【文献】
KIMURA R,EFFECTS OF ELEVATED PCO2 AND/OR OSMOLALITY ON THE GROWTH AND RECOMBINANT TPA PRODUCTION OF CHO CELLS,BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING,米国,WILEY & SONS,1996年10月 5日,V52 N1,P152-160
【文献】
HAN Y,CULTIVATION OF RECOMBINANT CHINESE HAMSTER OVARY CELLS GROWN AS SUSPENDED AGGREGATES IN STIRRED VESSELS,JOURNAL OF BIOSCIENCE AND BIOENGINEERING,NL,ELEVIER,2006年11月 1日,V102 N5,P430-435
【文献】
MULLER,EFFECT OF INCREASING SELENITE CONCENTRATIONS, VITAMIN E SUPPLEMENTATION AND DIFFERENT FETAL CALF SERUM CONTENT ON GPX1 ACTIVITY IN PRIMARY CULTURED RABBIT HEPATOCYTES,JOURNAL OF TRACE ELEMENTS IN MEDICINE AND BIOLOGY,米国,2003年 1月 1日,V17 N3,P183-192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、生産の間に培養がどのように栄養補給されたかに(及び栄養補給された場合に)応じて、市販の基礎培地を使用して増殖した、三つの抗体生産細胞株に対する相対的な力価の強化を示している。細胞株によって生産される抗体を、本明細書では抗体A(空のバー)、B(斜線バー)及びC(塗り潰しバー)と呼ぶ。全ての細胞を明示した通りの栄養補給を有する市販の基礎培地で培養した。使用した基礎培地は、動物成分不含、HEPES添加、L−グルタミン無添加、液状、ろ過滅菌、細胞培養試験済、アウリントリカルボン酸(ATA)添加(抗体A及びCを生産する細胞用)又はATA無添加(抗体B、及び以下に記載する抗体D、E及びFを生産する細胞用)のシグマ(Sigma)C5467 EX−CELL(登録商標) ACF CHO培地であった。
図1A及び1Bの全ての培養は、37℃で行った。培養は、大豆加水分解物、市販の栄養培地濃縮液、又はSP栄養補給剤で栄養補給した。市販の栄養培地は、シグマC1615 CHO 栄養バイオリアクター補助剤(Sigma C1615 CHO Feed Bioreactor Supplement)(シグマアルドリッチ社(Sigma−Aldrich)製、セントルイス、ミズーリ州、米国)であった。抗体力価は、逆相HPLCによって測定した。
【
図1B】
図1Bは、データが大豆加水分解物及びSP栄養補給剤の両者によって栄養補給された細胞に対するものである以外は、
図1Aに示されたのと同じデータを示している。
【
図2A】
図2A−2Dは、種々の抗体に対する相対的な力価強化を示している。
図2A及び2Bは、2Lブラウンバイオリアクター(
図2A)及び振盪フラスコ(
図2B)の双方において、培養を大豆加水分解物か又はSP栄養補給剤で栄養補給したかに応じた、抗体Dに対する相対力価強化を示している。
図2Cは、培養を大豆加水分解物で栄養補給した基礎栄養補給剤か又はSP栄養補給剤で栄養補給したそれを使用して培養したかに応じた、抗体Eを発現する二つのクローンに対する振盪フラスコにおける相対力価強化を示している。
図2Dは、培養を大豆加水分解で栄養補給した基礎栄養補給剤か又はSP栄養補給剤で栄養補給したそれを使用して培養したかに応じた、抗体Fを発現する10の異なる選抜クローンに対する振盪フラスコにおける相対力価強化を示している。明らかなように、相対力価は、大豆加水分解物で栄養補給した培養に対する力価に対し規準化している。
【
図2B】
図2A−2Dは、種々の抗体に対する相対的な力価強化を示している。
図2A及び2Bは、2Lブラウンバイオリアクター(
図2A)及び振盪フラスコ(
図2B)の双方において、培養を大豆加水分解物か又はSP栄養補給剤で栄養補給したかに応じた、抗体Dに対する相対力価強化を示している。
図2Cは、培養を大豆加水分解物で栄養補給した基礎栄養補給剤か又はSP栄養補給剤で栄養補給したそれを使用して培養したかに応じた、抗体Eを発現する二つのクローンに対する振盪フラスコにおける相対力価強化を示している。
図2Dは、培養を大豆加水分解で栄養補給した基礎栄養補給剤か又はSP栄養補給剤で栄養補給したそれを使用して培養したかに応じた、抗体Fを発現する10の異なる選抜クローンに対する振盪フラスコにおける相対力価強化を示している。明らかなように、相対力価は、大豆加水分解物で栄養補給した培養に対する力価に対し規準化している。
【
図2C】
図2A−2Dは、種々の抗体に対する相対的な力価強化を示している。
図2A及び2Bは、2Lブラウンバイオリアクター(
図2A)及び振盪フラスコ(
図2B)の双方において、培養を大豆加水分解物か又はSP栄養補給剤で栄養補給したかに応じた、抗体Dに対する相対力価強化を示している。
図2Cは、培養を大豆加水分解物で栄養補給した基礎栄養補給剤か又はSP栄養補給剤で栄養補給したそれを使用して培養したかに応じた、抗体Eを発現する二つのクローンに対する振盪フラスコにおける相対力価強化を示している。
図2Dは、培養を大豆加水分解で栄養補給した基礎栄養補給剤か又はSP栄養補給剤で栄養補給したそれを使用して培養したかに応じた、抗体Fを発現する10の異なる選抜クローンに対する振盪フラスコにおける相対力価強化を示している。明らかなように、相対力価は、大豆加水分解物で栄養補給した培養に対する力価に対し規準化している。
【
図2D】
図2A−2Dは、種々の抗体に対する相対的な力価強化を示している。
図2A及び2Bは、2Lブラウンバイオリアクター(
図2A)及び振盪フラスコ(
図2B)の双方において、培養を大豆加水分解物か又はSP栄養補給剤で栄養補給したかに応じた、抗体Dに対する相対力価強化を示している。
図2Cは、培養を大豆加水分解物で栄養補給した基礎栄養補給剤か又はSP栄養補給剤で栄養補給したそれを使用して培養したかに応じた、抗体Eを発現する二つのクローンに対する振盪フラスコにおける相対力価強化を示している。
図2Dは、培養を大豆加水分解で栄養補給した基礎栄養補給剤か又はSP栄養補給剤で栄養補給したそれを使用して培養したかに応じた、抗体Fを発現する10の異なる選抜クローンに対する振盪フラスコにおける相対力価強化を示している。明らかなように、相対力価は、大豆加水分解物で栄養補給した培養に対する力価に対し規準化している。
【
図3】
図3は、培養を大豆加水分解物、SP栄養補給剤、又は双方で栄養補給したかに応じた、37℃(点刻バー)又は34℃(空白バー)で増殖した抗体産生細胞株に対する相対力価を示している。本実験で使用した細胞株は、抗体Aを生産する。37℃で増殖した培養の方が、全ての条件においてより低い力価を有した。データは、大豆加水分解物で栄養補給し37℃で増殖した培養に対し規準化している。
【
図4】
図4は、モノクローナル抗体産生細胞株におけるアポトーシスの、アネキシンV及びヨウ化プロピジウム(PI)のフローサイトメトリー分析を示している。本実験で使用した細胞株は抗体Dを生産する。培養は、大豆加水分解物又はSP栄養補給剤で栄養補給した。試料を、0、6、13及び19日目に採取し、アネキシンV(x軸)及びヨウ化プロピジウム(y軸)で染色し、フローサイトメトリーで分析した。
【
図5】
図5は、大豆加水分解物又はSP栄養補給剤で栄養補給した、モノクローナル抗体産生細胞株(抗体D生産)のフローサイトメトリー解析を示している。0、6、13又は19日目に細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、透過処理し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)−抗ヒトFc抗体で染色した。ルクールら(Lecoeur et al.)、「ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Methods)」、1997年、第209巻:p.111。前方散乱/側方散乱(FSC/SSC)プロフィールからの細胞サイズ及び粒度に基づいてヴァイアブルゲートを調整した。ヒストグラムは、FITC強度の範囲に亘る指定されたFITC強度を発現する細胞数をプロットしており、従って抗体を含む細胞数を反映する。x軸は、対数目盛での細胞数0ないし10
4あり、y軸は等分目盛でのカウント数0ないし200である。
【0015】
本明細書で引用する全ての参考文献は、各個別の刊行物、データベースエントリ(例えば、ジェンバンク配列又はジーンID(GeneID)エントリ)、特許出願、又は特許が、言及によって組み込まれることが明確かつ個別に明示されたかのような同じ範囲について、言及によって組み込まれている。本明細書で言及する核酸及びタンパク質配列に関するジェンバンクの受入番号は、本出願の出願日におけるデータベースの内容を表している。当該データベースエントリは、その後に修正され得るが、ジェンバンクは、全ての配列の前のバージョンの公的記録を日付に応じて保持しており、そのことが当該データベースエントリを特異的配列への明確な照会先としている。
【0016】
さらに、如何なる特許又は特許出願公開公報への言及による組み込みも、当該特許又は特許出願公開公報に収載されている配列中の配列を組み込むことを意図している。例えば、特異的にIL−23p19に結合する抗体を開示する特許又は特許出願公開公報への言及による組み込みは、タンパク質及び核酸の双方の形での、全てのCDR、CDR変異型、可変ドメイン、並びに軽鎖又は重鎖を含む、全ての配列を本明細書に組み込むことを意図している。
【0017】
言及による組み込みに関する本記載は、例え当該引用が言及による組み込みに関する開示された記載に直ちには近接していないとしても、米国特許規則§1.57(b)(2)に従って明確に確認することのできる、各々の及び全ての個別の刊行物、データベースエントリ(例えば、ジェンバンク配列又はジーンIDエントリ)、特許出願、又は特許に関わるために、同規則§1.57(b)(1)に基づいて、出願人によって意図されたものである。言及による組み込みに関する開示された記載が明細書内に含まれていたとしても、何ら言及による組み込みに関するこの一般的な記載を弱めるものではない。本明細書での参考文献の引用は、当該参考文献が関連する先行技術であることを認める意図でも、これらの刊行物又は文書の内容又は日付に関する如何なる承認をも構成するものではない。
I.定義
【0018】
特許請求の範囲を含み本明細書で使用する場合、「a」、「an」、及び「the」等の単語の単数形には、他に文中で明確に断らない限り、その対応する複数形への言及が含まれる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「DMEM/F12」とは、ダルベッコ修正イーグル培地(DMEM)とハムF12基礎培地の1:1混合物を云う。当該培地は、例えば、シグマEX−CELL(登録商標) ACF CHO培地(カタログ番号 C5467)として市販されている。本発明の栄養補助剤(SP栄養補給剤)は、無機塩を低減した(生産中の浸透圧増加を低減する目的)、及びHEPES又はフェノールレッド無添加の、修正型20X DMEM/F12に基づいている。本修正型20X DMEM/F12は、表3の成分1−43を含んでいる。他に断らない限り、本明細書で言及する番号をつけた「成分」は、表3に収載した成分である。SP栄養補給剤は、表3の全49成分を含んでおり、換言すれば、グルタミンを15g/L添加した修正20X DMEM/F12であり、更に示した通り、亜セレン酸ナトリウム(0.3mg/L)及びビタミンE(30.2mg/L)で栄養補給されている。
【0020】
他に断らない限り、表3の番号で言及する成分は、表3に収載した濃度で使用する。
【0021】
実用的な理由から、グルタミン(成分47)は、グルタミン酸の脱アミノ化を避けるために、典型的には栄養補給の直前にSP栄養補給混合物に添加する。加えて、チロシン(成分27)及びシステイン(成分13)は、定刻前に他の成分と混合してはならず、その代り栄養補給時に別々に培養に添加する。理論によって制限されることを意図するのではないが、チロシン及びシステインの溶解度が栄養補給に先立つSP栄養補給剤濃縮液へのそれらの添加を不可能にしているのは、培養期間中それらが溶液から降下する傾向にあるためである。例えば、3回の大量瞬時栄養補給を含む生産工程に関しては、SP栄養補給剤成分である1−47の予備混合溶液を、培養容量の6.7%(生産工程の間添加される全栄養補給である20%の1/3)分を添加することによって、栄養補給の日に培養に添加する。培養液中の全49成分の終濃度が、仮に全49成分が表3に与えられた量を含む予備混合溶液(濃縮液)として添加されていたならば、終濃度がそうであったと実質的に同じになるように、適切な量の亜セレン酸ナトリウムを培養液に添加し、並びに適切な量のビタミンEを培養液に添加する。当該計算は、治療用タンパク質を製造する当業者に公知である。成分48、成分49、及び成分1−47の混合物は培養液に別々に添加するけれども、それらを任意の順に添加することができる。表3に規定した処方は、従って、実際的な利用又は便宜のために、限られた数の成分が別々に添加されるか否かに関わらず、あたかも単一の溶液が調製されたかのように、栄養補給濃縮液の成分が同じ最終結果を達成するために添加され得る、という意味において「仮想的な」処方とみなすことができる。
【0022】
本発明の補助剤には、種々の実施態様において、それが処方された濃度に関わらず、表3にある成分の比率によって定義される組成物が包含される。従って、本発明は、如何なる特定の濃度にも限定されない。本発明は、表3に規定した20X濃縮液型を包含し、1X、1X、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X、11X、12X、13X、14X、15X、16X、17X、18X、19X、20X、21X、22X、23X、24X、25X、26X、27X、28X、29X、30X未満、又は30X超等の任意の濃度を包含することができ、同様に任意の非整数倍の濃縮液も包含する。厳密である必要は無いが、終濃度が約4Xとなるように補助剤が添加されることを意図している。
【0023】
本明細書で報告する「X」濃度とは恣意的なものであり、単に本発明の栄養補助剤が「20X」のDMEM/F12培地に由来するという事実に基づいているだけである。従って、「X」濃度は如何なる望ましい作業濃度又は終濃度を反映しない。培養培地の終濃度4Xが、例えば、完全に適しているかもしれない。この使用は、「1X」がある望ましい「最終」濃度が反応混合物又は培養培地であることがしばしば暗に示されているところの、典型的な使用にふさわしくないかもしれない。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、望ましい生物学的活性を示す如何なる型の抗体にも言及することができる。従って、それは最も広い意味に用いられ、具体的には、それらが望ましい生物学的活性を示す限りは、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多選択性抗体(例えば、二重選択性抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体、等を包含する。
【0025】
本明細書で使用する場合、抗体に言及するときに、用語「その結合フラグメント」又は「その抗体結合フラグメント」は、まだ実質的にその標的に結合する能力を保持する抗体のフラグメント又は誘導体を包含する。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab‘、F(ab’)
2、及びFvフラグメント;二重特異性抗体;線状抗体;一本鎖抗体、例えば、sc−Fv;及び抗体フラグメントから形成された多選択性抗体が含まれる。典型的には、結合フラグメント又は誘導体は、その標的に対する少なくとも10%の親和力、例えば、解離平衡結合乗数(Kd)における変化が10倍以下、を保持している。望ましい生物学的効力を発揮するための十分な親和力を有する如何なる結合フラグメントも有用ではあるが、好ましくは、結合フラグメント又は誘導体は、その結合親和力の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%(又はそれ以上)を保持する。特定された場合、結合フラグメントには、実質的にその生物学的活性を変えない保存アミノ酸の置換による配列変異型が含まれ得ることをも意図している。
【0026】
「IL023アンタゴニスト」とは、IL−23の活性を何らか阻害する分子である。幾つかの実施態様において、本発明の抗体又はその抗体結合フラグメントは、例えば、IL−23のサブユニット又はその受容体に結合することによって、IL−23受容体を介してIL−23のシグナル伝達を阻害するIL−23アンタゴニストである。他の実施態様において、IL−23アンタゴニストは、アンチセンス核酸又はsiRNA等の小分子又はポリヌクレオチドである。
【0027】
「インターロイキン−23」(又は「IL−23」)とは、二つのポリペプチドサブユニット、p19及びp40から成るタンパク質を意味する。p19サブユニット(IL−23p19、IL23Aとしても知られる)の配列は、NCBIタンパク質配列データベース受入番号NP_057668、AAH67511、AAH66267、AAH66268、AAH66269、AAH667512、AAH667512の何れか又はこれらの配列の自然界で見出される変異型に提供されている。p40サブユニット(IL−12p40、IL12Bとしても知られる)の配列は、NCBIタンパク質配列データベース受入番号NP_002178、P29460、AAG32620、AAH74723、AAH67502、AAH67499、AAH67498、AAH67501の何れかに記載されており、又はこれらの配列の自然界で見出される変異型の配列である。これらの配列の全ては、言及によって本明細書にそっくりそのまま組み込まれている。
【0028】
「インターロイキン−23R」又は「IL−23R」とは、NCBIタンパク質配列データベース受入番号NP_653302(IL23R,ジーンID(Gene ID):149233)に記載された通り、ヒトIL−23Rの成熟型又はその自然界で見出される変異型の配列から成る、一本鎖ポリペプチドを意味する。IL−23R配列の変異型について、WO01/23556号及びWO02/29060号に更に開示されている。これらの配列及び文書のすべては、言及によって、本明細書にそのままそっくり組み込まれている。
【0029】
「インターロイキン−12Rβ1」又は「IL−12Rβ1」とは、NCBIタンパク質配列データベース受入番号NP_714912、NP_005526(IL12RB1、ジーンID:35p4)に記載された通り、ヒトIL−12Rβ1の成熟型又はその自然界で見出される変異型の配列から成る、一本鎖ポリペプチドを意味する。これらの配列及び文書のすべては、言及によって、本明細書にそのままそっくり組み込まれている。
【0030】
本明細書において使用する場合、用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体母集団から得られた抗体への言及であり、還元すれば、母集団を構成する個々の抗体は、少量だけ存在し得る自然界で見出される可能な突然変異以外は同一である。単一の抗原エピトープに配向されることより、モノクローナル抗体は高度に特異的である。対照的に、通常の(ポリクローナル)抗体製剤は、典型的には、異なるエピトープに配向する(又は特異的に配向する)多数の抗体を含んでいる。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体母集団から得られたものとしての抗体の特性を示しており、任意の特別な方法による抗体生産を要求するものと解釈してはならない。例えば、本発明に従って使用するモノクローナル抗体は、最初にコーラーら(Kohler et al.)、Nature、1975年、第256巻:p.495、によって開示されたハイブリドーマ法によって作成してもよいし、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816.567号を参照)によって作成してもよい。「モノクローナル抗体」は、例えば、クラックソンら(Clackson et al.)、Nature、1991年、第352巻:p.624−628及びマークスら(Marks et al.)、J.Mol.Biol.、1991年、第222巻:p.581−597、に記載された技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから分離してもよい。
【0031】
本明細書のモノクローナル抗体には、具体的にいうと「キメラ」抗体(免疫グロブリン)が含まれ、ここでキメラ抗体において、それらが望ましい生物学的活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部は、特定の分子種に由来する又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であり、一方、鎖の残部は、別の分子種に由来する又は他の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であり、当該抗体のフラグメントも同様である。米国特許第4,816,567号;モリソンら(Morrison et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1984年、第81巻:p6851−6855。
【0032】
「ドメイン抗体」とは、重鎖の可変領域又は軽鎖の可変領域のみを含む、免疫学的に機能的な免疫グロブリンフラグメントである。幾つかの例において、二以上のV
H領域がペプチドリンカーによって共有結合し、二価のドメイン抗体を作成している。二価のドメイン抗体の二つのV
H領域は、同一の又は異なる抗原を標的にすることができる。
【0033】
「二価抗体」は、二つの抗原結合部位を含んでいる。幾つかの例において、二つの結合部位は、同一の抗原特異性を有する。しかしながら、二価抗体は、二重特異性であり得る。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体とは、抗体のV
H及びV
Lドメインを含む抗体フラグメントへの言及であり、ここでこれらのドメインは一本鎖のポリペプチドに存在している。一般的に、Fvポリペプチドは、V
HとV
Lドメインの間にポリペプチドリンカーを含んでおり、scFRvが抗原結合のために望ましい構造を形成することを可能にする。scFvの総説に関しては、プリュックツーン著「モノクローナル抗体に関する薬理学(THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES)」、第113巻、ローゼンブルグ及びムーア(Rosenburug and Moore)編、スプリンガー出版社(Springe−Verlag)、ニューヨーク(New York)、pp.269−315、を参照。
【0035】
本明細書のモノクローナル抗体には、ラクダ化した単一ドメイン抗体も含まれる。例えば、ムイルダーマンスら(Muyldermans et al.)、Trends Biochem.Sci.、2001年、第26巻、p.230;ライヒマンら(Reichmann et al.)、J.Immunol.Methods、1999年、第231巻:p.25;WO94/04678号;WO94/25591号;米国特許第6,005,079号、を参照。一実施態様において、本発明は、単一ドメイン抗体が形成するような修飾を有する、二つのV
Hドメインを含む単一ドメイン抗体を提供する。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「二重特異性抗体」とは、二つの抗原結合部位を有し、そのフラグメントが同一のポリペプチド鎖(V
H−V
L又はV
L−V
H)の中で軽鎖の可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含んでいる、小さな抗体フラグメントへの言及である。同一鎖状の二つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは他の鎖の相補的なドメインと対合され二つの抗原結合部位を作成する。二重特異性抗体は、例えば、EP404,097号;WO93/11161号;及びホリンガーら(Hollinger et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1993年、第90巻:p.6444−6448、において完全に記載されている。一般的な遺伝子操作抗体変異体の総説に関しては、ホリンガー及びハドソン(Hollinger and Hudson)、Nat.Biotechnol.、2005年、第23巻、p.1126−1136、を参照。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト化抗体」とは、ヒト抗体と同様に非ヒト(例えば、マウス)抗体由来の配列を含んでいる、抗体型への言及である。当該抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含んでいる。一般的に、ヒト化抗体は、実質的に少なくとも一の、典型的には二の可変ドメインの全てを含むものであり、ここでその中では、全ての又は実質的に全ての超可変ループは、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに相当し、並びに全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体は、また、免疫グロブリンの定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれの少なくとも一部を任意に含むものである。ヒト化抗体を親のげっ歯類抗体から区別する必要があるときは、抗体クローンの命名に、接頭辞「hum」、「hu」又は「h」が付加される(しかし、これと同じ命名は、文脈によってはヒトの特定のタンパク質型を示すこともできる)。げっ歯類抗体のヒト化型は、一般的に親のげっ歯類抗体と同じCDR配列を含むものであるが、しかしヒト化抗体の親和力を高めるため、又は安定性を高めるため、又は他の理由によって、一定のアミノ酸置換を含むことがきる。
【0038】
抗体には、変更エフェクター機能を提供するための修飾(又は遮断)Fc領域を有する抗体も含まれる。例えば、米国特許第5,624,821号;WO2003/086310号;WO2005/120571号;WO2006/0057702号;プレスタ(Presta)、Adv.DrugDelivery Rev.、2006年、第58巻:p.640−656、を参照。当該修飾は、免疫系の種々の反応を強化又は抑制するために使用することができ、診断及び治療において受け入れられる有用な効果をもたらす。Fc領域の変更には、アミノ酸変化(置換、欠失及び挿入)、グリコシル化又は脱グリコシル、及び多重Fc付加が含まれる。Fcの変化は、治療用抗体中おける抗体の半減期をも変えることができる。半減期の延長は、便宜を増し、原料使用を低下させと共に、結果として服用量の減少をもたらし得る。プレスタ(Presta)、J.AllergyClin.Immunol.、2005年、第116巻:p.734−35、を参照。
【0039】
抗体には、完全なエフェクター機能を提供するインタクトなFc領域を有する抗体、例えば、標的細胞中で補体依存性細胞障害(CDC)又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)を惹起する、ヒトアイソタイプIgG1の抗体等も含まれる。幾つかの実施態様において、本発明の抗体は、母集団細胞由来の同族抗原を発現する細胞を選択的に枯渇させるために投与される。
【0040】
用語「完全ヒト化抗体」とは、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体への言及である。完全ヒト化抗体は、マウス体内、マウス細胞内、又はマウス細胞由来のハイブリドーマ内で生産されるならば、マウスの糖鎖を含むことができる。同様に、「マウス抗体」又は「ラット抗体」とは、それぞれマウス又はラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体への言及である。完全ヒト化抗体は、人間体内、ヒト免疫グロブリン生殖細胞系配列を有するトランスジェニック動物体内において、ファージディスプレー又は他の分子生物学的な方法によって生成することができる。
【0041】
「結合化合物」とは、標的に結合することのできる、分子、小分子、高分子、ポリペプチド、抗体又はフラグメント又はそのアナログ、又は可溶性受容体、への言及である。「結合化合物」とは、標的に結合することのできる、非共有結合性複合体等の分子の複合体、イオン化分子、及び例えば、リン酸化、アシル化、架橋結合、環化、又は限定開裂等によって修飾された共有結合性の又は非共有結合性の修飾を受けた分子、への言及でもあり得る。抗体と関連して使用されるとき、用語「結合化合物」とは、抗体及び抗原結合フラグメントの双方への言及である。「結合」とは、標的との結合化合物の会合への言及であり、場合によっては結合化合物が溶液に溶解又は懸濁することができるが、ここで当該会合は、結合化合物の通常のブラウン運動の低下を結果として生じる。「結合組成物」とは、安定剤、賦形剤、塩、バッファー、溶媒、又は添加剤と併用された、標的に結合することのできる分子、例えば結合化合物等への言及である。
【0042】
抗体又は抗体の抗原結合部位由来の結合組成物は、巧妙な方法に基づき、関連しない抗原との親和力よりも、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、そして最も好ましくは少なくとも100倍大きな親和力によってその抗原に結合する。好ましい一実施態様において、抗体は、例えばスキャチャード解析等によって測定される通り、約10
9liters/molより大きい親和力を有するであろう。ムンゼンら(Munsen et al.)、Analyt.Biochem.、1980年、第107巻:p.220−239。
II.動物生産物不含/加水分解物不含の生産栄養補助剤
【0043】
本発明は、哺乳動物(例えば、CHO)の細胞培養における、モノクローナル抗体及びタンパク質の生物製剤の生産のための、動物性成分及び定義付けが乏しいタンパク質加水分解物への依存を除去しようとの欲求に基づいている。成果は、小規模のバイオリアクターでの大豆加水分解物を栄養補給した培養力価よりも25%高い生産収率を有し、並びに振盪フラスコ実験での補助剤無添加の培養力価を二倍にする、化学的に規定された、生産栄養補助剤である。
図2を参照。この修正DMEM/F12濃縮液を使用して生産したタンパク質は、加水分解物を含有する補助剤を使用して生産したそれに匹敵する純度である。
【0044】
一実施態様において、本発明は、動物性成分及びタンパク質加水分解物を欠いている高収量のモノクローナル抗体(mAb)生産栄養補助剤を提供する。当該補助剤は、強化された力価で、並びに加水分解物を使用する従来法に匹敵する生成物品質特性を有するmAbsを生産する。
【0045】
幾つかの実施態様において、補助剤は、例えば、p19サブユニットを介してヒトIL−23に特異的に結合する、治療用抗体、又はその抗原結合フラグメントを生産するうえで、細胞を増殖するために使用することができる。ヒトIL−23p19に結合する代表的な抗体は、一般に配布された国際公開WO2008/103432号に開示されている。他の実施態様において、培地は、IL−23p19以外のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、抗体フラグメント又は誘導体、サイトカイン、サイトカイン受容体、成長因子、ワクチン用ポリペプチド、及び非治療用タンパク質さえも含む、他のタンパク質を生産するために使用することができる。
【0046】
本発明の増殖培地補助剤(「SP栄養補給剤」と呼ぶ)は、ビタミンE及び亜セレン酸ナトリウム(Na
2SeO
3)で栄養補給したDMEM/F12基礎培地の修正、濃縮した処方に基づいている。DMEM/F12及び亜セレン酸ナトリウムによる栄養補給に関連する抗体生産のための他の栄養補給プロトコルは、報告されている。ジョウら(Zhou et al.)、Cytotechnology、1997年、第24巻:p99。
【0047】
栄養補給ストラテジーは、細胞培養に導入される栄養量が栄養消費及び細胞の増殖速度に基づく、予測栄養補給原理に基づいている。例えば、ジョウら(Zhou et al.)、Cytotechnology、1997年、第24巻:p99を参照。本発明の培地及び方法は、振盪フラスコ及び小規模の撹拌型タンクバイオリアクター(STR)で試験を行った。生産工程のキャラクタリゼーション及び製品評価は同時に行った。振盪フラスコは、細胞増殖の一般的特性、温度に応じた増殖、基礎培地及び栄養補給培地の効果、及び細胞株の予備的な安定性評価、等のパラメータを評価するために用いた。並行してSTRは、より制御された生育環境での新生産栄養補給培地の実施可能性を研究するために使用した。栄養補給に伴って生じる生理学的変化及び工程パラメータの変化を分析し監視して、生産物の偏差を減少させた
【0048】
一つの側面において、本発明は、抗体等の治療用ポリペプチドを生産するための、CHO細胞等の哺乳動物細胞を培養する方法に関する。出願人は、細胞増殖及び栄養消費速度が最高になる時を決定するために、SP栄養補給剤の連日栄養補給を使用し、数種類の抗体産生細胞株を培養して研究した。出願人は、グルコース4gごとにグルタミン1gが消費されることを見出し、それがSP栄養補給剤におけるグルタミン対グルコースの比1:4へと導いた。出願人は、少なくとも幾つかの細胞株にとって、連日の栄養補給よりも生産工程中の有限回の大量瞬時栄養補給(bokus feed)を使用することで、高抗体力価及び生産を達成することが可能であることも見出した。例えば、栄養補給は、例えば摂取後3、5及び10日目での3回の大量瞬時栄養補給として実施することができる。栄養補給回数の減少は、生産工程を非常に簡素化し、それは、例えば臨床材料の調製等の大規模な生産工程において格別価値がある。従って、一実施態様において、本方法は、生産工程の間に一以上の大量瞬時栄養補給、例えば、1、2、3、4、5又はそれ以上の大量瞬時栄養補給を含んでいる。当該栄養補給は、細胞生存能及び生産が最適化されるように、好ましくは培養の栄養が枯渇する前に実施される。幾つかの場合、当該栄養補給は、接種後、3、5及び10日目に行うことができる。
【0049】
図1Aに示した通り、SP栄養補給剤は、タンパク質生産の通常の添加剤である大豆加水分解物で細胞を栄養補給した時に得られる力価に比例して、最終の抗体力価を約20%ないし80%増加する。本発明の栄養補助剤は、幾つかの細胞株によってより生産を強化するために、大豆加水分解物等の他の補助剤と併用して使用することもできる。
図1Bは、抗体Bを生産する細胞株からの生産を、大豆加水分解物が20%増加する一方、SP栄養補給剤が>70%増加し、併用が90%増加することを証明している。
【0050】
図2A−2Dに図解した通り、幾つかの異なる抗体に関し、SP栄養補給剤による栄養補給は、大豆加水分解物による栄養補給に比例して力価を約20%−60%改善した。SP栄養補給剤を使用した場合、バイオリアクター及び振盪フラスコの双方で(
図2A及び2B)力価がより高く、付随して、どちらの補助剤に関しても、振盪フラスコに比較してバイオリアクターの方が、20−33%高い力価であった(データ未掲載)。
【0051】
その結果を
図1A、1B及び2A−2Dに提示する、実験に使用した抗体を全体として表1に記載する。
【表1】
【0052】
図3に示した通り、増殖培地補助剤に関係なく、37℃で増殖した培養よりも34℃で増殖した培養の方が高い力価を有した。SP栄養補給剤による栄養補給は、大豆加水分解物による栄養補給と比較して抗体力価を改善し、両補助剤の併用は力価を幾分か更に強化した。
III.抗体産生細胞のキャラクタリゼーション
【0053】
生産される抗体の品質及び純度は、生産細胞における生理学的変化によって影響を受け得る。それ故に、本発明の栄養補助剤の細胞生理機能の幾つかの面に及ぼす影響をも特性づけられる。細胞のDNA含量を測定し、細胞周期範囲内での細胞の分布を定量し(データ未掲載)、アポトーシス状態を定量し、細胞の生存能を評価し(
図4)、並びに細胞会合mAbを定量し、生産性を評価する(
図5)。三つの全パラメータは、フローサイトメトリーによって、例えば、FACSCalibur多目的フローサイトメーターシステム(FACSCalibur mujltipurpose flow cytometer system)(BDバイオサイエンス社(BD Biosciences)製、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)等を使用して、定量する。
【0054】
細胞のDNA分布は、ヨウ化プロピジウム染色によるフローサイトメトリーによって分析する。細胞周期のG0/G1、S及びG2/M期にある細胞のパーセントの分析が、SP栄養補給剤で栄養補給された培養が大豆加水分解物で栄養補給された培養に類似する細胞周期の分布をしていることを明らかにしている。
【0055】
細胞のアポトーシス状態は、アネキシンV結合(FITC標識タグ・アネキシン使用)及びヨウ化プロピジウム(PI)染色によって分析する。例えば、ベルメシュ(Vermes et al.)、「ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Methods)」、1995年、第184巻:p39;ムーアら(Moore et al.)、「メソッズ・イン・セル・バイオロジー(Methods Cell Biol.)」、1998年、第57巻:p265;テイト(Tait)、「ザ・ジャーナル・オブ・ヌクレアー・メディシン(J.Nucl.Med.)」、2008年、第49巻:p.1573、を参照。
図4は、生産13及び19日目において、大豆加水分解物によって栄養補給された培養における細胞と比較して、SP栄養補給剤によって栄養補給された培養からの細胞のヴァイアブルゲートにおける高いパーセントが(左下、LL四分の一区)、そして遅いアポトーシス/ネクローシスゲートにおける低いパーセントが(右上、UR四分の一区)見出されることを示している。このような結果は、SP栄養補給剤が細胞の生存能を保持するためにより良い環境を提供することを示している。加えて、両栄養補給が細胞当たり同等の蛍光強度の中央値を示す一方で、
図5及び表2(下記)は、大豆加水分解物補助剤条件よりもSP栄養補給剤で栄養補給された培養中の細胞の方が、ヴァイアブルゲートにおける細胞の高いパーセントを示すことを明らかにしている(13及び19日目)。生細胞の高い個体群及び細胞ごとの同等の収量という最終結果は、SP栄養補給剤で栄養補給された培養が、13及び特に19日目に有意により多い抗体を生産することを意味している。
【表2】
【0056】
一般的に、本発明の補助剤及び方法は、如何なる哺乳動物細胞株由来の如何なるタンパク質の生産にも使用することができ、そして特にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養による治療用タンパク質の生産での使用に適している。非限定的な一例において、治療用タンパク質は、抗ヒトIL−23p19抗体(又はその抗原結合フラグメント)等の抗体である。種々の実施態様において、抗ヒトIL−23p19抗体は、一般に配布された国際公開WO2008/103432号に開示されたヒト化抗体の1、2、3、4、5又は6個のCDR配列、又は重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含んでおり、ここで、その開示は、例えばhu13B8等のように、本明細書に言及によってそっくり組み込まれている。他の実施態様において、抗ヒトIL−23p19抗体は、ヒトIL−23との結合に関し抗体hu13B8と拮抗する。他の実施態様において、抗ヒトIL−23p19抗体は、hu13B8が結合するのと同じヒトIL−23上のエピトープに結合する。他の実施態様において、抗ヒトIL−23p19抗体は、ヒトIL−23p19の、ブダペスト条約に基づいて2006年8月17日に、受入番号PTA−7803でアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC−マナッサス、バージニア州、米国)に寄託されたハイブリドーマによって生産される抗体への結合をクロスブロッキングアッセイにおいて防止することができる。更にそれ以上の実施態様において、抗ヒトIL−23p19抗体は、受入番号PTA−7803でATCCに寄託されたハイブリドーマによって生産される抗体が結合するのと同じエピトープに結合する。更なる実施態様において、抗ヒトIL−23p19抗体は、受入番号PTA−7803でATCCに寄託されたハイブリドーマによって生産される抗体が含むのと同じCDR配列を含んでいる。
【0057】
本発明の培地及び方法を使用する生産に適したさらなる抗IL−23p19抗体は、一般に配布された国際公開WO2007/027714号及びWO2008/103473号に開示されており、その開示は、言及によって本明細書にそっくりそのまま組み込まれている。さらなる抗IL−23抗体は、例えば、米国特許第7,247,711号(セントコア社(Centocor)、抗IL−23p40特異的抗体を開示)、米国特許出願公開第2007/0009526号及び2007/0218064号(セントコア社、抗IL−23p19抗体を開示)、国際公開WO2007/024846号(イーライリリー社(Eli Lilly)、抗IL−23p19抗体を開示)、及び国際公開WO2007/147019号(ザイモジェネティクス社(Zymogenetics)、IL−23p19及びIL−17に対する二重特異性抗体を開示)等に開示されており、その開示は、言及によって本明細書にそっくりそのまま組み込まれている。既に臨床試験にある代表的なIL−12/IL−23(anti−p40)抗体には、セントコア社の完全ヒト化抗体ウステキヌマブ(ustekinumab)(CNTO 1275)及びアボット社(Abbott)の完全ヒト化抗体ABT−874が含まれる。
【0058】
種々の実施態様において、本発明の抗IL−23p19抗体には、これに限定されないが、Fab、Fab‘、Fab’−SH、Fv、scFv、F(ab‘)
2及び二重特異性抗体等の抗原結合フラグメントが含まれる。
【0059】
本発明の幅広い範囲は、本発明を特定の実施態様に限定することを意図するのではないが、以下の実施例を参照して良く理解される。
実施例
実施例1
一般的な方法
【0060】
分子生物学における標準法が記載されている。マニアティスら(Maniatis et al.)著、「モレキュラー・クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual)」、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールドスプリングハーバー、NY、1982年;サムブルック及びラッセル(Sambrook and Russell)著、「モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)」、第3版、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス、コールドスプリングハーバー、NY、2001年;ウー(Wu)著、「組換えDNA(Recombinant DNA)」、第217巻、アカデミック・プレス(Academic Press)、サンディエゴ(San Diego)、カリフォルニア州。標準法は、またアウスベルら(Ausbel et al.)著、「分子生物学のカレントプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、第1−4巻、ジョン・ウィイリー・アンド・サンズ・インク(John Wiley and Sons,Inc)、ニューヨーク(New York)、NY、にも発表されており、それには、細菌細胞のクローニング及びDNA突然変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞及び酵母のクローニング(第2巻)、複合糖質及びタンパク質の発現(第3巻)、及びバイオインフォマティクス(第4巻)が記載されている。
【0061】
免疫沈降法、クロマトグラフィー、電気泳動法、遠心分離法及び分別結晶法を含むタンパク質精製法が記載されている。コリガンら(Coligan et al.)著、「タンパク質科学のカレントプロトコル(Current Protocols in Protein Science)」、ジョン・ウィイリー・アンド・サンズ・インク、ニューヨーク。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生産、タンパク質のグリコシル化が記載されている。例えば、コリガンら著、「タンパク質科学のカレントプロトコル」、第2巻、ジョン・ウィイリー・アンド・サンズ・インク、ニューヨーク、2000年;アウスベルら著、「分子生物学のカレントプロトコル」、第3巻、ジョン・ウィイリー・アンド・サンズ・インク、ニューヨーク、NY、pp.16.0.5−16.22.17、2001年;シグマアルドリッチ社(Sigma−Aldrich,Co.)著、「生命科学研究用製品(Products for Life Science Research)」、セントルイス、ミズーリ州、pp.45−89;アマシャムファルマシアバイオテク社(Amersham Pharmacia Biotech)著、「バイオ・ディレクトリー(BioDirectory)」、ピスカタウェイ(Piscataway)、ニュージャージー州、pp.384−391、2001年、を参照。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の生産、精製、及びフラグメンテーションが記載されている。コリガンら著、「免疫学のカレントプロトコル」、第1巻、ジョン・ウィイリー・アンド・サンズ・インク、ニューヨーク、2001年;ハーロー及びレーン(Harlow and Lane)著、「抗体の使用法(Using Antibodies)」、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス、コールドスプリングハーバー、NY,1999年;ハーロー及びレーン、前掲書。リガンド/受容体相互作用をキャラクタリゼーションするための標準技術が入手可能である。例えば、コリガンら著、「免疫学のカレントプロトコル」、第4巻、ジョン・ウィイリー・インク、ニューヨーク、2001年、を参照。
【0062】
蛍光活性化細胞選別検知システム(FACS;登録商標)を含む、フローサイトメトリー法が入手可能である。例えば、オーウェンスら(Owens et al.)著、「臨床検査室実践用フローサイトメトリー原理(Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice)」、ジョン・ウィイリー・アンド・サンズ、ホーボーケン、ニュージャージー州、1994年;ギバン(Givan)著、「フローサイトメトリー(Flow Cytometry)」、第2版、ウィリーリス(Wiley−Liss)、ホーボーケン、ニュージャージー州、2001年;シャピロ著(Shapiro)、「プラクティカル・フローサイトメトリー(Practical Flow Cytometry)」、ジョン・ウィイリー・アンド・サンズ、ホーボーケン、ニュージャージー州、2003年、等を参照。例えば診断試薬として使用するために、核酸プライマー及びプローブを含む核酸、ポリペプチド、及び抗体を修飾するのに適した蛍光試薬を利用することができる。「分子プローブ(Molecular Probes)」(カタログ)、モレキュラー・プローブ・インク(Molecular Probes,Inc)、ユージーン、オレゴン準州、2003年;シグマアルドリッチ社カタログ、セントルイス、ミズーリ州、2003年。
【0063】
免疫系組織学の標準法が記載されている。例えば、ミュラーハーメリンク(Muller−Harmelink)編、「ヒト胸腺:組織病理学及び病理学(Human Thymus:Histopathology and Pathology)」、スプリンガー出版社、ニューヨーク、NY,1986年;ハイアットら(Hiatt,et al.)著、「組織学カラーアトラス(Color Atlas of Histology)」、リッピンコット、ウィリアムズ、アンド、ウィルキンス(Lippincott,Williams,and Wilkins)、フィラデルフィア、ペンシルベニア州、2000年;ルイスら(Louis,et al.)、「基礎組織学:教本及び図譜(Basic Histology)」、マグローヒル、ニューヨーク、NY、2002年、を参照。
【0064】
統計分析は、これに限定されないが、JMP(登録商標)統計ソフトウェア(Statistical Discovery Softoware)、SASインスティテュート・インク(SAS Institute Inc.)、ケーリー(Cary)、ノースカロライナ州(North Carolina)、米国、を含む市販のソフトウェアを使用して実施することができる。
【0065】
細胞増殖培地及び方法は、例えば、国際公開WO90/03430号及び米国特許第5,830,761号に提供されており、その開示は、言及によって本明細書にそっくりそのまま組み込まれている。
実施例2
抗体生産
【0066】
本発明の栄養補助剤及び方法を使用して、モノクローナル抗体を以下の通り生産する。完全長ヒト化IgG抗ヒトIL23p19モノクローナル抗体である抗体Dを発現する、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、1mL/Lの鉄キレート剤C2115(シグマアルドリッチ社製、セントルイス、ミズーリ州、米国)、20mL/Lの200mMグルタミン(ギブコ(Gibco)、グランドアイランド(Grand Island)、ニューヨーク、米国)、並びに各1mL/Lのセルグロ(Cellgro)微量元素A及びセルグロ微量元素B(両者ともメディアテック社製、マナッサス、バージニア州、米国)を添加したC5467CHOタンパク質不含培地(CHO Protein−Free Mediumu)(ATA無添加)(シグマアルドリッチ社製)を含む基礎培地(BM)で、振盪フラスコ中通気して連続的に継代培養する。細胞を湿度7.5%のCO2恒温槽中37℃で培養し、振盪フラスコをフォーマ社製回転振盪盤(Forma orbital shaker platform)上100rpmで撹拌する。生細胞密度が1−2x10
6細胞数/mLのときに、CHO細胞を1:3ないし1:5の分割比で継代培養する。
【0067】
SP栄養補給剤による抗体(IgG)生産への栄養補給効果は、以下のように測定する。対照の培養は、ゼロ時点に、200g/Lの保存溶液を使用して、熱処理した大豆加水分解物を終濃度5g/Lまで添加することによって、大豆加水分解物で栄養補給する。グルコース(450g/L)及びグルタミン(200mM)の保存溶液からの添加によって、グルコース及びグルタミンをそれぞれ1.5g/L及び100mg/L以上に保持する。
【0068】
他の培養液は、その処方を表3に提供する、20X濃縮液であるSP栄養補給剤によって栄養補給する。SP栄養補給剤は、表3に記載し本明細書の他処で論じた通り、亜セレン酸ナトリウム及びビタミンE(α−トコフェロール)によって栄養補給された修正20X DMEM/F12培地に基づいている。グルコース(成分46)を60g/Lで提供し、予め定めたグルコース対グルタミンの1:4の消費比に従って、グルタミン濃度(成分47)を15g/Lに調整する。
【表3】
【0069】
細胞は、2Lの作業容量を有するブラウン・バイオリアクター(B.ブラウン・メディカル・インク(B.Braun Medical Inc.)、ベスレヘム、ペンシルベニア州、米国)で培養する。接種菌液は、7.5%のCO
2で覆ったウェイブ培養バッグ(wave bag)(ウェイブ・バイオテック・LLC、GEヘルスケア(Wave Biotch LLC、GE Healthecare)、サマセット、ニュージャージー州、米国)中、37℃でスケールアップする。バイオリアクターは、pH6.8、溶存酸素(DO)60%、及び撹拌速度200rpmで運転する。温度は、初期に37℃に設定し、3、4又は5日目に34℃に低下する。溶存酸素は、酸素吹き込みによって制御し、pHは、1M NaOH又はCO
2ガスの添加によって制御する。
【0070】
SP栄養補給剤によって栄養補給されるバッチにとって、予測栄養補給は一の指標、グルコース/グルタミンの比に基づいている。栄養補給量は、下記の式によって決定された。式中、Q
グルコースは、0.019g/10
5細胞/日の平均グルコース消費速度、X
nは、T
nで測定した生細胞密度、及びC
グルコース=60g/Lである。
【数1】
【数2】
【0071】
振盪フラスコ及びバイオリアクター中の生細胞密度及び全細胞密度は、セデッ
クス(Cedex)自動細胞培養分析装置(イノバティス(Innovat
is)AG、ビーレフェルト、ドイツ)を使用して測定する。グルコース、乳酸、
グルタミン及びグルタミン酸は、YSI2000分析装置(YSI、イェロー
スプリングスインスツールメンツ社(Yellow Springs Inst
ruments Co.)、オハイオ州、米国)を使用して定量する。アンモニア
は、ノバ・イオプロフィール100プラス・分析装置(Nova BioPro
file 100 plus analyzer)(ノバ・バイオメディカル・コ
ープ(Nova Biomedical Corp.)、ウォーザン(Walth
am)、マサチューセッツ州、米国)によって測定する。浸透圧は、アドバーンス
ト微量浸透圧計(Advanced Micro−Osmometer)(アドバ
ーンスト・インスツールメンツ(Advanced Instruments)、
ノーウッド(Norwood)、マサチューセッツ州、米国)によって測定する。
pH、pCO
2、pO
2は、ABL5分析装置(ラジオメーター・アメリカ・インク(Radiometer America Inc.)、ウェストレイク(Westlake、オハイオ州、米国)によって測定する。抗体は、逆相HPLC又はタンパク質A HPLCによって定量する。
【0072】
所定の産生細胞株の代表的な幾つかの培養が、いつ栄養補給が実施されるべきかを決めるために、上記の式を使用して分析され、そして当該培養が十分な再現性を示すならば、同一細胞のその後の培養は、培養を頻繁に監視せずとも、予め決められた時間に簡単に栄養補給することができる。例えば、培養は、摂取後、3、5及び10日目に栄養補給することができる。あるいは、培養は、対数増殖期の初期、対数増殖期の後期、及び定常期の間に栄養補給することができる。
【0073】
本明細書で検討した幾つかの培養にとって、(生産工程の進行に亘る培養の作業容量の20%という総栄養補給のための)各6.67%容量の3回の大量瞬時栄養補給が、高レベルの抗体生産を支持するために適していた。従って、各栄養補給は、表3の「20X」処方から培養培地中の最終濃度である1.33Xまでの希釈液を含んでいる。消費尽くされてはならない成分に対しては、二回目及び三回目の大量瞬時栄養補給において、濃度をそれぞれ2.66X及び4Xに高める。上記の通り、本明細書で報告する「X」濃度は、本栄養補給アプリメントが由来する、20X DMEM/F12培地にのみ基づいており、如何なる特定の望ましい作業(又は最終)濃度(例えば、「1X」)を反映するものではない。
【0074】
SP栄養補給剤を添加して培養した細胞は、強化された細胞増殖、遅い時期での(摂取後13及び19日目)アポトーシスの減少を示し、そして栄養補給されなかった培養又は大豆加水分解物のみで栄養補給された培養よりもより高い抗体力価を生み出す。抗体Dを発現するCHO細胞株での実験で、SP栄養補給剤で栄養補給された培養においては、大豆加水分解物でのみ栄養補給された培養に比較して、力価が2倍まで高い。
【0075】
更に実験により、精製後に逆相(RP)及びサイズ排除(SEC)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した時に、SP栄養補給剤で栄養補給された培養から生産した抗体が、大豆加水分解物の栄養補給剤を使用して調製した抗体と同様の特性を有することを、確認している。