特許第5719146号(P5719146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719146
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】潤滑油
(51)【国際特許分類】
   C10M 133/06 20060101AFI20150423BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20150423BHJP
【FI】
   C10M133/06
   C10N30:06
   C10N30:10
   C10N30:12
   C10N40:25
【請求項の数】3
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2010-248814(P2010-248814)
(22)【出願日】2010年11月5日
(65)【公開番号】特開2012-102148(P2012-102148A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】594208411
【氏名又は名称】牧田 英明
(73)【特許権者】
【識別番号】595144662
【氏名又は名称】牧田 浩幸
(73)【特許権者】
【識別番号】595144673
【氏名又は名称】牧田 富美子
(73)【特許権者】
【識別番号】501272579
【氏名又は名称】牧田 裕子
(73)【特許権者】
【識別番号】509319708
【氏名又は名称】千種 かほる
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】牧田 英明
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−146010(JP,A)
【文献】 特開2010−195973(JP,A)
【文献】 特開2007−153946(JP,A)
【文献】 特開2002−309273(JP,A)
【文献】 特開2008−214618(JP,A)
【文献】 石油製品添加剤,日本,株式会社 幸書房,1974年,再版,第190頁
【文献】 トライボロジー叢書10 内燃機関の潤滑,株式会社 幸書房,1987年,第322−331頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00− 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるジメチルアルキル3級アミンからなる注入剤を0.01〜1容量%の範囲で注入した潤滑油であって、
前記注入剤を0.1〜1容量%の範囲で注入した内燃機関用燃料とともに、内燃機関に用いることを特徴とする潤滑油。
【化2】
【請求項2】
前記ジメチルアルキル3級アミンが、動植物油類より形成されることを特徴とする請求項記載の潤滑油。
【請求項3】
前記潤滑油への注入剤の注入量は、0.1〜0.5容量%であることを特徴とする請求項1または2記載の潤滑油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油に関し、特に内燃機関用の潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関や駆動系等の機械において、歯車やピストンの動作時に生じる摩擦を低減するため潤滑油が用いられている。潤滑油を内燃機関や駆動系に用いれば、摩擦が低減されて歯車やピストンの回転等をスムーズにでき、燃料(軽油、ガソリン等)消費量、並びに燃焼において発生する二酸化炭素およびその他排ガス成分の排出量を低減できる。
【0003】
一方で、潤滑油は長期間使用すると酸化、劣化する。潤滑油が酸化すると、酸性物質やワニス、スラッジ等が発生し、酸価の増加や粘度の増加といった劣化が進行する。このような酸性物質等によって内燃機関の部々が摩耗したり、これら摩耗や潤滑油の粘度増加によって動力損失が増加し、内燃機関の動作を妨げるといった種々の問題がある。
【0004】
また、内燃機関の機械部品は、雨風等による水分の侵入など、種々要因によって錆が発生する。錆が発生すると当然に動力損失が増加し、内燃機関の動作が妨げられる。
【0005】
ところで、潤滑油に(a)オクタデセン−1と無水マレイン酸の6300より大ないし1200未満の範囲の数平均分子量を有する共重合体と、(b)ポリアミンおよび非環式ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤から調製されるコハク酸イミドの反応生成物を含む分散剤/VI向上剤添加剤を添加する。これにより、分割剤が油全体にわたりワニスおよびスラッジの成分を分散させ、これらの蓄積を妨げるように機能する発明が開示されている(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発明は、分割剤によりスラッジ等を分散させ、潤滑油の酸化劣化を抑制するものであるが、この分散性を長く維持できるものではなく、潤滑油の酸化劣化の抑制があまり期待できず、二酸化炭素の低減効果も十分でない。また、機械部品の防錆効果も奏しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−176673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、燃料低減装置や排気ガス低減装置を取付けても、二酸化炭素を低減することはできず、完全燃焼すれば二酸化炭素は増え、エンジンの調子がよくなればさらに二酸化炭素は増える。
【0009】
発明者は、燃費の節約のため、エコドライブ教育を十数年前より実施しているが、燃費はせいぜい1%〜2%ぐらいしか削減することができない。また、デジタルタコグラフを取り付けてドライバーを管理しても、エコドライブするベテランドライバーとの燃費の差は大差ない。
【0010】
そこで、発明者は、二酸化炭素の発生を少なくさせるため、内燃機関用の潤滑油を用いてどうにかできないかと鋭意研究を重ねた結果、潤滑油に、エコ物質(ジメチルアルキル3級アミン) を注入することで、内燃機関の部々での摩擦を低減し、潤滑油の酸化劣化を防止し、かつ、摩耗も低減し諸機関の寿命を延命させることができるという効果を見出した。くわえて、諸機関の防錆効果を得られ、これも諸機関の寿命延命に貢献できることを見出した。これらにより、二酸化炭素の低減と同時に排ガス成分(CO,HC,NOxガス)と燃費の削減効果があることを確信し、本発明をなしたものである。
【0011】
本発明は、酸化、劣化を抑制し、摩擦低減効果および防錆効果を備えた潤滑油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る潤滑油は、一般式(1)で表されるジメチルアルキル3級アミンからなる注入剤を0.01〜1容量%の範囲で注入した潤滑油であって、前記注入剤を0.1〜1容量%の範囲で注入した内燃機関用燃料とともに、内燃機関に用いることを特徴とする。ここで、ジメチルアルキル3級アミンとして、たとえば、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルココアミン等を用いることができる。
【0013】
内燃機関用の潤滑油とは、たとえばエンジンオイルなどをいう。エンジンオイルに該潤滑油を用いることで、エンジン・メインシャフト・クラッチ・ミッション・プロペラシャフト・ジョイントベアリング・デフレンシャルギヤ・リヤシャフト・ホイルベアリング・バッテリー・セルモータ等で負荷が少なくなり、各部において摩擦が低減され、燃料消費を大幅に低減でき、それによる二酸化炭素およびその他の排ガスが低減できる。なお、当該潤滑油は、エンジンオイル以外にも、パワステオイルやタービン油、ギヤオイルなどに用いることもできる。
【0015】
【化1】
【0016】
この構成によれば、前記注入剤(ジメチルアルキル3級アミン)が、内燃機関や駆動系等の部々の金属表面に吸着して摩擦を低減できるため、歯車などの回転箇所や軸受等で摩擦抵抗が小さくなりスムーズに動作できる。したがって、内燃機関等にこの潤滑油を用いた場合、燃料消費量が低減され、発生する二酸化炭素その他の排ガス成分(CO,HC,NOx,SOx,PM等)も低減される。同時に、歯車や軸受等の摩耗も抑制でき、内燃機関の寿命が延びる。さらに、潤滑油注入剤は防錆酸中和能力を有するため、潤滑油の酸化、劣化を抑制することができ、前記した燃料低減効果や二酸化炭素等の低減効果を長期にわたって実現することができる。
特に、前記注入剤を注入した内燃機関用燃料(たとえばガソリンなど)と潤滑油とを併用することで、当該潤滑油の効果にくわえ、前記注入剤を入れた内燃機関用燃料による燃料消費の低減ができ、二酸化炭素およびその他の排ガス成分の低減効果を上乗せできる。 また、当該潤滑油の行き届かない場所(たとえばコンロッド上部など)にも、内燃機関用燃料の噴射によって油膜が形成され、この油膜が潤滑油と同様のはたらきをして諸機関の動作をスムーズにする(図1参照)。
請求項に係る潤滑油は、前記ジメチルアルキル3級アミンが、動植物油類より形成されることが、環境対応として望ましい。
【0017】
請求項に係る潤滑油は、前記注入剤の注入量が、0.1〜0.5容量%であることが、性能面およびコスト面から好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記のように、潤滑油に、ジメチルアルキル3級アミンからなる注入剤を0.01〜1容量%の範囲で注入するようにしたので、自動車用エンジンなどの内燃機関に用いた場合に、各部品間の摩擦抵抗を小さくでき、燃料消費量が低減され、発生する二酸化炭素およびその他の排ガス成分も低減される。また、防錆効果を備え、潤滑油の酸化、劣化を抑え、部々の摩耗を抑制し、内燃機関の延命を図ることができる。
特に、前記注入剤を注入した内燃機関用燃料(たとえばガソリンなど)と潤滑油とを併用することで、当該潤滑油の効果に加え、前記注入剤を入れた内燃機関用燃料による燃料消費の低減ができ、二酸化炭素およびその他の排ガス成分の低減効果を上乗せできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】内燃機関のピストンとコンロッドにおける潤滑油の流れと、燃料(噴射)の流れを示す説明図である。
図2】黒煙試験において、ノーマル潤滑油(従来の潤滑油)を用いた場合の車両番号438の試験結果を示す図である。
図3】黒煙試験において、エコ新潤滑油(本発明の潤滑油)を用いた場合の車両番号438の試験結果を示す図である。
図4】黒煙試験において、ノーマル潤滑油を用いた場合の車両番号8003の試験結果を示す図である。
図5】黒煙試験において、エコ新潤滑油を用いた場合の車両番号8003の試験結果を示す図である。
図6】防錆実験において、ノーマル潤滑油を塗布した場合と、エコ新潤滑油を塗布した場合との、錆の発生を比較した図である。(開始日の平成22年9月16日時点)
図7】防錆実験において、ノーマル潤滑油を塗布した場合と、エコ新潤滑油を塗布した場合との、錆の発生を比較した図である。(平成22年9月27日時点)
図8】防錆実験において、ノーマル潤滑油を塗布した場合と、エコ新潤滑油を塗布した場合との、錆の発生を比較した図である。(平成22年10月11日時点)
図9】防錆実験において、ノーマル潤滑油を塗布した場合と、エコ新潤滑油を塗布した場合との、錆の発生を比較した図である。(平成22年10月18日時点)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図および表を用いて説明する。
本発明に係る潤滑油は、従来の潤滑油にジメチルアルキル3級アミンからなる潤滑油注入剤(以下エコ物質という)を注入したものである。前記エコ物質の注入量は、0.01〜1容量%の範囲、望ましくは0.1〜0.5容量%の範囲である。0.1容量%よりも少ないと十分な効果が発揮されないからであり、内燃機関等の機械内部に用いる場合、0.5容量%を超えると効果に比べて価格が高くなるからである。なお、潤滑油に対し、前記範囲での注入剤の注入であれば、成分分析によっても一般的な潤滑油として扱われることが確認されている。
【0024】
また、前記潤滑油は、後述するように前記エコ物質を注入することで、所望の効果が発揮されることが確認されている。
【0025】
前記エコ物質としては、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルココアミン、ジメチルパルミチンアミン、ジメチルベヘニンアミン、ジメチルココアアミン、ジメチルパームステアリンアミン、ジメチルデシンアミン、などを用いることができる。また、これらのエコ物質はそれぞれ融点が異なり、潤滑油の使用用途や使用場所等によって適宜決定する。なお、本実施形態においては、ジメチルラウリルアミンを用いる。
【0026】
まず、潤滑油にエコ物質(ジメチルラウリルアミン)を0.1容量%、0.3容量%、0.5容量%注入して、各濃度のエコ新潤滑油をそれぞれ製造する。製造方法としては、たとえば100リットルの潤滑油が入ったタンクに、0.1容量%であれば0.1リットル、0.3容量%であれば0.3リットル、0.5容量%であれば0.5リットルのエコ物質を注入し、攪拌混合することにより、それぞれのエコ物質容量%濃度を有するエコ新潤滑油を製造する。
【0027】
続いて、製造したエコ新潤滑油を用いて、走行試験および黒煙試験を行った。本試験は従来の潤滑油とエコ新潤滑油との比較試験であり、本試験において潤滑油としてエンジンオイルを用い、エコ新潤滑油として従来のエンジンオイルに上記所定のエコ物質を注入して製造したものを用いる。
【0028】
1.[走行試験]
走行試験に用いる車両(自動車)は、ディーゼルのトラック(4t車、10t車(総重量20t)、トラクター(総重量40t)等)、ディーゼルの乗用車(「サファリ」(登録商標))、レギュラーガソリンの乗用車(「BMW」(登録商標)1600cc)、ハイオクガソリンの乗用車(「MERCEDES−BENZ」(登録商標)6000cc)とする。なお、これらに使用する燃料は、ディーゼルのトラックと乗用車に軽油を用い、ガソリン車にはレギュラーガソリンまたはハイオクガソリンを用いる。なお、走行速度、走行距離等の走行条件ができるだけ同一になるように、各車両毎に、同一運転手による同一行程での走行試験とした。また、誤差がでないように消費燃料の計量を正確に行い、走行距離は走行距離メータにより正確に計測して燃費の比較を行った。
【0029】
(1)エコ物質0.1容量%のエコ新潤滑油
以下、エコ物質0.1容量%のエコ新潤滑油を用いた走行試験の結果を表1〜表5に示す。表1および表2は、軽油を燃料とする各ディーゼルトラックにおける、従来のエンジンオイルを用いた場合とエコ新潤滑油を用いた場合との燃費を比較した走行試験の結果を示す表である。左から車両情報、従来のエンジンオイル(ノーマル潤滑油)使用時の行き先・経由地・走行距離・消費燃料等、エコ新潤滑油使用時の行き先・経由地・走行距離・消費燃料等を示す。そして、最右に各車両毎のノーマル潤滑油に対するエコ新潤滑油使用時の燃費削減割合および平均燃費削減割合を示し、最下に車両全体での平均燃費削減割合を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
これらの結果から、ノーマル潤滑油に比べてエコ新潤滑油を用いた場合、燃費性能が改善されることがわかる。燃費改善により、排出される二酸化炭素およびその他の排ガス成分も低減される。
【0033】
表3および表4は、ガソリン(レギュラーまたはハイオク)を燃料とする各車両における、従来のエンジンオイルを用いた場合とエコ新潤滑油を用いた場合との、燃費を比較した走行試験の結果を示す表である。表は、各ルートの行き先、経由地、各距離、全走行距離、燃料消費量、燃費およびノーマル潤滑油とエコ新潤滑油を用いた場合の燃費削減率を示すものである。最下にこれら全ルートの平均燃費削減率を示す。なお、表中のエコ新oilとは、エコ新潤滑油のことである。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
これらの結果から、ガソリン車においても、ノーマル潤滑油に比べエコ新潤滑油を用いた場合、燃費性能が改善されることがわかる。
【0037】
以上より、ディーゼルのトラックおよびガソリン車のいずれにおいても、エコ物質0.1容量%のエコ新潤滑油を使用することで、燃費性能が改善されることがわかる。
【0038】
なお、表5はノーマル潤滑油からエコ新潤滑油に変更したときの、ドライバーの体感による感想を示したものであり、少なくとも燃費や車両の調子が悪くなったとの回答はなかった。
【0039】
【表5】
【0040】
(2)エコ物質0.3容量%のエコ新潤滑油
以下、エコ物質0.3容量%を注入したエコ新潤滑油を用いた走行試験の結果を表6〜表12に示す。
表6および表7は、表1および表2と同様、軽油を燃料とする各ディーゼルトラック(10t車)における、従来のエンジンオイルを用いた場合とエコ新潤滑油を用いた場合との燃費を比較した走行試験の結果を示す表である。
また、表8は、ディーゼルトラック(10t車)の車両番号353の走行試験データである。353車両は、運送行程が概ね一定であり、運送回数も多い車両である。
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
これらの結果から、軽油を使用するディーゼルトラックにおいて、ノーマル潤滑油に比べエコ物質0.3容量%のエコ新潤滑油を用いた場合に燃費性能が改善されることがわかる。
【0045】
表9は、軽油を燃料とするディーゼルトラック(4t車)にエコ物質0.3容量%のエコ新潤滑油を用いた場合の試験結果であり、表10は、軽油を燃料とするディーゼル乗用車の試験結果である。
【0046】
【表9】
【0047】
【表10】
【0048】
これらの結果から、軽油を使用するディーゼルトラック(4t車)やディーゼル乗用車においても、ノーマル潤滑油に比べエコ物質0.3容量%のエコ新潤滑油を用いた場合に燃費性能が改善されることがわかる。
【0049】
表11および表12は、表3および表4と同様、ガソリン(レギュラーまたはハイオク)を燃料とする各車両における、従来のエンジンオイルを用いた場合とエコ新潤滑油を用いた場合との燃費を比較した走行試験の結果を示す表である。
【0050】
【表11】
【0051】
【表12】
【0052】
これらの結果から、ガソリン車においても、ノーマル潤滑油に比べエコ物質0.3容量%のエコ新潤滑油を用いた場合に燃費性能が改善されることがわかる。
【0053】
以上より、軽油を燃料とするディーゼルのトラック・乗用車ならびにガソリン車のいずれにおいても、エコ物質0.3容量%のエコ新潤滑油を使用することにより、燃費性能が改善されることがわかる。
【0054】
(3)エコ物質0.5容量%のエコ新潤滑油
エコ物質0.5容量%エコ新潤滑油を用いた走行試験について、ハイオクガソリンを用いたガソリン車およびレギュラーガソリンを用いたガソリン車、ならびに軽油を燃料とするディーゼル乗用車の試験結果であり、以下走行試験の結果を表13〜表15に示す。表13はハイオクガソリン、表14はレギュラーガソリン、表15は軽油、を燃料として使用した試験結果である。
【0055】
【表13】
【0056】
【表14】
【0057】
【表15】
【0058】
この結果から、少なくともガソリンおよび軽油を燃料とする乗用車において、エコ物質0.5容量%のエコ新潤滑油を用いた場合、ノーマル潤滑油に比べて燃費性能が改善されることがわかる。
【0059】
2.[黒煙試験]
さらに、エコ物質0.3容量%のエコ新潤滑油を使用した場合について、ノーマル潤滑油との黒煙濃度の比較を行うため、各車両の黒煙試験を行った。
【0060】
黒煙試験とは、プローブ(黒煙測定器の排ガス採取シート)を排気管内に20cm程度挿入し、排気ガスをプローブに通過させ、不純物がついたプローブを黒煙測定器にかけて黒煙濃度を測定するものである。なお、プローブが黒色に近いほど不純物が多く、黒煙濃度が高くなる。
【0061】
(i)黒煙試験においては、自動車は停止状態とし変速ギアを中立とする。
(ii)そして、原動機を無負荷で運転した後、アクセルペダルを急速に踏み込んで最高回転数に達した後、アクセルペダルを離して無負荷運転に至るという操作を2,3度繰り返す。
(iii)次に、無負荷運転を約5秒行い、アクセルペダルを急速に踏み込み約4秒間持続した後、アクセルペダルを離し約11秒間持続する操作を、3回繰り返す。
(iv)黒煙の採取は、(iii)においてアクセルペダルを踏み込み始めた時点から行う。なお、黒煙を採取する直前にプローブをパージ(滞溜黒煙の掃気)する。
(v)上記(i)〜(iv)の工程を3回行い、その平均値を黒煙濃度とする。
【0062】
表16は、各車両の黒煙試験結果の一覧である。左側がノーマル潤滑油を用いた場合、右側がエコ物質0.3容量%のエコ新潤滑油を用いた場合の結果である。なお、図2図5は、実際に行った黒煙試験の結果を示す一例である(車両番号:438、8003のもの)。
【0063】
【表16】
【0064】
以上から、エコ物質0.3容量%のエコ新潤滑油を使用することにより、黒煙を低減でき、性能が改善されたことがわかる。また、排出される黒煙が少ないため、環境にもやさしい。
【0065】
なお、各車両のドライバーにエンジンの調子や馬力、燃費、排気ガスの煙などについて、体感によるアンケートを行った。その結果を表17〜表19に示す。
【0066】
【表17】
【0067】
【表18】
【0068】
【表19】
【0069】
これらより、ドライバーの体感で、従来の潤滑油に比べてエコ新潤滑油を使用した場合、少なくともエンジンの調子や燃費、排気ガスの煙の量について、従来と同等または改善されるとの結果が得られた。
【0070】
3.[エコ燃料と併用した場合の走行試験]
続いて、燃料(軽油、ガソリン等)にエコ物質を注入したエコ燃料と、エコ新潤滑油を併用した場合との走行試験を行った。その結果を、表20〜表22に示す。表20および表21は、軽油を使用したディーゼルトラックにおいて、左側がノーマル燃料およびノーマル潤滑油を用いた場合、中側がエコ燃料およびノーマル潤滑油を用いた場合、右側がエコ燃料およびエコ新潤滑油を用いた場合の結果である。表22は、レギュラーガソリンを使用した乗用車における結果である。
【0071】
【表20】
【0072】
【表21】
【0073】
【表22】
【0074】
以上より、エコ燃料とエコ新潤滑油とを併用することで、燃費性能がさらに改善されることがわかる。
【0075】
なお、これらの併用によって燃費性能が改善されるのは、エコ物質を注入したエコ燃料がそれ自体燃費を低減する効果を備えるのにくわえ、機械部品の一部で潤滑油と同様のはたらきをするので、このとき燃料に含まれるエコ物質が効果を発揮するためである。
【0076】
具体的には、たとえば図1に示すピストン1およびコンロッド2において、潤滑油はコンロッド1の下方から上方に向けてフローする。そして、ピストン2の凹み部3dには通常オイルリング(図示せず)が配されているため、上方にフローした潤滑油は、オイル孔6を通って凹み部3dのオイルリングによって下方に戻される(矢印A)。潤滑油が凹み部3dよりも上方に上がってしまうと、PM黒煙の発生や、カーボンの形成が起こり、エンジン機能の低下を招くためである。
【0077】
一方、ピストン2の凹み部3dより上部に全く油膜がなければメタルアタックが発生してしまう。しかしながら、実際にはピストン2の上方より噴射された燃料が薄い油膜を作り(矢印B)、ピストン2上部でのメタルアタックを抑制するという、燃料が潤滑油と同様のはたらきをする。
【0078】
このとき、該燃料にエコ物質が含まれていると、従来よりも摩擦が低減される上、潤滑油としての該燃料の酸化、劣化を抑制することができる。また、ピストン2の防錆にも効果的である。
【0079】
4.[防錆実験]
次に、エコ新潤滑油の防錆効果を検証するため、防錆実験を行った。防錆実験は、ノーマル潤滑油を塗布した各部品と、エコ新潤滑油を塗布した同各部品とを、野晒しの状態で放置し、所定期間経過後の各部品の錆の状態を目視することにより行う。
【0080】
図6図9は、平成22年9月16日〜10月18日までの任意の日における錆の状態を示す図である。なお、各図とも上がエコ新潤滑油、下がノーマル潤滑油を塗布したものである。
【0081】
ノーマル潤滑油を塗布したものは酸化が激しく赤錆が多量に発生したのに対し、エコ新潤滑油を塗布したものは赤錆が非常に少なく、エコ新潤滑油に防錆効果があることは明白である。
【0082】
以上のように、エコ物質を注入したエコ新潤滑油は、自動車用エンジンなどの内燃機関に用いた場合に、諸機関における摩擦抵抗を小さくでき、燃料消費量が低減され、発生する二酸化炭素その他の排ガス成分を低減できる。また、防錆効果を備え、潤滑油の酸化、劣化を抑え、各部の摩耗を抑制し、内燃機関の延命を図ることができる。
【0083】
5.[ゼリー状の潤滑油]
また、グリス用途として用いるための潤滑油は、従来の潤滑油にエコ物質(ジメチルラウリルアミン)を1〜5容量%を注入した後、カルシウム・ナトリウム・リチウム・アルミニウム・脂肪酸塩等の増ちょう剤を注入し均一に拡散させて、ゼリー状にして製造する。そして、これにより製造したゼリー状潤滑油を、スラストベアリングや中間ベアリング・タイヤシャフトなどに使用することで、摩擦抵抗を小さくでき、燃料消費量が低減され、発生する二酸化炭素およびその他の排ガス成分を低減できる。さらに、防錆効果を備えるため、部々の酸化、劣化を抑え、諸機関の延命も図ることができる。なお、該ゼリー状潤滑油は、上記以外にもさまざまな機器や設備等の各部位で使用可能である。
【0084】
以上の通り、ここまで図面および表を参照しながら本発明の実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。とくに、エコ物質としてジメチルラウリルアミン以外のジメチルアルキル3級アミンを使用することも可能であるし、エンジンオイルとして内燃機関に用いる以外に、パワステオイル、タービン油、ギヤオイルなど、また、駆動系の潤滑油として使用することも可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 コンロッド
2 ピストン
3a〜3d 凹み部
4 コンロッドボルト
5 コンロッドキャップ
6 オイル孔
A 潤滑油のフロー
B 燃料噴射のフロー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9