【実施例1】
【0014】
図1〜
図5は実施例1を示しており、実施例は自動車のバンパの成形用金型の場合を示しており、
図1に示すようにバンパ1の内側には内面がアンダーカットに形成される凹面2となっているボス状部3が成形されている。このボス状部3に車体側の取付けブラケット(図示せず)が連結できるようになっている。
【0015】
図2,3に示すように、成形用金型は固定側金型4と、この固定側金型4に接離可能な可動側金型5とを備えており、これらの固定側成形面6と可動側成形面7との間に、バンパ成形用のキャビティ8が形成されるようになっている。そして、可動側金型5は可動側成形面7を形成する可動側型板9、この可動側型板9の後ろ側に支持材10を介して設けられる射出成形機(図示せず)との取り付け板11と備え、可動側型板9と取り付け板11との間には支持壁10に沿って摺動する突き出し板などとも称される摺動板12が設けられている。可動側型板9には水冷用冷却路(図示せず)が孔によって形成されている。また摺動板12には可動側成形面7に先端があらわれる突き出しピン(図示せず)の基端が接続されている。尚、固定側金型4にも同様に水冷用冷却路が設けられる。
【0016】
前記可動側成形面7の凹部13にはボス状部3を成形するためのスライドコア14が嵌合している。このスライドコア14は、型閉時においてはその先端側にある天面15側が可動側成形面7よりやや突設しており、この天面15側の一側にアンダーカットに形成される凹面2の成形面部が形成される突部16が形成されるようになっている。そして、スライドコア14の天面15側と反対側、すなわち取り付け板11側にある底面17にピン18の先端18Fが接続されると共に、可動側型板9の貫通孔19を摺動可能に貫通したピン18の基端18Bは摺動板12側に回動自在に接続されており、このピン18の中心軸線方向は可動側金型5の固定側金型4との接離方向に対して斜めに設けられている。したがって、型閉状態から型開状態に移行するとき、摺動板12が可動側型板9に向かって進むことで、ピン18が貫通孔19を摺動案内されて基端18Bを中心としてピン18が回動し、この結果スライドコア14が後退できるようになっている。尚、型開状態から型閉状態に移行するときは、逆に前進して成形状態となるようにセットされる。
【0017】
図4,5に示すように、スライドコア14の内部に圧縮気体、実施例では圧縮空気の金型冷却用通路20が設けられる。金型冷却用通路20の圧縮空気の一次側21となる入口22、圧縮空気の二次側23となる出口24はスライドコア14の底面17に設けられており、これら入口22、出口24の中心軸線は前記接離方向とほぼ一致している。そして、入口22に可撓性パイプ状の気体供給路25が設けられると共に、出口2
4にも気体排出路26が接続される。この気体排出路26は可撓性パイプ状によって形成してもよい。尚、入口22に気体供給路25の可撓性の保護パイプ27が接続されており、この保護パイプ27に内部に気体供給路25が内蔵されている。
【0018】
前記圧縮空気の金型冷却用通路20は、一次側21側に配置され気体供給路25の先端25Fから圧縮空気の噴出方向Xと同軸線状、すなわち圧縮空気の流れが前記接離方向と平行となる往路部28と、往路部28に接続されこの往路部28と直交方向に交差するように天面15とほぼ平行となる中間部29と、中間部29に接続されこの中間部と直交方向に交差して往路部28と平行となって二次側23側に配置される復路部30とを備えており、往路部28の途中から中間部29、さらには復路部30の途中まで圧縮空気の金型冷却用通路20は分岐されて形成されている。実施例では圧縮空気の金型冷却用通路20は5つの分岐路31が形成されて、この分岐路31相互間にはスライドコア14の材料により肉薄なフィン状部32が形成されている。
【0019】
尚、往路部28の通気総断面積と、中間部29の通気総断面積(すなわち、複数の分岐路31の通気面積の合計面積)と、復路部30の通気総断面積とはほぼ同じ面積に形成されている。
【0020】
そして、気体供給路25の先端25Fは、分岐路31の始端31Fに対向するように、噴出方向Xに直交するように端面状に配置されると共に、気体供給路25の先端25Fは先細となって通気断面積が次第に狭くなる丸孔のノズル33に形成されていることで、このノズル33が臨む噴出方向Xの箇所には、このノズル33よりも通気断面積が大きい圧縮空気の膨張室34が往路部28の一次側21によって形成される。すなわち、ノズル33と分岐路31の始端31Fとの間の気体供給路25、つまり気体供給路25の往路部28の一次側21に、ノズル33から噴出した圧縮空気が膨張する膨張室34が形成されて、ノズル33から噴出される圧縮空気は先端25Fにおいて直ちに膨張できるようになっている。このため、それぞれの通気断面積は、ノズル33、気体供給路25、膨張室34の順に大きく形成されているもので、その比率は、1:2〜5:4〜13程度に形成されている。また、膨張室34の通気長さL、すなわちノズル33から分岐路31の始端31Fまでの長さLは、膨張室34が円筒形である場合、その直径Dの0.5〜5倍程度に形成されている。尚、前記比率が前記数値より外れるときには膨張に伴い温度低下がやや劣ることがある。
【0021】
さらに、
図2に示すように可動側金型5に、型閉検知手段35を設ける。この型閉検知手段35は、支持壁10又は取り付け板11に固定したリミットスイッチ36と、摺動板12に設けられ型閉時にリミットスイッチ36を押圧作動するための作動片37とで構成されている。また、型閉検知手段35による型閉検知時に気体供給路25の基端25Bにはタンク付き空気圧縮機や圧縮空気タンクなどの圧縮空気源38を接続すると共に、気体供給路25の先端25F側と基端25B側との間に、電磁開閉弁などの自動開閉弁39が介在しており、型閉検知手段35、自動開閉弁39などは制御装置(図示せず)に電気コード(図示せず)を介して接続している。
【0022】
尚、スライドコア14の製作は、
図4に示すように二分割された金型冷却用通路20などを形成した一方と、突部16、入口22、出口24などを形成した他方を突き合わせて一体化したものを示している。
【0023】
次に前記構成につきその作用を説明する。型開状態にあっては、固定側金型4に対して可動側金型5が離間していると共に、可動側金型5においてはスライドコア14が可動側型板9の可動側成形面7よりも可動側金型5側に突設している。
【0024】
次に、射出成形機により可動側金型5を前進せしめる。この際、可動側金型5が固定側金型4に接して型閉状態になる途中で、取り付け板11側が前進して摺動板12が相対的に取り付け板11に近づくことで、ピン18が可動側金型5に斜めに設けられている貫通孔19に摺動し基端18B側を中心として回動して、型閉状態において可動側型板9にスライドコア14がセットされる。このセット状態では
図3に示すように突部16と可動側成形面7との間には、凹面2となっているボス状部3が成形される空間部Sが形成されるようになっている。また、冷却水路には冷却水が供給されて可動側型板9などが所定温度に冷却されている。
【0025】
そして、型閉状態のキャビティ8に溶融樹脂は充填され、この溶融樹脂が固化することで、アンダーカット箇所を有するボス状部3を一体成形したバンパ1が成形される。
【0026】
このような取り付け板11側が前進して摺動板12が相対的に取り付け板11側に近づくとき、型閉検知手段35のリミットスイッチ36に作動片37が接触して作動することで制御装置を介して、自動開閉弁39が開弁し空気源38から圧縮空気が気体供給路25を通ってその先端25Fのノズル33より膨張室34に噴出する。そしてこのように一次側21側の往路部28から導入され圧縮空気は金型冷却用通路20の中間部29を通って二次側23側の復路部30から気体排出路26へ排出され、この気体排出路26から最終的には空気は大気に開放される。この際、ノズル33の口径の小さい先端25Fから圧縮空気が口径の大きい空間を有する膨張室34に噴出することで、圧縮空気は膨張し、この結果空気温度が低下し、この低下した空気が金型冷却用通路20の分岐路31を通ることにより、空気とフィン状部32との間出で熱交換し、天面15が溶融樹脂と接して加熱されるスライドコア14を冷却することができる。尚、圧縮空気が膨張するとその温度が低下することは、理想気体の体積と圧力、温度に関係するボイル・シャルルの法則に基く。
【0027】
このようにして成形がなされると、可動側金型5が後退する型開状態に移行する。この型開移行のときには、取り付け板11が後退することで、摺動板12は取り付け板11より相対的に離れるので、可動側型板9が後退するときに、ピン18が斜めの貫通孔19を摺動し、ピン18は基端18Bを回転中心として突部16とは反対方向に回動することで、突部16がボス状部3の凹面2より抜き出る。引き続き可動側金型5が後退すると可動側成形面7より突き出しピンが突出することで、成形品であるバンパ1が可動側成形面7より突き出され離型して取り出される。また、型開に伴ってリミットスイッチ36より作動片37が離れ型閉検知手段35が型開を検知することに応動して、制御装置を介して自動開閉弁39が閉弁して、圧縮空気の供給を停止する。
【0028】
以下に、実験例について説明する。前提条件として気温20℃で、空気源の圧縮空気の温度20℃、圧力0.4MPaで、第一の空間部の空気通路断面積30mm
2としたとき、先端にノズルを設けないでそのままの圧縮空気を気体供給路25に供給した場合のスライドコア14の天面15部の温度が76℃であったのに対して、先端にノズルを設け、そのノズル状の気体供給路25の口径を(a)2mm(空気通過断面積3.14mm
2)、(b)3mm(空気通過断面積7.07mm
2)、(c)4mm(空気通過断面積12.56mm
2)、(d)5mm(空気通過断面積19.63mm
2)のそれぞれとしたとき、第一の空間部での膨張した空気の冷えた温度はほぼ12℃程度となり、スライドコア14の天面15部の温度を51〜65度程度に低下でき、11〜25℃も温度低下を図ることができた。
【0029】
このように、ノズル状の気体供給路25の口径の空気通過断面積が、第一の空間部の空気通過断面積の2/3(≒19.63/30)より小さい場合には、空気温度を下げて圧縮気体の金型冷却用通路20に流すことができるようになっている。
【0030】
以上のように、前記実施例においては、バンパ1を成形するために用いられる金型に配設されるスライドコア14の内部に圧縮空気の金型冷却用通路20を配設し
た成形用金型であって、金型冷却用通路20の
入口22に気体供給路25が設けられ、金型冷却用通路20の出口24に気体排出路26が設けられ、気体供給路25の先端は先細となって通気断面積が次第に狭くなるノズル33が設けられ、金型冷却用通路20の入口22側にはノズル33から噴出した圧縮気体が膨張する膨張室34が設けられ、膨張室34と出口24の間に、金型冷却用通路20を複数に分岐して形成した分岐路31を設け、これら分岐路31の相互間にはスライドコア14の材料によりフィン状部32が形成され、ノズル33、気体供給路25、膨張室34の通気断面積の比率が、1:2〜5:4〜13であるから、一次側21側において、膨張室34で圧縮空気を膨張させることで、その二次側23側空気温度を、一次側21側空気温度よりも低くして金型冷却用通路20に通してスライドコア14を冷却させることで、圧縮空気源38から供給される圧縮空気の温度よりも低い温度の空気を金型冷却用通路20に流すことで、スライドコア14の冷却効率を上げることができる。また、金型冷却用通路20を通す空気の温度を、クーラーなどの機器を利用しなくとも済むので、射出成形機まわりが大型化することもない。
【0031】
さらに、前記スライドコア14の天面15は、可動側金型5に設けられるキャビティ8の一部を構成することにより、天面15によりバンパ1の一部を成形することになるが、スライドコア14の金型冷却用通路20に流す空気の温度を下げておくことで、天面15の温度を、例えば可動側成形面7と同程度に下げておくことができ、この結果、キャビティ8内の成形品における全体の冷却状態を均一にすることができ、成形面におけるヒケ跡などがあらわれない良質な成形面を成形することができる。
参考例
図6は実施例2を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例2は、可動側型板9´に入れ子41を設けたものであり、この入れ子41の天面15´が可動側成形面7´と並んで、この天面15´には凹凸42が形成されて成形面部が設けられる。そして、入れ子41の底面17´には圧縮空気の入口22´である一次側21´と、熱交換された空気の出口24´である二次側23´が設けられ、これら一次側21´と二次側23´との間に、往路部28´、フィン状部32´で仕切られて分岐された中間部29´及び復路部30´からなる圧縮空気の金型冷却用通路20´が設けられている。
【0032】
そして、往路部28´には、ノズル33´が設けられており、このノズル33´の二次側23´には圧縮空気の膨張室34´が設けられている。ノズル33´は入れ子41自体に形成されており、気体供給路25´の先端25F´は、噴出方向X´と直交している。
【0033】
したがって、型閉時において、圧縮空気が供給されると、ノズル33´から噴出した圧縮空気は膨張室34´で膨張することで空気温度が低下する。そして温度低下した空気が中間部29を通ることで、入れ子全体、ひいては天面15´の温度を低下させることができる。