特許第5719078号(P5719078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 5719078-吸水性樹脂の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5719078
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/32 20060101AFI20150423BHJP
   C08F 4/04 20060101ALI20150423BHJP
   C08F 4/28 20060101ALI20150423BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20150423BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   C08F2/32
   C08F4/04
   C08F4/28
   C08F20/06
   C08L33/02
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-223298(P2014-223298)
(22)【出願日】2014年10月31日
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-143609(P2014-143609)
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100197594
【弁理士】
【氏名又は名称】川添 雅史
(72)【発明者】
【氏名】鄙山 鉄博
(72)【発明者】
【氏名】村上 真啓
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 潤一
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−236898(JP,A)
【文献】 特開平11−335404(JP,A)
【文献】 特開昭64−038406(JP,A)
【文献】 特開昭61−271303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08F 4/00− 4/82
C08F 12/00− 34/04
C08L 1/00−101/14
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂を製造する方法であって、分散安定剤存在下、炭化水素分散媒中、アゾ系化合物と過酸化物とを同時に用いて、内部架橋剤の存在下に水溶性エチレン性不飽和モノマーを逆相懸濁重合させる際に、前記水溶性エチレン性不飽和モノマーが(メタ)アクリル酸及びその塩であり、
アゾ系化合物、過酸化物及び内部架橋剤の使用量を、重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モル当たり、それぞれAモル、Bモル、Cモルとした際に、以下の関係式

0.10≦B/(A+B) (1)
0.055≦B+9×C≦0.120 (2)

を満たし、0.0005モル≦B≦0.10モルであり、かつ重合後以降において後架橋剤を添加して後架橋反応することを特徴とする、吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
アゾ系化合物が、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
過酸化物が、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過酸化水素からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
内部架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル及びN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
水溶性エチレン性不飽和モノマーを内部架橋剤の存在下に重合し、重合後以降において後架橋剤を添加して後架橋反応することにより得られる吸水性樹脂であって、前記水溶性エチレン性不飽和モノマーが(メタ)アクリル酸及びその塩であり、重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モルに対して、内部架橋剤の使用量が0.001〜0.013モルである、以下(A)〜(D)をすべて満たす吸水性樹脂。
(A)生理食塩水保水能が36〜60g/g
(B)4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能が15ml/g以上
(C)垂直拡散吸水能が4.0ml/g以上
(D)残存モノマーの含有量が180ppm以下
【請求項6】
請求項5に記載の吸水性樹脂を用いる吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂の製造方法に関する。更に詳しくは、優れた吸水性能、即ち高い保水能、荷重下での高い吸水能及び高い垂直拡散吸水能を有し、かつ残存するモノマーの含有量が少ない、吸収性物品に好適に用いられる吸水性樹脂の製造方法、及びそれが提供する特定の性能を有する吸水性樹脂、ならびにそれを用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、近年、紙おむつや生理用品等の衛生材料、保水剤や土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤や結露防止剤等の工業資材等、種々の吸収性物品の分野で広く使用されている。吸水性樹脂は、その用途に応じた多くの種類のものが知られているが、水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合物からなる吸水性樹脂が主に用いられている。
【0003】
最近の吸収性物品の分野、特に衛生材料の分野においては、使用時の快適性や携行時の利便性を高めるために、吸収体を薄型化する傾向にある。吸収体を薄型化するには、吸収体中の吸水性樹脂の比率を増やす方法、吸水性樹脂の吸水能(保水能や荷重下での吸水能)を高める方法等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、吸収体中の吸水性樹脂の比率を増加させた場合、吸水性樹脂中に含まれる未反応のモノマー(残存モノマー)に由来する肌への影響(肌荒れ)が懸念される。
【0005】
一方、水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合物からなる吸水性樹脂においては、高吸水能化を達成可能するために、一つには、架橋密度を下げるという手段が採られる。水溶性エチレン性不飽和モノマーを重合する際に添加される化合物として、重合反応の制御のしやすさ等の観点から、一般的には、過硫酸塩を用いて製造されることが多い。しかし同時に、過硫酸塩は重合反応時に自己架橋を促進するため、樹脂内部の架橋密度が高くなりやすく、高吸水能の吸水性樹脂を得られにくい傾向にある。この改良のため、自己架橋を促進しやすい過硫酸塩に代えて、水溶性アゾ系ラジカル開始剤を用いる方法(特許文献1参照)が提案されている。
【0006】
しかし、アゾ系化合物を用いた場合は、水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合率が高まりにくいことから、生成した吸水性樹脂中には、残存モノマーが多く存在する傾向にある。
【0007】
吸水性樹脂の残存モノマーの含有量を低減するための、いくつかの方法が提案されている。例えば、モノマー液に添加するラジカル重合開始剤を2回以上、分割添加して増量する方法(特許文献2参照)、過硫酸塩を重合途中又は重合後の吸水性樹脂に添加する方法(特許文献3参照)、乾燥前又は乾燥中の吸水性樹脂に還元性物質を添加する方法(特許文献4参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−176570号公報
【特許文献2】特公昭63−7203号公報
【特許文献3】特表2004−517179号公報
【特許文献4】特公平7−98847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの従来技術では、吸収性物品に好適な性能を兼ね備えるという観点、すなわち、残存モノマーの含有量が低減され、かつ吸水性樹脂に対して求められる優れた吸水性能、即ち高い保水能、荷重下での高い吸水能及び高い垂直拡散吸水能を併せ持つという観点からは、満足できる性能の吸水性樹脂は得られておらず、未だ改良の余地がある。
【0010】
本発明の課題は、残存モノマーの含有量が少なく、かつ高い保水能、荷重下での高い吸水能及び高い垂直拡散吸水能を有する吸水性樹脂の製造方法、及びそれが提供する特定の性能を有する吸水性樹脂、ならびにそれを用いた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、分散安定剤存在下、炭化水素分散媒中、アゾ系化合物と過酸化物とを併用して、内部架橋剤の存在下に水溶性エチレン性不飽和モノマーを逆相懸濁重合させる際に、アゾ系化合物、過酸化物及び内部架橋剤をある特定の割合で使用することによって、残存モノマーの含有量が少なく、かつ高い保水能、荷重下での高い吸水能及び高い垂直拡散吸水能を有する吸水性樹脂が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の吸水性樹脂の製造方法、及びそれが提供する特定の性能を有する吸水性樹脂、ならびにそれを用いた吸収性物品を提供するものである。
項1.吸水性樹脂を製造する方法であって、分散安定剤存在下、炭化水素分散媒中、アゾ系化合物と過酸化物とを同時に用いて、内部架橋剤の存在下に水溶性エチレン性不飽和モノマーを逆相懸濁重合させる際に、前記水溶性エチレン性不飽和モノマーが(メタ)アクリル酸及びその塩であり、
アゾ系化合物、過酸化物及び内部架橋剤の使用量を、重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モル当たり、それぞれAモル、Bモル、Cモルとした際に、以下の関係式

0.10≦B/(A+B) (1)
0.055≦B+9×C≦0.120 (2)

を満たし、0.0005モル≦B≦0.10モルであり、かつ重合後以降において後架橋剤を添加して後架橋反応することを特徴とする、吸水性樹脂の製造方法。
項2.アゾ系化合物が、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物からなる群より選ばれた少なくとも1種である項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
項3.過酸化物が、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過酸化水素からなる群より選ばれた少なくとも1種である項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
項4.内部架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル及びN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種である項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
項5.水溶性エチレン性不飽和モノマーを内部架橋剤の存在下に重合し、重合後以降において後架橋剤を添加して後架橋反応することにより得られる吸水性樹脂であって、前記水溶性エチレン性不飽和モノマーが(メタ)アクリル酸及びその塩であり、重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モルに対して、内部架橋剤の使用量が0.001〜0.013モルである、以下(A)〜(D)をすべて満たす吸水性樹脂。
(A)生理食塩水保水能が36〜60g/g
(B)4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能が15ml/g以上
(C)垂直拡散吸水能が4.0ml/g以上
(D)残存モノマーの含有量が180ppm以下
項6.項5に記載の吸水性樹脂を用いる吸収性物品。

【発明の効果】
【0013】
本発明によって、残存モノマーの含有量が少なく、かつ高い保水能、荷重下での高い吸水能及び高い垂直拡散吸水能を有する吸水性樹脂を製造する方法が提供され、よって、吸収性物品に好適な性能を兼ね備えた特定の性能を有する吸水性樹脂、ならびにそれを用いた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】吸水性樹脂の4.14kPa荷重下での吸水能及び垂直拡散吸水能を測定するための装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の製造方法においては、分散安定剤存在下、炭化水素分散媒中、アゾ系化合物と過酸化物とを併用して、内部架橋剤の存在下に水溶性エチレン性不飽和モノマーを逆相懸濁重合させる際に、アゾ系化合物、過酸化物及び内部架橋剤をある特定の割合で使用することに特徴がある。
【0016】
本発明の製造方法においては、アゾ系化合物、過酸化物及び内部架橋剤の使用量を、重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モル当たり、それぞれAモル、Bモル、Cモルとした際に、以下の関係式を満たすことに特徴がある。

0.10≦B/(A+B) (1)
0.055≦B+9×C≦0.120 (2)
【0017】
吸水性樹脂中の残存モノマーの含有量を低減させる観点から、式(1)の値は、0.10以上であり、0.15以上が好ましく、0.20以上がより好ましい。一方、吸水性樹脂の高い保水能、荷重下での高い吸水能を実現する観点から、式(1)の値は、0.50以下が好ましく、0.45以下より好ましく、0.40以下がより好ましい。
【0018】
吸水性樹脂の通液性及び液体の吸引力、つまり垂直拡散吸水能を高める観点から、式(2)の値は、0.055以上であり、0.058以上が好ましく、0.060以上がより好ましい。一方、吸水性樹脂の高い保水能、荷重下での高い吸水能を実現する観点から、式(2)の値は、0.120以下であり、0.110以下が好ましく、0.100以下がより好ましい。
【0019】
本発明の製造方法において、アゾ系化合物と過酸化物とを併用とは、必ずしも重合反応開始時点において、アゾ系化合物と過酸化物とが共存している必要はなく、一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態を意味するが、重合反応の開始前にこれら両者が単量体を含む水溶液中に共存していることが好ましい。また、アゾ系化合物と過酸化物とが、別々の流路で重合反応系に添加されてもよいし、同流路で順次重合反応系に添加されてもよい。なお、用いられるアゾ系化合物及び過酸化物の形態は、粉体であってもよいし、水溶液であってもよい。
【0020】
本発明の製造方法で用いるアゾ系化合物としては、例えば、1−{(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ}ホルムアミド、2,2’−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[N−(4−クロロフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)二塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノバレイン酸、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の化合物が挙げられる。これらの中では、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物が、重合温度等の重合反応の調整の容易さや、高い保水能、荷重下での高い吸水能を有する吸水性樹脂が得られるという点から好ましい。これらアゾ系化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モルに対して、アゾ系化合物の使用量Aモルは、式(1)の範囲内において、急激な重合反応を防ぎ、かつ重合反応時間を短縮可能な観点から、0.005〜1モルが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法で用いる過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;過酸化水素;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらの中では、入手が容易で取り扱いやすいという観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過酸化水素が好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム及び過硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0023】
重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モルに対して、過酸化物の使用量Bモルは、式(1)、(2)の範囲内において、0.0005〜0.10モルが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法で用いる内部架橋剤としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール〔「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合を意味する。以下同じ〕、(ポリ)プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、(ポリ)グリセリン等のジオール、トリオール等のポリオール類と(メタ)アクリル酸(本明細書においては「アクリ」及び「メタクリ」を合わせて「(メタ)アクリ」と表記する。以下同様)、マレイン酸、フマル酸等の不飽和酸とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N’’−トリアリルイソシアネート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジル化合物、トリグリシジル化合物等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。これらの中では、低温での反応性に優れている観点から、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル及びN,N’−メチレンビスアクリルアミドが好ましい。これらの内部架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モルに対して、内部架橋剤の使用量Cモルは、式(2)の範囲内において、0.001〜0.013モルが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法においては、上述の条件下で、分散安定剤存在下、炭化水素分散媒中、水溶性エチレン性不飽和モノマーを逆相懸濁重合させることで、吸水性樹脂を製造する。
【0027】
本発明においては、逆相懸濁重合は、1段で行ってもよく、又は、2段以上の多段で行ってもよい。2段以上の多段重合では、1段目の逆相懸濁重合で得られた吸水性樹脂を凝集させることで、吸水性樹脂の粒子径を大きくすることができるため、例えば、紙おむつ等の吸収性物品に好適とされる適度な粒子径を得ることが、より容易となる。
【0028】
2段以上の逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物に水溶性エチレン性不飽和モノマーを添加し混合して、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、水溶性エチレン性不飽和モノマーの他に、アゾ系化合物、過酸化物及び内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加する水溶性エチレン性不飽和モノマーの量を基準として、前述した水溶性エチレン性不飽和モノマーに対する各成分のモル比の範囲内で添加して、同様の条件で逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0029】
本発明で用いる水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性モノマー;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和モノマー及びその4級化物等が挙げられる。これらの水溶性エチレン性不飽和モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
なかでも、工業的に入手が容易である点から、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩がより好ましい。
【0031】
また、2段以上の多段で重合を行う際、2段目以降に用いる水溶性エチレン性不飽和モノマーは、1段目に用いる水溶性エチレン性不飽和モノマーと同種であっても、異種であってもよい。
【0032】
なお、上述の水溶性エチレン性不飽和モノマーは、逆相懸濁重合を行う際に、炭化水素分散媒中での分散効率を上昇させるために水溶液にして用いてもよい。水溶液とすることにより、炭化水素分散媒中での分散効率を上昇させることができる。この水溶液における水溶性エチレン性不飽和モノマーの濃度としては、20質量%〜飽和濃度以下の範囲であることが好ましい。また、アゾ系化合物の存在下における重合は、重合速度が速まる傾向にあるため、過度な蓄熱を回避しつつ、本発明に係る吸水性樹脂の性能が得やすくなるという観点から、モノマーの濃度としては、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、45質量%以下であることがよりさらに好ましい。一方、生産性を良好なレベルに保つべく、モノマーの濃度としては25質量%以上であることがより好ましく、28質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0033】
水溶性エチレン性不飽和モノマーが(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のように酸基を有する場合、必要に応じてその酸基が予めアルカリ性中和剤により中和されたものを用いてもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等が挙げられる。特にこれらのアルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態にして用いてもよい。上述のアルカリ性中和剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
アルカリ性中和剤による水溶性エチレン性不飽和モノマーの中和度については、得られる吸水性樹脂の浸透圧を高めることで吸水性能を高め、かつ余剰のアルカリ性中和剤の存在に起因する安全性等に問題が生じないようにする観点から、水溶性エチレン性不飽和モノマーが有する全ての酸基に対する中和度とし、通常、10〜100モル%であることが好ましく、30〜90モル%であることがより好ましく、40〜85モル%であることがさらに好ましく、50〜80モル%であることがよりさらに好ましい。
【0035】
本発明の製造方法で用いる炭化水素分散媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、n−オクタン等の炭素数6〜8の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans−1,2−ジメチルシクロペンタン、cis−1,3−ジメチルシクロペンタン、trans−1,3−ジメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの炭化水素分散媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの炭化水素分散媒のなかでも、工業的に入手が容易であり、品質が安定しており、かつ安価である点で、n−ヘキサン、n−ヘプタンおよびシクロヘキサンが好ましい。さらに、前記炭化水素分散媒の混合物の例としては、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:ヘプタンおよびその異性体の炭化水素75〜85質量%含有)等を用いても好適な結果が得られる。
【0036】
前記炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を除去し、重合温度を制御しやすい観点から、第1段目の重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100質量部に対して、好ましくは100〜1500質量部であり、より好ましくは200〜1400質量部である。なお、前記第1段目の重合とは、単段重合の工程および2段以上の多段重合における1段目重合の工程を意味する。
【0037】
本発明の製造方法で用いる分散安定剤としては、界面活性剤を用いればよく、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N−アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等を用いることができる。なかでも、モノマーの分散安定性の面から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが好ましい。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
界面活性剤の使用量は、炭化水素分散媒中における、モノマーの分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得る観点から、第1段目の水溶性エチレン性不飽和モノマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.3〜20質量部とされる。
【0039】
また分散安定剤として、界面活性剤とともに高分子系分散剤を併用してもよい。使用できる高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。なかでも、モノマーの分散安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体が好ましい。これらの高分子系分散剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
高分子系分散剤の使用量は、炭化水素分散媒中における、モノマーの分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得る観点から、第1段目の水溶性エチレン性不飽和モノマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.3〜20質量部とされる。
【0041】
逆相懸濁重合の反応温度は、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより生産性を高めるとともに、重合熱をより容易に除去して円滑に反応を行う観点から、20〜110℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。また、反応時間は、0.1時間〜4時間が好ましい。
【0042】
なお、本発明の製造方法においては、適度に細粒化された含水ゲルが得られ、ひいては吸収性物品の調製に好適な細粒状の吸水性樹脂を容易に得ることができる。
【0043】
本発明の製造方法においては、水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合後以降において、架橋剤を添加して反応させる後架橋反応を施す。重合後に後架橋反応を行うことにより、保水能や吸水性能をさらに高めることができる。
【0044】
後架橋反応に用いられる架橋剤(後架橋剤)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。これらの後架橋剤のなかでも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好適に用いられる。これらの後架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
前記後架橋剤の使用量は、重合に使用した水溶性エチレン性不飽和モノマー100モルに対して、0.001〜1モルが好ましく、0.005〜0.5モルがより好ましい。
【0046】
前記後架橋剤の添加時期は、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合反応がほぼすべて終了した後であればよく、吸水性樹脂を得るために使用した水溶性エチレン性不飽和モノマー100質量部に対し、1〜400質量部の範囲の水分存在下に添加することが好ましく、5〜200質量部の範囲の水分存在下に添加することがより好ましく、10〜100質量部の範囲の水分存在下に添加することがさらに好ましく、20〜60質量部の範囲の水分存在下に添加することがよりさらに好ましい。
【0047】
前記後架橋剤の添加方法としては、後架橋剤をそのまま添加する方法、水溶液として添加する方法、溶媒として親水性有機溶媒を用いた溶液として添加する方法等が挙げられる。前記親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらの親水性有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、水との混合溶媒として用いてもよい。
【0048】
前記後架橋反応における反応温度は、50〜250℃が好ましく、60〜180℃がより好ましく、70〜150℃がさらに好ましい。また、後架橋反応の反応時間は、1〜300分間が好ましく、5〜200分間がより好ましい。
【0049】
本発明の製造方法においては、重合終了後に、熱等のエネルギーを外部から加えることにより、水、炭化水素分散媒等を蒸留により除去する乾燥処理を含んでいてもよい。前記乾燥処理は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよく、乾燥効率を高めるために窒素等の気流下で行ってもよく、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。前記乾燥処理が常圧の場合の乾燥温度は、好ましくは70〜250℃であり、より好ましくは80〜180℃であり、さらに好ましくは80〜140℃である。また、前記乾燥処理が減圧下の場合の乾燥温度は、好ましくは40〜160℃であり、より好ましくは50〜120℃である。
【0050】
なお、本発明の製造方法で得られた吸水性樹脂に、諸性能を付与するために、さまざまな目的に応じた添加剤を配合して吸水性樹脂組成物とすることができる。このような添加剤としては、無機粉末、界面活性剤、酸化剤、還元剤、金属キレート剤、ラジカル連鎖禁止剤、酸化防止剤、抗菌剤、消臭剤等が挙げられる。例えば、吸水性樹脂100質量部に対し、無機粉末として0.05〜5質量部の非晶質シリカを添加することで、吸水性樹脂の流動性を向上させることができる。
【0051】
本発明の製造方法は、残存モノマーの含有量が少なく、かつ高い保水能、荷重下での高い吸水能及び高い垂直拡散吸水能という、吸収性物品に好適とされる性能を兼ね備える特定の性能を有する吸水性樹脂を提供できる。
【0052】
なお、吸水性樹脂の生理食塩水保水能、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能、垂直拡散吸水能、残存モノマーの含有量および中位粒子径は、後述の測定方法により測定した値である。
【0053】
本発明の吸水性樹脂の生理食塩水保水能は、吸収性物品に用いられた際に、吸収容量を多くし、液体の逆戻り量を少なくする観点から、36〜60g/gであることが好ましく、38〜58g/gであることがより好ましく、40〜56g/gであることがさらに好ましい。42〜54g/gであることがよりさらに好ましい。
【0054】
本発明の吸水性樹脂の4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、吸収性物品に用いられた際に、吸液後の吸収性物品に圧力がかかった場合における液体の逆戻り量を少なくする観点から、15ml/g以上であることが好ましく、16〜40ml/gであることがより好ましく、18〜35ml/gであることがさらに好ましく、20〜32ml/gであることがよりさらに好ましい。
【0055】
本発明の吸水性樹脂の垂直拡散吸水能は、吸収性物品に用いられた際に、液体の拡散性を良くする観点から、4.0ml/g以上であることが好ましく、5.0〜50.0ml/gであることがより好ましく、6.0〜30.0ml/gであることがさらに好ましく、7.0〜20.0ml/gであることがよりさらに好ましい。
【0056】
本発明の吸水性樹脂の残存モノマーの含有量は、吸収性物品に用いられた際に、肌への影響(肌荒れ)を低減する観点から、吸水性樹脂質量あたりの値において、180ppm以下が好ましく、150ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましく、90ppm以下がよりさらに好ましい。
【0057】
本発明の吸水性樹脂の中位粒子径は、吸収性物品に用いられた際に、微粒子による吸液時のゲルブロッキング及び、粗粒子による吸収性物品の触感の悪化を回避する観点から、100〜600μmが好ましく、200〜500μmがより好ましく、250〜450μmがさらに好ましく、300〜430μmがよりさらに好ましい。
【0058】
本発明で得られる吸収性物品は、特に限定されない。その代表例としては、紙オムツ、生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁パッド、母乳パッド等の衛生材料、ペット用の尿吸収材料等をはじめ、パッキング材等の土木建築用資材、ドリップ吸収剤、保冷剤等の食品鮮度保持用材料、土壌用保水材等の農園芸用物品等が挙げられる。
【0059】
例えば、衛生材料に用いられる吸収性物品は、水性液体を吸収・保持する吸収体を、水性液体が通過することのできる液体透過性シート(トップシート)と、水性液体が通過することのない液体不透過性シート(バックシート)との間に保持した構造を有している。液体透過性シートは、身体と接触する側に配されており、液体不透過性シートは、身体と接触することのない側に配されている。
【0060】
前記液体透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の繊維からなる、エアスルー型、スパンボンド型、ケミカルボンド型、ニードルパンチ型等の不織布及び多孔質の合成樹脂シート等が挙げられる。
【0061】
前記液体不透過性シートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなる合成樹脂フィルム等が挙げられる。
【0062】
前記吸収性材料に使用される吸収体は、本発明で得られた吸水性樹脂と親水性繊維とから構成されている。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂と親水性繊維とを均一な組成となるように混合することによって得られた混合分散体、層状の親水性繊維の間に吸水性樹脂が挟まれたサンドイッチ構造体、吸水性樹脂と親水性繊維とをティッシュ又は透水性の不織布等で包んだ構造体等が挙げられる。
【0063】
前記吸収体には、他の成分、例えば、吸収体の形態保持性を高めるための熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等の接着性バインダーが添加されていてもよい。
【0064】
前記親水性繊維としては、例えば、木材から得られる綿状パルプ、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維、親水化処理されたポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる繊維等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
尚、各実施例及び比較例で得られた吸水性樹脂について、生理食塩水保水能、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能、垂直拡散吸水能、残存モノマーの含有量および中位粒子径を以下に示す方法により評価した。
【0067】
<生理食塩水保水能>
500ml容のビーカーに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gを量り取り、600回転/分で撹拌しながら、吸水性樹脂2.0gを、ママコが発生しないように分散させた。撹拌した状態で30分間放置し、吸水性樹脂を十分に膨潤させた。その後、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を添加せずに同様の操作を行ない、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定し、以下の式から吸水性樹脂の生理食塩水保水能を算出した。
生理食塩水保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/吸水性樹脂の質量(g)
【0068】
<4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能>
4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、図1に概略構成を示した測定装置Xを用いて測定した。
【0069】
図1に示した測定装置Xは、ビュレット部1、導管2、測定台3及び測定台3上に置かれた測定部4からなっている。ビュレット部1は、ビュレット10の上部にゴム栓14、下部に空気導入管11とコック12が連結されており、更に、空気導入管11の上部はコック13がある。ビュレット部1から測定台3までは、導管2が取り付けられており、導管2の直径は6mmである。測定台3の中心部には、直径2mmの穴があいており、導管2が連結されている。測定部4は、円筒40と、この円筒40の底部に貼着されたナイロンメッシュ41と、重り42とを有している。円筒40の内径は、2.0cmである。そして、200メッシュ(目開き75μm)のナイロンメッシュ41上に所定量の吸水性樹脂5が均一に撒布されるようになっている。重り42は、直径1.9cm、質量119.6gである。この重り42は、吸水性樹脂5上に置かれ、吸水性樹脂5に対して4.14kPaの荷重を均一に加えることができるようになっている。
【0070】
このような構成の測定装置Xでは、まずビュレット部1のコック12及びコック13を閉め、25℃に調節された生理食塩水をビュレット10上部から入れ、ゴム栓14でビュレット上部の栓をした後、ビュレット部1のコック12、コック13を開ける。次に、測定台3中心部における導管2の先端と空気導入管11の空気導入口とが同じ高さになるように測定台3の高さの調整を行う。
【0071】
一方、円筒40のナイロンメッシュ41上に0.10gの吸水性樹脂5を均一に撒布して、この吸水性樹脂5上に重り42を置く。測定部4は、その中心部が測定台3中心部の導管口に一致するようにして置く。
【0072】
吸水性樹脂5が吸水し始めた時点から継続的に、ビュレット10内の生理食塩水の減少量(吸水性樹脂5が吸水した生理食塩水量)Wc(ml)を読み取った。吸水開始から60分間経過後における吸水性樹脂5の4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、次式により求めた。
4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能(ml/g)
=Wc(ml)÷吸水性樹脂の質量(g)
【0073】
<垂直拡散吸水能>
垂直拡散吸水能は、図1に概略構成を示した測定装置Xを用いて、重り42を使用せず、吸水性樹脂5の使用量を1.0gに変更した以外は、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能と同様の操作を行い、測定した。
【0074】
吸水性樹脂5が吸水し始めた時点から継続的に、ビュレット10内の生理食塩水の減少量(吸水性樹脂5が吸水した生理食塩水量)Wd(ml)を読み取った。吸水開始から60分間経過後における吸水性樹脂5の垂直拡散吸水能は、次式により求めた。
垂直拡散吸水能(ml/g)=Wd(ml)÷吸水性樹脂の質量(g)
【0075】
<残存モノマーの含有量>
500ml容のビーカーに生理食塩水500gを入れ、これに吸水性樹脂2.0gを添加して、600回転/分で撹拌しながら、60分間攪拌した。前記ビーカーの内容物を、目開き75μmのJIS標準ふるい、さらに、ろ紙(ADVANTEC社製、濾紙No.3)によりろ過して、吸水ゲルと抽出液とを分離した。得られた抽出液中に溶解しているモノマーの含量を、高速液体クロマトグラフィーにより測定した。測定値を、吸水性樹脂質量あたりの値に換算して、吸水性樹脂の残存モノマーの含有量(ppm単位)とした。
【0076】
<中位粒子径>
吸水性樹脂50gに、滑剤として、0.25gの非晶質シリカ(デグサジャパン(株)、Sipernat 200)を混合した。これを、JIS標準篩の目開き250μmの篩を用いて通過させ、篩上に残る量がその50質量%以上の場合には<A>の篩の組み合わせを、50質量%未満の場合には<B>の篩の組み合わせを、用いて中位粒子径を測定した。
【0077】
(A) JIS標準篩を上から、目開き710μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き400μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
【0078】
(B) JIS標準篩を上から、目開き400μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
【0079】
組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂を入れ、ロータップ式振とう器を用いて10分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0080】
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに炭化水素分散媒としてn−ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS−370)0.74g、高分子分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、55℃まで冷却した。
【0081】
一方、500ml容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.021モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.110g(0.406ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.037g(0.137ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.014g(0.080ミリモル)を加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
【0082】
重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モル当たりのアゾ系化合物の使用量Aモル、過酸化物の使用量Bモル、内部架橋剤の使用量Cモル、および式(1)、式(2)の値については、後述の表1に示した。
【0083】
前記モノマー水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行った。
【0084】
次いで、125℃の油浴で前記重合反応液を昇温し、水とn−ヘプタンとの共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら、115.9gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液3.68g(0.423ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、125℃の油浴を用いて加熱し、分散媒と水とを蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状の吸水性樹脂95.1gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0085】
[実施例2]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに炭化水素分散媒としてn−ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS−370)0.74g、高分子分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、55℃まで冷却した。
【0086】
一方、500ml容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.021モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.110g(0.406ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.018g(0.067ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.012g(0.069ミリモル)を加えて溶解し、1段目重合用のモノマー水溶液を調製した。
【0087】
前記1段目のモノマー水溶液を、前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第1段目の重合を1時間行い、第1段目の反応混合物を得た。
【0088】
一方、別の500ml容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.430モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.155g(0.572ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.026g(0.096ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.012g(0.069ミリモル)を加えて溶解し、第2段目のモノマー水溶液を調製した。
【0089】
重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モル当たりのアゾ系化合物の使用量Aモル、過酸化物の使用量Bモル、内部架橋剤の使用量Cモル、および式(1)、式(2)の値については、後述の表1に示した。
【0090】
前記第1段目の反応混合物を26℃に冷却し、同温度の前記第2段目のモノマー水溶液を系内に添加し、30分間吸収させると同時に系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を1時間行った。
【0091】
2段目の重合後、125℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンとの共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら、240.8gの水を系外へ抜き出した。その後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、80℃で2時間、後架橋反応を行った。引き続き水とn−へプタンを蒸留により除去、乾燥することによって、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂228.2gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表2に示した。
【0092】
[実施例3]
実施例2において、1段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸カリウムの使用量を0.028g(0.104ミリモル)、内部架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を0.014g(0.080ミリモル)、2段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸カリウムの使用量を0.038g(0.141ミリモル)、後架橋反応前の水とn−ヘプタンとの共沸蒸留による系外へ抜き出す水の量を243.5gに変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂228.6gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表2に示した。
【0093】
[実施例4]
実施例3において、1段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸カリウムの使用量を0.037g(0.137ミリモル)、内部架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を0.020g(0.115ミリモル)、2段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸カリウムの使用量を0.052g(0.192ミリモル)に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂227.4gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表2に示した。
【0094】
[実施例5]
実施例3において、1段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸カリウムの使用量を0.073g(0.270ミリモル)、内部架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を0.018g(0.103ミリモル)、2段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸カリウムの使用量を0.103g(0.381ミリモル)に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂227.9gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表2に示した。
【0095】
[実施例6]
実施例3において、1段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸カリウムを過硫酸アンモニウム0.083g(0.364ミリモル)、内部架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を0.024g(0.138ミリモル)、2段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸アンモニウム0.116g(0.508ミリモル)に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂228.1gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表2に示した。
【0096】
[比較例1]
実施例4において、1段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸カリウムの使用量を0.009g(0.033ミリモル)、2段目のモノマー水溶液中の過酸化物である過硫酸カリウムの使用量を0.013g(0.048ミリモル)に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂227.6gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表2に示した。
【0097】
[比較例2]
実施例3において、1段目のモノマー水溶液中の内部架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を0.008g(0.046ミリモル)に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂228.3gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表2に示した。
【0098】
[比較例3]
実施例3において、1段目のモノマー水溶液中の内部架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を0.046g(0.264ミリモル)に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂227.8gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表2に示した。
【0099】
[比較例4]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに炭化水素分散媒としてn−ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS−370)0.74g、高分子分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、55℃まで冷却した。
【0100】
一方、500ml容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.021モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、過酸化物として過硫酸カリウム0.110g(0.407ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.012g(0.069ミリモル)を加えて溶解し、1段目重合用のモノマー水溶液を調製した。
【0101】
前記1段目のモノマー水溶液を、前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第1段目の重合を1時間行い、第1段目の反応混合物を得た。
【0102】
一方、別の500ml容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.430モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、過酸化物として過硫酸カリウム0.155g(0.573ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.012g(0.069ミリモル)を加えて溶解し、第2段目のモノマー水溶液を調製した。
【0103】
重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モル当たりの過酸化物の使用量Bモル、内部架橋剤の使用量Cモル、および式(1)、式(2)の値については、後述の表1に示した。
【0104】
前記第1段目の反応混合物を26℃に冷却し、同温度の前記第2段目のモノマー水溶液を系内に添加し、30分間吸収させると同時に系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を1時間行った。
【0105】
2段目の重合後、125℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンとの共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら、261.9gの水を系外へ抜き出した。その後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、80℃で2時間、後架橋反応を行った。引き続き水とn−へプタンとを蒸留により除去、乾燥することによって、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂228.3gを得た。吸水性樹脂の物性を前記の方法で評価し、結果を表2に示した。
【0106】
【表1】

注)A、B、Cは、それぞれアゾ系化合物、過酸化物および内部架橋剤の、重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モル当たりの使用量(モル)を表す。
【0107】
【表2】
【0108】
次に実施例2〜4及び比較例2〜4で得られた吸水性樹脂を用いて、吸収体及び吸収性物品を作成し、評価した。
【0109】
[実施例7]
実施例2で得られた吸水性樹脂12gと解砕パルプ(レオニア社製レイフロック)12gを用い、空気抄造によって均一混合することにより、40cm×12cmの大きさのシート状の吸収体コアを作製した。次に、吸収体コアの上下を、吸収体コアと同じ大きさで、坪量16g/mの2枚のティッシュペーパーではさんだ状態で、全体に196kPaの荷重を30秒間加えてプレスすることにより吸収体を作製した。さらに吸収体の上面に、吸収体と同じ大きさで、坪量22g/mのポリエチレン−ポリプロピレン製エアスルー型多孔質液体透過性シートを配置し、同じ大きさ、同じ坪量のポリエチレン製液体不透過性シートを吸収体の下面に配置して、吸収体を挟みつけることにより、吸収性物品とした。
【0110】
[実施例8〜9および比較例5〜7]
実施例7において、実施例2で得られた吸水性樹脂に代えて実施例3〜4および比較例2〜4で得られた吸水性樹脂をそれぞれ用いた以外は、実施例7と同様の操作を行い、吸収性物品を得た。得られた吸収性物品をそれぞれ順に、実施例8及び比較例5〜7の吸収性物品とした。
【0111】
次に実施例7〜9および比較例5〜7で得られた吸収性物品を以下の方法で評価した。その結果を表3に示す。
【0112】
<吸収性物品の評価>
(a)試験液(合成尿)の調製
イオン交換水に、NaCl:0.780質量%、CaCl:0.022質量%、MgSO:0.038質量%をそれぞれ配合して溶解させたものに、さらに少量の青色1号を配合して試験液(合成尿)を調製した。
【0113】
(b)浸透時間
まず、水平の台上に吸収性物品を置いた。吸収性物品の中心部に、内径3cmの開口部を有する液投入用シリンダーを置き、80mlの試験液をそのシリンダー内に一度に投入するとともに、ストップウォッチを用いて、試験液がシリンダー内から完全に消失するまでの時間を測定し、1回目の浸透時間(秒)とした。次に、前記シリンダーをはずし、吸収性物品をそのままの状態で保存し、1回目の試験液投入開始から30分後及び60分後にも、1回目と同じ位置に測定器具を用いて同様の操作を行い、2回目及び3回目の浸透時間(秒)を測定した。1回目〜3回目の合計時間を合計浸透時間とした。浸透時間が短いほど、吸収性物品として好ましいと言える。
【0114】
(c)逆戻り量
前記3回目の浸透時間の測定終了から60分経過後、吸収性物品上の試験液投入位置付近に、あらかじめ質量(We(g)、約70g)を測定しておいた10cm四方の濾紙を置き、その上に底面が10cm×10cmの質量5kgの重りを載せた。5分間の荷重後、濾紙の質量(Wf(g))を測定し、増加した質量を逆戻り量(g)とした。逆戻り量が小さいほど、吸収性物品として好ましいと言える。
逆戻り量(g)=Wf−We
【0115】
【表3】
【0116】
表3から明らかなように、実施例2〜4で得られた吸水性樹脂を用いた吸収性物品の実施例7〜9は、比較例5〜7に比べて、速い浸透時間、少ない逆戻り量という優れた吸収性能を有するのが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の製造方法で得られた吸水性樹脂は、優れた吸水性能、即ち高い保水能、荷重下での高い吸水能及び高い垂直拡散吸水能を有し、かつ残存するモノマーの含有量が少ないため、紙おむつや生理用品等の吸収性物品に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0118】
100 測定装置
1 ビュレット部
10 ビュレット
11 空気導入管
12 コック
13 コック
14 ゴム栓
2 導管
3 測定台
4 測定部
40 円筒
41 ナイロンメッシュ
42 重り
5 吸水性樹脂
【要約】      (修正有)
【課題】吸水性樹脂を製造する方法において、優れた吸水性能、即ち高い保水能、荷重下での高い吸水能及び高い垂直拡散吸水能を有し、かつ残存するモノマーの含有量が少ない、吸収性物品に好適に用いられる吸水性樹脂の製造方法、及びそれが提供する特定の性能を有する吸水性樹脂の提供。
【解決手段】吸水性樹脂を製造する方法であって、分散安定剤存在下、炭化水素分散媒中、水溶性エチレン性不飽和モノマーを逆相懸濁重合させる際に、アゾ系化合物、過酸化物及び内部架橋剤の使用量を、重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和モノマー100モル当たり、各々Aモル、Bモル、Cモルとした際に、以下の関係式を満たし、かつ重合後以降において後架橋剤を添加して後架橋反応する、吸水性樹脂の製造方法。0.10≦B/(A+B)(1)、0.055≦B+9×C≦0.120(2)
【選択図】なし
図1