【課題を解決するための手段】
【0005】
それ故,この技術分野において,低いガラス転移温度を有すると共に,急速に劣化可能である重合体の生産を可能にする再生可能な資源からの生体由来のポリマーの生産のための改善されたプロセスを提供する必要が生ずる。従って,本発明は容易に入手可能な炭水化物から生産できると共に,制御された開環重合化反応により得ることが可能であり,生体由来の重合体として有用である官能化されたポリエステル又は共重合体を形成する官能化されたラクトン化合物を提供する。
【0006】
従って,最初の側面において本発明は,単量体から形成される重合体(ポリマー)を提供するもので,ここで各単量体は式(I)のラクトン化合物を含む。
【0007】
【化1】
【0008】
式(I)
ここで,R
1は水素,アルキル,ハロアルキル,アシル,エステル,アリール,ヘテロアリール,アルキルアリール,アルキルへテロアリール,シリル,スルフォニル,薬剤分子又はペプチドから選択され;
R
2は水素又はOR
1’であり;
R
3はメチル又はCH
2OR
1”であり;
ここで,R
1’およびR
1”は双方ともR
1に対して定義されたと同一の基から選択されるものであり,さらにR
1,R
1’およびR
1”はそれぞれ同じであっても異なってもよい。
【0009】
好ましくは,アルキルはMe,Et又はiPrである;アルキルアリールはベンジルである;アシルは−C(O)CH
3又はC(O)CF
3である;エステルはC(O)O
tBu又はC(O)OC
15H
11(Fmoc);アリールはフェニルである;シリルはSiMe
3である;スルフォニルはトシル(C
7H
7SO
2)である。
【0010】
好ましくは,R
3がメチルであるとき,R
2はOR
1’でない。
【0011】
好ましい実施の態様において,R
2は水素であり,R
3がは−CH
2OR
1”である。好ましくは,R
1およびR
1”はアシルである;より好ましくは,R
1は−C(O)CH
3である;R
2は水素及びR
3は−CH
2OC(O)CH
3である。
【0012】
他の好ましい実施の態様においては,R
2は水素であり,更にR
3はメチルである。好ましくは,R
1はアシルである。より好ましくは,R
1は−C(O)CH
3である。
【0013】
なお他の好ましい実施の態様においては,R
2,はOR
1’およびR
3は−CH
2OR
1”である。好ましくは,R
1,R
1’およびR
1”はアシルである。より好ましくは,R
1,R
1’およびR
1”は−C(O)CH
3である。
【0014】
式1のラクトン単量体間で生ずる重合化反応は,線状重合体と環状ポリマー(マクロサイクル)との双方の形成に繋がることが出来る平衡反応であってもよい。本発明のラクトン化合物の重合化が一度平衡状態に達すると重合体に対する単量体の%転化率に依存して環状体線状の正確な比率で,混合物内の線状重合体の比率よりも環状重合体の比率が大きいことが決定された。線状重合体及び環状重合体は,溶媒を用いた分留により分離することが可能である。このことは沈殿物としての環状重合体の単離を可能とする。
【0015】
かくして,好ましい実施の態様においては,前記重合体は環状重合体と線状重合体の混合物として提供され,ここで前記線状重合体及び環状重合体はそれぞれ以下の構造式を有する。
【0016】
【化2】
【0017】
ここでnは1と60の間の数であり,R
1,R
2およびR
3は前記で定義したと同じであり,星印(*)によって示される線状重合体の端末はOH又はORであり,Rはアルキル又はアルキルアリールである。前記OR末端基は重合化プロセスにおいて使用される重合化開始剤によって提供され,前記重合体を形成するようにしてもよい。
【0018】
より好ましい実施の態様においては,前記混合物は(重量%で)線状重合体より環状重合体のより大きな比率を含む。
【0019】
好ましくは,前記重合体は平均分子量Mnが700から13,000である。他の実施の態様においては,前記重合体は,700から800のMnを有するオリゴマー生産物である。
【0020】
他の実施の態様においては,本発明は単離された環状重合体を提供する。この環状重合体に対しては,nは好ましくは3と24の間の数(例えば7)である。
【0021】
他の実施の態様においては,本発明は以下の式の前記線状重合体を提供する。
【0022】
【化3】
【0023】
ここでnは1から60の数であり,好ましくは3から60の数である。
【0024】
環状重合体は低いガラス転移温度を有する傾向があり,さらに(可塑剤としての)他の重合体との配合の為に好適である。
【0025】
前記開環重合化はよく制御される。このことは重合化の度合いと狭い多分散系指数(PDIs)でMn(分子量)における観測された線形的増加によって実証された。制御された重合化は,それがMnの正確な予測を可能にするため生体由来の重合体の応用及び前記重合化反応の化学量論からの重合体の性質にとって重要である。
【0026】
本発明の重合体はホモポリマーであってもよく,ここでこのホモポリマーは単量体から誘導され,この各単量体は式(I)の乳酸塩化合物である。そうでなければ,前記重合体は前記式(I)の1個又はそれ以上の乳酸塩及び1個又はそれ以上の単量体から形成される共重合体であってもよい。
【0027】
かくして,更に異なる実施の態様においては,本発明の前記重合体は,本発明の乳酸塩化合物,及び好ましくはラクチド,グリコライド,カプロラクトン,バレロラクトン,ブチロラクトン及びトリメチレン,カーボネートから選択された公知の乳酸塩又は環状カーボネートから形成された共重合体である。好ましくは,前記共重合体はブロックコ−ポリ(エステル)又はランダムコ−ポリ(エステル)である。
【0028】
前記共重合体は以下の式によって表現することが出来る。
【0029】
【化4】
【0030】
ここでモル分率xは0.5%から20%の間にあり,モル分率yは80%から99.5%の間にあり,さらにR
1,R
2,およびR
3は本発明の第1の側面に関して定義されたものと同一である。
【0031】
前記共重合体はランダム共重合体(すなわちxとyの繰り返し単位のランダムな繰り返しによって製造される)又は(架橋されたホモポリマーサブユニットすなわちx単量体を含むサブユニットとy単量体を含むサブユニットを含む)ブロック共重合体であってもよい。
【0032】
好ましくは,重合体は本明細書で定義されたように式(1)のラクトン化合物,およびラクトン酸塩(R−ラクトン酸塩),さらにラセミ体−ラクトン酸塩,より好ましくはS−ラクトン酸塩又はrac−ラクトン酸塩から形成された共重合体である。
【0033】
【化5】
【0034】
ここで前記ランダム共重合体内のモル分率xは0.5%と20%との間に存在し,モル分率yは80%と99.5%の間に存在する。ここでR
1,R
2およびR
3は本発明の第1の側面について前記で定義され,さらに又*によって表現される共重合体の終端はオキソ(oxo)端(末端)におけるOH(前記したような構造式の右手側の端)にあり,ORはカーボネート末端にあり,ここでRはアルキル又はアルキルアリールである。前記OR末端基は重合化プロセスにおいて使用される重合化開始剤によって提供され,前記重合体を形成してもよい。好ましくは,前記共重合体はランダム共重合体である。
【0035】
前記共重合体内の全体の単量体繰り返し率すなわちxプラスyの総計は好ましくは少なくとも20,例えば20から740である。
【0036】
好ましくは,前記共重合体のMnは10,000から100,000である。
【0037】
好ましくは,前記共重合体内のラクトン化合物のロ−ディングは(重量)で25%に達する。より好ましくは,前記共重合体内のラクトン化合物のロ−ディングは20%から25%である。このロ−ディングは前記共重合体の
1H NMRスペクトルの積分によって,特定的に,例えば第2のラクトン又は環状カーボネートからのピ−クで環状開放ラクトンから生ずる重合体の各ピ−クの積分値を除算することによって決定することが出来る。
【0038】
更に異なる実施の態様において,本発明は本発明のラクトン化合物の重合化から形成された重合体バックボーン,および前記ラクトン単量体上に存在する官能基に接合された第2の重合体を含むグラフト共重合体を提供する。このグラフト共重合体は,たとえばグラフト コポリエステル,グラフト コポリ(エステル−アクリレート),又はグラフト コポリ(エステル ペプチド)であってもよい。
【0039】
前記第2のラクトンが乳酸塩である前記で記述した共重合体の実施の態様の特徴は,グリコライド,カプロラクトン,バレロラクトン,ブチロラクトン又は環状カーボネート,好ましくはトリメチレンカーボネートから選択されたラクトンで前記式(I)のラクトン化合物の共重合体にも適用される。
【0040】
第2の側面では,本発明は前記式(I)のラクトン化合物の重合化のためのプロセスを提供し,ここでこのプロセスは前記式(I)のラクトン化合物を金属の開始剤にさらし,次いで開環重合体反応を生じさせる。
【0041】
ある好適な実施の態様においては,前記開始剤配位挿入構造を経由して前記ラクランの環状開放を引き起こすことによって重合化を開始するルイス酸性金属アルコキシド錯体である。このラクトンは前記ルイス酸性金属アルコキシド錯体を配位づけして,前記カルボニル炭素におけるラクトンを活性化すると共に攻撃する錯体となる。アシル結合の開烈は次いでサイクルが再開始できる新たな金属アルコシド種の環状開放および生成となる。好ましくは,前記開始剤は錫(II)アルコキシド錯体および錫(II)カルボキシレ−ト錯体+アルコール(例えばSn(II)オクタノエ−トおよびアルコールの2個の等価物又はジオール基の1個の等価物(例えば,メタノ−ル,ベンジル アルコール,ブタネ ジオール〕又はSn(ONa)
2);亜鉛アルコキシド錯体(リガンドを含む錯体およびリガンドを含まない錯体(ホモレプテック錯体);アルミニウム アルコキシド錯体;チタン アルコキシド錯体;ジルコ二ウム アルコキシド錯体;アルカリ土類アルコキシド錯体;イットリウムアルコキシド錯体;ランタンアルコキシド錯体;およびカルシウム アルコキシド錯体から構成される基から選択される。
【0042】
好ましくは,開始剤は,例えば式Sn(OR)
2の錫アルコシド開始剤又は式LZnORの錫アルコシド錯体であり,ここでRはアルキル又はアルキルアリールであり,更にLは亜鉛配位リガンドである。好ましくは,Rはエチル,イソプロピル,ブチル,メチル又はベンジルである。かくして,前記亜鉛アルコシド錯体は,例えば亜鉛エトキシド,亜鉛イソプロポキシド,亜鉛メソキシド,又は亜鉛ベンジロキシドを含むことが出来る。より好ましくは,前記亜鉛アルコキシド錯体は式LZnORであり,ここでこの式のRはアルキルであり,さらにLは亜鉛配位リガンドである。
【0043】
【化6】
【0044】
ここでR
aは水素,アルキル(例えばtBu,Me),アルコキシ(例えば,OMe),ハロゲン(例えばF,Cl,Br),NO
2,NH
2,アルキラミン,又はジアルキラミン(例えばMMe
2)であり;更に各R
bは独立的に水素,アルキル(例えばMe,Et,iPr),アルキルアリール(例えばベンジル)又は(例えばフェニル)である。
【0045】
好ましくは,R
aはtBuであり,そして前記におけるそれぞれのR
bはMeである。
【0046】
より好ましくは,前記開始剤は式LZnOEtを有する亜鉛エトキシド錯体であり,好ましくはここでLは前記に示す式を有する。
【0047】
好ましくは,前記重合体化開始剤は前記重合体のカルボニル基に隣接した,この重合体の末端基を提供し,前記開始剤によって提供される−C(O)OR,ORで前記重合体を終端させる。
【0048】
好ましくは,前記重合化は,穏やかな条件の下で,すなわち25から100°Cの温度において塩素化溶媒(例えばCDCl
3),エ−テル溶媒(例えばTHF)又は芳香族溶媒(例えばトルエン)内のラクトン化合物の濃度0.5Mから2Mで行われる。そうでなければ,前記重合化は溶媒の存在なしで25から100°Cで実施されてもよい。
【0049】
好ましくは,前記重合化は25°CでCDCl
3におけるラクトン化合物1M濃度で実行される。
【0050】
有益的には,穏やかな重合化条件の使用は商業的なプロセスにとって有益であり,低いエネルギ−入力を要すると共に,取り扱いおよびサンプリングの容易さも促進する。また,穏やかな重合化条件は厳しい条件で観察されるであろうよりも重要なことであるが重合体のより少ない劣化となる。また,前記重合化は平衡反応であるため,より高いMnの重合体は低い温度を使用して可能である。最後に,例えばここで使用される穏やかな条件は高感度な分子(例えば薬剤,ペプチド,細胞成長因子)の一体化を可能にする。前記重合化が厳しい条件を要求した場合,この重合化は前記重合体構造式の中で有用ではあるが高感度の分子を含むように実行可能ではないであろう。
【0051】
好ましい実施の態様においては,式(I)のラクトン単量体の分子量をベ−スとして,その比率は,開始剤が130:1から20:1であり,好ましくは130:1から30:1であり,また好ましくは70:1から20:1であり,より好ましくは65:1から30:1である。
【0052】
好ましい実施の態様においては,前記プロセスは式(I)のラクトン化合物および第2のラクトン化合物,又は環状カーボネートを金属開始剤に露出させ,さらに共重合化を生じさせることである。
【0053】
好ましくは,共重合化の前記プロセスは,式(I)のラクトン化合物の混合物を第2のラクトン化合物又は環状カーボネートを用いて提供し,この混合物を金属開始剤に露出させ,開環重合体反応を生じさせてランダムな共重合体を生産することからなる。好ましくは,前記ラクトン化合物は(ラクチド,グリコライド,カプロラクトン,バレロラクトン,ブチロラクトンから選択される。好ましくは,前記環状カーボネートはトリメチレンカーボネートである。好ましくは,第2のラクトン化合物はラクチド(R−ラクチド,S−ラクチド,メソ−ラクチド(R,S−ラクチド)又はrac−ラクチド,より好ましくはS−ラクチド又はrac−ラクチド)である。
【0054】
他の好ましい実施の態様においては,共重合化のための前記プロセスは式(I)のラクトン化合物を金属開始剤に露出させ,ブロック共重合体を生産すべく第2のラクトン化合物,又は環状カーボネートの添加に続いて開環重合化反応を生じさせることからなる。好ましくは,前記第2のラクトン化合物はラクチド,グリコライド,カプロラクトン,バレロラクトン,ブチロラクトンから選択される。好ましくは,前記環状カーボネートはトリメチレンカーボネートである。好ましくは,前記第2のラクトン化合物はラクチド(R−ラクチド,S−ラクチド,メソ−ラクチド(R,S−ラクチド)又はrac−ラクチド,より好ましくはS−ラクチド又はrac−ラクチド)である。
【0055】
前記重合化プロセスが共重合化であるところでは,好ましい実施の態様において,式(I)のラクトン単量体,すなわち第2のラクトン又は環状カーボネートのモル比率が1:1から1:1000である。
【0056】
好ましい実施の態様において,式(I)のラクトン化合物は,以下に示すように,発明の第3の側面のプロセスに従って生産される。
【0057】
本発明は上述した重合プロセスによって生産される重合体を包含する。
【0058】
第3の側面において,本発明は上述したような式(I)のラクトン化合物を提供する。このラクトン化合物は,容易に入手可能な生物学的資源(炭水化物)から生産可能であり,かくして本発明のラクトン及び重合体はバイオ物質(生物学的資源から誘導された物質)であり得る。
【0059】
第4の側面において,本発明は式(I)のラクトン化合物の作製のためのプロセスを提供し,このプロセスは:
a)式IIのテトラ−O−置換(R)−D−グルコノラクトンを塩基と反応させ,式IIIa又は式IIIbの化合物を形成する。
【0060】
【化7】
【0061】
b)さらに,任意で,IIIaの化合物を塩基と反応させIVの化合物を形成してもよい。
【0062】
【化8】
【0063】
c)水素添加分解により,式IIIa又はIVの化合物を還元し,式(I)の化合物を形成する。
【0064】
【化9】
【0065】
ここでR
1,R
1’,R
1”,R
2およびR
3は,本発明の第1の側面に関して定義されたと同様であり,更にRはR
1に対して定義されたと同様である。
【0066】
工程 a)において二重脱離反応は式(IIIa)の化合物に達するように生ずる可能性があり,又は単一の脱離が式(IIIb)の化合物に達するよう生ずることが出来る。単一又は二重の脱離が生ずるか否かは塩基の強度を制御することによって制御可能である。より穏やかな塩基の使用は,脱離反応が1つの基にのみ生ずることを確実にする。
【0067】
前記任意の工程 b)は式(I)の望ましい化合物において,R
3がメチルであるところで実行される。この工程は,好ましくは,式IIIaの化合物をさらし,第3の脱離を生じさせるために過剰期間,塩基を過剰にする。
【0068】
かくして,ある実施の態様においては,式(I)のラクトン化合物の作成のためのプロセスが提供され,ここでR
3は−CH
2OR
1”であり,さらにR
2は水素であり,このプロセスは:
a) 式IIのテトラ−O−置換(R)−D−グルコノラクトンを塩基と反応させ式IIIaの化合物を形成し;
b) 水素添加分解による式IIIaの化合物を還元し,式Iの化合物を形成する工程を含み,ここでR
3は−CH
2OR
1”であり,さらにR
2は水素である。
【0069】
択一的な実施の態様においては,式(I)のラクトン化合物の作成のためのプロセスが提供され,ここでR
3はメチルであり,さらにR
2は水素であり,このプロセスは:
a) 式IIのテトラ−O−置換(R)−D−グルコノラクトンを塩基と反応させ,式IIIaの化合物を形成し;
b) 式IIIaの化合物をさらに塩基と反応させ,式IVの化合物を形成し;
c) 水素添加分解による式IVの化合物を還元し,式(I)の化合物を形成する工程を含み,ここでR
3はメチルであり,さらにR
2は水素である。
【0070】
好ましくは,前記工程b)は式IIIaの化合物を露出させ,延長された期間塩基を過剰化する。好ましくは,各工程a)およびb)は単一の反応工程に短縮され,ここで式IIIaの化合物は本来の場所における中間物として形成されるが,しかしながら単離されない。
【0071】
さらに他の択一的な実施の態様においては,式(I)のラクトン化合物の作成のためのプロセスが提供され,ここでR
3は−CH
2OR
1”であり,さらにR
2は−CH
2OR
1’であり,このプロセスは:
a) 式IIのテトラ−O−置換(R)−D−グルコノラクトンを穏やかな塩基と反応させ式IIIbの化合物を形成し;
b) 水素添加分解による式IIIbの化合物を還元し,式Iの化合物を形成する工程を含み,ここでR
3は−CH
2OR
1”であり,さらにR
2−CH
2OR
1’である。
【0072】
好ましい実施の態様においては,式IIIa,IIIbおよびIVの化合物を形成すべく実行された前記脱離工程は溶媒を用いて,又は溶媒を用いることなく,塩基の存在の下で実行される。好ましくは,この塩基はトリメチルアミン又はピリジンである。溶媒が存在するところでは好ましくは,それはメチレン塩化物である。
【0073】
好ましくは,水素添加分解はH
2,Pd/C触媒および溶媒の存在の下で実行される。この溶媒は好ましくはエチル酢酸塩である。
【0074】
上述したプロセスはそのまま適用され,さらにラクトンの高い収率を導く。このことは多くの工程をしばしば含み,非常に低い全体の収率を有し,さらに前記ラクトンの困難で低い算出純化を含んでいる従来の合成法に対して有益である。また以前に官能化された重合体は再生可能な資源から共通に製造されていなかった。このプロセスは,まさに2個の反応工程を要求し,その双方は>90%に導くことが出来る。さらに,ラクトン化合物の純化はそのまま適用される。加えて,前記D−グルコノラクトン 開始物質は,比較的廉価で再生可能な資源(グルコ−ス)から誘導される。
【0075】
好ましい実施の態様においては,式IIのテトラ−O−置換(R)−グルコノラクトンはD−グルコノラクトンから誘導される。好ましくは,前記プロセスは更に式R*C(O)OC(O)R*(例えば酢酸無水物)の化合物でD−グルコノラクトンのアセチル化反応によって,グルコノラクトンから式IIの前記テトラ−O−置換(R)−グルコノラクトンを作製する工程を更に有し,ここでR*はアルキル,ハロアルキル,アリール又はヘテロアリールであり,好ましくはアルキル又はハロアルキルであり,より好ましくはアルキルである。好ましくは式R*C(O)OC(O)R*の化合物を備えたD−グルコノラクトンの反応は,式IIIa,IIIb又はIVの化合物を形成すべく実行された前記脱離工程で単一反応工程へ短縮され,この単一反応工程ではD−グルコノラクトンが塩基の存在下で式R*C(O)OC(O)R*の化合物と反応して式IIIの化合物を生成する。本発明の目的のために,反応工程の短縮化は連続的な反応工程と共に結合して実施され,各反応工程によって生産される化合物の単離を避ける。有益には,単一反応工程へのアセチル化および脱離の短縮はかなり収率を増加させる。
【0076】
それ故,好ましい実施の態様では,式(I)のラクトン化合物の作製のためのプロセスが提供され,ここでR
1,R
1’およびR
1”はアシルであり,このプロセスは:
a) D−グルコノラクトンを塩基の存在下で式R
1C(O)OC(O)R
1の化合物と反応させ,中間的な本来の場所のテトラ−O−置換(R)−グルコノラクトンを経由して式IIIa又はIIIbの化合物を形成し;
b) 付随的に更に式IIIaの化合物を塩基と反応させIVの化合物を形成し;
c) 水素添加分解による式IIIa又はIVの化合物を還元し,式(I)の化合物を形成する工程を備えている。
【0077】
本発明のある実施の態様においては,前記プロセスは,式IVの化合物の生産物に続く更なる工程を要求し前記望ましいラクトン化合物を生産する。ある実施の態様においては,前記の望ましいR
1がベンジルであるところでは,ベンジルは水素添加分解条件の下でへき開されて,その結果付加的な置換基交換工程が要求されるであろう。加えて,R
1が水素であるところでは,置換基のデプロテクション/脱離の工程は要求され,前記のラクトン化合物に達するであろう。このことは置換基たとえばエステル(例えばt−Boc, Fmoc)又はスルフォニル(トシル)にとって実効可能である。
【0078】
他の好ましい実施の態様では,前記プロセスは式(I)の官能化されたラクトン上にペプチド又は薬剤分子を一体化する工程を含んでいる。このことは(R
1=Hを生産する)R
1置換基の除去,そして次いで薬剤/ペプチドを用いた反応によるか,又はそれを前記のラクトンへ取り付けるか,又は前記ラクトン化合物上に存在する置換基の1つを用いた前記薬剤/ペプチドの反応によって達成可能である。
【0079】
第5の側面で,本発明はバイオ物質(生物学的資源から誘導される物質)の生産のための発明の前記第1の側面に係る重合体の使用を提供する。好ましくは,発明の重合体(又はそれから誘導されるバイオ物質)はパッケージング物質,又はファイバーとして使用する場合は,この重合体は(又は生物物質)は医療用の応用のための使用も可能であり,この応用においては劣化可能で官能化された物質が好ましい;例えば劣化可能な縫合,ドレッシング,ステントおよびインプラントであり,前記重合体は組織工学のためのマトリックスとしての使用,又は薬剤供給のための賦形剤としての使用も可能である。本発明は従来の生体分解可能なパッケージング物質のためのインパクトモディファイア−として本発明の重合体(特に共重合体)の使用もまた提供する。
【0080】
第6の側面で,本発明はそれ故パッケージング物質,劣化可能な縫合等の医療デバイス,ドレッシング,ステント又はインプラント,組織工学のためのマトリクス,又は発明の第1の側面に係る重合体を含む薬剤供給のための賦形剤を提供する。
【0081】
発明の側面の各々のすべての特徴は,発明の他の側面に適用可能である。
【0082】
本発明は色々なやり方で実施可能であり,更に多数の特定の実施の態様が例によって記述され添付図面を参照して,本発明を例示する。