(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外部の空気を取り入れるためのガス供給口と、前記ガス供給口から取り入れた空気を排出するためのガス排出口と、前記ガス供給口と前記ガス排出口とをつなぐガス流通路とを備え、複数のガスセンサを有する可搬式ガス警報器に接続可能なガス供給アダプタであって、
前記ガス流通路は、主流通路と副流通路とを含み、
前記主流通路は、前記複数のガスセンサのうち少なくとも1つの第1ガスセンサのガス接触面に対して略平行に延びると共に前記ガス接触面と共にガス流通路を形成する部分を有し、
前記副流通路は、前記第1ガスセンサ以外の少なくとも1つの第2ガスセンサのガス接触面に対してガスを通気させ、前記副流通路の端面が前記少なくとも1つの第2ガスセンサのガス接触面に臨むように、前記主流通路のうち前記第2ガスセンサのガス接触面に対して略平行に延びる部分において分岐されている、ガス供給アダプタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ガス供給アダプタでは、ガス流通路を屈曲させており、なお且つ主ガス流通路及び分岐ガス流通路を設けるという複雑な構造を有するため、そのスペースを確保するためにガス供給アダプタの大型化を招いており、さらにガス流通路の容積が大きいためにガスの置換効率が低く改善する余地が残されていた。
また、ガスセンサの種類によっては、供給される風量によって検知するガス濃度が変わるものがある。そのため、風量によらず、安定して精度の良い検知結果を得るようにすることが重要であるが、上記ガス供給アダプタは、このような課題を十分にクリアできるものではなかった。
本発明の目的は、装置の小型化とガスの置換効率を向上させることが可能であり、またガスセンサが風量によらず安定して精度良く検知し得るようにするガス供給アダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1特徴構成は、外部の空気を取り入れるためのガス供給口と、前記ガス供給口から取り入れた空気を排出するためのガス排出口と、前記ガス供給口と前記ガス排出口とをつなぐガス流通路とを備え、複数のガスセンサを有する可搬式ガス警報器に接続可能なガス供給アダプタであって、前記ガス流通路は、主流通路と副流通路とを含み、前記主流通路は、前記複数のガスセンサのうち少なくとも1つの第1ガスセンサ
のガス接触面に対して略平行に延びると共に前記ガス接触面と共にガス流通路を形成する部分を有し、前記副流通路は、
前記第1ガスセンサ以外の少なくとも1つの第2ガスセンサのガス接触面に対してガスを通気させ、前記副流通路の端面が前記少なくとも1つの第2ガスセンサのガス接触面に臨むように、前記主流通路
のうち前記第2ガスセンサのガス接触面に対して略平行に延びる部分において分岐されて
いる点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
本構成のごとく、第1ガスセンサに対して空気を直接供給するようにすれば、ガス流通路の構造を簡素化することができる。その結果、ガス流通路のスペースを削減してガス供給アダプタを小型化することができるだけでなく、ガス流通路の容積が小さくなるため、ガスの置換効率を向上させることができる。
さらに、本構成のごとく、第2ガスセンサに対して空気を拡散させて供給するようにすれば、取り入れた空気の風量によらず、一定の量の空気をガスセンサに供給することができるようになるため、安定して精度の良い検知結果を得ることができる。
即ち、本構成によれば、ガスセンサの種類に応じて、それらの個々のガスセンサに最も適した形態のガス流通路を設けることで、装置の小型化や、検知精度の向上を図ることができる。
【0007】
第2特徴構成は、前記副流通路は、前記主流通路と比較してより大きい断面積を有する点にある。
第3特徴構成は、前記副流通路は、前記主流通路に対して略垂直方向における空間を形成するように前記主流通路から分岐される点にある。
第4特徴構成は、前記副流通路は、前記主流通路を通過する空気の流速を低減させて前記第2ガスセンサに供給する点にある。
【0008】
第5特徴構成は、前記主流通路は、前記第1ガスセンサ
のガス接触面に対してほぼ垂直に空気を供給する部分をさらに有し、前記ほぼ垂直に空気を供給する部分から、前記第1ガスセンサのガス接触面と隣接する部分へ空気を供給するように形成される点にある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るガス供給アダプタ1を可搬式のガス警報器2に取り付けた状態を示す。尚、本明細書においては、
図1における、X軸方向を「幅方向」、Y軸方向を「上下方向」、Z軸方向を「前後方向」という。
【0011】
(ガス警報器)
図2に示すように、ガス警報器2は、横断面が長方形の矩形筐体をなすメインハウジング3、4つのガスセンサS1〜S4、センサハウジング7、センサパッキン9、防塵防水用フィルタ10、及びメインハウジング3の下端に外嵌されるセンサカバー6を備えて構成される。
【0012】
図3に示すように、メインハウジング3の内部には、警報報知機構としてのスピーカ4、電源ユニットとしての乾電池5、及び互いに異なる種類のガスを検知する4つのガスセンサS1〜S4等を備える。
【0013】
図3に示すように、4つのガスセンサS1〜S4は、メインハウジング3の下端部分において幅方向に並列配置されており、ガスセンサS1〜S4のそれぞれは、酸素(O
2)、可燃性ガス(COMB)、硫化水素(H
2S)、及び、一酸化炭素(CO)を検知する。尚、ガスセンサの種類や数、及びその配置順序については、本実施形態に限定されるものではなく、後述するガス流通路25の構成や、検知対象とするガスの種類等に応じて適
宜変更しても良い。
【0014】
ガスセンサS1〜S4のそれぞれは、センサハウジング7の4つの円筒状の収容部8に収容されており、センサハウジング7の下端にセンサパッキン9を設け、センサパッキン9とセンサカバー6との間に、防塵防水用フィルタ10が介装されている。
【0015】
図2に示すように、センサカバー6には、上下方向に貫通する円形のガス通過用孔Hが、幅方向に並列した状態で設けられている。
【0016】
(ガス供給アダプタ)
図2に示すように、ガス供給アダプタ1は、アダプタカバー20と、アダプタケース30とを備えて構成されている。
【0017】
図2〜
図4に示すように、アダプタカバー20は、横断面が長方形であって有底の筒状体であり、その下端側に底部21が設けられている。
【0018】
図3及び
図4に示すように、底部21の上方にガス警報器2の下端部分を収容する収容空間Bが形成されている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、アダプタカバー20の左右の側面には、その先端が幅方向中央に向けて付勢された抜け止め用の爪部材22が設けられている。爪部材22の末端部分の外周には、爪部材22に対して予期せぬ衝撃が加えられて、爪部材22の係合がはずれるのを防止するために、保護カバー24を設けてある。
【0020】
ガス警報器2にガス供給アダプタ1を装着する場合、ガス警報器2の下端部分をアダプタカバー20の収容空間Bに上方から押しこむようにして嵌め込む。すると、2つの爪部材22の先端のそれぞれが、ガス警報器2の下端部の左右の側面に設けられた起立片23を乗り越えるようにして上方から係合することによって、ガス警報器2の抜け止めがなされる。
【0021】
保護カバー24は、上下方向にスライド移動させることができ、保護カバー24を上方に移動させると爪部材22の末端部分を内側に押し込むことができなくなり、保護カバー24を下方に移動させると爪部材22の末端部分を内側へ押し込むことができるように構成されている。
【0022】
保護カバー24が上方に位置する状態では、爪部材22に対してなんらかの衝撃が加えられたとしても、爪部材22の末端部分が内側に移動しないため、爪部材22の先端が外側に動くことはなく、したがって爪部材22の係合がはずれることはない。
【0023】
またガス供給アダプタ1を取り外す場合は、保護カバー24を下方に移動させた後、保護カバー24及び爪部材22の末端部分を一緒に内側へ押し込めば良い。これにより、爪部材22の先端が外側へ移動して、ガス警報器2の起立片23を乗り越えるため、ガス警報器2からガス供給アダプタ1を取り外すことができる。
【0024】
図2、
図4及び
図5に示すように、底部21には、平面視で円形の上方に突出する突出部T1〜T4が幅方向に並列配置されている。各突出部T1〜T4の外周には、環状溝Nが形成されており、それらの環状溝NにOリングRが装着されている。
【0025】
図4及び
図5に示すように、突出部T1の左右の側面のそれぞれには、上下方向に貫通する第1貫通孔P1及び第2貫通孔P2が形成されており、突出部T2の左右の側面のそれぞれにも、上下方向に貫通する第3貫通孔P3及び第4貫通孔P4が形成されている。
【0026】
また、突出部T3及びT4のそれぞれには、平面視で長方形の上下方向に貫通する第1貫通空間D1及び第2貫通空間D2が形成されている。
図5に示すように、第1貫通空間D1の前後には、平面視で半円の2つの壁W1,W2が設けられており、第2貫通空間D2の前後にも平面視で半円の2つの壁W3,W4が設けられている。
【0027】
図6に示すように、アダプタケース30は、平面視で長方形の板状体で構成される。
図3に示すように、アダプタケース30の紙面右端側の下面から下方に延びる第1延長部31には、紙面右側に開口するガス供給口32が形成されており、第1延長部31よりも幅方向中央側の位置で下方に延びる第2延長部33には、紙面左側に開口するガス排出口34が形成されている。ガス供給口32には供給用プラグ35が装着されており、ガス排出口34には排出用プラグ37が装着されている。
【0028】
図6に示すように、アダプタケース30の上面の紙面右端側には、ガス供給口32に通じる第1開口部38が設けられている。第1開口部38の外周には、溝M1が形成されており、その溝M1に小パッキンC1が装着されている。
【0029】
またアダプタケース30の上面には、平面視でコの字型の第1流路39が形成されており、第1流路39の内側に幅方向に延びる直線状の第2流路40が形成されている。第2流路40の紙面右端には、ガス排出口34に通じる第2開口部41が設けられている。
【0030】
第1流路39及び第2流路40のそれぞれ外周には、溝M2,M3が形成されており、それら溝M2,M3のそれぞれに中パッキンC2及び大パッキンC3が装着されている。
【0031】
図2及び
図3に示すように、アダプタケース30を、その第1流路39及び第2流路40を備える側の面を上にし、且つ第1開口部38が突出部T1の第1貫通孔P1の真下に位置するような状態で、アダプタカバー20の下端に設けてある環状の縁26を、アダプタケース30の外周に設けてある環状溝36に嵌合させつつ、アダプタケース30を底部21の下面に当て付ける。そして、アダプタカバー20及びアダプタケース30の縁部に形成された複数のネジ孔にネジ42(
図4参照)を螺入して固定する。
【0032】
これにより、アダプタケース30の小パッキンC1、中パッキンC2、大パッキンC3のそれぞれが底部21の下面に密着すると共に、ガス供給口32とガス排出口34とをつなぐガス流通路25が形成される。
【0033】
ここで、ガス流通路25は、底部21における突出部T1の第1及び第2貫通孔P1,P2、突出部T2の第1貫通空間D1、突出部T3の第2貫通空間D2、突出部T4の第3及び第4貫通孔P3,P4、並びに、アダプタケース30における第1及び第2流路39,40を備えて構成される。
【0034】
即ち、
図4に示すように、ガス流通路25は、ガス供給口32と突出部T1の第1貫通孔P1とが連通し、突出部T1の第2貫通孔P2とアダプタケース30の第1流路39の端部39aとが連通し、突出部T2の第3貫通孔P3とアダプタケース30の第1流路39の端部39bとが連通し、突出部T2の第4貫通孔P4と第2流路40の端部40aとが連通し、突出部T3の第1貫通空間D1と第2流路40とが連通し、そして、突出部T4の第2貫通空間D2と第2流路40とが連通することにより形成される。
【0035】
(ガス流通路における空気の流れ)
以下、
図3〜
図6に基づいて、ガス流通路25における空気の流れについて説明する。尚、
図3及び
図4において実線で示した矢印は、空気の流れを示すものである。
図3に示すように、ガス警報器2にガス供給アダプタ1を装着すると、底部21の突出部T1〜T4のそれぞれの先端部分が、センサカバー6の対応する4つのガス通過用孔Hの中に配置されて、防塵防水用フィルタ10と当接する。このとき、底部21のOリングRのそれぞれが、対応するガス通過用孔Hの周縁部(センサカバー6の下面)と密着した状態となる。そして、底部21の突出部T1〜T4のそれぞれの上方に、ガスセンサS1〜S4が配置される。
【0036】
この状態において、例えば図示しない公知のガス吸引ポンプ装置を、図示しない接続チューブを介してガス供給アダプタ1の供給用プラグ35に接続して、当該ガス吸引ポンプ装置によって外部の空気を吸引する。
【0037】
図3及び
図4に示すように、吸引された空気は、供給用プラグ35からガス供給口32を通って、底部21の突出部T1の第1貫通孔P1からガスセンサS1に向けて直接的に供給される。即ち、第1貫通孔P1が、空気中の酸素(O
2)を検知するガスセンサS1に対して空気を直接供給するガス供給路を構成する。
【0038】
次いで、ガスセンサS1に供給された空気は、防塵防水用フィルタ10とガスセンサS1との間のセンサパッキン9内に形成された流路を通り、次いで底部21の突出部T1の第2貫通孔P2を通って、アダプタケース30の第1流路39の端部39aに到達する。
【0039】
そして、空気は、第1流路39の端部39aから端部39bへと流れて、底部21の突出部T2の第3貫通孔P3からガスセンサS2に向けて直接的に供給される。即ち、第3貫通孔P3が、空気中の可燃性ガス(COMB)を検知するガスセンサS2に対して空気を直接供給するガス供給路を構成する。
【0040】
次いで、ガスセンサS2に供給された空気は、底部21の突出部T2の第4貫通孔P4を通って、アダプタケース30の第2流路40の端部40aに到達する。端部40aに到達した空気は、第2流路40に沿って流れて、突出部T3の第1貫通空間D1に到達する。
【0041】
第2流路40は、ガスセンサS3のガス接触面に対して平行に設けられているため、第1貫通空間D1に到達した空気は、ガスセンサS3に対して直接的には供給されず、第1貫通空間D1を拡散して供給される。即ち、第1貫通空間D1は、空気中の硫化水素(H
2S)を検知するガスセンサS3に対して、取り入れた空気を拡散させて供給する空間を構成する。
【0042】
次いで、第1貫通空間D1を通過した空気は、第2流路40に沿ってさらに流れて、突出部T4の第2貫通空間D2に到達する。第2流路40がガスセンサS4のガス接触面に対して平行に設けられているため、この第2貫通空間D2においても、前記第1貫通空間D1のときと同様に、空気はガスセンサS4に対して直接的には供給されず、第2貫通空間D2を拡散して供給される。即ち、第2貫通空間D2は、空気中の一酸化炭素(CO)を検知するガスセンサS4に対して、取り入れた空気を拡散させて供給する空間を構成する。
【0043】
第2貫通空間D2を通過した空気は、第2流路40に沿ってさらに流れて、第2開口部41に到達し、ガス排出口34を通過して排出用プラグ37から外部に排出される。
【0044】
図5及び
図6に示すように、本実施形態においては、突出部T3の第1貫通空間D1の前後幅L1と、突出部T4の第2貫通空間D2の前後幅L2と、第2流路40の幅L3とは略同じ大きさに設定され(L1≒L2≒L3)、尚且つ突出部T3の第1貫通空間D1及び突出部T4の第2貫通空間D2は、第2流路40の真上に配置される。
【0045】
前後幅L1,L2を、幅L3よりも大きく設定してしまうと、第1及び第2貫通空間D2の容積が大きくなるため、ガスの拡散速度が遅くなりガスセンサの感度の低下をもたらす。また逆に、前後幅L1,L2を、幅L3よりも小さく設定してしまうと、ガスの拡散速度は変わらないが、単位時間当たりに供給されるガスの量が低下するため、この場合もガスセンサの感度の低下をもたらすためである。
【0046】
上記構成のガス供給アダプタ1を備えるガス警報器2では、ガスセンサS1〜S4が、ガス流通路25を流れる空気中に含まれるそれぞれの検知対象ガス(酸素(O
2)、可燃性ガス(COMB)、硫化水素(H
2S)、及び、一酸化炭素(CO))を検知する。そして、それらの検知対象ガスの濃度が設定された基準値を超えたときに警報動作信号が生成されて、スピーカ4が発動してブザー音などの警報が発せられる。
【0047】
〔その他の実施形態〕
前述の実施形態は、ガス供給アダプタ1が、空気を直接供給するガス供給路(第1貫通孔P1及び第3貫通孔P3)、及び取り入れた空気を拡散させてガスセンサに供給する空間(第1貫通空間D1及び第2貫通空間D2)の両方を備えるものであるが、この構成に限定されるものではなく、使用するガスセンサに応じて、空気を直接供給するガス供給路のみを備える構成や、空気を拡散させてガスセンサに供給する空間のみを備える構成としても良い。