(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ポリ(イソブチレン−共重合イソプレン)、すなわちIIRと称され、通常ブチルゴムの名で知られている、1940年代から製造されている、イソブチレンと、少量の(1−2モル%)イソプレンとのランダムカチオン共重合体である合成エラストマーは、その分子的構造の結果として、卓越した非透過性、高い損失モデュラス、耐酸化性および長い耐疲労性を有している。
【0003】
ブチルゴムはイソプレンと、コモノマーとしての1種以上の、好ましくは共役マルチオレフィン類(multioletins)との共重合体である。
商業的ブチルゴムは、大部分のイソオレフィンと少部分、ふつう2.5モル%以下の共役マルチオレフィンより成っている。ブチルゴムまたはブチルポリマーは一般に塩化メチルを希釈剤とし、フリーデルクラフツ触媒を重合開始前の一部として用いたスラリー重合法によって製造される。この方法はまた米国特許第2,356,128号明細書およびウルマン(ullmann)の“Encyclopedia of lndustry Chemistry”のA23巻、288−295ページ(1993)に述べられている。
【0004】
このようなブチルゴムをハロゲン化すると、エラストマー中に反応性に富んだアリル性ハライド(allylic halide)官能価を生ずる。前記のUllumannのEncyclopedia(第5完全改訂版、第A231巻、Elvers他編著)および/または1987年(c)の“Rubber Technology”第3版、Maurice Morton,第10章(Van Nostrand Reinhold社(c)1987年発行)の特に第297〜300頁を参照されたい。
【0005】
アリル性ハライド官能価の存在は求核的アルキル化反応を可能にする。最近になって、臭素化されたブチルゴム(BIIR)を窒素および/またはリン系の求核剤で固体の状態で(in solid state)処理すると、興味深い物理的および化学的性質を有するIIR起因性アイオノマーを生じる傾向がわかった。(参考文献として次のものがあげられる:
Parent, J.S ; Liskova, A ; Resendes, R. Joumal of Polymer Science, Part A; Polymer Chemistry43, 5671-5679, 2005, ; Parent ,J. S ; Liskova, A ; Resendes, R. Polymer 45 ,8091-8096,2004 ; Parent ,J. S.; Penciu, A. ; Guillen-Castellanos, S. A. ; Liskova, A. ; Whitney, R. A. Macromolecules 37, 7477-7483,2004)
このアイオノマー的官能価は窒素または燐系の求核剤から生ずるものであり、またBIIR中のアリル性ハライドのサイトがそれぞれ窒素または燐系のこれらのBIIRに基因するアイオノマーの物理的性質(クリーン強度、モデュラス、充填剤相互間の作用等)はそれに対応する非アイオノマー性のものよりすぐれている。
【0006】
これらブチル重合(MeCl,IBおよびIP混合原料を開始剤としてのAlCl
3/H
2Oと共に)は10モル%までの、重合体鎖に沿ってランダムにとりこまれたスチレン性基を有する高分子量のポリマーをもたらす。(Kanzas,米国特許6,960,602;Kanzas他“Rubber Chemistry and Technology”2001,75,155).
p−メチルスチレンを配合するとそのイソブチレンに対する反応性が似ているところから、分子全体にわたる分子量分布がより均一になることが見出されている。ブチルターポリマー類中のイソプレン部分は、慣用の方法でハロゲン化することができ、それによって類似のタイプIIまたはタイプIIIのような現在のLANXESSのハロブチルグレードのアリル性ハライドの構造に導くことができる。
【0007】
カナダ特許2,418,884および2,458,741には、ブチル系のパーオキサイドー硬化型の高マルチオレフィン含量を有する化合物の製法が記載されている。特に前者の2,418,884号には、イソプレンのレベル含有量3から8モル%であるIIRの連続的製法が述べられている。この高マルチオレフィン含量型のブチルゴムのハロゲン化によって、エラストマー中にアリル性ハライド官能価が作り出される。これらの高レベルのイソプレンは、今や原則的に3〜8モル%の範囲のアリル性ブロマイド官能価を含むBIIR同族体を作り出すことができる。通常のブチルゴムのハロゲン化法は、例えばウルマン(Ullmann)の“Encyclopedia of lndustry Chemistry”第5完全改訂版、第A231巻、Elvers他編および/またマウリス モートン(Mauris morton)の“Rubber Technology”(第3版)、第10章(ヴァン ノーストランド ラインホールド社(c)1987)(Van Nostrand Company(c) 1987)の特に第297−300頁に詳述されている。
【0008】
一方、ブチルコポリマーはC
4〜C
7のイソモノオレフィン、例えばイソブチレン、および通常1種のコモノマー、例えばp−アルキルスチレン、好ましくはp−メチルスチレンから成っていてもよい。ハロゲン化された時、スチレンモノマーのユニット中に存在するアルキル置換基はベンジル型のハロゲンを含有するに至る。米国特許第5,162,445に示されるように、付加時な官能基が、このベンジル型のハロゲンと種々の求核的置換(displacement)によって取り込まれることが可能となる。第3アミン類およびホスフィン類の使用もこれらのコポリマーにもとづいた改良された物理的性質をもつブチルアイオノマーの形成をもたらす。
【0009】
ここ二、三十年来にわたる不断の努力によって、本来殺菌性、抗真菌(カビ)性(antifungal)および/または抗藻性を有するポリマーに抗菌剤、抗真菌剤または抗藻剤を含浸(impregnate)することによって結合させようという試みがなされてきた。しかし、これらの薬剤は通常は抗生物質、フェノール類、ヨウ素、第4アンモニウム化合物などの低分子量の物質や化合物または銀、スズおよび水銀などの重金属類が多かった。これらの物質から成る薬剤との結合は魅力的ではあったが、ポリマーの本来の基質(matrix)からみて、これらの薬剤がポリマーから浸出する際の拡散速度を調整することが困難であることのため、その効力は限られたものであった。この浸出(leaching)は結果的にその材料物質を無効なものとし、環境の悪化を招き、または浸出した物質と他の有機物との種々な反応を引き起こす機会を作り、同様にこれらの薬剤が環境に放散されることによって、かえって微生物等の薬剤に対する低抗性を増大させてしまう結果を招いている。
【0010】
また有機抗菌剤、抗真菌(かび)剤または抗藻剤はポリマー組成物に対する親和力(compatibility)は限られている。何故なら上記のような薬剤類は、有機物であるが故に、その気化温度がポリマー組成物の成形等の際に用いられる温度よりも通常低いからである。従来の知見によれば、ポリマー化合物類で、その物質中に恒久的に結合した形で組み込まれた抗菌剤、抗真菌剤、抗藻剤は、恒久的には結合していない通常の低分子量の薬剤を含有しているものよりはるかにすぐれた性質を有することが知られている。通常のこれらは薬剤には有害な薬剤成分を環境に放散する程度が小さいものがあり、それによって気化、光分解、輸送などによる損失が減少される。その上増大した効果、選択性、および取扱い上の安全性の向上を果たすことができる。
【0011】
抗菌剤、抗真菌剤または抗藻剤などがポリマーと結合した他のポリマー系は、ほとんどの場合、これらの薬剤が重合プロセスの過程において添加されることが多いので、重合プロセスを阻害したり、および/または得られたポリマーの性質を劣化させる可能性が高い。さらにそれらの薬剤を組み込むためにポリマーを改質、変性することもよく行われているので、これらの改質、変性等の操作が、目的とするポリマーの製品の物理、化学的性質にさらに悪い影響を及ぼし、結果的に意図するポリマー製品の品質を大きく損なうことが考えられる。
【0012】
従来もこのような抗菌剤等を含有させたポリマー類はいくつか製造され、試験されてきたが、好適な殺(制)菌作用を示すものは極めてその例が少ない。特に大腸菌(Escherichia coli)およびサルモネラ(Salmonella)菌のようなグラム陰性菌に対して減(殺)菌効果のある化合物は数多くあるが、スタフィロコッカス(Staphylococcus)バチルス(Bacillus),リステリア(Listeria),やストレプト コッカス(Strepto coccus)のようなグラム陽性菌にも有効な作用を示す化合物は数少ない。
【0013】
本発明はブチルアイオノマーを上記のような菌類等の増殖の防止、抑制およびその蓄積の阻止に、またそのようなブチルアイオノマーから作られた様々賦形物品等の被覆に使用することに関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は一般的にハロゲン化したブチルコモノマーと少なくとも1種の窒素−または燐−系求核剤剤との反応により生じたブチルアイオノマーまたは部分的にハロゲン化されたブチルアイオノマーを含むポリマー組成物に関する。「ブチルゴムアイオノマー」、「ブチルアイオノマー」または「部分的にハロゲン化したブチルアイオノマー」は本発明においてすべて「アイオノマー」という語で総称される。
【0027】
本発明での「アイオノマー」は、ハロゲン化されたブチル共重合体、特にブチルゴム共重合体から生成される。ブチル共重合体は一般的に少なくとも1種のイソオレフィンモノマー、少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーおよび必要ならさらに他の共重合可能なモノマー(類)から誘導される。
【0028】
一つの態様において、アイオノマーは、1種のイソオレフィンモノマーと一つの共役ジエンモノマーから誘導された反覆単位から成る。他の一つの様態ではブチルアイオノマーは一つのイソオレフィンモノマーとスチレンモノマーから誘導された反覆単位から成っている。
さらに他の一つの態様によれば、ブチルアイオノマーは、一つイソオレフィンモノマー、一つの共役ジオレフィンモノマーおよび一つのスチレン系モノマーから誘導された反覆単位から成る。ここで一つの共役ジエンモノマーから誘導された反覆単位を含む実施の態様においては、このような単位から誘導されたオレフィン結合の数は少なくとも2.2モル%、3.0モル%、4.1モル%、5.0モル%、6.0モル%、7.0モル%、7.5モル%または8.0モル%のような高度の量を含む。
【0029】
ブチルポリマーは上述したような特別なイソオレフィンのみに限られることなく、当事者に知られているほかの種々のイソオレフィンをも意味する。このようなイソオレフィンの例として、例えば4〜16の範囲の炭素原子、特に一つの態様として4〜7の炭素原子を含むイソオレフィン、すなわち代表的にはイソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、4−メチル−1−ペテンおよびそれらの混合物のようなイソオレフィンも本発明の中に含まれる。これらの中でイソブテン(イソブチレン)が好ましい。
【0030】
同様にブチルポリマーは特定のマルチオレフィンを含むものに限らない。イソオレフィン類と共重合可能なものとして当業者に知られている様々のマルチオレフィン類が本発明の実施態様として含まれる。このようなマルチオレフィンとして共役ジエン系のマルチオレフィンが好ましく、これらのマルチオレフィンの例としては4〜14の範囲の炭素原子を含むものがあり、その好ましい具体例としては、イソプレン、ブタジエン、2−メチルブタジエン、2,4ジメチルブタジエン、ピペリエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、2−ネオペンチルブタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2−メチル−1,6−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1−ビニル−シクロヘキサジエン、およびこれらの混合物があげられる。好ましいマルチオレフィンとしてはイソプレンが挙げられる。
本発明のほかの実施態様としてはこれらのマルチオレフィンのほかに本発明のブチル共重合体には、当業者も理解できるようにさらに他のコモノマーを付加的に含む場合が挙げられる。このようなコモノマーとしては、上記のイソオレフィンおよび/またはジエン類と共重合可能なものが用いられ、本発明の実施で好適なモノマーとして、例えばスチレン系では、アルキル−置換ビニル芳香族コモノマー類、好ましくはC
1〜C
4アルキル置換スチレン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの具体的な化合物の例としては、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロルスチレン、シクロペンタジエンおよびメチルシクロペンタジエンが挙げられる。本発明の実施の態様においては、例えばイソブチレン、イソプレンおよびp−メチルスチレンのランダム共重合体類が挙げられる。
【0031】
本発明のさらに別の実施の様態として、上述したイソオレフィンモノマーはスチレン系モノマー、例えばアルキル−置換ビニル芳香族コモノマー(C
1〜C
4アルキル置換のみに限定されるものではないが)と重合される。スチレン系モノマーの例としてはとくにα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロルスチレン、シクロペンタジエンおよびメチルシクロペンタジエンが挙げられる。本発明の実施の態様においては、例えばイソブチレン、イソプレンおよびp−メチルスチレンのランダム共重合体類が挙げられる。
【0032】
上述したブチルポリマー類は前述したモノマー類の混合物から製造される。その一実施様態によればモノマー混合物として約80〜99重量%のイソオレフィンモノマーと約1〜20重量%のマルチオレフィンモノマーからなる組成物が用いられる。他の様態として、約85〜99重量%のイソオレフィンモノマーと約1〜15重量%のマルチオレフィンモノマーからなる混合物が挙げられ、さらに他のいくつかの態様として3種のモノマーの混合物が挙げられる。その実施態様において、モノマー混合物は約80〜99重量%のイソオレフィンモノマー、約0.5〜5重量%のマルチオレフィンモノマー、および約0.5〜15重量%の上記のイソオレフィンまたはマルチオレフィン類と共重合可能な他の第3のモノマーとの混合物が挙げられる。他のモノマー混合物の例として、約85〜99重量%のイソオレフィンモノマー、約0.5〜5重量%のマルチオレフィンモノマー、および約0.5〜10重量%のイソオレフィンまたはマルチオレフィンと共重合可能な第3のモノマーからなるものが挙げられる。さらに他の一つの態様として、約80〜99重量%のイソオレフィンモノマーおよび約1〜20重量%のスチレン系モノマーの混合物が挙げられる。
【0033】
このように前述のモノマー混合物からブチル重合体が生成されたら、これらのブチル重合体は、ハロゲン化ブチル重合体(ハロブチル重合体)を製造するため、ハロゲン化処理する。塩素化又は臭素化は、当業者に公知の方法、例えばMaurice Morton による“Rubber Technology”第3版、297〜300頁(Kluwer Academic Publishers)及びそこに引用された文献に記載されている。
【0034】
本発明の一つの実施様態によれば、アイオノマーはマルチオレフィンモノマーを0.5〜2.2モル%含むハロゲン化ブチルポリマーから製造される。例えば本発明で使用されるハロゲン化ブチルポリマーはイソブチレンと2.2モル%のイソプレンを含むハロゲン化ブチル−このものはドイツのLANXESS GmbHから商品名BB2030として市販されている−として入手できる。本発明の他の態様として、これらのアイオノマー類はより高いマルチオレフィン含量、例えば2.5モル%以上の含有量を有するハロゲン化ブチルポリマーから製造される。さらに他の実施様態として、マルチオレフィンの含量が2.5モル%または3.5モル%より大きいハロゲン化ブチルポリマーから製造することもできる。その他ハロゲン化ブチルポリマーのマルチオレフィン含量が4.0モル%より大きいものや、さらに同じくマルチオレフィン含量が7.0モル%より大きいハロゲン化ブチルポリマーから製造されたものも本発明で用いることができる。その他本発明で好適に使用される高マルチオレフィンブチルゴムポリマー類については同一出願人の係属出願であるカナダ特許2,418,884中に記載されており、その内容は参考として本特許に援用される。
【0035】
イソプレンのような共役ジエン類を含むブチルポリマーのハロゲン化において、ある割合または全部のブチルポリマー中に含まれるマルチオレフィンはハロゲン化アリル類に変換される。しかしハロブチルポリマー中の合計アリルハライドの含量はその親である出発ブチル重合体のマルチオレフィン含量を超えることはできない。この際のアリルハライドの部位(site)の存在はハロブチルポリマーに求核剤が反応および付着するために有用である。アリルハライド部分を含有していないハロブチルポリマー例えばイソブチレンとスチレン系モノマー類から誘導されたスチレン系モノマーのハロゲン化で生成したベンジル系ハライド類は、アリル化ハライドを生ずるよりむしろアイオノマーを生成するように反応するものと思われる。同様な理論はアリル系ハライドとしてのベンジル系ハライド類の場合にもあてはまり、全体のアイオノマー状の部分(moieties)は、ベンジル系ハライドの利用可能な量を超えることはできない。
【0036】
本発明の一つ実施様態では、ハロブチルポリマー中のアリル系ハライドまたはベンジル系ハライドの部位は下記の一般式で示される少なくとも1種の窒素または燐含有求核性化合物と反応する:
【0037】
【化1】
式中Aは窒素または燐であり、R
1、R
2、およびR
3は、直鎖又は分枝鎖のC
1〜C
18アルキル置換基、単環式か又はC
4〜C
8縮合環で構成されるいずれかのアリール置換基、及び/又は例えばB,N、O、Si、P及びSから選ばれたヘテロ原子よりなる群から選ばれる。
【0038】
一般に本発明に適切な求核剤は、例えば求核置換反応に関与するのに電子的にも立体的にも適用可能な孤立電子対を持った少なくとも1つの中性の窒素又は燐センターを有する。好適な求核剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン及びトリフェニルホスフィン、2−ジメチルアミノエタノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−〔2−(ジメチルアミノ)エトキシ〕エタノール、4-(ジメチルアミノ)−1−ブタノール、N―エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、3−(ジエチルアミノ)−1、2−プロパンジオール、2−{〔2−(ジメチルアミノ)エチル〕メチルアミノ}エタノール、4−ジエチルアミノ−2−ブチル−1−オール、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、N−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、2−(メチルフエニルアミノ)エタノール、3−(ジメチルアミノ)ベンジルアルコール、2−〔4−(ジメチルアミノ)フエニル〕エタノール、2−(N−エチルアニリノ)エタノール、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミノ、N−フエニルジエタノールアミン、2−(ジブチルアミノ)エタノール、2−(N−エチルーN−m−トルイジノ)エタノール、2,2’−(4−メチルフエニルイミノ)ジエタノール、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、3−(ジベンジルアミノ)−1−プロパノールおよびこれからの混合物である。
【0039】
本発明の一実施態様として、ブチルポリマーと反応させる求核剤の量は0.05から5モル当量の範囲である。他の態様ではこのモル当量は0.5から4であってもよく、さらにある場合は1から3モル当量の範囲であってもよい。これらの求核剤とブチルモノマーとの比は、ハロブチルポリマー中に存在するハロゲン化アリルまたはベンジル系ハロゲン化物の合計モル量を基準としたものである。
【0040】
今まで述べたように求核化合物はハロブチルポリマーのハロゲン化アリル類またはハロゲン化ベンジル類の官能価と反応し、ハロブチルポリマーに存在するアリルまたはベンジルハロゲン化物中にアイオノマー部分の単位を生成する。したがってブチルアイオノマー中のアイオノマー部分の合計含有量は、ハブチルポリマー中のアリルハロゲン化物またはベンジルハロゲン化物の出発時における量を超えることはないが、残留アリルハロゲン化物、ベンジルハロゲン化物および/または残留マルチオレフィンは存在していてもよい。すべてのアリルハロゲン化物の部位またはベンジルハロゲン化物の部位のすべてが実質的に求核剤と反応するという本発明の態様にあっては、ブチルアイオノマーが生成する。すべてのアリルーまたはベンジルハロゲン化物の部位が求核剤と反応するより少ない場合には、部分的ハロゲン化されたブチルアイオノマーが生成する。
【0041】
本発明の一態様によれば、得られたアイオノマーは、アイオノマー部分の少なくとも0.5モル%のイオン含量を有している。他の態様では、アイオノマーはアイオノマー部分の少なくとも0.75モル%のイオン含有量を有している。さらに他の態様では得られたアイオノマーはアイオノマー部分の少なくとも1.0ないし1.5モル%のイオン含有量を有している。
【0042】
ある場合には、残量ハロゲン化アリルは、0.1モル%から、ハロブチルポリマーを製造するのに用いられたブチルポリマー中の最初のマルチオレフィン含量を超えない範囲までの量で存在していてもよい。ある一つの具体例としては、アイオノマー中の残留マルチオレフィンの含量は少なくとも0.2モル%である。その他の態様の例としては同じく残量マルチオレフィンの含量は少なくとも0.6モル%、他の場合には0.8モル%以上、ある場合は少なくとも1.0モル%、さらには2.0モル%以上、3.0モル%以上、またある場合には4.0モル%以上さえもありうる。
【0043】
本発明の一つの実施態様として、本発明で用いられるアイオノマーは、少なくとも一つのイソオレフィンから誘導された反覆単位を含んでおり、少なくとも0.5%の少なくとも1つのマルチオレフィンモノマーから誘導された反覆単位、及び少なくとも1つの窒素系または燐系の求核剤から成り立っており、この中でブチルアイオノマーまたは部分的にハロゲン化されたブチルアイオノマーは、イソオレフィンとマルチオレフィンから成るモノマー混合物をまず調製し、このモノマー混合物を反応させてポリマーとして、次にこのポリマーをハロゲン化してポリマーにハロ官能部位を生成させ、次いでこのハロ官能部位をポリマーに形成し、次にこのハロ官能部位を求核剤と反応させることによって製造する。
【0044】
本発明に従えば本発明のポリマー組成物は、1種以上の充填剤を含有してもよい。そのうち、好適なものとして鉱物(無機)系の充填剤が挙げられ、その代表的なものはシリカ、シリケート、粘土(clay)(例えばベントナイト)、石こう、アルミナ、二酸化チタン、タルク等、およびこれらの混合物がある。
好適な充填剤の他の例としては、以下のものが挙げられる。
・例えばシリケート溶液の沈殿、又はハロゲン化珪素の火炎加水分解により製造した高分散シリカで、比表面積(BET比表面積)が5〜1000m
2/g、好ましくは20〜400m
2/gで、主な粒度が10〜400nmのものである。これらのシリカは、任意に、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr及びTiのような他の金属の酸化物との混合酸化物として存在してもよい。
・珪酸アルミニウム、及びアルカリ土類金属シリケートのような合成シリケートで
− 珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムでBET比表面積が20〜400m
2/gで主な粒度が10〜400nmのもの。
− 例えばカオリン、天然産シリカのような天然珪酸塩類、
− 天然粘度、例えばモントモリオライトのような天然産粘度、
− 親有機的に変性された粘度類、例えば変性モントモリオライト粘土(例えばSouthern Clay Products社製のCloisite(R)、Nanoclay)、および他の親有機的に変性された天然粘土類、
− ガラス繊維類およびそれを含む製品、例えばマット、押出品、微小ガラス球。
− 酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのような金属酸化物。
− 炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸亜鉛のような金属炭酸塩。
− 金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム又はそれらの組合わせ。
【0045】
本発明の実施態様では鉱物質充填剤としてシリカ、とくに珪酸ナトリウムから二酸化炭素で沈殿させてえられたシリカである。
【0046】
本発明で好ましく使用される乾燥非晶質シリカ粒子は1〜100μ、とくに10〜50μ、さらに好ましくは10〜25μの平均凝集粒度を有するものである。本発明の一態様として、これらの凝集粒子の寸法が5μより小さいものが、または50μを越すものが10容量%より少ないものが意図される。好ましい無定形の乾燥シリカ粒子はDIN(ドイツ工業規格)66131に従ってグラム当り50〜450平方米であるBET表面積を有し、同じくDIN53601の規格従って測定して100gのシリカについて150〜400のDBP吸収を有しまたDIN ISO 787/11に従って測定した乾燥損失が0〜10重量%であるものである。好適な市販の入手可能な製品としてPPGインダストリー社HiSil 210,HiSil 233およびHiSil 243があり、またBayer AG社の通常の市販品としてVulkasil S およびVulkasil Nがある。
【0047】
本出願の無機充填剤は、単独でまたは以下のような公知の非無機充填剤と組合わせて使用できる。
・カーボンブラック、好適なカーボンブラックとしては、ランプブラック法、ファーネスブラック法又はガスブラック法で製造され、BET比表面積が20〜200m
2/gで、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF又はGPFカーボンブラックである。
・ゴムゲル、好ましくはポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体及びポリクロロプレンをベースとするゴムゲルがある。
【0048】
本発明で有用な高アスペクト比の充填剤にはアスペクト比が少なくとも1:3であるものが含まれる。このような充填剤には環状の板状(platy)または針状構造をもつ非等角軸(nonisometric)の材料を含む。ここで「アスペクト比」とは同じ面積を有する板状体表面の円体の平均直径と板状体の平均厚さとの比をいう。針状体や繊維形状の形状をしたものもアスペクト比は、長さと直径の比として扱う。針状体と繊維形状を有する充填剤のアスペクト比は長さと直径の比である。本発明の一実施形態では、高アスペクト比充填剤は少なくとも1:5のアスペクト比を有する。他の態様ではこの比は1:7以上、さらに高いアスペクト比のものは1:200という値を有する。本発明に従う充填剤はその平均粒子の大きさが0.001〜100μ、さらに他の態様では0.01〜10μである。好ましい充填剤はDIN規格66131に従って測定して、1g当り5〜200平方メートルのBET表面積を有する。
【0049】
本発明の一態様では、高アスペクト比の充填剤はナノクレー(nanoclay)、例えば有機的に変性されたナノクレーである。本発明は特定のナノクレーに限定されるものではないが、天然の粉末化されたスメクチック クレー、例えばナトリウム− またはカリシウムモントモリロライト、または例えばハイドロタルサイトやラポナイト(laponite)のような合成クレーを用いるのが好ましい。一つの具体例としては、高アスペクト比の充填剤として有機的に変性したモントモリロライトナノクレーを用いる。またこれらのクレーは当業界で知られているようにオニウムイオンとして遷移金属による置換で変性して、クレーに表面活性機能を付与して、通常疎水性であるポリマーに対する分散性をよくするための変性を行うこともできる。本発明の一つの態様としてオニウムイオンは燐系(例えばホスホニイウムイオン)または窒素系(例えばアンモニウムイオン)のもので、かつ2〜20の炭素原子を有する官能基(例えばNR
4+−MMT)を含有する。
【0050】
上述したクレー類は例えばナノメーター級の粒子寸法、例えば体積25μmより小さいものが用いられる。一つの態様ではその粒子のサイズは1〜50μm、他の態様では1〜30μm、さらに他の態様では2〜20μmであってもよい。
【0051】
シリカに加えてナノクレーは若干のアルミナの部分を含有していてもよい。このナノクレー中のアルミナの含有量は0.1〜10、ある場合には0.5〜5、さらに他の場合では1〜3重量%であることができる。
【0052】
本発明で用いられる高アスペクト比を有する変性ナノクレーとして好ましい市場製品としては、例えばCloisite(R)クレー10A、20A,6A,15A,30Bまたは25A等が挙げられる。一つの態様において、これらの高アスペクト比充填剤は予備生成されたブチルアイオノマーからナノコンポジット(nanocomposite)を生成させるために3〜80phrの量で、別の態様では5から30phrで、さらに別の態様では5〜15phrの量で加えられる。
【0053】
本発明おいてアイオノマーは硬化して、または未硬化のままで用いることができる。硬化した場合にはアイオノマーは硬化システム系で用いられた成分も含有する。どのような硬化システムを採用するかについては特別な限定はなく当事者に知られた各種の方法で硬化を行うことができる。その一つの例としては、本発明においては硫黄系または過酸化物系での硬化を行うことができる。典型的な硫黄系の硬化方法として(i)金属酸化物(ii)元素状硫黄および(iii)少なくとも1種の硫黄系の促進剤を用いる方法がある。上記のうちで(i)の金属酸化物を用いる方法は当事者によく知られており、好ましくは例えば酸化亜鉛を1〜10の割合で用い、本発明の実施の態様では100重量部のブチルポリマーの組成物ナノコンポジット中において酸化亜鉛を約2〜5部用いて行われる。
通常は前記の(ii)で述べた元素状の硫黄を、硬化させる組成物中のブチルポリマー100重量部に対して約0.2〜2重量部用い、前記(iii)の硫黄系促進剤を組成物中のブチルポリマー100重量部当り約0.5〜3重量部用いて硬化反応を行うのが好ましい。硫黄系の促進剤としては、限定する目的ではないが、例えばチウラムスルフィド類、とくにテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDC)のようなチオカルバミン酸塩、メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のようなチアジルおよびベンゾチアジル化合物が用いられる。本発明においてはこれらの促進剤としてとくにMBTSが実用的に用いられる。
【0054】
本発明においては過酸化物系を用いる硬化も好適に実施しうる。これらの過酸化物の例としてはジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,2’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(Vulcup(登録商標)40KE)、ベンゾイルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、(2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等が使用できる。
上記の過酸化物系の硬化剤としては、ジクミルパーオキシドが商品名DiCup40Cとして容易に入手可能であり、例えばゴム100重量部(phr)に対して0.2〜7部、とくに1〜6phr、またさらにある場合には約4phrの量で用いられる。この際さらに硬化助剤(curing co−agent)として、例えばトリアリル イソシアヌレート(TAIC)(このものはDuPont社からDIAK7の商品名で入手できる)またはHVA−2の名で知られているN,N’−m−フエニレンジマレイミド(Du Pont Dow)や、トリアリルシアヌレート(TAC)またはRicon D153の名で知られる液体ポリブタジエン(Ricon Resins社)などが用いられる。これらの硬化助剤は先述の過酸化物系硬化剤とほぼ同量、もしくはそれ以下の量で使用される。
【0055】
ある場合には本発明のブチルアイオノマーの配合の際に通常知られ、よく用いられる他の様々の補助薬品、例えば安定剤、酸化防止剤、増粘剤などの当業者の常用薬品が通常の用法、用量で用いられてもよい。
【0056】
ポリマー組成物がアイオノマーをはじめ、充填剤、硬化剤および/または他の添加剤を含む場合は、これらの成分は通常使用される混合−配合技術に従って調合される。すなわち それらの含有成分をバンバリーミキサー、小型混合器(例えばHaake またはBrabender mixer)またはニ軸ローラーミキサー等を使用して混練する。さらに押出し機を使用すると良好かつ短期間で混合を行うことができる。また混合操作は多段にわたって、場合によっては各段毎に異なった種類の混合機を組み合わせて(例えば1段目を内部撹拌機にし、2段目を押出し機として)行うこともできる。さらに他の混合、練り合わせ等の操作、技術についての情報の詳細に関しては、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering の第4巻の第66頁の“Compounding”等を参照されたい。また当業者間に周知、慣用であるさらに他の技法等を任意に採用してもよい。
【0057】
本発明の実施の態様に従えば、アイオノマーは様々の手段で成形品に加工され、また既存の物品、物体に施用される。また物品それ自体の全部、または一部がアイオノマーから成り立っているものでもよい。またアイオノマーが物品の表面上のみに適用、塗布されていてもよいし、アイオノマーを含む状態で一体として物品の表面上に成形、塗着、接着、固着、結着されていてもよい。またアイオノマーはプラスチックを構成する組成の一部分として提供されてもよい。プラスチックはポリエチレン、ポリプロピレン、EPポリマー、EPDMポリマーまたはナイロンポリマーであってもよく、またブチルアイオノマーとプラスチック材料から成る熱可塑性の加硫化または硬化製品を構成してもよい。
【0058】
本発明にかかるアイオノマーは物品、物体の表面被覆の一部として、塗料または他に殺菌剤、殺カビ剤を含む膜の形で提供されてもよい。この表面(膜)や被覆は色々な厚みの塗膜または表面被覆膜として、通常の塗装、化学的蒸着または粉体塗装を含む方法として施されてもよいし、さらにプラスチックの被覆を含んでいてもよい。
【0059】
アイオノマーはそれ自身を被覆の一部としてもよいし、もし被覆の外に浸出する恐れのあるものでさえなければ、他の付加的な抗菌剤、防かび剤、防藻剤等をも含み得る。ここでこの被覆剤は原則的にアイオノマーおよびその成分の主要部としてのみ含まれるものをいい、充填剤や硬化剤はアイオノマーの一部分として含まれるものを意味する。
【0060】
本発明の対象となる物品(物体)としては、ホースおよびパイプなどの流体用の導管(conduit)、びん、携帯容器、貯蔵容器など、容器のふたまたは栓、シール封印剤、例えばガスケットやコーキング剤、材料操作機器、例えば木工錐(auger)またはコンベアベルト;海洋または水中機器、例えば船舶、ドック、堀削、穿孔プラットフォーム、冷却塔、治金、金属加工機器その他あらゆる金属加工流体関係器材;エンジン部材、部品、例えば燃料供給ライン、燃料濾過器、燃料タンクのシーリング;または脚/足と直接接触する履物、靴類、装具などが挙げられる。
【0061】
上述した種々の物品/物体以外に対して本願のブチルアイオノマーが適用、または被覆の対象となるものは極めて多数あり、決してこれらに限定されるものではないがそれらをさらに下記に例示する:乳幼児用品、浴室用設備、浴室用安全具、床材、食品貯蔵、庭園、厨房、台所、勝手設備、用具、製品、事務用機器、ペット用品、シーラント(封止剤)、しつくい、spas,水濾過および貯蔵機器、器具、食品調理器具、台の表面、買物用カート、表面装具、貯蔵容器、履物類、足保護布、スポーツ用具、スポート用カート、歯科用機器、ドア用取手、衣服、電話、玩具、病院用カテーテルおよび注入流体等の表面、血管導入管およびそれらの被覆、食品加工、バイオ医療機器、フィルター、添加物、コンピューター類、船舶外装、シャワー壁、生物汚染防止/低減用チュービング、ペースメーカー、インプラント、外傷用装具、医療繊維製品、製氷機、水冷却機器、果汁自動販売機およびその配管、貯蔵、計量、バルブ、付属品、フィルター収納室、内装、防護塗装など。
【0062】
本発明の一つの面は、アイオノマーが抗菌、抗カビおよび/または抗藻性を有するという特性に基づいている。この特性は生成したアイオノマーの有するイオン的特性に起因している。本発明の原理は特定の理論で束縛されるものではないが、本発明にかかわるアイオノマーが、通常のハロゲン化されたブチルポリマーでは見られない抗菌、防カビおよび抗藻性を有しているということに起因するものと考えられる。
【0063】
前述したように本発明を抗菌剤、抗カビ剤および/または抗藻剤類としての用途に用いることも魅力的であるが、それらの抗生物作用効果はこれらが拡散または揮発する速度を適当に制御するのが困難であるため、これら抗菌剤等がポリマー本体から揮散消失するのが早く、その所期の抗菌、防かび、殺藻作用が比較的短時間で消失してしまい、その効果が長続きしないという欠点がある。その上これら防護剤の容易な揮散が環境の汚染を招き、さらにそれ揮散した物質が他の有機物と反応してそれらを変質させたり、劣化させる危険を生ずることにある。一方本発明のアイオノマーのように有効防護薬剤がポリマーの本体部分と共有結合によって確固に結合したものは、そのような添加薬剤の揮散がないか、著しくそれが遅いかまたは低減されるため、その抗菌、防かび、殺藻作用が選択的に長く保持され、それらを含むポリマー類の取扱い上の安全性を保つことが可能となる。
【0064】
このようなアイオノマーを用いるのは、もともと存在するポリマーの多分散性、分子量、トポロジイ(topology)がポリマーの重合時に添加されたこれら抗菌剤等の防護薬剤の影響によって変化して往々劣化することを防ぐ作用を示すという大きい利点を生ずる。ここに述べたアイオノマーの使用は元のポリマーの有していた本来のすぐれた性質を保持することを可能ならしめるのみでなくさらにそのすぐれた物理的性質、例えばその相互反応性、接着性および本来の薬効等の性質を保持もしくは改善することを可能ならしめえるのである。これからの改善された諸性質はそれから成形された物品、またはそれによって接着的に被覆された物品の価値を著しく向上させることができるのである。
【0065】
本発明は特に種々の微生物に対して有用である。しかし以下に述べる種々の微生物に関する記載は決して本発明を限定するための目的のものではなく、単に本発明にかかわるブチルアイオノマーが如何に効率的に作用するかについて例示的に記載したものにすぎない。(微生物名等は正確を記するために国際的に用いられている名称を原綴りで示した。)
【0066】
藻類(Algae):chlorophyta, rhodophyta, glaucophyta, chlorarachniophytes, euglenids, heterokonts, haptophyta, cryptomonads, dinoflagellates
【0067】
かび(真菌)類(Fungii):Altemaria, aspergillus, basidiomycetes, botrytis, candida albicans, cephalosporium, chaetomium, cladosporium, curvularia, drechslera, epicoccum, fusarium, geotrichum, helminthosporium; humicola, monilia, neuspora, nigrospora, penicillium, phoma, pullularia, rhizophus, rhodotorula, scopulariopsis, stemphylium, trichoderma,
unocladium and verticillium
【0068】
グラム陰性菌(Gram−negative bacteria):Salmonella, Shigella, Neisseria gonorrhoeae, Neisseria meningitidis, Haemophilus influenzae, Escherichia coli, Klebsiella, Pseudomonas aeruginosa.
【0069】
グラム陽性菌(Gram−positive bacteria):
Bacillus, Listeria, Staphylococcus, Streptococcus, Enterococcus, Clostridium, Epulopiscium, Sarcina, Mycoplasma,, Spiroplasma, Ureaplasma, Lactobacillus, Corynebacterium, Propionibacterium, Gardnerella, Frankia, Streptomyces, Actinomycesおよび Nocardia.
【0070】
本発明によるアイオノマーは硬化させた、または未硬化のポリマー組成物として、また熱可塑性エラストマー(ゴム状体)、再成形可能なポリマー組成物、被覆物(塗料)その他の組成物として使用可能である。以下本発明をより詳細に説明するためにいくつかの限られた実施例を示すが、これらは単なる例示であり、当業者であれば、ここに記載の内容に多種多様の変化を加えて本発明の請求の範囲に示された精神を逸脱することなく、色々な別の態様を導き出して実施することは容易であろう。
【実施例】
【0071】
実施例1
LANXESS BB2030の356gと、トリフェニルホスフィン(TPP)の16.7g(臭化アリル含量に基づいて1.2モル当量)を6”×12”の粉砕器(mill)で3分間室温で予備混合した。この混合物を160℃で2軸スクリュー 押出機に通した。得られた製品の
1H NMRによる分析によって、BB2030のすべての臭化アリルが、イオン含量が0.8モル%である相当するアイオノマー種に完全に変換されたことが確認された。このサンプルを100℃で5分間モールドし、それが有するグラム陽性菌(Staphylococcus aureus)の成長に対する抵抗性を三重試験によって測定した。試料はSab Dex 寒天(SDA)のプレート上に置かれ、そこに約10
6個の細胞が添加され、プレートに載せて30℃で培養された。7日後に試料の増殖は見られず、0.8モル%のイオン官能性を有するブチル系のホスホニウムアイオノマーがグラム陽性菌の増殖を阻止する作用を示すことを示した。
【0072】
実施例2
実施例1で生成されたアイオノマーのグラム陰性菌(Escherichia coli)に対する抵抗性を実施例1で用いられかつそこに記載されたのと同一の手法で試験した。7日後試料上でのバクテリアの増殖は認められず0.8モル%イオン官能性を有するブチル系のホスホニウムアイオノマーがグラム陰性菌に対する阻止力を有することを示した。
【0073】
実施例3
実施例1で生成したアイオノマーを用いて、グラム陽性菌の混合物(Staphylococcus aureus および micrococcus luteus)に対する抵抗性を実施例1について記載したのと同じ手法で試験した。7日後、試料上のバクテリアの増殖は認められず、0.8モル%のイオン官能性を有するブチル系のホスホニウムアイオノマーが各種のグラム陽性菌の増殖を阻止することが証明された。
【0074】
実施例4
実施例1で用いられたアイオノマーがグラム陰性菌の混合物(Escherichia coli と Psudomonas aeruginosa)に対して示す抵抗性を実施例1と同様な手法で試験した。7日後、試料上にバクテリアの増殖は認められなかったことから、0.8モル%のイオン官能性をもつブチル系のホスホニウムアイオノマーが種々のグラム陽性菌の増殖を阻止する作用を有することが示された。
【0075】
実施例5
実施例1で作られたアイオノマーの真菌類であるAsperigillus Niger に対する抵抗性を三重試験によって試験した。試料をマルト(Malt)寒天プレート上に置き、約10
6個の上記真菌の胞子(spore)をプレート上に添加し、30℃で培養した。28日後試料上にはかび(mold)の発育がなく、0.8モル%のイオン官能性を有するブチル系のホスホニウムアイオノマーの抗真菌性が立証された。
【0076】
実施例6
実施例1で作成したアイオノマーの真菌類混合物(cocktail)に対する抵抗性を三重試験によって測定した。Malt寒天培地にサンプルを載せ、次に約10
6個のAspergillus niger,Penicillium pinophium Aureobasidium pullulan,および Chaetomium globosum の混合物をサンプル上に添加し、プレートにのせて30℃で培養した。28日後サンプル上にはかびの増殖は何も認められなかったことから、0.8モル%のイオン官能性を有するブチル系ホスホニウムアイオノマーが広範な種類の真菌類に対する阻止力を有することが確認された。
【0077】
実施例7
実施例1で作成したアイオノマーの藻類混合物(coctail)に対する抗性をサンプルで三重試験によって測定した。Malt寒天培地にサンプルを載せ、次に約10
6個の、Ulothrix gigas, Calothnix membranacea, Scenedesmus obliquus, および Chlorella sp.の混合物をサンプル上に添加し、プレートで30℃で培養した。28日後サンプル上には藻類の増殖は何も認められなかったことから、0.8モル%のイオン官能性を有するブチル系ホスホニウムアイオノマーが広範な種類の藻類に対する増殖阻止力を有することが確認された。
【0078】
実施例8
約1gの実施例1を殺菌のために95%エタノール中に浸潰した後20mlのシンチレーションバイアル中に置き、そこに10mlのM9媒体を添加した。DH5α細菌のコロニー(E.Coliグラム陰性菌)の株が選ばれ、M9媒体の食塩溶液中に懸濁させた。次に500μLの各部分宛のDH5α菌の懸濁液を各試験管に添加した。対照のためにゴム分非含有処理物を用い、495μLのサンプル類を0、4、8、10および24時間の間試験した。バクテリアのカウントの流れサイトメリー(cytometry)および核酸ステイン(stain)のSYBER Green(R)を次の操作によって測定した:100XSYBER Green(R)染料(DMSO中に懸濁したもの)の5μLをIXの最終SYBER Green(R)(concentration)濃縮物の495μLについて添加した。このサンプルを遮光下15分間培養したのち、フローサイトメーター(flow cytometer)による測定に付して、フローサイトメトリー(flow cytometry)と核酸ステインSYTOX(R)を用い、24時後に死滅した細胞の割合をパーセントで求めた。60%以上のバクテリアは死滅したことから、ブチル系ホスホニウムアイオノマーで0.8モル%のイオン官能度を有するものの有する高い効果が明らかである。その結果は
図1に示されている。
【0079】
実施例9
LANXESS BB2030を277gと、トリフィニルホスフィン(TPP)(臭化アリル含量に基づいて0.2モル当量)を6”×12”の粉砕機で室温で3分間予備混合した。混合物を次にニ軸スクリュー押出機に160℃で通した。最終生成物を
1HNMR分析にかけて0.2モル%のホスホニウムイオン根が存在することを確認した。得られたサンプルを100℃で5分間モールドし、それのグラム陽性菌の混合物〔(Staphylococcus aureus)および(Micrococcus Luteus)の混合物〕に対する抵抗性を三重試験法で測定した。試料をSab Dex寒天(SDA)プレート上におき、そこへ約10
6個の細胞を添加し、平板上で30℃で培養した。7時間後サンプル上には何らのバクテリアの増殖も見られなかったことから、0.2モル%イオン官能価もつブチル系のホスホニウムアイオノマーが色々な種類のグラム陽性菌に対する増殖阻止作用を有することが立証された。
【0080】
実施例10
実施例9で作成されたアイオノマーのグラム陰性菌混合物〔(Escherichia coli および Pseudomonas aeruginosa)〕に対する抵抗性が実施例9と同様な手法によって測定された。7日経っても、サンプルには何らの細菌の増殖も見られなかったことから、0.2モル%のイオン官能価を有するブチル系のホスホニウムアイオノマーが各種のグラム陰性菌の増殖に対して阻止作用を有することが立証された。
【0081】
実施例11
実施例9で作成されたアイオノマーの真菌(かび)の混合物に対する抵抗性を三重試験した。サンプルをマルト(Malt)寒天板上に置き、その後約10
6個の胞子(Spore)数のAspergillus niger,Penicillium pinophilum,Aureobasidium pullulan,および Chaetomium globosumより成る真菌類混合物をサンプルに添加し、これを30℃で単板培養した。28日後サンプル上にかびの増殖は見られなかったことから、0.2モル%のイオン官能価をもつブチル系のホスホニウムアイオノマーが多種類の真菌類に対して増殖防止作用(防黴作用)を有することが立証された。
【0082】
実施例13
LANXESS BB2030を273gおよびトリフィニルホスフィン(TPP)(臭化アリル含量に基づいて0.6モル当量)を6”×12”の粉砕機で室温で3分間予備混合した。この混合物をニ軸スクリュー押出機を通して160℃で押出した。最終製品を
1HNMRで分析したところ0.6モル%のホスホニウムイオン根の存在が確認された。このサンプルを100℃で5分間モールドした後、混合グラム陽性菌の(Staphylococcus aureusおよびMicrococcus luteus)に対する抵抗性を三重試験した。サンプルをSab Dex寒天(SDA)培地上に置き、そこに約10
6個の細胞を添加し、30℃で平板培養した。7日後、サンプルには何のバクテリアの増殖も見られなかったことから、0.6モル%イオン官能価もつブチル系のホスホニウムアイオノマーが広範囲の種類のグラム陽性菌に対して成育阻止作用を有することが立証された。
【0083】
実施例14
実施例13で作成したアイオノマーの、各種グラム陰性菌類の混合物、(Escherichia coli および Pseudomonas aeruginosa)に対する抵抗性を実施例9と同様の手法で試験した。7日経っても、サンプルには何らのバクテリアの増殖も見られなかったことから、0.6モル%のイオン官能価をもつブチル系のホスホニウムアイオノマーが広範囲の種類のグラム陰性菌の増殖に対して阻止作用を有することが立証された。
【0084】
実施例15
実施例13で作成したアイオノマーの各種グラム陰性菌類の混合物に対する抵抗性を三重試験した。サンプルをマルト寒天培地に置き、続いてniger,Penicillium pinophilum Aureobasidium pullulan および Chaetomium globosum の混合物から成る混合菌の約10
6個の胞子群をサンプルに添加し、30℃で平板培養した。28日後、サンプル上に何らのかびの増殖見られなかったことから、0.6モル%のイオン官能価をもとブチル系のホスホニウムアイオノマーが広範囲の種類のかび(真菌類)に対する増殖阻止作用を有することが立証された。
【0085】
実施例16
実施例13で用いられたアイオノマーの各種藻類混合物に対する抵抗性が三重試験法で測定された。サンプルはMalt寒天培地上に置かれ、ここに約10
6菌株濃度のUlothrix gigas, Calothrix membranacea, Scenedesmus obliquus, および Chlorella SPの混合物が添加され30℃で平板培養された。28日経過後、サンプルには何らの藻類の増殖も認められなかったことから、0.6モル%のイオン官能度をもつブチル系のホスホニウムアイオノマーが広範囲の種類の藻類に対して育成阻止作用を有することが立証された。
【0086】
実施例17
LANXESS BB2030を、0.4mL/分の割合でN,N−ジメチルモノエタノールアミン(DMAE)を添加しながら、2軸スクリュー延伸機に通した。
1HNMRによる最終生成物の分析の結果、0.8モル%のアンモニアイオン根が存在していることがわかった。サンプルは100℃で5分間モールド(mold)され、そのグラム陽性菌(Staphylococcus aureus)に対する抵抗性が三重試験に付された。サンプルをSab Dex寒天(SDA)培地に置き、そこに約10
6個の細胞を添加し、30℃で平板培養した。
7日後、サンプル上には何らのバクテリアの増殖も見られなかったことから、0.8モル%のイオン官能価をもつブチル系のアンモニウムアイオノマーがグラム陽性菌の増殖に対して育成阻止作用を有することが立証された。
【0087】
実施例18
実施例17で作成したアイオノマーの、グラム陰性菌(Escherichia coli)に対する抵抗性を実施例17と同様の手法で試験した。7日後、サンプルには何らのバクテリアの増殖も見られなかったことから、0.8モル%のイオン官能価をもつブチル系のアンモニウムアイオノマーがグラム陰性菌に対する増殖阻止作用を有することが立証された。
【0088】
実施例19
米国特許US2007/0218296A1(この明細書は関連参照文献として本願で援用する)にはハイイソプレンBIIRの製造が記載されている。すなわち、204gの臭素化された高イソプレンブチル、および8.04g(臭素化された高イソプレンBIIRの臭素アリル含有量に基づいた1.2モル当量)のトリフェニルホスフィン(TPP)が6”×12”の混合機(mill)で室温下3分間予備混合された。この混合物は2軸押出機を通して160℃で押出され、こうして得られた最終製品は
1HNMR分析によって臭化アリルが0.8モル%イオン含量を有する相当するアイオノマー種に完全に変換されたことが確認された。得られたサンプルは100℃で5分間モールドされ、そのグラム陽性菌(Staphylococcus aureus)の増殖に対する抵抗性が三重試験法で測定された。サンプルをSab Dex 寒天培地(SDA)上に置き、そこに約10
6個の細胞を添加し、30℃で平板培養した。7日後、サンプル上にはバクテリアの増殖は認められず、これによって0.8モル%のイオン官能価を有する高イソプレン含有ブチル系ホスホニウムアイオノマーがグラム陽性菌の増殖に対して強い阻止力を有することが証明された。
【0089】
実施例20
実施例19で作成されたアイオノマーのグラム陰性菌(Escherichia coli)に対する抵抗性が、同実施例に記載の方法に沿って試験された。7日後に於いて、サンプル上にバクテリアの増殖は認められず、0.8モル%のイオン官能価を有する高イソプレン含有ブチル系ホスホニウムアイモノマーがグラム陰性菌対して抗菌力を示すことが実証された。
【0090】
実施例21
約1gの実施例19を95%のエタノールに浸漬して殺菌処理したものを20mLのシンチレーションバイアル中に入れ、10mLのM9媒体を添加した。DH5α細菌のコロニー(E.Coliグラム陰性菌の株の1種)を選び、M9塩の溶液中に懸濁した。次に500μL毎のDH5α菌の懸濁液を各試験管に注入した。比較としてゴム不含処理のものを用い、495μLずつのサンプルをそれぞれ0,4,8,10および24時間試験した。菌のカウントは、流れのサイトメトリー(Cytometry)および核酸ステインSYBERR Green(R)を用いて次の操作で行った(generated.):5μLの100X SYBER Green(R)染料(DMSOに懸濁)を495μLのサンプルに最終のIXのSYBER Green(R)濃度に対して添加したサンプルは暗所で15分培養し、それに次いで流れのサイトメーター(Cytometer)にかけた。死滅した細胞の%は流れサイトメトリーと核酸ステインSYTOX(R)を24時間後に用いて測定した。50%以上の細菌が死滅したことによって、0.8モル%のイオン時機能性有する高イソプレン含有のブチル系ホスホニウムアイオノマーの有する生物学的効力が示された。
図1にその結果が示されている。
【0091】
実施例22
WO2001/021672号公報−これは本願において参照として援用する−には、イソブチレン、イソプレンおよびp−メチルスチレンから成る臭素化されたブチルターポリマーの製法が記載されている。この100gの臭素化ターポリマーと4g(ターポリマーの臭素化アリル含有を基礎として1.2モル当量に相等)のトリフェニルホスフィン(TPP)を6”×12”のミルを用いて室温で3分間予備混合し、得られた混合物を160℃で二軸スクリュー延伸機に通した。得られたサンプルを100℃で5分間モールドし、そのグラム陽性菌(Staphylococcus aureus)の増殖に対する抑止力を三重試験法によって測定した。サンプルをSab Dex 寒天(SDA)培地に置き、そこに約10
6個の細胞を添加し、30℃で平板培養した。7時間後、サンプルには何ら細菌の増殖も見られず、これによって0.8モル%のイオン的官能価を有するブチルターポリマー系ホスホニウムアイオノマーが有するグラム陽性菌に対する
阻止力が明らかに示された。
【0092】
実施例23
実施例22で作成されたアイオノマーのグラム陰性菌(Escherichia coli)に対する抗菌性を同例に記されたと同様な手法で試験した。7日間後、サンプル上には菌の増殖は見られず、0.8モル%のイオン官能価(functionality)を有するブチルターポリマー系のホスホニウムアイオノマーがグラム陰性菌の増殖に対する阻止力を有することが示された。
【0093】
実施例24
実施例1をカーボンブラックN660と60℃でブラベンダー(Brabender)混合機で60rpmのローター速度で15分間混練した。得られた混合物を100℃で5分間モールドし、グラム陽性菌(Staphylococcus aureus,濃度〜10
5)を日本工業規格JISZ2801:00−その内容は本明細書中で援用するものとする−に従って三重試験した。この方法によれば抗菌活性は被試験サンプル物体の表面に35℃で24時間密着させた後に生存している細菌を数量化することによって試験される。そしてその抗菌効果はここで検体の表面に存在している細菌を比較対象検体のそれと比較することによって行われる。すべての試験で比較用対象物品としてポリエチレンフィルムから成るものを使用した。カーボンブラックを充填したホスホニウムアイオノマー組成でグラム陽性菌を大きく減少させた(log reduction)ものが見出された。
【0094】
実施例25
実施例24で生成したアイオノマーの抵抗性を、グラム陰性菌(Escherichia coli)に対して同例と同様の手法で試験した。そのうちカーボンブラックを充填したホスホノマーアイオノマーを含む組成物を用いた少なくとも1つの試験ではカーボンブラックを充填することによって極めて著しい細菌の減少を示す例が見受けられた。
【0095】
実施例26
実施例1をHi Sil 233とバンバリー混合機で60℃でローター速度60rpmで15分間混合し、生じた混合物を100℃で5分間モールドし、グラム陽性菌(Staphylococcus aureus,濃度〜10
5)の増殖に対する抵抗性をJISZ2801の方法で試験した。シリカを充填したホスホニウムアイオノマー組成物は、少なくともグラム陽性菌の増殖に対して極めて大きい抗菌力を示した。
【0096】
実施例27
実施例24で作成したアイオノマーのグラム陰性菌(Escherichia coli)に対する抵抗力を同例に記したと同様な方法で試験した。シリカを充填したホスホノマーアイオノマーを含む組成物は、グラム陰性菌の増殖に対して少なくとも著しい減少効果を発揮した。
【0097】
実施例28
実施例1とClosite15Aをバンバリー混合機でローター速度60rpmで15分間混合した。得られた混合物を100℃で5分間モールドしたものに対する抵抗性をグラム陽性菌(Staphylococcus aureus,濃度〜10
5)でJIS2801に従って三重試験した。少なくとも一つの粘土−充填したホスホニウムアイオノマーナノコンポジットは、グラム陽性菌の増殖に対して著しい減少結果(log reduction)を示した。
【0098】
実施例29
実施例28で作成したアイオノマーのグラム陰性菌(Escherichia coli)に対する抵抗力を、上記例と同様な手法で試験した。少なくとも一つのバクテリア群がシリカを充填したホスホノマーがグラム陰性菌の増殖に対して示したアイオノマーナノコンポジットと同様の抗菌作用を発揮した。
【0099】
実施例30
Exxpro3745の250gを室温で粉砕機を用いて3分間トリフェニルホスフィンの20gと混合する。得られた混合物を小型のニ軸スクリュー押出機を(160℃、20rpm)通し、次に室温の粉砕機に通して精製してから、NMRによって、親ポリマーの臭化ベンジルが相当するアイオノマーの種に完全に変換したことを確認する。この改質された(modified)ポリマーはグラム陽性およびグラム陰性細菌、藻類、真菌(かび)類の増殖に抵抗する性質を有している。
【0100】
実施例31
実施例1において、一面の1平方フィートの表面を、同実施例1で述べられたブチルアイオノマーで被覆し、水族館中で1週間カワホトトギスガイ(Zebra mussels)(zm)に曝露した。表面に付着したzmの数を数え、一方ブチルアイオノマーで表面を被覆されていない比較用サンプルのそれと比較する。もしzmが付着したアイオノマーの表面がアイオノマーを被塗していない表面のzmより50%以下である場合にはアイオノマーの防止効果を有効と判断すべきであろう。このようにバクテリア、かび、藻類等に対するブチルゴムアイオノマーの増殖防止効果は同じような機序で、節足動物類、軟体動物類等の他の各種の生物類の駆除防除、増殖蔓延の防止に、等しい効果を発揮するものと考えられる。
【0101】
実施例32
100phrの実施例1を、40phrのポリプロピレンと内部ミキサーで180℃で100rpmの回転速度で処理した。得られた材料をモールドし、その抵抗性(tensile property)を測定した。その結果処理された物品はグラム陽性およびグラム陰性菌類、藻類およびかび類に対する抵抗性の増加が見られた。
【0102】
実施例33
100phrの実施例1を60phrのカーボンブラックN660(Carbon Black N660)とバンバリーミキサー中で77rpmの回転速度で1分間処理した後ペンティリンA(Pentayln A)(4phr)、サンパー(Sunpar)(7phr)、およびヴァルカシット(Vulkacit)DM/C(1.3phr)を添加してさらに4分間混合する。これに加硫性(curative)硫黄(0.5phr)ステアリン酸(1phr)および亜鉛華(1.5phr)を加え6”×12”ニ軸ロールミル中で温室処理する。得られた混合物は100℃で硬化させたところ、硬化後の製品はグラム陽性菌、グラム陰性菌、かび類、藻類等に対して抵抗性を有している。