特許第5719084号(P5719084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5719084鉄筋コンクリート構造体に用いられる鉄筋組立体および剪断補強筋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719084
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート構造体に用いられる鉄筋組立体および剪断補強筋
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/06 20060101AFI20150423BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   E04C5/06
   E04C5/18 105
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-508996(P2014-508996)
(86)(22)【出願日】2012年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2012072338
(87)【国際公開番号】WO2013150668
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2014年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-84010(P2012-84010)
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390026723
【氏名又は名称】東京鐵鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】越路 正人
(72)【発明者】
【氏名】森田 登
(72)【発明者】
【氏名】関口 利夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−304163(JP,A)
【文献】 実公昭51−051776(JP,Y2)
【文献】 特開平06−229071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/06
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面的に広がるとともに互いに平行をなす一対の平坦なコンクリート面とこれらコンクリート面間を貫通する開口を有する鉄筋コンクリート構造体に用いられ、上記一対のコンクリート面と平行な平面上に配置される鉄筋組立体であって、
互いに直交する複数の第1筋と複数の第2筋とを備えるとともに、これら第1筋および第2筋に対して傾斜し上記開口を囲むように配置された複数の斜め筋とを備え、
少なくとも上記斜め筋が扁平な断面形状の鉄筋からなり、その短軸方向が上記コンクリート面と直交していることを特徴とする鉄筋組立体。
【請求項2】
直線的に延びる鉄筋コンクリート構造体に用いられコンクリートに埋設される鉄筋組立体であって、
互いに平行をなして上記鉄筋コンクリート構造体の長手方向に直線的に延びる複数の主筋と、これら主筋の長手方向に間隔をおいて配置されるとともにこれら主筋を囲うようにして上記コンクリート面に沿って配された環状または螺旋状の剪断補強筋とを備え、
さらに、一直線上に配された上記主筋同士を連結する筒形状の継手と、この継手を囲うようにして上記コンクリート面に沿って配置された追加の剪断補強筋とを備え、
少なくとも上記追加の剪断補強筋は扁平な断面形状の鉄筋からなり、その短軸方向に向き合う一対の面が内側と外側になるように曲げられ、その扁平な断面形状の短軸方向が上記コンクリート面と直交することを特徴とする鉄筋組立体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄筋組立体を上記コンクリートに埋め込んでなる鉄筋コンクリート構造体。
【請求項4】
基部とこの基部の外周に形成されたリブとを有し、この基部が扁平な断面形状を有し、この基部の断面形状の輪郭が、短軸方向に向き合う一対の直線部を有し、
上記リブは、鉄筋の長手方向に延びるとともに上記扁平な断面形状の長軸方向に向き合う一対の縦リブと、これら縦リブ間に形成され縦リブと交差する方向に延びる横リブを含むことを特徴とする鉄筋。
【請求項5】
請求項に記載の鉄筋により構成され、互いに平行をなして直線的に延びる複数の主筋間に掛け渡され又はこれら主筋を囲うように配置された剪断補強筋であって、
その断面形状の短軸方向に向き合う一対の面が内側と外側になるように曲げられていることを特徴とする剪断補強筋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱、梁、壁、天井、床、基礎等の鉄筋コンクリート構造体に用いられる鉄筋組立体および剪断補強筋に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造体は、コンクリートに鉄筋組立体を埋設することにより構成されている。柱や梁等の長尺の鉄筋コンクリート構造体を例にとって詳しく説明する。特許文献1(特開平8−42064号公報)に開示されているように、鉄筋組立体は、互いに平行をなして直線的に延びる複数の主筋と、これら主筋の長手方向に間隔をおいて配置されるとともにこれら主筋を囲うようにして配された環状または螺旋状の剪断補強筋とを有している。コンクリート面はこの鉄筋組立体を全周にわたって囲う。
【0003】
上記鉄筋組立体の主筋や剪断補強筋に用いられる鉄筋は、断面ほぼ円形をなす基部の外周にコンクリートとの付着性能を高めるためのリブを形成してなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記鉄筋コンクリート構造体では、コンクリートかぶり厚さを規定値以上にすることが建築基準で厳しく求められている。このかぶり厚さは、コンクリート面と、鉄筋組立体においてコンクリート面に最も近い部位との間の距離に相当する。
柱や梁等の長尺のコンクリート構造体を例にとると、上記剪断補強筋が鉄筋組立体の最も外側に配置されており、これら剪断補強筋の外周と上記コンクリート面との間の距離がコンクリートのかぶり厚さとなる。
【0005】
上記のように規定値以上のかぶり厚さを確保することが厳しく要求されているため、コンクリートの断面積を小さくしたり、主筋を外方向(鉄筋コンクリート構造体の中心軸から離れる方向)に偏移させて鉄筋コンクリート構造体の強度を高めたりするのに制約がある。
規定以上のかぶり厚さを確保しつつ、コンクリート断面積の低減や主筋の外方向への偏移を実現するためには、剪断補強筋の径を縮小するしか手段が無いが、そうすると、剪断補強筋の断面積の減少を招き、剪断補強筋の本来の役割を担うことができなくなる。また、この剪断補強筋の断面積の減少を補うために剪断補強筋の配筋ピッチを短くし剪断補強筋の数を増やすと、コンクリートの充填不良を招くとともに部品点数の増大を招く。
【0006】
上記課題は柱や梁等の長尺の鉄筋コンクリート構造体に係わるものであるが、鉄筋の径がコンクリートのかぶり厚さに影響を及ぼす鉄筋コンクリート構造体、例えば平面上を延びる壁、天井スラブ、床スラブや基礎等でも同様の課題を抱えている。
【0007】
なお、特許文献2(特開2006−104884号公報)には、コンクリートへの付着性能を向上させるために、断面形状を扁平にして断面形状の周長を増大させた鉄筋が開示されている。この鉄筋は鉄筋コンクリート構造体に用いられるが、どのようにして用いるか明瞭に開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、鉄筋コンクリート構造体に用いられコンクリートに埋設される鉄筋組立体において、この鉄筋組立体が扁平な断面形状の鉄筋を含み、この扁平な断面形状の鉄筋は、コンクリートの面に沿って延び、その断面形状の短軸方向が当該コンクリートの面と直交するように配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、鉄筋が扁平な断面形状を有し、その断面形状の短軸方向がコンクリート面と直交するため、鉄筋の断面積を十分に確保しつつコンクリート面と直交する方向の鉄筋寸法を減じることができる。その結果、コンクリートかぶり厚さを十分に確保しつつ、コンクリートの断面形状においてコンクリート面と直交する方向の寸法を減じたり、鉄筋コンクリート構造体の全体の強度を向上させることができる鉄筋組立体の配筋構造を採用することができる。
【0009】
本発明の一態様は、直線的に延びる上記鉄筋コンクリート構造体に用いられる鉄筋組立体であって、互いに平行をなして上記鉄筋コンクリート構造体の長手方向に直線的に延びる複数の主筋と、これら主筋の長手方向に間隔をおいて配置されるとともにこれら主筋を囲うようにして配された環状または螺旋状の剪断補強筋とを備え、上記剪断補強筋が上記鉄筋組立体の最も外側に配置され、上記扁平な断面形状の鉄筋からなり、その短軸方向に向き合う一対の面が内側と外側になるように曲げられている。
上記構成によれば、コンクリートかぶり厚さを十分に確保しつつ、コンクリート断面積を減じたり、主筋を外方向に偏移させて全体の強度を高めることができる。また、上記剪断補強筋の曲げ加工がし易い。
【0010】
本発明の他の態様では、直線的に延びる上記鉄筋コンクリート構造体に用いられる鉄筋組立体であって、互いに平行をなして上記鉄筋コンクリート構造体の長手方向に直線的に延びる複数の主筋と、これら主筋の長手方向に間隔をおいて配置されるとともにこれら主筋を囲うようにして配された環状または螺旋状の剪断補強筋とを備え、さらに、一直線上に配された上記主筋同士を連結する筒形状の継手と、この継手を囲うようにして配置された追加の剪断補強筋とを備え、少なくとも上記追加の剪断補強筋は上記扁平な断面形状の鉄筋からなり、その短軸方向に向き合う一対の面が内側と外側になるように曲げられている。
上記構成では、上記継手を囲む追加の剪断補強筋は、継手の厚み分だけコンクリート面に近づくが、この剪断補強筋が扁平な断面形状の鉄筋からなり、その断面形状の短軸方向がコンクリート面と直交するので、この追加の剪断補強筋の断面積を減じることなくコンクリートかぶり厚さを確保することができる。
【0011】
本発明のさらに他の態様では、平面的に広がるとともに互いに平行をなす一対の平坦なコンクリート面を有する鉄筋コンクリート構造体に用いられ、上記一対のコンクリート面と平行な平面上に配置される鉄筋組立体であって、互いに直交する複数の第1筋と複数の第2筋とを備え、上記第1筋と第2筋の少なくともいずれか一方が上記扁平な断面形状の鉄筋からなり、その短軸方向が上記コンクリート面と直交している。
上記構成によれば、コンクリートかぶり厚さを確保しつつ、コンクリート面間の厚さを減じることができる。
【0012】
本発明のさらに他の態様では、平面的に広がるとともに互いに平行をなす一対の平坦なコンクリート面とこれらコンクリート面間を貫通する開口を有する鉄筋コンクリート構造体に用いられ、上記一対のコンクリート面と平行な平面上に配置される鉄筋組立体であって、互いに直交する複数の第1筋と複数の第2筋とを備えるとともに、これら第1筋および第2筋に対して傾斜し上記開口を囲むように配置された複数の斜め筋とを備え、少なくとも上記斜め筋が上記扁平な断面形状の鉄筋からなり、その短軸方向が上記コンクリート面と直交している。
上記構成によれば、コンクリートかぶり厚さを確保するために斜め筋を配筋した分だけコンクリート面間の厚さを増大させる必要が生じるが、斜め筋として扁平な断面形状の鉄筋を用いることにより、この厚さ増大を抑制することができる。
【0013】
さらに本発明は、互いに平行をなして直線的に延びる複数の主筋間に掛け渡され又はこれら主筋を囲うように配置される剪断補強筋において、扁平な断面形状を有する鉄筋からなり、その断面形状の短軸方向に向き合う一対の面が内側と外側になるように曲げられていることを特徴とする。
上記構成によれば、剪断補強筋の曲げ加工を容易に行うことができる。
【0014】
上記剪断補強筋において、好ましくは、基部とこの基部の外周に形成されたリブとを有し、この基部の断面形状の輪郭が、上記短軸方向に向き合う一対の直線部を有している。
この構成によれば、剪断補強筋を歪むことなく一平面上で曲げることができる。
【0015】
さらに好ましくは、 上記リブは、剪断補強筋の長手方向に延びるとともに上記扁平な断面形状の長軸方向に向き合う一対の縦リブと、これら縦リブ間に形成され縦リブと交差する方向に延びる横リブを含む。
これによれば、縦リブが支障にならずに、より一層良好に曲げ加工をすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、鉄筋コンクリート構造体におけるコンクリートかぶり厚さを十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、全ての実施形態で使用される扁平な断面形状の鉄筋を示す断面図である。
図1B図1Bは、同鉄筋の側面図である。
図1C図1Cは、同鉄筋の平面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態をなす鉄筋コンクリート柱の縦断面図であり、上記扁平な断面形状の鉄筋をフープ筋として用いている。
図3図3は、同柱の横断面図である。
図4A図4Aは、図2の要部の拡大断面図である。
図4B図4Bは、図3の要部の拡大断面図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態をなす鉄筋コンクリート柱の横断面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態をなす鉄筋コンクリート柱の横断面図である。
図7図7は、本発明の第4実施形態をなす鉄筋コンクリート梁の縦断面図である。
図8図8は、図7におけるA−A線矢視の拡大断面図である。
図9図9は、本発明の第5実施形態をなす鉄筋コンクリート壁の縦断面図である。
図10図10は、本発明の第6実施形態をなす鉄筋コンクリート壁を、コンクリートを省略して示す正面図である。
図11図11は、同第6実施形態の壁の縦断面図である。
図12図12は、本発明の第7実施形態をなす鉄筋コンクリート布基礎の断面図である。
図13図13は、本発明の第8実施形態をなす鉄筋コンクリートべた基礎の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1A図1Cは全ての実施形態で使用される鉄筋10を示す。この鉄筋10は、通常の異形鉄筋と同様に圧延により形成され、基部11と、この基部11の外周に形成され鉄筋10の長手方向に連続して延びる一対の縦リブ12と、基部11の外周に鉄筋10の長手方向に等間隔をおいて形成された横リブ13とを有している。横リブ13は、上記一対の縦リブ12間において鉄筋10の長手方向及び縦リブ12と交差する方向(図示のように直交するか斜めに交差する方向)に延びている。
【0019】
上記鉄筋10は、通常の異形鉄筋と異なり、扁平な断面形状を有している。この断面形状において、短軸をXで示し、長軸をYで示す。上記鉄筋10の断面形状において、短軸X方向の寸法Lxと長軸Y方向の寸法Lyの比は、1.0:1.2〜1.0:3.0であり、より好ましくは1.0:1.5〜1.0:2.5である。本実施形態では約1:2である。図1A図1Cにおいては、上記比をやや誇張して示している。
【0020】
本実施形態では鉄筋10は断面形状が長円形をなしている。詳述すると、上記基部11は互いに平行をなす一対の平坦面11aと、これら平坦面11aを連ねる一対の円弧面11bとを有して長円形をなしている。一対の平坦面11aは短軸X方向に向かい合い、一対の円弧面11bは長軸Y方向に向かい合っている。
上記一対の平坦面11aは、基部11の断面形状の輪郭における一対の直線部を提供する。
【0021】
上記一対の縦リブ12は、基部11の一対の円弧面11bの中央にそれぞれ形成されており、Y軸方向に離間している。
上記横リブ13は、基部11の平坦面11aに沿って延びる均一高さの直線部と、この直線部に連なり円弧面11bに沿って延びる湾曲部とを有しており、この湾曲部の端は上記縦リブ12に連なっている。
【0022】
次に、上記鉄筋10を含む鉄筋組立体およびこの鉄筋組立体を内蔵した鉄筋コンクリート構造体の種々の実施形態について、説明する。これら実施形態において、上記鉄筋10を用いた補強筋については、数字10に大文字のアルファベットを付して表すこととする。
【0023】
図2図4は、本発明の第1実施形態として、鉄筋コンクリート柱21(直線的に延びる鉄筋コンクリート構造体)を示す。この柱21は、断面四角形のコンクリート22と、このコンクリート22に埋設された直線的に延びる籠状の鉄筋組立体23とを備えている。周知のように、この柱21は、鉄筋組立体23を囲う断面四角形の型枠(図示しない)内の空間に、工場または建築現場でコンクリート22を打設することにより得られる。
【0024】
上記鉄筋組立体23は、鉄筋組立体23の四角形の平面形状の角部に配置され互いに平行をなす4本の垂直の主筋24と、これら主筋24の長手方向に沿ってほぼ等間隔をなして配置された多数のフープ筋10A(剪断補強筋)とを有している。
上記主筋24には、縦リブと横リブを有する通常の異形鉄筋を用いてもよいし、ネジ節を有する鉄筋(ネジ鉄筋)を用いてもよい。
【0025】
上記フープ筋10Aは、例えば溶接閉鎖型フープ筋と称されるものであり、図1A図1Cに示す扁平な断面形状の真直ぐな鉄筋10を折り曲げて四角形の平面形状にし、その両端を溶接することにより得られる。図3において、溶接部を符号10aで示し、折り曲げられた角部を符号10bで示す。上記フープ筋10Aは水平に配置される(主筋24と直角に交差するように配置される)。フープ筋10Aの4つの角部10bは主筋24に接しながらその外側を回りこむようにして掛け渡されている。その結果、フープ筋10Aは4本の主筋24を囲んでおり、鉄筋組立体3の最も外側に位置している。なお、フープ筋10Aと主筋24は細い金属線(図示しない)で連結されている。
【0026】
コンクリート22は鉄筋組立体23の平面形状と相似形の四角形をなす断面形状を有しており、フープ筋10Aの各辺と平行な4つの平坦なコンクリート面22aを有している。上記フープ筋10Aの4つの辺部の外側面とコンクリート面22aとの間の距離が、コンクリート22のかぶり厚さTとなる。
【0027】
図4A図4Bに示すように、上記フープ筋10Aを形成する際、鉄筋10は短軸X方向に対峙する一対の平坦面11a、11aが内側と外側になるように折り曲げられ、これにより上記角部10bが形成される。このように折り曲げ方向の厚さが減じられているので、この折り曲げに要する荷重は小さくて済み、加工し易く、その曲率半径も小さくすることができる。特に本実施形態では、短軸X方向に対峙する一対の面11a,11aが平坦をなしているため(断面形状の輪郭線において短軸X方向に向き合う直線部を有しているため)、鉄筋10は歪むことなく曲げ加工され、一平面上に配置されたフープ筋10Aを得ることができる。
【0028】
上記のように鉄筋10を,短軸X方向に対峙する一対の面11a,11aが外側と内側になるように折り曲げることにより、フープ筋10Aの各辺の断面形状の短軸X方向が、コンクリート面22aと直交することになる。その結果、コンクリート面22aと直交する方向のフープ筋10Aの寸法Lxを、従来の断面形状がほぼ円形の同一断面積の鉄筋を用いた場合に比べて小さくすることができ、この寸法減少分だけコンクリートのかぶり厚さTを大きくすることができる。
【0029】
別の観点から見ると、規定のかぶり厚さを確保しつつ、上記フープ筋10Aの寸法減少に対応してコンクリート22の断面積を小さくできる。
【0030】
さらに別の観点から見ると、主筋24の位置を外方向(柱21の中心から離れる方向)に配置することができ、柱21の強度を高めることができる。この点を、図4Bを参照しながら説明する。従来のように断面円形の鉄筋からなるフープ筋100(図において仮想線で示す)を用いた場合、コンクリート面22aと直交する方向の寸法が大きく、角部100bの曲率半径も大きいので、かぶり厚さTを確保するための主筋104の位置は仮想線で示す位置になる。これに対して、本発明のようにフープ筋10Aとして扁平な断面形状の鉄筋10を用いた場合には、コンクリート面22aと直交する方向の寸法が小さく、角部10bの曲率半径も小さいので、コンクリート22の断面積とかぶり厚さTが同じ場合には、主筋24を従来より外方向に配置することができるのである。
【0031】
さらに別の観点から見ると、従来のように断面円形の鉄筋からなるフープ筋100を用いた場合には、コンクリートかぶり厚さを確保しつつコンクリート22の断面積を小さくしたり主筋104を外方向に偏移するためには、フープ筋100の径を小さくする必要があり、フープ筋100の断面積が減少する。このフープ筋100の断面積の減少を補うためには、フープ筋100の数を増やし配筋ピッチを短くする必要がある。これに対して本発明では、コンクリート22の断面積を小さくしたり主筋24を外方向に偏移させる場合に、フープ筋10Aの断面積を減じないでコンクリートかぶり厚さを確保することができる。その結果、フープ筋10Aの配筋ピッチを短くしないで済み、コンクリートの充填性を損なわずに済む。
【0032】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。これら実施形態において先行する実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
図5に示す第2実施形態の柱21では、フープ筋10Bが鉄筋10の両端部を溶接せずに折り曲げてフック部10c(掛け渡し部)を形成し、これらフック部10cを1つの主筋24に掛けるようにしたものである。フープ筋10Bの角部10b及びフック部10cでの折り曲げ方は第1実施形態と同様であり、短軸X方向に対峙する一対の面11a,11aが外側と内側になるように折り曲げる。
【0033】
図6に示す第3実施形態の柱21では、鉄筋構造体23の四角形の平面形状における角部に位置する主筋24の他に、この平面形状の辺部にも中間主筋25が配置され、これら中間主筋25間に剪断補強筋10Cが掛け渡されている。すなわち、この剪断補強筋10Cの両端部にはフック部10dが形成されており、このフック部10dが中間主筋25に掛けられる。この剪断補強筋10Cもフープ筋10Aと同様に扁平な断面形状の鉄筋10からなり、この鉄筋10の断面形状の短軸X方向に対峙する面が外側と内側になるように曲げられることにより、上記フック部10dが形成される。そのため、剪断補強筋10Cは上記フープ筋10Aよりも外側に突出せず、コンクリート22のかぶり厚さを減じることがない。
【0034】
図7図8示す第4実施形態は、本発明を直線的に水平に延びる鉄筋コンクリート梁31(鉄筋コンクリート構造体)に適用したものである。この梁31は、上記柱21の鉄筋組立体23と基本構造が似た鉄筋組立体33同士を連結し、断面四角形のコンクリート32に埋め込むことにより構成されている。鉄筋組立体33の連結は、一直線上に配置された2本の主筋34の端部同士を継手35に挿入し連結することにより、得られる。主筋34がネジ鉄筋であれば、継手35は内周に雌ネジを有し、主筋34の端部を螺合により連結する。
【0035】
上記主筋34を囲うフープ筋36は通常の鉄筋と同様に断面円形をなす。上記梁31の強度を維持するために、継手35にもフープ筋10D(追加の剪断補強筋)を掛け渡す必要がある。継手35は上記主筋34より径が大きいので、フープ筋10Dとしてフープ筋36と同様に断面ほぼ円形の鉄筋を用いると、フープ筋10Dとコンクリート面32aとの間のコンクリートかぶり厚さTが減じられてしまう。そこで、本実施形態ではこのフープ筋10Dとして、図1で示す扁平断面の鉄筋10を用いる。鉄筋10は先行する実施形態と同様に、短軸Xがコンクリート面32aと直交し、短軸X方向に対峙する一対の面11a,11aが外側と内側になるように曲げられている。その結果、かぶり厚さTの減少を回避できる。
別の観点から見ると、かぶり厚さTを確保するためにフープ筋10Dの断面積を減じずに済み、断面積減少を補うためにフープ筋10Dを増やして配筋ピッチを縮めずに済む。具体的には、フープ筋10Dをフープ筋36と同程度のピッチにすることができる。
第4実施形態において、フープ筋36をも扁平な断面形状の鉄筋10で形成してもよい。
【0036】
上記第1〜第3実施形態の柱の構造は水平に直線的に延びる梁にも適用できる。
また、第4実施形態の梁の構造を柱に適用することもできる。
【0037】
図9に示す第5実施形態は、本発明を鉄筋コンクリート壁41(平面的に広がる鉄筋コンクリート構造体)に適用したものである。この壁41は、2つの鉄筋組立体43をコンクリート42に埋設することにより構成されている。コンクリート42は、互いに平行をなす垂直の面42aを有しており、上記2つの鉄筋組立体43は、これらコンクリート面42aと平行をなしコンクリート42の厚さ方向に離間した2つの平面上にそれぞれ配置されている。
【0038】
各鉄筋組立体43は、垂直筋10E(第1筋)と水平筋10F(第2筋)をその交差部で細い金属線で連結することにより構成されている。
【0039】
上記垂直筋10E,水平筋10Fとして、図1に示す扁平な断面形状の鉄筋10が用いられる。鉄筋10は真直形状のまま、折り曲げずに所定寸法に切断して用いられる。鉄筋10の断面形状の短軸X方向をコンクリート面42aと直交させる。
これにより、コンクリートかぶり厚さTを確保し、かつ鉄筋組立体43間のコンクリート充填スペースを十分に確保しつつ、壁42の厚さを減じることができる。別の見方をすれば、壁42の厚さを変えずに、コンクリートかぶり厚さTを増大させたりコンクリート充填スペースを増大させることができる。
【0040】
図10図11に示す第6実施形態は、本発明を図9と同様に鉄筋コンクリート壁41に適用したものである。壁41に配管(図示しない)等を通すための開口41aが形成されており、鉄筋組立体の垂直筋10E,水平筋10Fは、この開口41aに対応する領域で除去されている。なお、この開口41aは、窓やドアの開口であってもよい。
この開口41aを囲むようにして、左右に追加の垂直筋10E’、上下に追加の水平筋10F’が配置されるとともに、4本の斜め筋10Gが配置されている。
【0041】
本実施形態では、垂直筋10E,水平筋10Fのみならず、追加的な垂直筋10E’,水平筋10F’、斜め筋10Gも、扁平な断面形状の鉄筋10からなり、その短軸X方向がコンクリート面42aと直交している。
【0042】
上記斜め筋10Gを組み込むことにより、コンクリートかぶり厚さや一対の鉄筋組立体43間のコンクリート充填スペースが減じられるが、扁平な断面形状の鉄筋10を用いることにより、これらの減少を抑制することができる。
【0043】
図12に示す第7実施形態は、本発明を鉄筋コンクリート布基礎50(鉄筋コンクリート構造体)に適用したものである。この布基礎50は、家屋の壁に沿って細長く延び、家屋を支持する。布基礎50は、地面GLに埋まった基礎部50Aと、この基礎部50Aから垂直に起立する起立部50Bとを有している。本願では、これら基礎部50Aと起立部50Bもそれぞれ鉄筋コンクリート構造体とみなす。
【0044】
上記基礎部50Aでは、断面長方形のコンクリート51に埋め込まれる基礎側鉄筋組立体52は水平面上に配置され、互いに平行をなす2本の水平筋10(第1筋)と、これら水平筋10間に水平筋10と直交して掛け渡され、水平筋10に沿って等間隔をおいて配置された多数の水平筋10(第2筋)とを有しており、はしご形状をなしている。これら水平筋10H,10Jは、断面扁平の鉄筋10からなり、断面形状の短軸Xが上下方向を向くように、すなわちコンクリート51の上下の水平な面51a,51aと直交するように、配置されている。
【0045】
上記起立部50Bでは、断面長方形のコンクリート53に埋め込まれる起立部側鉄筋組立体54は垂直面上(すなわち、コンクリート53の左右の垂直な面53a,53aと平行な平面上)に配置され、互いに平行をなす2本の水平筋10K(第1筋)と、これら水平筋10K間に掛け渡され水平筋10Kに沿って等間隔をおいて配置された多数の垂直筋10L(第2筋)とを有して、はしご形状をなしている。起立部側鉄筋組立体54の下端が、基礎側鉄筋組立体52のほぼ中央に固定されている。
【0046】
上記水平筋10Kと垂直筋10Lは、断面扁平の鉄筋10からなり、断面形状の短軸Xがコンクリート53の厚み方向に延びるように、すなわちコンクリート53の左右の垂直な面53a,53aと直交するように、配向されている。
【0047】
なお、本実施形態の起立部側鉄筋組立体54は、2本の水平筋10Kと平行をしてその間に配置された中間水平筋10Mを有している。この中間筋10Mの断面積は水平筋10Kより小さい。そのため、本実施形態のように縦筋10Kと同様に断面扁平な鉄筋10を用いてもよいし、断面円形であってもよい。
【0048】
図13に示す第8実施形態は、本発明を鉄筋コンクリート製のべた基礎60(鉄筋コンクリート構造体)に適用したものである。このべた基礎50は、水平スラブ60Aと、家屋の外壁に沿う屋外側起立部60Bと、家屋の屋内の壁に沿う屋内側起立部60Cとを備えている。本願では、これら水平スラブ60Aと起立部60B。60Cもそれぞれ鉄筋コンクリート構造体とみなす。
【0049】
上記水平スラブ60Aは、水平に広がるコンクリート61と、コンクリート61の上下の平坦な面61a,61aと平行をなしてコンクリート61に埋め込まれた鉄筋組立体62とを有している。この鉄筋組立体62は、互いに平行をなす多数の水平筋10P(第1筋)と、これら水平筋10Pと直交する多数の水平筋10Q(第2筋)とを有し、網状をなしている。これら第1筋10P、10Qは、断面扁平の鉄筋10からなり、断面形状の短軸Xが上下に延びるように、すなわちコンクリート61の上下の水平な面61a,61aと直交するように、配向されている。
【0050】
上記屋外側起立部60Bでは、断面長方形のコンクリート63に埋め込まれる鉄筋組立体64は、コンクリート63の左右の平坦な垂直面63a,63aと平行をなす垂直面上に配置されている。平行をなして配置された複数の水平筋10R(第1筋)と、これら水平筋10R間に掛け渡されるとともに水平筋10Rに沿って等間隔をおいて掛け渡された多数の垂直筋10S(第2筋)とを有している。これら水平筋10R,垂直筋10Sは、断面扁平の鉄筋10からなり、断面形状の短軸Xがコンクリート63の厚み方向に延びるように、すなわちコンクリート63の左右の垂直な面63a,63aと直交するように、配向されている。
【0051】
上記垂直筋10Sは、水平スラブ60Aと屋外側起立部60Bの交差部に位置する下端部で折れ曲げられている。すなわち、扁平断面の鉄筋10の短軸方向に対峙する一対の面11a,11aが外側と内側になるように折り曲げられている。
【0052】
屋内側起立部60Cは、断面長方形のコンクリート65とこのコンクリート65に埋め込まれている垂直の鉄筋組立体66により、形成されている。この屋内側起立部60Cは、図12に示す起立部50Bと同様の構造であるから、使用される鉄筋に同番号を付して説明を省略する。
【0053】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態を採用可能である。例えば、扁平な断面形状の鉄筋は、ネジ鉄筋を潰した形状であってもよい。
扁平な断面形状の鉄筋は、断面形状が楕円であってもよい。
【0054】
柱や梁等の鉄筋コンクリート構造体に用いられるフープ筋(剪断補強筋)はスパイラルフープ筋であってもよい。この場合、各巻き部分が鉄筋コンクリート構造体の長手方向に間隔をおいて配置される。
【0055】
鉄筋コンクリート柱の断面は多角形であってもよいし円形であってもよい。円形の場合、フープ筋は平面形状が円形をなすように曲げられる。
図9〜13の実施形態において、第1筋と第2筋のうちのいずれか一方だけを扁平な断面形状の鉄筋で構成してもよい。
図10図11の実施形態において、斜め筋だけを扁平な断面形状の鉄筋で構成してもよい。
図9図11に示す鉄筋コンクリート構造体の構造は、天井スラブや床スラブに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、柱、梁、壁、天井、床、基礎等の鉄筋コンクリート構造体に適用することができる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13