有し、この温度の不均一性は、互いに異なって影が付けられたゾーン20、21、22、および23の形態で図2に概略的に示されている。
【0034】
この現象は特に内側環状壁3に関するものである。これらの温度ゾーンには、温度が上昇するに従って大きくなる番号が与えられる。したがってゾーン20は、最小の温度勾配にさらされる比較的「低温」のゾーンであり、一方でゾーン23は、最大の温度勾配にさらされる、「高温」のゾーンである。ゾーンのこの分布は、単に例として挙げられており、詳細には燃焼室1の具体的な構造に起因するものである。
【0035】
さまざまなゾーン20から23の存在および場所は、計算によるシミュレーションによって、または燃焼室が作動状態になってから、温度に応じて局所的に色が変化するような温度に反応する塗料を塗布することによって明らかになり得る。
【0036】
本発明によれば、内壁3は、前記壁の長手方向軸に沿っておよび/または円周方向に沿って変わる厚さおよび/または性質を有する単一厚さの材料によって構成される。
【0037】
図に示される実施形態では、異なる温度のゾーン20から23を有する内壁の厚さが、局所的に変えられる。
【0038】
したがって、図3に示されるように、内側環状壁3は、単一厚さの材料として作製され、これは、より大きい厚さe1(図3を参照)のゾーン、たとえばゾーン22および23と、より小さい厚さe2のゾーン、たとえばゾーン20および21とを有する。
【0039】
より厚いゾ−ンは、作動時、高温、たとえば約1000°Cの温度にさらされるものである。これらのゾーンは、1ミリメートル(mm)から2mmの範囲にある厚さe1、好ましくは約1.5mmである厚さを有する。反対に、より薄いゾーンは、作動時、より低い温度にさらされるゾーンである。これらのゾーンは、0.5mmから1mmの範囲内に位置する厚さe2を有し、これらは好ましくは約1mmの厚さである。
【0040】
外側環状壁4は、1mmから1.5mmの範囲内にあり、好ましくは約1.2mmである、ほぼ一定の厚さを有する。
【0041】
例として言えば、周回体を形成する壁が1.5mmの一定の厚さを有する従来技術の燃焼室を基点として、より軽い重量のものであり、1.2mmの厚さを備えた外壁と、高温ゾーンでは1.5mmの厚さおよびより低温ゾーンでは1mmの厚さを有する内壁とを有する燃焼室であって、その重量が、すべての壁が1.2mmに等しい一定の厚さの有する燃焼室の重量と同じものである、燃焼室を作り出すことがこうして可能である。
【0042】
本発明の燃焼室、特に厚さが変わるその内壁3は、機械加工によって作製される。
【0043】
あるいは、厚さが変わる内壁3は、金属板を伸張し、成形することによって作製される。
【0044】
図に示されない実施形態では、厚さが変わるゾーンは、最高温ゾーン内の高温に耐える材料から作製されたゾーンと、そのような高温には耐えないが、より低温ゾーンでは重量がより軽くなる材料から作製されたゾーンとを含むように、異なる性質のゾーンによって置き換えられても、またはこれらを含んでもよい。
【0045】
同様に、異なる性質のゾーンは、割れの形成を回避するように作用することができ、このとき材料は、最初にけん引応力がかけられるゾーン、すなわち割れが始まり得るゾーンが、連続的なゾーンの挙動の結果、実際には圧縮応力がかけられるように局所的に変更される。
【0046】
これらの実施形態の各々は、燃焼室の重量を低減しながら、高温に耐えるその能力、したがってその寿命を向上させることを可能にする。
【0047】
内壁3の厚さおよび/または性質が変わるゾーンは、特に、噴射装置12間に位置するゾーン、一次空気および希釈空気の穴16および17を含むゾーン、環状締め付けフランジ6を含むゾーン、および多数の穿孔を含むゾーンである。
図1
図2
図3