【文献】
Materials Science & Engineering, C: Biomimetic and Supramolecular Systems,2007年,27(1),pp. 142-147
【文献】
Bulletin des Societes Chimiques Belges,1932年,41,pp. 337-348
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、目的物である一般式(1)で表されるトリスフェノール類は、一般式(2)で表される4−アラルキルフェノール誘導体類を出発原料とし、核アシル化工程(A)と、その後にフェノール類縮合工程(B)、Xを水素原子に置換する脱離工程(C)を経て製造される。
【0017】
本発明に係る製造方法のスキームを下記に示す。
【0018】
本発明のトリスフェノール類の製造方法において原料として用いられる一般式(2)で表される4−アラルキルフェノール誘導体類において、式中、R
1〜R
4は各々独立して水素原子、アルキル基、アルコキシル基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アシルオキシ基又は水酸基を表し、R
5及びR
6は各々独立して水素原子又はアルキル基を表し、R
0はアルキル基、アルコキシル基又はハロゲン原子を表し、nは0又は1〜4の整数を示し、但し、nが2以上の場合はR
0は同一でも異なっていてもよい。
【0019】
ここで、R
1〜R
4がアルキル基である場合、アルキル基としては、例えば炭素原子数1〜10の直鎖状、分枝鎖状のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基を挙げることができる。好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状乃至分枝鎖状のアルキル基、炭素原子数5〜6のシクロアルキル基である。このようなアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0020】
また、アルキル基には例えばハロゲン原子、アルコキシル基、水酸基、アシルオキシ基、フェニル基等の置換基があってもよい。従って、アルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシエチル基、3−クロロプロピル基等を挙げることができる。
また、アルコキシル基としては、例えば炭素原子数1〜10の直鎖状、分枝鎖状のアルコキシル基、炭素原子数5〜10のシクロアルコキシル基を挙げることができる。好ましくは、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシル基であり、炭素原子数3〜4のアルコキシル基としては直鎖状乃至分枝鎖状であってもよく、また、好ましいシクロアルコキシル基としては、炭素原子数5〜6のシクロアルコキシル基である。このようなアルコキシル基としては、具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。好ましいR
1〜R
4としては、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基であり、より好ましくは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基である。さらに、R
3又はR
4は、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、R
3又はR
4のどちらか一方又は両方が水素原子であることがより好ましい。
【0021】
また、アルコキシル基のアルキル基には例えばハロゲン原子、アルコキシル基、水酸基、アシルオキシ基、フェニル基等の置換基があってもよい。従ってアルコキシル基としては、具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、2−クロロエトキシ基等を挙げることができる。
【0022】
また、芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を挙げることができる。また、芳香族炭化水素基には例えばアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシル基、水酸基、アシルオキシ基、フェニル基等の置換基があってもよい。従って芳香族炭化水素基としては、具体的には例えば、フェニル基、1−ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル等を挙げることができる。また、芳香族炭化水素基がフェニル基である場合、フェニル基の4−位には置換基があることが好ましい。
【0023】
ハロゲン原子としては、例えば臭素、塩素、フッ素、ヨウ素を挙げることができる。
また、アシルオキシ基(R−C(O)−O−)としては、そのカルボニル基に結合した置換基(R)は、脂肪族炭化水素基、環状炭化水素、芳香族炭化水素基、水素原子のいずれでもよいが、好ましくは前記したR
1〜R
4がアルキル基である場合又は芳香族炭化水素基である場合のアルキル基又は芳香族炭化水素基と同様のアルキル基又は芳香族炭化水素基であり、より好ましくは、前記したと同様のアルキル基である。
【0024】
従って、アシルオキシ基としては、具体的には例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トルオイルオキシ基等を挙げることができる。
【0025】
また、R
1〜R
4の少なくとも一つが水酸基又はアシルオキシ基である場合、R
1とR
2は同時に水酸基又はアシルオキシ基ではなく、R
1とR
3の両方が水酸基又はアシルオキシ基であるか、若しくは、R
1とR
3のどちらか一方が水酸基又はアシルオキシ基であることが好ましく、また、R
3とR
4は両方又はどちらか一方が水素原子であることが好ましい。
【0026】
また、前記一般式(2)で表される4−アラルキルフェノール誘導体類において、式中、R
5及びR
6は各々独立して水素原子又はアルキル基を表し、アルキル基としては、例えば炭素原子数1〜10の直鎖状、分枝鎖状のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基を挙げることができる。好ましくは炭素原子数1〜10の直鎖状、分枝鎖状のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基であり炭素原子数3〜4のアルキル基としては直鎖状乃至分枝鎖状であってもよく、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec-ブチル基等が挙げられる。また、R
5、R
6は片方のみが水素原子であっても、両方とも、アルキル基又は水素原子であってもよいが、R
5及びR
6のどちらか一方又は両方が水素原子又は1級若しくは2級アルキル基であることが好ましい。
【0027】
また、R
0は、アルキル基、アルコキシル基又はハロゲン原子を表し、アルキル基、アルコキシル基又はハロゲン原子としては、前記したR
1〜R
4がアルキル基、アルコキシル基又はハロゲン原子である場合のアルキル基、アルコキシル基又はハロゲン原子と同じである。アルキル基としては、直鎖状、分枝鎖状のアルキル基であり、このようなアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、sec-ブチル基等を挙げることができる。アルコキシル基である場合、アルコキシル基としては、直鎖状、分枝鎖状のアルコキシル基であり、このようなアルコキシル基としては、具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、sec-ブトキシ基等を挙げることができる。
nは0又は1〜4の整数を示し、但し、nが2以上の場合はR
0は同一でも異なっていてもよく、好ましいnは0又は1〜2の整数である。好ましいR
0としては、炭素原子数1〜4のアルキル基である。
【0028】
また、Xは、水素原子又は水素原子と置換可能な脱離基(Xaと称呼する場合がある。)を表す。ここで、水素原子と置換可能な脱離基とは、一般式(2)で表される4−アラルキルフェノール誘導体類を核アシル化工程(A)に付した後、一般式(3)で表される4−アシルアラルキルフェノール誘導体類又は一般式(5)で表されるトリスフェノール誘導体類に結合した脱離基(Xa)を4−アシル基、アラルキルフェノール骨格又はトリスフェノール骨格に影響を与えずに水素原子に置換可能な置換基が好ましく、例えば加水分解反応、加アルコール分解反応、水素化分解反応、開裂反応等で容易に脱離する置換基であり、このような脱離基(Xa)としては、アシル基、炭化水素基、スルホン酸から水酸基を除いた残基(R'-SO
2基/R'は炭化水素基を表す)等が挙げられ、詳細には、アルキルカルボニル基、アルキル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等である。 具体的には、アセチル基、4−メチルフェニルカルボニル基、メチル基、シクロヘキシル基、メシル基、トリフルオロメチルスルホニル基、トシル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基であり、原料である一般式(2)の4−アラルキルフェノール誘導体のアルキリデン基の分解を抑制し、核アシル化反応の選択性を向上させる理由でアシル基が好ましく、アセチル基等のアルキルカルボニル基がより好ましい。
【0029】
従って、一般式(2)で表される4−アラルキルフェノール誘導体類としては、具体的には例えば、p−クミルフェノール、2−メチル−4−クミルフェノール、2,6−ジメチル−4−クミルフェノール、2,3,6−トリメチル−4−クミルフェノール、4−ベンジルフェノール、4−(1−フェニルエチル)フェノール、2−クロロ−4−クミルフェノール、 2−クロロ−4−[(2,5−ジメチルフェニル)メチル]−6−メチルフェノール、2−フェニル−4−ベンジルフェノール、1−(4−アセトキシフェニル)−1−メチルエチルベンゼン、1−トシルオキシ−4−(1−フェニル−1−メチルエチル)ベンゼン、1−メシルオキシ−4−(1−フェニル−1−メチルエチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−フェニル−1−メチルエチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0030】
このような、4−アラルキルフェノール類は、米国特許第2247402号公報、米国特許第2714120号公報、米国特許第2769844号公報等に記載の方法によりフェノール類とスチレン類又は1−ヒドロキシアルキルベンゼン類との反応により容易に得ることができる。
また、Xがアシル基である場合は、このような4−アラルキルフェニルエステル類は、例えば4−アラルキルフェノールのフェノール性ヒドロキシル基を無水酢酸、プロピオン酸クロリド等のアシル化剤でアシル化する公知の方法により容易に得ることができる。
【0031】
また、Xが炭化水素基である場合、炭化水素基としては、前記R
1〜R
4が芳香族炭化水素基、アルキル基である場合のそれと同様のものを挙げることができるが、例えばXがアルキル基である場合、アルキル基としては炭素原子数1〜10程度の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基が挙げられるが、中でもメチル基、エチル基、プロピル基等の低級アルキル基が好ましい。このような4−アラルキルフェニルエーテル類は、例えば、4−アラルキルフェノールを塩基の存在下にハロゲン化アルキルと反応させる公知の方法により容易に得ることができる(反応式:例1)。また、TetrahedoronLetters48(2007)6881−6885,Eur.j.Org.Chem.2006.4231−4236記載のように、アルコキシベンゼン類とスチレン類をヨウ化リチウム、3塩化ビスマス等の触媒下に反応させても得ることができる(反応式:例2)。
【0032】
また、一般式(2)においてXがスルホン酸から水酸基を除いた残基(R'-SO
2基/R'は炭化水素基を表す)である場合の炭化水素基R’は、前記R
1〜R
4が芳香族炭化水素基、アルキル基である場合のそれと同様であり、Xがスルホン酸から水酸基を除いた残基である4−アラルキルフェノール誘導体は、例えば、一般式(2b)の4−アラルキルフェノール類をピリジン等の有機アミン又は炭酸カリウム等の無機塩基の存在下でトシルクロライドやメシルクロライド等のハロゲン化スルホニル炭化水素類を反応させる公知の方法により容易に得ることができる。
【0033】
一方、本発明における目的物である前記一般式(1)で表されるトリスフェノール類において、式中、R
1〜R
4、R
5及びR
6、R
0、nは一般式(2)のそれと同じである。
また、R
7は水素原子又はアルキル基を表し、アルキル基としては、前記したR
1〜R
4がアルキル基である場合のアルキル基と同じであり、アルキル基の種類としては1級又は2級アルキル基が好ましい。従って、アルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシエチル基、3−クロロプロピル基等を挙げることができる。また、アルキル基の炭素原子数は1〜4が好ましい。
【0034】
また、R
9〜R
11は各々独立して水素原子、アルキル基、アルコキシル基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又は水酸基を表し、アルキル基、アルコキシル基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記したR
1〜R
4がアルキル基、アルコキシル基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子である場合のアルキル基、アルコキシル基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子と同じであり、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数5〜6のシクロアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシル基、フェニル基が好ましい。また、R
9とR
10は同時に水酸基でない方が製造上好ましく、R
7がアルキル基の場合は、R
11が水素原子であることが製造上好ましい。
【0035】
従って、一般式(1)で表されるトリスフェノール類としては、具体的には例えば、
1−[α−メチル−α−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α,α−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、
1−[α−メチル−α−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α,α−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、
1−[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、
1−[α−メチル−α−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α,α−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン等が挙げられる。
【0036】
また、本発明のトリスフェノールの製造方法に原料として用いられる一般式(2)の4−アラルキルフェノール誘導体の一つである一般式(2a)で表される4−アラルキルフェニルエステル類において、式中、R
1〜R
4、R
5及びR
6、R
0、nは一般式(2)のそれと同じである。R
8は水素原子又は炭化水素基であり、炭化水素基としては、不飽和脂肪族炭化水素基、アルキル基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。アルキル基、芳香族炭化水素基としては、一般式(2)においてR
1〜R
4がアルキル基又は芳香族炭化水素基である場合のアルキル基、芳香族炭化水素基と同じである。好ましくはアルキル基であり、種類としては1級又は2級アルキル基が好ましい。
本発明のトリスフェノールの製造方法に原料として用いられる一般式(2)の4−アラルキルフェノール誘導体の一つである一般式(2c)で表される4−アラルキルフェニルエーテル類において、式中、R
1〜R
4、R
5及びR
6、R
0及びnは一般式(2)のそれと同じであり、Rは炭化水素基を表す。Rの炭化水素基としては、不飽和脂肪族炭化水素基、アルキル基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。アルキル基、芳香族炭化水素基としては、一般式(2)においてR
1〜R
4がアルキル基又は芳香族炭化水素基である場合のアルキル基、芳香族炭化水素基と同じである。好ましくはアルキル基であり、種類としては1級又は2級アルキル基が好ましい。
【0037】
本発明のトリスフェノール類の製造方法において、原料である一般式(2)で表される4−アラルキルフェノール誘導体のXがアシル基である一般式(2a)、又は、Xが水素原子である一般式(2b)で表される場合、下記反応スキーム1で製造されることが好ましい。
【0038】
次に、本発明の製造方法における工程A1及び工程Aについて説明する。
本発明の製造方法おいては、前記一般式(2)の4−アラルキルフェノール誘導体類、好ましくは一般式(2a)の4−アラルキルフェニルエステル類、又は、前記一般式(2b)の4−アラルキルフェノール類を出発原料とする。そして、製造スキームに記載したように、出発原料が一般式(2a)の4−アラルキルフェニルエステル類の場合、工程A1において、これをアセチルクロライド、無水酢酸等のアシル化剤により核アシル化して、アラルキル基のフェニル基の4−位にアシル基を導入して一般式(7)で表される4−アシルアラルキルフェニルエステル類を得る。出発原料の一般式(2a)で表される4−アラルキルフェニルエステル類は、例えば、一般式(2)においてXが水素原子である場合の一般式(2b)で表される4−アラルキルフェノール類のヒドロキシル基をアシル化することによって得ることができる。
また、出発原料が一般式(2b)で表される4−アラルキルフェノール類の場合、工程A1において、同一反応工程でヒドロキシ基のアシル化とフェニル基の核アシル化をして一般式(7)で表される4−アシルアラルキルフェニルエステル類を得ることもできる。この場合、水酸基がアシル化された後、フェニル基が核アシル化される。また、出発原料が一般式(2)においてXがアシル基以外の脱離基である4−アラルキルフェノール誘導体類の場合も一般式(2a)の4−アラルキルフェニルエステルの場合と同様に核アシル化して、脱離基Xaが原料4−アラルキルフェノール誘導体類のそれと一致する一般式(3)の4−アシルアラルキルフェノール誘導体類を得ることができる。
【0039】
核アシル化反応又はヒドロキシ基のアシル化反応としては、公知のアシル化反応を用いることができる。アシル化剤としては、アシル化剤として用いられているものであれば特に制限はないが、好ましいアシル化剤としては下記一般式(11)で表されるハロゲン化アシル、下記一般式(12)で表されるカルボン酸無水物等が挙げられる。
(式中、R
7は水素原子又はアルキル基を表し、R
8は水素原子又は炭化水素基を表し、Yはハロゲン原子であり、R
7又はR
8は一般式(7)のR
7又はR
8に各々対応していることを表す。)
R
7のアルキル基としては一般式(2)においてR
1〜R
4がアルキル基である場合のアルキル基と同じであり、R
8の炭化水素基としては、不飽和脂肪族炭化水素基、アルキル基、芳香族炭化水素基等が挙げられ、アルキル基、芳香族炭化水素基としては、一般式(2)においてR
1〜R
4がアルキル基又は芳香族炭化水素基である場合のアルキル基、芳香族炭化水素基と同じである。
【0040】
従って、置換基R
7を含む一般式(11)、一般式(12)のアシル化剤としては、具体的には例えば、ホルミルクロライド、アセチルクロライド、アセチルブロマイド、プロピオン酸クロライド、無水酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられ、また置換基R
8を含む一般式(11)、一般式(12)のアシル化剤としては、具体的には例えば、ホルミルクロライド、アセチルクロライド、アセチルブロマイド、プロピオン酸クロライド、ベンゾイルクロライド、トルイル酸クロライド、無水酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
前記一般式(2b)で表される4−アラルキルフェノール類の工程A1におけるアシル化は、4−アラルキルフェノールの水酸基とフェニル環を同時にアシル化(下記工程A1b:一段法)してもよいし、先ず水酸基をアセチル基等のアシル基で保護したのち、フェニル環の核アシル化(下記工程A1a:2段法)を行っても良い。好ましくは前者の一段アシル化法である。また、下記工程A1aにおける核アシル化反応は、前記出発原料が一般式(2a)の4−アラルキルフェニルエステル類の場合の工程A1における核アシル化反応と同じである。
【0041】
〔工程A1b:一段法アシル化の反応スキーム〕
この方法では、一段で水酸基及びフェニル核のアシル化を行うのでR
7=R
8であり、アシル化剤は、例えば置換基R
7を含む一般式(11)、一般式(12)のアシル化剤である。
【0042】
〔工程A1a:二段法アシル化の反応スキーム〕
この方法では、2回に分けてアシル化を行うのでR
7とR
8では同一でも、また異なっていてもよく、アシル化剤は、例えば置換基R
8を含む一般式(11)、一般式(12)のアシル化剤と置換基R
7を含む一般式(11)、一般式(12)のアシル化剤を順次用いる。
【0043】
従って、一般式(3)で表される4−アシルアラルキルフェノール誘導体において、式中のR
7及び一般式(7)で表される4−アシルアラルキルフェニルエステル類において、式中の置換基R
7又はR
8は、アシル化工程で用いられたアシル化剤である前記一般式(11)で表されるハロゲン化アシル、前記一般式(12)で表されるカルボン酸無水物のR
7又はR
8に由来するものである。A1工程において、水酸基とフェニル基を同時にアシル化する一段法アシル化の場合は、R
7とR
8は同じであり、水酸基をアシル化した後、フェニル核をアシル化する二段法アシル化においては、R
7とR
8は同一であっても、異なっていてもよい。
アシル化反応に際しては、通常、アシル化触媒を用いる。アシル化触媒としては、ベンゼン環等の芳香環の炭素原子をアシル化できる酸触媒であれば特に制限はないが、例えば、ルイス酸や固体酸、プロトン酸等が挙げられる。
【0044】
ルイス酸としては、例えば塩化アルミニウム、塩化スズ(IV)、塩化銅、(無水)塩化鉄(III)等の金属ハロゲン化物等が挙げられるが、好ましくは塩化アルミニウムである。固体酸としては、例えばゼオライト、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイ素タングステン酸、ケイ素モリブデン酸等のヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸の金属塩等が挙げられる。また、プロトン酸としては、例えば塩化水素ガス、硫酸、ポリリン酸等が挙げられる。好ましくはルイス酸である。
【0045】
一般式(2)の4−アラルキルフェノール誘導体類に対するアシル化剤(アシル化剤/4−アラルキルフェノール誘導体類)のモル比は、[{1+(4−アラルキルフェノール誘導体類分子中の水酸基数)}]/1」〜[1.25×{1+(4−アラルキルフェノール誘導体類分子中の水酸基数)}]/1」の範囲が好ましく、例えば、Xが水素原子で、その他に水酸基を有していない一般式(2b)の4−アラルキルフェノール類の場合において、同一反応工程で水酸基とフェニル核のアシル化反応を行うジアシル化法(一段アシル化法)の場合、好ましくは2/1〜2.5/1の範囲であり、より好ましくは2.1/1〜2.3/1の範囲である。また、Xが水素原子ではなく、水酸基を有していない4−アラルキルフェノール誘導体類のフェニル核のみをアシル化する場合、好ましくは1/1〜1.25/1の範囲であり、より好ましくは1.1/1〜1.2/1の範囲である。上記水酸基としてはフェノール性水酸基が好ましい。
【0046】
また、ルイス酸を用いる場合、アシル化剤のカルボニル基に対するルイス酸のモル比(ルイス酸モル数/[アシル化剤モル数×アシル化剤分子中のカルボニル基数])は、1/1〜1/1.1の範囲にするのが好ましく、より好ましくは1/1であり、モル比が大きすぎると収率が低下し、また小さすぎるとアシル化剤の反応率が下がるので好ましくない。
アシル化剤に対して使用するルイス酸のモル比(ルイス酸/アシル化剤)について、具体的には、ハロゲン化アシルの場合は、好ましくは1/1〜1/1.1の範囲、特に好ましくは1/1であり、酸無水物の場合は、好ましくは2/1〜2/1.1の範囲、特に好ましくは2/1である。但し、一般式(2)の4−アラルキルフェノール誘導体類がアシルオキシ基やアルキルスルホニルオキシ基等のオキソ(=O)を有している場合、ルイス酸の使用モル量は(アシル化剤モル数×アシル化剤分子中のカルボニル基数)〜([アシル化剤モル数×アシル化剤分子中のカルボニル基数]+[4−アラルキルフェノール誘導体類のモル数×4−アラルキルフェノール誘導体類分子中のオキソ基数])の範囲が好ましく、従って、例えば、Xがアシルオキシ基で、その他にオキソ基と水酸基を有していない4−アラルキルフェノール誘導体類をアシル化する場合において、アシル化剤がハロゲン化アシルであれば、モル比(ルイス酸/アシル化剤)は1/1〜2/1が好ましく、酸無水物であれば、モル比(ルイス酸/アシル化剤)は1/1〜3/1が好ましい。
【0047】
使用する触媒の活性にもよるが、反応温度が高すぎるとR
5及びR
6が置換しているアルキリデン基が切断する等の副反応が起こりやすくなり収率が低下するので、反応温度は、好ましくは−50℃〜50℃の範囲、ルイス酸を用いた場合、好ましくは−20〜20℃の範囲、より好ましくは0〜10℃の範囲である。
反応に際し、通常、フリーデルクラフツ反応で一般に用いられる反応溶媒が用いられる。用いられる溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化飽和炭化水素類やクロロベンゼン、二硫化炭素が挙げられる。
このような反応条件において、反応は、通常、数時間〜十数時間で終了するルイス酸を用いる反応の場合、反応は、通常、ルイス酸とアシル化剤を混合して錯体(又は付加体)を形成し、この溶液中に4−アラルキルフェノール誘導体類の溶液を滴下して行われる。
【0048】
アシル化剤がホルミルハロゲンの場合、化合物自体が不安定なので、塩化アルミや塩化銅の存在下、一酸化炭素と塩化水素を用いて上記アシル化反応を行うこともできる。
また、4−アラルキルフェノールの水酸基をアセチル基等のアシル基で保護したのち、フェニル環の核アシル化を行う二段法アシル化の場合、水酸基のアシル化反応の後、再度同じアシル化剤又は異なるアシル化剤を用いて同様にアシル化反応を行う。この場合、第一反応の水酸基へのアシル化に過剰のカルボン酸無水物を用いると、通常、ルイス酸は必要でなく、反応が容易である理由で好ましい。
【0049】
また、反応混合溶液から、必要に応じ目的物を精製する方法は、公知の精製方法を用いることができる。例えば、触媒がルイス酸の場合、塩酸水溶液等の酸水溶液を加えて酸と生成物の付加物を分解し、酸を失活させたのち水層に溶解させる。さらに必要に応じて水と分離する溶媒を加えて水層を分離除去し油層を得る。得られた油層を水洗し、得られた油層から、必要に応じて溶媒や原料(多核体の場合:フェノール類)を留去した後、これに溶媒を添加し、晶析又は沈殿することによって、結晶又は非結晶の固体を得る。結晶や固体の純度が低い等必要ならば、再晶析又は再沈を1回〜複数回行ってもよい。このようにして、工程A1において4−アシルアラルキルフェニルエステル類の高純度品を得ることができる。
このような4−アシルアラルキルフェニルエステル類としては、具体的には例えば、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(4−アセチルオキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(3−メチル−4−アセチルオキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(3,5−ジメチル−4−アセチルオキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(2,3,5−トリメチル−4−アセチルオキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(3−シクロヘキシル−4−アセチルオキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(3−イソブチル−4−アセチルオキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−ブチリル−4−{1−メチル−1−(4−ブチリルオキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{(4−アセチルオキシフェニル)メチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−(4−アセチルオキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−プロピオニル−4−{(4−アセチルオキシフェニル)メチル}ベンゼン、
等が挙げられる。
【0050】
次に、本発明の製造方法における工程C1、工程B1について説明する。
工程C1は、上記工程A1で得られた、一般式(7)で表される4−アシルアラルキルフェニルエステル類を前記反応スキームに示すように、エステル基を加水分解、加アルコール分解又は/及び加フェノール分解して一般式(6)で表される4−アシルアラルキルフェノール類を得る反応工程で、工程B1は、ついで得られた4−アシルアラルキルフェノール類と一般式(4)で表されるフェノール類を縮合反応して、目的物である一般式(1)で表されるトリスフェノール類を得る反応工程である。
【0051】
工程C1において、エステル基の加水分解反応、加アルコール分解反応又は加フェノール分解反応は、公知の方法により行うことができる。例えば、水、アルコール類又は/及びフェノール類による分解の場合、4−アシルアラルキルフェニルエステル類に対する水、アルコール類又は/及びフェノール類のモル比([水、アルコール類又は/及びフェノール類]/4−アシルアラルキルフェニルエステル類)は、特に制限はないが、大きすぎると容積効率が悪くなるので、通常1/1〜100/1の範囲、好ましくは10/1〜30/1の範囲である。また、アルコールとしてはメタノール、エタノール等の脂肪族アルコール類が好ましく、フェノール類としてはフェノール、o−クレゾール等の単核のフェノール類が好ましい。
【0052】
分解反応は、通常アルカリ又は酸触媒の存在下で行われるが、反応速度、収率の点でアルカリの方が好ましい。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機強塩基等が挙げられる。4−アシルアラルキルフェニルエステル類に対するアルカリのモル比(アルカリ/4−アシルアラルキルフェニルエステル類の分子中のエステル基数)は、通常、1/1〜5/1の範囲、好ましくは2/1〜3/1の範囲である。
【0053】
反応温度は、通常0℃〜150℃の範囲、好ましくは50〜100℃の範囲である。反応に際し、原料の4−アシルアラルキルフェニルエステル類の融点が高く撹拌が困難な場合には溶媒を使用することもできる。用いられる溶媒は、反応を阻害したり、副反応を起さないものであれば特に制限はないが、例えば、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類、メタノール、イソプロパノール等の低級脂肪族アルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン等のエーテル類を挙げることができる。水のみを用いて加水分解をする場合は、非常に反応速度が遅いので、水にメタノール等の水溶性アルコール類を若干量加えて用いることが好ましい。
【0054】
反応終了後、反応混合溶液から、必要に応じ目的物を精製する方法は、公知の精製方法を用いることができる。例えば、得られた反応混合液に酸水溶液を添加してアルカリを中和し、必要に応じて水と分離する溶媒を加えて水層を分離除去し、目的物を含む油層を得る。得られた油層を水洗し、得られた油層から、必要に応じて溶媒等を留去した後、これに再度溶媒を添加し、晶析又は沈殿することによって、結晶又は非結晶の固体を得る。結晶や固体の純度が低い等必要ならば、再晶析又は再沈を1回〜複数回行ってもよい。このようにして、一般式(6)で表される4−アシルアラルキルフェノール類の高純度品を得ることができる。
このような4−アシルアラルキルフェノール類としては、具体的には例えば、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル}ベンゼン、1−アセチル−4−{1−メチル−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−メチル−1−(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−ブチリル−4−{1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{(4−ヒドロキシフェニル)メチル}ベンゼン、
1−アセチル−4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル}ベンゼン、
等が挙げられる。
【0055】
ついで、工程B1では、上記得られた4−アシルアラルキルフェノール類に一般式(4)で表されるフェノール類を縮合反応させてトリスフェノール類とする。縮合反応は公知の反応方法を用いることができる。ここで、一般式(4)で表されるフェノール類としては、具体的には例えば、フェノール、o−クレゾール、2−エチルフェノール、カテコール、2−シクロヘキシルフェノール、2−メトキシフェノール、2−イソピロピルフェノール、2−クロロフェノール、2−ブロモフェノール、2−フェニルフェノール、2−ベンジルフェノール、2,6−キシレノール等が挙げられる
【0056】
反応に際し、4−アシルアラルキルフェノール類に対するフェノール類とのモル比(フェノール類/4−アシルアラルキルフェノール類)は、通常、2/1〜10/1の範囲、好ましくは3/1〜5/1の範囲である。反応に用いられる触媒としては、好ましくは無機酸又は有機酸で、強酸から中程度の強さの酸が用いられる。無機酸としては、例えば35%塩酸、塩化水素ガス、硫酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては有機スルホン酸、カルボン酸が好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸等が挙げられる。これらの内、好ましくは、強酸で特に塩酸ガス又は濃塩酸が好ましい。用いられる触媒の量は、触媒の種類により異なるが、通常、フェノール類に対して1〜50wt%程度の範囲である。また、触媒と共に助触媒を適量用いると、特に一般式(6)におけるR
7がアルキル基の場合は、収率が向上するため好ましい。
【0057】
助触媒としては、メルカプト基を有する化合物乃至高分子化合物が好ましく、具体的には例えば、n−ドデシルメルカプタン、メチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、メルカプト酢酸、β−メルカプトプロピオン酸等のメルカプタンカルボン酸、メルカプト基を有する陽イオン交換樹脂又は有機高分子シロキサン等が挙げられる。
反応に際し、溶媒は用いても、また用いなくてもよいが、フェノール類/4−アシルアラルキルフェノール類のモル比が低い、或いはフェノール類の融点が高く溶液化が困難な場合には溶媒を用いてもよい。溶媒としては例えばメタノール、ブタノール等の低級脂肪族アルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類、カテコール等の融点が高くかつ水への溶解度が大きい原料を用いる場合は水を反応溶媒にすることができる。好ましくは低級脂肪族アルコール類である。
【0058】
溶媒の使用量は特に制限はないが、通常、用いるフェノール類に対して0.1重量倍〜10重量倍の範囲、好ましくは0.5重量倍〜2重量倍の範囲である。
反応温度は、通常、0〜100℃の範囲、好ましくは30〜60℃の範囲である。
反応は、例えば窒素ガス中、温度40℃において、4−アシルアラルキルフェノール類の溶媒溶液を、フェノール類と触媒の溶媒溶液中に滴下することにより行われる。
【0059】
反応終了後、反応混合溶液から、必要に応じ目的物を精製する方法は、公知の精製方法を用いることができる。例えば、得られた反応混合液に水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水を加えて、酸を中和し、水層を分離除去するために必要ならばトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン又はエーテル等の水と分離可能な溶媒を加え、その後、水層を分離除去し、目的物を含む油層を得る。得られた油層を水洗し、得られた油層から、必要に応じて溶媒等を留去した後、これに再度溶媒を添加し、晶析又は沈殿することによって、結晶又は非結晶の固体を得る。結晶や固体の純度が低い等必要ならば、再晶析又は再沈を1回〜複数回行ってもよい。このようにして、工程A1と工程C1及び工程B1(第1製法)を順次行うことにより、本発明の製造方法における目的物であるトリスフェノールの高純度品を得ることができる。
【0060】
次に、本発明の製造方法における工程B2、工程C2について説明する。
工程B2は、上記工程A1で得られた、一般式(7)で表される4−アシルアラルキルフェニルエステル類に、上記反応スキームに示すように一般式(4)で表されるフェノール類を縮合反応して、一般式(8)で表されるモノエステル置換トリスフェノールを得る反応工程で、工程C2は、ついで得られたモノエステル置換トリスフェノールのエステル基を加水分解、加アルコール分解又は/及び加フェノール分解して目的物である一般式(1)で表されるトリスフェノール類を得る反応工程である。
【0061】
ここで、一般式(4)で表されるフェノール類は前記工程B1で記載したフェノール類と同じである。また、4−アシルアラルキルフェニルエステル類とフェノール類との縮合反応においては、反応はフェニル基に4−位で結合したアシル基との反応であるので、前記工程B1で記載した縮合反応と同様に、フェノール類と原料化合物(4−アシルアラルキルフェニルエステル類)とのモル比、触媒とその量、助触媒の使用、溶媒とその量、反応温度、反応方法等同様の条件で行うことができる。この工程B2反応においては、一般式(7)で表される4−アシルアラルキルフェニルエステル類のエステル基が一部、加水分解したり、4−アシルアラルキルフェニルエステル類のエステル基が一部、反応生成物等の水酸基に転位する可能性もあるが、次にエステル基の加水分解反応を行うので、反応収率には何ら影響しない。
反応終了後、反応混合溶液から、必要に応じ目的物を精製する方法は、公知の精製方法を用いることができる。例えば、前記工程B1で記載したと同様の方法で一般式(8)で表されるモノエステル置換トリスフェノール類を得ることができる。
【0062】
ついで、工程C2では、上記得られたモノエステル置換トリスフェノール類のエステル基を加水分解、加アルコール分解又は/及び加フェノール分解する。
モノエステル置換トリスフェノール類のエステル基の加水分解、加アルコール分解又は/及び加フェノール分解反応は、公知の方法により行うことができる。例えば、水、アルコール又は/及びフェノール類による分解の場合、前記工程C1で記載した加水分解反応、加アルコール分解反応又は/及び加フェノール分解反応と同様に、水、アルコール類又は/及びフェノール類と原料化合物(モノエステル置換トリスフェノール類)とのモル比、アルカリとその量、溶媒の使用とその量、反応温度、反応方法等同様の条件で行うことができるが、酸触媒を使用する場合、酸触媒としては、塩酸、塩化水素ガス、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられ、酸触媒の使用量は、通常、原料化合物中のエステル基1モルに対して0.1〜10モルの範囲、好ましくは1〜5モルの範囲である。また、反応終了後、反応混合溶液から、必要に応じ目的物を精製する方法は、公知の精製方法を用いることができる。例えば、前記工程C1で記載したと同様の方法を用いることができる。このようにして、工程A1と工程B2及び工程C2(第2製法)を順次行うことにより、本発明の目的物である一般式(1)で表されるトリスフェノール類を得ることができる。なお、A1工程で得られた一般式(7)の4−アシルアラルキルフェニルエステルを次工程で反応させる際に縮合反応(B1工程又はB2工程)における反応条件及び使用する化合物と加水分解反応、加アルコール分解反応又は加フェノール分解反応(C1工程又はC2工程)における反応条件及び使用する化合物とが共通している場合には、縮合反応と加水分解、加アルコール分解反応又は加フェノール分解反応は同一工程内で行うことができる。条件によりどちらかの反応が不完全な場合でも、反応生成物を取り出して、さらに不完全な方の反応を続行してもよく、又は、反応生成物を精製して目的のトリスフェノールを得てもよい。
【0063】
また、原料である一般式(2)で表される4−アラルキルフェノール誘導体のXが炭化水素基である一般式(2c)で表される4−アラルキルフェニルエーテル類である場合、工程A2と工程C3と前記工程B1を順次含む製法(第3製法)、又は工程A2と工程B3と工程C4を順次含む製法(第4製法)のいずれかよりなるトリスフェノール類の製造方法が挙げられる。
【0064】
工程A2:一般式(2c)で表される4−アラルキルフェニルエーテル類
(式中、R
1〜R
4 、R
5及びR
6、R
0及びnは一般式(2)のそれと同じであり、Rは炭化水素基を表す。但し、nが1以上の場合R
0は、フェニル基の4位には置換しない。)
を核アシル化して、一般式(9)
(式中、R
1〜R
4 、R
5及びR
6、R
0及びn、R
7は一般式(1)のそれと同じであり、Rは一般式(2c)のRと同じである。)
で表される4−アシルアラルキルフェニルエーテル類を得る。
【0065】
工程C3:工程A2で得られた一般式(9)で表される4−アシルアラルキルフェニルエーテル類のエーテル基を開裂させて、前記一般式(6)で表される4−アシルアラルキルフェノールを得る。
【0066】
工程B3:工程A2で得られた4−アシルアラルキルフェニルエーテル類と前記一般式(4)で表されるフェノール類を縮合反応させて、一般式(10)
(式中、R
1〜R
4 、R
5及びR
6、R
0及びn、R
7、R
9〜R
11は一般式(1)のそれと同じであり、Rは一般式(2c)のそれと同じである。)
で表されるモノエーテル置換トリスフェノールを得る。
【0067】
工程C4:工程B3で得られた一般式(10)で表されるモノエーテル置換トリスフェノールのエーテル基を開裂させて、一般式(1)で表されるトリスフェノール類を得る。
【0069】
ここで、工程A2において核アシル化反応は、アセチルクロライド、無水酢酸等のアシル化剤によりアシル化して、アラルキル基のフェニル核の4−位にアシル基を導入し一般式(9)で表される4−アシルアラルキルフェニルエーテル類を得る。アシル化反応としては、公知のアシル化反応を用いることができ、例えば、前記工程A1において述べた二段法アシル化(工程A1a )の反応方法における2段目の核アシル化反応と同様にして行うことができる。
【0070】
また工程C3においては、開裂反応は、フェニルエーテルに係る公知の開裂反応を用いることができ、例えば、BBr3の存在下に開裂させると、アルコキシル基(RO基)を選択的にヒドロキシ基とする事ができる。次いで、得られた一般式(6)で表される4−アシルアラルキルフェノールと前記一般式(4)で表されるフェノール類との縮合反応は、前記した工程B1と同様である。
【0071】
また工程B3においては、一般式(9)で表される4−アシルアラルキルフェニルエーテル類と前記一般式(4)で表されるフェノール類との縮合反応は、前記工程B2記載の方法と同様にして行うことができる。
次いで、工程C4において開裂反応は、フェニルエーテルに係る公知の開裂反応を用いることができ、例えば、HBrの存在下に開裂させると、アルコキシル基(RO基)をヒドロキシ基とする事ができる。
かくして、一般式(2c)で表される4−アラルキルフェニルエーテル類を出発原料として、工程A2と工程C3と前記工程B1(第3製法)又は工程A2と工程B3と工程C4(第4製法)を順次行うことにより、本発明の目的物である一般式(1)で表されるトリスフェノール類を得ることができる。
【0072】
また、一般式(3)においてXaが有機スルホニル基(R’−SO
2基/R’は炭化水素基を表す)である4−アシルアラルキルフェノール誘導体から一般式(1)のトリスフェノール類を製造する方法では、4−アシルアラルキルフェノール誘導体のXa基を脱離させて、一般式(6)の4−アシルアラルキルフェノール類を得る場合において、スルホニルオキシ基にかかる公知の脱離反応(分解反応)を用いることができる。例えば、Xaがトシル基の場合、炭酸カリウムや水酸化カリウム等のアルカリによって加水分解反応させるとトシルオキシ基を水酸基とする事ができ、Xaがメシル基の場合、フェニルマグネシウムブロマイドやフェニルリチウムを用いて開裂反応せると、メシルオキシ基を水酸基とする事ができる。次いで得られる一般式(6)の4−アシルアラルキルフェノール類は前記工程B1により目的のトリスフェノール類を得ることができる。あるいは、一般式(3)の4−アシルアラルキルフェノール誘導体と一般式(4)のフェノール類との縮合反応させる場合において、前記工程B1又は工程B2で記載した縮合反応と同様に、フェノール類と原料化合物とのモル比、触媒とその量、助触媒の使用、溶媒とその量、反応温度、反応方法等同様の条件で行うことができ、次いで得られた一般式(5)のトリスフェノール誘導体のスルホニル基の脱離も上記に記載した公知の方法を用いて、目的とするトリスフェノール類を得ることができる。
【実施例1】
【0073】
4−(1−(4−アセトキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノンの合成(工程A1b)
滴下ロート、冷却管、攪拌機を備えた500ml四つ口フラスコに塩化アルミニウム70.5g(0.542モル)とクロロホルム105.8g(塩化アルミニウムに対し1.5重量倍)を仕込み、系内を窒素置換しながら5℃まで冷却した。冷却後、滴下ロートより塩化アセチル42.3g(0.542モル)を一時間かけて滴下し、錯体を形成した。錯体は5℃ではクロロホルムに溶解せず、系内はスラリー溶液となった。
錯体形成後、この溶液中にp−クミルフェノール 50.0 g(0.236モル)をクロロホルム75g (p−クミルフェノールに対して1.5重量倍)に溶解した溶液を、フラスコ内の温度を5℃に維持しながら、3時間をかけて滴下し、滴下終了後、20℃で2時間反応を行った。
反応終了後、反応終了混合液にトルエン171.8g(フラスコ内容物の0.5重量倍)を加えた。
次いで、還流冷却管、攪拌機を備えた1L四ツ口フラスコに水275.1gを仕込み、そこに、フラスコ内の温度を40〜50℃に維持しながら前記の反応終了混合液のトルエン溶液を滴下した。
滴下終了後、35%塩酸103.1gを添加して30℃で1時間攪拌した後、水層を分液除去した。得られた有機層は、水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和して、水層を除去した後に、常圧にてクロロホルムを留去した。
次に得られた液に水を加えて洗浄し、水層を分離除去して、油層に16%水酸化ナトリウム水溶液100gを加えて1時間攪拌して洗浄した後、75%リン酸を加えて中和し、水層を除去した。得られた油層を60℃で10kPaまで蒸留して、トルエンを除去した。留去後の残留物にトルエン73.9g及びイソオクタン73.9gを加えて昇温して溶解した後、晶析して、冷却し、濾過、乾燥して高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCという場合がある。)による純度が97.3%の淡黄白色結晶42.3gを得た。この結晶をNMR、質量分析で分析し、4−(1−(4−アセトキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノンであることを確認した。
【0074】
1H−NMR(400MHz、CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
7.86(aromatic H, 2H, 二重線, J=8.78 Hz, 図中b)、7.32(aromatic H, 2H, 二重線, J=8.78 Hz図中c)、7.200(aromatic H, 2H,二重線, J=8.78 Hz図中e)、6.99(aromatic H, 2H,二重線, J=8.78 Hz図中f)、2.57(CH3CO−, 3H,一重線,図中a)、2.28(acetoxy, 3H, 一重線 , 図中g),1.69(methyl, 6H, 一重線, 図中d)
【実施例2】
【0075】
4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノンの合成(工程C1)
実施例1で得られた結晶20.1gをトルエン20gに溶解させ、16%水酸化ナトリウム水溶液24.0gとメタノール2gを加えて、50℃で2.5時間加水分解反応を行った。反応終了後、75%リン酸で中和した後、水層を除去した。
得られた油層から60℃、10kPaまで蒸留してトルエンを留去し、HPLCによる純度が99.9%の橙色固体18.0gを得た。
この固体をNMR、質量分析で分析し、4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノンであることを確認した。
また、p−クミルフェノールに対する収率は、60.0%であった。
【0076】
1H−NMR(400MHz、CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
7.86(aromatic H, 2H, 二重線, J=8.78 Hz,図中b)、7.32(aromatic H,2H,二重線,J=8.78 Hz,図中c)、7.07(aromatic H, 2H,二重線, J=8.78 Hz,図中e)、6.76(aromatic H, 2H, 二重線, J=8.78 Hz, 図中f)、5.95(hydroxyl, 1H, ブロードな一重線, 図中g)、2.57(CH3CO−, 3H, 一重線, 図中a)、1.67(methyl, 6H,一重線, 図中d)
【実施例3】
【0077】
1−(α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル)−4−(α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)ベンゼンの合成(工程B1)
滴下ロート、冷却管、攪拌機を備えた300ml4つ口フラスコにフェノール55.6gとトルエン1.7g(仕込みフェノールに対し3重量%)、ドデシルメルカプタン(原料ケトンに対し12.5モル%)を仕込み、系内を窒素置換しながら40℃まで昇温した。
窒素置換後、系内を塩化水素ガスで置換した。そこに塩化水素ガスの供給を続けながら、フラスコ内温40〜45℃に維持しながら実施例2で得られた4−〔1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕アセトフェノン24.6g(0.096モル)をフェノール24.6gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。
滴下終了後、40℃で18時間撹拌して反応を続けた。反応終了後、反応終了混合物にトルエン35.7gを加えた後、16%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、87℃まで昇温して、結晶を溶解した。その後、これを晶析して、30℃まで冷却後、析出した結晶を濾別、乾燥して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による純度が96.5%の白色結晶58.7gを得た。
得られた結晶をトルエンに昇温溶解した後、晶析した。この晶析液を冷却後、濾過、乾燥することで99.6%の白色結晶を得た。この結晶をプロトンNMR及び質量分析で分析し、目的物の1−(α−メチル−α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル)−4−(α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)ベンゼンであることを確認した。
分子量 423(M−H)
− (液体クロマトグラフィー質量分析法)
1H−NMR(400MHz、CD
3OD、標準物質:テトラメチルシラン)
7.01〜7.05(4H, m)、6.92(2H, d, J=7.81 Hz)、6.85(4H, d, J=7.81 Hz)、6.62〜6.67(6H, m)、4.85(3H, brs)、2.01(3H, s)、1.58(6H, s)
【実施例4】
【0078】
4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノンの合成(工程A1b + 工程C1)
滴下ロート、冷却管、攪拌機を備えた2L4つ口フラスコに塩化アルミニウム306.7g(2.30モル)とクロロホルム460.0g(塩化アルミニウムに対し1.5重量倍)を仕込み、フラスコ内を窒素置換して、5℃まで冷却した。冷却後、撹拌下に滴下ロートより無水酢酸117.4g(1.15モル)を1時間かけて滴下し、錯体を形成した。錯体は5℃ではクロロホルムに溶解しないため、スラリー溶液となる。
その後、p−クミルフェノール106.0g(0.50モル)をクロロホルム159.1g(p−クミルフェノールの1.5重量倍)で溶解した溶液を、5℃で3時間かけて撹拌下スラリー溶液に滴下した。滴下終了後、撹拌下に5℃でさらに2時間反応させた。
反応終了後、反応終了液にトルエン619.0gを加えて希釈した。冷却管、攪拌機を備えた3L4つ口フラスコに水574.6gを仕込み、この水に撹拌下、10〜20℃で上記のトルエンで希釈した反応液を滴下した。滴下終了後、35%塩酸346.5gを添加して、50℃で、1時間攪拌した。その後、析出した固形物を濾別し、濾液の水層を分離除去した。得られた油層に16%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、35%塩酸を加えて撹拌洗浄後、水層を分離し、得られた油層に再度16%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した。水層を分離除去して得られた油層を蒸留して溶媒419.5gを留出除去し、得られた蒸留残液に水を加えて撹拌して、水層を分離除去した。得られた油層に16%水酸化ナトリウム水溶液127.6g及びメタノール36.1gを加えて撹拌下に50℃で加水分解反応を2時間行った。反応終了後、75%リン酸を加えて中和し分液した後、水層を分離除去し、水を加えて油層を水洗した後、水層を分離除去し、得られた油層を減圧下70℃で蒸留してトルエンを除去した。蒸留残液にメチルイソブチルケトン 56.1g(蒸留残液の0.5重量倍)、シクロへキサン224.5g(蒸留残液の2重量倍)を加えて昇温し溶解した後、晶析、濾過、乾燥して白色粉末65.7gを得た。この結晶をプロトンNMR及び質量分析で分析し、4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノンであることを確認した。
p−クミルフェノールに対する収率は50.3%であった。
【実施例5】
【0079】
1−アセトキシ−4−(1−メチル−1−フェニルエチル)ベンゼンの合成(工程A1a一段目)
滴下ロート、冷却管、攪拌機を備えた500ml四つ口フラスコにp−クミルフェノール100g(0.471モル)、氷酢酸50.0g(0.832モル)、75%リン酸0.6g(0.832モル)を仕込み、系内を窒素置換しながら90〜95℃まで昇温した。昇温後、内温を90〜95℃に維持しながら無水酢酸57.7g(0.565モル)を1時間かけて滴下し反応させた。 滴下終了後、同温度で3時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、減圧蒸留を行って酢酸を除去し、蒸留後の残留物にシクロヘキサン200gを加え溶解した。その溶液に10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌した後、水層を分離除去した。得られた有機層に10%炭酸ナトリウム水溶液を加え、同様の操作で洗浄及び水層除去を行った。
得られた有機層にさらに蒸留水を加えて攪拌した後、水層を分離除去した。同様に得られた油層に水を加えて水洗及び水層を除去する操作を2回行った。得られた有機層から蒸留によりシクロヘキサンを除去して、ガスクロマトグラフィーによる純度が98.2%の無色透明液体を得た。
この液体をNMR、質量分析で分析し、1−アセトキシ−4−(1−メチル−1−フェニルエチル)ベンゼンであることを確認した。
p−クミルフェノールに対する収率は98.4%であった。
分子量 254 (ガスクロマトグラフィー質量分析法)
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、標準物質;テトラメチルシラン)
1.67 (6H, s), 2.27 (3H, s), 6.96-6.98 (2H, m), 7.17-7.26 (7H, m)
【実施例6】
【0080】
4−(1−(4−アセトキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノンの合成(工程A1a二段目)
滴下ロート、冷却管、攪拌機を備えた1L四つ口フラスコに塩化アルミニウム98.1g(0.736モル)とジクロロメタン147.2gを仕込み、系内を窒素置換しながら5℃まで冷却した。冷却後、5〜10℃を維持しながら、無水酢酸37.6g(0.368モル)を1.5時間かけて滴下し、錯体を形成した。
錯体形成後、この溶液中に、実施例5で得られた1−アセトキシ−4−(1−メチル−1−フェニルエチル)ベンゼン76.3g(0.30モル)をジクロロメタン114.5gに溶解した溶液を、内温を5〜10℃に維持しながら3時間かけて滴下し、滴下終了後、5℃で1.5時間反応を行った。反応終了後、反応終了混合液にトルエン400gを加えた。
次いで、還流冷却管、攪拌機を備えた2L四つ口フラスコに蒸留水250.0gを仕込み、そこに前記の反応終了混合液のトルエン溶液を滴下した。
滴下終了後、水層を分離除去して得られた有機層に25%塩酸93.4gを添加して30℃で30分攪拌した後、水層を分離除去した。得られた有機層に25%塩酸93.4gを加え、同様の操作で洗浄、水層除去を行った。得られた有機層に水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、水層を分離除去した後、有機層に蒸留水を加えて攪拌し、水層を分離除去した。有機層に蒸留水を加えて同様の操作で水洗、水層除去を行った。
その後、得られた有機層から減圧蒸留により溶媒を留去した。
蒸留後の残留物にメチルイソブチルケトン45.5g及びシクロヘキサン135.6gを加えて冷却して晶析した。析出した結晶を濾別、乾燥してガスクロマトグラフィーによる純度が97.6%の4−[1−(4−アセトキシフェニル)−1−メチルエチル]アセトフェノン19.5gを白色結晶として得た。
【実施例7】
【0081】
1−[α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンの合成
滴下ロート、冷却管、攪拌機を備えた200ml四つ口フラスコにフェノール22.6g(0.240モル)とトルエン0.7g(仕込みフェノールに対し3重量%)、ドデシルメルカプタン0.5mlを仕込み、系内を窒素置換しながら45℃まで昇温した。
窒素置換後、系内を塩化水素ガスで置換した。フラスコ内温を45℃に維持しながらそこに実施例6で得られた4−[1−(4−アセトキシフェニル)−1−メチルエチル]アセトフェノン11.2g(0.038モル)をフェノール11.2g(0.119モル)に溶解した溶液を1.5時間かけて滴下した。滴下中は系内への塩酸ガスの供給を続けた。滴下終了後、50℃で21時間攪拌して反応を続けた。反応終了後、反応終了混合物にトルエン50.0g及び蒸留水10.0gを加えた後、16%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、85℃まで昇温して結晶を溶解し、水層を分離除去した。得られた有機層に蒸留水を加えて水洗後、水層を分離除去する操作を2回行った。得られた有機層を晶析し、析出した結晶を濾別、乾燥して、高速液体クロマトグラフィーによる純度が95.5%の1−[α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン13.6gを白色結晶として得た。
4−(1−(4−アセトキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノンに対する収率は83.2%であった。