(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5719091
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】フレキシブルチューブ、フレキシブルホース及びフレキシブルチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/16 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
F16L11/16
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-554638(P2014-554638)
(86)(22)【出願日】2013年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2013064677
【審査請求日】2014年11月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505434755
【氏名又は名称】株式会社国産螺旋管
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】紺野 正人
【審査官】
宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−329365(JP,A)
【文献】
特開平2−51688(JP,A)
【文献】
実開昭60−67485(JP,U)
【文献】
特開2003−49981(JP,A)
【文献】
特開2001−220806(JP,A)
【文献】
特開2001−271591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて形成された、液体又は固体を通す、一定の長さを有するフレキシブルチューブであって、
前記液体又は前記固体を通す方向の断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面の形状が真円状の形状である断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状であり、
前記楕円状の形状は、その周囲に前記楕円状の形状の長径より大きな直径を有する断面が真円状の被覆が施された場合に、前記楕円状の形状の外部と前記断面が真円状の被覆の内部との間にケーブル類が通る空間が形成される形状であることを特徴とするフレキシブルチューブ。
【請求項2】
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて形成された、液体又は固体を通す、一定の長さを有するフレキシブルチューブであって、
前記液体又は前記固体を通す方向の断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面の形状が真円状の形状である断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状であり、
前記楕円状の形状は、その内部に前記楕円状の形状の短径より小さな直径を有する断面が真円状の管が通された場合に、前記楕円状の形状の内部と前記断面が真円状の管の外部との間にケーブル類が通る空間が形成される形状であることを特徴とするフレキシブルチューブ。
【請求項3】
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて形成された、液体又は固体を通す、一定の長さを有するフレキシブルチューブであって、前記液体又は前記固体を通す方向の断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面の形状が真円状の形状である断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状であるフレキシブルチューブと、
前記フレキシブルチューブの周囲に形成された、前記楕円状の形状の長径より大きな直径を有する断面が真円状の被覆と、
を含むフレキシブルホース。
【請求項4】
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて形成された、液体又は固体を通す、一定の長さを有するフレキシブルチューブであって、前記液体又は前記固体を通す方向の断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面の形状が真円状の形状である断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状であるフレキシブルチューブと、
前記フレキシブルチューブの内部に形成された、前記楕円状の形状の短径より小さな直径を有する断面が真円状の管と、
含むフレキシブルホース。
【請求項5】
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて、液体又は固体を通す方向の断面の形状が真円状の形状である、一定の長さを有する断面真円状型フレキシブルチューブを形成する形成工程と、
前記断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記形成工程によって形成された断面真円状型フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状となるように前記断面真円状型フレキシブルチューブの外周を押圧する押圧工程と、を有し、
前記楕円状の形状は、その周囲に前記楕円状の形状の長径より大きな直径を有する断面が真円状の被覆が施された場合に、前記楕円状の形状の外部と前記断面が真円状の被覆の内部との間にケーブル類が通る空間が形成される形状であることを特徴とするフレキシブルチューブの製造方法。
【請求項6】
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて、液体又は固体を通す方向の断面の形状が真円状の形状である、一定の長さを有する断面真円状型フレキシブルチューブを形成する形成工程と、
前記断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記形成工程によって形成された断面真円状型フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状となるように前記断面真円状型フレキシブルチューブの外周を押圧する押圧工程と、を有し、
前記楕円状の形状は、その内部に前記楕円状の形状の短径より小さな直径を有する断面が真円状の管が通された場合に、前記楕円状の形状の内部と前記断面が真円状の管の外部との間にケーブル類が通る空間が形成される形状であることを特徴とするフレキシブルチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルチューブ、フレキシブルホース及びフレキシブルチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材を螺旋状に巻回して形成されたフレキシブルチューブは可撓管とも呼ばれ、形状や大きさが異なる様々なものが知られている。フレキシブルチューブは配管、継ぎ手、保護管あるいは埋設管として広く使用されている。このようなフレキシブルチューブの中には、曲げた状態で形状を保持する特性を有するインターロックタイプ、ねじれや引っ張りに加えて側面からの加圧にも強い特性を有するセミインタータイプと呼ばれるものがある。
【0003】
インターロックタイプのフレキシブルチューブでは、例えば特許文献1の
図19(a)に示すように、隣接する線材の噛み合わせ部分にパッキンが挿入されている。パッキンが挿入されていることにより、水が直接チューブ内を通っても防水性が確保される。このため、インターロックタイプのフレキシブルチューブは、例えば湯沸かし器、や浄水器用吐水管、蛇口などで利用されている。
【0004】
一方、セミインタータイプのフレキシブルチューブでは、例えば特許文献1の
図19(b)に示すように、パッキンが利用されずに、隣接する線材同士が堅牢に噛み合わされている。セミインタータイプのフレキシブルチューブは、その内部にインナーチューブと呼ばれる内管(例えば通水管)を通すことにより、例えばシャワーホースとして利用されている。
【0005】
上述したフレキシブルチューブ以外にも、例えば特許文献2に示すように、排気される高温の排気ガスに対し高い耐熱性を要する自動車用排気管の断面形状が楕円形のフレキシブルチューブも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−243065号公報
【特許文献2】特開平11−22456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した水周りなどで利用されるフレキシブルチューブでは、流水方向の断面形状が真円状であることが一般的である。ところが、このようなフレキシブルチューブに対し、線材の巻回方向又はその逆方向に捩れの力が加わると、捩れの力が線材の一部に集中しやすくなる。この結果、例えば、インターロックタイプのフレキシブルチューブであれば、形状を保持しようとする保持力が弱まる。また、セミインタータイプのフレキシブルチューブであれば、捩れの力が集中した部分から捩れ破断が発生しやすくなる。上述した特許文献1及び2には、このようなフレキシブルチューブの特性弱化についての記載はない。
【0008】
そこで、1つの側面では、本発明は、線材の巻回方向又はその逆方向の捩じりに対し、フレキシブルチューブの特性弱化を抑えるフレキシブルチューブ、フレキシブルホース及びフレキシブルチューブの製造方法を提供することを目的とする。尚、当該目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の1つとして位置付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示のフレキシブルチューブは、
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて形成された、液体又は固体を通す、一定の長さを有するフレキシブルチューブであって、前記液体又は前記固体を通す方向の断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面の形状が真円状の形状である断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状であり、前記楕円状の形状は、その周囲に前記楕円状の形状の長径より大きな直径を有する断面が真円状の被覆が施された場合に、前記楕円状の形状の外部と前記断面が真円状の被覆の内部との間にケーブル類が通る空間が形成される形状であることを特徴とするフレキシブルチューブである。
また、本明細書に開示のフレキシブルチューブは、1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて形成された、液体又は固体を通す、一定の長さを有するフレキシブルチューブであって、前記液体又は前記固体を通す方向の断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面の形状が真円状の形状である断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状であり、前記楕円状の形状は、その内部に前記楕円状の形状の短径より小さな直径を有する断面が真円状の管が通された場合に、前記楕円状の形状の内部と前記断面が真円状の管の外部との間にケーブル類が通る空間が形成される形状であることを特徴とするフレキシブルチューブである。
【0010】
本明細書に開示のフレキシブルホースは、
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて形成された、液体又は固体を通す、一定の長さを有するフレキシブルチューブであって、前記液体又は前記固体を通す方向の断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面の形状が真円状の形状である断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状であるフレキシブルチューブと、前記フレキシブルチューブの周囲に形成された、前記楕円状の形状の長径より大きな直径を有する断面が真円状の被覆と、を含むフレキシブルホースである。
【0011】
本明細書に開示のフレキシブルホースは、
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて形成された、液体又は固体を通す、一定の長さを有するフレキシブルチューブであって、前記液体又は前記固体を通す方向の断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面の形状が真円状の形状である断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状であるフレキシブルチューブと、前記フレキシブルチューブの内部に形成された、前記楕円状の形状の短径より小さな直径を有する断面が真円状の管と、含むフレキシブルホースである。
【0012】
本明細書に開示のフレキシブルチューブの製造方法は、
1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて、液体又は固体を通す方向の断面の形状が真円状の形状である、一定の長さを有する断面真円状型フレキシブルチューブを形成する形成工程と、前記断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記形成工程によって形成された断面真円状型フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状となるように前記断面真円状型フレキシブルチューブの外周を押圧する押圧工程と、を有し、前記楕円状の形状は、その周囲に前記楕円状の形状の長径より大きな直径を有する断面が真円状の被覆が施された場合に、前記楕円状の形状の外部と前記断面が真円状の被覆の内部との間にケーブル類が通る空間が形成される形状であることを特徴とするフレキシブルチューブの製造方法である。
また、本明細書に開示のフレキシブルチューブの製造方法は、1枚の帯材の一端と前記帯材を螺旋状に巻回することにより隣接する前記帯材の他端とを噛み合わせて、液体又は固体を通す方向の断面の形状が真円状の形状である、一定の長さを有する断面真円状型フレキシブルチューブを形成する形成工程と、前記断面の形状が、前記一定の長さの全長に渡って、前記形成工程によって形成された断面真円状型フレキシブルチューブが前記帯材の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合に、前記断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる楕円状の形状となるように前記断面真円状型フレキシブルチューブの外周を押圧する押圧工程と、を有し、前記楕円状の形状は、その内部に前記楕円状の形状の短径より小さな直径を有する断面が真円状の管が通された場合に、前記楕円状の形状の内部と前記断面が真円状の管の外部との間にケーブル類が通る空間が形成される形状であることを特徴とするフレキシブルチューブの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に開示のフレキシブルチューブ、フレキシブルホース及びフレキシブルチューブの製造方法によれば、線材の巻回方向又はその逆方向の捩じりに対し、フレキシブルチューブの特性弱化が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、インターロックタイプのフレキシブルチューブを例示する斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、インターロックタイプのフレキシブルチューブを例示する側面図である。
図2(b)は、
図2(a)に示されるフレキシブルチューブを例示する部分断面図である。
【
図3】
図3は、インターロックタイプのフレキシブルチューブを例示する正面図である。
【
図4】
図4は、インターロックタイプのフレキシブルチューブを例示する断面図である。
【
図5】
図5(a)は、被覆が施されたインターロックタイプのフレキシブルチューブを含むフレキシブルホースを例示する断面図である。
図5(b)は、内管が通されたセミインタータイプのフレキシブルチューブを含むフレキシブルホースを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、インターロックタイプのフレキシブルチューブ100を例示する斜視図である。
図2(a)は、インターロックタイプのフレキシブルチューブ100を例示する側面図である。より詳しくは、
図2(a)は、
図1において矢視Aの方向から見た側面図を示している。
図2(b)は、
図2(a)に示されるフレキシブルチューブ100を例示する部分断面図である。より詳しくは、
図2(a)に示す上3つの断面図のうち右2つを拡大した部分断面図である。尚、
図1及び
図2(a)に示すように、フレキシブルチューブ100の一部は切り欠かれており、フレキシブルチューブ100の内部構成が見えるように示されている。
【0017】
フレキシブルチューブ100は、
図1に示すように、1枚の線材110が螺旋状に巻回して形成されている。具体的には、
図2(a)及び(b)に示すように、線材110の長手方向の一端111は逆R字状に折り曲げられる。一方で、線材110の長手方向の他端112は逆J字に折り曲げられる。そして、逆R字状の一端111で形成された内部の隙間111aに、巻回により隣接した線材110の他端112´の先端部が挿入されて挟み込まれる。これにより、線材110と隣接する線材110とが噛み合わさる。尚、線材は例えば板材や帯材とも呼ばれることがある。線材、板材又は帯材には、例えばステンレスが利用される。
【0018】
ここで、
図2(a)においてフレキシブルチューブ100の両端が把持されて、両端が
図2(a)の下方に向かうようにフレキシブルチューブ100が曲げられると、曲げられたフレキシブルチューブ100の外側となる他端112´の先端部(
図2(b)参照)は、隙間111aに挟みこまれた状態を維持しながら、逆R字状の一端111で形成された内部空間から出る方向に移動する。一方、曲げられたフレキシブルチューブ100の内側になる他端112´´の先端部は、隙間111bに挟みこまれた状態を維持しながら、逆R字状の一端111´で形成された内部に入る方向に移動する。このように、フレキシブルチューブ100が曲げられても、他端112´の先端部は、隙間111aに挟まれた状態が維持され、他端112´´の先端部は、隙間111bに挟まれた状態が維持されるため、曲げた状態でフレキシブルチューブ100の形状が保持される。尚、線材110は螺旋状に巻回しているため、他端112´´は紙面の奥側を回って他端112´に対応する。同様に、一端111´は紙面の奥側を回って一端111に対応する。
【0019】
また、
図2(b)に示すように、逆R字状の一端111の外部と巻回により隣接した線材110の外周との間には、隙間111cが形成される。隙間111cには、パッキン120が挿入されている。パッキン120により防水性が確保されている。すなわち、フレキシブルチューブ100内に例えば水や湯などの液体が流れても、液体漏れを防ぐことができる。パッキン120としては、例えば綿糸やゴムがある。尚、パッキン120は、フレキシブルチューブ100の利用用途に応じて挿入しなくてもよい。
【0020】
ところで、断面が真円状のフレキシブルチューブは、線材と隣接する線材との噛み合わせを維持しながら、断面が真円状のシャフト(不図示)の周りをパッキンとともに螺旋状に巻回していくことにより形成される。そして、フレキシブルチューブが一定の長さになったところでシャフトが抜かれる。これにより、一定の長さを有する断面真円状型のフレキシブルチューブが完成される。尚、可能な限りフレキシブルチューブの断面形状は真正な円形であることが望ましいが、誤差などを含めて概ね真円形であればよい。巻回の際には、フレキシブルチューブの内径に応じたシャフトが利用されるため、種々の内径を有するフレキシブルチューブが完成される。完成されたフレキシブルチューブ内には、上述した液体に代えて固体としてのケーブル類が通ることもある。ケーブル類としては、例えば光ファイバーや通信ケーブルといった通信線、電気コードといった通電線などがある。
【0021】
続いて、
図3及び
図4を参照して断面の形状が楕円状であるフレキシブルチューブ100について説明する。
【0022】
図3は、インターロックタイプのフレキシブルチューブ100を例示する正面図である。より詳しくは、
図3は、
図1において矢視Bの方向から見た正面図を示している。
図4は、インターロックタイプのフレキシブルチューブ100を例示する断面図である。より詳しくは、
図4は、
図2(a)において矢視Cの方向から見た断面を模式的に示している。
【0023】
図3及び
図4に示すように、フレキシブルチューブ100は、液体又は固体を通す方向の断面の形状が楕円状の形状である。尚、可能な限りフレキシブルチューブ100の断面形状は真正な楕円形であることが望ましいが、誤差などを含めて概ね楕円形であればよい。断面形状が楕円状であるフレキシブルチューブ100は、断面形状が真円状であるフレキシブルチューブを平な載置台130の上に載せ、
図4の矢印Pに示すように、外周を長手方向に沿って均一の力で押圧することにより形成される。すなわち、断面が真円状であるフレキシブルチューブが押し潰されて変形し、断面が楕円状のフレキシブルチューブ100になる。尚、断面形状が真円状であるフレキシブルチューブの一方の側面を平らな面に当て、他方の側面から押圧してもよい。断面が楕円状のフレキシブルチューブ100は、1回の押圧により完成されてもよいし、複数回の押圧により完成されてもよい。
【0024】
このように形成された断面が楕円状のフレキシブルチューブ100では、楕円状の形状は、線材110の巻回方向又はその逆方向に捩じられた場合、断面真円状型フレキシブルチューブにおける捩れ力の集中部分に、捩じられたことにより生じた捩れ力が伝わりにくくなる形状になる。これにより、断面が楕円状のフレキシブルチューブ100では、線材110の巻回方向又はその逆方向に捩じられても、形状を保持しようとする保持力が強化される。
【0025】
例えば、
図3を参照しつつ、断面が真円状のフレキシブルチューブ(不図示)の紙面奥側を固定し、紙面手前側の線材の巻回方向と逆方向にフレキシブルチューブを捩ろうとすると、断面が真円状であるために、捩れの力が螺旋状に巻回された1枚の線材を伝って固定された部分に難なく集中する。対照的に、
図3に示すように、断面が楕円状のフレキシブルチューブ100の紙面奥側を固定し、矢印Rのように、紙面手前側の線材110の巻回方向と逆方向にフレキシブルチューブ100を捩ろうとすると、断面が楕円状であるために、楕円の長軸上で捩れの力が弱まり、捩れの力は紙面奥側にいけばいくほど伝わりにくくなる。すなわち、捩れの力が紙面手前側から紙面奥側にかけて分散し、捩れの力が一部に集中することが回避される。このため、断面が楕円状のフレキシブルチューブ100では、線材110の巻回方向又はその逆方向に捩じられても、形状を保持しようとする保持力が強化される。尚、線材110の巻回方向と同じ方向に捩られた場合も同様である。
【0026】
以上、インターロックタイプのフレキシブルチューブ100について説明したが、セミインタータイプについても同様の理由により、捩れの力が上記集中部分に伝わりにくくなる。この結果、集中部分からの捩れ破断が発生しにくくなる。すなわち、セミインタータイプであれば、捩れ破断に強いフレキシブルチューブ100が得られる。
【0027】
尚、セミインタータイプは、線材が折り曲げられて加工されたU字状の一端と、巻回して隣接したU字状の他端とが強固に噛み合わさることにより形成される。セミインタータイプでは、インターロックタイプのように噛み合わせ部分に隙間がないか、又はインターロックタイプに比べて極めて隙間が少ないことにより、形状を保持する保持力が発揮されないが、上述したように、ねじれ、引っ張り、側面からの加圧に強い特性を有するだけでなく、しなやかな柔軟性も確保される。
【0028】
さらに、インターロックタイプのフレキシブルチューブ100であっても、セミインタータイプのフレキシブルチューブであっても、断面の形状を楕円状としたことにより、フレキシブルチューブ内外の空間の多様性が確保される。例えば、
図5(a)に示すように、インターロックタイプのフレキシブルチューブ100の周囲に、断面が真円状であって楕円の長径より大きな直径を断面に有する被覆200が施されたフレキシブルホースH1では、楕円の短径と被覆との間には空間が形成される。当該被覆としては、例えばPVC(Polyvinyl Chloride)、ポリオレフィン、シリコンなどの合成樹脂がある。また、
図5(b)に示すように、セミインタータイプのフレキシブルチューブの内部に、断面が真円状であって、楕円の短径より小さな直径を断面に有する内管400を通したフレキシブルホースH2では、楕円の長径と内管との間には空間が形成される。このように形成された空間を利用して、上述した通信線や通電線といった少なくとも1本のケーブル類300を通すようにしてもよい。これにより、例えばフレキシブルチューブの一端に取り付けられた水周りの部品に電力が供給されたり、当該部品を手元で操作して、フレキシブルチューブの他端に取り付けられた制御機器類に指示を与えたりすることができる。当該空間のうちケーブル類300が除かれた部分にケーブル類300の位置ずれを防ぐべく樹脂が充填されていてもよい。尚、ケーブル類が通る空間が確保されれば、楕円状の形状の長径と短径との比率は任意に決めることができる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。尚、上述した巻回方向は線材110をシャフトに巻き付ける方向(内径を絞る方向)として、巻回方向の逆方向は線材110をシャフトから巻き解く方向(内径を膨らませる方向)として説明している。
【符号の説明】
【0030】
100 フレキシブルチューブ
110 線材
111 長手方向の一端
112 長手方向の他端
120 パッキン
130 載置台
200 被覆
300 ケーブル類
400 内管
H1,H2 フレキシブルホース
【要約】
線材を螺旋状に巻回して形成された、液体又は固体を通すフレキシブルチューブであって、液体又は固体を通す方向の断面の形状が楕円状の形状であることを特徴とすることにより、線材の巻回方向又はその逆方向の捩じりに対し、フレキシブルチューブの特性弱化を抑えるようにした。