特許第5719353号(P5719353)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719353
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】発泡性フルオロポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
   C08J9/12CEW
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-510899(P2012-510899)
(86)(22)【出願日】2010年5月10日
(65)【公表番号】特表2012-526902(P2012-526902A)
(43)【公表日】2012年11月1日
(86)【国際出願番号】US2010034215
(87)【国際公開番号】WO2010132350
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2013年4月26日
(31)【優先権主張番号】61/178,584
(32)【優先日】2009年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ハイディ・エリザベス・バーチ
(72)【発明者】
【氏名】サンダー・キルネーガー・ベンカタラマン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・トマス・ヤング
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−173570(JP,A)
【文献】 特開平05−151846(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/141334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00−9/42
H01B11/00−11/22
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融加工可能なテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーと、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーと、発泡セル造核剤とを含む発泡性組成物であって、該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの溶融温度が、上記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーの溶融温度より35℃か、もしくはそれ以下でしかない温度で高いか、または該テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーがそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有し、該コポリマーの一方のMFRが該ポリマーの他方のMFRの少なくとも2倍であり、そして上記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーのMFRが、上記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーのMFRよりも低いか、またはそれらの組み合わせである、上記発泡性組成物。
【請求項2】
溶融加工可能なテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー、発泡セル造核剤、および発泡剤を含む組成物を形成する工程と、該組成物を押出ダイから導体上へ溶融ドローダウン押出して絶縁体を該導体上に形成する工程とを含み、該溶融ドローダウン押出する工程が上記ダイから該導体上の該絶縁体の形成まで伸びる融解状態での該組成物のコーンを形成する方法であって、上記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの溶融温度が上記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーの溶融温度より35℃かそれ以下でしかない温度で高く、および/または該テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーがそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有し、該コポリマーの一方のMFRが該コポリマーの他方のMFRの少なくとも2倍であり、そして上記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーのMFRが、上記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーのMFRよりも低く、上記発泡剤が該融解組成物を上記導体上で発泡
させる、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に高い周波数、たとえば少なくとも10GHzで使用される同軸ケーブルにおける絶縁体を形成するために特に好適である発泡性フルオロポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、データ伝送の3〜18GHz周波数にわたって使用されるケーブルにおける電気絶縁体としての発泡フルオロポリマー絶縁体の望ましさを開示している。10GHzで0.0015未満の損失正接を有する溶融押出可能なフルオロポリマーと一緒にある種の発泡剤の使用が開示されている。この発泡剤は、押出機内に維持される圧力によって、押出機内では融解フルオロポリマーに溶解している。この圧力は、融解フルオロポリマーが押し出された後に解除され、溶解発泡剤が融解フルオロポリマー内で溶液から出てきてそれによってケーブルの導体上へ押し出された絶縁体内に泡(空洞)を形成することを可能にする。空洞は、融解ポリマーが固化しているときに形成して、ポリマー絶縁体内に泡をセルとして閉じ込め、それによって発泡絶縁体を形成する。融解ポリマー中に存在する発泡剤の量は、押出機内では溶解したままであるが、絶縁体の発泡が絶縁体の露出表面もしくは導体と接触した表面を通ってまたはケーブルの信号伝送性能を悪化させる大きい空洞を生成するための絶縁体の厚さ内の内部で泡の破裂(破断)を引き起こさないよう多すぎないように調節される。この破断は、押出発泡ステップで達成可能な空洞率を制限するものである。フルオロポリマーの溶融強度はこの点で役割を演じる、すなわち、フルオロポリマーの溶融強度が高ければ高いほど、耐破断性は大きく、達成できる空洞率は大きくなる。
【0003】
特許文献2は、発泡絶縁体を形成する融解ポリマー内にセル(空洞)を形成するための核剤として働くための窒化ホウ素およびある種の無機塩をフルオロポリマー中へ分散させることの望ましさを開示しており、それによって溶解発泡剤の膨張は、融解ポリマー内に形成されるセルが小さいという結果になる。核形成剤は、空洞が生じるための部位を形成する。この特許は、発泡セル(foam cell)核形成剤を含有する融解フルオロポリマーがチューブとして押し出され、チューブが円錐の形状へ真空ドローダウンされ、円錐の頂点が、押出機クロスヘッドのガイド先端を通過するワイヤと接触する場所である、溶融ドローダウン押出発泡プロセスを記載している。円錐の肉厚は、より速くランする導体が円錐を延伸する(引っ張る)ので頂点に向かって減少する。この特許は、融解フルオロポリマーが押出ダイを出るときに溶融圧力の急低下によって、溶解ガスが融解フルオロポリマー中の溶液から出てくることを開示している。溶解発泡剤の発生は、特に円錐頂点に近づくにつれ薄くなる円錐の壁において、空洞が円錐内に形成された場合に円錐を形成する融解ポリマーの溶融強度の弱化によって引き起こされる円錐の破断を回避するために融解ポリマーが導体と接触するまで遅らされる。発泡法の動的性質は、発泡セル寸法が導体の速度(ライン速度)および円錐の長さの両方と共に変わることによって、特許文献2の表IIおよびIIIによって明らかにされている。
【0004】
特許文献3は、任意選択的に窒化ホウ素および無機塩と一緒に、新しいクラスの発泡セル核形成剤、熱的に安定なスルホン酸およびホスホン酸ならびに塩を使用する、すなわち、より小さいセル寸法およびより高い空洞率の発泡体の形成における追加の改善を開示している。
【0005】
特許文献4は、100MHz〜10GHzの範囲にわたってフルオロポリマーについての散逸率の減少をもたらす、フッ素処理にフルオロポリマーを曝してフルオロポリマーの不安定末端基と反応させてそれらを−CF末端基に変換することである、別の改善を開示している。特許文献4の表1は、散逸率への伝送周波数の影響を開示している、すなわち、周波数が1MHzから10GHzに増加するにつれて、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(TFE/HFP)に比べたテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマー(TFE/PPVE)の散逸率利点は逆転する、すなわち、それぞれ、0.000087対0.00573〜0.0010対0.00084である。
【0006】
特許文献5は、導体に対する発泡絶縁体の親和性を増加させる、重合したままの末端基の幾つかをコポリマー中に残す、TFE/HFPコポリマーの不完全なフッ素化による800MHz〜3GHzの伝送周波数範囲にわたる反射減衰量の改善を開示している。不完全フッ素化の効果は、単一TFE/HFPコポリマー、またはその1つが不完全にフッ素化されている、TFE/HFPコポリマーの混合物を使用することによって得ることができ、混合物は、所望のメルトフローレイトを有する特別な単一フルオロポリマーを製造する必要性を省く。残念ながら、米国特許出願公開第2008/0283271号明細書の実施例1のTFE/HFPコポリマーの混合物の散逸率は、10GHzのような高い伝送周波数にとって高すぎる、0.00048である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,560,829号明細書
【特許文献2】米国特許第4,764,538号明細書
【特許文献3】米国特許第4,877,815号明細書
【特許文献4】欧州特許第0 423 995号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0283271号明細書(米国特許第7,638,709号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
製造するのに経済的であり、かつ、少なくとも10GHzでなどの高い周波数で良好な信号伝送特性を示す発泡絶縁体が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、相違で特徴づけられるフルオロポリマーを混合することによって発泡性組成物のフルオロポリマー部分を形成する、およびこれらの相違が信号伝送ケーブルの導体上の改善された発泡絶縁体に意外にも寄与することを発見するという絶縁体発泡技術における独特のアプローチによってこの要求を満たすものである。
【0010】
本発明の一実施形態は、溶融二次加工可能なテトラフルオロエチレン(TFE)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)コポリマーと、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、テトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)コポリマーと、発泡セル核形成剤とを含む発泡性組成物であって、前記TFE/PAVEコポリマーの溶融温度が、前記TFE/HFPコポリマーの溶融温度より35℃以下の範囲で高い組成物である。
【0011】
FEPとして一般に知られる、最も一般的なTFE/HFPコポリマーは250〜260℃の溶融温度を有し、PFAとして一般に知られる、最も一般的なTFE/PAVEコポリマーは300〜310℃の溶融温度を有する。45℃の溶融温度差を有する、これらのコポリマーが組成物のフルオロポリマー部分を形成し、コポリマーのそれぞれがかなりの部分、フルオロポリマー部分の総合重量の少なくとも25重量%を構成する、押し出された発泡性組成物は、押出物がダイから出る際のコポリマー相分離およびコポリマー粒子の剥がれ落ち(sloughing off)に起因する、ポリマーの凝集体を押出ダイの出口で形成することが分かった。この剥がれは、ダイ面上に輪として形成されるダイドロールとは外見が異なり、押出物の周囲を取り囲み、定期的に押出物によってダイ面から引き離されて発泡絶縁体の表面上にポリマーの滑らかな塊を形成する。ダイドロールは、融解フルオロポリマーが押出ダイを出るときに融解フルオロポリマーの表面からにじみ出るフルオロポリマーの低分子量画分に由来する。本発明へのワークアップにおいて遭遇する剥がれは、ダイ面上に生じ、そして押出物の周囲周りに間隔を置いて配置されるポリマーの個別の凝集体で特徴づけられる。これらの凝集体は、押出物によってダイ面から小さいフレークとして定期的に運び去られ、発泡絶縁体に欠陥および不規則性をもたらす。この剥がれは、押出発泡プロセスの特徴である高剪断条件によって強調される、2つの異なるコポリマーの非混和性の証拠を提供する。
【0012】
この高剪断は、融解ポリマー押出物の環形状を形成する環状ダイ開口部が、ガス(発泡剤)を融解ポリマー中の溶液中に保つのに十分な圧力下に融解ポリマーを押出機クロスヘッド内に維持するのに十分に小さくなければならないという必要性に起因する。これは、ガスが押出機内か押出直後かのどちらかで泡を形成するのを防ぐ、すなわち、発泡は、押し出されたチューブがドローダウンされて導体と接触するまで遅らされる。小さい環状ダイ開口部のために、発泡性組成物についてのドローダウン比(DDR)は、導体上の非発泡フルオロポリマー絶縁体の押出成形についてよりもはるかに小さい。たとえば、非発泡フルオロポリマー絶縁体のDDRは通常、80〜100:1の範囲にあるが、発泡性フルオロポリマー組成物についてのDDRは30:1未満、より頻繁には20:1未満である。発泡絶縁体についてのDDRは、環状ダイ開口部の断面積対、絶縁体の発泡前に、絶縁体が導体において形成されるときの絶縁体の断面積の比である。発泡性組成物の押出に随伴する高剪断は、上記の剥がれという欠陥を引き起こす。
【0013】
意外にも、この剥がれ欠陥は、上記の通り、互いに近い溶融温度を有するFEPおよびPFAを使用することによって軽減できることが発見された。
【0014】
意外にも、本発明に従った異なるフルオロポリマーの混合物は、発泡絶縁体の全体にわたって分散した小さいセルで特徴づけられる発泡構造を生成することがまた分かった。TFE/HFPコポリマーおよびTFE/PAVEコポリマーの溶融温度は、これらのコポリマーの最も一般的なものが組み合わせられる場合に得られるよりも互いに近いが、これらの溶融温度はそれにもかかわらず互いに、たとえば、少なくとも15℃だけ異なる。溶融温度差は、泡がフルオロポリマー絶縁体内に形成されると同時に、TFE/HFPコポリマーが固化する前にTFE/PAVEコポリマーが固化し始めることを意味する。絶縁体内のより低い融点のTFE/HFPコポリマー・ドメインに相当するセル濃度の領域を形成するというよりもむしろ、セルの分布は発泡絶縁体の全体にわたって一様である。
【0015】
本発明の別の実施形態は、溶融二次加工可能なTFE/HFPコポリマーと、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有するTFE/PAVEコポリマーと、発泡セル核形成剤とを含む発泡性組成物であって、TFE/HFPコポリマーおよびTFE/PAVEコポリマーがそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレイト(MFR)を有し、前記コポリマーの一方のMFRが他方のMFRの少なくとも2倍である発泡性組成物である。この実施形態において、相違は、2つの化学的に異なるフルオロポリマーおよび2つの異なるメルト−フロー特性である。
【0016】
本発明の別の実施形態は、上記の実施形態の組み合わせである。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書に記載される本発明のこれらの実施形態および他の実施形態のこの組成物から製造された発泡絶縁体である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の組成物の必須成分が先ず記載され、それらの互いの関係の記載がそれに続く。
【0019】
本発明に使用することができるTFE/HFPコポリマーおよびTFE/PAVEコポリマーに関して、両コポリマーは溶融二次加工可能であり、そしてフルオロプラスチックである。それらはフルオロエラストマーではない。溶融二次加工可能なとは、これらのコポリマーのそれぞれが、個々にそれぞれが押出のような一般的溶融二次加工法によって二次加工され得、たとえば、(8ミル(0.21mm)厚さの圧縮成形フィルムに関してASTM D 2176に従って測定される)少なくとも2000サイクルのMIT屈曲寿命で明示される、良好な機械的特性を有する物品を形成するような、メルトフロー特性および機械的強度を有することを意味する。
【0020】
本発明に使用されるポリマー混合物に使用することができるTFE/HFPコポリマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマーが挙げられる。追加の共重合モノマーが、その強度、特に、MIT屈曲寿命によって測定される、耐応力亀裂性を改善するためにコポリマーに添加されている。この効果は、組成物中にかなりの量のTFE/PAVEコポリマーが存在するために本発明においてはそれほど重要ではない。本発明の組成物において、追加のモノマーが、TFE/PAVEコポリマーとのその化学的関係を改善するためにTFE/HFPコポリマー中に存在する。したがって、TFE/HFPコポリマー中の好ましい追加のモノマーは、線状もしくは分枝状アルキル基が1〜4個の炭素原子を含有するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)である。好ましいPAVEモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が挙げられる。好ましいTFE/HFPコポリマーは、約5〜17重量%のHFPと、好ましくはPEVEまたはPPVEなどのPAVEである、0.2〜4重量%の追加のコモノマーとを含有し、コポリマーについて合計100重量%まで、残りはTFEである。コポリマーの好ましいHFP含有率は9〜12重量%である。TFE/HFPコポリマーは、追加のコモノマーが存在するかどうかを問わず、FEPとして一般に知られている。
【0021】
本発明に使用することができるTFE/PAVEコポリマーの例としては、PAVEが、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)などの、1〜4個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐アルキルであるコポリマーが挙げられる。これらのコポリマーは一般にPFAと呼ばれる。コポリマーは、製造業者によってMFAと呼ばれることもある、TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PMVE)コポリマーなどの、幾つかのPAVEモノマーを使用して製造することができる。TFE/PAVEコポリマーは、PAVEがPPVEまたはPEVEであるときを含んで、少なくとも約2重量%のPAVEを有し、典型的には約2〜15重量%のPAVEを含有し、合計100重量%までの残りはTFEである。PAVEがPMVEを含むとき、組成は、約0.5〜13重量%のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)および約0.5〜3重量%のPPVEであり、合計100重量%までの残りはTFEである。
【0022】
コポリマーのHFPまたはPAVEコモノマー組成は、米国特許第4,380,618号明細書に開示されている特定のフルオロモノマー(HFPおよびPPVE)について開示されている手順に従ってコポリマーから作製された圧縮成形フィルムに関して赤外分析によって測定される。他のフルオロモノマーについての分析手順は、このような他のフルオロモノマーを含有するポリマーに関する文献に開示されている。たとえば、PEVEについての赤外分析は、米国特許第5,677,404号明細書に開示されている。重量%単位でのHFP含有率は3.2×HFPIであり、ここで、HFPI(HFP指数)は、10.18マイクロメートルでのIR吸光度対4.25マイクロメートルでの吸光度の比である。
【0023】
コポリマーのそれぞれの溶融二次加工性はまた、樹脂に対する基準である温度(TFE/HFPコポリマーについてはASTM D 2116−91aおよびTFE/PAVEコポリマーについてはASTM D 3307−93、両方ともPlastometer(登録商標)での樹脂溶融温度として372℃を明記している)でASTM D−1238−94aに従ってPlastometer(登録商標)を使用して測定されるメルトフローレイト(MFR)の観点から記載することができる。一定の測定時間にPlastometer(登録商標)から押し出されるポリマーの量が、ASTM D 1238−94aの表2に従ってg/10分の単位で報告される。本発明に使用されるコポリマーのMFRは一般に、1〜40g/10分である。溶融粘度(MV)は、関係53170÷g/10分単位のMFR=Pa・s単位のMVによってMFRに対して計算することができる。したがって、1〜40g/10分のMFR範囲は、5.3×10Pa・s〜21.3×10Pa・sのMV範囲である。MFRが高ければ高いほど、MVは低くなり、融解状態でのコポリマーはより流動性である。より古い文献においては、MVは多くの場合にポアズ単位で報告されており、その場合、MFRは式:
MFR(g/10分)=531700÷ポアズ単位のMV
から逆計算することができる。
【0024】
本発明の組成物の第3成分は、押出機加工条件下で熱的に安定であり、かつ、組成物が発泡させられるときに小さい一様なセル寸法の形成をもたらすのに有効である1つ以上の化合物からなることができる、発泡セル核形成剤である。発泡セル核形成剤の例としては、米国特許第4,764,538号明細書に開示されているもの、すなわち、細分された粒子の形態にある、ある種の熱的に安定な無機塩と組み合わせた窒化ホウ素、または米国特許第4,877,815号明細書に開示されるような好ましくは窒化ホウ素および熱的な安定な無機塩と組み合わされた、熱的に安定な有機酸およびスルホン酸もしくはホスホン酸の塩が挙げられる。上述の酸およびそれらの塩は、室温で細分された粒子の形態にあるが、本発明の組成物の押出発泡において遭遇する温度未満の温度で溶融する。好ましい有機酸または塩は、式(nが6、8、10もしくは12またはそれらの混合物であるF(CFCHCH−スルホン酸もしくはホスホン酸または塩)を有する。このスルホン酸はTBSA(テロマーBスルホン酸)と呼ぶことができる。したがって、TBSAの特定の塩は、塩の同一性およびTBSA中のCF基の数によって記載することができ、たとえばKS−6 TBSAは、6個のCF基がTBSA中に存在するTBSAのカリウム塩を意味する。別の好ましい有機酸および塩は、パーフルオロアルカンスルホン酸もしくはホスホン酸または塩である。これらの酸および塩の例は、次表に示される。
【0025】
【表1】
【0026】
無機塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびカルシウムのような陽イオンの炭酸塩、四ホウ酸塩、リン酸塩、および硫酸塩が挙げられる。好ましい無機塩は四ホウ酸カルシウムである。
【0027】
本発明の組成物の別の成分は、発泡剤が組成物の融解塊中へ注入され、そして押出機内のより高い圧力のためにその中に溶解することになる押出機内の組成物である。発泡剤の例としては、不活性ガス窒素、アルゴン、ネオン、および二酸化炭素が挙げられる。存在する不活性ガスの量は、本明細書で以下に記載される空洞率をもたらすために有効であるものである。化学的発泡剤を使用することができるが、不活性ガス発泡剤が好ましい。
【0028】
本発明の組成物中に存在する各コポリマーの量は、TFE/HFPコポリマーおよびTFE/PAVEコポリマーの総合重量を基準として、好ましくは少なくとも25重量%である。同じ基準で、TFE/PAVEコポリマーの好ましい量は好ましくは50〜75重量%であり、そのためTFE/HFPコポリマー含有率は25〜50重量%であろう。最も好ましくは、TFE/PAVEコポリマーの量は、組成物中に存在するTFE/HFPコポリマーの量よりも大きく、2つのコポリマーの総合重量を基準として、75重量%以下である。組成物中のかなりの量の両コポリマーの存在は、加工便益および用途便益の両方を提供するが、押出ダイの出口での組成物の剥がれの問題を引き起こし、その問題は本明細書で以下に記載されるように溶融温度のマッチングによって軽減される。
【0029】
組成物中に存在する発泡セル核形成剤の量は好ましくは、所望の空洞率、発泡絶縁体中で20〜65%、好ましくは35〜65%をもたらすために有効である量である。一般に、この量は、組成物の全コポリマー含有率を基準として0.01〜1重量%である。発泡セル核形成剤の成分の割合は、所望のセル寸法、一般に約50マイクロメートル以下を得るために調節される。セルの寸法が小さいこと、それらの分散が発泡絶縁体セル寸法の全体にわたること、および空洞率の量は、同軸ケーブルに沿って伝送される信号を後反射しないために低い反射減衰量に寄与する。
【0030】
コポリマー組成物への発泡セル核形成剤の組み込みは、ポリマー溶融物へのガス注入か溶融物への化学的発泡剤の添加かのどちらかの存在下に押出プロセスにおいてそれを発泡できる状態にする。発泡セル核形成剤は、ペレットがコポリマーの1つまたは両方と混合された発泡セル核形成剤を含むように、ペレット化のための粉末の形態のコポリマーの1つまたは両方とブレンドすることによってか、押出機中へ共供給するためのコポリマーペレットと共にかのどちらかによってコポリマー組成物中へ組み込まれる。両コポリマーが発泡セル核形成剤含有ペレット中に含まれない場合、存在しないコポリマーのペレットは、押出機への供給物として所望の量で発泡セル核形成剤を含有するコポリマーペレットに加えることができる。
【0031】
コポリマーの溶融温度は互いに近い、好ましくは30℃以下の範囲で、より好ましくは25℃以下の範囲で異なることが好ましい。TFE/PAVEコポリマーがより高い融点のコポリマーである。本発明の組成物に一緒に使用されるTFE/HFPコポリマーとTFE/PAVEコポリマーとの溶融温度の近接は、組成物の押出物が押出ダイを出るときに剥がれることを回避する。押出物の剥がれは、押出物が高圧下に押し通される狭い開口部における組成物の高剪断の結果として組成物が分離することの現れである。予想外にも、コポリマーの溶融温度が、最も一般的なTFE/PAVEおよびTFE/HFPコポリマーを選択することによって得られるであろうよりも互いに近いときには、この剥がれは起こらない。好ましくは、TFE/HFPコポリマーは255〜265℃の溶融温度を有し、TFE/PAVEコポリマーは280〜295℃の溶融温度を有する。本明細書に開示される溶融温度は、ASTM D 3418の手順に従ってDSC(示差走査熱量計)を使用して測定される、個々のコポリマーの二次溶融温度(ピーク温度)であり、少なくとも3J/gの溶融吸熱を有するとして特徴づけられる。
【0032】
本発明に使用されるTFE/HFPコポリマーおよびTFE/PAVEコポリマーについての溶融温度の変化は、コポリマーの組成の差を主として示す、すなわち、コポリマーのHFPおよびPAVEコモノマー含有率が増加するにつれて、コポリマーの溶融温度は低下する。PAVEモノマーは、TFEおよびHFPモノマーの両方よりもはるかに高価である。したがって、低い溶融温度のPFAは高コストPFAを表す。それにもかかわらず、本発明に使用するために好ましいものは、280〜295℃の溶融温度を有する、このTFE/PAVEコポリマーである。
【0033】
本発明に使用されるTFE/HFPコポリマーおよびTFE/PAVEコポリマーのMFRは、重合プロセスにおいて得られるコポリマーの分子量によって主として確定される。分子量が低ければ低いほど、MFRは高くなる。好ましくは、本発明のコポリマーのMFRは少なくとも2倍だけ互いに異なる、すなわち、コポリマーの1つ、好ましくはTFE/HFPコポリマーのMFRは、他のコポリマー、好ましくはTFE/PAVEコポリマーのMFRの少なくとも2倍である。より好ましくは、TFE/PAVEコポリマーは、より低いMFRを有し、たとえば、15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下のMFRを有し、TFE/HFPコポリマーは、少なくとも20g/10分、好ましくは少なくとも24g/10分、最も好ましくは少なくとも28g/10分のMFRを有する。
【0034】
意外にも、そしてTFE/HFPとTFE/PAVEコポリマーとが互いに化学的に異なるにもかかわらず、高MFRのTFE/HFPコポリマーは、押出発泡プロセスにおける組成物の溶融流動性および発泡絶縁体を形成するための組成物の発泡性の両方を増加させる。TFE/PAVEコポリマーは同じMFRでTFE/HFPコポリマーより実質的に高い溶融強度を有することがよく知られている。この溶融強度差は、低いMFRを有する好ましいTFE/PAVEコポリマーおよび高いMFRを有する好ましいTFE/HFPコポリマーによって強調される。溶融強度が高ければ高いほど、融解ポリマーは発泡に一層抵抗する。それにもかかわらず、本発明の組成物は、押出性の容易さおよび発泡の程度の両方においてTFE/PAVEコポリマー単独よりもTFE/HFPコポリマー単独のように行動する。これらの便益は、押出発泡プロセスにおいて予期されるライン速度より高い、および発泡絶縁体における予期される空洞率より高いとして測定される。TFE/PAVEコポリマーがより高い溶融温度を有し、そして好ましくはより低いMFRを有する状態で、2つのコポリマーの化学的同一性の差にもかかわらず、発泡絶縁体内に形成されたセル構造は、小さいセル寸法および絶縁体の全体にわたるセルの一様な分布で特徴づけられる。セル(空洞)は、より容易に発泡できるより低融点の、より高いMFRのTFE/HFPコポリマーの存在から予期されるであろうように発泡絶縁体内にクラスターを形成しない。
【0035】
本発明の生成物に使用されるコポリマーはまた好ましくは組成関係を有する。この関連で、これらのコポリマーはTFEに加えて共通のコモノマーを有することが好ましい。TFE/PAVEは既にPAVEコモノマーを有するので、PAVEコモノマーがまたTFE/HFPコポリマー中に存在することがそれ故好ましい。最も好ましくは、PAVEコモノマーは各コポリマーにおいて同じものである。この組成関係が有効であるためには、各コポリマー中に存在する共通のコモノマーは有効量で存在しなければならないことが分かった。共通のコモノマーの効果は、組成物が押出発泡プロセスにおいて押し出されるときに起こり得る剥がれを軽減することである。最も好ましい組成物においては、TFE/PAVEコポリマーのPAVE含有率は、押出剥がれを防ぐためにコポリマー間に必要とされる組成マッチングを提供するために有効であるほど十分に高い。約305℃の溶融温度を有するTFE/PAVEコポリマーは一般に4重量%以下のPAVEコモノマーを有する。PAVE含有率が増加するにつれて、溶融温度は低下し、TFE/PAVEコポリマー中のこのPAVE増加は、本発明に使用される低溶融温度TFE/PAVEコポリマーがTFE/HFPコポリマーの溶融温度の35℃以下内であることを提供するための好ましい方法である。好ましくは、本発明に使用されるTFE/PAVEコポリマーは、少なくとも6重量%のPAVEを含有する。
【0036】
同軸ケーブルにおけるように、本発明の組成物がケーブルの中心導体の周りに発泡絶縁体を形成するケーブルからの最適信号伝送特性のためには、両コポリマーが安定な末端基、特に−CF末端基を有することが好ましい。このような末端基は、開始剤が−CF基を含有する、共重合法の結果として得ることができる。しかし、このような重合から生じる末端基が−COF、−CONH、−CHOH、および−COOHを含み、これらの末端基が、米国特許第4,743,658号明細書および同第6,838,545号明細書に開示されているなどのように、重合したままのコポリマーのフッ素処理によって−CF末端基に変換されることができる、水性分散共重合法の使用がより一般的である。このフッ素化処理は、発泡セル核形成剤とブレンドする前のコポリマーに関して実施される。本発明の一実施形態によれば、20以下の不安定末端基/10炭素原子、好ましくは6以下のこのような末端基/10炭素原子が両コポリマー中に存在する。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、コポリマーのどちらかまたは両方は、組成物が、発泡絶縁体と導体との間の良好なおよび一貫した接着を提供するために、好ましくは少なくとも3ポンドフォース(13.3N)のストリップ力を示すように、導体に対する発泡絶縁体の親和性を増加させるために中程度の量の上記の重合したままの不安定末端基を含有する。ストリップ力は、発泡絶縁体と導体との間の接着接合を破壊するために必要な力であり、本明細書で以下に開示されるように測定される。水性分散共重合によって製造される場合にコポリマーのそれぞれは、10炭素原子当たり400より大きい末端基を有する。不安定末端基の中程度の量は、コポリマーの1つまたは両方によって提供される、好ましくは30〜120の不安定末端基/10炭素原子である。不安定末端基のこの中程度の量は、20以下の不安定末端基/10炭素原子を提供するフッ素化と比べて、重合されたままのコポリマーの不完全なフッ素化によって得られる。コポリマーの1つだけが不完全にフッ素化され、それによってコポリマーの1つは30〜120の不安定末端基/10炭素原子を含有するが、他のコポリマーは、20以下の不安定末端基/10炭素原子、好ましくは6以下のこのような末端基/10炭素原子を含有することが好ましい。各場合において、残りの数の末端基は−CFである。
【0038】
本発明の方法は、溶融二次加工可能なテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー、発泡セル核形成剤、および発泡剤を含む組成物を形成する工程と、前記組成物を、押出ダイを通して導体上へ溶融ドローダウン押出して絶縁体を前記導体上に形成する工程とを含み、前記溶融ドローダウン押出する工程が前記ダイから前記導体上の前記絶縁体の形成まで伸びる融解状態での前記組成物の円錐を形成する方法であって、前記テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの溶融温度は前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーの溶融温度より35℃以下の範囲で高く、そして押出物(円錐)からの剥がれを防ぐのに有効であり、および/または前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび前記テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーはそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレイト(MFR)を有し、そして前記コポリマーの一方のMFRは他方のMFRの少なくとも2倍であり、前記発泡剤が前記融解組成物を前記導体上で発泡させる。本発明の別の実施形態は、この方法によって製造された発泡絶縁体である。
【0039】
好ましくは、溶融ドローダウン押出は、30:1以下のドローダウン比(DDR)で実施され、前記円錐の軸長さは少なくとも1インチ(2.54cm)である。好ましくは、絶縁体は、35〜65%、より好ましくは45〜60%の空洞率を有する。絶縁体が少なくとも20ミル(0.5mm)厚さであることもまた好ましい。これらの好ましさは、本発明の組成物の独特の押出特性の幾つかを画定する。本発明の組成物で達成することができる円錐長さ、好ましくは少なくとも2インチ(5.08cm)は、発泡絶縁体と導体との親密さを提供すると同時に、より高いレベルの発泡を促進する、減少した反射減衰量をもたらす。組成物中に存在する2つのコポリマーに関して、化学的組成、MFR、または両方の差を考慮すればこのような長い円錐長さを達成できることは予想外である。言い換えれば、長い円錐長さは、組成物のコポリマーの異なる性質にもかかわらず改善を提供する。この異なる性質の効果は、絶縁体肉厚が薄すぎるときに証明される。50%空洞率では、発泡絶縁体の20ミル(0.5mm)厚さは、絶縁体が非発泡である場合の12ミル(0.3mm)に相当する。肉厚が12ミル(0.3mm)(非発泡基準)から減少するにつれて、融解コポリマー円錐は破断し、発泡絶縁体中に開口部を生成する傾向がある。低いドローダウン比、好ましくは20:1以下は、融解コポリマーの薄肉円錐を提供する傾向がある。円錐の破断は、ライン速度を遅くすることによって回避することができ、生産性の損失につながる。それ故、発泡させて絶縁材肉厚を膨張させる直前に導体上に最初に形成される絶縁体の肉厚である、絶縁体肉厚は、非発泡基準で、少なくとも12ミル(0.3mm)であることが好ましい。
【0040】
ライン速度は本発明の方法による発泡絶縁体の生産における関心事であるが、ライン速度は、たとえば、絶縁ワイヤ向け用途の電気的要件に依存して、10ミル(0.25mm)厚さの、TFE/HFPコポリマーの薄肉非発泡の(中実の)一次絶縁体を形成するために導体の溶融ドローダウン押出コーティングが達成可能なライン速度と比べて低い。絶縁体一様性および導体同心性要件が増加するにつれて、ライン速度は、より厳格な信号伝送要件を満たすために下げられなければならない。それにもかかわらず、このような中実のコポリマー絶縁体についてのライン速度は、信号伝送要件の範囲を満たすために少なくとも1000フィート/分(305m/分)であることができる。対照的に、溶融ドローダウン押出が厚い発泡絶縁体を形成するためのライン速度は、一般に300フィート/分(91.4m/分)未満である。たとえば、これまで、50%の空洞率を有する40ミル(1.0mm)厚さの発泡絶縁体の形成は、約150フィート/分(45.7m/分)以下のライン速度で実施することができた。
【0041】
本発明は、発泡絶縁体の厚さが少なくとも20ミル(0.5mm)、好ましくは少なくとも30ミル(0.75mm)である、同軸ケーブル上の発泡絶縁体として特に有用である。
【0042】
本発明の組成物から製造された発泡絶縁体を使用するケーブルは、非常に有利な信号伝送特性を示す。本発明の組成物についての散逸率は、10GHzで好ましくは0.00032以下、好ましくは0.00030以下である。本発泡絶縁体はまた、より低い周波数で非常に有利な特性を示す。たとえば、800MHz〜3GHzの範囲にわたる反射減衰量は−26dB以下である。本絶縁体の反射減衰量については、負の数が高ければ高いほど、反射減衰量はより良好である(より小さい)。dB/100フィート(30.5m)単位で測定される、ケーブルの減衰の測定においては、ちょうど反対が当てはまる。負の数が小さければ小さいほど、減衰はより良好である(より小さい)。45%の空洞率を有する厚さ40ミル(1.0mm)の絶縁体については、本発明の組成物から製造された絶縁体についての減衰改善は、米国特許出願公開第2008/0283271号明細書(米国特許第7,638,709号明細書)(実施例3を参照されたい)に従ってTFE/HFPコポリマーのブレンドから製造された同じ厚さおよび空洞率の発泡絶縁体の減衰よりも着実に増加する。本発明の組成物の発泡絶縁体から製造されたケーブルは、3GHzで−22dB/100フィート(30.5m)以下である減衰を好ましくは有する。
【実施例】
【0043】
次の通り、2つのTFE/PAVEコポリマーを実施例において使用する:
PFA Aは、上記の通り、合計6以下の不安定な末端基がコポリマー中に残る状態で、このような末端基に置き換わる−CF末端基を有するようにフッ素処理にかけられた、5.4g/10分のMFRを有するTFEと3.7重量%のPPVEとのコポリマーである。このコポリマーは305℃の溶融温度を有する。
【0044】
PFA Bは、上記の通り、合計6以下の不安定な末端基がコポリマー中に残る状態で、このような末端基に置き換わる−CF末端基を有するようにフッ素処理にかけられた、6.6g/10分のMFRを有するTFEと7.3重量%のPEVEとのコポリマーである。このコポリマーは288℃の溶融温度を有する。
【0045】
これらの実施例に使用されるTFE/HFPコポリマーは、10〜11重量%のHFPおよび1〜1.5重量%のPEVEを含有し、残りはTFEである。このFEPは、MFR 30g/10分を有し、10炭素原子当たり約50のワイヤ親和性末端基を有し、これらのワイヤ親和性末端基、主として−COOHは重合法に起因する。残りの末端基は、FEPのフッ素化によって得られた安定な−CF末端基である。フッ素濃度を米国特許第6,838,545号明細書の実施例における2500ppmから900ppmに減らすことを除いては米国特許第6,838,545号明細書(Chapman)の実施例2の押出機フッ素化手順を用いる。
【0046】
発泡セル核形成剤は、米国特許第4,877,815号明細書(Buckmasterら)に開示されているような、91.1重量%の窒化ホウ素と、2.5重量%の四ホウ酸カルシウムと6.4重量%のテロマーBスルホン酸のバリウム塩との、これらの原料を組み合わせて合計100%の、混合物である。この試剤は、コンセントレートの総重量を基準として、4重量%の前段落に記載されるFEP中のコンセントレートとして提供される。
【0047】
発泡性PFA/FEP組成物を形成するために、発泡セル核形成剤コンセントレートの押出ペレットを、PFAおよびFEPのペレットと乾式ブレンドし、次に押出ワイヤコーティング/発泡プロセスにかける。
【0048】
反射減衰量は、ケーブルに沿った両方向の信号損失を測定し、2つの測定値を平均することによって1000フィート(305m)長さの同軸ケーブルに関して測定する。信号損失は、0MHzから4.5GHzまでの連続周波数掃引において一様に間隔を置いた1601周波数で測定し、この掃引からの反射減衰量を平均してこの範囲の周波数にわたる平均反射減衰量を得る。Agilent Technologies Network Analyzerは、これらの測定を行うために用いることができ、平均反射減衰量の読み出しを提供する。同じ分析計を、100フィート(30.5m)長さのケーブルに関する減衰を測定するために用いる。
【0049】
ストリップ力は、同軸ケーブルの発泡絶縁体とワイヤ導体との間の接着接合を破壊するために必要な力であり、3インチ(7.6cm)の同軸ケーブルと発泡絶縁体付きの1インチ(2.5cm)の銅導体と剥離される、上を覆う外部導体とからなるある長さの同軸ケーブルに関して測定する。ワイヤ導体は、銅が最も一般的なワイヤ導体材料であるため銅である。この長さの同軸ケーブルを、固定金属プレート内のスロットであって、下方を向く中心導体を収容するのに十分の幅があるが、発泡絶縁体および外部導体を含有する同軸ケーブルの部分がスロットを通るのを許さない幅のスロットに入れる。下向きに伸びる銅導体をINSTRON(登録商標)引張試験機のジョーによってしっかりつかみ、ジョーを2.5cm/分の速度でスロットから離して行く。ストリップ力は、導体をその後発泡絶縁体から引き離すことができるように発泡絶縁体を銅導体から離脱させる力である。この試験は、周囲温度(15℃〜20℃)で実施し、発泡性組成物が導体に塗布されるワイヤ導体の温度は約200°F(93℃)以下である。
【0050】
発泡絶縁体の空洞率は式:
空洞率(%)=100×(1−d(発泡)/d(非発泡)
から計算する。
発泡絶縁体の密度は、ある長さの絶縁導体をカットし、絶縁体を取り除き、立方センチメートル単位での絶縁体の体積を計算し、グラム単位での絶縁体の重量を当該体積で割ることによって測定する。密度は、それぞれ長さが約30cmである、少なくとも5サンプルの測定値の平均である。非発泡絶縁体の密度は2.15g/cmである。
【0051】
散逸率は、欧州特許第0 423 995号明細書に開示されているようにASTM D 2520に従って圧縮成形プラークに関して測定する。
【0052】
実施例1
核形成剤の重量%が、組成物の総重量を基準として、0.30重量%である、発泡セル核形成剤コンセントレートと共に、56重量部のPFA Bと44重量部のFEPとのドライブレンドを形成する。このブレンドのMFRは11.9g/10分である。押出発泡条件は従来通りである。押出機に高圧の窒素ガスを注入する。押出フルオロポリマー組成物のドローダウン比(たとえば、環状ダイにおける、DDRは、環状ダイ開口部の断面積対完成絶縁体の断面積の比と定義される)は約7であり、銅導体の温度は周囲温度である、すなわち予熱は全く加えない。押出条件は、押出ポリマーが銅導体と接触するまで発泡を遅らせるというような条件である。融解コポリマー円錐の長さは2インチ(5.08cm)である。押出発泡プロセスのライン速度は145フィート/分(44.2m/分)である。押出発泡運転の間ダイ面上でのフレークの形成は全くない。
【0053】
発泡体絶縁ワイヤを次に、外部導体を形成するための発泡絶縁体上への導電性金属のストリップの編組および外部導体上へのポリマー外被の塗布を含む、従来手順によって同軸ケーブルへ成形する。同軸ケーブルの寸法は、直径0.0228インチ(0.58mm)の中心導体および直径0.1020インチ(2.6mm)の外側発泡体であり、それによって発泡絶縁体の厚さは約0.040インチ(1.0mm)である。発泡絶縁体の空洞率は47%である。発泡絶縁体の組成物は、10GHzで0.0003の散逸率を示す。
【0054】
この同軸ケーブルは、1GHzで−30dBの反射減衰量を示し、発泡絶縁体と中心導体との間の接着を破壊するために必要とされるストリップ力は、6ポンドフォース(25.5N)である。発泡セル核形成剤のポリマー・コンセントレートを使用するよりはむしろ、発泡セル核形成剤が押出発泡されるPFA B/FEP組成物と直接混合されるときに類似の結果が得られる。
【0055】
本組成物は、10GHzで0.0003の散逸率を示し、その絶縁体として本発泡組成物から製造されたケーブルは、3GHzで−22.5dB/100フィート(30.5m)の減衰を示す。発泡絶縁体は、高発泡構造を示唆する16.8pf/フィート(55.1pf/m)の電気容量を示す。
【0056】
実施例2
本実施例においては、導体が0.0183インチ(0.46mm)の直径および発泡絶縁体について0.074インチ(1.88mm)の外径を有し、発泡絶縁体の厚さが0.0279インチ(0.71mm)である、異なるケーブルを製造する。3つの発泡性組成物を、次の通り、この絶縁体を形成するための別個の押出発泡のために製造する:
組成物1:実施例1におけると同じもの。
組成物2:PFA BをPFA Aで置き換えることを除いて実施例1におけると同じもの。
組成物3:FEP A(MFR 7g/10分)およびFEP B(MFR 30g/10分)の割合が、組成物1のMFRにマッチさせるためにそれぞれ、60重量%および40重量%であり、12.2g/10分の組成物3のMFRをもたらすことを除いては、米国特許出願公開第2008/0283271号明細書の実施例1のFEPコポリマーの溶融ブレンド。
【0057】
組成物1および2は、360フィート/分(109.7m/分)のライン速度で溶融ドローダウン押出発泡させることができるが、組成物3については、ライン速度は310フィート/分(94.5m/分)以下であることができる。
【0058】
組成物1の押出発泡は、49.5%の高い空洞率、および1GHzで−18.8dB/100フィート(30.5m)のケーブル減衰をもたらす。
【0059】
組成物2の押出発泡には、ポリマーの剥がれ落ちが随伴して互いに間隔を置いてダイ面上におよび押出物の周りに凝集体を形成し、凝集体は、押出物によって定期的に運び去られて発泡絶縁体の露出面に付着したおよび露出面から伸びる凸凹の粒子を形成し、それによって得られる発泡絶縁体は容認されない。この発泡絶縁体についての空洞率は44.5%にすぎず、ケーブルの減衰は−19.2dB/100フィート(30.5m)である。
【0060】
組成物3の押出発泡は46.2%の空洞率をもたらし、ケーブル減衰は−19.6dB/100フィート(30.5m)である。組成物1の押出発泡は、組成物3が使用されるときより大きいライン速度で実施することができ、より良好な信号伝送(減衰)結果をもたらす。
【0061】
組成物1および3の押出発泡には、組成物2の押出発泡で起こるような剥がれが随伴しない。
実施例3
本実施例においては、発泡絶縁体が45%の空洞率を有し、発泡絶縁体の厚さが0.040インチ(1.0mm)であるケーブルについて信号伝送結果を比較する。この比較は、本明細書の実施例1の組成物から製造された発泡絶縁体と、発泡セル核剤の濃度が0.3重量%であることを除いては、米国特許出願公開第2008/0283271号明細書(米国特許第7,638,709号明細書)の実施例1の組成物から製造された発泡絶縁体との間の比較である。本明細書の実施例1のケーブルの減衰は、800MHz〜4.5GHzの全体測定範囲にわたってすべてのFEP発泡絶縁体についてのそれより良好である。このように、1000MHz、2GHz、3GHz、および4GHzで、減衰改善は、本発明について、それぞれ、1dB/100フィート(30.5m)、2dB/100フィート(30.5m)、3dB/100フィート(30.5m)、および4dB/100フィート(30.5m)である。たとえば、3GHzで、本発明の絶縁体から製造されたケーブルの減衰は、米国特許出願公開第2008/0283271号明細書の実施例1のTFE/HFPコポリマーブレンド組成物についての−23.5db/100フィート(30.5m)と比べて−21.5dB/100フィート(30.5m)である。
【0062】
以上、本発明を要約すると下記のとおりである。
1.溶融加工可能なテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーと、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーと、発泡セル造核剤とを含む発泡性組成物であって、該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの溶融温度が、上記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーの溶融温度より35℃か、もしくはそれ以下でしかない温度で高いか、または該テトラフルオロエチ
レン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーがそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有し、そして該コポリマーの一方のMFRが該ポリマーの他方のMFRの少なくとも2倍であるか、またはそれらの組み合わせである、上記発泡性組成物。
2.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーの溶融温度が255℃〜265℃であり、前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ−(アルキルビニルエーテル)コポリマーの溶融温度が280℃〜295℃である上記1に記載の発泡性組成物。
3.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーが、0.2〜4質量%の、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)を含有し、該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーのペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が前記組成物の押出発泡において押出ダイの外側での該組成物の剥がれを防ぐのに有効な量で存在する上記1に記載の発泡性組成物。
4.前記量が、前記テトラフルオロエチレンおよび前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)の総合質量に基づいて少なくとも6質量%である、上記3に記載の発泡性組成物。
5.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーより多い前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーが前記組成物中に存在する上記1に記載の発泡性組成物。
6.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの総合質量に基づいて、該コポリマーのそれぞれが少なくとも25質量%で前記組成物中に存在する上記5に記載の発泡性組成物。
7.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーがそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有し、そして該コポリマーの一方のMFRが該コポリマーの他方のMFRの少なくとも2倍である上記1に記載の発泡性組成物。
8.前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーのMFRが15g/10分かそれ以下であり、前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーのMFRが少なくとも20g/10分である上記7に記載の発泡性組成物。
9.10GHzで0.0003かそれ以下の誘電正接を示す上記1に記載の発泡性組成物。
10.前記コポリマーの1つが20かそれ以下でしかない不安定末端基/10炭素原子を有し、前記コポリマーの他方が30〜120の不安定末端基/10炭素原子を有し、前記コポリマーの残りの末端基が−CFである上記1に記載の発泡性組成物。
11.発泡剤をさらに含有する上記1に記載の発泡性組成物。
12.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーがまた、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、0.2〜4質量%のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)を含有する上記1に記載の発泡性組成物。
13.溶融加工可能なテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー、発泡セル造核剤、および発泡剤を含む組成物を形成する工程と、該組成物を押出ダイから導体上へ溶融ドローダウン押出して絶縁体を該導体上に形成する工程とを含み、該溶融ドローダウン押出する工程が上記ダイから該導体上の該絶縁体の形成まで伸びる融解状態での該組成物のコーンを形成する方法であって、上記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの溶融温
度が上記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーの溶融温度より35℃かそれ以下でしかない温度で高く、および/または該テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーがそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有し、そして該コポリマーの一方のMFRが該コポリマーの他方のMFRの少なくとも2倍であり、上記発泡剤が該融解組成物を上記導体上で発泡させる、上記方法。
14.前記溶融ドローダウンが30:1かそれ以下のドローダウン比にあり、前記コーンの軸長さが少なくとも1インチであり、そして前記導体上での前記組成物の発泡成形が、36〜65%の空洞率を有する前記絶縁体を与える、上記13に記載の方法。
15.前記絶縁体の厚さが少なくとも20ミルである、上記13に記載の方法。