(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のN−置換(メタ)アクリルアミド化合物(以下、本発明の化合物とも記す。)は前記式(a)で表される化合物である。なお、本明細書において式(a)で表される化合物を化合物(a)とも記す。他の式で表される化合物も同様に表記することがある。また、本発明において、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの両方またはどちらか一方を意味する。
【0016】
式(a)において、R
1は水素原子またはメチル基である。R
1は水素原子でもメチル基でもどちらでも構わない。例えば本発明の化合物を重合した重合体に、特にn−ヘキサデカンに対する高い撥性を持たせたい場合は、水素原子の方が好ましい。また、該重合体を樹脂付着防止剤として用いる場合は、メチル基の方が好ましい。
【0017】
nは0〜4の整数である。中でも撥油性に優れるという観点から、0または1が好ましい。
【0018】
式(a)において、R
2は水素原子または下記式(r)で表される基である。
−(CH
2)
m−COO−Q
2−Rf
2 (r)
ここで、mは、0〜4の整数であり、撥油性に優れるという観点から、0または1が好ましい。
Rf
2は、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基である。具体的には、下記Rf
1と同様のものが挙げられ、Rf
1と同一であっても異なっていてもよい。
樹脂付着防止性能がより優れるという観点から、R
2は式(r)で表される基が好適である。
Q
2は、単結合または2価の連結基である。具体的には、下記Q
1と同様のものが挙げられ、Rf
1と同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
式(a)において、Rf
1は、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基である。
ポリフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子の2個ないし全部がフッ素原子に置換された部分フルオロ置換またはパーフルオロ置換アルキル基を意味する。ポリフルオロアルキル基は、直鎖構造または分岐構造のいずれであってもよい。なお、ポリフルオロアルキル基の炭素数は、分岐構造の場合は分岐構造も含めた数である。
直鎖構造としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。分岐構造としては、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、3−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
また、ポリフルオロエーテル基とは、上記ポリフルオロアルキル基中の1箇所以上の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基を意味する。
【0020】
ポリフルオロアルキル基の炭素数は、フッ素原子が結合している炭素原子を全て含み、かつ該基に含まれる炭素数が最小になるように決めるものとする。
例えば、式(a)において、「−Q
1−Rf
1」が「−C
2H
4−C
6F
13」で表される基の場合、Q
1が「C
2H
4」であり、Rf
1が「C
6F
13」である。同様に、「−Q
1−Rf
1」が「−CH
2−CHF−CH
2−CF
2H」で表される基の場合、Q
1が「CH
2」であり、Rf
1が「CHF−CH
2−CF
2H」である。
【0021】
Rf
1および式(r)中のRf
2(以下、まとめてR
f基とも記す)は直鎖構造または分岐構造のいずれであってもよいが、R
f基のパッキングを上げる観点からR
f基は直鎖構造が好ましい。同様の理由から、分岐構造である場合には、分岐部分がR
f基の末端部分に存在する場合が好ましい。
また、R
f基としては、撥油性および樹脂付着防止性能に優れるという観点から、ポリフルオロアルキル基が好ましい。さらに、R
f基は、実質的に全フッ素置換されたパーフルオロアルキル基(R
F基)が好ましく、直鎖のR
F基であることがより好ましい。
R
fは、撥油性能および樹脂付着防止性能により優れるという観点から、−C
6F
13、−C
4F
9であるのが好ましい。
【0022】
式(a)において、Q
1は、単結合または2価の連結基である。
2価の連結基としては、炭素数が1〜10の直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキレン基もしくは炭素数が2〜10のアルケニレン基、6員環芳香族基、4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、5〜6員環の複素環基、−(C
2H
4O)
p−、−(C
3H
6O)
q−(ここでのpおよびqはそれぞれ独立して1〜10(平均))、または下記式(q)で表される2価の連結基が挙げられる。これら2価の連結基は組み合わされていても良く、環基は縮合していても良い。2価の連結基は、原子量の合計が500以下であることが好ましい。
−Y−Z− (q)
式中の記号は以下の意味を示す。
Y:炭素数が1〜10の直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキレン基、6員環芳香族基、4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、5〜6員環の複素環基、またはこれらの縮合した環基。
Z:−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−、−N(R)−、−SO
2−、−PO
2−、−N(R)−COO−、−N(R)−CO−、−N(R)−SO
2−、−N(R)−PO
2−。
R:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基。
ただし、Zの向きは逆でも構わない。
【0023】
2価の連結基は、置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ、オクチルオキシ、メトキシエトキシなど)、アリーロキシ基(フェノキシなど)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオなど)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ベンゾイルなど)、スルホニル基(メタンスルホニル、ベンゼンスルホニルなど)、アシルオキシ基(アセトキシ、ベンゾイルオキシなど)、スルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシなど)、ホスホニル基(ジエチルホスホニルなど)、アミド基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノなど)、カルバモイル基(N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイルなど)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチルなど)、アリール基(フェニル、トルイルなど)、複素環基(ピリジル、イミダゾリル、フラニルなど)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニルなど)、アルコキシアシルオキシ基(アセチルオキシなど)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、および重合性基(ビニル基、アクリロイル基、メタクロイル基、シリル基、桂皮酸残基など)などが挙げられる。
ただし、Q
1および式(r)中のQ
2がアルキレン基またはオキシアルキレン基であり、フッ素原子が置換した構造である場合は、前記ポリフルオロアルキル基の炭素数の決定の定義に基づき、Q
1およびQ
2の構造も決定される。
【0024】
Q
1およびQ
2は、単結合または2価の連結基であれば適宜選択可能であり、上記例示に限定されるものではないが、これらの中でも単結合、直鎖状または分岐状のアルキレン基が好ましく、直鎖状のアルキレン基が特に好ましい。
【0025】
式(a)において、Jは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、Kは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基または前記式(r)で表される基である。
ただし、式中の−CONJ−CKR
2−部分は、下記式(s1)または(s2)で表される構造であってもよい。
【化3】
jおよびkは、相互に独立して、単結合または炭素数1〜3のアルキレン基である。ただし、jとkが同時に単結合になることはない。該アルキレン基は、式(r)で表される基で置換されていてもよい。
また、式(a)中に式(r)で表される基が複数存在する場合は、それぞれ同一でも異なる構造でも構わない。
【0026】
−CONJ−CKR
2−部分が式(s1)または式(s2)で表される構造となる場合は、Jがjに、Kがkにそれぞれ対応する。ただし、Jが水素原子の場合はjは単結合に対応し、Jがアルキル基の場合はjは水素原子が1個除かれた対応するアルキレン基に対応する。Kとkの関係も同様である。なお、式(s1)において、jまたはkが単結合である場合は、窒素原子とCR
2の炭素原子とが直接結合することを意味する。また、式(s2)において、jが単結合である場合は、窒素原子とkとが直接結合することを意味する。同様に、式(s2)において、kが単結合である場合は、jとCR
2の炭素原子とが直接結合することを意味する。
【0027】
JおよびKとしては、原料の入手が容易であり、化合物の撥油性が良好であることから、いずれも水素原子である場合が好ましい。また、−CONJ−CKR
2−部分が式(s1)で表される構造となる場合も好ましい。
【0028】
また上記原料の入手が容易であり撥油性が良好である点で好ましい本発明の化合物(a)として、下記化合物が挙げられる。
CH
2=CR
1−CONH−CHR
2−(CH
2)
n−COO−Q
1−Rf
1 (a1)
【化4】
式中の記号は前記と同じ意味を示す。
【0029】
化合物(a1)のうちでも好適なものとして、下記化合物(a1−1)が挙げられる。
CH
2=CR
1−CONH−CHR
2−(CH
2)
n−COO−(CH
2)
p−Rf
1 (a1−1)
式中の記号は以下の意味を示す。
R
2:水素原子または下記式(r−1)で表される基、
−(CH
2)
m−COO−(CH
2)
q−Rf
2 (r−1)
pおよびqは0〜6の整数であり、n、m、R
1、Rf
1およびRf
2は、式(a)における定義と同じである。
【0030】
前記化合物(a1−1)の中でも、R
2が前記式(r−1)で表される基である、下記化合物(a1−11)が好ましい。
【化5】
式中の記号は、式(a1−1)における定義と同じである。
【0031】
具体的には、下記化合物が挙げられる。
【化6】
【0032】
化合物(a2)のうちでも好適なものとして、下記化合物(a2−1)が挙げられる。
【化7】
R
2:水素原子または上記式(r−1)で表される基、
tは0〜6の整数であり、j、k、n、R
1、Rf
1およびRf
2は、式(a)における定義と同じである。
【0033】
jおよびkがそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキレン基である化合物として、下記化合物が挙げられる。
【化8】
【0034】
また、R
2が水素原子であり、jが式(r)で表される基で置換された化合物として、下記化合物が挙げられる。
【化9】
【0035】
化合物(a2−1)としては、合成が容易であることから、jおよびkがそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキレン基である化合物が好ましく、中でも、原料が入手しやすいことから、jおよびkがいずれも炭素数2のアルキレン基である化合物が特に好ましい。
【0036】
本発明の化合物(a)の製造方法は、特に限定されないが、一例として、たとえば以下の2工程からなる方法で製造することができる。具体的には、各種アミノ酸とフルオロアルキル基含有アルコールとのエステル化反応で対応するアミノ酸エステルを得る第一工程、第一工程で得られたアミノ酸エステルの(メタ)アクリルアミド化により目的とする本発明の化合物(a)を得る第二工程からなる方法である。
【0037】
上記工程について、より具体的に、化合物(a)中のR
2が水素原子かまたは−(CH
2)
n−COO−Q
1−Rf
1と同じ−(CH
2)
m−COO−Q
2−Rf
2である場合を例にすれば、以下のスキームで示される。
第一工程:下記化合物(1)(アミノ酸)と、下記化合物(2)(アルコール)を、酸触媒(3)の存在下、水と共沸可能な溶媒中で、生成する水を除去しながら還流を行い、化合物(4)(アミノ酸エステル)を生成する工程。
第二工程:生成したアミノ酸エステル(4)を、塩基の存在下(メタ)アクリル酸クロライド(5)と反応させて、目的化合物(a)を得る工程。
NHJ
1−CK
1R
3 (CH
2)
n−COOH (1)
(式中、R
3:Hまたは−(CH
2)
n−COOH)
HO−Q
1−Rf
1 (2)
X
−H
+ (3)
X
− +NJ
1H
2−CK
1R
2−(CH
2)
n −COO−Q
1−Rf
1 (4)
CH
2=CR
1−COCl (5)
CH
2=CR
1−CONJ
1−CK
1R
2−(CH
2)
n−COO−Q
1−Rf
1(a)
Xは酸触媒(3)の共役塩基であり、J
1およびK
1は相互に独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基。
ただし、式中の−NJ
1−CK
1−部分は、下記式(s11)または(s21)で表される構造であってもよい。
【化10】
j
1およびk
1:相互に独立して、単結合または炭素数1〜3のアルキレン基。ただしj
1およびk
1が同時に単結合になることはない。
なお、目的化合物(a)中のR
2が−(CH
2)
n −COO−Q
1−Rf
1と異なる−(CH
2)
m−COO−Q
2−Rf
2である場合には、アミノ酸(1)中のR
3が−(CH
2)
m−COOH(m≠n)であるか、および/または、アルコール(2)とともに他のアルコールHO−Q
2−Rf
2を併用することにより、上記と同様のスキームにより得ることができる。
【0038】
[第一工程]
第一工程において、化合物(1)としては各種アミノ酸が挙げられ、和光純薬工業株式会社や東京化成工業株式会社等から市販品として入手できる。中でも化合物(a1)を得る場合は、グリシン、β−アラニン、アスパラギン酸が好ましい。また、化合物(a2)を得る場合は、イソニペコチン酸が好ましい。
化合物(2)のアルコールは和光純薬工業株式会社や東京化成工業株式会社等から市販品として入手可能である。また、公知の方法(特公昭40−1905、特公昭58−39135、特公昭52−8807など)にて合成することができる。化合物(2)としては、C
6F
13−(CH
2)
2−OH、C
4F
9−(CH
2)
2−OH、C
2F
5−(CH
2)
2−OH、(CF
3)
2CH−OHが挙げられ、C
6F
13−(CH
2)
2−OHが好ましい。
化合物(3)は和光純薬工業株式会社や東京化成工業株式会社等から市販品として入手可能である。化合物(3)としては、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸などが挙げられ、p−トルエンスルホン酸が好ましい。
【0039】
第一工程は溶媒中で反応を行うことが好ましい。
溶媒としては、水と共沸可能な炭化水素系溶剤が好ましい。
炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、シクロヘキサンが好ましい。
溶媒の使用量については、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物(1)に対して質量で0.2〜20倍量の範囲である。
反応は還流下で生成する水を除去しながら行うことが好ましい。生成する水を除去できるようにDean−Stark装置などを取り付けた反応器で行うことが好ましい。
【0040】
化合物(2)の使用量は、R
3が水素原子の場合は化合物(1)に対して、0.7〜10当量が好ましく、より好ましくは0.9〜5当量の範囲内である。R
3が「−(CH
2)
m−COOH」の場合、化合物(2)の使用量は化合物(1)に対して1.5〜20当量が好ましく、より好ましくは1.8〜10当量である。
化合物(3)の使用量は、化合物(1)に対して、1当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物(1)に対して1.01〜3当量の範囲である。
【0041】
[第二工程]
第二工程において、化合物(5)は和光純薬工業株式会社や東京化成工業株式会社などから試薬として入手可能である。また、実験化学講座(丸善)等、有機合成の成書に記載されている酸ハロゲン化物の合成方法にて得ることもできる。
化合物(5)の使用量は化合物(4)に対して0.7〜10当量が好ましく、1.0〜5当量の範囲がより好ましい。
第二工程は塩基の存在下反応を行う。塩基としては、トリエチルアミンなどの第三級アミン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、トリメチルアミンなどの第三級アミンが好ましい。
【0042】
第二工程は溶媒を使用して反応を行ってもよい。
溶媒は反応に影響しなければ各種用いることができる。例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、ジエチルエーテル、DMF、DMSO等の非プロトン性極性溶剤、各種フッ素系溶剤などが挙げられる。中でも溶解性が優れるという観点から塩化メチレン、クロロホルム等が好ましい。
【0043】
溶媒の使用量については、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物(4)に対して質量で0.1〜20倍量の範囲である。
反応は発熱的に進行するので、氷水などで反応器を冷却しながら、化合物(4)をゆっくりと滴下することが好ましい。その後発熱が見られなくなった後は、室温付近で反応を行うことが好ましい。具体的には5℃〜25℃の範囲が好ましい。
【0044】
本発明の重合体は、化合物(a)から導かれる重合単位(A)を含む重合体である。
なお、化合物(a)から導かれる重合単位(A)は、次のように表すことができる。
【化11】
上記重合単位(A)は、化合物(a)の単種から導かれるものでも、2種以上の組合わせから導かれるものであってもよい。本発明の重合体は、重合単位(A)以外の重合単位を含んでいても良い。
【0045】
なお本発明において、重合体が複数の化合物から導かれる重合単位を含む場合、各重合単位の質量比率は、重合に使用した原料がすべて重合単位を構成するとみなした値である。したがって、たとえば重合単位(A)の質量比率(全重合単位質量に対する、そこに含まれる重合単位(A)の質量の百分率)は、実質的に、重合に使用した化合物(a)質量の、重合原料化合物の全質量に対する割合として求められる。重合体における他の重合単位の質量比率も同様に求められる。
本発明の重合体において、重合単位(A)の含有量は5〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましく、30〜100質量%であることが特に好ましい。本発明の重合体における重合単位(A)の含有量が上記範囲内であると、本発明の重合体を含む表面処理剤の撥油性能が良好になるからである。また、10〜100質量%、より好ましくは30〜100質量%の範囲であると、撥油性能に加えて、本発明の重合体を含む樹脂付着防止剤の樹脂付着防止性能も良好になるからである。
本発明の重合体において、重合単位(A)は、一種でも二種以上であっても良い。重合単位(A)を二種以上含む場合は、その合計量が上記範囲内であると好ましい。
【0046】
他の重合単位は、化合物(a)と共重合しうる化合物から導かれる重合単位であれば特に限定されない。例えば、以下の構造を有するフルオロ(メタ)アクリレート(化合物(b))から導かれる重合単位(B)や、他の重合性化合物(c)から導かれる重合単位(C)が挙げられる。
【0047】
CH
2=CR
b1−COO−Q
b1−Rf
b1 (b)
式中の記号は以下の意味を示す。
R
b1:水素原子またはメチル基、
Rf
b1:炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基、
Q
b1:単結合または2価の連結基。
【0048】
化合物(b)において、Rf
b1としては、前記化合物(a)のRf
1およびRf
2と同様の構造が挙げられる。Rf
b1としては、撥油性能および樹脂付着防止性能により優れるという観点から、−C
6F
13、−C
4F
9であるのが好ましい。
【0049】
化合物(b)において、Q
b1の二価の連結基としては、前記化合物(a)のQ
1およびQ
2と同様の構造が挙げられる。Q
b1としては、単結合、直鎖状または分岐状のアルキレン基が好ましい。
【0050】
本発明の重合体において、重合単位(B)の含有量は0〜95質量%あることが好ましく、0〜90質量%であることがより好ましく、0〜70質量%であることが特に好ましい。本発明の重合体における重合単位(B)の含有量が上記範囲内であると、本発明の重合体を含む表面処理剤の撥油性能および樹脂付着防止性能が良好になるからである。
本発明の重合体において、重合単位(B)は、一種でも二種以上であっても良い。重合単位(B)を二種以上含む場合は、その合計量が上記範囲内であると好ましい。
【0051】
化合物(b)としては、下記化合物が好ましい。
CH
2=CH−COO−CH
2−CF
3
CH
2=C(CH
3)−COO−CH
2−CF
3
CH
2=CH−COO−CH
2−CF
2CF
3
CH
2=C(CH
3)−COO−CH
2−CF
2CF
3
CH
2=CH−COO−CH(CF
3)
2
CH
2=C(CH
3)−COO−CH(CF
3)
2
CH
2=CH−COO−(CH
2)
2−(CF
2)
4F
CH
2=C(CH
3)−COO−(CH
2)
2−(CF
2)
4F
CH
2=CH−COO−(CH
2)
2−(CF
2)
6F
CH
2=C(CH
3)−COO−(CH
2)
2−(CF
2)
6F
CH
2=CH−COO−(CH
2)
2−(CF
2)
2CF(CF
3)
2
CH
2=C(CH
3)−COO−(CH
2)
2−(CF
2)
2CF(CF
3)
2
【0052】
化合物(c)は、重合性基を有し、化合物(a)および化合物(b)以外の化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸系化合物(c1)、スチレン系化合物(c2)、さらに他の重合性化合物(c3)が挙げられる。このような化合物(c)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0053】
上記(c1)としては、アクリル酸、メタクリル酸および下記式で表わされる(メタ)アクリレートが挙げられる。
CH
2=C(R
c1)−COO−Q
c1−R
c2
式中、R
c1:水素原子またはメチル基であり、Q
c1:単結合または2価の連結基であり、R
c2:−OH、−Si(OAk)
3(Akは炭素数1〜3の直鎖状または分岐状のアルキル基)、−CH
3、−CH
2CH
2N(CH
3)
2、−(CH
2)
mH(m=2〜20)、−CH
2CH(CH
3)
2、−CH
2−C(CH
3)
2−OCO−Ph、−CH
2Ph、−CH
2CH
2OPh、−CH
2N
+(CH
3)
3Cl
−、−(CH
2CH
2O)
mCH
3(m=2〜20)、−(CH
2)
2−NCO、
【化12】
である。
また、Q
c1の二価の連結基としては、前記化合物(a)のQ
1およびQ
2と同様の構造が挙げられる。Q
c1としては、単結合、直鎖状または分岐状のアルキレン基が好ましい。
【0054】
上記(c1)としては、さらに、アクリル酸ジエステル等の(メタ)アクリル酸のポリエステルおよび下記式で表わされる化合物なども挙げられる。
CH
2=C(R
c3)−CONR
c4−Q
c2−R
c5
式中、R
c3:水素原子またはメチル基であり、R
c4:−C
mH
2m+1(m=2〜20)または−Hであり、Q
c2:単結合または2価の連結基であり、R
c5:−H、−OH、−COOH、−CH
3、−CH
2CH
2N(CH
3)
2、−(CH
2)
mH(m=2〜20)、−CH(CH
3)
2、−C(CH
3)
3、−C(CH
3)
2SO
3H、−CH
2N
+(CH
3)
3Clまたは−Phである。
【0055】
上記(c2)としては、下記式で表わされるスチレン系化合物が挙げられる。
【化13】
式中、R
c6:−H、CH
3、−Cl、−CHO、−COOH、−CH
2Cl、−CH
2NH
2、−CH
2N(CH
3)
2、−CH
2N
+(CH
3)
3Cl
−、−CH
2N
+H
3Cl
−、−CH
2CN、−CH
2COOH、−CH
2N(CH
2COOH)
2、−CH
2SH、−CH
2SO
3Naまたは−CH
2OCOCH
3である。
【0056】
さらに他の重合性化合物(c3)としては、上記(c1)および(c2)以外のビニル化合物、たとえば塩化ビニル(CH
2=CHCl)、アクリロニトリル(CH
2=CHCN)などが挙げられる。
また、重合性化合物(c3)としては、以下のようなエポキシ基を有する化合物も挙げられる。
【化14】
【0057】
基材への密着性が向上し、重合体の濃度が低くても性能を発現しやすいことから、化合物(c)としては、下記化合物が好ましい。
CH
2=CH−CONH−CH
2−CH
2−OH
CH
2=C(CH
3)−CONH−CH
2−CH
2−OH
CH
2=CH−CONH−CH
2−OH
CH
2=C(CH
3)−CONH−CH
2−OH
CH
2=CH−COO−CH
2−CH
2−OH
CH
2=C(CH
3)−COO−CH
2−CH
2−OH
【0058】
本発明の重合体において、重合単位(C)の含有量は0〜95質量%あることが好ましく、0〜70質量%であることがより好ましい。本発明の重合体における重合単位(C)の含有量が上記範囲内であると、本発明の重合体を含む表面処理剤の撥油性能および樹脂付着防止性能が良好になるからである。
本発明の重合体において、重合単位(C)は、一種でも二種以上であっても良い。重合単位(C)を二種以上含む場合は、その合計量が上記範囲内であると好ましい。
【0059】
本発明の重合体は、重合形態などについては特に制限されない。重合形態は、ランダム、ブロック、グラフトなどのいずれでもよい。
【0060】
本発明の重合体を得るには、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの各種の重合方法を採用し得る。重合の開始源としては特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等の通常の開始剤が利用できる。水系媒体中での乳化重合の場合はアゾ開始剤や過酸化物系の開始剤のうち水溶性のものを用いることが好ましい。
【0061】
本発明の重合体の分子量は特に限定されないが、質量平均分子量(Mw)で5000〜200万であることが好ましく、1万〜150万であることが好ましい。分子量がこのような範囲であると、動的な撥油性が良好であるため好ましい。
【0062】
本発明の表面処理剤は、本発明の重合体を含む。本発明の表面処理剤は溶媒を含んでもよい。重合体を溶解・分散させる溶媒であれば特に限定はされず、水や炭化水素系・フッ素系溶媒など各種の溶媒を使用できる。それらの溶媒は単独でも混合でも構わない。中でもフッ素系溶媒が好ましい。フッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)又はハイドロフルオロエーテル(HFE)が挙げられる。使用可能なフッ素系溶媒の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
m−キシレンヘキサフルオリド(以下、m−XHFと記す。)
p−キシレンヘキサフルオリド
CF
3CH
2CF
2CH
3
CF
3CH
2CF
2H
C
6F
13OCH
3
C
6F
13OC
2H
5
C
3F
7OCH
3
C
3F
7OC
2H
5
C
6F
13H
CF
2HCF
2CH
2OCF
2CF
2H
CF
3CFHCFHCF
2CH
3
CF
3(OCF
2CF
2)
n(OCF
2)
mOCF
2H
C
8F
17OCH
3
C
7F
15OCH
3
C
4F
9OCH
3
C
4F
9OC
2H
5
C
4F
9CH
2CH
3
CF
3CH
2OCF
2CF
2CF
2H
C
6F
13C
2H
5
(上記例示中、m、nはそれぞれ独立に1〜20を表す。)
【0063】
本発明の表面処理剤は、撥油性、防汚性、潤滑性(低摩擦性)、非粘着性、離型性、表面移行性等の機能を、本発明で処理された物品(被処理物)に付与する事ができる。
【0064】
本発明の表面処理剤は、各種材料の処理に適用可能である。例えば電気部品(電子回路や基板、電子部品等)、摺動部品(モーター、時計、HDDなど)、繊維製品、金属部品(金型など)、石材、フィルター、紙類などが挙げられる。中でも電気部品、摺動部品の処理に用いるのが好ましく、特にコンデンサなどの電子部品の処理に用いるのが好ましい。
【0065】
本発明の表面処理剤の利用用途としては、例えば、撥油剤、はんだ用フラックス這い上がり防止剤、オイルバリア剤、樹脂付着防止剤、防湿コート剤、防錆剤、防汚剤、離型剤、などがあげられるがこれらに限定されない。中でも、化合物(a1)は樹脂付着防止剤またははんだ用フラックス這い上がり防止剤として、化合物(a2)ははんだ用フラックス這い上がり防止剤として用いることが好ましい。
【0066】
本発明の表面処理剤は、組成物の安定性、撥油性能または外観等に悪影響を与えない範囲であれば、前記した以外の他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば被膜表面の腐食を防止するためのpH調整剤、防錆剤、組成物を希釈して使用する場合に液中の重合体の濃度管理をする目的や未処理部品との区別をするための染料、染料の安定剤、難燃剤、消泡剤、または帯電防止剤等が挙げられる。
【0067】
本発明の表面処理剤の濃度は、用途により使い分けることが好ましい。防水・防湿コート剤では、本発明の重合体の濃度が1〜20質量%であるのが好ましい。潤滑オイルの染み出し防止剤や樹脂付着防止剤では、本発明の重合体の濃度が0.01〜5質量%であるのが好ましい。はんだ用フラックス這い上がり防止剤では、本発明の重合体の濃度が0.01〜1質量%であるのが好ましい。
本発明の表面処理剤における本発明の重合体の濃度は最終的濃度であればよく、例えば本発明のはんだ用フラックス這い上がり防止剤を直接調製する場合には、重合直後の重合体を含む溶液中の重合体濃度(固形分濃度)が1質量%を超えていてもなんら差し支えない。高濃度の重合体を含む溶液は、最終的に上記好ましい濃度となるように適宜に希釈することができる。希釈した溶液は、そのまま表面処理剤とすることができる。
【0068】
本発明の物品は、本発明の表面処理剤を物品に塗布するなどして、物品の表面の少なくとも一部に本発明の重合体を含む被膜を有するものである。
該被膜は、本発明の表面処理剤から溶媒が除去されて形成されるものであり、主として、本発明の重合体からなるものである。ここで、主としてとは、該被膜が、本発明の重合体のみから形成されていてもよく、前記のように悪影響を与えない範囲で他の成分を含んでいてもよいことを意味する。
該被膜における、本発明の重合体の含有量は、95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。
被覆方法としては一般的な被覆加工方法が採用できる。例えば浸漬塗布、スプレー塗布又はローラー等による塗布等の方法がある。
本発明の表面処理剤の塗布後は、溶媒の沸点以上の温度で乾燥を行うことがより好ましい。無論、被処理物の材質などにより加熱乾燥が困難な場合には、加熱を回避して乾燥すべきである。なお、熱処理の条件は、塗布する組成物の組成や、塗布面積等に応じて選択すればよい。
【0069】
本発明の表面処理剤が、樹脂付着防止剤である場合は、該樹脂付着防止剤を、エポキシ樹脂等の付着を防止したい電子部品の一部(リード線など)に塗布して被膜を形成することができる。
本発明の表面処理剤が、はんだ用フラックス這い上がり防止剤である場合は、該フラックス這い上がり防止剤を、フラックスの這い上がりを防止したい電子部品(コネクタなど)に塗布して被膜を形成することができる。
【0070】
本発明の表面処理剤は、形成する被膜が硬いことが好ましい。被膜が硬いと、各種表面処理剤としての効果を発現しやすいとともに、被膜を物品の表面に形成した後、その物品を切断などの加工をする際に、その切断金型などの部品に本発明の重合体が付着しにくいためである。たとえば、フラックス這い上がり防止剤の場合、被膜形成後に部品を切断する際に、その切断金型に重合体が付着しにくいことが挙げられる。被膜の硬さは様々な方法で評価できるが、一つの評価基準として、ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)が高いものが挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断わりのない限り、以下の実施例の記載において「%」で表示されるものは「質量%」を表すものとする。
以下の実施例および比較例において記号で示す化合物を表1に示す。
【表1】
【0072】
(実施例1) 化合物(a−1)の合成
[第一工程]
300mL四つ口フラスコに2−パーフルオロヘキシルエチルアルコール21.8g(60mmol)とグリシン(和光純薬工業株式会社製)4.5g(60mmol)とp−トルエンスルホン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)11.97g(63mmol)とシクロヘキサン100gを仕込み、生成する水を除去しながら還流を17時間行った。反応液を40℃以下に冷却し、析出した固体を水およびアセトンで洗浄しながら減圧濾過を行った。得られた固体を真空乾燥し、グリシン2−パーフルオロヘキシルエチルエステルp−トルエンスルホン酸塩を白色の固体として27.8g得た。収率は78%であった。
[第二工程]
50mLフラスコに、第一工程で得たグリシン2−パーフルオロヘキシルエチルエステルp−トルエンスルホン酸塩5.8g(10mmol)を塩化メチレン20g中に懸濁し、0℃でトリエチルアミン(和光純薬工業株式会社製)を2.2g(22mmol)滴下した。そこへメタクリル酸クロリド(和光純薬工業株式会社製)1.0g(10mmol)をゆっくりと滴下した。室温で3時間撹拌を行い、水を加えて反応を停止した。2層にわかれた下層を分取し、1%塩酸で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥を行い、減圧濃縮を行うことで目的とする化合物(a−1)を淡黄色透明液体として3.9g(ガスクロマトグラフィー純度94%)得た。
得られた化合物(a−1)の
1H−NMRとGC−MSのデータを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl
3、標準物質:TMS)、σ(ppm):6.30(brs,1H,NHCO),5.78(s,1H,CH
2=C),5.41(s,1H,CH
2=C),4.47(t,2H,J=6.5Hz,O−CH
2),4.14−4.10(m,2H,N−CH
2−COO−CH
2),2.60−2.43(m,2H,CH
2−CF
2),2.0(s,3H,CH
3)
GC−MS M
+=489
【0073】
(実施例2) 化合物(a−2)の合成
実施例1においてメタクリル酸クロリドをアクリル酸クロリド(和光純薬工業株式会社製)とした以外は同様に合成し、白色固体として化合物(a−2)を得た。
得られた化合物(a−2)の
1H−NMRとGC−MSのデータを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl
3、標準物質:TMS)、σ(ppm):6.34(dd,1H,J=17.0,1.4Hz,CH
2=C)6.17(dd,1H,J=17.1,10.1,CH
2=C),6.12(s,1H,NH),5.72(dd,1H,J=10.2,1.4Hz,CH
2=CH),4.49(t,2H,J=6.5Hz,O−CH2),4.16(d,2H,J=5.3Hz,N−CH
2−CO),2.43−2.60(m,2H,CH
2−CF
2)
GC−MS M
+=475
【0074】
(実施例3) 化合物(a−3)の合成
実施例1においてグリシンをβ−アラニン(和光純薬工業株式会社製)とした以外は同様に合成し、淡黄色透明液体として化合物(a−3)を得た。
得られた化合物(a−3)の
1H−NMRとGC−MSのデータを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl
3、標準物質:TMS)、σ(ppm):6.39(brs,1H,NH)5.69(s,1H,CH
2=C),5.33(s,1H,CH
2=C),4.42(t,2H,J=6.5Hz,O−CH
2)3.63−3.51(m,2H,N−CH
2),2.62(t,2H,J=5.9Hz,CH
2−CO),2.58−2.43(m,2H,CH
2−CF
2),1.95(s,3H,CH
3)
GC−MS M
+=503
【0075】
(実施例4) 化合物(a−4)の合成
実施例1においてグリシンを4−アミノ酪酸(東京化成工業株式会社製)とした以外は同様に合成し、淡黄色透明液体として化合物(a−4)を得た。
得られた化合物(a−4)の
1H−NMRとGC−MSのデータを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl
3、標準物質:TMS)、σ(ppm):6.01(brs,1H,NH),5.71(s,1H,CH
2=C),5.33(s,1H,CH
2=C),4.39(t,2H,J=6.5Hz,O−CH
2),3.40−3.27(m,2H,N−CH
2),2.56−2.23(m,4H,CH
2−CO,CH
2−CF
2),1.96−1.83(m,5H,CH
3,C−CH
2−C)
GC−MS M
+=517
【0076】
(実施例5) 化合物(a−5)の合成
実施例1においてグリシンを6−アミノヘキサン酸(和光純薬工業株式会社製)とした以外は同様に合成し、白色固体として化合物(a−5)を得た。
得られた化合物(a−5)の
1H−NMRとGC−MSのデータを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl
3、標準物質:TMS)、σ(ppm):5.98(brs,1H,NH),5.67(s,1H,CH
2=C),5.31(s,1H,CH
2=C),4.38(t,2H,J=6.5Hz,O−CH
2),3.35−3.28(m,2H,N−CH
2),2.56−2.29(m,4H,CH
2−CO,CH
2−CF
2),1.96(s,3H,CH
3)1.72−1.52(m,4H,−CH
2−),1.32−1.43(m,2H,−CH
2−)
GC−MS M
+=545
【0077】
(実施例6) 化合物(a−6)の合成
実施例1においてグリシンをL−アスパラギン酸(和光純薬工業株式会社製)4.0g(30mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物を6.0g(32mmol)とした以外は同様に合成し、淡黄色固体として化合物(a−6)を得た。
得られた化合物(a−6)の
1H−NMRとGC−MSのデータを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl
3、標準物質:TMS)、σ(ppm):6.80(d,1H,J=7.7Hz,NH),5.77(s,1H,CH
2=C),5.41(s,1H,CH
2=C),4.95−4.89(m,1H,CH),4.59−4.32(m,4H,O−CH
2),3.13−2.92(m,2H,CH
2−CO),2.57−2.38(m,4H,CH
2−CF
2)1.97(s,3H,CH
3)
GC−MS M
+=893
【0078】
(実施例7) 化合物(a−7)の合成
実施例6においてL−アスパラギン酸をL−グルタミン酸(和光純薬工業株式会社製)とした以外は同様に合成し、淡黄色粘ちょう液体として化合物(a−7)を得た。
得られた化合物(a−7)の
1H−NMRとGC−MSのデータを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl
3、標準物質:TMS)、σ(ppm):6.66(d,1H,J=7.5Hz,NH),5.78(s,1H,CH
2=C),5.41(s,1H,CH
2=C),4.68(td,1H,J=7.8,5.0Hz,CH),4.53−4.37(m,4H,O−CH
2),2.60−2.38(m,6H,CH
2−CF
2,CH
2−CO),2.33−2.22(m,1H,−CH
2−)2.13−2.01(m,1H,−CH
2−)
GC−MS M
+=907
【0079】
(実施例8) 化合物(a−8)の合成
実施例6においてメタクリル酸クロリドをアクリル酸クロリド(和光純薬工業株式会社製)とした以外は同様に合成し、白色固体として化合物(a−8)を得た。
得られた化合物(a−8)の
1H−NMRとGC−MSのデータを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl
3、標準物質:TMS)、σ(ppm):6.71(d,1H,J=7.9Hz,NH),6.36−6.12(m,2H,CH
2=CH),5.73−5.65(m,1H,CH
2=C),4.99−4.95(m,1H,CH),4.59−4.31(m,4H,O−CH
2),3.13−2.91(m,2H,CH
2−CO),2.57−2.39(m,4H,CH
2−CF
2)
GC−MS M
+=879
【0080】
(実施例9) 化合物(a−9)の合成
実施例1においてグリシンをイソニペコチン酸(東京化成工業株式会社製)とした以外は同様に合成し、淡黄色透明液体として化合物(a−9)を得た。
得られた化合物(a−9)の
1H−NMRとGC−MSのデータを以下に示す。
H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl
3、標準物質:TMS)、σ(ppm):6.62−6.53(m,1H,=CH
2−CO),6.30−6.23(m,1H,CH
2=C),5.71−5.67(m,1H,CH
2=C),4.49−4.40(m,3H,O−CH
2,N−CH
2−),3.98−3.94(m,1H,N−CH
2−),3.21−2.86(m,2H,N−CH
2−),2.65−2.40(m,3H,CH
2−CF
2,CH−CO)2.34−1.62(m,4H,−CH
2−)
GC−MS M
+=529
【0081】
(実施例10)
実施例1で得られた化合物(a−1)1gとm−XHF2gと開始剤V−601(和光純薬工業株式会社製ジメチル2,2’-アゾビス(2−メチルプロピオナート))0.01gを密閉容器に仕込み70℃で18時間重合反応を行った。反応後、メタノールにて再沈精製を行い、白色固体として重合体(1)を得た。
化合物(a−1)に代えて表2に記載の各化合物をモノマー質量比率で用いた以外は同様にして重合反応を行い、それぞれ白色固体として重合体(2)〜(18)を得た。
【0082】
(実施例11)
実施例2で得られた化合物(a−2)2.94gとHEAA0.06gとm−XHF12gと開始剤V−601(和光純薬工業株式会社製ジメチル2,2’-アゾビス(2−メチルプロピオナート))0.03gを密閉容器に仕込み70℃で18時間重合反応を行った。反応後、メタノールにて再沈精製を行い、白色固体として重合体(19)を得た。
【0083】
(実施例12)
実施例6で得られた化合物(a−6)4.98gとHEAA0.02gとm−XHF10gと開始剤V−601(和光純薬工業株式会社製ジメチル2,2’-アゾビス(2−メチルプロピオナート))0.03gを密閉容器に仕込み70℃で18時間重合反応を行った。反応後、メタノールにて再沈精製を行い、白色固体として重合体(20)を得た。
【0084】
(実施例13)
前記化合物(a−6)に代えて化合物(a−8)を用いた以外は実施例12と同様にして重合反応を行い、白色固体として重合体(21)を得た。
【0085】
【表2】
【0086】
(比較製造例1)
C6FMAの単独重合である以外は実施例8と同様に重合を行い、白色の固体として比較重合体(1)を得た。
【0087】
(比較製造例2)
C6FAの単独重合である以外は実施例8と同様に重合を行い、白色の固体として比較重合体(2)を得た。
【0088】
(比較製造例3)
CmFMA22.5gと、m−XHF52.5gと開始剤AIBN18.8mgとを密閉容器に仕込み、70℃で15時間重合反応を行った。反応後m−XHFを加え17%の溶液として比較重合体(3)を得た。
なお、比較製造例3で使用されたアルキル基の平均炭素数が9の2−パーフルオロアルキルエチルメタクリレート中、アルキル基の炭素数が6の2−パーフルオロアルキルエチルメタクリレートの含有量(GC分析による。)は、2%であった。
【0089】
(実施例14)
実施例10〜実施例13で得られた各重合体(1)〜(21)を、それぞれm−XHFで希釈し、1%濃度の各溶液を調製し、表面処理剤(1)〜(21)を得た。
【0090】
(比較例1〜3)
比較製造例1〜3で得られた比較重合体(1)〜(3)について実施例14と同様に1%濃度の溶液を調製し、比較処理剤(1)〜(3)を得た。
【0091】
得られた表面処理剤(1)〜(21)および比較処理剤(1)〜(3)について、動的接触角の測定および樹脂付着防止性能の評価を行なった。
<動的接触角測定方法>
表面処理剤(1)〜(21)および比較処理剤(1)〜(3)を常温とし、各々にガラス板を浸漬した。そして1分後に取り出し約120℃で5分間乾燥させ、被膜を形成させた。
次に各々の処理剤の被膜を形成した各ガラス板の被膜上に、n−ヘキサデカン(n−HD)、またはn−ブチルグリシジルエーテル(BGE)をそれぞれ20μl滴下し、ガラス板を傾斜させて動的接触角を測定した。接触角の測定には自動接触角計OCA−20[dataphysics社製]を用いた。液滴が転落し始める時のガラス板の傾斜角度を転落角、転落しているときの前進の角を前進角、後退の角を後退角とした。評価結果を表3に示す。
前進角・後退角が大きいほど、転落角が小さいほど撥性を示す。また、表中の「−」は測定不能であったことを意味する。
【0092】
<樹脂付着防止性能の評価>
長さが約5cmの錫めっきしたリード線を用意し、各々のリード線の3cm以上の部分を表面処理剤(1)〜(21)および比較処理剤(1)〜(3)の各々に1分間浸漬し、被膜を形成した。
次に、約120℃で10分間乾燥させた後、よく攪拌したエポキシ樹脂組成物にリード線の被膜形成部分の2cmを浸漬した。そして、1mm/sのスピードで引き上げ、約25度の室内で垂直な状態で保持した。エポキシ樹脂組成物が全く垂れず、浸漬した2cmの部分にエポシキ樹脂組成物が付着したままであったものを「×」、これに対してエポキシ樹脂組成物がリード線の末端まで落ちきったものを「○」、半分以上落ちてきたが末端まで落ちなかったものを「△」とした。結果を表3に示す。
なお、ここでのエポキシ樹脂組成物は、主剤としてペルコートCE−30(ペルノックス株式会社製)100質量部と、希釈剤としてペルノックスSP−30(ペルノックス株式会社製)10質量部を配合して調合したものを用いた。
【0093】
【表3】
【0094】
(実施例15)
実施例10〜実施例13で得られた重合体(2)、(6)、(8)、(9)、(16)〜(21)をそれぞれ表に記載の組成の溶剤および濃度で希釈し、表面処理剤(22)〜(39)を得た。
(比較例4〜7)
比較製造例1、2で得られた比較重合体(1)、(2)を表4に記載の組成の溶剤および濃度で希釈し、比較処理剤(4)〜(7)を得た。
【0095】
得られた表面処理剤(22)〜(39)および比較処理剤(4)〜(7)について、IPAに対する接触角を測定し、撥IPA性の評価を行なった。結果を表4に示す。
接触角の測定方法は以下のとおりである。なお、IPAの接触角は55度以上、好ましくは60度以上であればフラックス這い上がり防止剤としては良好である。
<接触角の測定>
ガラス板を表面処理剤(22)〜(39)の各々に、常温で1分間浸漬後、取出して室温で乾燥させて、這い上がり防止剤の被膜を処理した。ガラス板に、2−プロパノール(IPA)を滴下して接触角の測定を行った。接触角の測定には、自動接触角計OCA−20[dataphysics社製]を用いた。
【0096】
【表4】
【0097】
実施例10および比較製造例1〜3で得られた重合体(2)、(6)、(8)、(9)および比較重合体(1)〜(3)について示差走査熱量計DSC−50((株)島津製作所製)を用いて、昇温速度10℃/minでガラス転移点(Tg)と融点(Tm)の測定を行った。結果を表5に示す。
【0098】
【表5】
【0099】
上記のように、本発明の化合物(a)から導かれる重合体を含む表面処理剤は、動的接触角が従来のパーフルオロアルキル基の炭素数が8以上のものと同等であった。このことは、本発明が生体及び環境へのリスクを大きく低下させながらも、高い性能を有する撥油剤の提供を可能にしたことを示す。
また、該表面処理剤はエポキシ樹脂に含まれる成分のひとつであるBGEに対する撥性および樹脂付着防止性能が従来のものと同等であった。このことは、本発明が生体及び環境へのリスクが大きく低下させながらも、高い性能を有する樹脂付着防止剤の提供を可能にしたことを示す。
また、該表面処理剤は、高い撥IPA性を有し、特に低濃度においても高い撥IPA性を維持できることが分った。このことは、被膜による接触不良などを起こし難いとともに高い撥IPA性を有する、高い性能を有するフラックス這い上がり防止剤の提供を可能にしたことを示す。
また、本発明の表面処理剤は、本発明の化合物(a)から導かれる重合体が高いTgおよびTmを有することから、被膜が硬いことが分る。このことは、表面処理剤としての性能を発揮しやすいとともに、フラックス這い上がり防止剤として用いた場合など、本発明の重合体を含む被膜を形成した部品の切断処理などにおいて、切断金型への被膜の付着が生じ難く、作業性が向上するという効果を有することを示す。