特許第5719187号(P5719187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719187
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】建物の床断熱構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/43 20060101AFI20150423BHJP
   E04F 15/024 20060101ALI20150423BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   E04B5/43 G
   E04F15/024 603A
   E04F15/18 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-22263(P2011-22263)
(22)【出願日】2011年2月4日
(65)【公開番号】特開2012-162868(P2012-162868A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】園田 岳志
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−180017(JP,A)
【文献】 特開2008−308920(JP,A)
【文献】 特開平2−43454(JP,A)
【文献】 特開平7−180326(JP,A)
【文献】 特開2007−9541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/43
E04F 15/02−15/024
E04B 1/76−1/80
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で設けられた複数の横架材と、それら複数の横架材上に跨って設けられた床下断熱材と、その床下断熱材の上方に設けられた床板材とを備える建物の床断熱構造であり、
前記床下断熱材を上下に貫通し、下端部が前記横架材の上に載置された状態で設けられ、上端部により前記床板材を下方から支持する複数の床支持部材を備え、
前記床支持部材は、上下端部の少なくとも一端側に切刃部を有する板状の刃体よりなり、前記切刃部を用いて前記床下断熱材に打ち込まれて設けられており、
前記床下断熱材には、前記横架材の設置位置に対応して、該床下断熱材から上方に一部が突出した状態でピン部が打ち込まれており、前記ピン部において前記突出した部分となるピン突出部は位置確認用のマーカとなっており、
前記床支持部材は、前記ピン突出部を挿通可能な挿通部を有し、その挿通部に前記ピン突出部が挿通されて位置決めされた状態で前記床下断熱材への打ち込みが可能となっていることを特徴とする建物の床断熱構造。
【請求項2】
前記床支持部材は、一端に前記切刃部を有する筒状体よりなり、前記切刃部を下側にして前記床下断熱材に打ち込まれていることを特徴とする請求項1に記載の建物の床断熱構造。
【請求項3】
前記床支持部材は、前記床下断熱材の厚みよりも大きい高さ寸法を有し、前記横架材上に載置された状態ではその一部が前記床下断熱材よりも上方に突出しており、
その突出した突出部により前記床板材が下方から支持されることにより、前記床下断熱材と前記床板材との間に配線又は配管を設置する設置スペースが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の床断熱構造。
【請求項4】
前記設置スペースは、配線を設置する配線設置スペースであり、
前記床板材には、前記配線設置スペースに通じる開口部が複数の箇所に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建物の床断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物における床断熱構造として、床梁等の床下構造体上に設置された根太により床板材を下方から支持するとともに、当該床板材の下方において各根太の間に板状の床下断熱材を設置する構成が知られている。この種の床下断熱材としては、例えばウレタンフォーム等の発泡系樹脂からなる発泡系断熱材が用いられる。
【0003】
ところで、上記の構成では、根太部分に床下断熱材が設置されないため、根太部分において断熱性の低下を招くおそれがある。そこで、この対策として特許文献1には、床下構造体としてのALCパネル上に複数の貫通孔(円形孔)を有する床下断熱材を設置するとともに、同じくALCパネル上に床板材を下方から支持する円柱状の支持部材を床下断熱材の貫通孔に挿通させた状態で複数設置する構成が開示されている。この支持部材は、断熱材の厚みよりも大きい高さ寸法を有しており、ALCパネル上に設けられた状態ではその一部が床下断熱材よりも上方に突出する。そして、その突出した部分により床板材を下方から支持する構成となっている。かかる構成では、支持部材を床下断熱材において点在させることができるため、床下断熱材が設置されない部位を縮小化させることができ、その結果断熱性の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−180017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、支持部材をALCパネル上に設置するに際し、その前作業として床下断熱材に複数の孔部を設ける加工作業が発生し、その加工作業後に各孔部にそれぞれ支持部材を挿入していく作業が発生する。そのため、作業工数の増大が懸念される。また、床下断熱材に円柱状の孔部を設けることにより床下断熱材には円柱状の欠損部が発生するため、その欠損部では依然として断熱性の低下が生じうる。そのため、断熱性能の面で更なる改善が求められる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製造時における作業工数の削減を図ることができるとともに、断熱性能の低下を抑制することができる建物の床断熱構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の床断熱構造は、床下構造体と、その上方に設けられる床板材とを有し、それら床下構造体と床板材との間に板状の床下断熱材が設けられる建物の床断熱構造であり、前記床下断熱材を上下に貫通し、下端部が前記床下構造体の上に載置された状態で設けられ、上端部により前記床板材を下方から支持する複数の床支持部材を備え、前記床支持部材は、少なくとも一端側に切刃部を有する板状の刃体よりなり、前記切刃部を用いて前記床下断熱材に打ち込まれて設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、床板材を下方から支持する床支持部材が床下断熱材を上下に貫通して板状に延びているため、床下断熱材の欠損部(同断熱材による断熱が途切れる部分)を極めて小さいものとすることができる。これにより、床支持部材での熱損失を大いに軽減させることができ、断熱性能の低下を抑制することができる。また、床支持部材の上下端部の少なくとも一方には切刃部が設けられているため、この切刃部を用いて床支持部材を床下断熱材に打ち込むことで、床支持部材を床下断熱材に上下に貫通させることができる。この場合、床下断熱材に床支持部材を挿通させる孔部を設けなくても、床支持部材を床下断熱材に貫通させることができるため、床下断熱材に上記孔部を設ける加工作業を行わなくて済む。そのため、製造時における作業工数の削減を図ることができる。
【0009】
また、床支持部材が床下断熱材に打ち込まれて設けられる上記の構成では、床支持部材の表面に対して床下断熱材を密着させることができるため、床支持部材を床下断熱材に貫通させる構成において気密性を確保することができる。
【0010】
第2の発明の建物の床断熱構造は、第1の発明において、前記床支持部材は、一端に前記切刃部を有する筒状体よりなり、前記切刃部を下側にして前記床下断熱材に打ち込まれていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、床支持部材が筒状体からなるため、切刃部を下側にして床支持部材を床下断熱材に打ち込むに際し、床支持部材が倒れ込むのを抑制できる。そのため、床支持部材を床下断熱材に対し比較的安定した状態で打ち込むことができ、その結果打ち込み作業の作業性向上を図ることができる。
【0012】
第3の発明の建物の床断熱構造は、第1又は第2の発明において、前記床支持部材は、前記床下断熱材の厚みよりも大きい高さ寸法を有し、前記床下構造体上に載置された状態ではその一部が前記床下断熱材よりも上方に突出しており、その突出した突出部により前記床板材が下方から支持されることにより、前記床下断熱材と前記床板材との間に配線又は配管を設置する設置スペースが形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、床下断熱材よりも上方に突出した床支持部材の突出部により床板材が下方から支持されており、これにより床下断熱材と床板材との間に配線又は配管を設置するスペースが形成されている。そのため、かかるスペースを利用して配線や配管を設置することが可能となる。この場合、例えば配線や配管を点検する際に、床板材を取り外す等して床上からの点検が可能となる。
【0014】
第4の発明の建物の床断熱構造は、第3の発明において、前記設置スペースは、配線を設置する配線設置スペースであり、前記床板材には、前記配線設置スペースに通じる開口部が複数の箇所に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、床板材に設けられた開口部を通じて配線設置スペースから配線を床上に引き出すことができる。この開口部は、床板材において複数の箇所に設けられているため、室内の各所において配線を引き出すことができる。そのため、例えば複数の端末装置が設置されているオフィス等では各端末装置に配線を接続することが可能となり好都合である。
【0016】
第5の発明の建物の床断熱構造は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記床下構造体として複数の横架材が所定間隔で設けられており、それら複数の横架材上に跨って前記床下断熱材が設置されており、前記床下断熱材上には、前記横架材の設置位置に対応して位置確認用マーカが設けられていることを特徴とする。
【0017】
例えば、建物の施工後、床板材上にピアノ等の重量物が新たに設置される場合、床板材上に当初の想定よりも大きな荷重が加わり、施工時に設置された床支持部材だけではその荷重を支えきれなくなることがある。そのため、かかる場合には、床支持部材を床下構造体上に増設して荷重を支えられるようにする必要がある。床支持部材の増設に際しては、例えば床支持部材を床上から床下断熱材に打ち込むことにより行うことが考えられる。ここで、床支持部材を載置する床下構造体が複数の横架材からなる場合、横架材を目がけて床支持部材を床下断熱材に打ち込むこととなるが、床上からは床下断熱材が邪魔となり横架材の設置位置を把握するのが難しく、それ故横架材に向かって床支持部材を的確に打ち込むことは困難と考えられる。その点、本発明では、床下断熱材上に、複数の横架材の設置位置に対応して位置確認用マーカが設けられているため、このマーカを目印として床支持部材を横架材に向かって的確に床下断熱材に打ち込むことができる。これにより、床支持部材を横架材上に設置する構成において、床支持部材の増設作業を好適に行うことができる。
【0018】
第6の発明の建物の床断熱構造は、第5の発明において、前記床下断熱材には、該床下断熱材から上方に一部が突出した状態でピン部が打ち込まれており、前記ピン部において前記突出した部分となるピン突出部が前記位置確認用マーカとなっており、前記床支持部材は、前記ピン突出部を挿通可能な挿通部を有し、その挿通部に前記ピン突出部が挿通されて位置決めされた状態で前記床下断熱材への打ち込みが可能となっていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、床下断熱材には、横架材の設置位置に対応してピン部が設けられている。この場合、そのピン部において床下断熱材よりも上方に突出した突出ピン部を床支持部材の挿通部に挿通させることで、床支持部材を横架材の設置位置に位置決めすることができる。そして、このように位置決めされた状態で、床支持部材を床下断熱材に対し打ち込むことができる。これにより、床支持部材の増設作業を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】床部の構成を示す縦断面図。
図2】床下断熱材に支持部材が貫通して設けられた状態を示す縦断面図。
図3】床下スペースに床暖房用配管が設置された状態を示す平面図。
図4】建物ユニットを示す斜視図。
図5】点検口が設けられた床下地材を示す平面図。
図6】床下断熱材にマーカ部材を設けた状態を示す斜視図。
図7】支持部材の別形態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物としてユニット式建物について具体化しており、そのユニット式建物は、梁及び柱よりなる複数の建物ユニットを互いに連結することで構成されている。そこで、まず建物ユニットについて図4を参照しつつ説明する。なお、図4は建物ユニットを示す斜視図である。
【0022】
図4に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備えている。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
【0023】
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁24が架け渡されている。同じく建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁25が架け渡されている。天井小梁24と床小梁25とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に設けられている。
【0024】
次に、建物ユニット20の床部の構成について図1に基づいて説明する。なお、図1は床部の構成を示す縦断面図である。
【0025】
図1に示すように、建物ユニット20の床部10において床大梁23と床小梁25とはその上面高さが略同じとなっており、これら各床梁23,25上には各床梁23,25に跨るようにして床下断熱材11が設けられている。床下断熱材11は、ウレタンフォーム等の合成樹脂の発泡体からなる発泡系断熱材により形成されており、所定の厚みを有した矩形板状(ボード状)をなしている。詳しくは、床下断熱材11は、建物ユニット20の長辺部の長さとほぼ同じ長さを有する長方形状をなし(図3参照)、それが建物ユニット20の短辺方向全域に亘り複数(図3では3つ)並設されている。
【0026】
なお、床下断熱材11としては、ポリスチレンフォームやフェノールフォーム等その他の発泡系断熱材を用いてもよく、またグラスウールやロックウール等の繊維系断熱材を高密度に板状としたものを用いてもよい。
【0027】
床大梁23上には、床下断熱材11に隣接して根太14が設けられている。根太14は、床大梁23に沿って延びており、その上下高さが床下断熱材11の厚みよりも大きくなっている。そのため、根太14の上面高さは床下断熱材11の上面高さよりも高くなっている。
【0028】
各床小梁25上にはそれぞれ支持部材15が設けられている。支持部材15は、各床小梁25上においてその長手方向に所定間隔で複数ずつ設けられている(図3参照)。支持部材15は、円筒状に形成されており、床下断熱材11を上下に貫通した状態で下端部が床小梁25上に載置されている。支持部材15は、その上下高さが床下断熱材11の厚みよりも大きくなっており、詳しくは根太14の上下高さと略同じとなっている。そのため、支持部材15は、床小梁25上に載置された状態では、その一部が床下断熱材11よりも上方に突出しており、その突出した部分(以下、突出部32という)の上端高さが根太14の上面高さと略同じとなっている。なお、本実施形態では、突出部32の突出高さL(図2参照)が50mmとなっている。
【0029】
根太14及び各支持部材15(詳しくは突出部32)の上方には、床下地材12が設けられている。床下地材12は、パーティクルボードからなり、その上面にはフローリング等の床仕上げ材(図示略)が敷設されている。床下地材12は、根太14上及び各支持部材15上に載置された状態で支持されており、その支持状態において床下地材12と床下断熱材11とは突出部32の突出高さL寸法分上下に離間されている。そのため、床下地材12と床下断熱材11との間には、突出部32の突出高さL(本実施形態では50mm)と同じ上下高さを有する床下スペースSが形成されている。この床下スペースSは、床下地材12の下面に沿って拡がるスペースとなっており、後述するように床暖房用の配管Hを設置する配管設置スペースとなっている。
【0030】
床下地材12は、根太14及び各支持部材15により下方から支持された状態で、釘28により床大梁23に固定されかつ釘29により各床小梁25に固定されている。この場合、釘28は、床下地材12及び根太14を貫通して床大梁23に打ち付けられ、釘29は、支持部材15の内部を挿通しかつ床下断熱材11を貫通した状態で床小梁25に打ち付けられている。なお、床下地材12と根太14との間には、床鳴りを防止する床鳴り防止シート(図示略)が挟み込まれており、当該シートについても釘28が貫通されている。
【0031】
次に、支持部材15の構成について図2を用いて詳しく説明する。なお、図2は床下断熱材11に支持部材15が貫通して設けられた状態を示す縦断面図である。
【0032】
支持部材15は、ステンレス等の板金により円筒状に形成されており、その軸心を上下方向に向けた状態で床下断熱材11を上下に貫通して設けられている。この場合、支持部材15は、床下断熱材11を上下に貫通して板状に延びている。なお、本実施形態では、支持部材15の板厚が2mmとなっている。
【0033】
支持部材15は、その下端側において板厚が下方に向かうにつれて薄くなっており、その下端部では先の尖った切刃部35となっている。この切刃部35は、支持部材15を床下断熱材11に対して打ち込むためのものである。また、切刃部35には、支持部材15の外周方向全域に複数の鋸歯36が形成されており、支持部材15を床下断熱材11に対し容易に打ち込めるようになっている。すなわち、支持部材15は、一端に切刃部35を有した刃体から構成されていると言える。支持部材15は、この切刃部35を用いて床下断熱材11に打ち込まれることにより、床下断熱材11に対して貫通状態で設けられている。この場合、支持部材15の表面に対して床下断熱材11が密着しているため、支持部材15が床下断熱材11を貫通しているにもかかわらず気密性が確保されている。
【0034】
ここで、支持部材15を床下断熱材11に打ち込む際の作業について説明する。この作業は、例えば床下断熱材11を建物ユニット20側に設置する前に行われる。打ち込み作業に際しては、まず支持部材15を床下断熱材11の上面に載置する。この場合、支持部材15の切刃部35を下側にして床下断熱材11上に載置する。その後、支持部材15をハンマー等で床下断熱材11に向けて打ち付ける。これにより、切刃部35が床下断熱材11に食い込み、支持部材15が床下断熱材11に対して打ち込まれる。そして、支持部材15の切刃部35が床下断熱材11の下面側に露出するまでこの打ち込みを行う。
【0035】
ところで、床下断熱材11と床下地材12との間に形成された上述の床下スペースSには床暖房用の温水配管Hが設置されている。すなわち、本実施形態の床部10では床暖房が行われるようになっている。以下、床下スペースSにおける温水配管Hの設置構成について図3に基づいて説明する。なお、図3は、床下スペースSに温水配管Hが設置された状態を示す平面図である。
【0036】
図3に示すように、床下スペースSには、支持部材15の突出部32が複数点在している。具体的には、突出部32は、建物ユニット20の長辺方向に所定間隔(すなわち床小梁25の設置間隔)で複数(図3では6つ)配置され列をなしており、その列が建物ユニット20の短辺方向に所定間隔で複数(図3では6つ)設けられている。
【0037】
床下スペースSには、複数(図3では3つ)の温水配管Hが設置されている。温水配管Hは、例えば架橋ポリエチレンパイプからなる。各温水配管Hは、床下スペースSにおいて、建物ユニット20の長辺方向に折り返された状態で同方向に延びるように設けられている。具体的には、温水配管Hは、上述した突出部32の列(図3において左右方向に延びる列)に沿って延びており、より詳しくはその列を構成する複数の突出部32に跨るように延びている。つまり、この場合、突出部32が、温水配管Hを床下スペースSに設置する際の位置決めとして利用されている。そのため、床下スペースSへの温水配管Hの設置作業を容易とすることができる。
【0038】
ところで、床部10上(すなわち床下地材12上)にピアノ等の重量物が新たに設置される場合には、当初(例えば建物施工時)の想定よりも大きな荷重が床下地材12に加わるおそれがあり、施工時に設置した支持部材15だけではその荷重を支えきれなくなることがある。そのため、かかる場合には、支持部材15を床小梁25上に増設し、床下地材12にかかる荷重を支えられるようにする必要がある。ここで、支持部材15を床小梁25上に増設する際には、床下地材12を取り外し、その後床小梁25上に床下断熱材11を載せたまま支持部材15を床下断熱材11に打ち込むことで、同支持部材15を床小梁25上に設置することが考えられる。しかしながら、床小梁25は床下断熱材11により覆い隠されているため、床小梁25の設置位置を把握することができない。そのため、床小梁25を狙って支持部材15を床下断熱材11に打ち込むことは困難であると考えられる。そこで、この点に鑑みて、床小梁25の設置位置を床下断熱材11の上方から把握可能とすべく、同断熱材11上に位置確認用マーカを設けてもよい。
【0039】
例えば、図6には、この種のマーカの一例が示されている。図6では、床小梁25上に、マーカ部材50が設けられている。マーカ部材50は、床小梁25上において当該床小梁25に沿って載置された長尺平板状のベース部51と、ベース部51から上方に突出して延びる複数のピン部52とを備える。複数のピン部52は、ベース部51の長手方向(すなわち床小梁25の長手方向)に沿って所定の間隔で設けられており、この間隔は支持部材15を増設する際の支持部材15の設置間隔と同じ間隔に設定されている。また、ピン部52は、その上下長さが床下断熱材11の厚みよりも大きくなっている。
【0040】
図6(b)に示すように、床下断熱材11は、マーカ部材50のベース部51上に設置(載置)されており、その設置状態ではピン部52が床下断熱材11を上下に貫通している。この場合、ピン部52の一部が床下断熱材11から上方に突出しており、その突出した部分(ピン突出部52a)により床小梁25の設置位置を床上から把握可能となっている。すなわち、ピン突出部52aが位置確認用マーカとなっている。したがって、支持部材15を床小梁25上に増設する際には、このピン突出部52aを目印とすることで、支持部材15を床小梁25上に向かって床下断熱材11に打ち込むことができる。これにより、支持部材15の増設作業を好適に行うことができる。
【0041】
なお、位置確認用マーカは、必ずしもピン部52(詳細にはピン突出部52a)により構成する必要はない。例えば、床下断熱材11の上面にマーカ線を付けることで、位置確認用マーカとしてもよい。要は、床下断熱材11の上方(床上)から床小梁25の設置位置を把握できるものであればいずれの構成であってもよい。
【0042】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0043】
床下断熱材11を上下に貫通して板状に延び、下端部が床小梁25上に載置された状態で上端部により床下地材12を下方から支持する複数の支持部材15を設けた。この場合、床下断熱材11の欠損部(同断熱材11による断熱が途切れる部分)を極めて小さいものとすることができるため、欠損部での熱損失を大いに軽減させることができる。そのため、断熱性能の低下を抑制することができる。また、支持部材15を、その下端部に切刃部35を有する板状の刃体により構成し、その切刃部35を用いて支持部材15を床下断熱材11に打ち込むことで、支持部材15を床下断熱材11に貫通させて設けた。この場合、従来技術(上記の特許文献1)のように、床下断熱材11に支持部材15を挿通させる孔部を設けなくても、支持部材15を床下断熱材11に貫通させて設けることができるため、床下断熱材11に上記孔部を設ける加工作業を行わなくても済む。そのため、製造時における作業工数の削減を図ることができる。
【0044】
また、支持部材15を、一端に切刃部35を有する筒状体により構成し、同支持部材15を、切刃部35を下側にして床下断熱材11に打ち込むことにより設けた。この場合、支持部材15を床下断熱材11に打ち込む際、支持部材15が倒れ込むのを抑制できるため、支持部材15を床下断熱材11に対し比較的安定した状態で打ち込むことができる。そのため、かかる打ち込み作業について作業性の向上を図ることができる。
【0045】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0046】
(1)床下スペースSには、床暖房用の温水配管Hに限らず水道配管等その他の配管を設置してもよい。また、床下スペースSに、電気配線や情報配線等の配線類を設置してもよい。
【0047】
また、図5に示すように、床下地材12(床仕上げ材も含む)に床下スペースSに通じる点検口41(開口部)を設けてもよい。そうすれば、床下スペースSに設置された配管や配線を床上から容易に点検することが可能となる。なお、点検口41には、当該点検口41を開閉する開閉扉43を設置しておく。
【0048】
また、床下スペースSに配線を設置する場合には、床下地材12に複数の点検口41を設け、これら各点検口41を通じて床下スペースSから配線を床上に引き出してもよい。そうすれば、室内の各所にパソコン端末が設置されているオフィス等では、各パソコン端末に配線を接続することが可能となり好都合である。
【0049】
(2)支持部材15に、マーカ部材50のピン部52のピン突出部52aを挿通可能な挿通部を設け、その挿通部にピン突出部52aを挿通させ支持部材15を位置決めした状態で、当該支持部材15を床下断熱材11に対し打ち込み可能としてもよい。この場合、支持部材15の増設作業を容易とすることができる。
【0050】
図7にその具体例を示す。図7に示す支持部材15には、その内面から内側(軸心側)に突出するようにしてフィルム材55が設けられている。フィルム材55は、塩化ビニル等の樹脂フィルムからなる。フィルム材55は、平面視において支持部材15の内面から支持部材15の軸心側に向かって略扇形状をなして延びており、その円弧側が支持部材15の内面側に、円弧中心側が支持部材15の軸心側に向いている。また、詳細には、フィルム材55は、支持部材15の軸心側に向かって若干上方傾斜して設けられている。なお、支持部材15の軸心側へのフィルム材55の突出長さは、支持部材15の内径よりも若干短くなっている。
【0051】
フィルム材55は、支持部材15の周方向に沿って複数設けられており、これら各フィルム材55の突出側端部により囲まれた内側の領域はピン突出部52aを挿通させるための挿通部56となっている。支持部材15を床下断熱材11に打ち込む際には、この挿通部56にピン突出部52aを挿通させ支持部材15を位置決めした状態で打ち込むことができる。この打ち込みに際し、フィルム材55は支持部材15の内側に入り込む床下断熱材11により上方に倒され、最終的にその入り込んだ床下断熱材11と支持部材15の内面との間に挟み込まれる状態となる。したがって、支持部材15に挿通部56を形成すべく支持部材15の内側にフィルム材55を設けた構成において、フィルム材55が支持部材15の打ち込みの妨げとならないようになっている。
【0052】
(3)上記実施形態では、支持部材15を円筒状に形成したが、四角筒状等その他の筒状(中空状)としてもよい。また、支持部材15は必ずしも筒状すなわちその横断面が閉環状をなすように形成する必要はなく、横断面が開断面を有するように形成してもよい。具体的には、支持部材を、その横断面(水平方向断面)が円弧部又は角部を有する形状により形成することが考えられる。その一例として、支持部材を、コ字状の横断面を有する板状部材により形成することが考えられる。この場合においても、支持部材を、床下断熱材11に上下に貫通させた状態でその下端部を床小梁25上に載置し、その載置状態で上端部により床下地材12を下方から支持することが可能となる。
【0053】
(4)上記実施形態では、切刃部35を支持部材15の一端部(具体的には下端部)にのみ設けたが、支持部材15の両端部に設けてもよい。そうすれば、支持部材15の両端のうちいずれを先端としても支持部材15を床下断熱材11に打ち込むことが可能となる。そのため、支持部材15の打ち込みの際に、支持部材15の向きをいちいち確認する必要がなくなる。また、切刃部35には、必ずしも鋸歯36を設ける必要はない。つまり、支持部材15を床下断熱材11に打ち込むことができれば、支持部材15の下端を肉薄とするだけで切刃部35を形状してもよい。
【0054】
(5)上記実施形態では、支持部材15を、ステンレス板金により形成したが、ステンレス以外の金属材料により形成してもよい。また、支持部材15を、硬質樹脂により形成してもよい。そうすれば、支持部材15が熱橋となるのを抑制できる。
【0055】
(6)上記実施形態では、支持部材15に床下断熱材11から上方に突出する突出部32を設け、その突出部32により床下地材12を床下断熱材11から離間させた状態で支持することで、それら両部材11,12の間に床下スペースSを形成したが、これを変更してもよい。つまり、支持部材15に上記突出部32を設けないようにし、床下地材12を支持部材15により床下断熱材11との間に上下の隙間が生じないよう支持することで、床下スペースSを形成しないようにしてもよい。
【0056】
(7)上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物等、他の構造の建物にも本発明を適用することができる。例えば、コンクリートパネル等からなる床スラブ上に床下断熱材が設置される建物では、床スラブ上に支持部材15が設置され当該支持部材15により床下地材12が支持されることとなる。なおこの場合には、床スラブが床下構造体に相当する。
【符号の説明】
【0057】
10…床部、11…床下断熱材、12…床板材としての床下地材、15…床支持部材としての支持部材、20…建物ユニット、25…床下構造体及び横架材としての床小梁、32…突出部、35…切刃部、41…開口部としての点検口、50…マーカ部材、52…ピン部、52a…位置確認用マーカとしてのピン突出部、56…挿通部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7