(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気光学表示媒体(102)は、懸濁流体(106)と、前記懸濁流体(106)中に懸濁されて前記懸濁流体(106)に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子(108、116)と、前記懸濁流体(106)および前記荷電粒子(108、116)を取り囲むカプセル壁を有する少なくとも1つのカプセル(104、104'、104")とを含む電気泳動媒体である、請求項1に記載の電気光学表示要素。
前記電気光学表示媒体(102)は、懸濁流体と、前記懸濁流体中に懸濁されて前記懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、前記荷電粒子および前記懸濁流体が配置される複数の空洞を有するキャリア媒体とを含むマイクロセル媒体である、請求項1に記載の電気光学表示要素。
前記電気光学表示媒体(102)は、それぞれが異なる光学特性を有する2つ以上の区域を有する複数の物体と内部双極子とを含む回転二色部材型媒体であり、前記物体は、マトリックス内にある液体を満たした小腔内部に懸濁されており、これにより、回転自在である、請求項1に記載の電気光学表示要素。
【背景技術】
【0002】
電気光学ディスプレイは電気光学材料層を含む。電気光学材料という語は、本明細書で当技術分野における慣用的な意味において使用するものであり、少なくとも1つの光学的性質の異なる第一および第二表示状態を有し、この材料への電界の印加により、この材料がその第一表示状態からその第二表示状態へ変化するものを指す。この光学的性質とは、通常、人間の目に知覚できる色のことであるが、別の光学的性質、例えば光伝送、反射率、発光の場合があり、あるいはディスプレイが機械読出しを目的としている際には、可視域外の電磁波長反射率が変化するという意味での疑似色の場合もある。
【0003】
本発明のほとんどの態様は、電気光学媒体を含む電気光学ディスプレイでの使用が意図されている。この電気光学媒体は、液体あるいはガスを満たした内部空隙を有することがあり、しかも多くの場合そうであるが、外表面が固体であるという意味で固体である(このようなディスプレイを、以下、便宜上「固体電気光学ディスプレイ」と称する場合がある)。さらに、このような電気光学媒体を使用してディスプレイを組み立てる方法が意図されている。したがって、「固体電気光学ディスプレイ」という語は、カプセル型電気泳動ディスプレイ、回転二色部材型ディスプレイ、エレクトロクロミック型ディスプレイ、マイクロセル型ディスプレイ、および以下で議論するその他の種類のディスプレイを含む。
【0004】
電気光学ディスプレイの1つの種類として回転二色部材型があり、これは例えば、米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、第6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、第6,147,791号に記載されている(この種類のディスプレイはしばしば「回転二色ボール」型ディスプレイと呼ばれるが、上記の特許には回転部材が球形でないものがあるため、より厳密な意味では「回転二色部材」という語が好ましい)。このようなディスプレイは、光学的性質の異なる2つ以上の区域を有する多数の小さい物体(通常は球形あるいは円筒形である)と内部双極子とを使用している。これらの物体はマトリックス内にある液体を満たした小腔内部に懸濁されており、この小腔には液体が充填されているので物体が回転自在である。そこに電界を印加し、したがって物体を様々な位置に回転して、物体のどの区域が画面を通して見えるかを変えることによってディスプレイの見え方が変化する。
【0005】
別の種類の電気光学媒体には、エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成された電極と、電極に付着される可逆的に変色可能な複数の色素分子とを含むナノクロミック・フィルム形状のエレクトロクロミック媒体がある。例として、O'Regan,B., et al.によるNature 1991, 353, 737、およびWood, D.によるInformationDisplay、18(3), 24(March 2002)を参照されたい。また、Bach, U., et al.によるAdv. Mater., 2002,14 (11), 845も参照されたい。この種類のナノクロミック・フィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、国際出願公開第01/27690号、同時係属出願シリアル番号第10/249,128号(2003年3月18日付け出願)にも記載されている。
【0006】
別の種類の電気光学ディスプレイには(これは多年にわたって懸命なる研究開発の主題であったが)、粒子を基にした電気泳動ディスプレイがあり、この電気泳動ディスプレイでは、複数の帯電粒子が電界の影響下に懸濁流体中を動き回る。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して、良好な輝度およびコントラスト、広い視野角、状態双安定性、低消費電力という特性をもつことが可能である。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期的画質に問題があり、その広範囲にわたる利用が妨げられていた。例として、電気泳動ディスプレイを構成する粒子が沈降しやすく、その結果、これらのディスプレイの耐用年数が不十分になるということがある。
【0007】
マサチューセッツ工科大学(MIT)ならびにイー・インク社(E Ink Corporation)
に譲受され、あるいはこれらの名義となっている特許および出願で、カプセル型電気泳動媒体を記載したものが近年多数刊行されている。このようなカプセル型媒体は多数の小型カプセルを有し、その小型カプセル自体がそれぞれ、液状懸濁媒体中に懸濁された電気泳動的に移動可能な粒子を含有する内水相と、この内水相を取り囲むカプセル壁とを有する。通常カプセルはそれ自体高分子結合剤内で保持されて、2つの電極間に位置する干渉層を形成する。この種類のカプセル型媒体は、例えば以下に記載されている。米国特許第5,930,026号、第5,961,804号、第6,017,584号、第6,067,185号、第6,118,426号、第6,120,588号、第6,120,839号、第6,124,851号、第6,130,773号、第6,130,774号、第6,172,798号、第6,177,921号、第6,232,950号、第6,249,721号、第6,252,564号、第6,262,706号、第6,262,833号、第6,300,932号、第6,312,304号、第6,312,971号、第6,323,989号、第6,327,072号、第6,376,828号、第6,377,387号、第6,392,785号、第6,392,786号、第6,413,790号、第6,422,687号、第6,445,374号、第6,445,489号、第6,459,418号、第6,473,072号、第6,480,182号、第6,498,114号、第6,504,524号、第6,506,438号、第6,512,354号、第6,515,649号、第6,518,949号、第6,521,489号、第6,531,997号、第6,535,197号、第6,538,801号、第6,545,291号、第6,580,545号、米国特許出願公開第2002/0019081号、第2002/0021270号、第2002/0053900号、第2002/0060321号、第2002/0063661号、第2002/0063677号、第2002/0090980号、第2002/0106847号、第2002/0113770号、第2002/0130832号、第2002/0131147号、第2002/0145792号、第2002/0171910号、第2002/0180687号、第2002/0180688号、第2002/0185378号、第2003/0011560号、第2003/0011867号、第2003/0011868号、第2003/0020844号、第2003/0025855号、第2003/0034949号、第2003/0038755号、第2003/0053189号、第2003/0076573号、第2003/0096113号、第2003/0102858号、第2003/0132908号、第2003/0137521号、第2003/0137717号、国際出願公開第99/67678号、第00/05704号、第00/38000号、第00/38001号、第00/36560号、第00/67110号、第00/67327号、第01/07961号、第01/08241号。
【0008】
上述の特許および出願の多くでは認識されていることであるが、カプセル型電気泳動媒体中の不連続なマイクロカプセルを取り囲んでいる壁を連続相に代えて、電気泳動媒体が電気泳動流体の複数の不連続な液滴と高分子材料の連続相とを有するいわゆる高分子分散型電気泳動ディスプレイを製造することもでき、このような高分子分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の不連続な液滴は、個々の各液滴に関与する不連続なカプセル膜がなくても、カプセルあるいはマイクロカプセルと見做すことができる(例えば上述の第2002/0131147号を参照)。したがって、本願の目的のためにこのような高分子分散型電気泳動媒体をカプセル型電気泳動媒体の亜種と見做す。
【0009】
カプセル型電気泳動ディスプレイでは、一般に従来の電気泳動装置のクラスター形成や沈降故障モードに悩まされることはなく、さらなる利点、例えば広範な種類の可撓性基板や剛性基板へディスプレイをプリントあるいはコーティングする能力をもたらす。(「プリント」という語の使用は、あらゆる形態のプリントおよびコーティングを含むと解釈され、以下のものが挙げられるが、これに限定されない。パッチ・ダイコーティング(patchdie coating)や、スロットまたは押出コーティングや、スライドまたはカスケードコ
ーティング(cascadecoating)や、カーテンコーティングなどの予め計量したコーティング、ナイフ・オーバー・ロールコーティング(knife overroll coating)や、正回転お
よび逆回転ロールコーティングなどのロールコーティング、グラビアコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷法、静電印刷法、感熱印刷法、インクジェット印刷法、およびその他の同様の技術。)したがって、得られるディスプレイを可撓性にすることができる。さらに、表示媒体を(種々の方法により)プリントすることができるので、ディスプレイ自体を安価に作製することができる。
【0010】
電気泳動ディスプレイの関連の種類に、いわゆる「マイクロセル型電気泳動ディスプレイ」がある。マイクロセル型電気泳動ディスプレイでは、帯電粒子および懸濁流体はマイクロカプセル内に封入されているのではなく、代わりにキャリア媒体内、一般に高分子フィルム内に形成された複数の空洞内で保持される。例えば、国際出願公開第02/01281号、および公開された米国特許出願第2002/0075556号(いずれもSipixImaging, Inc社に譲受)を参照されたい。
【0011】
電気光学媒体のほとんどの種類は、光学状態を限定数のみ有する。例えば、暗(黒)状態、明(白)状態と、単数または複数の中間グレー状態がある場合もある。したがって、このような媒体を使用してフルカラーディスプレイを構成するために、一般的な方法として例えば多数の赤、緑、青領域を有するカラーフィルタの付近に電気光学媒体を配置して、赤、緑、あるいは青領域それぞれの付近の媒体を独自に制御できる電気光学媒体の駆動配列を提供するということがある。前述の出願シリアル番号第09/289,507号には、電気泳動ディスプレイでのカラーフィルタのある応用例が記載されている。前述の第2003/0011560号では、ディスプレイの幾つかの要素のうちの任意の1つに光学的バイアス用要素を組み込むことによって、電気泳動ディスプレイの光学的性質を変えるための方法が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電気光学ディスプレイで使用する改良型カラーフィルタと、このようなディスプレイで色を生成する改良型方法とを提供しようとする。
【0013】
本発明は一態様において、懸濁流体中に分散した複数の荷電粒子を含む電気泳動媒体を提供する。この媒体は、粒子が実質的に同一の電気泳動的流動性を有するが、色の異なる少なくとも2種類の粒子を含むことを特徴とする。本発明のこの態様を、以下、「カスタムカラー」電気泳動媒体と称する場合がある。
【0014】
このカスタムカラー電気泳動媒体では、荷電粒子は、シリカおよびシリカ・アルミナから選択された被覆剤でコーティングすることのできる無機顔料から形成されるのが望ましい。荷電粒子はポリマーでコーティングしてもよい。荷電粒子および懸濁流体は少なくとも1つのカプセル内に保持することができる。
【0015】
本発明は、本発明のカスタムカラー電気泳動媒体を形成するための方法も提供する。この方法は、
色の異なる少なくとも2つの顔料を混合して顔料混合物を形成するステップと、
この顔料混合物に少なくとも1回の表面処理を施すステップと、
表面処理した顔料混合物を懸濁流体中に分散させて、実質的に同一の電気泳動的流動性を有するが色の異なる少なくとも2種類の粒子を形成するステップと
を含む。
【0016】
この方法において、表面処理には、顔料混合物をシランカップリング剤で処理し、顔料混合物にポリマーが付着できる部位を提供するステップと、その後シリル化した顔料混合物を、ポリマーが顔料混合物表面を形成するのに有効な条件下に少なくとも1つのモノマーおよびオリゴマーで処理するステップとを含んでもよい。
【0017】
別の態様において、本発明は、
電気光学表示媒体と、
電気光学表示要素の光学的性質を変えるために配置された光学的バイアス用要素と、
電気光学表示媒体をアドレスするためのアドレス電極と
を含む電気光学表示要素を提供する。この電気光学表示要素は、電気光学表示要素の異なる部分部分で光学的バイアス用要素の色が変化する結果、光学的バイアス用要素がカラーフィルタを形成することを特徴とする。
【0018】
本発明のこの態様を、以下、「内部カラーフィルタ」表示要素と称する場合がある。
【0019】
このような内部カラーフィルタ表示要素では、電気光学表示媒体は、懸濁流体と、懸濁流体中に懸濁されて懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、懸濁流体および荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを有する少なくとも1つのカプセルを含む電気泳動媒体であってもよく、表示要素は、カプセルを取り囲む結合剤、および/または電気泳動媒体付近に配置される積層接着剤、および/または電気泳動媒体とディスプレイの画面との間に配置された前部電極を任意で含むので、光学的バイアス用要素をカプセル壁、結合剤、積層接着剤、および前部電極のうちの少なくとも1つの中に配置することができる。
【0020】
本発明の関連の別の態様では、固体電気光学媒体層と、そこに電界を印加するために電気光学媒体層付近に配置された少なくとも1つの電極と、電気光学媒体と電極との間に配置されたカラーフィルタアレイとを含む電気光学ディスプレイを提供する。そして、このディスプレイは、カラーフィルタアレイの抵抗が電気光学媒体層の抵抗よりも実質的に大きくないことを特徴とする。
【0021】
このような電気光学ディスプレイでは、カラーフィルタアレイは通常、約10
10ohm−cm以下の体積抵抗率を有することになる。
【0022】
別の態様において、本発明は、複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、懸濁流体中に懸濁されて懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、懸濁流体および荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含み、この媒体がさらにカラーフィルタアレイを含むものを提供する。そしてこの電気泳動媒体は、カラーフィルタアレイが複数の非矩形ピクセルを有することを特徴とする。この電気泳動ディスプレイの好ましい形態において、カラーフィルタアレイのこれらのピクセルは、六角形、正方形、あるいは三角形であり、好ましくは正三角形である。
【0023】
別の態様において、本発明は、
第一表面およびその反対側に第二表面を有する固体電気光学媒体層と、
この固体電気光学媒体層の第一表面上にある第一接着材層と、
電気光学媒体層から第一接着材層の反対側に配置された(第一)剥離シートと、
固体電気光学媒体層の第二表面上にある第二接着材層と
を含む製品を提供する。
【0024】
本製品の好ましい形態は、固体電気光学媒体層から第二接着材層の反対側に配置された第二剥離シートをさらに含む。
【0025】
本製品では、電気光学媒体は複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、懸濁流体中に懸濁されて懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、懸濁流体および荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含んでもよい。さらに、第一および第二接着材層は電気光学媒体層の周辺部より先に延びてもよい。以下にさらに詳しく記述するように、このことはディスプレイ用端面シールを形成するのに都合のよい方法を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、
第一表面およびその反対側に第二表面を有する固体電気光学媒体層と
固体電気光学媒体層の第一表面を保護する第一剥離シートと、
固体電気光学媒体層の第二表面を保護する第二剥離シートと
を含む製品を提供する。
【0027】
前述の製品を、以下、本発明の「二重剥離フィルム」と称する場合がある。
【0028】
本発明はまた、本発明の二重剥離フィルムを使用した電気光学ディスプレイを形成するための方法も提供する。この方法は、
第一表面およびその反対側に第二表面を有する固体電気光学媒体層と、固体電気光学媒体層の第一表面上にある第一接着材層と、固体電気光学媒体層から第一接着材層の反対側に配置された剥離シートと、固体電気光学媒体層の第二表面上にある第二接着材層とを含む製品を提供するステップと、
第二接着材層を介して前面基板へ製品を積層し、それにより前部サブアセンブリを形成するステップと、
前部サブアセンブリから剥離シートを除去するステップと、
前部サブアセンブリを、第一接着材層を介して少なくとも1つの電極を含む背面板へ積層し、それにより電気光学ディスプレイを形成するステップと
を含む。
【0029】
この方法において、前面基板は、電極、および/またはカラーフィルタアレイを含んでもよい。製品は第二接着材層を保護する第二剥離シートを含んでもよく、この方法は、前面基板へ製品を積層する前に第二剥離シートを第二接着材層から除去するステップを含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、カラーフィルタアレイを形成するための方法であって、この方法が、
感光性フィルムをイメージングし、その上にカラーフィルタアレイのパターンを形成するステップと、
その後、感光性フィルム上に導電層を堆積するステップと
を含むものを提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、電気泳動ディスプレイを形成するための方法であって、この方法が、
カラーフィルタアレイを提供するステップと、
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、懸濁流体中に懸濁されて懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、懸濁流体および荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含むものを提供するステップと、
カラーフィルタアレイ上に電気泳動媒体を堆積し、コーティングされたカラーフィルタアレイを形成するステップと、
その後、コーティングされたカラーフィルタアレイを、少なくとも1つの画素電極を有する背面板へ積層するステップと
を含むものを提供する。
【0032】
本方法では、カラーフィルタアレイの表面は、表面上の表面エネルギーを変化させる領域を生成するために、堆積前に処理された表面であってもよい。
【0033】
別の態様において、本発明は、電極に電気泳動媒体を堆積するための方法であって、この方法が、
電極を提供するステップと、
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、懸濁流体中に懸濁されて懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、懸濁流体および荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含むものを提供するステップと、
電極を表面処理して、表面上の表面エネルギーを変化させる領域を生成するステップと、
表面処理された電極に電気泳動媒体を堆積するステップと
を含むものを提供する。
【0034】
最後に、本発明は、電気泳動ディスプレイを形成するための方法であって、この方法が、
前面基板を提供するステップと、
背面板を提供するステップと、
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、懸濁流体中に懸濁されて懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、懸濁流体および荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含むものを提供するステップと、
前面基板の表面を表面処理してカプセルによりその濡れを促進するステップと、
背面板の表面を表面処理してカプセルによりそのディウェッティングを促進するステップと、
前面基板および背面板を、それらの処理表面が相互に向き合うようにし、処理表面間に隙間を持たせて共に組み立てるステップと、
電気泳動媒体をこの隙間へ導入し、それによって電気泳動媒体のカプセルが前面基板の処理表面に対してパッキングされるステップと
を含むものを提供する。
(項目1)
懸濁流体中に分散された複数の荷電粒子を含む電気泳動媒体であって、上記粒子が、実質的に同一の電気泳動的流動性を有するが色の異なる少なくとも2種類の粒子を含むことを特徴とする電気泳動媒体。
(項目2)
上記荷電粒子が無機顔料を含む、項目1記載の電気泳動媒体。
(項目3)
上記荷電粒子がシリカあるいはシリカ/アルミナからなる被覆剤でコーティングされる、先行項目のいずれか1項記載の電気泳動媒体。
(項目4)
上記荷電粒子がポリマーでコーティングされている、先行項目のいずれか1項記載の電気泳動媒体。
(項目5)
上記荷電粒子および上記懸濁流体が少なくとも1つのカプセル内に保持されている、先行項目のいずれか1項記載の電気泳動媒体。
(項目6)
電気泳動媒体を形成するための方法であって、この方法が、
色の異なる少なくとも2つの顔料を混合して顔料混合物を形成するステップと、
上記顔料混合物に少なくとも1回の表面処理を施すステップと、
上記表面処理された顔料混合物を懸濁流体中に分散させて、実質的に同一の電気泳動的流動性を有するが色の異なる少なくとも2種類の粒子を形成するステップと
を特徴とする方法。
(項目7)
上記表面処理が、上記顔料混合物をシリカあるいはシリカ/アルミナからなる被覆剤でコーティングするステップを含む、項目6記載の方法。
(項目8)
上記表面処理が、上記顔料混合物にポリマーを形成するステップを含む、項目6または7記載の方法。
(項目9)
上記表面処理が、上記顔料混合物をシランカップリング剤で処理し、ポリマーが上記顔料混合物に付着できる部位を提供するステップと、その後、ポリマーを上記顔料混合物表面上に形成させるのに有効な条件下に上記シリル化した顔料混合物を少なくとも1つのモノマーあるいはオリゴマーで処理するステップとを含む、項目8記載の方法。
(項目10)
上記荷電粒子および上記懸濁流体を少なくとも1つのカプセル内にカプセル化するステップをさらに含む、項目6〜9のいずれか1項記載の方法。
(項目11)
電気光学表示媒体(102)と、
上記電気光学表示要素(102)の光学特性を変化するように配置された光学的バイアス用要素と、
上記電気光学表示媒体(102)をアドレスするためのアドレス電極(110、112)とを含む電気光学表示要素(100)であって、
上記光学的バイアス用要素の色が、上記電気光学表示要素(100)の異なる部分部分で変化し、その結果、上記光学的バイアス用要素がカラーフィルタを形成することを特徴とする電気光学表示要素。
(項目12)
上記電気光学表示媒体(102)が、懸濁流体(106)と、上記懸濁流体(106)中に懸濁されて上記懸濁流体(106)に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子(108、116)と、上記懸濁流体(106)および上記荷電粒子(108、116)を取り囲むカプセル壁を有する少なくとも1つのカプセル(104、104'、104")とを含む電気泳動媒体であって、上記表示要素(100)が、上記カプセルを取り囲む結合剤、および/または上記電気泳動媒体(102)付近に配置された積層接着剤、および/または上記電気泳動媒体(102)と上記ディスプレイの画面との間に配置された前部電極(110)を選択的に含み、上記光学的バイアス用要素が上記カプセル壁、上記結合剤、上記積層接着剤、上記前部電極(110)のうちの少なくとも1つに配置されている、項目11記載の電気光学表示要素。
(項目13)
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、上記懸濁流体中に懸濁されて上記懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、上記懸濁流体および上記荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含み、上記媒体がカラーフィルタアレイをさらに含む媒体であって、上記カラーフィルタアレイが複数の非矩形ピクセルを有することを特徴とする電気泳動媒体。
(項目14)
上記カラーフィルタアレイの上記ピクセルが六角形、正方形、あるいは三角形である、項目13記載の電気泳動媒体。
(項目15)
固体電気光学媒体層と、そこに電界を印加するために上記電気光学媒体層付近に配置された少なくとも1つの電極と、上記電気光学媒体と上記電極との間に配置されたカラーフィルタアレイとを含む電気光学ディスプレイであって、上記カラーフィルタアレイの抵抗が上記電気光学媒体層の抵抗よりも実質的に大きくないことを特徴とする電気光学ディスプレイ。
(項目16)
上記カラーフィルタアレイが約1010ohm−cm以下の体積抵抗率を有する、項目15記載の電気光学ディスプレイ。
(項目17)
電気光学ディスプレイに使用するための構成要素である製品(300)であって、上記製品が、第一表面およびその反対側に第二表面を有する固体電気光学媒体層(302)と、上記固体電気光学媒体層(302)の上記第一表面上にある第一接着材層(308)とを含む製品であって、上記固体電気光学媒体層(302)から上記第一接着材層(308)の反対側に配置された剥離シート(310)と、上記固体電気光学媒体層(302)の上記第二表面上にある第二接着材層(312)とを特徴とする製品。
(項目18)
上記固体電気光学媒体層(302)から上記第二接着材層(312)の反対側に配置された第二剥離シート(314)をさらに含む、項目17記載の製品。
(項目19)
上記電気光学媒体(302)が複数のカプセル(304)を含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、上記懸濁流体中に懸濁されて上記懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、上記懸濁流体および上記荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含む、項目17または18記載の製品。
(項目20)
上記第一および第二接着材層(308、312)が上記電気光学媒体層(302)の周辺部より先に延びている、項目17〜19のいずれか1項記載の製品。
(項目21)
電気光学ディスプレイで使用するための構成要素である製品(300)であって、上記製品が、
第一表面およびその反対側に第二表面を有する固体電気光学媒体層(302)と、
上記固体電気光学媒体層(302)の上記第一表面を保護する第一剥離シート(310)とを含む製品であって、
上記固体電気光学媒体層(302)の上記第二表面を保護する第二剥離シート(314)を特徴とする製品(300)。
(項目22)
上記電気光学媒体(302)が複数のカプセル(304)を含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、上記懸濁流体中に懸濁されて上記懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、上記懸濁流体および上記荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含む、項目21記載の製品。
(項目23)
電気光学ディスプレイを形成するための方法であって、
第一表面およびその反対側に第二表面を有する固体電気光学媒体層と、上記固体電気光学媒体層の上記第一表面上にある第一接着材層と、上記固体電気光学媒体層から上記第一接着材層の反対側に配置された剥離シートと、上記固体電気光学媒体層の上記第二表面上にある第二接着材層とを含む製品を提供するステップと、
上記第一接着材層を介して前面基板に上記製品を積層し、それにより前部サブアセンブリを形成するステップと、
上記剥離シートを上記前部サブアセンブリから除去するステップと、
上記前部サブアセンブリを上記第一接着材層を介して少なくとも1つの電極を含む背面板へ積層し、それにより上記電気光学ディスプレイを形成するステップと
を特徴とする方法。
(項目24)
上記前面基板が電極を含む、項目23記載の方法。
(項目25)
上記前面基板がカラーフィルタアレイを含む、項目23または24記載の方法。
(項目26)
上記製品が上記第二接着材層を保護する第二剥離シートを含み、上記方法が、上記製品を上記前面基板へ積層する前に上記第二剥離シートを上記第二接着材層から除去するステップを含む、項目23〜25のいずれか1項記載の方法。
(項目27)
上記製品の上記第一および第二接着材層が上記電気光学媒体層の周辺部より先に延び、上記方法の間、上記第一および第二接着材層の上記周辺部分が相互に接着され、それにより上記電気光学媒体の周りに端面シールを形成する、項目23〜26のいずれか1項記載の方法。
(項目28)
カラーフィルタアレイを形成するための方法であって、
感光性フィルムをイメージングし、その上にカラーフィルタアレイのパターンを形成するステップと、
その後、上記感光性フィルム上に導電層を堆積するステップと
を特徴とする方法。
(項目29)
電気泳動ディスプレイを形成するための方法であって、上記方法が、
カラーフィルタアレイを提供するステップと、
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、上記懸濁流体中に懸濁されて上記懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、上記懸濁流体および上記荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含む電気泳動媒体を提供するステップとを含む方法であって、
上記カラーフィルタアレイ上に上記電気泳動媒体を堆積してコーティングされたカラーフィルタアレイを形成するステップと、
その後、上記コーティングされたカラーフィルタアレイを、少なくとも1つの画素電極を含む背面板へ積層するステップとを特徴とする方法。
(項目30)
上記カラーフィルタアレイの上記表面が上記堆積より前に表面処理されて、上記表面上で表面エネルギーが変化する領域を生成する、項目29記載の方法。
(項目31)
電極上に電気泳動媒体を堆積するための方法であって、上記方法が、
電極を提供するステップと、
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、上記懸濁流体中に懸濁されて上記懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、上記懸濁流体および上記荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含む電気泳動媒体を提供するステップとを含む方法であって、
上記電極を表面処理してその上で表面エネルギーが変化する領域を生成するステップと、
上記電気泳動媒体を上記表面処理された電極上に堆積するステップとを特徴とする方法。
(項目32)
電気泳動ディスプレイを形成するための方法であって、上記方法が、
前面基板を提供するステップと、
背面板を提供するステップと、
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、カプセルのそれぞれが、懸濁流体と、上記懸濁流体中に懸濁されて上記懸濁流体に電界が印加されるとそこで動き回ることのできる複数の荷電粒子と、上記懸濁流体および上記荷電粒子を取り囲むカプセル壁とを含む電気泳動媒体を提供するステップとを含む方法であって、
上記前面基板の表面を表面処理して上記カプセルによりその濡れを促進するステップと、
上記背面板の表面を表面処理して上記カプセルによりそのディウェッティングを促進するステップと
上記前面基板および上記背面板を、それらの上記処理表面が相互に向き合うようにし、上記処理表面間に隙間を持たせて共に組み立てるステップと
上記電気泳動媒体を上記隙間へ導入し、それによって上記電気泳動媒体の上記カプセルが上記前面基板の上記処理表面に対してパッキングされるステップと
を特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、電気光学ディスプレイの幾つかの異なる改良型カラーフィルタおよび他の態様と、このようなディスプレイにおいて色を生成する改良型方法とを提供する。これらの多様な改良は、単独で使用してもよく、様々に組み合わせて使用してもよい(例えば本発明のイメージング方法により生成される非矩形ピクセルを有するカラーフィルタアレイを、単一のディスプレイが採用することもできよう。以下、本発明の様々な態様を便宜上別々に記述するが、本発明の多数の態様は、単一の電気光学ディスプレイでも、あるいはその構成要素でも使用できるということが常に念頭に置かれるべきである。
【0037】
第A部−電気泳動ディスプレイのカスタムカラー
前述のイー・インク社ならびにMITの特許および公開された出願の幾つかにおいて議論されているように、電気泳動ディスプレイにおいて、カラーフィルタを使用する代わりに、異なる色を呈することのできる数種類のカプセルを使用している。例えば、前述の第2002/0180688号が
図3Iにおいて示すカプセル型電気泳動ディスプレイの1つのピクセルは、3つのサブピクセルを含み、そのサブピクセルのそれぞれが単一のカプセルを含んで3つの色を呈することができる。こちらは実際にこの
図3Iに関して記述される色ではないが、フルカラーRGBディスプレイは、白/黒/赤、白/黒/緑、白/黒/青の光学状態が可能なカプセルを使用して製造できるということが、電気光学ディスプレイ技術の専門家には容易に理解されよう。
【0038】
電気光学ディスプレイの1つの主要な商業的用途は広告用であり、広告用材料では、表示される色を特定の顧客用にカスタマイズできることが望ましい。例えば、多くの大手企業は確立した企業慣習を有し、このため、あるカラーロゴおよび/または登録商標が絶対的に終始一貫した方式で表示され、当該ロゴあるいは登録商標の各部分の本来の色がパントン(「パントン」は登録商標)あるいは同様のカラーシステムの用語で特定されることが必要となる。したがって、このような企業は、自社ロゴの(例えば)青色部分を正確に表現するために、ディスプレイの色域(ディスプレイで表示できる色範囲)が幾つか減少することを犠牲にしてもRGB電気泳動ディスプレイの青色状態のカスタマイズを要求することがある。
【0039】
一見して電気泳動ディスプレイでの色のこのようなカスタマイズは大変な障害を引き起こすように思われる。電気泳動ディスプレイで使用する粒子の種類を確定することは複雑な過程であり、これには、粒子の色のほか、とりわけ、一貫した電荷量(したがって一貫した電気泳動的流動性)を維持するその能力、集合体になろうとする傾向、光に対する耐変色性、および電気泳動媒体の、他の要素(例えば電気泳動粒子が懸濁されている懸濁流体やカプセル壁など)との相性をも考慮しなければならない。必要な検査をすべて実行することは、時間と費用のかかる処理となり、顧客がディスプレイにカスタムカラーを要求する都度、経済的に実行することはできない。さらに実際問題として、有機顔料は褪色が速すぎるため、電気泳動ディスプレイにあまり有用ではなさそうであることがわかっており、その結果、市販用ディスプレイは金属酸化物あるいは類似の無機顔料を使用しているが、このような無機顔料の厳密な色は有機顔料よりずっと変化しにくい。
【0040】
ところが、電気泳動ディスプレイにおいて、特定の色(例えば前述の
図3Iで示す青色粒子)を生成するのに使用される特定の種類の全電気泳動粒子は、仮に同一の種類の粒子がすべて同様の電気泳動的流動性を有することでそれらがディスプレイの作動中に分離しないとすれば、同一の色である必要はないということが今ではわかっている。一般に直径が1μm規模である1つ1つの電気泳動粒子は極めて小さすぎてディスプレイの観察者には見えない。したがってディスプレイの作動中に粒子が分離しなければ、観察者には特定の種類の粒子すべてのうちの平均色のみが見える。例えば、混色分野の専門家にはよく知られていることであるが、多くの青色の見かけの飽和度は、青色にマゼンタを少ない割合で付加することによって高めることができる。したがって、例えば、前述の白/黒/青サブピクセルの青色状態の飽和度が、利用可能な青色粒子で達成できるよりも大きくなることを特定の顧客が要求したとすれば、サブピクセルには、大部分が青色粒子で僅かな部分(例えば約10パーセント)がマゼンタ粒子である混合物を含めることができよう。
【0041】
異なる色をつけた粒子の混合物を電気泳動粒子の単一種類として使用できることで、電気泳動ディスプレイにおいて色をカスタマイズする問題が大いに簡素化される。色の異なる電気泳動粒子3〜4個一組(例えばRGB、RGBK、CMY、あるいはCMYK)で実質的に同一の電気泳動的流動性を有するものを調製すれば、様々な粒子適量を単に混合し封入することによってこの組から有効な色範囲内にある任意の望ましい色を有するピクセルを作成し、所望の色を形成することができる。
【0042】
したがって、一態様において既に言及したように、本発明は、懸濁流体中に分散した複数の荷電粒子を含む電気泳動媒体であって、この粒子が実質的に同一の電気泳動的流動性を有するが色の異なる少なくとも2種類の粒子を含むものを提供する。
【0043】
本発明のこの態様は、本明細書中で主としてフルカラーディスプレイに関して記述するが、当然このようなディスプレイに限定されるものではない。例えば本発明は、簡易な点滅ディスプレイ(flashingdisplays)において有用な場合があり、このディスプレイでは
、極性を交互する駆動パルスを電極へ印加する2つの電極の間に電気泳動媒体層が限定されており、また、この電気泳動媒体層が、様々な領域に配置された様々な種類のカプセルを含み、カプセルの各種類が(例えば)黒色の光学状態および他の色の第二光学状態を有する。このようなディスプレイは企業ロゴあるいは他の表象を点滅するのに使用することができる。
【0044】
異なる顔料から形成された電気泳動粒子が実質的に同一の電気泳動的流動性を有することを保証する困難さを実質的に低減する技術が利用可能である。前述の第2002/0185378号およびこれに対応する国際出願公開第02/093246号では、電気泳動粒子を形成するための方法が記述されており、そこでは顔料をまずシリカ層(他の酸化物を使用してもよい)でコーティングし、次にシリカと化学結合させてポリマーを形成する。ポリマーは、電荷を帯びた集合体を含んで粒子の電気泳動的流動性を増進してもよい。このようなシリカ/ポリマーのコーティング粒子では、粒子の電気泳動的流動性に関与する表面電荷は本来シリカ層および/またはポリマーに限定されるので、内在する顔料の特性は本質的に粒子の電気泳動的流動性には無関係である。したがって顔料の粒子寸法が制御されれば、この方式で様々な顔料をコーティングして実質的に同一の電気泳動的流動性を有する電気泳動粒子を生成することができる。
【0045】
さらに、必要とされる生産規模によってこのことが保証されれば、カスタムカラーを備えたディスプレイを製造するのに必要な異なる顔料を、ディスプレイを製造するのに必要な多段階過程のうちの初期段階で混合させることができ、得られた顔料の混合物がその後この過程の後続段階中に単一要素として保持される。例として、前述の第2002/0185378号およびこれに対応する国際出願公開第02/093246号に記載されている電気泳動粒子を生成するための好ましい方法を検討すると、この方法は、(a)原料顔料のまわりにシリカあるいはシリカ/アルミナのシェルを形成するステップと、(b)シリカでコーティングした顔料をシランカップリング剤で処理し、ポリマーが顔料に付着できる部位を提供するステップと、(c)ポリマーを顔料表面で形成させるのに有効な条件下にシリル化した顔料を少なくとも1つのモノマーあるいはオリゴマーで処理するステップとを含む(本方法のある好ましい形態では、最初に形成されたポリマーの化学的性質を変えるための多数の重合ステップ、および/またはさらなる処理加工が必要である)。このような方法では、2つ以上の顔料を配合して最終的なディスプレイ内にカスタムカラーを得ることは、以下のように、多段階で実施することができる。
【0046】
1.原料顔料の配合
処理していない原料顔料を配合して、最初の表面改質の前に所望の色を得ることができる。次に、配合した顔料混合物をシリカあるいはシリカ/アルミナでコーティングし、続いてシラン処理・ポリマー形成ステップを行う。
【0047】
一見して、これは、配合顔料が同一の条件下において同一の方式で処理されることを保証する、つまり、配合顔料の表面の化学的性質が全く同じになる最も好適な方法のように思われる場合がある。これに反して、最終的なディスプレイの色を原料顔料配合により得られた色から判断するのが難しいことがある。その理由は、懸濁流体中にある場合の無機コーティングの顔料の濡れに起因する色の変化のため(顔料をコーティングして着色するにはシリカを使用してこの濡れ効果が防止されるが、濡れはやはり考慮せねばならない)、そしてカプセル壁、導電層、結合剤層、接着剤層、フィルタ層、および、前述のイー・インク社ならびにMITの特許および出願に記載されているような電気泳動ディスプレイに従来使用されている他の層の裏側に配置される際のピグメント・カラーの変化のためである。これらの色の変化のために、配合工程の度重なる反復やディスプレイの配合顔料からの製造が必要になることがあり、それはカスタムカラーのディスプレイには相当の支出増ならびに現像時間増大をもたらす。
【0048】
2.無機シェル形成後の顔料の配合
この方法では、原料顔料がシリカあるいはシリカ/アルミナのシェルでまず独自に改質され、次に配合されて所望の色を達成し、その後配合顔料はシラン処理およびポリマー形成を施される。
【0049】
3.無機シェル形成およびシラン処理後の顔料の配合
この方法では、原料顔料がシリカあるいはシリカ/アルミナのシェルおよびシラン処理でまず独自に改質される。次に顔料が配合されて所望の色を達成し、配合顔料はポリマー形成を施される。
【0050】
4.無機シェル形成、シラン処理およびポリマー形成後の顔料の配合
この方法では、原料顔料がシリカあるいはシリカ/アルミナのシェルでまず独自に改質され、次にシラン処理およびポリマー形成が施される。次に顔料が配合されて所望の色を達成する。
【0051】
この方法では、化学的改質がすべて完了した後に顔料が配合されているため、顔料の表面改質が顔料の色を変えるものではないことが保証される。それにもかかわらず、内水相へと取り込まれ、カプセル壁、結合剤層、接着剤層、および上記で議論した他の層の裏側へ配置された後に、配合顔料の色がさらに変化する場合がある。一方で、この方法は、最終的配合における顔料が同一の条件下において同一の方式で処理されてしまっており、したがって表面の化学的性質が、例えばシリカあるいはシリカ/アルミナ層の厚さ/適用範囲、シラン堆積物の適用範囲/質/密度、ポリマーの厚さ/分子量/密度が全く同じになるということを保証する際に諸問題を引き起こすことがある。
【0052】
第B部−「内部」カラーフィルタ
電気光学ディスプレイで使用するための従来のカラーフィルタアレイ(CFA)は、適切な方式で着色された材料層を含み、この材料層は、ディスプレイの画面付近で前部電極の「外側」、すなわち前部電極と閲覧者との間に配置されている。このような従来のCFAは、少なくとも前部電極の厚さ分だけ、電気光学層から、また場合によっては他の層から、例えば、上に前部電極が搭載された基板、および/または中で電気泳動カプセルが保持されている結合剤、および/または回転二色部材型ディスプレイ中のポリマー・マトリックスから、必然的に離間している。CFAと電気光学層との間がこのように離間していることは視差的諸問題を引き起こすが、多くの電気光学ディスプレイの視野角が広いことにより、これらの問題が深刻になる。このような視差的諸問題は、特にディスプレイをその画面に対して垂直に大角度で閲覧する場合に、ディスプレイの画質に悪影響を与える。
【0053】
従来のCFAに関する別の問題として、ディスプレイを駆動するために使用する画素電極にCFAを整列させるという問題がある。CFAと画素電極との間に整列の狂いがあれば、ディスプレイ上のイメージの種々のカラーチャンネル間にクロストークが起きるということが理解されよう。多くの種類の電気光学ディスプレイにおけるCFAの画素電極との整列は、液晶ディスプレイにおけるよりも難しい。というのも、液晶ディスプレイでは、ディスプレイへ液晶自体を持ち込む前に、CFAおよび画素電極を視覚的に整列することができるからである。ところが、例えば電気泳動ディスプレイあるいは回転二色部材型ディスプレイでは、このようなディスプレイの通常の製造方法が、CFAへ電気光学層を堆積し、その後、電気光学層/CFAを組み合わせたものを、画素電極を含む背面板へと積層することであるという理由により、この手法は不可能である。電気泳動層、あるいは回転二色部材型電気光学層は本質的に不透明であるため、積層処置中に画素電極は電気光学層を通して目に見えるわけではない。したがって、CFAを画素電極と視覚的に整列することができない。
【0054】
既に言及したように、前述の第2003/0011560号で記載されているのは、ディスプレイの幾つかの構成要素のうち任意の1つに光学的バイアス用要素を組み込むことによって、電気泳動ディスプレイの光学的性質を変化させる方法である。光学的バイアス用要素がディスプレイの様々な領域で変化する色を有し、必要なカラーフィルタ要素を実現するならば、この光学的バイアス用要素をディスプレイのカラーフィルタとして役立てることができるということが今ではわかっている。
【0055】
このような光学的バイアス用要素/カラーフィルタの可能な位置は、電気光学ディスプレイの種類に応じて変化する。例えば、カプセル型電気泳動ディスプレイにおいてカラーフィルタを備えることができる位置は、(a)カプセルの壁内、(b)カプセルを取り囲む結合剤内、(c)ディスプレイの画面を形成する基板に電気泳動媒体を固着するために使用している積層接着剤内、あるいは(d)ディスプレイの前部電極内である。(前述の第2003/0011560号では電気泳動媒体の「裏側」にある、すなわち、ディスプレイの画面から媒体の反対側にある光学的バイアス用要素を記載しているが、電気泳動媒体が主として不透明であるため、カラーフィルタとして働く光学的バイアス用要素は電気泳動媒体自体の内部、あるいは電気泳動媒体とディスプレイの画面との間のいずれかに配置する必要があるということに留意されたい。)マイクロセル型電気泳動ディスプレイでは、カラーフィルタを、マイクロセルを密封する前部シート内に、あるいは上記の(c)あるいは(d)に対応する位置に提供してもよい。回転二色部材型ディスプレイでは、光学的バイアス用要素/カラーフィルタを、回転部材を取り囲むポリマー・マトリックス(このマトリックスは本質的にカプセル型電気泳動ディスプレイの結合剤に対応している)内に、あるいは上記の(c)あるいは(d)の位置に提供してもよい。
【0056】
添付図面の
図1は、本発明の好ましい実施態様による略断面図であり、ここではカラーフィルタがカプセル型電気泳動ディスプレイ(全体として100で表す)のカプセル壁内に提供されている。ディスプレイ100はカプセル型電気泳動媒体(全体として102で表す)を含み、この媒体は複数のカプセル104、104’、104”を含み、これらのカプセルのそれぞれが、懸濁液106と、その中に分散された正に帯電した複数の黒色粒子108と、負に帯電した複数の白色粒子116とを含む。(粒子108の三角形および粒子116の円形は、添付図面において粒子を容易に区別できるように単に図による方法で使用するものであり、実際の粒子の物理的形状に何ら対応していない。通常、これらは実質的に球形である。)
ディスプレイ100は、共通の透明な前部電極110をさらに含み、この電極は画面を形成し、観察者はこの画面を通してディスプレイ100を閲覧する。ディスプレイはまた、不連続な複数の後部電極112、112’、112”を含み、これらの後部電極のそれぞれが、ディスプレイ100の1ピクセルを限定する。通常、各ピクセルには実際には多数(20以上)のマイクロカプセルが使用されるが、図解および説明を容易にするために、
図1では各後部電極により限定されるピクセルを形成している単一のマイクロカプセルのみを示す。後部電極112、112’、112”は基板114上に搭載されている。
【0057】
ディスプレイ100は赤、緑、青のピクセルを備えたRGBディスプレイであり、これらのピクセルは周期的に繰り返す列内に配置されている。
図1の各列には電極が1つのみ示されているが、実際は各列が多数の電極を含み、その各電極の電位は従来のアクティブ・マトリックス駆動回路(図示せず)により独自に制御されるということが理解されよう。外部カラーフィルタが無い代わりに、カプセル104、104’、104”の壁を着色することにより「内部」カラーフィルタが提供される。
図1で陰影による差異を付けて示すように、カプセル104の壁は赤い光を透過させるように着色され、カプセル104’の壁は緑の光を透過させるように着色され、カプセル104”の壁は青い光を透過させるように着色されている。
【0058】
図1が示すディスプレイ100は、共通の前部電極110に対して負を帯びた後部電極112および112”を備えるが、他方、共通の前部電極110に対して正を帯びた後部電極112’を備えている。したがって、カプセル104、104”では、白色粒子116がディスプレイの画面付近にあるので、これらのピクセルはそれぞれ赤、青に見える。ところが、カプセル104’では、黒色粒子108がディスプレイの画面付近にあるので、このピクセルは黒に見える。
【0059】
図1に示す種類のディスプレイにはRGB色彩設計を使用する必要がなく、しかし例えばCMY色彩設計を使用できるということが理解されよう。確かに、CMY色彩設計は、
図1に示す電気泳動媒体のような反射型電気光学媒体にとって好ましいことがある。それは、通常CMY色彩設計のほうが吸収する入射光が少なく、したがってより明るい色を生成することができるからである。
【0060】
図1に関して上述した方式において電気泳動ディスプレイのマイクロカプセルの壁を着色してCFAを提供することにより、カラーフィルタアレイとディスプレイの電気光学層との間にもはや間隔がないという点で前述の視差問題が実質的に排除される。視差的諸問題については、電気泳動層の結合剤内、あるいは回転二色部材層のポリマー・マトリックス内にCFAを提供することにより同様の利点が得られる。
【0061】
広範な種類の技術を使用して、本発明の内部CFAを備えたディスプレイを製造することができる。このような技術は2つの主なグループに分けることができる。それは、ディスプレイ内に表示要素を形成する前にこの要素へ色を取り込む「予備形成」CFAと、最終的なディスプレイでの本来の位置において(insitu)、あるいはその何らかのサブア
センブリにおいてCFAが形成される「本来位置」CFAである。
【0062】
予備形成CFAの一例としては、カプセルを着色(場合によっては、顔料で処理)して、
図1に関して上述したような赤、緑、青を透過するカプセル壁を形成し、次に、画素電極と整列した3種類のマイクロカプセルをストライプ状に決め置いて
図1に示したディスプレイを形成する。一方で、ディスプレイの量産には概して本来位置CFAの方がより簡単に適合できる場合がある。例えば
図1のディスプレイにおいて、すべてのカプセルがカプセル壁の着色以外は全く同じであるので、カプセルからなる均一な層をコーティングし、次にカプセル壁を着色し、選択的にはこれを取り囲む結合剤を着色して、内部CFAを生成することによってディスプレイを製造してもよいということが理解されよう。留意すべきことは、このような方法により単一のカプセルが2つの隣接する電極にわたって延びてしまうことがあるが、このことがディスプレイの性質にもたらす影響は少ないか、あるいは全くないということである。というのも、同一カプセルの隣接部分が異なる電界に晒されると異なる光学状態になり得るということが経験的に明らかになったからである。
【0063】
CFAを形成するための本来位置の方法は、主な2種類に分けることができる。第一の種類では、外部色素剤(例えば、染料または顔料、あるいはCFAが形成されるディスプレイの構成要素と発色反応を受ける試薬)がイメージに関して(imagewise)ディスプレイ
に施される。例えばカプセル壁を顔料あるいは染料で着色することができ、この顔料あるいは染料は、コーティング技術あるいはプリント技術、例えば着色されたストライプの一致した(registered)スロットコーティング、マスクによるスプレーコーティング、インクジェット、オフセット、フレキソ−グラビア、あるいは凹版印刷を使用して堆積することができる。第二の種類では、写真処理に基づく技術でCFAが形成されるディスプレイの構成要素において発色される。例えばカラーフィルムのように、カプセル壁に化学添加剤をコーティングすることができる。次に、カプセルコーティングに所望するCFAのイメージを投影することにより、カプセルに薄く色がつき、適切に着色することができる。「写真処理」という語の使用にあたっては、ハロゲン化銀の感光性に基づくものに対して利用される発色方法を限定することは意図していないが、実際には、銀をベースにした色形成の利用は、銀およびハロゲン化銀を露光後にCFAから除去する際に根本的な実務上の問題点があるため、一般に好ましくないであろう。一方で、波長にたいして極めて敏感な、ある発色反応が公知であり(米国特許第4,602,263号参照)、そしてこのような発色反応を使用してCFAを形成することができる。例えば、複合物を形成する赤色、緑色、青色染料の混合物を壁が含み、この3つの複合物が3つの異なる波長(通常、異なる赤外線波長)に対して敏感であるカプセルを作成することができる。ディスプレイへカプセルを組み込んだ後、ディスプレイの関連する領域を異なる波長の放射線により、好ましくはレーザーにより露光してこれらの領域を赤、緑、青に変え、CFAを形成する。選択的に、米国特許第6,323,989号、第6,538,801号、および同時係属出願シリアル第10/065,617号(公開番号第2003/0096113号)に記載されたナノ粒子発色技術を利用して、必要な色の変化を生成することができる。例えば、この特許・出願では繋留(tethered)ナノ粒子が開示されており、この繋留ナノ粒子は、例えば紫外線あるいはその他の放射線により繋留が破壊されると色を変える。繋留ナノ粒子をカプセル壁に含んで、ディスプレイの関連する領域を、繋留を破壊する放射線で露光することにより、CFAを形成するのに必要な色の変化を達成することができる。
【0064】
CFAの形成について上述した本来位置方法を、組み立てたディスプレイではなく二重剥離フィルム(以下の第E部を参照)の電気光学層に実施することもできる。
【0065】
CFAの画素電極との正確な整列に必要な整列記号を提供するディスプレイ自体を使用すれば、CFAの本来位置形成により上記で議論したCFA整列問題を縮減あるいは排除することができる。例えば、複合物を形成する赤色、緑色、青色染料の混合物を壁が含み、これら3つの複合物が、3つの異なる波長に対して敏感であるカプセルを含む前述のディスプレイを検討すると、このようなディスプレイをアクティブ・マトリックスの背面板と共に一度組み立てれば、背面板部分を作動して、ディスプレイ上にイメージを形成させることができる。例えば、最終的なCFAで赤および緑としたい領域が暗色となる一方、青としたい領域が白色となるように背面板を作動させることができる。得られるイメージを整列記号として使用し、ディスプレイの白色領域を、これらの領域のカプセルが青色光に対して透過性になるために必要な放射線で露光することができる。次に、例えば青領域および緑としたい領域を暗色に設定し、赤としたい領域を白色に設定することができる。CFA全体を、画素電極と正しく整列するこの方式で生成できるということが明らかであろう。
【0066】
内部CFAに加えて、本発明のディスプレイは、反射防止用コーティング、マイクロレンズアレイ、ホログラフィック・フィルタ、輝度強化フィルムのうち任意の単数または複数を含むことができる。また、ディスプレイスタックの前部へバリア・フィルムを組み込むことが望ましい場合もある。
【0067】
第C部−非矩形ピクセルを有するカラーフィルタ
液晶ディスプレイで使用されている従来型CFAは、カプセル型電気泳動ディスプレイに使用するのに都合のよい最適なものではない。カプセル型電気泳動媒体は、カプセルの中央付近に表れる光学状態と比較して、カプセル間の境界付近(すなわちカプセル壁の表面)で僅かに質の落ちた光学状態を呈する傾向にある。
【0068】
カプセル壁によるこれらの影響を、CFAでのピクセルの形状を注意して選択することにより最小限にできるということが今ではわかっている。ディスプレイを制御するのに使用される画素電極は、当然CFAのピクセルの形状と一致していなければならない。通常液晶ディスプレイに使用される(細長く、正方形でない)矩形ピクセルと比べれば、カプセル壁が隣接するピクセル間の隙間にある可能性の大きくなる設計が好ましい。CFAピクセルは、六角形(
図2A参照)、正方形(
図2B)、あるいは三角形、好ましくは正三角形(
図2C)の形状を有することができる。添付の白黒図面では、様々なピクセルの色について赤、緑、青をそれぞれR、G、Bで表した。理論上は五角形のピクセルも使用できようが、これらおよび同様の形状、例えば八角形ピクセルは、表面上で最密にならないという理由により好ましくない。六角形ピクセルは、カプセルが六角形格子で理想的に最密となるので特に好ましい。正方形ピクセルもまた好ましい。
【0069】
第D部−電極間の導電性カラーフィルタ
既に示したように、液晶ディスプレイで使用するために開発された従来型CFAは、適切な方式で着色された材料層を含み、この材料層は、ディスプレイの画面付近で前部電極の「外側」、すなわち前部電極と閲覧者との間に配置されている。このような従来型CFAはガラス基板上に製造され、複数のフィルム(ふつう「スタック」と呼ばれる)から形成されている。これらのフィルムは、一般に、ブラックマスク(ふつうクロミウムからなる)、赤・緑・青に着色されたフォトレジスト層および導電層を含み、この導電層は通常、ディスプレイの前部電極を形成するインジウムスズ酸化物(ITO)からなる。
【0070】
また、既に指摘したことであるが、ある種類の電気光学ディスプレイ、特にカプセル型電気泳動ディスプレイ、マイクロセル型ディスプレイ、回転二色部材ディスプレイは、ポリ(エチレン・テレフタレート)、あるいはポリ(エチレン・ナフタレート)からなるプラスチックフィルムなどの可撓性基板上に形成できるという利点を有する。電気光学ディスプレイがプラスチックフィルム上に形成された、上の段落に記載した種類の従来型CFAを使用することは技術的には可能であるが、このような従来型CFAは、このような使用にあまり適応していない。クロミウムのブラックマスクは、プラスチック基板で問題が現れる。というのも、この金属は通常、プラスチックを傷つけやすいエッチング液によりパターニングされているためである。したがってブラックマスクは除外するのが望ましい。
【0071】
本明細書の第B部で記載したような「内部」CFAを使用せずに着色層と導電層の順序を入れ換えれば、それもまた望ましいということが本発明者らにはわかった。このような入れ換えは製造を促進する。というのも、ITOなどの導電性材料でコーティングされたプラスチックフィルムが手軽に市販されているので、CFAの製造方法における出発材料として使用できるからである。
【0072】
ところが、このような入れ換えによって必然的に、着色層がディスプレイの電極間に配置され、電極間の任意の所定作動電圧において、電気光学媒体自体の両端間の電圧が低減する。というのも、電気光学媒体の両端間の電圧は、作動電圧から着色層の両端間の電圧降下を引いたものに等しいからである。電気光学媒体の両端間の低下した電圧は、通常、媒体の切替速度を遅らせる。低下した電気光学媒体の両端間の電圧は作動電圧を増大することにより補償することが可能であるが、これはディスプレイのエネルギー消費を増大し、電圧の増加および/またはこれの対処のために電気回路の変更を必要とする場合があるので、このことは一般に望ましくない。さらに、市販されている多くのフォトレジストの電気抵抗が高いので、電極間に着色層があることを補償するために、非常に大きな、そしてしばしば許容できない作動電圧の増大が必要になることになる。
【0073】
したがって、望ましいのは、着色層形成のために使用する材料の伝導性を増加し、その結果、着色層の抵抗が実質的に電気光学層の抵抗を超えず、実際に望ましいのは電気光学層の抵抗より小さくなることである。ほとんどの種類の電気光学媒体は伝導性が低いと仮定すると、着色層は10
10ohm−cm以下の体積抵抗率を有するべきであり、好ましくは約10
9ohm−cm以下である。着色層を、導電性ナノ粒子、例えば銀、金、アルミニウム、白金、またはカーボンのナノ粒子でドープすることによって、より導電性に作製することができる。これらの材料はバルクでは不透明であるが、十分小さいナノ粒子(通常は直径10nm未満)に作製することができるので、これらは実質的に光を散乱せず、したがって着色層の視覚的問題に干渉しない。導電性ポリマーおよび他の材料として、好ましい電気特性および光学的性質を有する他の有機顔料あるいは無機顔料を使用することもできる(これらの材料を付加した後にディスプレイの光学的性質全般を考慮することは当然必要であるが)。前述の第2003/0011867号に記載されている技術を利用して、着色層の伝導性を制御することができる。また、着色層は電気光学ディスプレイの電極間に配置されているので、電気特性や例えば温度などの環境パラメータを有するこのような特性の変更態様は、例えばディスプレイの電極間に配置された積層接着剤層など他の任意の層と本質的に同一の方法でディスプレイの作動特性に影響を与えることができる。電気光学ディスプレイで使用される積層接着剤の望ましい特性の詳細な概要については、読者は前述の第2003/0025855号を参照されたい。これらの特性のほとんどが本発明に係る内部カラーフィルタアレイとして使用される着色層に直接応用可能である。
【0074】
第E部−二重剥離フィルム
既に指摘したように、CFAを組み込むために液晶ディスプレイで使用される方法は、他の種類の電気光学媒体で用いるにはあまり適応していない。詳細には、既に指摘したように、液晶ディスプレイの組立に使用される技術は他の種類の電気光学媒体で用いるのにうまく転用されない。液晶ディスプレイの組立の従来型方法では、基板、カラーフィルタ層、および導電層を含む前部組立体が形成され、この前部組立体は、画素電極と関連の回路とを含む後部組立体に整列され、これに固着されている。狭いセルの隙間はこれら2つの組立体の間でスペーサにより維持されている。そしてこのセルの隙間が空にされ、結合した組立体を液晶材料浴へ浸漬することによって液晶材料自体が満たされる。
【0075】
理論上は同様の方式でカプセル型電気泳動ディスプレイを形成することができるが、実際には、狭いセルの隙間へ注入される際カプセルが密に充填されないため(得られたディスプレイの最適な光学性能にとっては望ましいが)、この組立体技術はかなり不適切である。それよりも、高分子結合剤と結合したカプセル型電気泳動材料をスラリーの形態で基板上にコーティングあるいはプリントし、次にコーティングあるいはプリントした層を乾燥および/または硬化させて最終的な電気泳動媒体層を形成するのが望ましい。コーティングあるいはプリントするステップはCFA上で直接実施することができるが、カプセルの適切な充填および/またはカプセルのCFAへの十分な接着を得る際に、CFAによっては問題が発生することがある。
【0076】
本発明の一態様において、電気泳動ディスプレイ材料、あるいは他の固体電気光学材料は、後にCFAあるいは他の基板、例えば背面板へ転写するための剥離シートにコーティングされるかプリントされ、さもなければ堆積される(前述の同時係属出願シリアル第10/249,957号およびこれに対応する国際出願第PCT/US03/16433号をやはり参照のこと)。望ましくは、ディスプレイ材料は、ディスプレイ材料と剥離シートとの間に薄い接着材層があるようにコーティングされている。つまり、ディスプレイ材料からなるカプセルの反対側に第二接着材層を備えてもよい。コーティングした複合材料を処理中に保護するために、第二接着材層の上に第二剥離シートを施すのが望ましい。
【0077】
本発明の好ましい二重剥離シート(全体として300で表す)を添付図面の
図3に示す。このシート300は電気光学材料の中央層302を含み、具体的に
図3では、これは高分子結合剤306中にカプセル304を含む層である。カプセル304は
図1に関して上述したものと同様のものでもよい。シート300は、第一接着材層308と、この第一接着材層308を保護する第一剥離シート310と、第一接着材層308から層302の反対側に配置されている第二接着材層312と、この第二接着材層312を保護する第二剥離シート314とをさらに含む。
【0078】
シート300は剥離シート310をまず接着剤層でコーティングすることにより形成してもよく、この接着剤層がその後乾燥あるいは硬化して第一接着材層308を形成する。次にカプセル304と結合剤306の混合物を第一接着材層308上にプリントし、さもなくば堆積し、さらにこの混合物を乾燥あるいは硬化させて干渉層302を形成する。最終的に、層302の上に接着剤層を堆積し、乾燥あるいは硬化させて第二接着材層312を形成し、これが第二剥離シート314によって保護される。
【0079】
シート300を形成するために使用するこの作業順序は継続生産によく適合しており、材料および作業条件を注意して選択することによって、作業順序全体を従来のロールツーロールコーティング装置を通る単一の工程において実施することが可能たり得るということが、コーティング技術の専門家には明白であろう。
【0080】
ディスプレイをフィルム300などの二重剥離フィルムを使用して組み立てるために、一枚の剥離シート(通常は上に電気光学材料がコーティングされたもの)を剥がし、二重剥離フィルムの残った層を、例えば熱、放射線あるいは化学的に基礎をもつ積層処理によりCFAあるいは他の前面基板へ結合する。一般に、CFAあるいは前面基板は導電層を含み、この導電層が最終的なディスプレイの前部電極を形成することになる。CFAおよび導電層はどちらの順序にあってもよいが、すでに議論した理由により、CFAが導電層と電気光学層との間にあるのが好ましい。前面基板は、補助的層、例えばUVフィルタあるいはCFA、および/または導電層を機械的損傷から保護することを意図する保護層を含んでもよい。その後、他方の剥離シートを剥がすことによって第二接着材層を露出するが、この第二接着材層を使用してCFA/電気光学材料コーティング組立体を背面板に結合する。再度、熱、放射線あるいは化学的に基礎をもつ積層処理を使用することができる。記載した2つの積層の順序は本質的に任意であり、逆にすることもできる(実際には、まず二重剥離フィルムをCFAあるいは他の前面基板に積層し、その後、得られる前部サブアセンブリを背面板に積層するほうがほぼ常に利便性が高いが)ということが理解されよう。
【0081】
上記で議論したように、CFAを基にしたあらゆる電気光学ディスプレイにおいて、カラーフィルタの裏面から光学活性層まで極力小さい距離をとるのが望ましい。このことにより光学的損失が最小となり、視差的諸問題が軽減する。したがって、ディスプレイの前側にある積層接着剤およびカプセル壁は両方とも極力薄くなければならない。これらの層を、1μmに近い厚さまで低減することが考えられる。さらに、コーティング・乾燥中に、カプセルがカラーフィルタアレイに対して効果的に平坦な表面を呈するようにカプセルを変形するのが望ましい。このことは、1つの色ピクセルを通って入射する光が、光学活性ディスプレイ材料から広く反射した後、隣接する(異なる色のついた)ピクセルを通って出射する可能性が最小となるのを促進する。加えて、ディスプレイスタックを構築する際に使用するすべてのフィルムの屈折率が一致するのが望ましい。
【0082】
様々なディスプレイ組立体の技術を採用することができ、これにはウェットボンドあるいはホットメルト積層処理を含むが、これに限定されない。幾つかの適用例において、位置修正可能な(repositionable)接着剤あるいは蒸発性(airsoluble)接着剤を使用す
るのが好ましい。他の適用例では、熱、放射線、あるいは化学的に接着剤を硬化する放射線を使用するのが好ましい。一方で、各組立体技術において、CFAサブピクセルを背面板上のTFTアレイ電子装置に整列させることが不可欠である。高分解能の整列(例えば10〜20μmよりも優れた範囲内での整列)を得るために、背面板上の基準マークをCFA上の基準マークに整列する標準的な光学整列システムを使用することができる。一旦これら2つの基板上に基準が整列されると、これらは整列の狂いを共に持ち込むことなく積層処理が行われる。積層処理は、1.機械的接触(すなわち感圧性接着剤で位置修正可能なもの、あるいはそれ以外のもののいずれか)、2.熱的効果(例えばホットメルト、ウェットボンド、減圧積層法等)、あるいは3.放射線ベースの方法(例えばUV硬化型)を基盤にすることができる。
【0083】
二重剥離フィルムからの電気光学ディスプレイの形成について記載した方法において、多数の変更および修正ができるということが、電気光学ディスプレイ技術の専門家には容易に明らかとなろう。例えば、記載した2つの積層のそれぞれにおいて、共に積層されているこれら2つの構成要素のうち1つのみが接着材層を担持する必要があるが、どちらの構成要素が接着材層を担持するかということは基本的にプロセス工学の問題である。したがって、ある場合において、接着材層308、312のうちの一方あるいは両方をシート300から省き、代わりに同様の接着材層を、CFA、背面板あるいは積層中で使用している他の基板上に配置するのが都合がよいことがある。また幾つかの場合において、接着材層が長期間汚れに晒されることにならない一方の剥離シートを省くのが可能なことがある。例えば、シート300などの二重剥離シートが継続生産ラインで形成され、第二接着材層312が形成された少し後にカラーフィルタアレイあるいは他の基板に積層される場合は、第二剥離シート314の適用を省き、第二接着材層を使用してシート300をカラーフィルタアレイへ積層することができよう。
【0084】
本発明の二重剥離シートを、前述の同時係属出願シリアル第10/249,957号およびそれに対応する国際出願第PCT/US03/16433号に記載されている前面積層の変更態様と見做すことができるということも、電気光学ディスプレイの技術の専門家には明らかとなろう。この前面積層は、光透過型導電層(通常高分子フィルム基板上に担持されている)と、この導電層と電気的に接触している固体電気光学媒体層と、接着材層と、剥離シートとを順に含む。本発明の二重剥離シートは基本的に、その導電層を第二剥離シートおよび光学的に関連する第二接着材層で置き換えることにより生成される、このような前面積層の変更態様である。したがって、本発明の二重剥離シートは、前述の同時係属出願シリアル第10/249,957号およびそれに対応する国際出願第PCT/US03/16433号に記載されている前面積層の選択的機能のいずれをも含むことができる。例えば二重剥離シートは、以下のもののうち任意の1つまたはそれ以上を有することができる。(a)両剥離シートの一方にあり電気光学媒体の検査を可能にするための導電層(
図2〜
図7および出願シリアル番号第10/249,957号の関連する説明を参照)、(b)電気光学媒体層を延びる導体(
図9、
図10、および出願シリアル番号第10/249,957号の関連する説明を参照)、(c)電気光学媒体層を延びるアパーチャであって、(b)で言及する導体を提供するために、後に導電性材料で満たされることが可能なもの(
図8、
図18、および出願シリアル番号第10/249,957号の関連する説明を参照)、(d)端面シール(
図11〜
図17、
図19、
図20、および出願シリアル番号第10/249,957号の関連する説明を参照)、(e)中で剥離シートが電気光学材料層よりも先に延び、剥離シートの除去を促進するためのつまみ(
図21、
図22、および出願シリアル番号第10/249,957号の関連する説明を参照)。
【0085】
ディスプレイの周辺部の周りに端面シールがあることは、ディスプレイの寿命や耐久性の理由から好ましい。端面シール材料は、カプセル型電気泳動ディスプレイ材料と相性の良いUV硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、あるいは化学的硬化型接着剤を含んでもよい。この接着剤を、印刷法、自動ピペット分注技術(automatedpipette dispensing techniques)、あるいは当業者に公知であるその他の同様の技術によりディスプレイの端部の周りに堆積してもよい。従来の液晶製造工程では、このシール材料は液晶がセルの隙間へと満たされないうちに硬化する。このような端面シールは積層したディスプレイへ空間(例えば空隙)を閉じ込めるため、これはカプセル型ディスプレイでは許容されない。この問題を取り除く幾つかの方法がある。第一に、積層完了後にディスプレイの端部の周りの薄い隙間へ端面シール材料を充填することができる。第二に、ディスプレイ端部のある一部の周りに端面シール材料の配置のみを行い、積層を実施し、次に残りの部分に端面シール材料を充填することができる。これらの技術およびその他の端面シーリング技術は前述の同時係属出願シリアル第10/249,957号に記載されている。しかし、本発明の二重剥離フィルムにより、端面シールを提供するための付加的方法、すなわち、電気光学層の反対側にある接着材層を電気光学層端部より先に、ただしディスプレイ端部を超えずに延出するための方法が可能になる。
図4は、この方式で形成された端面シールを示す。
図4は、
図3に示すフィルム300と同様に、既に記載した二重積層処理によって二重剥離フィルムから形成されたディスプレイ(全体として400で表す)を示す。最終的なディスプレイ400は電気光学層302と背面板316とCFA318とを含む。2つの接着材層308’および310’は電気光学層端部より先にあり、ただしディスプレイ端部を超えずに延びるので、これら2つの積層後に、2つの接着材層が共に結合されて端面シールを形成する(これを320で表す)。端面シールを施すことは、環境条件の広範な変化に耐えられる堅牢な電気光学ディスプレイを提供する際にしばしば不可欠であるが、既存の接着材層をこの方式で使用して所要のシールを形成することは、ディスプレイ端部の外側周辺に別個のシール材料を導入するよりもはるかに簡易である。
【0086】
第F部−カラーフィルタアレイの写真イメージングによる生成
別の態様において、本発明は、電気光学ディスプレイで使用するためのカラーフィルタを作成する方法を提供する。この方法は、カラーフィルタのパターンを感光性フィルムにイメージングするステップと、イメージを表すためにフィルムを(適宜)処理するステップと、電極として作用させるために導電層を感光性フィルムへ堆積するステップとを含む。本明細書で使用する「感光性フィルム」という語は、ハロゲン化銀の化学的性質に依存するフィルムに限定されるものではなく、可視光波長に敏感なフィルムに限定されるものでもなく、可視域外の電磁波放射線に敏感なフィルムを含むものである。使用される感光性フィルムが、基板のハロゲン化銀エマルジョンを含む従来型ハロゲン化銀フィルムである場合、導電層は通常、フィルムのエマルジョン側に堆積される。この結果、電気光学ディスプレイの上面として使用することのできるカラーフィルタが可撓性となる。
【0087】
CFAを可撓性基板上に作成する必要性と、CFAを液晶ディスプレイで使用するためにガラス上に形成するための最初に開発された従来の方法を変更しようとする際に起こる問題については、上記で既に議論した。既に触れたように、これらのような方法は可撓性基板にあまり適合していないので製造コストも高いが、これは石英上のアモルファスシリコンのTFT背面板のコストに相当する。
【0088】
本発明の一実施態様において、ガラス上の既存のカラーフィルタアレイを写真用フィルムへと密着印画することによりイメージを転写する。フィルムは、エマルジョン側を上にして平坦な非反射表面上に配置される。次にカラーフィルタを、染料側を下にしてフィルム上に配置する。フィルムは光源によりカラーフィルタを通して露光される。この方法では、既存のカラーフィルタをマスターとして作用させることが必要である。
【0089】
フィルタを製造するための本発明の別の実施態様では、フィルム上へパターンをイメージングするカメラを使用する。パターンは既存のカラーフィルタであってもよいが、その場合、逆光となる。この場合には、フィルム上にイメージを1:1で再現するようにカメラを調整する。マスターは、選択的に、大きな(ポスター大の)反射型物体(例えば紙への高品質印刷物)とすることができる。この場合には、マスターが順光になるので、フィルム上でイメージを適切な寸法に低減するようにカメラを調整する。この方法は、巨視的パターンからのCFAの迅速な構築を可能にし、フィルタ濃度、ブラックマスクの寸法等などのパラメータを変更することが可能になるという利点を有する。
【0090】
本発明の他の実施態様では、フィルムを越えて移動した放射性要素の線形配列を線形配列の長軸に対して垂直な方向に使用して、フィルム上にストライプのパターンを作成する。この実施態様においてブラックマスクが必要であれば、放射性要素を適切な地点でオンオフ切換してフィルム上に暗領域を生成することができる。
【0091】
上記の実施態様のいずれにおいても、照明源へ適切なカラーフィルタを適用することにより、あるいはカメラ(使用する場合)のレンズ上にフィルタを置くことにより、フィルタの色かぶり(colorcast)全体を低減(あるいは促進)することができる。フィルタ濃度は、フィルムの露光量を増減することにより調整することができる。フィルムがフィルタ内の色の単数または複数を正確に再現しない場合(これはあり得ることである)、マスター内の色を調整することが必要になる。どのフィルムについても、エマルジョンのスペクトル応答関数により支配される逆変換が起こり、この関数は、マスターで使用する適切な色を確定して最終的なディスプレイに望ましい色が得られる。
【0092】
CFAの構築を完了するために、上述の方法の1つの後にフィルムを適切な化学的方法により処理することができる。その後、インジウムスズ酸化物(ITO)あるいは他の導電性材料の薄膜をフィルムのエマルジョン側へ蒸着することができる。選択的に、透明導電性ポリマー、例えばバイトロン(Baytron)(登録商標)をこの表面にコーティングする
ことができる。
【0093】
本発明は、可撓性基板上にあるCFAの安価な製造を可能にする。さらに、上述の低減技術により任意の幾何学形状および任意の色のCFAを利用可能な道具によって非常に単純かつ容易に製作することができ、このことによりフィルタ変更の迅速な原型づくりが可能となる。
【0094】
第G部−カラーフィルタアレイの製作の多種の方法
本発明は、CFAを基にした電気泳動ディスプレイへ電気泳動ディスプレイ材料を一体化するための様々な方法に関する。本発明の製造戦略は、液晶ディスプレイの製造で利用されるものとは著しく異なる。
【0095】
本発明の第一態様において、カプセル型電気泳動ディスプレイ材料を直接CFAへコーティングし、引き続き、コーティングしたCFAを画素電極を含む背面板へ積層する。
【0096】
カプセル型電気泳動ディスプレイ材料(すなわち複数のカプセル)の堆積は、スロットダイ、メニスカス、カーテン、あるいは他のコーティング方法によりカラーフィルタアレイへ直接実施することができる。カラーフィルタアレイは、ガラスあるいは視覚的に透明な他の基板(高分子基板や薄い「可撓性」ガラスなど)、赤・緑・青の複数のカラーストライプ、および透明導電体からなることができる。幾つかの実施態様において、カラーフィルタアレイは「ブラックマスク」を含むが、このブラックマスクとは、組み立てられた電子ディスプレイ上で望ましくない選択位置を隠すように設計された不透明な線の格子である。さらに別の実施態様において、カラーフィルタアレイは、ストライプの代わりに複数の赤・緑・青ピクセルからなる。ブラックマスクはカラーストライプあるいはピクセルの上あるいは下に位置してもよい。別の実施態様において、カラーフィルタが、着色される代わりに視覚的に透明なストライプあるいはピクセルを含んでもよい。
【0097】
ディスプレイ材料とカラーフィルタとの間での適正な光結合を保証するために、カプセル型電気泳動ディスプレイ材料を確実にCFAと密接させるのが重要である。最低でも、カプセル型電気泳動ディスプレイ材料におけるカラーフィルタ表面と光学活性材料の前側表面との間の距離が、ディスプレイのピクセルの最小寸法よりも実質的に小さいということが要求される。例えば100μm幅のピクセルでは、カラーフィルタストライプの表面から光学活性材料の前側表面までの距離が例えば10μm未満であることが保証されるべきである。この隙間を、積層接着剤、高分子結合剤、カプセル壁材料、カラーフィルタの薄く色のついた領域の上の薄膜、およびカラーフィルタに施す表面処理によって埋めることができる。
【0098】
本発明のさらなる態様は、規則的な表面エネルギーパターンをCFAに生成してCFAのカプセルの充填濃度を操作する方法に関する。本発明のこの態様によれば、CFAに表面処理を施して、続いて表面処理したCFAに直接コーティングされたカプセルの充填率を操作することができる。一般に、カプセル型電気泳動ディスプレイ材料と接触しているカラーフィルタの表面上に規則的な表面エネルギーパターンが存在するようにカラーフィルタを設計することが望ましい。このことは、ディスプレイの光学性能を向上する方法でカプセルが充填されることを確実に促進する。
【0099】
選択的に、あるいは規則的な表面エネルギーパターンのこのような生成に加えて、この表面の湿潤性を均一に増減するような方法で表面を作成することができる。このことは、接着促進剤あるいは適切な界面化学の適用により実施することができ、それには、例えば1−プロパンアミン、3−(トリメトキシシリル)(より分類法的には3−アミノプロピルトリメトキシシランで有名である)、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシリサン、あるいはこのようなその他の材料がある。同様の表面処理を背面板の表面(あるいは、以下で記載するように、湿潤性がばらついているのが望ましい他の表面)に施して表示特性を強化することもできる。
【0100】
本発明の具体的な実施態様において、次のようにCFAを構築することができる。1.基板に赤・緑・青のストライプをパターニングする。2.カラーストライプの上にブラックマスクをパターニングする(ブラックマスクはカラーストライプの下に従来の方法で設置される)。3.カプセル型電気泳動ディスプレイ材料については、ブラックマスクが非湿潤、カラーストライプが湿潤となるように、ブラックマスクを表面処理する。代表的な表面処理には、オクタデカトリクロロシラン、ある範囲の他のシランやチオール・ベースの化学物質、種々のポリテトラフルオロエチレン作用剤、および当業者に公知であるその他の材料が含まれる。ブラックマスクの最高面に表面処理に受容的なフィルムを含めることにより、ブラックマスクをこれらの作用剤に対して受容的にすることができる。例えば、ブラックマスクの最高層として金薄膜を堆積することができ、この金の上にアルカンチオールを堆積することができる。カラーストライプとは著しく異なる表面エネルギーを持つようにチオール材料を設計することができ、これにより所望する効果が得られる。
【0101】
本発明のさらなる態様は、パターニングされた表面処理を利用して、連続する電極上にコーティングされたカプセルの充填濃度を操作するための方法に関する。この態様では、パターニングされた表面処理は連続する電極へと堆積され、その後堆積されたカプセルの充填率を操作する。パターニングされた表面処理を、複数の印刷技術によりカラーフィルタの上部の連続する電極に適用することができ、これらの印刷技術には、マイクロコンタクト、オフセット、凹版印刷、フレキソ−グラビア、あるいは当業者には公知の他の印刷技術がある。局所的な規模での完全な収率が必要とされないため、これは印刷には理想的な適用例である。長期的なカプセルの適切なパッキングが、局所的な欠陥にもかかわらずカプセルを正確に構成する傾向となるため、局所的な欠陥は大惨事とはならない。
【0102】
別の態様において、本発明は、電気泳動ディスプレイにおける単分散型カプセル(例えば少なくとも約95パーセントのカプセルの直径が平均直径と約20パーセントより多く違わない、さらに好ましくは、多くても約10パーセントである、実質的に寸法の均一なカプセル)の使用に関する。既に議論した本発明の表面処理の態様と併せたこのような単分散型カプセルの使用が特に望ましい。その理由は、多分散型カプセルでは、これらの表面処理が堆積されているのがカラーフィルタのブラックマスク上であろうと連続する電極上であろうと、堆積されたフィルムを規則的パターンへ並べ換えるにあたり規則的にパターニングされた表面処理がはるかに効率的ではなくなるからである。
【0103】
本発明のこれらの態様はすべて、前部電極へコーティングされたカプセルの充填率を操作することにより、カプセル型電気泳動ディスプレイの光学性能を向上するのに役立つ。この課題を達成するのに使用される表面処理はカラーフィルタのブラックマスクへ組み込まれたり、あるいはディスプレイ材料と接触している連続する電極へ直接プリントされたりする。
【0104】
本発明の別の態様は、CFAと背面板との間のセルの隙間にカプセル型電気泳動ディスプレイ材料を埋めることのできる新規の表面処理に関する。本発明の新規の表面処理技術では、より伝統的な液体ディスプレイの製造技術の利用が可能となる。本発明のこの態様において、カプセル濡れを促進する表面作用剤がCFAに適用され、カプセルディウェッティングを促進する表面作用剤が背面板に適用される。ちょうど伝統的な液晶の製造でのように、カラーフィルタアレイおよび背面板が、それらの間に正確なスペーサを用いて組み立てられ、両端部がエポキシあるいは他の端面シール剤で密封される。そしてカプセル型電気泳動ディスプレイ材料が、ポンプ、真空、あるいは当業者に公知のその他同様の技術により、カラーフィルタアレイと背面板との間の空間へと引き込まれる。しかし、CFA上および背面板上には表面処理があるため、カプセルは優先的にディスプレイの前側表面(カラーフィルタ表面)に対してしっかりとパッキングされてディウェッティングしやすくなっており、背面板の表面から遠ざかる。本発明はカプセル型電気泳動ディスプレイ材料が前方画面に対してパッキングすることを保証するが、このことは、材料が背面板に対してパッキングする、あるいはCFAにも背面板の表面にもどちらにも等しくパッキングする技術に比較すると、著しく改良された光学性能に対し必要な手段が講じられている。カプセルを前部電極へ引きこむのに表面力が使用されるが、重力、電気泳動力、および磁力を含む他の力を利用してこの課題を達成してもよい。
【0105】
本発明のこの態様は、前部電極と背面板との間に形成されたセルの隙間に注入されるカプセルの充填率を操作することにより、ディスプレイの光学性能を改良している。このことは、伝統的なディスプレイにカプセル型電気泳動ディスプレイを盛り込む技術の使用を可能にする。
【0106】
本発明の様々な態様で使用する電気泳動媒体は前述のイー・インク社ならびにMITの特許および出願に記載されているいずれの種類のものであってもよい。そして、読者においてはさらなる知識のためこれらの特許および出願を参照されたい。