特許第5719056号(P5719056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5719056圧電振動片、圧電振動子、および圧電振動片の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5719056
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】圧電振動片、圧電振動子、および圧電振動片の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20150423BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   H03H9/19 D
   H03H3/02 B
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-64015(P2014-64015)
(22)【出願日】2014年3月26日
【審査請求日】2014年8月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】皿田 孝史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良和
(72)【発明者】
【氏名】相田 鎮範
【審査官】 ▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−069920(JP,A)
【文献】 特開2003−174353(JP,A)
【文献】 特開2004−128979(JP,A)
【文献】 特開2007−208771(JP,A)
【文献】 特開2008−098712(JP,A)
【文献】 特開2011−193292(JP,A)
【文献】 特開平02−030207(JP,A)
【文献】 特開昭55−028672(JP,A)
【文献】 特開2013−034176(JP,A)
【文献】 特開2003−008378(JP,A)
【文献】 特開2003−110388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007−H03H3/10
H03H9/00−H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATカットにより形成され、
第1主面と第2主面とを有し、
結晶軸のX方向を短手方向、Y´方向を厚み方向、Z´方向を長手方向とする圧電振動片であって、
前記Z´方向において互いに対向する第1側面と第2側面のうち、前記第1側面と前記第2主面、かつ前記第2側面と前記第1主面のみが曲面によって接続している、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片であって、
前記X方向において互いに対向する第3側面と第4側面は、それぞれの側面が前記第1主面と前記第2主面とに対して曲面で接続している、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧電振動片であって、
前記第1側面と前記第1主面とが斜面によって接続しており、かつ、前記第2側面と前記第2主面とが斜面によって接続している、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電振動片において、
前記斜面は、水晶結晶のm面で形成されている、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の圧電振動片において、
前記斜面と前記第1主面、及び前記斜面と前記第2主面がなす角度は鈍角である、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項6】
請求項に記載の圧電振動片において、
前記圧電振動片の厚さ方向から見た前記第1側面、前記第2側面、前記第3側面、及び前記第4側面の投影幅の最大値は、前記第1主面と前記第2主面との間隔の最小値の2倍より小さい、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電振動片において、
前記圧電振動片は、前記第1主面と前記第2主面に凸部を有する、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電振動片を備える圧電振動子。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電振動片を製造する製造方法であって、
ウエハの表面に、前記圧電振動片の外形パターンの第1マスクを形成する工程と、
前記第1マスクを介して前記ウエハをエッチングし、前記圧電振動片の外形パターンを形成する工程と、
前記ウエハをウェットエッチングすることで、前記曲面を形成する工程と、
を備えることを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、圧電振動子、および圧電振動片の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ATカットにより形成される圧電振動片において、厚みすべり振動による振動エネルギーを圧電振動片の中央部に閉じ込めるために、端部の厚みを小さくし、端部へと伝わる振動を減衰する構造が知られている。例えば、いわゆるコンベックス型の圧電振動片は、主面を凸曲面状に形成することで、端部の厚みを小さくしている。
また、特許文献1に記載の圧電振動片では、端部の厚みを小さくするために、ウェットエッチングにより端部に斜面を形成している。このとき、ATカットにより形成される圧電振動片は結晶異方性を有しているため、ウェットエッチングにより形成される斜面は、特定の傾斜角度を有する水晶結晶のm面およびm面以外の自然結晶面となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4305542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した圧電振動片のうちコンベックス型の圧電振動片は、主面の位置によってその厚さが異なるため、励振部内を略同一の固有振動数にするためには、励振電極を厚さの変化の小さい、主面中央部の狭い領域内に形成しなければならない。その結果、圧電振動片のクリスタルインピーダンス(CI値)は増加し、良好な振動特性を得られない。
また、特許文献1に記載の圧電振動片は、自然結晶面である斜面のうちm面以外の結晶面で形成される斜面が主面に対して直角に近い角度で接続されるため、主面と斜面との接続部には鋭い稜線が形成される。その結果、十分な減衰がなされないままに伝わった振動がその稜線部で反射してスプリアス発振が発生し、振動特性が悪化する。
【0005】
そこで本発明は、振動特性の優れた圧電振動片、圧電振動子、および圧電振動片の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の圧電振動片は、ATカットにより形成され、第1主面と第2主面とを有し、結晶軸のX方向を短手方向、Y方向を厚み方向、Z方向を長手方向とする圧電振動片であって、前記Z方向において互いに対向する第1側面と第2側面のうち、前記第1側面が前記第2主面と曲面によって接続しており、かつ、前記第2側面が前記第1主面と曲面によって接続している、ことを特徴とする。
本発明によれば、圧電振動片は平坦面で形成された一対の主面を有しているため、励振電極を主面内の広い領域に形成でき、CI値の増加を抑制することができる。また、側面の少なくとも一部は一方の主面に連なる曲面で形成されているため、側面が斜面で形成されている場合に比べて、一方の主面と側面とが滑らかに接続され、両面の接続部における稜線は鈍くなる。これにより、十分に減衰されないままその接続部に伝わった振動の反射は小さくなり、スプリアス発振が抑制される。したがって、振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0007】
上記の圧電振動片において、前記X方向において互いに対向する第3側面と第4側面は、それぞれの側面が前記第1主面と前記第2主面とに対して曲面で接続している、ことが望ましい。
この構成によれば、圧電振動片の何れの端部に伝わる振動も十分に減衰することができるので、振動エネルギーの中央部への閉じ込め精度がより高くなる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0008】
上記の圧電振動片において、前記第1側面と前記第1主面とが斜面によって接続されており、かつ、前記第2側面と前記第2主面とが斜面によって接続されている、ことが望ましい。
この構成によれば、側面が1つの曲面のみで形成される場合に比べ、圧電振動片の端部が薄くなるので、その端部へ伝わる振動を十分に減衰することができ、振動エネルギーを中央部に閉じ込める精度を向上できる。また、圧電振動片の端部の断面形状は、厚さ方向における対称性が向上するため、副振動の強度上昇を抑制することができる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0009】
上記の圧電振動片において、前記斜面と前記第1主面、及び前記斜面と前記第2主面がなす角度は鈍角である、ことが望ましい。
この構成によれば、圧電振動片端部の断面視先細り形状をより緩やかな傾斜で実現できる。これにより、圧電振動片の端部に伝わる振動の減衰率が高くなり、振動エネルギーの中央部への閉じ込め精度がより高くなる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。

【0010】
上記の圧電振動片において、前記圧電振動片の厚さ方向から見た前記側面の投影幅の最大値は、前記一対の主面の間隔の最小値の2倍より小さい、ことが望ましい。
この構成によれば、圧電振動片の主面の面積を広く形成できるため、励振電極をより広い領域に形成でき、CI値を低下させることができる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0011】
上記の圧電振動片において、前記主面に凸部を有する、ことが望ましい。
この構成によれば、凸部に振動エネルギーを閉じ込めることができるので、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0012】
本発明の圧電振動子は、上記の圧電振動片を備える、ことを特徴とする。
この構成によれば、圧電振動子は、前述した振動特性の優れた圧電振動片を備えるため、振動特性の優れた圧電振動子を得ることができる。
【0013】
本発明の圧電振動片の製造方法は、ATカットにより形成され、一対の主面および側面を有する圧電振動片の製造方法であって、ウエハの表面に、前記圧電振動片の外形パターンの第1マスクを形成する工程と、前記第1マスクを介して前記ウエハをエッチングし、前記圧電振動片の外形パターンを形成する工程と、前記ウエハをウェットエッチングすることで、前記一対の主面のうち少なくとも一方に連なる曲面を前記側面に形成する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、外形パターンを形成した圧電振動片に対してウェットエッチングを行うことで、一方の主面と側面との稜線が丸みを帯び、側面は曲面状に変化する。したがって、一方の主面に連なる曲面を備える圧電振動片を簡単に製造できる。
【0014】
上記の圧電振動片の製造方法において、前記圧電振動片は、前記主面に凸部を有し、 前記圧電振動片の外形パターンを形成する工程の後に、前記ウエハの表面に前記凸部の外形パターンの第2マスクを形成する工程と、前記第2マスクを介して前記ウエハをウェットエッチングし、前記凸部の外形パターンを形成する工程と、を備え、前記曲面を形成する工程は、前記凸部の外形パターンを形成する工程において、前記ウエハをウェットエッチングすることで行う、ことが望ましい。
この方法によれば、圧電振動片の主面上の凸部の形成と同時に側面の曲面を形成できる。したがって、主面上に凸部を有する圧電振動片に対し、特別な工程を加えることなく、一方の主面に連なる曲面を簡単に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧電振動片によれば、圧電振動片は平坦面で形成された一対の主面を有しているため、励振電極を主面内の広い領域に形成でき、CI値の増加を抑制することができる。また、側面の少なくとも一部は一方の主面に連なる曲面で形成されているため、側面が斜面で形成されている場合に比べて、一方の主面と側面とが滑らかに接続され、両面の接続部における稜線は鈍くなる。これにより、十分に減衰されないままその接続部に伝わった振動の反射は小さくなり、スプリアス発振が抑制される。したがって、振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0016】
本発明の圧電振動片の製造方法によれば、外形パターンを形成した圧電振動片に対してウェットエッチングを行うことで、一方の主面と側面との稜線が丸みを帯び、側面は曲面状に変化する。したがって、一方の主面に連なる曲面を備える圧電振動片を簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図2】第1実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、図1のII−II線における断面図である。
図3】第1実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、図1のIII−III線における断面図である。
図4】第1実施形態に係る圧電振動子を示す、分解斜視図である。
図5】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図6】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図7】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図8】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図9】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図10】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図11】第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の平面図である。
図12】第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の説明図であり、図11のXII−XII線における断面図である。
図13】第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図14】第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図15】第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図16】第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図17】第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図18】第2実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、図1のII−II線に相当する部分における断面図である。
図19】第2実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図20】第2実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図21】第2実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図22】第2実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図23】第2実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図の構成を説明する際には、XY´Z´座標系を用いる。このXY´Z´座標系における各軸は、後述する水晶の結晶軸と以下の関係を有している。すなわち、X軸が電気軸であり、Z´軸が光学軸であるZ軸に対してX軸周りに35度15分だけ傾いた軸であり、Y´軸がX軸およびZ´軸に直交する軸である。また、X方向、Y´方向およびZ´方向は、図中矢印方向を+方向とし、矢印とは反対の方向を−方向として説明する。
【0019】
(第1実施形態、圧電振動片および圧電振動子)
最初に、第1実施形態の圧電振動片および圧電振動子について説明する。
図4は、本実施形態の圧電振動子を示す、分解斜視図である。
【0020】
図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板3とリッド基板5とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティ7内に圧電振動片10がマウントされている。
【0021】
圧電振動片10は、圧電板20と、圧電板20上に形成された電極膜50と、を備えている。電極膜50は、第2主面33に形成された一対のマウント電極55を有している。
圧電振動片10は、導電性接着剤等の実装部材を利用して、ベース基板3上の上面3aにマウントされる。より具体的には、ベース基板3の上面3aに形成された一対のインナー電極9に対して、圧電振動片10に形成された一対のマウント電極55が、実装部材を介してマウントされる。
これにより、圧電振動片10は、ベース基板3の上面3aに機械的に保持されると共に、インナー電極9とマウント電極55とがそれぞれ導通された状態となっている。
【0022】
図1は、第1実施形態に係る圧電振動片の平面図である。図2は、第1実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、図1のII−II線における断面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の圧電振動片10は、ATカットにより形成され、一対の主面30および側面40を有する圧電振動片10であって、一対の主面30が平坦面であり、側面40の少なくとも一部が一対の主面30のうち少なくとも一方に連なる曲面で形成されている。なお本願では、平面と曲面との接続状態を表現する際に、曲面とその接線との接点を曲面と平面との接続部に近付けたとき、接線の傾きが平面の傾きに一致する状態を「連続する」と表現し、接線の傾きが平面の傾きに近似する状態を「連なる」と表現する。すなわち「連なる」は「連続する」を含んでいる。
【0023】
圧電振動片10は、ランバード加工された人工水晶からATカットにより、所定の厚さの矩形板状に形成され、一対の主面30および側面40を有する。
ATカットは、人工水晶の結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)及び光学軸(Z軸)の3つの結晶軸のうち、Z軸に対してX軸周りに35度15分だけ傾いた方向(Z´軸方向)に切り出す加工手法である。ATカットによって切り出された圧電振動片10は、周波数温度特性が安定しており、構造や形状が単純で加工が容易であり、CI値が低いという利点がある。本実施形態の圧電振動片10は、Z´方向の長さがX方向の長さより長くなるように形成されている。
【0024】
一対の主面30は、XZ´平面に平行で−Y´方向側に形成された第1主面31と、+Y´方向側に形成された第2主面33と、を有する。
側面40は、圧電振動片10の外周4辺のうち、+Z´方向側の辺に形成された第1側面41と、−Z´方向側の辺に形成された第2側面43と、+X方向側の辺に形成された第3側面45と、−X方向側の辺に形成された第4側面47と、を有する。
【0025】
また、圧電振動片10は、第1主面31に形成された第1励振電極51と、第2主面33に形成された第2励振電極53と、を有する。
第1励振電極51は、Y´方向視矩形状で、第1主面31の中央部の位置に形成されている。第2励振電極53は、Y´方向視矩形状で、第2主面33の中央部の位置に形成されている。第2励振電極53は、Y´方向視において第1励振電極51と重なるように形成されている。
【0026】
さらに、圧電振動片10は、第2主面33に形成され、第1励振電極51および第2励振電極53に接続されたマウント電極55を有する。
マウント電極55は、第1マウント電極55aおよび第2マウント電極55bを有する。第1マウント電極55aは、Y´方向視矩形状に形成され、第2主面33のうち−X側かつ−Z´側の角部であって、第2励振電極53に重ならない位置に設けられている。第1マウント電極55aは、圧電振動片10の−X側の端部および−Z´側の端部のうち少なくとも一方に形成された第1接続部61を介して、第1主面31に形成された第1マウント裏電極65に接続されている。第1マウント裏電極65は、Y´方向視において第1マウント電極55aと重なるように形成され、第1引き回し配線57を介して、第1励振電極51に接続されている。
第2マウント電極55bは、Y´方向視矩形状に形成され、第2主面33のうち+X側かつ−Z´側の角部であって、第2励振電極53に重ならない位置に設けられている。第2マウント電極55bは、第2引き回し配線59を介して、第2励振電極53に接続されている。また、第2マウント電極55bは、圧電振動片10の+X側の端部および−Z´側の端部のうち少なくとも一方に形成された第2接続部63を介して、第1主面31に形成された第2マウント裏電極67に接続されている。第2マウント裏電極67は、Y´方向視において第2マウント電極55bと重なるように形成されている。
【0027】
なお、上述した励振電極、マウント電極、引き回し配線、マウント裏電極および接続部は、金等の金属の単層膜や、クロム等の金属を下地層とし、金等の金属を上地層とした積層膜などで形成されている。
【0028】
圧電振動片10の第1主面31および第2主面33は、平坦面で形成されている。
第1主面31および第2主面33は互いに平行に形成される。例えばそれらの間隔Tの精度が0.3%未満となるように形成される。このように第1主面31および第2主面33を形成することで、第1励振電極51および第2励振電極53を広い領域に形成しても、その第1励振電極51および第2励振電極53に挟まれた励振部の厚さは均一になる。そのため、励振部内の固有振動数は略同一となり、圧電振動片10のCI値の増加を抑制することができる。
【0029】
(圧電振動片の側面)
図3は、第1実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、図1のIII−III線における断面図である。
図1〜3に示すように、圧電振動片10の側面40の少なくとも一部は、一対の主面30のうち少なくとも一方に連なる曲面で形成されている。本実施形態では、全ての側面40が、一対の主面30のうち少なくとも一方に連なる曲面を有する。
図2に示すように、第1側面41は、第2主面33に連なる曲面で形成されている。すなわち第1側面41は、第2主面33の+Z´方向側の端部から(−Y´,+Z´)方向に傾斜し、第1主面31の+Z´方向側の端部に接続している。第1側面41は、(+Y´,+Z´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第1側面41は、X方向に均一に形成されている。第1側面41は第2主面33に連なる曲面で形成されているため、第1側面41と第2主面33との接続部33aにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第1側面41と第2主面33は連続しているため、稜線がなくなっている。
【0030】
ところで、従来の圧電振動片は、図9に示す断面形状に形成されている。図9に示すように、従来の圧電振動片は、第1側面41および第2側面43が水晶結晶のR面で形成されている。R面は、XZ´平面との内角θが約93度となるように現れる。そのため、第1側面41および第2側面43が一対の主面30と直角に近い角度で接続され、第1側面41および第2側面43と一対の主面30との接続部には鋭い稜線が形成される。このように従来の圧電振動片は、+Z´方向側の端部および−Z´方向側の端部において、稜線の鋭い接続部がそれぞれ2箇所ずつ形成される。
一方で、図2に示す本実施形態のように第1側面41を曲面で形成することで、第1側面41と第1主面31または第2主面33との接続部のうち、稜線の鋭い接続部は接続部31dの1箇所のみとなる。これにより、圧電振動片10の+Z´方向側の端部にて発生するスプリアス発振が抑制される。
【0031】
第2側面43は、第1主面31に連なる曲面で形成されている。すなわち第2側面43は、第1主面31の−Z´方向側の端部から(+Y´,−Z´)方向に傾斜し、第2主面33の−Z´方向側の端部に接続している。第2側面43は、(−Y´,−Z´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第2側面43は、X方向に均一に形成されている。第2側面43は第1主面31に連なる曲面で形成されているため、第2側面43と第1主面31との接続部31aにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第2側面43と第1主面31は連続しているため、稜線がなくなっている。その結果、第2側面43と第1主面31または第2主面33との接続部のうち、稜線の鋭い接続部は接続部33dの1箇所のみとなり、第1側面41と同様の理由により、圧電振動片10の−Z´方向側の端部にて発生するスプリアス発振が抑制される。
【0032】
図3に示すように、第3側面45は、第1主面31に連なる第1部分側面45aと、第2主面33に連なる第2部分側面45bと、第1部分側面45aと第2部分側面45bとを接続する第3部分側面45cと、を有する。
第3側面45の第1部分側面45aは、第1主面31の+X方向側の端部から(+X,+Y´)方向に傾斜しつつ、(+X,−Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第1部分側面45aは、Z´方向に均一に形成されている。第1部分側面45aは第1主面31に連なる曲面で形成されているため、第1部分側面45aと第1主面31との接続部31bにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第1部分側面45aと第1主面31は連続しているため、稜線がなくなっている。
第3側面45の第2部分側面45bは、第2主面33の+X方向側の端部から(+X,−Y´)方向に傾斜しつつ、(+X,+Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第2部分側面45bは、Z´方向に均一に形成されている。第2部分側面45bは第2主面33に連なる曲面で形成されているため、第2部分側面45bと第2主面33との接続部33bにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第2部分側面45bと第2主面33は連続しているため、稜線がなくなっている。
第3側面45の第3部分側面45cは、第1部分側面45aの+X方向側の端部、および第2部分側面45bの+X方向側の端部に連なり、+X方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第3部分側面45cは、Z´方向に均一に形成されている。
このように第3側面45を形成することで、第3側面45が有する全ての稜線が鈍くなるため、圧電振動片10の+X方向側の端部にて発生するスプリアス発振が抑制される。
【0033】
第4側面47は、第1主面31に連なる第1部分側面47aと、第2主面33に連なる第2部分側面47bと、第1部分側面47aと第2部分側面47bとを接続する第3部分側面47cと、を有する。
第4側面47の第1部分側面47aは、第1主面31の−X方向側の端部から(−X,+Y´)方向に傾斜しつつ、(−X,−Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第1部分側面47aは、Z´方向に均一に形成されている。第1部分側面47aは第1主面31に連なる曲面で形成されているため、第1部分側面47aと第1主面31との接続部31cにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第1部分側面47aと第1主面31は連続しているため、稜線がなくなっている。
第4側面47の第2部分側面47bは、第2主面33の−X方向側の端部から(−X,−Y´)方向に傾斜しつつ、(−X,+Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第2部分側面47bは、Z´方向に均一に形成されている。第2部分側面47bは第2主面33に連なる曲面で形成されているため、第2部分側面47bと第2主面33との接続部33cにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第2部分側面47bと第2主面33は連続しているため、稜線がなくなっている。
第4側面47の第3部分側面47cは、第1部分側面47aの−X方向側の端部、および第2部分側面47bの−X方向側の端部に連なり、−X方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第3部分側面47cは、Z´方向に均一に形成されている。
このように第4側面47を形成することで、第4側面47が有する全ての稜線が鈍くなるため、圧電振動片10の−X方向側の端部にて発生するスプリアス発振が抑制される。
【0034】
またこのとき、図1に示す圧電振動片10の厚さ方向から見た側面40の投影幅PX,PZ´の最大値が、図2に示す第1主面31および第2主面33の間隔Tの最小値の2倍より小さくなるように、側面40を形成する。これにより、第1励振電極51および第2励振電極53をより広い領域に形成でき、CI値を低下させることができる。
【0035】
このように、本実施形態の圧電振動片10は、ATカットにより形成され、一対の主面30および側面40を有する圧電振動片10であって、一対の主面30が平坦面であり、側面40の少なくとも一部が一対の主面30のうち少なくとも一方に連なる曲面で形成されている、ことを特徴とする。
本実施形態によれば、圧電振動片10は平坦面で形成された一対の主面30を有しているため、第1励振電極51および第2励振電極53を主面30内の広い領域に形成でき、CI値の増加を抑制することができる。また、側面40の少なくとも一部は一方の主面に連なる曲面で形成されているため、側面40が斜面で形成されている場合に比べて、一方の主面と側面40とが滑らかに接続され、両面の接続部における稜線は鈍くなる。これにより、十分に減衰されないままその接続部に伝わった振動の反射は小さくなり、スプリアス発振が抑制される。したがって、振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0036】
また、本実施形態の圧電振動片10は、圧電振動片10の厚さ方向から見た側面40の投影幅PX,PZ´の最大値が、一対の主面30の間隔Tの最小値の2倍より小さい、ことを特徴とする。
この構成によれば、圧電振動片10の主面30の面積を広く形成できるため、第1励振電極51および第2励振電極53をより広い領域に形成でき、CI値を低下させることができる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0037】
本実施形態の圧電振動子1は、圧電振動片10を備える、ことを特徴とする。
本実施形態によれば、圧電振動子1は、前述した振動特性の優れた圧電振動片10を備えるため、振動特性の優れた圧電振動子を得ることができる。
【0038】
(第1実施形態、圧電振動片の製造方法)
次に第1実施形態の圧電振動片の製造方法について説明する。
図5〜10は、第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図であって、図2に相当する部分の断面図である。
【0039】
本実施形態の圧電振動片10の製造方法は、ウエハSの表面に、圧電振動片10の外形パターンの第1マスク81aを形成する第1マスク形成工程と、第1マスク81aを介してウエハSをエッチングし、圧電振動片10の外形パターンを形成する外形形成工程と、ウエハSをウェットエッチングすることで、一対の主面30のうち少なくとも一方に連なる曲面を側面40に形成する曲面形成工程と、を備える。
【0040】
まず、水晶のランバート原石をATカットして一定の厚みとしたウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、この後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行なった所定の厚みのウエハSを準備する。
【0041】
(第1マスク形成工程)
次に、第1マスク形成工程について説明する。図5に示すように、ウエハSの両面にエッチング保護膜81とフォトレジスト膜83とをそれぞれ成膜する。
エッチング保護膜81は、後述する水晶からなるウエハSのエッチングに対する耐性を有する。例えば、厚さが数10nmのクロム(Cr)の金属層と、厚さが数10nmの金(Au)の金属層とが、順次積層された積層膜である。
この工程においては、まず、ウエハSの表裏主面に、エッチング保護膜81を、それぞれスパッタリング法や蒸着法などにより成膜する。
次いで、エッチング保護膜81上に、スピンコート法などによりレジスト材料を塗布して、フォトレジスト膜83を形成する。
本実施形態で用いるレジスト材料としては、環化ゴム(たとえば、環化イソプレン)を主体にしたゴム系ネガレジストが好適に用いられている。ゴム系ネガレジストは、環化ゴムを有機溶剤に溶解し、さらにビスアジド感光剤を加えて、ろ過し、不純物を除去することで精製されたものである。
【0042】
次に、図6および図7に示すように、ウエハSの表面に、圧電振動片10の外形パターンの第1マスク81aを形成する。
具体的には、まず、エッチング保護膜81およびフォトレジスト膜83が成膜されたウエハSの一方側の面を、圧電振動片10の外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて露光する。同様に、ウエハSの他方側の面を、圧電振動片10の外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて露光する。そして、ウエハSの両面に成膜されたフォトレジスト膜83を一括で現像する。これにより、図6に示すように、ウエハSの両面に成膜されたフォトレジスト膜83に、圧電振動片10の外形パターン83aを形成する。
次いで、圧電振動片10の外形パターン83aが形成されたフォトレジスト膜83をマスクとして、ウエハSの両面に成膜されたエッチング保護膜81にエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜81を選択的に除去する。これにより、図7に示すように、ウエハSの両面に、圧電振動片10の外形パターンの第1マスク81aが形成される。
このエッチング保護膜81のエッチング加工には、エッチング保護膜81とフォトレジスト膜83が形成されたウエハSを、薬液に浸漬して行うウェットエッチング方式を用いることができる。例えば、エッチング保護膜81が金(Au)からなる場合には、薬液としてヨウ素を用いてエッチングすることができる。
【0043】
(外形形成工程)
次に、外形形成工程について説明する。図8に示すように、第1マスク81aを介してウエハSをエッチングし、圧電振動片10の外形パターンを形成する。
このウエハSのエッチング加工は、第1マスク81aが形成されたウエハSを薬液に浸漬して行うウェットエッチング方式を用いることができる。例えば、薬液としてフッ酸を用いてエッチングすることができ、エッチング時間は3時間程度とする。これにより、圧電振動片10の外形が形成される。このとき、圧電振動片10の側面40のうち+Z´方向側の第1側面41および−Z´方向側の第2側面43は、水晶結晶の自然結晶面のうちR面により形成される。
【0044】
次に、図9に示すように、エッチング保護膜81およびフォトレジスト膜83を除去する。これにより、圧電板20は一対の主面30および側面40が露出した状態になる。なお、フォトレジスト膜83の除去は、先述したエッチング保護膜81のエッチング加工後(外形形成工程の前)に行ってもよい。
【0045】
(曲面形成工程)
次に、曲面形成工程について説明する。図10に示すように、ウエハSをウェットエッチングすることで、一対の主面30のうち少なくとも一方に連なる曲面を側面40に形成する。
このウェットエッチング加工は、先述した圧電振動片10の外形パターンを形成するウェットエッチング加工と同様に行うことができる。このとき、エッチング時間は例えば30分程度とする。
【0046】
このように、主面30と側面40との接続部近傍のマスクを除去した状態でウェットエッチングを行うと、m面以外の自然結晶面は、その稜線のうちm面との稜線以外が鈍くなるようにエッチングされ、凸曲面状に変化する。なお、図10に示す仮想線は水晶結晶のm面を表しており、接続部31d,33dはm面との稜線であるため、本実施形態の製造方法では、稜線が鋭いまま残っている。
【0047】
最後に、圧電板20の表面上に励振電極、マウント電極、引き回し配線、マウント裏電極および接続部を形成することで、圧電振動片10が得られる。
【0048】
このように、本実施形態の圧電振動片10の製造方法は、ウエハSの表面に、圧電振動片10の外形パターンの第1マスク81aを形成する第1マスク形成工程と、第1マスク81aを介してウエハSをエッチングし、圧電振動片10の外形パターンを形成する外形形成工程と、ウエハSをウェットエッチングすることで、一対の主面30のうち少なくとも一方に連なる曲面を側面40に形成する曲面形成工程と、を備えることを特徴とする。
本実施形態によれば、外形パターンを形成した圧電振動片10に対してウェットエッチングを行うことで、一方の主面と側面40との稜線が丸みを帯び、側面40は曲面状に変化する。したがって、一方の主面に連なる曲面を備える圧電振動片を簡単に製造できる。
【0049】
(第1実施形態、第1変形例、圧電振動片)
次に第1実施形態の第1変形例の圧電振動片について説明する。
図11は、第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の平面図である。図12は、第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の説明図であり、図11のXII−XII線における断面図である。
【0050】
図11および図12に示す第1変形例では、圧電振動片10aは、第1主面31および第2主面33に凸部を有する点で、図1〜3に示す第1実施形態と異なっている。なお、図1〜3に示す第1実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0051】
図11および図12に示すように、圧電振動片10aは、第1主面31に第1凸部21を有する。
第1凸部21は、圧電板20と一体に形成されたいわゆるメサ形状である。第1凸部21は、Y´方向視矩形状に形成されている。また第1凸部21は、第1主面31の中央部分であって、かつ第1マウント裏電極65および第2マウント裏電極67に重複しない位置に形成されている。第1凸部21の頂面21aは、第1主面31と平行な平面状に形成されている。
第1凸部21の側面は、水晶結晶の自然結晶面で形成される。第1凸部21の側面のうち、+Z´方向側に形成された側面21bは、水晶結晶のm面(およびr面)で形成され、XZ´平面である頂面21aとの内角が約150度となる。また、第1凸部21の側面のうち、−Z´方向側に形成された側面21cは、水晶結晶のR面で形成され、頂面21aとの内角は約93度となる。
【0052】
また、圧電振動片10aは、第2主面33に第2凸部23を有する。
第2凸部23は、圧電板20と一体に形成されたいわゆるメサ形状である。第2凸部23は、Y´方向視矩形状に形成されている。また第2凸部23は、第2主面33の中央部分であって、かつマウント電極55に重複しない位置に形成されている。第2凸部23の頂面23aは、第2主面33と平行な平面状に形成されている。
第2凸部23の側面は、水晶結晶の自然結晶面で形成される。第2凸部23の側面のうち、−Z´方向側に形成された側面23bは、水晶結晶のm面(およびr面)で形成され、XZ´平面である頂面23aとの内角が約150度となる。また、第2凸部23の側面のうち、+Z´方向側に形成された側面23cは、水晶結晶のR面で形成され、頂面23aとの内角は約93度となる。
【0053】
そして、第1励振電極51は、第1凸部21の頂面21a上に形成され、第2励振電極53は、第2凸部23の頂面23a上に形成されている。このように、第1凸部21および第2凸部23、並びに第1励振電極51および第2励振電極53を形成することで、振動エネルギーを圧電振動片10aの中央部に精度良く閉じ込めることができ、圧電振動片10aの振動特性をより向上させることができる。
【0054】
また、本変形例では、第2引き回し配線59が第2凸部23の側面23b上に形成されている。第2凸部23の頂面23aに対する側面23bの内角は鈍角であるため、その稜線部における第2引き回し配線59の段切れ発生を抑制できる。
【0055】
このように、本変形例における圧電振動片10aは、主面30に凸部を有する、ことを特徴とする。
この構成によれば、第1凸部21および第2凸部23に振動エネルギーを閉じ込めることができるので、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0056】
(第1実施形態、第1変形例、圧電振動片の製造方法)
次に第1実施形態の第1変形例の圧電振動片の製造方法について説明する。
図13〜17は、第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図であって、図12に相当する部分の断面図である。なお、図5〜9に相当する外形形成工程までは、第1実施形態の製造方法と同様となるため、詳細な説明を省略する。
【0057】
本変形例の圧電振動片10aの製造方法は、主面30に凸部を有する圧電振動片10aの製造方法であって、外形形成工程の後に、ウエハSの表面に凸部の外形パターンの第2マスク91aを形成する第2マスク形成工程と、第2マスク91aを介してウエハSをウェットエッチングし、凸部の外形パターンを形成する凸部形成工程と、を備える。そして、曲面形成工程は、凸部形成工程において、ウエハSをウェットエッチングすることで行う。
【0058】
(第2マスク形成工程)
まず、第2マスク形成工程について説明する。図13に示すように、圧電振動片10aの外形を形成したウエハSの両面に、エッチング保護膜91およびフォトレジスト膜93をそれぞれ成膜する。エッチング保護膜91およびフォトレジスト膜93の材質および形成方法は、第1実施形態におけるエッチング保護膜81およびフォトレジスト膜83と同様である。
【0059】
次に、図14および図15に示すように、ウエハSの表面に、第1凸部および第2凸部の外形パターンの第2マスク91aを形成する。
具体的には、まず、エッチング保護膜91およびフォトレジスト膜93が成膜されたウエハSの一方側の面を、第1凸部の外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて露光する。同様に、ウエハSの他方側の面を、第2凸部の外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて露光する。そして、ウエハSの両面に成膜されたフォトレジスト膜93を一括で現像する。これにより、図14に示すように、ウエハSの両面に成膜されたフォトレジスト膜93に、第1凸部および第2凸部の外形パターン93aを形成する。
次いで、第1凸部および第2凸部の外形パターン93aが形成されたフォトレジスト膜93をマスクとして、ウエハSの両面に成膜されたエッチング保護膜91にエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜91を選択的に除去する。これにより、図15に示すように、ウエハSの両面に第1凸部および第2凸部の外形パターンの第2マスク91aが形成される。エッチング保護膜91のエッチング加工は、第1実施形態におけるエッチング保護膜81の加工と同様に行う。なお、外形形成工程後にエッチング保護膜81を除去することなく、エッチング保護膜81から第2マスク91aを形成してもよい。
【0060】
(凸部形成工程)
次に、凸部形成工程について説明する。図16に示すように、第2マスク91aを介してウエハSをウェットエッチングし、凸部の外形パターンを形成する。
このウエハSのエッチング加工は、第2マスク91aが形成されたウエハSを薬液に浸漬して行うウェットエッチング方式を用いることができる。第1実施形態の曲面形成工程と同様に、例えば薬液としてフッ酸を用いてエッチングすることができる。エッチング時間は30分程度とする。これにより、第1凸部21および第2凸部23が形成される。このとき、圧電板20の一対の主面30と側面40との接続部近傍は露出した状態であるため、第1凸部21および第2凸部23の形成時のウェットエッチングにより、側面40に曲面が同時に形成される。
【0061】
次に、図17に示すように、エッチング保護膜91およびフォトレジスト膜93を除去する。これにより、第1凸部21および第2凸部23を有する圧電板20が得られる。なお、フォトレジスト膜93の除去は、先述したエッチング保護膜91のエッチング加工後(凸部形成工程の前)に行ってもよい。
【0062】
最後に、圧電板20の表面上に励振電極、マウント電極、引き回し配線、マウント裏電極および接続部を形成することで、圧電振動片10aが得られる。
【0063】
このように、本変形例の圧電振動片10aの製造方法は、主面30に凸部を有する圧電振動片10aの製造方法であって、外形形成工程の後に、ウエハSの表面に凸部の外形パターンの第2マスク91aを形成する第2マスク形成工程と、第2マスク91aを介してウエハSをウェットエッチングし、凸部の外形パターンを形成する凸部形成工程と、を備える。そして、曲面形成工程は、凸部形成工程において、ウエハSをウェットエッチングすることで行う、ことを特徴とする。
本変形例によれば、圧電振動片10aの主面30上の凸部の形成と同時に側面40の曲面を形成できる。したがって、主面30上に凸部を有する圧電振動片10aに対し、特別な工程を加えることなく、一方の主面に連なる曲面を簡単に形成することができる。
【0064】
(第2実施形態、圧電振動片)
次に第2実施形態の圧電振動片について説明する。
図18は、第2実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、図1のII−II線に相当する部分における断面図である。
【0065】
図1〜3に示す第1実施形態は、圧電振動片10の側面40が曲面のみにより形成されているが、図18に示す第2実施形態では、側面140が曲面および斜面により形成されている点で異なっている。なお、図1〜3に示す第1実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0066】
図18に示すように、本実施形態の圧電振動片110は、側面140が曲面を含む複数の部分側面から形成され、一対の主面30のうち他方に接続される部分側面が、他方の主面との内角が鈍角となる斜面で形成されている。
【0067】
側面140は、圧電振動片110の外周4辺のうち、+Z´方向側の辺に形成された第1側面141と、−Z´方向側の辺に形成された第2側面143と、+X方向側の辺に形成された第3側面(不図示)と、−X方向側の辺に形成された第4側面(不図示)と、を有する。
第1側面141は、第1主面31に接続する第1部分側面141aと、第2主面33に連なる第2部分側面141bと、を有する。第1側面141の第1部分側面141aは、第1主面31の+Z´方向側の端部から(+Y´,+Z´)方向に傾斜しつつ、(−Y´,+Z´)方向を法線方向とする斜面で形成されている。なお第1部分側面141aは、X方向に均一に形成されている。本実施形態では、第1側面141の第1部分側面141aは、水晶結晶のm面で形成され、XZ´平面である第1主面31との内角が約150度となる。第1側面141の第2部分側面141bは、第2主面33の+Z´方向側の端部から(−Y´,+Z´)方向に傾斜し、第1部分側面141aの+Z´方向側の端部に接続している。第2部分側面141bは、(+Y´,+Z´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第2部分側面141bは、X方向に均一に形成されている。第2部分側面141bは第2主面33に連なる曲面で形成されているため、第2部分側面141bと第2主面33との接続部33aにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第2部分側面141bと第2主面33は連続しているため、稜線がなくなっている。
【0068】
このように、第1側面141を曲面と斜面により形成することで、圧電振動片110の+Z´方向側の端部を、その厚さ方向の中央に向かって先細る形状に形成することができる。これにより、第1側面141が1つの曲面のみで形成される場合に比べ、圧電振動片110の+Z´方向側の端部が薄くなるので、その端部へ伝わる振動を十分に減衰することができ、振動エネルギーを中央部に閉じ込める精度を向上できる。また、圧電振動片110の+Z´方向側の端部の断面形状は、圧電振動片110の厚さ方向における対称性が向上するため、(厚み)副振動の強度上昇を抑制することができる。さらに、斜面を水晶結晶のm面で形成することで、圧電振動片110の+Z´方向側の端部の断面視先細り形状をより緩やかな傾斜で実現できる。これにより、圧電振動片110の+Z´方向側の端部に伝わる振動の減衰率が高くなり、振動エネルギーの中央部への閉じ込め精度がより高くなる。
【0069】
第2側面143は、第1主面31に連なる第1部分側面143aと、第2主面33に接続する第2部分側面143bと、を有する。第2側面143の第1部分側面143aは、第1主面31の−Z´方向側の端部から(+Y´,−Z´)方向に傾斜しつつ、(−Y´,−Z´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第1部分側面143aは、X方向に均一に形成されている。第1部分側面143aは第1主面31に連なる曲面で形成されているため、第1部分側面143aと第1主面31との接続部31aにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第1部分側面143aと第1主面31は連続しているため、稜線がなくなっている。第2側面143の第2部分側面143bは、第2主面33の−Z´方向側の端部から(−Y´,−Z´)方向に傾斜し、第1部分側面143aの−Z´方向側の端部に接続している。第2部分側面141bは、(+Y´,−Z´)方向を法線方向とする斜面で形成されている。なお第2部分側面141bは、X方向に均一に形成されている。本実施形態では、第2側面143の第2部分側面143bは、水晶結晶のm面で形成され、XZ´平面である第2主面33との内角が約150度となる。
【0070】
このように、第2側面143を曲面とm面で形成された斜面により形成することで、第1側面141と同様の理由により、振動エネルギーを中央部に閉じ込める精度を向上できるとともに、(厚み)副振動の強度上昇を抑制することができる。
【0071】
また、不図示の第3側面および第4側面は、図3に示す第1実施形態と同様に、それぞれが曲面で形成された3つの部分側面により形成されている。そのため、本実施形態における第1側面141および第2側面143と同様に、第3側面および第4側面は断面視先細り形状となっている。これにより、第1側面141および第2側面143と同様の理由により、振動エネルギーを中央部に閉じ込める精度を向上できるとともに、(厚み)副振動の強度上昇を抑制することができる。
【0072】
このように、本実施形態の圧電振動片110は、側面140が曲面を含む複数の部分側面から形成され、一対の主面30のうち他方に接続される部分側面が、他方の主面との内角が鈍角となる斜面で形成されている、ことを特徴とする。
この構成によれば、他方の主面に接続される部分側面は、他方の主面との内角が鈍角となる斜面で形成されているので、圧電振動片110の端部をその厚さ方向の中央に向かって先細る形状に形成することができる。これにより、側面140が1つの曲面のみで形成される場合に比べ、圧電振動片110の端部が薄くなるので、その端部へ伝わる振動を十分に減衰することができ、振動エネルギーを中央部に閉じ込める精度を向上できる。また、圧電振動片110の端部の断面形状は、厚さ方向における対称性が向上するため、副振動の強度上昇を抑制することができる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0073】
また、本実施形態の圧電振動片110は、斜面が水晶結晶のm面で形成されている、ことを特徴とする。
この構成によれば、水晶結晶のm面で形成された斜面は、AT振動片の主面30との内角が約150度に形成されるため、圧電振動片110の端部の断面視先細り形状をより緩やかな傾斜で実現できる。これにより、圧電振動片110の端部に伝わる振動の減衰率が高くなり、振動エネルギーの中央部への閉じ込め精度がより高くなる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0074】
さらに、本実施形態の圧電振動片110は、全ての側面140が、少なくとも曲面を有する、ことを特徴とする。
この構成によれば、圧電振動片110の何れの端部に伝わる振動も十分に減衰することができるので、振動エネルギーの中央部への閉じ込め精度がより高くなる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0075】
(第2実施形態、圧電振動片の製造方法)
次に第2実施形態の圧電振動片の製造方法について説明する。
図19〜23は、第2実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図であって、図18に相当する部分の断面図である。なお、図5に相当するエッチング保護膜181およびフォトレジスト膜183を形成する工程までは、第1実施形態の製造方法と同様となるため、詳細な説明を省略する。
【0076】
まず、図19および図20に示すように、ウエハSの表面に、圧電振動片110の外形パターンの第1マスク181aを形成する。
具体的には、まず、フォトレジスト膜183に圧電振動片110の外形パターン183aを形成する。このとき、ウエハの両面の外形パターン183aは、互いにZ´方向に所定の量だけずらして形成する。
次いで、圧電振動片110の外形パターン183aが形成されたフォトレジスト膜183をマスクとして、ウエハSの両面に成膜されたエッチング保護膜181にエッチング加工を行なう。これにより、図20に示すように、ウエハSの両面に圧電振動片110の外形パターンの第1マスク181aが形成される。
エッチング保護膜181およびフォトレジスト膜183の加工は、第1実施形態におけるエッチング保護膜81およびフォトレジスト膜83の加工と同様に行う。
【0077】
次に、図21に示すように、第1マスク181aを介してウエハSをエッチングし、圧電振動片110の外形パターンを形成する。
このウエハSのエッチング加工は、第1実施形態の外形形成工程と同様に行う。このとき、水晶のエッチング異方性により、圧電板20の側面のうち+Z´方向側の第1側面141および−Z´方向側の第2側面143には、異なる角度で傾斜した水晶結晶のm面およびR面の2つの自然結晶面が形成される。具体的には、第1側面141の第1部分側面141aおよび第2側面143の第2部分側面143bにはm面が現れ、第1側面141の第2部分側面141bおよび第2側面143の第1部分側面143aにはR面が現れる。
【0078】
ところで、図7に示す第1実施形態では、ウエハ両面の第1マスク81aをY´方向視において重複するように形成している。この場合、エッチングが進行して非マスク部のウエハが貫通すると、m面およびR面の傾斜角度およびエッチング速度が異なるため、m面で形成された斜面およびR面で形成された斜面は、互いに直接接続されない位置に形成される。第1実施形態ではこの2つの斜面のずれによって形成された段差を消失させるために、図8に示すようにウエハ貫通後も側面40がR面で形成された単一の斜面になるまでウェットエッチングを続けている。
一方で、本実施形態では、第1マスク181aをZ´方向に所定の量だけずらして形成しているため、ウエハの両面をウェットエッチングして非マスク部が貫通したときに、m面で形成された斜面およびR面で形成された斜面が直接接続されるようになる。
【0079】
次に、図22に示すように、エッチング保護膜181およびフォトレジスト膜183を除去する。除去方法は第1実施形態と同様に行う。
【0080】
次に、図23に示すように、ウエハSをウェットエッチングする。これにより、一対の主面30のうち少なくとも一方に連なる曲面および他方に接続される斜面が、圧電板20の側面に形成される。
このウェットエッチング加工は、第1実施形態の曲面形成工程と同様に行う。
【0081】
このように、m面およびR面で形成された側面をウェットエッチングすることで、主面30と斜面、または斜面と斜面との接続部のうち、m面との接続部以外の稜線が鈍くなるようにエッチングが進行する。すなわち、図22および図23に示すように、m面が接続しない第2側面143の第1部分側面143aと第1主面31との接続部31a、および第1側面141の第2部分側面141bと第2主面33との接続部33aの稜線のみ鈍くなる。これにより、側面が曲面および斜面により形成される圧電振動片110を製造することができる。
【0082】
なお、この発明は上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態の圧電振動片においては、Z´方向の長さがX方向の長さより長くなるように形成されていたが、X方向の長さがZ´方向の長さより長くなるように形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…圧電振動子 10、10a、110…圧電振動片 21…第1凸部(凸部) 23…第2凸部(凸部) 31…第1主面(主面) 33…第2主面(主面) 41、141…第1側面(側面) 43、143…第2側面(側面) 45…第3側面(側面) 47…第4側面(側面) 81…第1マスク 83…第2マスク 141a…第1側面の第1部分側面(部分側面) 141b…第1側面の第2部分側面(部分側面) 143a…第2側面の第1部分側面(部分側面) 143b…第2側面の第2部分側面(部分側面) S…ウエハ T…一対の主面の間隔 PX、PZ´…側面の投影幅
【要約】
【課題】振動特性の優れた圧電振動片を提供する。
【解決手段】ATカットにより形成され、第1主面31および第2主面33、並びに第1側面41、第2側面43、第3側面および第4側面を有する圧電振動片10であって、第1主面31および第2主面33が平坦面であり、第1側面41が接続部33aにおいて第2主面33に連なる曲面で形成され、第2側面43が接続部31aにおいて第1主面31に連なる曲面で形成され、第3側面が第1主面31に連なる第1部分側面と第2主面33に連なる第2部分側面とを備え、第4側面が第1主面31に連なる第1部分側面と第2主面33に連なる第2部分側面とを備えている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図18
図19
図20
図21
図22
図23