【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第一の外用貼付剤(以下、「本発明第一貼付剤」と称する。)は、重なり合う二枚のシート状の支持体における合わせ面間に皮膚外用剤が挟み込まれてなり、使用時に重なり合う二枚の支持体を分離することによって、分離された各支持体それぞれにおいて、皮膚外用剤が露出した貼付面が形成される外用貼付剤であって、この外用貼付剤は、皮膚外用剤の25℃における粘度が、5000〜500000mPa・s、重なり合う二枚の支持体における合わせ面間に挟み込まれた皮膚外用剤の担持量が、合わせ面の面積に対して100〜5000g/m
2であり、15〜30℃の温度条件下、重なり合う二枚の支持体がT形剥離されて分離された際に、分離された各支持体において、前記担持量の40〜60%の皮膚外用剤が担持された貼付面が形成されることを特徴とする。
【0010】
一方、本発明に係る第二の外用貼付剤(以下、「本発明第二貼付剤」と称する。)は、片面同士が重なり合うように折り畳まれた一枚のシート状の支持体における合わせ面間に皮膚外用剤が挟み込まれてなり、使用時に折り畳まれた支持体を展開することによって、展開された支持体において、皮膚外用剤が露出した貼付面が形成される外用貼付剤であって、この外用貼付剤は、皮膚外用剤の25℃における粘度が、5000〜500000mPa・s、折り畳まれた支持体における合わせ面間に挟みこまれた皮膚外用剤の担持量が、合わせ面の面積に対して100〜5000g/m
2であり、15〜30℃の温度条件下、折り畳まれた支持体がT次剥離されて展開された際に、展開された支持体において、前記担持量の40〜60%の皮膚外用剤が担持された貼付面が形成されることを特徴とする。
【0011】
以下、本発明第一貼付剤及び本発明第二貼付剤について説明するが、各貼付剤において共通な事項については、「本発明貼付剤」と総称して説明する。
【0012】
本発明貼付剤に用いられる支持体としては、皮膚外用剤を担持することができるシート状のものであれば特に限定されるものではない。具体的に例えば、既知の天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材、又は高分子材料からなるシートを挙げることができる。
【0013】
天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材としては、例えば、紙、布、タオル、毛布、編み物、キルト等の不織布或いは織布等を挙げることができる。
【0014】
天然繊維としては、例えば、パルプ繊維、綿花、カポック、亜麻、ラミー、大麻、黄麻、しゅろ、マニラ麻、サイザル麻、コイヤー・ファイバー等の植物繊維、家蚕絹、柞蚕絹、羊毛(緬羊)、カシミア毛、ラクダ毛、アルパカ毛、モヘヤー、兎毛等の動物繊維が挙げられる。
【0015】
人造繊維としては、例えば、人絹糸、スフ、ビスコース、ベンベルグ等の再生繊維、又はポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリビニール・アルコール系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、或いは酢酸人造繊維などのように天然物質と合成物質とを共重合して製造した半合成繊維等が挙げられる。
【0016】
一方、高分子材料からなるシートとしては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリプロピレン、セロファン、ポリクロロプレン、ポリアミノ酸、ニトリルゴム、ブチルゴム及びシリコンゴムなどの高分子材料を薄く形成したシートを適宜選択して用いることができる。
【0017】
なお、前記天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材においては、皮膚外用剤の投錨性に優れ、風合いや使用感が良好となる点において利点があり、一方、前記高分子材料からなるシートにおいては、皮膚外用剤の染み出しを抑制することができる点において利点がある。これより、本発明貼付剤においては、天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材の片側面に高分子材料をラミネートした積層シートを用い、この積層シートにおける布基材側の面を合わせ面とすることが好ましい。
【0018】
又、本発明第一貼付剤においては、皮膚外用剤を挟み込む二枚の支持体につき、その素材、厚み、坪量等が各々異なるものを用いても良いが、二枚の支持体につき同じものを用いることがより好ましい。
【0019】
支持体の形状及び大きさとしては、貼付する箇所に応じて適宜決定すれば良く、特に限定されるものではない。又、支持体の厚さについても、特に限定されるものではなく、本発明貼付剤において、支持体の厚さを実際の厚さで管理する場合は、10〜2000μm程度とすることが一般的であり、支持体の厚さを坪量(目付け)で管理する場合は、10〜300g/m
2程度とすることが一般的である。
【0020】
そして、本発明貼付剤においては、皮膚外用剤として、25℃における粘度が5000〜500000mPa・sに設定されたものが用いられる。なお、この粘度は、日本薬局方ハンドブック(1996)に記載の粘度測定法における回転粘度計法に準じて測定したものである。
【0021】
本発明貼付剤において、25℃における皮膚外用剤の粘度が5000mPa・s未満となると、流通時や保存時に皮膚外用剤が染み出してロスが生じたり、片方の支持体に皮膚外用剤が偏って吸収されたりする場合がある。一方、25℃における皮膚外用剤の粘度が500000mPa・sを超えると、支持体を分離或いは展開した際に、一方の合わせ面に偏って皮膚外用剤が移行する片残りが生じる場合がある。そこで、本発明貼付剤においては、皮膚外用剤として、25℃における粘度が5000〜500000mPa・sに設定されたものが用いられるのであり、より好ましくは、8000〜50000mPa・sに設定されたものが用いられる。
【0022】
なお、この粘度の調整は、皮膚外用剤に配合される油性成分や各種添加剤の種類や量、水分含有量、及び界面活性剤の種類などを適宜選択することによって行うことができる。
【0023】
又、本発明添付剤においては、皮膚外用剤を重なり合う支持体における合わせ面間に挟み込むにあたり、その担持量が、支持体における合わせ面の面積に対して100〜5000g/m
2となるように設定している。
【0024】
皮膚外用剤の担持量が合わせ面の面積に対して100g/m
2未満となると、製造時において支持体の合わせ面に皮膚外用剤を展延した際に、皮膚外用剤の殆どが支持体内に吸収される場合があり、この状態で、その上から支持体重ね合わせても皮膚外用剤が一方の支持体に偏って吸収された状態のままとなる場合がある。
【0025】
一方、皮膚外用剤の担持量が合わせ面の面積に対して5000g/m
2を超えると、流通時や保存時に皮膚外用剤がはみ出してロスが生じたり、支持体を分離或いは展開した際に、一方の合わせ面に偏って皮膚外用剤が移行する片残りが生じたりする場合がある。
【0026】
そこで、本発明貼付剤においては、皮膚外用剤を重なり合う支持体における合わせ面間に挟み込むにあたり、その担持量が、支持体における合わせ面の面積に対して100〜5000g/m
2となるように設定しているのであり、より好ましくは、200〜3000g/m
2、更に、300〜1500g/m
2となるように設定することが好ましい。
【0027】
なお、本発明貼付剤において「合わせ面の面積」とは、支持体における重なり合った部分の面積を意味し、理論上、分離或いは展開されて支持体上に形成される貼付面の総面積の1/2となる。
【0028】
本発明貼付剤は、皮膚外用剤を、特定の粘度となるように設定し、又、特定の担持量となるように重なり合う支持体における合わせ面間に挟み込ませることによって、15〜30℃の温度条件下、重なり合う支持体がT形剥離されて分離或いは展開された際に、分離された各支持体或いは展開された支持体において、前記担持量の40〜60%の皮膚外用剤が担持された貼付面が形成されるようになされたものである。
【0029】
ここで、「15〜30℃の温度条件下」とした理由は、外用貼付剤は室内において保存され、使用されることが通常であり、標準的な使用状況下における使用性の向上の観点から設定されたものである。
【0030】
又、「T形剥離」とは、JIS K6854に規定する接着強さを測る試験において用いられる剥離形式の一つであり、重なり合った支持体を剥すにあたり、通常の人であれば、各支持体の縁を左右の手でそれぞれつまんだ状態で左右に引き剥がすといったT形剥離に類する剥離形式を採用することが殆どである点に鑑みて設定されたものである。
【0031】
更に、「担持量の40〜60%の皮膚外用剤が担持された貼付面が形成される」とは、合わせ面間に挟み込まれていた皮膚外用剤が、分離或いは展開された支持体にほぼ均等に移行して貼付面が形成されることを意味する。
【0032】
ところで、皮膚外用剤としては、用いられる基剤の剤型によって、油脂性軟膏剤、乳剤性軟膏剤、及び水溶性軟膏剤とに分けることができる。
【0033】
油脂性軟膏剤における基剤(油脂性基剤)は、例えば、スクワラン、パラフィン、ワセリン等の炭化水素、オリーブ油、アーモンド油、カカオ脂、ホオバ油、マカデミアナッツ油、アボカド油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、月見草油、合成トリグリセライド等の油脂、ミツロウ、ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウ等のロウ、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、コレステロール等の高級アルコール、IPM、グリセリントリエステル、ペンタエリスリトールテトラエステル、コレステリルエステル等の合成エステル、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シクロメチコン等のシリコーン油などの油性成分から選ばれた1ないし複数種を主体として構成される。
【0034】
又、乳剤性軟膏剤における基剤(乳化性基剤)は、前記油性成分に加えて、例えば、高級脂肪酸石けん、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルN‐メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N‐アシルアミノ酸塩等のアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2‐アルキル‐N‐カルボキシ‐N‐ヒドロキシイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、POEアルキルエーテル、POE・POPブロックポリマー、POE硬化ヒマシ油エステル等の非イオン性界面活性剤などの界面活性剤から選ばれた1ないし複数種と水を主体として構成される。
【0035】
更に、水溶性軟膏剤における基剤(水溶性基剤)は、油性成分を配合せずに、ポリエチレングリコール類と水を主体として構成される。
【0036】
本発明貼付剤においては、いずれの軟膏剤を用いても良いが、油脂性軟膏剤と比較して、温度変化に対する粘度の変化が緩慢な性質を有する乳剤性軟膏剤、又は水溶性軟膏剤を用いることが好ましい。即ち、皮膚外用剤の基剤として、乳化性基剤又は水溶性基剤を用いることが好ましい。
【0037】
なお、乳化性基剤としては、油性成分が連続層となった油中水滴型(w/o)乳化性基剤と、水が連続層となった水中油滴型(o/w)乳化性基剤(ローション剤を含む。)とに分けられるが、本発明貼付剤においては、温度変化に対する粘度変化がより緩慢な水中油滴型乳化性基剤を用いることが好ましい。
【0038】
従って、本発明貼付剤においては、乳化性基剤を積極的に水中油滴型とすべく、界面活性剤として、モノステアリン酸グリセリンやモノステアリン酸ソルビタン等の水中油滴型界面活性剤を用いることが好ましい。
【0039】
又、配合される水については、皮膚外用剤全体に対して、30〜90重量%含有されていることが好ましく、更に、50重量%以上含有されていることがより好ましく、特に、70重量%以上含有されていることが好ましい。
【0040】
本発明添付剤においては、本発明貼付剤の用途等に応じて、前記各種基剤に対し、更に、保湿剤、防腐剤、抗酸化剤、pH調整剤等の種々の添加剤及び有効成分としての種々の薬剤等が添加される。
【0041】
保湿剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコール、ジグリセリン、マンニトール、POEメチルグリコシド、クインスシード、ペクチン、セルロース誘導体、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ソアギーナ、カルボキシビニルポリマーなどを挙げることができる。
【0042】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール、チモール等を挙げることができる。
【0043】
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、EDTA,ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0044】
pH調整剤としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、クエン酸や乳酸等の有機酸及びその塩などを挙げることができる。
【0045】
有効成分として添加される種々の薬剤としては、例えば、コルチコステロイド類、消炎鎮痛剤、高血圧剤、麻酔剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、降圧剤、抗生物質、抗菌性物質、ビタミン類、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、抗真菌物質、昇華性結晶、ハッカ油、ユーカリ油、ラベンダー油、ホウ酸水、生理的食塩水、硫苦水、亜麻仁油、石灰水、肝油、リバノール水、過マンガン酸カリ液、メンタ水、クレオソート、カラシ、抗炎症剤、収れん剤、清涼化剤、ビタミン剤、ホルモン剤、抗ヒスタミン剤等の肌荒れ防止用薬剤、皮脂抑制剤、角質剥離・溶解剤等のニキビ用薬剤、アロエエキス、人参エキス、カンゾウエキス等の動植物抽出物、アミノ酸類の如き栄養剤等を挙げることができる。
【0046】
本発明貼付剤においては、合わせ面における周縁部の一部ないし全部に、合わせ面中央部における皮膚外用剤の担持量と比較して、皮膚外用剤の担持量が少ない剥離部を設けることが好ましい。
【0047】
この剥離部を設けると、重なり合う支持体を分離或いは展開する際のツマミとなって、使用性が良好となる。又、この剥離部を合わせ面の周縁部全部に設ければ、流通時や保存時における皮膚外用剤のはみ出しを抑制することもできる。
【0048】
なお、この剥離部は、合わせ面の周縁部の一部ないし全部を押圧することによって設けることが好ましい。
【0049】
このようにすれば、支持体の合わせ面間に皮膚外用剤を担持させ、打ち抜き加工等によって所望の形状に形成した後(若しくは同時に)に、支持体が重なり合った状態における合わせ面の周縁部の一部ないし全部を押圧するといった一連の作業工程によって、剥離部を形成することが可能となる。又、一定の形状及び代幅の剥離部を設けることが容易となる。