(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の側孔のそれぞれは、前記ノズルの縦方向軸線に対して、25°から65°までの範囲内の角度をもって外方へ傾斜してなることを特徴とする請求項1記載のバーナー装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
場合によっては、この火炎が上記溶融状態の溜まり内に注入される時点で、溶融状態の溜まりが凝固し始める。この凝固は、溶融状態の溜まりの頂面に向かって上方へ広がり、「コールドフィンガ(cold finger)」として知られているものを形成する。一旦コールドフィンガが溶融状態の溜まり内に形成されると、それは一般的に非可逆的であり、通常は溶融工程の再起動を必要とすることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの態様において、本発明はバーナー装置に関し、この装置は、第1の縦の内腔を有する第1のパイプと、第2の縦の内腔を有する第2のパイプとを備えている。この第2のパイプは、第2のパイプと第1のパイプとの間に環状空間が画成されるように、上記第1の縦の内腔内に配置されている。このバーナー装置は、第2のパイプの先端に形成されたノズルをさらに備えている。このノズルは、それの内部に形成された複数の側孔を備えている。これらの側孔は、上記ノズルの縦方向軸線に対して外方へ傾斜しており、かつ上記第2の縦の内腔と連通している。
【0006】
別の態様において、本発明は浸漬燃焼溶融装置に関し、この装置は、溶融状態の溜まりを収容するための溶融室を備えている。この溶融室はそれの壁に形成されたオリフィスを有する。上述のようなバーナー装置が上記オリフィスに位置決めされて上記溶融室内へ火炎を注入する。
【0007】
本発明のその他の特徴および効果は、下記の説明および添付の請求項から明らかであろう。
【0008】
以下に説明する図面は、本発明の典型的な実施の形態を示すものであって、本発明は他の同様に効果的な実施の形態を容認し得るものであるために、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきものではない。図面は必ずしも等寸ではなく、かつ図面の特徴部分および視る角度によっては寸法が誇張され、あるいは明快かつ簡潔にするために概略化して示されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に示されたいくつかの実施の形態を参照して本発明を説明する。これらの実施の形態を完全に理解するために、数値的な詳細説明がなされている。しかしながら、本発明はこれらの具体的な詳細の一部または全てを用いなくても実施が可能であることが当業者には明らかであろう。他の事例において、本発明を不必要に曖昧にしないために、周知の特徴および/または工程は、詳細には説明していない。さらに、共通または類似の要素には、類似または同一の参照番号が用いられている。
【0011】
図1および
図2は、内側パイプ102および外側パイプ104を備えたバーナー装置100を示す。上記内側パイプ102および外側パイプ104は、例えば304、312またはその他の耐熱性ステンレス鋼、および例えばインコネル(登録商標)等のオーステナイト系ニッケル・クローム鉄合金から作製されるのがよい。外側パイプ104は、内側パイプ102が内部に配置される縦の内腔106を有する。内側パイプ102も縦の内腔108を有する。一般に、内腔106の縦方向軸線は、内腔108の縦方向軸線と一致しており、すなわち外側パイプ104と内側パイプ102は同軸または同心的である。内側パイプ102の外径は外側パイプ104の内径よりも小さく、その結果、外側パイプ104と内側パイプ102との間には環状空間110が存在する。このバーナー装置100の動作時には、ガス、例えば燃料およびオキシダントが環状空間110および内腔108に供給される。一般に、内腔108内のガスは、環状空間110内のガスと異なっている。例えば、天然ガスが内腔108内に流され、酸素が環状空間110内に流されるが、その逆でもよい。内側パイプ102の先端113にはノズル126が設けられている。
図1に示された実施例においては、ノズル126が、バーナー装置100の頂面よりも窪んでいる。ノズル126の上方の空間112は、内腔108および環状空間110からのガスが内部で混合して燃焼する燃焼室112を画成している。
図2に示された実施例においては、ノズル126が、バーナー装置100の頂面に対して同一平面上またはほぼ同一平面上にある。したがって、内腔108内のガスおよび環状空間110内のガスの収束および燃焼は、バーナー装置100の外部で行なわれる。
図1に戻って、燃焼室112を画成する壁127の角部は、図示のように険しい角部でもよいが、隅肉が付いているか、あるいは曲率半径を有しているかの方が多い。
【0012】
図1および
図2を参照すると、内側パイプ102は、これらの実施例における内腔108の底を密閉する閉塞された底端部114を有する。この底端部114の近傍に、内側パイプ102の内腔108に連通する1個のポート116を備えている。外部ガス源(不図示)、例えば燃料源は、内腔108にガスを供給するために、上記ポート116に接続されることができる。別の実施例においては、内腔108内にガスを導入するためのポートが、閉塞された底端部114に設けられていてもよい。外側パイプ104は、内側パイプ102を収容するための開口部120を備えた、部分的に閉塞された底端部118を有する。この底端部118は、外側パイプ104と内側パイプ102との間に広がることによって、環状空間110の底部を密閉している。
図1および
図2に示された実施例においては、ポート116を備えた内側パイプ102の下部122が、外側パイプ104の底端部118の下方に延出している。例えば上記燃焼室112のサイズを調節するために、外側パイプ104の位置に対する内側パイプ102の位置の調節が可能なように、内側パイプ102は、上記開口部120に対して摺動可能であるのがよい。外側パイプ104は、その底端部118の近傍に、環状空間110に連通するポート124を備えている。環状空間110にガスを供給するために、例えばオキシダント源である外部ガス源(不図示)がポート124に接続可能である。あるいは、内腔108にガスを供給するためのポートが底端部118に設けられていてもよい。
【0013】
図3を参照すると、ノズル126(
図1および
図2において内側パイプ102の先端に形成されている)は、中心孔130および複数の側孔132を有するノズル本体128を備えている。孔132はノズル本体128の中心から外れているために「側」孔と呼ばれている。側孔132は、ガス流のためにノズル本体128に設けられている。一つの実施の形態において、中心孔130もガス流のためにノズル本体128に設けられている。別の実施の形態においては、中心孔130が存在しないか、または(
図4Bに示されているように)施栓されており、側孔132のみがガス流のために残されて開口している。ノズル本体128に中心孔130が存在する場合には、この中心孔130はガス流のための開口部として、あるいは紫外線安全センサ等の機器のための容器または通路として機能する。
図5を参照すると、複数の側孔132がノズル本体128の中心129の周りに配置されている。図示の実施の形態においては、複数の側孔132がノズル本体128の中心129からほぼ等距離にある。別の実施の形態においては、複数の側孔132がノズル本体128の中心129から等距離にはない(例えば、線Zがノズル本体128の中心を示している
図4Bを参照されたい)。
図3、
図4Aおよび
図4Bにおいては、側孔132が垂直線(すなわちノズル126の縦方向軸線)Zに対して傾斜している。ノズル126の縦方向軸線は、ノズル本体128の注入口面134からノズル本体128の吐出口面136まで延びる方向を向いており、かつノズル126のほぼ中心の位置を占めている。一つの実施の形態において、各側孔132と垂直線Zとの間の角度αは約25°〜65°の範囲内にある。別の実施の形態において、各側孔132と垂直線Zとの間の角度αが約30°〜60°の範囲内にある。さらに別の実施の形態においては、各側孔132と垂直線Zとの間の角度αが約45°〜50°の範囲内にある。
図4Aに示されている実施の形態においては、各側孔132と垂直線Zとの間の角度αが45°または約45°である。複数の側孔132は、垂直線Zに対して同じ角度傾斜していても、異なる角度傾斜していてもよい。
【0014】
ノズル本体128の注入口面134は内腔108に面しているが、ノズル本体128の吐出口面136は内側パイプ102の外部に面している。
図3および
図4Aにおいて、中心孔130は、ノズル本体128の注入口面134から吐出口面136まで延び、かつ内腔108に連通している。
図3、
図4Aおよび
図4Bにおいて、側孔132は、注入口面134から吐出口面136まで延び、かつ注入口面134において内腔108に連通している。ノズル本体128の吐出口面136において、側孔132および中心孔130が、円形、正方形、長方形または卵形等の如何なる所望の形状を有していてもよい。一つの実施の形態においては、吐出口面136の過熱を軽減または排除するために、
図5に、より明快に示されているように、吐出口面136において側孔132が、例えば卵形等の細長い形状をもって終端している。側孔132が円形の断面形状を有する(あるいは、正方形等のその他の何れかの細長くない断面形状を有する)
図3、
図4Aおよび
図4Bを参照すると、吐出口面136における細長い形状は、側孔132を備えた吐出口面136の部分135を、側孔132の縦方向軸線Lに対して傾斜させる(すなわち、平行でも垂直でもない)ことによって得られている。一つの実施の形態において、上記部分135は、垂直線(すなわち、ノズル126の縦方向軸線)Zに対して水平またはほぼ水平にされていて、吐出口面136のおける側孔132の細長い形状を得ている。
【0015】
図1および
図2を参照すると、環状空間110の断面の流動面積と、ノズル126の断面の流動面積とは、環状空間110内の圧力と内腔108の圧力とが等化されまたはほぼ等化されるように選択されるべきである。例えば、内側パイプ102が天然ガスを運び、環状空間110が酸素を運ぶ場合に、環状空間110の断面の流動面積をノズル126の断面の流動面積の約2倍にして、上述の圧力の等化を可能にすることができる。ノズル126の断面の流動面積は、側孔132の断面の流動面積と、存在してガス流のための開口部として用いられる場合の中心孔130の断面の流動面積とを併せることによって決定される。
【0016】
側孔132は、ノズル126から流出する流れを横に広げる目的を果たす。ノズル126の吐出口面136において、広がった流れは環状空間110からの流れと合流して、広がった火炎を形成する。バーナー装置100によって生成された火炎は、ノズル126の外側に設けられた複数の凸部138によってさらに広げられることができる。これらの凸部138は、ノズル126の外側において流れを広げる。凸部138はノズル126上に形成されるか、さもなければノズル126に取り付けられる。一つの実施例において、
図5に、より明快に示されているように、ノズル126上に取り付けられた多角形のフランジ140の角部が凸部138として機能する。これらの角部138は鋭利であっても丸められていてもよい。
図1および
図2に戻ると、凸部138は、ノズル126の吐出口面136の外縁に対して同一平面上にあるか、またはほぼ同一平面上にあるがために、凸部138によって提供された流れの拡張がノズル126の吐出口面136に十分に近くで生じ、バーナー装置100によって生成された火炎の質に影響を与える。上述のように、ノズル126は、短い、広い火炎がバーナー装置100によって生成されるのを可能にする。この短い、広い火炎により、バーナー装置100が浸漬燃焼溶融に用いられるときに、コールドフィンガの生成を排除または軽減させることができる。火炎の中心部に低圧領域が形成されないようにするためには、バーナーの火炎が広がり過ぎないようにすることが重要である。側孔132のサイズおよび角度、存在する場合の中心孔130のサイズ、ならびに、存在する場合の凸部のサイズおよび位置によって火炎の拡張の少なくとも一部が決定される。
【0017】
図1および
図2に戻って、対称的な火炎を提供しかつ維持するためには、内側パイプ102が、外側パイプ104の縦の内腔106内の中心に位置決めされていることが好ましい。このことは、内側パイプ102の外部に結合され得る1個または複数の中心保持部材142によって達成される。これらの中心保持部材142は、バーナー装置の作動時に内側パイプ102が外側パイプ104に対して固定された位置に留まることを確実にするために、比較的剛直であることが好ましい。一つの実施例において、
図6に示されているように、各中心保持部材142は、内側パイプ102上に形成されたテーパー付きスロット144と、このテーパー付きスロット144内に配置された調整可能な楔146とを含む。
図5に、より明快に示されているように、中心保持部材142は、内側パイプ102の周縁の周りに配置されて、所望の中心保持機能を提供する。
図1および
図2に戻ると、調整可能な楔146は、内側パイプ102から半径方向外方に外側パイプ104の内壁面まで延びている。内側パイプ102を内腔106内の中心に保持することに加えて、調整可能な楔146は、外側パイプ104に対する内側パイプ102の縦方向の位置を規定しかつ調整するのに用いることができる。このような調整は、燃焼室112のサイズを調整するのに用いられる。1本の管状部材を他の管状部材内の中心に保持するための当業者に知られている他の形式の中心保持部材が用いられてもよい。
【0018】
冷却ジャケット150は、内側パイプ102を取り囲む外側パイプ104を取り囲んでいる。この冷却ジャケット150は、外側パイプ104上に取り付けられている。冷却ジャケット150は、外側パイプ104上に取り付けられたときに、あるいは外側パイプ104の近傍に配置されたときに、この冷却ジャケット150と外側パイプ104との間に環状空間154が画成されるようにポケット152を備えている。この環状空間154は、バーナー装置100の動作時に外側パイプ104の周囲に循環せしめられる冷却用ガスが流れる導管として機能する。冷却ジャケット150は、注入流路160と排出流路162とを形成するために環状空間154内に配置された環状仕切り155を備えることができる。上記注入流路160は注入ポート156に連通しているが、上記排出流路162は排出ポート158に連通している。上記仕切り155は、注入流路160内のガスが排出流路162内へ流入することが可能なように環状空間154内に配置されている。この配置において、冷却用ガスは、注入ポート156を通って冷却ジャケット150内に流入し、注入流路160を流れ抜けて排出流路162内へ入り、排出流路162を流れ抜けて排出ポート158へ入り、次いで冷却ジャケット150外へ流出する。一つの実施例において、注入流路160の方が外側パイプ104に接近している状態で、注入流路160および排出流路162の双方が外側パイプ104を取り囲んでいる。
【0019】
図1および
図2を参照すると、オキシダント164は、ポート124を通って環状空間110内に供給され、かつ燃料166は、ポート116を通って内腔108に供給される。燃料はノズル126を通って内側パイプ102を出て、環状空間110内のオキシダントと混合して火炎(不図示)を形成する。このバーナー装置100が動作するにつれて、冷却用ガス168がポート156を通って冷却ジャケット150に供給され、より暖かい冷却用ガスがポート158を通って冷却ジャケット150から排出される。浸漬燃焼溶融においては、バーナー装置100の火炎が溶融状態の溜まり内へ注入される。
図1に示されているバーナー装置100が用いられる場合には、火炎はバーナーの内部で形成され、次いで溶融状態の溜まり内へ注入される。
図2に示されているバーナー装置100が用いられる場合には、火炎はバーナーの外部で形成される。この場合には、火炎が溶融状態の溜まり内で形成されるようにバーナー装置が位置決めされる。上述のように、バーナー装置によって生成された短く幅広い火炎は、この火炎が溶融状態の溜まり内へ注入される地点における凝固を軽減または排除するのに役立つことができる。これは最終的に溶融状態の溜まり内におけるコールドフィンガの形成を回避するのに役立つ。
【0020】
図7は、溶融状態の溜まり174を収容している溶融室172を備えた浸漬燃焼溶融装置171を示す。上記溶融室172は、ホッパー175からバッチ材料を溶融室172内へ供給するためのポート176を備えている。上記バッチ材料は、液状で提供されるのがよい。上記溶融室172も、排気ガスがそこを通って溶融室172を脱出することができるポート178を備えている。この溶融装置171も、流路182によって溶融室172に連結された調整室180を備えている。溶融状態の溜まり174からの溶融された材料は、溶融室172から流路182を通って調整室180へ流れ、次いで溶融装置171を出る。溶融室172の底壁188には複数のオリフィス186が形成されている。これらのオリフィス186は溶融室172の底壁188に示されている。別の構成においては、オリフィス186が溶融室172の側壁190に設けられていてもよい。オリフィス186は溶融室172の壁に対して直角でも傾斜していてもよい。バーナー装置100がオリフィス186内に配置されて、火炎を溶融状態の溜まり174内に注入する。
【0021】
バーナー装置100は、火炎が溶融状態の溜まり174内に注入される地点における凝固を防止して、最終的に溶融状態の溜まり174内におけるコールドフィンガの形成を回避するのに役立つ。コールドフィンガは、バーナーヘッドの上方の溶融状態の溜まりの深さと、バーナーヘッドにおけるガスの速度との組合せによって齎される。もしバーナーヘッドからの火炎が、この領域(すなわち、バーナーヘッドの上方)内で燃焼するのに十分な程速く移動できなければ、この領域内には熱が存在しなくなるであろう。その結果、この領域はそこを流れるガスによって冷却される。その結果、この領域はそこを通過するガスによって冷却され、かつパイプ状に凝固する。この凝固した溶融体に亀裂開口が生じると、そのパイプは指のように見えることが多く、これが「コールドフィンガ」の名前の由来である。
【0022】
以上、限られた数の実施の形態について説明がなされたが、本明細書の恩恵に浴する当業者であれば、上述された本発明の範囲から離れることなしに他の種々の実施の形態が考えられることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるべきものである。