特許第5719036号(P5719036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719036
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/217 20110101AFI20150423BHJP
   B60R 21/2346 20110101ALI20150423BHJP
   B60R 21/264 20060101ALI20150423BHJP
   B60R 21/26 20110101ALI20150423BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20150423BHJP
【FI】
   B60R21/217
   B60R21/231 500
   B60R21/264
   B60R21/26 100
   B60R21/213
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-550264(P2013-550264)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2012082577
(87)【国際公開番号】WO2013094545
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-276611(P2011-276611)
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 亮平
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−292348(JP,A)
【文献】 特表2009−515775(JP,A)
【文献】 特開2001−163143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張展開用ガスを供給するインフレータと、
前記インフレータが挿入される挿入口を有し、該インフレータからの膨張展開用ガスによって膨張展開するエアバッグと、
前記インフレータのガス噴出口の一部を覆うように前記エアバッグ内に配置され、該ガス噴出口から噴出される前記膨張展開用ガスを整流する布製のディフレクタと、
を備え、
前記ディフレクタは、
前記インフレータに面し、該インフレータから噴出する前記膨張展開用ガスが該ディフレクタに最初に衝突する部分に設けられる金属製のメッシュを備えていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記金属製のメッシュの前記インフレータに面する側には、その面を被覆するカバーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記膨張展開用ガスで溶融することを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記カバーには、少なくとも前記金属製のメッシュの一部が露出している開口部を備えることを特徴とする請求項2または3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記カバーは、前記布製のディフレクタと同じ材質で形成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ディフレクタは、前記エアバッグに支持され、該ディフレクタの基体となる布製のソックを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグはカーテンエアバッグであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
膨張展開用ガスを供給するインフレータと、
前記インフレータが挿入される挿入口を有し、該インフレータからの膨張展開用ガスによって膨張展開するエアバッグと、
前記インフレータのガス噴出口を被覆するように前記エアバッグ内に配置され、該ガス噴出口から噴出される前記膨張展開用ガスを整流するディフレクタと、
を備え、
前記ディフレクタは、
前記エアバッグに支持され、該ディフレクタの基体となる布製のソックと、
前記ソックの前記インフレータ側の面のうち、少なくとも前記ガス噴出口の周囲の領域に設けられる金属製のメッシュと、
を有することを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における事故発生時に膨張展開して乗員を保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置には、折り畳みや巻回等によって小さくまとめられた状態のエアバッグが収容されていて、事故発生時にインフレータ(ガス発生器)から供給される膨張展開用ガスによってかかるエアバッグが膨張展開する。エアバッグ装置(エアバッグ)には設置箇所や用途に応じて様々な種類があり、例えばドア上方に設置されるカーテンエアバッグは、側面衝突によってロールオーバが発生した際に、乗員の頭部が窓に衝突したり乗員が窓から放り出されたりするのを防止している。
【0003】
エアバッグ装置には、インフレータからエアバッグに供給される膨張展開用ガスの整流を目的としてディフレクタ(ディフューザとも称される。)が設けられている。またディフレクタは、膨張展開用ガスによるエアバッグの損傷を防ぐ役割も担っている。例えば特許文献1では、ガス発生器(インフレータ)を包囲する管状のディフューザを備え、それらの両方がガスバッグ(エアバッグ)の内部に配置されたガスバッグ保護装置(エアバッグ装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−40182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディフレクタは一般に金属板を加工して形成される。これは、インフレータから噴出される高温且つ高圧(流速の速い)膨張展開用ガスに対して高い強度(熱遮断性、耐火性)を確保し、エアバッグを好適に保護するためである。しかしながら、金属板は重量が重いため、ディフレクタひいてはエアバッグ装置の重量が増大しがちである。また金属板は柔軟性に乏しいため変形しづらく、エアバッグ装置の小型化を阻害する要因となっていた。このような課題を解決するために、近年では布製のディフレクタも提案されているが、膨張展開用ガスに対する強度を確保するためには布を、例えば10枚前後にするなど、何重にも重ね合わせなくてはならない。このため、結局のところエアバッグ装置の軽量化や小型化に対する効果は乏しい。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、膨張展開用ガスに対して高い強度を確保しながらも、ディフレクタひいては装置全体の軽量化および小型化を達成することが可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるエアバッグ装置の代表的な構成は、膨張展開用ガスを供給するインフレータと、インフレータが挿入される挿入口を有し、インフレータからの膨張展開用ガスによって膨張展開するエアバッグと、インフレータのガス噴出口の一部を覆うようにエアバッグ内に配置され、ガス噴出口から噴出される膨張展開用ガスを整流する布製のディフレクタと、を備え、ディフレクタは、インフレータに面し、インフレータから噴出する膨張展開用ガスがディフレクタに最初に衝突する部分に設けられる金属製のメッシュを備えていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ディフレクタにおいて、インフレータから噴出する膨張展開用ガスが最初に衝突する領域では、そこに設けられた金属製のメッシュにより、従来の金属板と同様に膨張展開用ガスに対して高い強度を確保することができる。特にメッシュ状であると、単なる金属板を用いた場合に比して、膨張展開用ガスとの接触面積が増大するため熱吸収効率を高めることができ、優れた熱遮断性を得ることが可能である。しかもメッシュは金属板よりも軽量である。このため、上記構成によれば、膨張展開用ガスに対して高い強度を確保しつつ、ディフレクタひいては装置全体の軽量化および小型化を達成可能である。
【0009】
またメッシュは、金属板と異なり柔軟性を有するためエアバッグに追従可能である。これにより、エアバッグを折り畳んだり巻き回したりする際にディフレクタも同様に折り畳まれたり巻き回されるたりするため、ディフレクタが嵩張ることがない。したがって、エアバッグ装置の小型化を図ることが可能となる。
【0010】
更に、メッシュは、膨張展開用ガスに含まれる残渣(ミストとも称される)を吸着し、取り除くことが可能である。一般にインフレータの内部にはフィルタが設けられていて、通常はこのフィルタによって大部分の残渣が除去されるが、除去しきれなかった残渣がエアバッグの展開時や展開後の収縮時に出てくることがある。そこで上述したように膨張展開用ガスが最初に衝突する領域にメッシュを設けることにより、フィルタにて除去しきれなかった残渣がかかるメッシュの細かい隙間に捕捉される。これにより、高温の膨張展開用ガスによるディフレクタへのダメージを抑制しつつ、エアバッグの展開時や展開後の収縮時に発生する残渣の量を減少させることが可能となる。
【0011】
上記金属製のメッシュのインフレータに面する側には、その面を被覆するカバーが設けられているとよい。これにより、ディフレクタとカバーとの間に金属製のメッシュを容易に収容することでき、ディフレクタに直接縫い付けることなくメッシュを設けることが可能となる。
【0012】
上記カバーは、膨張展開用ガスで溶融するとよい。また上記カバーには、少なくとも金属製のメッシュの一部が露出している開口部を備えるとよい。これにより、インフレータに面する側において、メッシュが露出しやすくなる、またはメッシュが一部露出した状態となるため、上述した膨張展開用ガスに含まれる残渣の捕捉効果を高めることが可能となる。また上記カバーは、布製のディフレクタと同じ材質で形成されているとよい。これにより、資材を統一し、コストの削減を図ることが可能である。
【0013】
上記ディフレクタは、エアバッグに支持され、ディフレクタの基体となる布製のソックを備えているとよい。上述したように、膨張展開用ガスが最初に衝突する領域にメッシュを設けることにより、その領域において膨張展開用ガスに対する高い強度が確保される。したがって、ディフレクタにおいて、その領域以外の部分を布製のソックにより構成することができ、この布においても何重にも重ねる必要がない。したがって、ディフレクタひいては装置全体の大幅な軽量化を達成することが可能である。更に、メッシュであれば、布製のソックに縫付可能であるため製造が容易であり、製造工程の簡略化も可能である。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかるエアバッグ装置の他の構成は、膨張展開用ガスを供給するインフレータと、インフレータが挿入される挿入口を有し、インフレータからの膨張展開用ガスによって膨張展開するエアバッグと、インフレータのガス噴出口を被覆するようにエアバッグ内に配置され、ガス噴出口から噴出される膨張展開用ガスを整流するディフレクタと、を備え、ディフレクタは、エアバッグに支持され、ディフレクタの基体となる布製のソックと、ソックのインフレータ側の面のうち、少なくともガス噴出口の周囲の領域に設けられる金属製のメッシュと、を有することを特徴とする。かかる構成によっても、上述した効果を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、膨張展開用ガスに対して高い強度を確保しながらも、ディフレクタひいては装置全体の軽量化および小型化を達成することが可能なエアバッグ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかるエアバッグ装置の第1の実施形態であるエアバッグ装置の概略を例示する図である。
図2図1の詳細図である。
図3】他の構成のディフレクタを例示する図である。
図4】本発明にかかるエアバッグ装置の第2の実施形態であるエアバッグ装置の概略を例示する図である。
【符号の説明】
【0017】
100…エアバッグ装置、110…エアバッグ、112…挿入口、120…インフレータ、122…ガス噴出口、130…ディフレクタ、132…ソック、134…メッシュ、136…ファブリック、137…開口部、230…ディフレクタ、234…メッシュ、236…ファブリック、300…エアバッグ装置、310…エアバッグ、312…挿入口、320…インフレータ、322…ガス噴出口、324…リテーナ、326a…取付ボルト、326b…取付ボルト、328…補強布、330…ディフレクタ、334…メッシュ、336…カバー
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明にかかるエアバッグ装置の第1の実施形態であるエアバッグ装置100の概略を例示する図であり、図1(a)はエアバッグ装置100の全体図であり、図1(b)は図1(a)のA円内拡大図である。図2は、図1の詳細図であり、図2(a)は図1(b)に示すディフレクタ130の展開図であり、図2(b)は図1(b)のB−B断面図である。なお、以下に説明する実施形態では、エアバッグ装置100として、ドア上方のルーフサイドレール(不図示)から膨張展開し、車両の横転時に乗員の頭部や上半身の側部を保護するカーテンエアバッグを例示するが、これに限定するものではない。また理解を容易にするために、図2(a)では、後述するファブリック136を透過状態で図示している。
【0020】
車両には、ステアリングホイールから膨張展開して運転席に着座している乗員の頭部および上半身を保護する運転席用エアバッグ、インストルメントパネルから膨張展開して助手席に着座している乗員の頭部および上半身を保護する助手席用エアバッグ、シートのドア側から膨張展開して側面衝突から乗員の上半身を保護するサイドエアバッグ、インストルメントパネルの下部から膨張展開して乗員の膝を保護する膝用エアバッグ、グローブボックスから膨張展開して乗員の膝を保護するグローブボックスニーエアバッグ、サイドドアから上方へ向かってカーテン状に膨張展開して乗員の上半身の側部を保護するドアマウントインフレータブルカーテンエアバッグ等の多くのエアバッグ装置(不図示)が搭載されているが、それらのエアバッグ装置に対しても当然にして本発明を適用可能である。
【0021】
図1(a)に例示するように、エアバッグ装置100は、車両(不図示)の事故発生時に膨張展開して乗員を保護するエアバッグ110を備える。図1では、折り畳まれたり巻き回されたりする前の状態のエアバッグ110が例示されている。図1に示す状態のエアバッグ110は、通常時には折り畳まれたり巻き回されたりした状態で車体に収容され、事故発生時には図1に示すように展開し、この状態から更に膨張する。
【0022】
エアバッグ110は、例えば、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織したりすることにより袋状に形成される。エアバッグ110には、ガス発生装置であるインフレータ120が挿入される挿入口112が設けられていて、このインフレータ120から供給される膨張展開用ガスによってエアバッグ110が膨張展開する。
【0023】
上記インフレータ120からの膨張展開用ガスの整流、およびかかる膨張展開用ガスからのエアバッグ110の防護を目的として、エアバッグ装置100にはディフレクタ130が設けられている。図1(b)に例示するように、ディフレクタ130は、インフレータ120のガス噴出口122を被覆するようにエアバッグ110内に配置され、ガス噴出口122から噴出される膨張展開用ガスを整流する。
【0024】
図2(a)に示すように、ディフレクタ130は、エアバッグ110に支持される布製のソック132が基体となっていて、このソック132には、図2(b)に例示するように、インフレータ120側の面のうち、ガス噴出口122の周囲の領域に金属製のメッシュ134が設けられている。かかる金属としてはスチールを例示することができる。これにより、ディフレクタ130において、ガス噴出口122の周囲の領域には、従来の金属板と同様に膨張展開用ガスに対して高い強度が付与される。特に本実施形態のように金属板ではなくメッシュ134を用いることにより、単なる金属板を用いた場合に比して、膨張展開用ガスとの接触面積が増大するため、熱吸収効率ひいては熱遮断性の向上を図ることができる。
【0025】
またメッシュ134は同素材の金属板よりも軽量であり、且つメッシュ134によってガス噴出口122の周囲の領域において膨張展開用ガスに対する高い強度が確保されるため、その領域以外を布製のソック132により構成することができる。そして、このガス噴出口122の周囲の領域以外のソック132は、かかる領域ほどの膨張展開用ガスに対する強度は求められないため、何重ものの布を重ねる必要がない。したがって、ディフレクタ130ひいてはエアバッグ装置100全体の大幅な軽量化を達成することが可能である。
【0026】
更に、従来の金属板であると剛性が高いため、エアバッグ110を折り畳んだり巻き回したりする際であってもディフレクタ130は成形時の形状が保たれていた。これに対し、本実施形態のように金属をメッシュ状(メッシュ134)にすることにより柔軟性が付与されるためエアバッグ110に追従可能である。したがって、エアバッグ110を折り畳んだり巻き回したりした際に、エアバッグ110に追従してディフレクタ130も同様に折り畳まれたり巻き回されるたりする。このため、ディフレクタ130が嵩張ることがなく、エアバッグ装置100の小型化を図ることが可能となる。
【0027】
加えて、メッシュ134であれば布製のソック132に縫付可能であるため製造が容易であり、製造工程の簡略化も可能である。なお、本実施形態においては、図2(b)に示すように、ディフレクタ130においてメッシュ134の内側を更にファブリック136によって被覆している。ただし、これに限定するものではなく、ファブリック136の有無は必要に応じて適宜設定することが可能である。また上述したメッシュ134の厚みは、ガス噴出口122の周囲の領域に求められる強度に応じて任意に定めればよく、例えば3mm前後とすれば十分な効果を得ることができる。
【0028】
図2(c)は、ファブリック136の他の構成を例示する図である。図2(c)に示すように、ファブリック136、すなわちメッシュ134のインフレータ120に面する側においてその面を被覆するカバーに、メッシュ134の一部が露出するよう、開口部137が設けられている。これによれば、インフレータ120に面する側においてメッシュ134が一部露出した状態となるため、後述する残渣の捕捉効果を高めることが可能である。
【0029】
(ディフレクタの他の構成)
図3は、他の構成のディフレクタ230を例示する図であり、図2(b)に相当する断面図である。なお、上述したディフレクタ130と同一の機能や構成を有する要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
上記説明したディフレクタ130では、メッシュ134は、ディフレクタ130(ソック132)においてガス噴出口122の周囲の領域のみに設けられていた。これに対し、図3に示すディフレクタ230では、ソック132の内側の全面にメッシュ234が設けられていて、このメッシュ234はファブリック236によって被覆されている。このような構成であっても、上述したディフレクタ130と同様の効果を得ることが可能である。
【0031】
(第2の実施形態)
図4は、本発明にかかるエアバッグ装置の第2の実施形態であるエアバッグ装置300の概略を例示する図であり、図4(a)はエアバッグ装置300の断面図であり、図4(b)は図4(a)のディフレクタ近傍の斜視図である。なお、第1実施形態において詳述した構成要素については、重複を避けるため詳細説明を省略する。また、以下に説明する実施形態では、エアバッグ装置300として、フロンタルエアバッグ(上述した助手席用エアバッグや運転席用エアバッグ)を例示するが、これに限定するものではない。
【0032】
図4(a)に例示するエアバッグ装置300はエアバッグ310を有し、かかるエアバッグ310は、挿入口312に挿入されたインフレータ320から供給される膨張展開用ガスによって膨張展開する。本実施形態では、インフレータ320としてディスク型インフレータを例示していて、インフレータ320は、金属製のリテーナ324に固定され、かかるリテーナ324を介して、取付ボルト326a・326bによってエアバッグ310および後述する布製のディフレクタ(以下、ディフレクタ330と称する)に取り付けられる。なお、本実施形態においては、リテーナ324とディフレクタ330との間に補強布328を設けているが、これに限定するものではなく、補強布328は必要に応じて設ければよい。
【0033】
図4(a)に例示するように、インフレータ320には複数のガス噴出口322が設けられていて、かかるガス噴出口322から膨張展開用ガスが噴出する。本実施形態ではエアバッグ310内において(図4(a)参照)、図4(b)に例示するようにインフレータ320のガス噴出口322の一部を覆うようにディフレクタ330が配置されていて、このディフレクタ330によって、ガス噴出口322から噴出される膨張展開用ガスが整流される。
【0034】
本実施形態の特徴として、ディフレクタ330は、インフレータ320に面し、インフレータ320から噴出する膨張展開用ガスがディフレクタ330に最初に衝突する部分に金属製のメッシュ(以下、メッシュ334と称する)を備えている。これにより、ディフレクタ330において、インフレータ320から噴出する膨張展開用ガスが最初に衝突する領域で、膨張展開用ガスに対して高い強度を確保することができる。また本実施形態においても、第1実施形態で詳述したようにメッシュ334による優れた熱遮断性や柔軟性を得ることができるため、ディフレクタ330ひいてはエアバッグ装置300全体の軽量化および小型化を図ることができる。
【0035】
ここで一般に、膨張展開用ガスに含まれる残渣は、インフレータ120・320の内部に設けられたフィルタ(不図示)によって大部分が除去されるが、除去しきれなかった残渣がエアバッグ110・310の展開時や展開後の収縮時に出てくることがある。これに対し、本実施形態のように膨張展開用ガスが最初に衝突する領域にメッシュ134・334を設けることにより、フィルタにて除去しきれなかった残渣がメッシュ134・334の細かい隙間に捕捉され、残渣が取り除かれる。したがって、高温の膨張展開用ガスによるディフレクタ130・330へのダメージを抑制しつつ、エアバッグ110・310の展開時や展開後の収縮時に発生する残渣の量を減少させることが可能である。
【0036】
また本実施形態では、図4(a)に例示するように、メッシュ334のインフレータ320に面する側には、その面を被覆するカバー336が設けられている。これにより、ディフレクタ330とカバー336との間にメッシュ334を容易に収容可能となる。なお、本実施形態においてはカバー336を設けたが、これに限定するものではなく、カバー336を設けない構成とすることもでき、その場合においても、メッシュ334はディフレクタ330に直接縫付可能である。
【0037】
上記のカバー336は膨張展開用ガスで溶融する素材によって構成されるとよい。これにより、エアバッグ310の膨張展開時に、インフレータ320に面する側においてメッシュ334が露出しやすくなるため、上述した膨張展開用ガスに含まれる残渣の捕捉効果を高めることができる。また第1実施形態のように、カバー336に、少なくともメッシュの一部が露出するように開口部(不図示)を設けることによっても、上記と同様に残渣の捕捉効果を高めることが可能である。
【0038】
更に本実施形態では、ディフレクタ330は、エアバッグ310に支持されて当該ディフレクタ330の基体となる布製のソックから構成される。上記説明したように、ディフレクタ330において膨張展開用ガスが最初に衝突する領域は、メッシュ334によって膨張展開用ガスに対する高い強度が確保される。このため、ディフレクタ330において膨張展開用ガスが最初に衝突する領域以外の部分、すなわちディフレクタ330の基体を布製のソックにより構成することができる。この布製のソックにおいても従来のように何重ものの布を重ねる必要がないため、ディフレクタ330ひいてはエアバッグ装置300全体の大幅な軽量化を図ることが可能である。またカバー336をこの布製のディフレクタ330(布製のソック)と同じ材質で形成すれば、資材を統一し、コストの削減を図ることも可能である。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0040】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、車両における事故発生時に膨張展開して乗員を保護するエアバッグ装置に利用することができる。
図1
図2
図3
図4