特許第5719169号(P5719169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5719169ねじ込み継手の耐疲労特性を改善する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719169
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ねじ込み継手の耐疲労特性を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 15/04 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   F16L15/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-521427(P2010-521427)
(86)(22)【出願日】2008年8月21日
(65)【公表番号】特表2010-537135(P2010-537135A)
(43)【公表日】2010年12月2日
(86)【国際出願番号】EP2008060936
(87)【国際公開番号】WO2009027309
(87)【国際公開日】20090305
【審査請求日】2011年8月10日
【審判番号】不服2013-23397(P2013-23397/J1)
【審判請求日】2013年11月29日
(31)【優先権主張番号】07114962.9
(32)【優先日】2007年8月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310017862
【氏名又は名称】テナリス・コネクシヨンズ・リミテツド
【氏名又は名称原語表記】Tenaris Connections Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンテイ,ネストル・ジエイ
【合議体】
【審判長】 丸山 英行
【審判官】 平田 信勝
【審判官】 氏原 康宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4984829(US,A)
【文献】 国際公開第01/48411(WO,A1)
【文献】 特開2005−221038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンとして定められ雄ねじの設けられたチューブ(2)、及び
ボックスとして定められ雌ねじの設けられたチューブ(3)
が設けられたねじ込み継手の組み付け方法であって、
ピンには第1の当たりショルダーが設けられ、
ボックスには第2の当たりショルダーが設けられ、
第1及び第2の当たりショルダーは相補する形状を有し、
ピンがボックスに組み付けられるようにされ、
ピン又はボックスのいずれか一方のねじの谷底及びピン及びボックスの他方のものの対応するねじの山の頂が、ピン及びボックスの呼び寸法に従って寸法が定められ、継手の平均厚さの1%と5%の間を含む半径方向の締め代を有し、
継手がショットピーニングを含む表面処理を有し、
ねじの高さの約1/4の値を有する谷底から荷重フランクへの半径(R)が設けられ、該半径(R)が0.20と0.40mmとの間の値を有する、ねじ込み継手の組み付け方法において、
a)ボックスのねじ部分内にピンのねじ部分を差し込む段階と、
b)第1及び第2の当たりショルダーが当たるまで、ボックスにピンを組み付けるためのトルクを適用する段階と、
c)継手の最も応力を受ける部分において鋼の降伏強度の50%と90%との間の大きさに達するまで割増のトルクを適用する段階と、
を具備し、
前記ショットピーニングが、ピン(2)のねじ区域の始点及び終点に適用される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ込み継手の耐疲労特性を改善する方法、特に炭化水素産業、特にOCTG(Oil Country Tubular Goods、石油産出国用管状製品)の分野において使用されるストリングの作成及び沖合用のラインパイプの作成のために定められた長さのチューブの連結に関する。
【背景技術】
【0002】
石油又はより一般的に炭化水素の探索は、近年は、油田又はガス層がより深くにあり又は到達に困難な場所にあるためハードウエア又は装置の点からより困難になってきている。深海底にある炭化水素層の試掘及び開発は費用が大きく、かつ従来はあまり重要ではなった疲労及び腐食のような環境からの挑戦により耐えるハードウエアを必要とする。
【0003】
深海底にある油田から石油又はガスを取り出すためには、特に海底に固定された沖合プラットフォームが使用され、更に慣習的にライザーと呼ばれるストリングが使用される。これらは石油又はガスを海面に輸送するために使用される。
【0004】
これらチューブは海中に沈められ、そして海流及び表面波の動きにより生ずる運動にさらされる。これらの継続及び海の周期的な運動のため、ライザーは不動の状態には保たれず継手の幾つかの部分に変形を生じさせ得る小さい横方向の運動を受け、そして特にねじ込み継手の区域に関して管に疲労応力をもたらす荷重に抵抗しなければならない。この応力はねじの近くでチューブの破損を生じさせる傾向があり、ねじ込み継手の耐疲労特性を改良する要求がある。
【0005】
現在、石油産業用のねじ込み継手の疲労性能及び設計は、他の技術分野から改作され推定される。しかし、特別な標準又は設計/寸法仕様はまだない。基本的な考えは、英国標準/コードオブプラクティスBS7608鋼構造体の疲労設計及び評価、並びにDNVクラスB S−N曲線において見いだすことができる。
【0006】
特許文献1は、ねじ込み継手の耐食性を改善するためのねじ込み継手の製造及び組み付けの方法を開示する。継手は、内側ショルダー又は外側ショルダーのいずれか又は双方を有し、各ショルダーはシール部分とトルクショルダーとを持つ。これは、ピン上のシール形成面のピッチ径が、ボックス上のものより大きく、更にピンのトルクショルダー形成面の傾斜角度がボックス上のものより小さいような方法で設計される。両者の傾斜角度の差は0.5゜から4.0゜の範囲である。これらの特徴が気密及び割れ腐食に対する抵抗を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6045165号 明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
耐疲労性の問題は、特許文献1において取り組まれていない。
【0009】
従って、本発明の目的は前述された欠点を克服するであろうねじ込み継手を提供することである。
【0010】
本発明の主な目的は、ねじ込み継手の疲労寿命を長くする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的は、本発明に従って、ピンとして定められた雄ねじ、及びボックスとして定められた雌ねじのあるねじ込み継手の組み付け方法であって、ピンには第1の当たりショルダーが設けられ、ボックスには第2の当たりショルダーが設けられ、第1及び第2の当たりショルダーが相補する形状を有し、ピンがボックスに組み付けられるようにされたねじ込み継ぎ手の組み付け方法において、
a)ボックスのねじ部分内にピンのねじ部分を差し込む段階と、
b)第1及び第2の当たりショルダーが当たるまでボックス内でピンを組み付けるためのトルクを適用する段階と、
c)継手の最も応力を受る部分において鋼の降伏強度50%と90%との間の大きさに達するまで割増トルクを適用する段階とを具備する方法により達成される。
【0012】
本発明の別の態様により、上述の目的は、ピンとして定められた雄ねじチューブ、及びボックスとして定められた雌ねじチューブを備え、ピンには第1の当たりショルダーが設けられ、ボックスには第2の当たりショルダーが設けられ、第1及び第2の当たりショルダーが相補する形状を有し、ピンがボックスに組み付けられるようにされたねじ込み継手であって、
ピン又はボックスの一方のねじの谷底とピン又はボックスの他方のねじの山の頂との間の、ピンとボックスの呼び寸法に従って寸法の定められた締め代が、パイプ壁の平均厚さの1%と5%との間に含まれ、更にねじの高さの約1/4の値を有する谷底から荷重フランクへの半径が設けられる、ねじ込み継手により達成される。
【0013】
請求される本発明に従って、ねじ込み点の耐疲労特性を改善する目的は、適切に設計された継手の組み付け作業の終わりに現れる次の幾つかの特徴の組み合わせ作用により達成される。
a)耐疲労特性を改善するために谷底対山の頂の締め代による半径方向の大きい荷重、いわゆるフープ荷重の付与;
b)耐疲労特性を改善するための大きいショルダー荷重の付与;
c)ネジの谷底の応力集中を低下させる谷底からフランクへの大きい半径Rの付与;
d)加えて、主にショットピーニングよりなるピン及びボックスの表面の適切な表面処理が継手の耐疲労特性を更に向上させる。
【0014】
以上の目的及びその他の目的は以下の詳細な説明及び付属図面を参照することにより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による方法が適用された継手の長手方向軸面の断面図を示す。
図2a-2b】図1の特定の継手の拡大図を示す。
図3】本発明による方法を実行するために必要な組み付けトルクの傾向を表している曲線のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の継手の組み付け方法は「連結部の構造的一体性の増加による耐疲労特性の改善」の原理に従い、かつ「八角形行列」の実験に基づくタグチの方法により開発された。
【0017】
タグチ博士は、制御パラメーターの最適設定により実験に対してより小さい分散を与える「直交配列」実験に基づく方法を開発した。この方法は製品/方法のこれまでの知識を利用する。「直交配列」は1組のうまく平衡の取れた(最少の)実験を提供し、そしてタグチ博士の信号対雑音比(S/N)は、最適化及び最適結果の予報のための目的関数として役立つ。信号対雑音比は、雑音の影響を最も小さくするために必要である;雑音のレベルは低く保たれるべき誤差として示される。低く保たれない場合は、パラメーターの選定は完了せず、そして雑音の部分は、実際に試験の開始を正しく確認しない信号である。
【0018】
この方法を使用し評価するためのパラメーターが、2種の可能な状態に対して下に示されるように定められた:
−ねじの断面半径(0.2,0.3mm)
−ねじの締め代(連結部の平均厚さの0.9%、4%)
−表面処理(ショットピーニング処理、無処理)
−総合重量の慣性によるショルダー部におけるトルクの目標値(16270Nm(12000ft−lbs)以下、24400Nm(18000ft−lbs)以上)
【0019】
上述のパラメーターが、L8直交行列を使用した実験−8回の実験の試行の計画に対してタグチの方法により要求されるように組み合わせられた。実験は、外径244mm、厚さ13.84mmのパイプについて、2種の応力レベルで行われた。パラメーターは、表1にまとめられる。
【0020】
【表1】
【0021】
上の表に従って、大きい締め代、ショルダー上の大きなエネルギー、より大きい半径及びショットピーニング処理した表面を有し製造された連結の結果と標準の連結との差を下のグラフにおいて見ることができる。主な効果は材料の疲労限度〜90MPaより上の領域において見られる。
【0022】
【0023】
この方法の出力として、種々のねじ込み継手の構成が可能であり、このため、これらの結果を確認するために種々の試験が行われた。
【0024】
特に図面を参照すれば、2個のチューブ、即ち呼び外径Dを有する雄のチューブ又はピン2、及び呼び外径D1の雌のチューブ又はボックス3を連結している全体として番号1で示されたねじ込み継手が示される。
【0025】
ピン2は、適切な断面形状、例えば台形の雄ねじのあるねじ部分4を有し、ボックス3は対応した形状の雌ねじのある雌ねじ部分5を持つ。
【0026】
パイプ及びピン及びボックスの共通軸線がAで示される。ピン2は、当たりショルダー6を形成している先端で終わる。組み付け作業の終わりにピン2に当たるボックス3の対応している環状面は、実質的に同じ形状を有する当たりショルダー7を備える。ショルダー6及び7は、継手を通して軸方向の圧縮荷重を伝達するため、及び運転荷重下でのそれの圧縮抵抗性の改善のために使用される。
【0027】
ピン2及びボックス3のねじは、組み付け完了時に、ピン又はボックスのいずれか一方の部材の谷底と他方の部材の対応する山の頂とが、大きい半径方向締め代を持つような方法で設計される。
【0028】
ピン及びボックスを組み付ける前のこの2個の部材の呼び寸法に従って寸法の定められた締め代、即ちピンとボックスの平均厚さの増加分の値は、パイプ設計範囲内の最軽量の場合は、継手又は連結部の平均厚さの1%より小さくはなく、そして、締め代、即ちピンとボックスの平均厚さの増加分の値は、パイプ設計範囲内の最重量の場合は、継手又は連結部の平均厚さの5%より大きくない。
【0029】
この締め代の値のため、連結部における応力の大きさは高い応力集中係数を避けるような管理下に確実に維持される。
【0030】
次の表に、異なる直径及び重量を有する2種のパイプの場合における締め代の適切な値の例が示される。
【0031】
パイプ直径 重量 締め代 締め代
244.5mm( 9 5/8”) 53.68kg/m(36lb/ft) 3% 370μm
339.7mm(13 3/8”) 145.82kg/m(98lb/ft) 2% 360μm
【0032】
本発明の方法に従って、組み付けの際、ピンとボックスとの間のショルダー6と7とに大きな荷重を加えることにより継手に対して追加の軸方向の力を与えることが有利である。これは、継手に割増の組み付けトルク、従ってショルダーに割増荷重を与えることによりなされる。これは、継手における改善された耐疲労特性が達成されるという優れた効果を持つ。
【0033】
この追加された荷重が追加の圧縮効果を作り、ボックス3を引っ張りかつピン2を圧縮し、これにより疲労応力抵抗を改善する。これは、継手1の全体にわたる、特にピン2にわたる応力分布を平衡化させることにより達成される。
【0034】
図3のグラフを参照すれば、横軸が組み付け回転量を示し、縦軸がトルクの大きさを表しているカルテシアン座標が示される。このグラフは2個の曲線10と11とを示す。
【0035】
曲線10は、従来の方法により組み付けられる際の現状技術の継手に対するトルクの傾向を示す。曲線10の点aは組み付け作業の開始点を示す。線分a−bは多くの現状技術において普通である従来の半径方向の締め代によるトルクの漸増を示す。線分b−cは、ピンとボックスとの間の当たりショルダーの加圧によりトルクの大きさの増加を示す。
【0036】
曲線11は、本発明の方法に従って継手に加えられるトルクの傾向を表す。この曲線の線分a−dは、ピン及びボックスのねじの山の頂と谷底との間のより大きい半径方向締め代により生じた傾斜のより急なトルクの増加を示す。曲線の線分d−eは、公知の組み付けの通常の方法により作られた組み付け体に相当する大きさまで当たりショルダー6及び7への加圧により生じたトルクの急増を示す。線分e−fは、本発明の組み付け方法による割増のトルク(便宜上、以下Δトルクと呼ぶ)を表す。
【0037】
割増のトルクは、ボックス3上へのピン2の組み付けの終わりに加えられる。例えば、従来の組み付け作業が降伏強度の約50%の負荷を生ずる最終トルクに達したとき、本発明の方法によりΔトルクを適用して降伏強度の80%まで荷重を大きくする。この値は1%から99%の間の可能な全範囲内で変えることができる。
【0038】
本発明の組み付け方法の解析に当たり二つの注目される重要な点がある。
1)トルクの傾斜が急激に増加するトルクショルダー点dは、組み付けが、ピン2のショルダー6とボックス3のショルダー7とが当たるショルダーリング位置に達したことを示す。この点dは、ねじの締め代が加えられるトルクに対する特有の抵抗であった曲線11の第1の部分の終点を示す。
2)この曲線は、点dから組み付けの終了を示す最終トルク点fまでの間、曲線のそれまでの部分と比べて回転量に対するトルクの上昇が急激なため実際上は垂直線となる。この理由は、軸方向の締め代を克服しなければならず相当するトルクエネルギーを消費するためである。このエネルギーは継手における弾性エネルギーとして蓄えられるであろう。
【0039】
市販の各形式の継手に対して、以下の計画に従って設計され、試験され確認された特定の最適値が定められた。
【0040】
第1段階において、直径、厚さ、鋼の等級、ねじの形式のような継手のパラメーターが考慮される。最適の組み付けパラメーターが予め評価され、モデル化されそして模擬実験される。
【0041】
第2段階において、これらの値が実寸で試験され、そして反復ループで最初の方法が改定される。
【0042】
第3及び第4の段階において、継手及び組み付け工程を実証し認定するために組み付けられた継手が追加の実証試験を受け、実際の作業条件をシミュレーションする。
【0043】
工程の複雑さのため、例えば、直径、連結部に壁厚のような組み付けのパラメーターを絶対パラメーターにより定めることはできない。曲線11の線分e−fに相当するΔトルクは、追加トルク又はトルクの延長対回転量の曲線の延長部として定義される。一般に、正常トルクもΔトルクもショルダー領域の材料の降伏強度を越えない。Δトルクは、最終トルク値、即ち正常値とΔトルクとの和が、鋼の降伏強度の50%から90%の間の値に達する事実に対応して、現在技術の正常トルクの10%から50%の間の大きさに定められることが有利である。正常又は最大の呼び組み付けトルクは各特定の継手について製造者により定められる。
【0044】
本発明の方法の実施に加えて最終疲労寿命の改善に寄与する別の特徴は、谷底から荷重フランクへの大きくされた半径を継手に設けることである。
【0045】
ピン及びボックスのねじに対しては、半径方向締め代に起因するより大きい応力に適切に耐えるように、荷重フランクと谷底との間の半径Rは、特に図2bに示されるようにより大きい値のものである。
【0046】
試験により、ねじの谷底対山の頂の半径方向締め代の使用が応力集中を減らすことが示された。これは、大きい半径Rにより付与されたものである。
【0047】
説明された半径方向の大きい張力は、ピンのねじの谷底とボックスのねじの山の頂との間に自由空間を残しているピンの山の頂とボックスの谷底との間で(これは図面には示されない)、又は図2bに示されるようにその逆のいずれかで作ることができる。また、同じ継手にこの両方のオプションを同時に与えることもできる。
【0048】
半径Rは、特に不完全ねじ部における継手の引っ張り効率の維持の要求にのみ限定される最大値を持つことができる。半径が大きすぎると組み合い外れの乗り上げを起こし易い。
【0049】
半径Rの値は、ねじの高さの約1/4に設定され、そして可能な寸法の利用のためこの値は0.2から0.4mmとすることができ、0.3mmが最適値である。この値は、実施された試験の結果によりねじ込みジ継手の性能を最適にすることが証明された。
【0050】
継手の疲労寿命の延長に寄与する更に別の改善は、ピン及びボックスにショットピーニング処理を含む表面処理を提供することである。この処理は、ねじ部分及び存在するときは金属対金属の接触面のようなねじ近くの非ねじ部分の両者、及び当たり面に行われることが有利である。
【0051】
第1に、この表面処理は、微小な圧縮予荷重を提供し、よく知られた疲労の研究により確かめられているように耐疲労性を改善する。
【0052】
第2に、表面処理は表面硬度を更に大きくさせる。2個の異なる面間のかじりは、この2面間で面の硬度及び仕上げが異なるならば減らすことができる。かかる処理は、ピン又はボックスのいずれかに適用されたとき、又は異なる表面特性を作るために異なる大きさで適用されたとき、又はピン及び/又はボックスの選ばれた区域、好ましくはねじの領域に適用されたとき、同様にかじりのおき易さを減らす。例えば、表面の一方のリン酸塩処理は、これを継手部材の他方の表面とは異なるものとし、これにより、接触したとき、かじりを減らす。しかし、大きな荷重が加わる場合は、リン酸塩処理のみでは効果的でなく、ショットピーニング処理とも組み合わせられ、かかる特性を確保し、かつ大荷重に対する継手の抵抗を増加させる。
【0053】
好ましい実施例においては、かかる表面硬化処理は、一般にボックスよりも荷重のより大きいピンに、特により大きい応力集中を受けるねじ域の始点及び終点に適用される。これが、ねじ全体に沿ったより一様な応力分布を提供する。
【0054】
種々の試験の後、ショットピーニングについての正しいプロセスパラメーターが設定され、これが結果の最適化を導く。主なパラメーターの一つは、SAEJ442a標準により標準化されたアルメン(Almen)試験により測定し得るショットピーニングの強度である。実施された試験結果によれば006Aから015Aの間のアルメン強度が本発明に適している。
【0055】
別の重要なパラメーターは、ショット(鋼球又はガラス球)の直径であり、これは処理されるピースの形状に従って定められねばならない。本発明に対しては、0.15mmから0.35mmの間の直径が適切である。
【0056】
この表面硬化処理の別の利点は、継手を組み付けるときのかじりの傾向も減らすことである。
【0057】
本発明は、OCTG、並びに石油及びガス産業用のラインパイプ連結の分野において、特に沖合用に好ましく使用される。
図3
図1
図2a
図2b