【実施例】
【0043】
次の通り、2つのTFE/PAVEコポリマーを実施例において使用する:
PFA Aは、上記の通り、合計6以下の不安定な末端基がコポリマー中に残る状態で、このような末端基に置き換わる−CF
3末端基を有するようにフッ素処理にかけられた、5.4g/10分のMFRを有するTFEと3.7重量%のPPVEとのコポリマーである。このコポリマーは305℃の溶融温度を有する。
【0044】
PFA Bは、上記の通り、合計6以下の不安定な末端基がコポリマー中に残る状態で、このような末端基に置き換わる−CF
3末端基を有するようにフッ素処理にかけられた、6.6g/10分のMFRを有するTFEと7.3重量%のPEVEとのコポリマーである。このコポリマーは288℃の溶融温度を有する。
【0045】
これらの実施例に使用されるTFE/HFPコポリマーは、10〜11重量%のHFPおよび1〜1.5重量%のPEVEを含有し、残りはTFEである。このFEPは、MFR 30g/10分を有し、10
6炭素原子当たり約50のワイヤ親和性末端基を有し、これらのワイヤ親和性末端基、主として−COOHは重合法に起因する。残りの末端基は、FEPのフッ素化によって得られた安定な−CF
3末端基である。フッ素濃度を米国特許第6,838,545号明細書の実施例における2500ppmから900ppmに減らすことを除いては米国特許第6,838,545号明細書(Chapman)の実施例2の押出機フッ素化手順を用いる。
【0046】
発泡セル核形成剤は、米国特許第4,877,815号明細書(Buckmasterら)に開示されているような、91.1重量%の窒化ホウ素と、2.5重量%の四ホウ酸カルシウムと6.4重量%のテロマーBスルホン酸のバリウム塩との、これらの原料を組み合わせて合計100%の、混合物である。この試剤は、コンセントレートの総重量を基準として、4重量%の前段落に記載されるFEP中のコンセントレートとして提供される。
【0047】
発泡性PFA/FEP組成物を形成するために、発泡セル核形成剤コンセントレートの押出ペレットを、PFAおよびFEPのペレットと乾式ブレンドし、次に押出ワイヤコーティング/発泡プロセスにかける。
【0048】
反射減衰量は、ケーブルに沿った両方向の信号損失を測定し、2つの測定値を平均することによって1000フィート(305m)長さの同軸ケーブルに関して測定する。信号損失は、0MHzから4.5GHzまでの連続周波数掃引において一様に間隔を置いた1601周波数で測定し、この掃引からの反射減衰量を平均してこの範囲の周波数にわたる平均反射減衰量を得る。Agilent Technologies Network Analyzerは、これらの測定を行うために用いることができ、平均反射減衰量の読み出しを提供する。同じ分析計を、100フィート(30.5m)長さのケーブルに関する減衰を測定するために用いる。
【0049】
ストリップ力は、同軸ケーブルの発泡絶縁体とワイヤ導体との間の接着接合を破壊するために必要な力であり、3インチ(7.6cm)の同軸ケーブルと発泡絶縁体付きの1インチ(2.5cm)の銅導体と剥離される、上を覆う外部導体とからなるある長さの同軸ケーブルに関して測定する。ワイヤ導体は、銅が最も一般的なワイヤ導体材料であるため銅である。この長さの同軸ケーブルを、固定金属プレート内のスロットであって、下方を向く中心導体を収容するのに十分の幅があるが、発泡絶縁体および外部導体を含有する同軸ケーブルの部分がスロットを通るのを許さない幅のスロットに入れる。下向きに伸びる銅導体をINSTRON(登録商標)引張試験機のジョーによってしっかりつかみ、ジョーを2.5cm/分の速度でスロットから離して行く。ストリップ力は、導体をその後発泡絶縁体から引き離すことができるように発泡絶縁体を銅導体から離脱させる力である。この試験は、周囲温度(15℃〜20℃)で実施し、発泡性組成物が導体に塗布されるワイヤ導体の温度は約200°F(93℃)以下である。
【0050】
発泡絶縁体の空洞率は式:
空洞率(%)=100×(1−d
(発泡)/d
(非発泡))
から計算する。
発泡絶縁体の密度は、ある長さの絶縁導体をカットし、絶縁体を取り除き、立方センチメートル単位での絶縁体の体積を計算し、グラム単位での絶縁体の重量を当該体積で割ることによって測定する。密度は、それぞれ長さが約30cmである、少なくとも5サンプルの測定値の平均である。非発泡絶縁体の密度は2.15g/cm
3である。
【0051】
散逸率は、欧州特許第0 423 995号明細書に開示されているようにASTM D 2520に従って圧縮成形プラークに関して測定する。
【0052】
実施例1
核形成剤の重量%が、組成物の総重量を基準として、0.30重量%である、発泡セル核形成剤コンセントレートと共に、56重量部のPFA Bと44重量部のFEPとのドライブレンドを形成する。このブレンドのMFRは11.9g/10分である。押出発泡条件は従来通りである。押出機に高圧の窒素ガスを注入する。押出フルオロポリマー組成物のドローダウン比(たとえば、環状ダイにおける、DDRは、環状ダイ開口部の断面積対完成絶縁体の断面積の比と定義される)は約7であり、銅導体の温度は周囲温度である、すなわち予熱は全く加えない。押出条件は、押出ポリマーが銅導体と接触するまで発泡を遅らせるというような条件である。融解コポリマー円錐の長さは2インチ(5.08cm)である。押出発泡プロセスのライン速度は145フィート/分(44.2m/分)である。押出発泡運転の間ダイ面上でのフレークの形成は全くない。
【0053】
発泡体絶縁ワイヤを次に、外部導体を形成するための発泡絶縁体上への導電性金属のストリップの編組および外部導体上へのポリマー外被の塗布を含む、従来手順によって同軸ケーブルへ成形する。同軸ケーブルの寸法は、直径0.0228インチ(0.58mm)の中心導体および直径0.1020インチ(2.6mm)の外側発泡体であり、それによって発泡絶縁体の厚さは約0.040インチ(1.0mm)である。発泡絶縁体の空洞率は47%である。発泡絶縁体の組成物は、10GHzで0.0003の散逸率を示す。
【0054】
この同軸ケーブルは、1GHzで−30dBの反射減衰量を示し、発泡絶縁体と中心導体との間の接着を破壊するために必要とされるストリップ力は、6ポンドフォース(25.5N)である。発泡セル核形成剤のポリマー・コンセントレートを使用するよりはむしろ、発泡セル核形成剤が押出発泡されるPFA B/FEP組成物と直接混合されるときに類似の結果が得られる。
【0055】
本組成物は、10GHzで0.0003の散逸率を示し、その絶縁体として本発泡組成物から製造されたケーブルは、3GHzで−22.5dB/100フィート(30.5m)の減衰を示す。発泡絶縁体は、高発泡構造を示唆する16.8pf/フィート(55.1pf/m)の電気容量を示す。
【0056】
実施例2
本実施例においては、導体が0.0183インチ(0.46mm)の直径および発泡絶縁体について0.074インチ(1.88mm)の外径を有し、発泡絶縁体の厚さが0.0279インチ(0.71mm)である、異なるケーブルを製造する。3つの発泡性組成物を、次の通り、この絶縁体を形成するための別個の押出発泡のために製造する:
組成物1:実施例1におけると同じもの。
組成物2:PFA BをPFA Aで置き換えることを除いて実施例1におけると同じもの。
組成物3:FEP A(MFR 7g/10分)およびFEP B(MFR 30g/10分)の割合が、組成物1のMFRにマッチさせるためにそれぞれ、60重量%および40重量%であり、12.2g/10分の組成物3のMFRをもたらすことを除いては、米国特許出願公開第2008/0283271号明細書の実施例1のFEPコポリマーの溶融ブレンド。
【0057】
組成物1および2は、360フィート/分(109.7m/分)のライン速度で溶融ドローダウン押出発泡させることができるが、組成物3については、ライン速度は310フィート/分(94.5m/分)以下であることができる。
【0058】
組成物1の押出発泡は、49.5%の高い空洞率、および1GHzで−18.8dB/100フィート(30.5m)のケーブル減衰をもたらす。
【0059】
組成物2の押出発泡には、ポリマーの剥がれ落ちが随伴して互いに間隔を置いてダイ面上におよび押出物の周りに凝集体を形成し、凝集体は、押出物によって定期的に運び去られて発泡絶縁体の露出面に付着したおよび露出面から伸びる凸凹の粒子を形成し、それによって得られる発泡絶縁体は容認されない。この発泡絶縁体についての空洞率は44.5%にすぎず、ケーブルの減衰は−19.2dB/100フィート(30.5m)である。
【0060】
組成物3の押出発泡は46.2%の空洞率をもたらし、ケーブル減衰は−19.6dB/100フィート(30.5m)である。組成物1の押出発泡は、組成物3が使用されるときより大きいライン速度で実施することができ、より良好な信号伝送(減衰)結果をもたらす。
【0061】
組成物1および3の押出発泡には、組成物2の押出発泡で起こるような剥がれが随伴しない。
実施例3
本実施例においては、発泡絶縁体が45%の空洞率を有し、発泡絶縁体の厚さが0.040インチ(1.0mm)であるケーブルについて信号伝送結果を比較する。この比較は、本明細書の実施例1の組成物から製造された発泡絶縁体と、発泡セル核剤の濃度が0.3重量%であることを除いては、米国特許出願公開第2008/0283271号明細書(米国特許第7,638,709号明細書)の実施例1の組成物から製造された発泡絶縁体との間の比較である。本明細書の実施例1のケーブルの減衰は、800MHz〜4.5GHzの全体測定範囲にわたってすべてのFEP発泡絶縁体についてのそれより良好である。このように、1000MHz、2GHz、3GHz、および4GHzで、減衰改善は、本発明について、それぞれ、1dB/100フィート(30.5m)、2dB/100フィート(30.5m)、3dB/100フィート(30.5m)、および4dB/100フィート(30.5m)である。たとえば、3GHzで、本発明の絶縁体から製造されたケーブルの減衰は、米国特許出願公開第2008/0283271号明細書の実施例1のTFE/HFPコポリマーブレンド組成物についての−23.5db/100フィート(30.5m)と比べて−21.5dB/100フィート(30.5m)である。
【0062】
以上、本発明を要約すると下記のとおりである。
1.溶融加工可能なテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーと、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーと、発泡セル造核剤とを含む発泡性組成物であって、該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの溶融温度が、上記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーの溶融温度より35℃か、もしくはそれ以下でしかない温度で高いか、または該テトラフルオロエチ
レン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーがそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有し、そして該コポリマーの一方のMFRが該ポリマーの他方のMFRの少なくとも2倍であるか、またはそれらの組み合わせである、上記発泡性組成物。
2.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーの溶融温度が255℃〜265℃であり、前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ−(アルキルビニルエーテル)コポリマーの溶融温度が280℃〜295℃である上記1に記載の発泡性組成物。
3.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーが、0.2〜4質量%の、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)を含有し、該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーのペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が前記組成物の押出発泡において押出ダイの外側での該組成物の剥がれを防ぐのに有効な量で存在する上記1に記載の発泡性組成物。
4.前記量が、前記テトラフルオロエチレンおよび前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)の総合質量に基づいて少なくとも6質量%である、上記3に記載の発泡性組成物。
5.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーより多い前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーが前記組成物中に存在する上記1に記載の発泡性組成物。
6.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの総合質量に基づいて、該コポリマーのそれぞれが少なくとも25質量%で前記組成物中に存在する上記5に記載の発泡性組成物。
7.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーがそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有し、そして該コポリマーの一方のMFRが該コポリマーの他方のMFRの少なくとも2倍である上記1に記載の発泡性組成物。
8.前記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーのMFRが15g/10分かそれ以下であり、前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーのMFRが少なくとも20g/10分である上記7に記載の発泡性組成物。
9.10GHzで0.0003かそれ以下の誘電正接を示す上記1に記載の発泡性組成物。
10.前記コポリマーの1つが20かそれ以下でしかない不安定末端基/10
6炭素原子を有し、前記コポリマーの他方が30〜120の不安定末端基/10
6炭素原子を有し、前記コポリマーの残りの末端基が−CF
3である上記1に記載の発泡性組成物。
11.発泡剤をさらに含有する上記1に記載の発泡性組成物。
12.前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーがまた、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、0.2〜4質量%のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)を含有する上記1に記載の発泡性組成物。
13.溶融加工可能なテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アルキルが1〜4個の炭素原子を含有する、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー、発泡セル造核剤、および発泡剤を含む組成物を形成する工程と、該組成物を押出ダイから導体上へ溶融ドローダウン押出して絶縁体を該導体上に形成する工程とを含み、該溶融ドローダウン押出する工程が上記ダイから該導体上の該絶縁体の形成まで伸びる融解状態での該組成物のコーンを形成する方法であって、上記テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの溶融温
度が上記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーの溶融温度より35℃かそれ以下でしかない温度で高く、および/または該テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよび該テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーがそれぞれ、1〜40g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有し、そして該コポリマーの一方のMFRが該コポリマーの他方のMFRの少なくとも2倍であり、上記発泡剤が該融解組成物を上記導体上で発泡させる、上記方法。
14.前記溶融ドローダウンが30:1かそれ以下のドローダウン比にあり、前記コーンの軸長さが少なくとも1インチであり、そして前記導体上での前記組成物の発泡成形が、36〜65%の空洞率を有する前記絶縁体を与える、上記13に記載の方法。
15.前記絶縁体の厚さが少なくとも20ミルである、上記13に記載の方法。