(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
より大きい側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)から成る群から選択され、より少ない側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)から成る群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の抗体。
両CH3ドメイン間のジスルフィド架橋が形成できるように、各CH3ドメインの該当する位置におけるアミノ酸としてのシステイン(C)の導入によって、両CH3ドメインが更に変更されることを特徴とする請求項6又は7に記載の抗体。
【背景技術】
【0002】
例えば、2つ以上の抗原に結合することが可能である二重又は多重特異性抗体等の操作されたタンパク質が、当技術分野で知られている。このような多重特異性結合タンパク質は、細胞融合、化学的結合、又は組換えDNA技術を使用して生成されることが可能である。
【0003】
幅広い種類の組換え多重特異性抗体のフォーマットが近年開発されて来ており、例えば、IgG抗体フォーマット及び単鎖ドメインの融合による四価二重特異性抗体等である(例えば、Coloma, M.J.等, Nature Biotech. 15 (1997) 159-163;国際公開第2001/077342号; 及びMorrison, S.L., Nature Biotech. 25 (2007) 1233-1234を参照)。
【0004】
また、抗体のコア構造(IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgM)がもはや保たれていない、二以上の抗原に結合することが可能である例えばダイア、トリア、又はテトラボディ、ミニボディ、幾つかの単鎖フォーマット(scFv、Bis-scFv)等の幾つかの他の新しいフォーマットが開発されて来た(Holliger, P.等, Nature Biotech. 23 (2005) 1126-1136; Fischer, N., and Leger, O., Pathobiology 74 (2007) 3-14; Shen, J.等, J. Immunol. Methods 318 (2007) 65-74; Wu, C.等, Nature Biotech. 25 (2007) 1290-1297)。
【0005】
全てのこのようなフォーマットは、抗体コア(IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgM)を更なる結合タンパク質(例えば、scFv)に融合させるか、又は例えば2つのFab断片又はscFvを融合するためにリンカーを使用する(Fischer, N., and Leger, O., Pathobiology 74 (2007) 3-14)。リンカーが、二重特異性抗体の操作に利点を有するのは明らかである一方、それらは治療設定に問題も引き起こす。実際、これらの外来ペプチドは、リンカー自体又はタンパク質とリンカーとの間の接合部に対して免疫反応を誘発し得る。更には、これらのペプチドの可動性がそれらにタンパク質切断をより起こさせ易くさせ、潜在的に、乏しい抗体の安定性、凝集、及び増加された免疫原性へと導く。更に、例えば、自然に生じる抗体に対して高度の類似性を保つことによりFc部に仲介される、補体依存性細胞傷害(CDC)又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)等のエフェクター機能を保持したい場合もあり得る。
【0006】
従って、理想では、ヒト配列から最小の逸脱である、自然に生じる抗体(IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgM等)に一般的な構造が非常に類似した二重特異性抗体を開発することを目的とする。
【0007】
一アプローチでは、天然の抗体に非常に類似する二重特異性抗体は、二重特異性抗体の所望する特異性を有するネズミモノクローナル抗体を発現する2種の異なったハイブリドーマ細胞株の体細胞融合に基づいて、クアドローマ技術(Milstein, C, and Cuello, A.C., Nature 305 (1983) 537-40を参照のこと)を用いて生成されて来た。得られるハイブリッド-ハイブリドーマ(又はクアドローマ)内の2種の異なった抗体重及び軽鎖のランダム対合のために、10種までの異なった抗体種(そのうち1つのみが所望の機能的二重特異性抗体である)が生成される。誤って対合された副産物の存在及び有意に低められた生成収率のために、高度な精製方法が必要とされる(Morrison, S. L., Nature Biotech 25 (2007) 1233-1234を参照のこと)。一般的に、誤って対合された副産物の同じ問題が、組換え発現技法が使用される場合、残存する。
【0008】
「ノブ-インツゥ-ホール(knobs-into-holes)」として知られている、誤って対合された副産物の問題を回避するためのアプローチは、CH3ドメイン中に変異を導入し接合面を変性することにより、2種の異なった抗体重鎖の対合を強制することを目的とする。1つの鎖上の嵩のあるアミノ酸が、「ホール」を作るために、短い側鎖を有するアミノ酸により置換された。反対に、大きな側鎖を有するアミノ酸が、「ノブ」を創造するために、他のCH3ドメイン中に導入された。それらの2種の重鎖(及び両重鎖のために適切であるべきである2種の同一の軽鎖)を同時発現することにより、高い収率のヘテロ二量体の形成(「ノブ-インツゥ-ホール」)対ホモ二量体形成(「ホール-ホール」又は「ノブ-ノブ」)が観察された(Ridgway, J.B.等, Protein Eng. 9 (1996) 617-621;及び国際公開第96/027011号)。ヘテロ二量体の割合は、ファージ表示アプローチを用いて2種のCH3ドメインの相互作用表面の改造、及びヘテロ二量体を安定化するためのジスルフィド架橋の導入により、さらに高められ得た(Merchant, A.M.等, Nature Biotech. 16 (1998) 677-681; Atwell, S.等, J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)。ノブ-インツゥ-ホール技法のための新しいアプローチは例えば、欧州特許出願公開第1 870 459 A1号に記載されている。この形は非常に魅力的であるように思われるが、クリニックへの進行を記載するデータは現在入手できない。この方法の1つの重要な制限は、誤対合及び不活性分子の形成を防止するために2種の親抗体の軽鎖が同一でならなければならないことである。従って、この技法は、これらの抗体の重鎖及び/又は同一の軽鎖がまず最適化され、そして第三及び第四の抗原に対する更なる抗原結合ペプチドが加えられなければならないため、第一及び第二抗原に対する2種の抗体から始まる3又は4つの抗原に対する三重又は四重特異性抗体を容易に開発すための基礎として適切ではない。
【0009】
国際公開第2006/093794号は、ヘテロ二量体タンパク質結合組成物に関する。国際公開第99/37791号は、多目的抗体誘導体を記載する。Morrison, S.L.等, J. Immunol. 160 (1998) 2802-2808は、IgGの機能的特性に対する可変領域ドメインの交換の影響に言及している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、三重特異性又は四重特異性抗体であって、
a)第一の抗原に特異的に結合する完全長抗体の軽鎖及び重鎖;及び
b)第二の抗原に特異的に結合する完全長抗体の修飾軽鎖及び修飾重鎖であって、可変ドメインVL及びVHが互いに置換され、及び/又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置換された軽鎖及び重鎖
を含んでなり;且つ
c)一又は二の更なる抗原に特異的に結合する一から四の抗原結合ペプチドが、ペプチドコネクターを介して、a)及び/又はb)の軽鎖又は重鎖のC又はN末端に融合された抗体に関する。
【0018】
本発明の一実施態様では、本発明に係る三重特異性又は四重特異性抗体は、c)において、一又は二の更なる抗原に特異的に結合する一又は二の抗原結合ペプチドを含む。
【0019】
本発明の一実施態様では、本発明に係る三重特異性又は四重特異性抗体は、抗原結合ペプチドが、scFv断片及びscFab断片の群から選択されることを特徴とする。
【0020】
本発明の一実施態様では、本発明に係る三重特異性又は四重特異性抗体は、抗原結合ペプチドがscFv断片であることを特徴とする。
【0021】
本発明の一実施態様では、本発明に係る三重特異性又は四重特異性抗体は、抗原結合ペプチドがscFab断片であることを特徴とする。
【0022】
本発明の一実施態様では、本発明に係る三重特異性又は四重特異性抗体は、抗原結合ペプチドが、a)及び/又はb)の重鎖のC末端に融合されることを特徴とする。
【0023】
本発明の一実施態様では、本発明に係る三重特異性又は四重特異性抗体は、c)において、一の更なる抗原に特異的に結合する一又は二の抗原結合ペプチドを含む。
【0024】
本発明の一実施態様では、本発明に係る三重特異性又は四重特異性抗体は、c)において、第三の抗原に特異的に結合する二の同一の抗原結合ペプチドを含む。好ましくは、このような二の同一の抗原結合ペプチドは、a)及び/又はb)の重鎖のC末端に、同じペプチドコネクターを介して双方融合される。好ましくは、前記二の同一の抗原結合ペプチドは、scFv断片又はscFab断片のどちらかである。
【0025】
本発明の一実施態様では、本発明に係る三重特異性又は四重特異性抗体は、c)において、第三及び第四の抗原に特異的に結合する二の抗原結合ペプチドを含む。一実施態様では、前記二の抗原結合ペプチドは、a)及び/又はb)の重鎖のC末端に、同じペプチドコネクターを介して双方融合される。好ましくは、前記二の抗原結合ペプチドは、scFv断片又はscFab断片のどちらかである。
【0026】
本発明によると、所望されない副生産物(軽鎖と、他の抗原に特異的に結合する抗体の「間違った」重鎖との誤対合による)に対する、所望の三重特異性又は四重特異性抗体の比率は、一対の重鎖及び軽鎖(HC/LC)のみにおける特定のドメインの交換によって改善することが出来る。2つの完全長HC/LC対の一つ目は、第一の抗原に特異的に結合する抗体に由来し基本的に変化無しであり、2つの完全長HC/LC対の二つ目は、第二の抗原に特異的に結合する抗体に由来し、以下の置換により修飾される
・軽鎖:第二の抗原に特異的に結合する前記抗体の、可変重鎖ドメインVHによる、可変軽鎖ドメインVLの置換、及び/又は第二の抗原に特異的に結合する前記抗体の、定常重鎖ドメインCH1による、定常軽鎖ドメインCLの置換、及び
・重鎖:第二の抗原に特異的に結合する前記抗体の、可変軽鎖ドメインVLによる、可変重鎖ドメインVHの置換、及び/又は第二の抗原に特異的に結合する前記抗体の、定常軽鎖ドメインCLによる、定常重鎖ドメインCH1の置換。
【0027】
該比率が改善された二重特異性抗体に対して、1又は2つの更なる抗原に特異的に結合する1から4つの抗原結合ペプチドが、第一及び第二の抗原に特異的に結合する前記2つの抗体の軽鎖又は重鎖のC又はN末端にペプチドコネクターを介して融合され、結果として本発明による三重及び四重特異性抗体となる。
【0028】
このように、本発明によって得られる三重特異性及び四重特異性抗体は、
a)第一抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖及び重鎖;及び
b)第二抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖及び重鎖を含み、
(第二抗原に特異的に結合する抗体の)前記軽鎖が、VLの代わりに可変ドメインVHを、
及び/又はCLの代わりに定常ドメインCH1を含み
(第二抗原に特異的に結合する抗体の)前記重鎖が、VHの代わりに可変ドメインVLを、
及び/又はCH1の代わりに定常ドメインCLを含む
人工抗体である。
【0029】
本発明の更なる態様では、所望されない副産物と比較した、所望される二価、二重特異性抗体のこのような改善された比率は、三重又は四重特異性抗体内における、第一及び第二の抗原に特異的に結合する前記完全長抗体のCH3ドメインの修飾によって更に改善さすることが出来る。
【0030】
従って、本発明の好ましい一実施態様では、本発明に係る前記三重又は四重特異性抗体のCH3ドメインは、例えば、国際公開第96/027011号, Ridgway, J.B.等, Protein Eng. 9 (1996) 617-621;及びMerchant, A.M.等, Nat. Biotechnol. 16 (1998) 677-681に幾つかの実施例と共に詳細に記載されている「ノブ-インツゥ-ホール」技術によって変更することができる。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用面が、これら2つのCH3ドメインを含む両重鎖のヘテロ二量体化を増加するために変更される。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインの各々は、「ノブ」であり得、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入が、ヘテロ二量体を更に安定化し(Merchant, A.M.等, Nature Biotech. 16 (1998) 677-681;Atwell, S.等, J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収率を増大させる。
【0031】
従って、本発明の一態様では、前記三重特異性又は四重特異性抗体は、
a)の完全長抗体の重鎖のCH3ドメイン及びb)の完全長抗体の修飾された重鎖のCH3ドメイン各々が、抗体CH3ドメイン間のオリジナルの界面を含む界面に接し;
前記界面は、三重特異性又は四重特異性抗体の形成を促進するよう変更され、該変更は、
i)一方の重鎖のCH3ドメインが変更され、
三重又は四重特異性抗体内における、他方の重鎖のCH3ドメインのオリジナルの界面に接する一方の重鎖のCH3ドメインのオリジナルの界面内において、
アミノ酸残基がより大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、これにより他方の重鎖のCH3ドメインの界面内の空洞に位置することが可能である、一方の重鎖のCH3ドメインの界面内の隆起を生じ、
また
ii)他方の重鎖のCH3ドメインが変更され、
三重又は四重特異性抗体内における、第一のCH3ドメインのオリジナルの界面に接する第二のCH3ドメインのオリジナルの界面内において、
アミノ酸残基がより小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、これによりその中に第一のCH3ドメインの界面内の隆起が位置することが可能である、第二のCH3ドメインの界面内の空洞を生じる
ことを特徴とする変更であることを更に特徴とする。
【0032】
好ましくは、より大きい側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)から成る群から選択される。
【0033】
好ましくは、より小さい側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)から成る群から選択される。
【0034】
本発明の一態様では、両CH3ドメイン間にジスルフィド架橋が形成できるように、各CH3ドメインの該当する位置におけるアミノ酸としてのシステイン(C)の導入によって、両CH3ドメインが更に変更される。
【0035】
好ましい一実施態様では、前記三重特異性又は四重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異、及び「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368A、Y407V変異を含む。CH3ドメイン間の更なる鎖間ジスルフィド架橋も使用することができ(Merchant, A.M.等, Nature Biotech. 16 (1998) 677-681)、例えば、「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349C変異、及び「ホール鎖」のCH3ドメインにE356C変異又はS354C変異を導入することによって可能である。従って、別の好ましい実施態様では、前記三重特異性又は四重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの内一方にY349C、T366W変異、及び2つのCH3ドメインの内他方にE356C、T366S、L368A、Y407V変異を含み、又は前記三重特異性又は四重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの内一方にY349C、T366W変異、及び二つのCH3ドメインの内他方にS354C、T366S、L368A、Y407V変異を含む(一方のCH3ドメインの更なるY349C変異、及び他方のCH3ドメインの更なるE356C又はS354C変異が鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(番号付けは常にカバットのEUインデックスに従う)。しかしまた、欧州特許出願公開第1870459A1号に記載されるような他のノブ-インツゥ-ホール技術を、代わりに又は追加で使用することができる。前記三重特異性又は四重特異性抗体の好ましい実施例は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D;K370E変異、及び「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K;E357K変異である(番号付けは常にカバットのEUインデックスに従う)。
【0036】
別の好ましい実施態様では、前記三重特異性又は四重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異、及び「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368A、Y407V変異、及び追加として「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D;K370E変異、及び「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K;E357K変異を含む。
【0037】
別の好ましい実施態様では、三重特異性又は四重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの内一方にY349C、T366W変異、及び2つのCH3ドメインの内他方にS354C、T366S、L368A、Y407V変異を含み、又は前記三重特異性又は四重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの内一方にY349C、T366W変異、及び2つのCH3ドメインの内他方にS354C、T366S、L368A、Y407V変異、及び更に、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D;K370EW変異、及び「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K;E357K変異を含む。
【0038】
「完全長抗体」なる用語は、2つの重鎖及び2つの軽鎖から成る抗体を意味する(
図1を参照)。完全長抗体の重鎖は、抗体のN末端からC末端への方向で、VH-CH1-HR-CH2-CH3として省略される、重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常重鎖ドメイン1(CH1)、抗体ヒンジ領域(HR)、抗体重鎖定常ドメイン2(CH2)、及び抗体重鎖定常ドメイン3(CH3);及び場合によっては、サブクラスIgEの抗体の場合に抗体重鎖定常ドメイン4(CH4)から成る。好ましくは、完全長抗体の重鎖は、N末端からC末端への方向で、VH、CH1、HR、CH2、及びCH3から成るポリペプチドである。完全長抗体の軽鎖は、抗体のN末端からC末端への方向で、VL-CLとして省略される、軽鎖可変ドメイン(VL)、及び抗体軽鎖定常ドメイン(CL)から成るポリペプチドである。抗体軽鎖定常ドメイン(CL)は、κ(カッパ)又はλ(ラムダ)が可能である。完全長抗体鎖は、CLドメイン及びCH1ドメイン間(つまり、軽及び重鎖間)、及び完全長抗体重鎖のヒンジ領域間の、ポリペプチド間ジスルフィド結合によって共につながれている。典型的な完全長抗体の例は、IgG(例えばIgG1及びIgG2)、IgM、IgA、IgD、及びIgEの様な天然の抗体である。本発明による完全長抗体は、例えばヒト等の単一の種からであり得、又はキメラ化又はヒト化抗体であり得る。本発明による完全長抗体は、一対のVH及びVLによって各々形成される2つの抗原結合部位を含み、両者は同じ抗原に特異的に結合する。前記完全長抗体の重又は軽鎖のC末端は、前記重又は軽鎖のC末端の最後のアミノ酸を意味する。本発明内で使用される「ペプチドコネクター」なる用語は、好ましくは合成起点(synthetic origin)の、アミノ酸配列を有するペプチドを意味する。本発明によるこれらのペプチドコネクターは、抗原結合ペプチドを完全長及び/又は修飾完全長抗体鎖に融合し、本発明による三重特異性又は四重特異性抗体を形成するために使用される。好ましくは、c)における前記ペプチドコネクターは、少なくとも5アミノ酸の長さ、好ましくは5から100の長さ、より好ましくは10から50アミノ酸であるアミノ酸配列を有するペプチドである。一実施態様では、前記ペプチドコネクターは、(GxS)n又は(GxS)nGmであり、G=グリシン、S=セリン、及び(x=3、n=3、4、5、又は6、及びm=0、1、2、又は3)又は(x=4、n=2、3、4、又は5、及びm=0、1、2、又は3)、好ましくはx=4及びn=2又は3、より好ましくはx=4、n=2である。一実施態様では、前記ペプチドコネクターは(G
4S)
2である。
【0039】
使用される「抗原結合ペプチド」なる用語は、一価の抗原結合断片又は完全長抗体の誘導体を意味し、抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、又は完全長抗体又は例えばVHドメイン及び/又はVLドメイン等の抗体断片から得られた一対のVH/VL、単鎖Fv(scFv)断片、又は単鎖Fab(scFab)断片を含む。好ましくは、抗原結合ペプチドは、少なくとも抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。好ましい実施態様では、このような抗原結合ペプチドは、VHドメイン、単鎖Fv(scFv)断片、及び単鎖Fab(scFab)断片から成る群から、好ましくは単鎖Fv(scFv)断片及び単鎖Fab(scFab)断片から成る群から選択される。
【0040】
ここで使用される「結合部位」又は「抗原結合部位」なる用語は、リガンド(例えば、抗原又はそれの抗原断片)が実際結合し、且つ抗体から得られる抗体の領域を意味する。抗原結合部位は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、又は一対のVH/VLを含む。
【0041】
所望の抗原に特異的に結合する抗原結合部位は、a)該抗原に対する既知の抗体から、又はb)特に抗原タンパク質又は核酸又はその断片の何れかを使用したデノボ免疫法によって、又はファージディスプレイによって得られる新規な抗体又は抗体断片から得られる。
【0042】
本発明の抗体の抗原結合部位は、6つの相補決定領域(CDR)を含み得、これらは抗原に対する結合部位の親和性の程度の変化に貢献する。3つの重鎖可変ドメインCDR(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)及び3つの軽鎖可変ドメインCDR(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)がある。CDR及びフレームワーク領域(FR)の範囲は、配列での多様性によって該領域が決定されたアミノ酸配列の蓄積データベースと比較することによって決定される。また本発明の範囲内に含まれるものは、より少ないCDR(つまり、結合特異性が3、4、又は5CDRによって決定される)から成る機能的抗原結合部位である。例えば、6CDRの完全なセットより少ないことは、結合のために十分であり得る。幾つかの場合では、VH又はVLドメインで十分であろう。
【0043】
抗体特異性は、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を意味する。天然抗体は、例えば単一特異性である。二重特異性抗体は、2つの異なる抗原結合特異性を有する抗体である。三重特異性抗体は従って、3つの異なる抗原結合特異性を有する本発明による抗体である。本発明による四重特異性抗体は、4つの異なる抗原結合特異性を有する抗体である。
【0044】
抗体が一を越える特異性を有する場合は、認識されるエピトープは、単一抗原又は一を越える抗原に関連し得る。
【0045】
ここで使用される「単一特異性」抗体なる用語は、各々が同じ抗原の同じエピトープに結合する一又は複数の結合部位を有する抗体を意味する。
【0046】
本出願内で使用される「価」なる用語は、抗体分子における特定の数の結合部位の存在を意味する。例として天然抗体又は本発明による完全長抗体は、2つの結合部位を有し2価である。このように、「3価」なる用語は、抗体分子において3つの結合部位の存在を意味する。ここで使用される「3価、3特異性」抗体は、各々が別の抗原(又は抗原の別のエピトープ)に結合する3つの抗原結合部位を有する抗体を意味する。本発明の抗体は、3から6の結合部位を有し、つまり3、4、5、又は6価(好ましくは3又は4価)であり、且つ3又は四重特異性である。
【0047】
「scFv断片」又は「単鎖Fv断片(
図2bを参照)」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、及び単鎖Fvリンカーから成るポリペプチドであり、前記抗体ドメイン及び前記単鎖Fvリンカーは、N末端からC末端の方向で以下の順の内一つを持つ:a)VH-単鎖Fvリンカー-VL、b)VL-単鎖Fvリンカー-VH;好ましくはa)VH-単鎖Fvリンカー-VLであり、前記単鎖Fvリンカーは、少なくとも15アミノ酸の長さであるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、一実施態様では少なくとも20アミノ酸の長さである。「N末端」なる用語はN末端の最後のアミノ酸を意味し、「C末端」なる用語はC末端の最後のアミノ酸を意味する。
【0048】
単鎖Fv断片内で使用される「単鎖Fvリンカー」なる用語は、好ましくは合成起点の、アミノ酸配列を有するペプチドを意味する。前記単鎖Fvリンカーは、少なくとも15アミノ酸の長さであるアミノ酸配列を有するペプチドであり、一実施態様では少なくとも20アミノ酸の長さであり、好ましくは15から30アミノ酸の間の長さである。一実施態様では、前記単鎖リンカーは、(GxS)nであり、G=グリシン、S=セリン、(x=3及びn=4、5、又は6)又は(x=4及びn=3、4、5、又は6)、好ましくはx=4、n=3、4、又は5、より好ましくはx=4、n=3又は4である。一実施態様では、前記単鎖Fvリンカーは(G
4S)
3又は(G
4S)
4である。
【0049】
更には、前記単鎖Fv断片は、好ましくはジスルフィド安定化されている。単鎖抗体のこのような更なるジスルフィド安定化は、単鎖抗体の可変ドメイン間のジスルフィド結合の導入によって成され、例えば国際公開第94/029350号, Rajagopal, V., 等, Prot. Engin. 10 (1997) 1453-1459; Kobayashi, H., 等, Nuclear Medicine & Biology 25 (1998) 387-393; 又はSchmidt, M.等, Oncogene 18 (1999) 1711 -1721に記載されている。
【0050】
ジスルフィド安定化単鎖Fv断片の一実施態様では、本発明による抗体に含まれる単鎖Fv断片の可変ドメイン間のジスルフィド結合は、各単鎖Fv断片に対して独立して、
i)重鎖可変ドメインの位置44から軽鎖可変ドメインの位置100、
ii)重鎖可変ドメインの位置105から軽鎖可変ドメインの位置43、
iii)重鎖可変ドメインの位置101から軽鎖可変ドメインの位置100
から選択される。
【0051】
一実施態様では、本発明による抗体に含まれる単鎖Fv断片の可変ドメイン間のジスルフィド結合は、重鎖可変ドメイン位置44及び軽鎖可変ドメイン位置100の間である。
【0052】
「scFab断片」又は「単鎖Fab断片」(
図2aを参照)は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)、及びリンカーから成るポリペプチドであり、前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端の方向で以下の順の内の一つであり:
a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CL;また前記リンカーは少なくとも30アミノ酸のポリペプチドであり、好ましくは32と50の間である。前記単鎖Fab断片a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、及びd)VL-CH1-リンカー-VH-CLは、CLドメイン及びCH1ドメイン間の天然ジスルフィド結合によって安定化される。「N末端」なる用語はN末端の最後のアミノ酸を意味し、「C末端」なる用語はC末端の最後のアミノ酸を意味する。
【0053】
本発明内で使用される「リンカー」なる用語は、好ましくは合成起点の、アミノ酸配列を有するペプチドを意味する。本発明によるこれらのペプチドは、a)VH-CH1からVL-CL、b)VL-CLからVH-CH1、c)VH-CLからVL-CH1又はd)VL-CH1からVH-CLを連結し、本発明による以下の単鎖Fab断片、a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CLを形成するために使用される。単鎖Fab断片内の前記リンカーは、少なくとも30アミノ酸の長さであるアミノ酸配列を有するペプチドであり、好ましくは32から50アミノ酸の長さである。位置実施態様では、前記リンカーは(GxS)nであり、G=グリシン、S=セリン、(x=3、n=8、9又は10、及びm=0、1、2、又は3)又は(x=4及びn=6、7、又は8、及びm=0、1、2、又は3)、好ましくはx=4、n=6又は7、及びm=0、1、2、又は3、より好ましくはx=4、n=7、及びm=2である。一実施態様では、前記リンカーは(G
4S)
6G
2である。
【0054】
好ましい実施態様では、前記単鎖Fab断片における前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端の方向で以下の順の内一つを持つ:
a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、又はb)VL-CL-リンカー-VH-CH1、より好ましくはVL-CL-リンカー-VH-CH1。
【0055】
別の好ましい実施態様では、前記単鎖Fab断片における前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端の方向で以下の順の内一つを持つ:
a)VH-CL-リンカー-VL-CH1又はb)VL-CH1-リンカー-VH-CL。
【0056】
場合によっては前記単鎖Fab断片において、CLドメイン及びCH1ドメイン間の天然ジスルフィド結合に更に、抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体軽鎖可変ドメイン(VL)も以下の位置の間のジスルフィド結合の導入によってジスルフィド安定化される:
i)重鎖可変ドメイン位置44から軽鎖可変ドメイン位置100、
ii)重鎖可変ドメイン位置105から軽鎖可変ドメイン位置43、又は
iii)重鎖可変ドメイン位置101から軽鎖可変ドメイン位置100(番号付けは常にカバットのEUインデックスに従う)。
【0057】
単鎖Fab断片のこのような更なるジスルフィド安定化は、単鎖Fab断片の可変ドメインVH及びVL間のジスルフィド結合の導入によって成される。単鎖Fvの安定化のために非天然ジスルフィド架橋を導入するための技術は、例えば国際公開第94/029350号, Rajagopal等, Prot. Engin. 10 (1997) 1453-1459; Kobayashi等, Nuclear Medicine & Biology 25 (1998) 387-393;又はSchmidt等, Oncogene 18 (1999) 1711 -1721に記載されている。一実施態様では、本発明による抗体に含まれる単鎖Fab断片の可変ドメイン間の任意ジスルフィド結合は、重鎖可変ドメイン位置44及び軽鎖可変ドメイン位置100間である。位置実施態様では、本発明による抗体に含まれる単鎖Fab断片の可変ドメイン間の任意ジスルフィド結合は、重鎖可変ドメイン位置105及び軽鎖可変ドメイン位置43間である(番号付けは常にカバットのEUインデックスに従う)。
【0058】
ある実施態様では、単鎖Fab断片の可変ドメインVH及びVL間に前記任意のジスルフィド安定化を有さない単鎖Fab断片が所望される。
【0059】
本発明の完全長抗体は、一又は複数の免疫グロブリンクラスの、免疫グロブリン定常領域を含む。免疫グロブリンクラスは、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEアイソタイプ、及びIgG及びIgAの場合はそれらのサブタイプを含む。好ましい実施態様では、本発明の完全長抗体は、IgG型抗体の定常ドメイン構造を有する。
【0060】
ここで使用される「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、単一のアミノ酸組成物の抗体分子の調製物を意味する。
【0061】
「キメラ抗体」なる用語は、1つの源又は種からの可変領域、すなわち結合領域と、異なる源又は種に由来する定常領域の少なくとも一部とを含んでなる抗体を意味し、通常組換えDNA法により調製される。ネズミ可変領域及びヒト定常領域を含んで成るキメラ抗体が好ましい。本発明により包含される他の形の「キメラ抗体」は、定常領域が、本発明の性質を生成するために修飾されているか又は元の抗体のその領域から変更されているものであって、特にはC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関する。そのようなキメラ抗体はまた、「クラス-スイッチ抗体」とも称される。キメラ抗体は、免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメント、及び免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含んで成る、発現された免疫グロブリン遺伝子の生産物である。キメラ抗体を生成するための方法は一般的な組換えDNAを含み、遺伝子トランスフェクション技術は当該分野において良く知られている。例えば、Morrison, S.L.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855、米国特許第5202238号及び米国特許第5204244号を参照のこと。
【0062】
「ヒト化抗体」なる用語は、そのフレームワーク又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンのCDRに比較して、異なった特異性の免疫グロブリンのCDRを含んで成るよう修飾されている抗体を意味する。好ましい態様においては、ネズミCDRは、「ヒト化抗体」を調製するために、ヒト抗体のフレームワーク領域中に移植される。例えば、Riechmann, L.等, Nature 332 (1988) 323-327;及びNeuberger, M.S.等, Nature 314 (1985) 268-270を参照のこと。本発明により包含される他の形の「キメラ抗体」は、定常領域が、本発明の性質を生成するために修飾されているか又は元の抗体のその領域から変更されているものであって、特にはC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関する。
【0063】
「ヒト抗体」なる用語は、本明細書において使用される場合、ヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を包含することを意図する。ヒト抗体は当技術分野の水準において周知である(van Dijk, M.A., and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Chem. Biol. 5 (2001) 368-374)。ヒト抗体はまた、トランスジェニック(遺伝子導入)動物(例えば、マウス)においても生成され得り、これは、内因性免疫グロブリンを生産することなく、免疫化に基づいてヒト抗体の完全なレパートリー又はセレクションを生産することが可能である。そのような生殖系変異体マウスにおけるヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイのトランスファーは、抗原チャレンジおいてヒト抗体の生成をもたらすであろう(例えば、Jakobovits, A.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 2551-2555; Jakobovits, A.等, Nature 362 (1993) 255-258; Bruggemann, M.等, Year Immunol. 7 (1993) 33-40を参照のこと)。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーにおいても生成され得る(Hoogenboom, H.R., and Winter, G., J. Mol. Biol. 227 (1992) 381-388; Marks, J.D.等, J. Mol. Biol. 222 (1991) 581-597)。Cole等及びBoerner等の技法はまた、ヒトモノクローナル抗体の調製のためにも利用できる(Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); 及び Boerner, P.等, J. Immunol. 147 (1991)86-95)。本発明のキメラ及びヒト化抗体についてすでに言及されたように、用語「ヒト抗体」とは、本明細書において使用される場合、本発明による特性を生成するために定常領域において修飾されたこのような抗体を含み、特にC1q結合及び/又はFcR結合に関し、例えば「クラススイッチ」つまりFc部の変化又は変異による(例えば、IgG1からIgG4及び/又はIgG1/IgG4変異)。
【0064】
「組換えヒト抗体」なる用語は、本明細書において使用される場合、組換え手段によって調製、発現、製造、又は単離される全てのヒト抗体を含むことを意図し、例えば、NS0又はCHO細胞等の宿主細胞から又はヒト免疫グロブリン遺伝子トランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体、又は宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体等である。このような組換えヒト抗体は、再配列された形で可変及び定常領域を有する。本発明の組換えヒト抗体は、インビボで体細胞超変異に課された。従って、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系VH及びVL領域に由来しその配列に関連するが、インビボでヒト抗体生殖系レパートリー内に自然に存在することはないだろう。
【0065】
「可変ドメイン」(軽鎖の可変ドメイン(VL)、重鎖の可変ドメイン(VH))は、本明細書において使用される場合、抗原への抗体の結合において直接関与する軽鎖及び重鎖の対の個々を示す。ヒト可変軽及び重鎖のドメインは、同じ一般構造を有し、そして個々のドメインは4つのフレームワーク(FR)領域を含んで成り、それらの配列は広く保存され、3つの「高頻度可変領域」(又は相補性決定領域、CDR)により結合される。フレームワーク領域は、βシートコンホメーションを採用し、そしてCDRはβシート構造体を結合するループを形成することができる。個々の鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によりそれらの3次元構造を保持され、そして他の鎖からのCDRと共に抗原結合部位を形成する。抗体重及び軽鎖CDR3領域は、本発明の抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を演じ、そして従って、本発明のさらなる目的を提供する。
【0066】
「高頻度可変領域」又は「抗体の抗原結合部分」なる用語は、本明細書において使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を言及する。高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基を含んで成る。「フレームワーク」又は「FR」領域は、本明細書において定義されるように高頻度可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン領域である。従って、抗体の軽鎖及び重鎖は、N-末端からC-末端の方に、ドメインFRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。個々の鎖上のCDRはそのようなフレームワークアミノ酸により分離される。特に、重鎖のCDR3は、最も抗原結合に寄与する領域である。CDR及びFR領域は、Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の標準の定義に従って決定される。
【0067】
本明細書において使用される場合、「結合する」/「特異的に結合する」/「に特異的に結合している」なる用語は、インビトロアッセイでの抗原のエピトープに対する抗体の結合を意味し、好ましくは精製された野生型の抗原を用いたプラズモン共鳴アッセイ(BIAcore, GE-Healthcare Uppsala, Sweden)における。結合の親和性は、用語ka(抗体/抗原複合体からの抗体の結合に対する比率定数)、k
D(解離定数)、及びK
D(k
D/ka)によって定義される。一実施態様では、結合する又は特異的に結合するとは、10
-8mol/l以下、好ましくは10
-9Mから10
-13mol/lの結合親和性(K
D)を意味する。従って本発明による三重又は四重特異性抗体は、好ましくは、各抗原に対して10
-8mol/l以下、好ましくは10
-9Mから10
-13mol/lの結合親和性(K
D)で特異的に結合する。
【0068】
FcγRIII に対する抗体の結合は、BIAcoreアッセイ(GE-Healthcare Uppsala, Sweden)によって調べることが出来る。結合の親和性は、用語ka(抗体/抗原複合体からの抗体の結合に対する比率定数)、k
D(解離定数)、及びK
D(k
D/ka)によって定義される。
【0069】
「エピトープ」なる用語は、抗体に特異的に結合できるあらゆるポリペプチド決定基を包含する。ある実施態様においては、エピートープ決定基は、例えばアミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニル等の分子の化学的活性表面群を包含し、ある実施態様においては、特定の3次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。
【0070】
ある実施態様では、抗体は、タンパク質及び/又は高分子の複合混合物においてその標的抗原を優先的に認識する場合、抗原を特異的に結合すると言われる。
【0071】
更なる実施態様では、本発明による三重又は四重特異性抗体は、前記完全長抗体が、ヒトIgG1サブクラス、又は変異L234A及びL235Aを有するヒトIgG1サブクラスのものであることを特徴とする。
【0072】
更なる実施態様では、本発明による三重又は四重特異性抗体は、前記完全長抗体が、ヒトIgG2サブクラスのものであることを特徴とする。
【0073】
更なる実施態様では、本発明による三重又は四重特異性抗体は、前記完全長抗体が、ヒトIgG3サブクラスのものであることを特徴とする。
【0074】
更なる実施態様では、本発明による三重又は四重特異性抗体は、前記完全長抗体が、ヒトIgG4サブクラス、又は追加変異S228Pを有するヒトIgG4サブクラスのものであることを特徴とする。
【0075】
好ましくは、本発明による三重又は四重特異性抗体は、前記完全長抗体が、ヒトIgG1サブクラス、追加変異S228Pを有するヒトIgG4サブクラスのものであることを特徴とする。
【0076】
本発明による三重又は四重特異性抗体は、例えば生物学的又は薬物学的活性、薬物動態特性、又は毒性等の改善された特性を持つことが現在分かっている。これらは、例えば癌などの疾病の治療のため等に使用されることが可能である。
【0077】
本出願内で使用される「定常領域」なる用語は、可変領域以外の抗体のドメインの合計を意味する。定常領域は、抗原の結合に直接は関与しないが、様々なエフェクター機能を示す。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列によって、抗体はクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに分けられ、これらの内幾つかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、IgA1及びIgA2等のサブクラスに更に分けられる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。全5抗体クラスに見られる軽鎖定常領域(CL)はκ(カッパ)及びλ(ラムダ)と呼ばれる。
【0078】
本出願で使用される「ヒト由来の定常領域」なる用語は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のヒト抗体の定常重鎖領域、及び/又は定常軽鎖カッパ又はラムダ領域を意味する。このような定常領域は、現状の当技術分野でよく知られており、また例えばKabat, E.A., (例えばJohnson, G.及びWu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218;Kabat, E.A.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72 (1975) 2785-2788を参照)によって記載されている。
【0079】
IgG4サブクラスの抗体は、低減されたFc受容体(FcγRIIIa)結合を示すが、他のIgGサブクラスの抗体は強い結合を示す。しかしながら、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297(Fc炭水化物の損失)、Pro329、Leu234、Leu235、Gly236、Gly237、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434、及びHis435は、変更されれば、同様に低減されたFc受容体結合を提供する残基である(Shields, R.L.等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604;Lund, J.等, FASEB J. 9 (1995) 115-119;Morgan, A.等, Immunology 86 (1995) 319-324;欧州特許第0307434号)。
【0080】
一実施態様では、本発明による抗体は、IgG1抗体と比較して低減されたFcR結合を持つ。従って、完全長親抗体は、FcR結合においては、IgG4サブクラスのもの、又はS228、L234、L235及び/又はD265に変異を有するIgG1又はIgG2のものであり、及び/又はPVA236変異を有する。一実施態様では、完全長親抗体の変異は、S228P、L234A、L235A、L235E、及び/又はPVA236である。別の実施態様では、完全長親抗体の変異は、IgG4 S228P、及びIgG1 L234A及びL235Aにある。
【0081】
抗体の定常領域は、ADCC(抗体依存性細胞傷害)及びCDC(補体依存性細胞傷害)に直接関与する。補体活性(CDC)は、ほとんどのIgG抗体サブクラスの、定常領域への補体因子Clqの結合によって開始される。抗体へのClqの結合は、いわゆる結合部位での所定のタンパク質-タンパク質相互作用によって引き起こされる。このような定常領域結合部位は、現在の当該技術分野で周知であり、例えばLukas, T.J.等, J. Immunol. 127 (1981) 2555-2560; Bunkhouse, R.及びCobra, J.J., Mol. Immunol. 16 (1979) 907-917; Burton, D.R.等, Nature 288 (1980) 338-344; Thomason, J.E.等, Mol. Immunol. 37 (2000) 995-1004; Idiocies, E.E.等, J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184; Hearer, M.等, J. Virol. 75 (2001) 12161-12168;Morgan, A.等, Immunology 86 (1995)319-324;及び欧州特許出願公開第0307434号等に記載されている。このような定常領域結合部位は、例えばアミノ酸L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、及びP329(番号付けはカバットのEUインデックスに従う)によって特徴付けられる。
【0082】
「抗体依存性細胞傷害(ADCC)」なる用語は、エフェクター細胞の存在下における、本発明の抗体によるヒト標的細胞の溶解を意味する。ADCCは、エフェクター細胞、例えば、新鮮に単離されたPBMC、又は単球もしくはナチュラルキラー(NK)細胞または持続的に増殖するNK細胞株のような、バフィーコートから精製されたエフェクター細胞等の存在下で、抗原発現細胞の調製物を本発明による抗体で処理することによって測定される。
【0083】
「補体依存性傷害(CDC)」なる用語は、ほとんどのIgG抗体サブクラスの、Fc部への補体因子C1qの結合によって開始される過程を意味する。抗体へのC1qの結合は、いわゆる結合部位での、規定のタンパク質-タンパク質相互作用によって引き起こされる。このようなFc部結合部位は、現在の当該技術分野で知られている(上記参照)。このようなFc結合部位は、例えば、アミノ酸L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、及びP329によって特徴づけられる(番号付けはカバットのEUインデックスに従う)。サブクラスIgG1、IgG2、及びIgG3の抗体は通常C1q及びC3結合を含む補体活性を示すが、IgG4は、補体系を活性化せず、C1q及び/又はC3を結合しない。
【0084】
モノクローナル抗体の細胞媒介エフェクターの機能は、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180;及び米国特許第6602684号に記載されるように、それらのオリゴ糖成分を操作することにより強化されることが出来る。最も一般的に使用される治療抗体であるIgG1型抗体は、各CH2ドメインのAsn297に、保存されたN結合型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合した2つの複合二分岐型オリゴ糖はCH2ドメインの間に埋め込まれ、ポリペプチド骨格との広範な接触を形成し、またそれらの存在は抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)等のエフェクター機能を仲介するために必須である(Lifely, M., R.等, Glycobiology 5 (1995) 813-822; Jefferis, R.等, Immunol. Rev. 163 (1998) 59-76; Wright, A., and Morrison, S.L., Trends Biotechnol. 15 (1997) 26-32). Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び国際公開第99/54342号は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるβ(1、4)-N-アセチルグルコサミン転移酵素III(GnTIII)(バイセクト化オリゴ糖の形成を触媒するグリコシル転移酵素)の過剰発現が、インビトロでの抗体のADCC活性を顕著に上昇させることを示した。また、N297における糖質の構成の変更又はその除去は、FcγR及びC1qとの結合に影響する(Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180; Davies, J.等, Biotechnol. Bioeng. 74 (2001) 288-294; Mimura, Y.等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 45539-45547; Radaev, S.等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 16478-16483; Shields, R.L.等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604; Shields, R.L.等, J. Biol. Chem. 277 (2002) 26733-26740; Simmons, L.C.等, J. Immunol. Methods 263 (2002) 133-147)。
【0085】
モノクローナル抗体の細胞媒介エフェクター機能を増強させる方法は、例えば、国際公開第2005/018572号、国際公開第2006/116260号、国際公開第2006/114700号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2005/011735号、国際公開第2005/027966号、国際公開第1997/028267号、米国特許第2006/0134709号、米国特許第2005/0054048号、米国特許第2005/0152894号、国際公開第2003/035835号、国際公開第2000/061739号に報告されている。
【0086】
本発明の一好ましい実施態様では、三重又は四重特異性抗体は、(IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス、好ましくはIgG1又はIgG3サブクラスのFc部を含む場合は)Asn297において糖鎖でグリコシル化され、これにより前記糖鎖内のフコースの量が65%またはそれ以下である(番号付けはカバットに従う)。別の実施態様では、前記糖鎖内のフコースの量は5%から65%の間であり、好ましくは20%から40%の間である。本発明による「Asn297」は、Fc領域における約位置297に位置するアミノ酸アスパラギンを意味する。抗体の小さい配列変異に基づき、Asn297は、位置297の数アミノ酸(通常は多くて+3アミノ酸)上流又は下流、つまり位置294と300の間に位置してもよい。一実施態様では、本発明によるグリコシル化抗体は、IgGサブクラスは、ヒトIgG1サブクラス、変異L234A及びL235Aを有するヒトIgG1サブクラス、又はIgG3サブクラスのものである。更なる実施態様では、前記糖鎖内の、N-グリコリルノイラミン酸(NGNA)の量は1%もしくはそれ以下であり及び/又はN末端α-1,3-ガラクトースの量は1%もしくはそれ以下である。糖鎖は好ましくは、CHO細胞において組換えによって発現させた抗体のAsn297に結合したN結合型グリカンの特徴を示す。
【0087】
「糖鎖は、CHO細胞において組換えによって発現させた抗体のAsn297に結合したN結合型グリカンの特徴を示す」という用語は、本発明による完全長親抗体のAsn297における糖鎖が、フコース残基以外は、未改変CHO細胞において発現させた同じ抗体のもの、例えば国際公開第2006/103100号に報告されるものと同じ構造および糖残基配列を有するということを意味する。
【0088】
「NGNA」なる用語は、本出願内で使用される場合、糖残基N-グリコリルノイラミン酸を意味する。
【0089】
ヒトIgG1またはIgG3のグリコシル化は、フコシル化二分岐複合型コアオリゴ糖としてAsn297で発生し、その際、グリコシル化は最高2個のGal残基で終結する。IgG1又はIgG3サブクラスのヒト定常重鎖領域は、Kabat, E., A.等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991), and by Bruggemann, M.等, J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361; Love, T., W.等, Methods Enzymol. 178 (1989) 515-527によって詳細に報告されている。これらの構造物は、末端Gal残基の量に応じて、G0、G1(α-1,6-もしくはα-1,3-)、又はG2グリカン残基と名付けられている(Raju, T., S., Bioprocess Int. 1 (2003) 44-53)。抗体Fc部分のCHO型グリコシル化は、例えば、Routier, F. H., Glycoconjugate J. 14 (1997) 201-207によって説明されている。糖改変していない(non-glycomodified)CHO宿主細胞において組換えによって発現される抗体は、通常、少なくとも85%の量がAsn297においてフコシル化されている。完全長親抗体の修飾されたオリゴ糖は、ハイブリッド又は複合体であり得る。好ましくは、分岐型、還元/非グリコシル化オリゴ糖は、ハイブリッドである。別の実施態様では、分岐型、還元/非グリコシル化オリゴ糖は、複合体である。
【0090】
本発明によれば、「フコースの量」とはAsn297での糖鎖内の前記糖の量を意味し、Asn297に付着した全ての糖鎖構造物(例えば、複合体構造物、ハイブリッド構造物、及び高マンノース構造物等)の合計に関連し、MALDI-TOF質量分析法によって測定され、平均値として算出される。フコースの相対量は、MALDI-TOFによる、N-グリコシダーゼFで処理された試料において同定された全糖鎖構造物(例えば、それぞれ複合体構造物、ハイブリッド構造物、ならびにオリゴマンノース構造物、および高マンノース構造物)に関連するフコース含有構造物の割合である。
【0091】
本発明による抗体は組換え手段によって生産される。このように、本発明の一態様は、本発明による抗体をコードする核酸であり、更なる態様は、本発明による抗体をコードする前記核酸を含んでなる細胞である。組換え生産の方法は当技術分野の水準(state of the art)において広く知られており、原核及び真核細胞におけるタンパク質の発現と続く抗体の単離及び通常は薬物学的に許容可能な純度までの精製を含む。宿主細胞における前述した抗体の発現のために、それぞれ修飾された軽及び重鎖をコードする核酸が標準的な方法によって発現ベクターに挿入される。CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、PER.C6細胞、酵母、又は大腸菌細胞等の適切な原核又は真核宿主細胞において発現が実施され、細胞(上清又は溶解後の細胞)から抗体が回収される。抗体の組換え生産のための一般的な方法は当技術分野の水準において周知であり、例えば、Makrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse, S.等, Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-161; Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880といった総説論文に記載されている。
【0092】
本発明による三重又は四重特異性抗体は、一般的な免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって、培地から適宜分離される。モノクローナル抗体をコードするDNAおよびRNAは、一般的な手順を用いて容易に単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAおよびRNAの供給源として機能することができる。一度単離されると、DNAは発現ベクターに挿入され得、次いで他には免疫グロブリンタンパク質を生産さいない例えばHEK293細胞、CHO細胞、メラノーマ細胞等の宿主細胞にトランスフェクトされ、宿主細胞において組換えモノクローナル抗体の合成が得られる。
【0093】
三重又は四重特異性抗体のアミノ酸配列変異体(又は変異)は、抗体DNAに適切なヌクレオチド変化を導入することによって、又はヌクレオチド合成によって調製される。このような修飾は実施されることが可能であるが、しかしながら、例えば上述のような非常に限定された範囲においてのみである。例えば、修飾は、IgGアイソタイプ及び抗原結合等の上述の抗体特性を変更しないが、組換え生産の収率、タンパク質安定を改善し得、又は精製を容易にし得る。
【0094】
本出願において使用される「宿主細胞」なる用語は、本発明による抗体を生成するよう操作されることが可能である細胞系の何れかの種を意味する。一実施態様では、HEK293細胞及びCHO細胞が宿主細胞として使用される。ここで使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」なる表現は互換的に使用され、全てのこのような指定は子孫を含む。従って、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」なる用語は転換の数に関係無く、主要対象細胞及びそれら由来の培養物を含む。また、全ての子孫細胞が、故意の又は偶発的な変異のためにDNA内容において正確に同一ではないかもしれないことが理解される。本来形質転換された細胞のためにスクリーニングされたものと同じ機能又は生物学的活性を持つ変異体子孫細胞が含まれる。異なる指定が意図される場合は、文脈から明らかとなるであろう。
【0095】
NS0細胞における発現は、例えばBarnes, L.M.等, Cytotechnology 32 (2000) 109-123; Barnes, L.M.等, Biotech. Bioeng. 73 (2001) 261-270によって記載されている。一過性発現は、Durocher, Y.等, Nucl. Acids. Res. 30 (2002) E9によって記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 3833-3837; Carter, P.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289; and Norderhaug, L.等, J. Immunol. Methods 204 (1997) 77-87によって記載されている。好ましい一過性発現システム(HEK 293)は、Schlaeger, E.-J., 及びChristensen, K., in Cytotechnology 30 (1999) 71-83及びSchlaeger, E.-J., J. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199によって記載されている。
【0096】
原核細胞に適した制御配列には、例えば、プロモーター、場合によってはオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、及びポリアデニル化シグナルを使用することが知られている。
【0097】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係で配置されている場合、「作用可能に連結」されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、そのポリペプチドのDNAに機能的に連結されており;プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響を及ぼす場合、そのコード配列に機能的に連結されており;又は、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に機能的に連結されている。一般に、「作用可能に連結される」とは、連結されるDNA配列が近接していていること、分泌リーダーの場合は、近接し、且つリーディングフレーム中にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは近接していなくてもよい。連結は、簡便な制限部位におけるライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが、一般的な手法に従って使用される。
【0098】
抗体の精製は、細胞成分又は他の混入物、例えば他の細胞核酸又はタンパク質等を除去するために実施され、アルカリ/SDS法、CsCl分染法(CsCl banding)、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、及び当該技術で周知の他の方法を含む標準技術によって実施される。例えばAusubel, F.等編 Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照のこと。タンパク質精製のための異なる方法が確立されまた広く使用されており、例えば、微生物タンパク質を用いたアフィニティークロマトグラフィー(例えばタンパク質A又はタンパク質Gアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば陽イオン交換(カルボキシメチル樹脂、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)、及び混床式(mixed-mode)交換)、チオール基吸着(thiophilic adsorption)(例えばβメルカプトエタノール及び他のSHリガンドを用いて)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニル-セファロース、アザ-アレノフィリック樹脂、又はm-アミノフェニルボロン酸を用いて)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Ni(II)-及びCu(II)-アフィニティー材料を用いる)、サイズ排除クロマトグラフィー、及び電気泳動法(ゲル電気泳動、キャピラリー泳動等)(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102)等である。
【0099】
本発明の一態様は、本発明による抗体を含む薬学的組成物である。本発明の別の態様は、薬学的組成物を製造するための、本発明による抗体の使用である。本発明の更なる態様は、本発明による抗体を含有する薬学的組成物を製造するための方法である。別の態様では、本発明は、薬学的担体と合わせて製剤化された本発明に係る抗体を含む組成物、例えば、薬学的組成物を提供する。
【0100】
本発明の一実施態様は、癌の治療のための本発明による三重又は四重特異性抗体である。
【0101】
本発明の別の態様は、癌の治療のための前記薬学的組成物である。
【0102】
本発明の別の態様は、癌の治療のための医薬の製造のための本発明による抗体の使用である。
【0103】
本発明の別の態様は、癌を患っている患者の治療の方法であって、このような治療を必要とする患者に本発明による抗体を投与する方法。
【0104】
ここで使用される場合、「薬学的担体」は、生理学的に適合性のある、ありとあらゆる溶剤、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤、及び同様なもの含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適したものである。
【0105】
本発明の組成物は当該技術知られる様々な様式によって投与されることができる。当業者によって理解されるように、投与のルート及び/又は方法は所望される結果によって様々であろう。投与の特定のルートによって本発明の化合物を投与するために、その不活性化を防止するための物質で化合物をコーティング、又は化合物と共に同時投与される必要があり得る。例えば、化合物はリポソーム又は希釈剤等の適切な担体において投与され得る。薬物学的に許容可能な希釈剤は、生理食塩水及び緩衝水溶液を含む。薬物学的担体は、滅菌水溶液又は分散系、及び滅菌注射用溶液又は分散系の即時調製のための滅菌パウダーを含む。薬物学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は当技術分野で公知である。
【0106】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、本明細書において使用される場合、経腸及び局所の投与以外の投与様式を意味し、通常は注射によって、及び静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射および注入を含むが、これに限定されるものではない。
【0107】
癌なる用語は、ここで使用される場合、増殖性疾病を意味し、例えばリンパ腫、リンパ球性白血病、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、細気管支肺胞(bronchioloalviolar)細胞肺癌、骨癌、膵癌、皮膚癌、頭部又は頸部癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管の癌、子宮内膜の癌、頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、上皮小体癌、副腎癌、軟部組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓又は尿管癌、腎臓細胞癌、腎盂の癌、中皮腫、肝細胞性癌、胆道癌、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、多形神経膠芽腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣腫(ependymonas)、髄芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体性腺腫及びユーイング肉腫等であり、上記の癌の何れかの難治性のもの、又は上記の癌の一又は複数のの組合せを含む。
【0108】
本発明による組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などの補助剤も含んでよい。微生物の存在の防止は、上記の滅菌手順、及び例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、及びソルビン酸等の様々な抗菌及び抗真菌剤の含有両方によって徹底することが出来る。また、糖、塩化ナトリウム、及び同様なもの等張化剤を組成物中に含めることが望ましい場合もあり得る。更に、注射可能な薬剤形態の長期にわたる吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅延させる薬剤の含有によって実現され得る。
【0109】
選択された投与ルートに関わらず、適切な水和型で使用され得る本発明の化合物、及び/又は本発明の薬学的組成物は、当業者に公知である一般的な方法によって薬学的に許容可能な剤形に製剤化される。
【0110】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に毒性とならずに、個々の患者、組成物、及び投与様式にとって望ましい治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るように変更することができる。選択される投薬量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、治療の継続期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的健康状態、及び以前の病歴、並びに医薬分野で周知である同様な要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存すると考えられる。
【0111】
該組成物は、無菌であり、且つ、注射器によって組成物を送達可能である程度に流動性でなければならない。水に加えて、担体は好ましくは等張性の緩衝生理食塩水である。
【0112】
適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用、分散系の場合には必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖、マンニトール又はソルビトール等の多価アルコール、及び塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。
【0113】
「形質転換」なる用語は、本明細書において使用される場合、宿主細胞中へのベクター/核酸のトランスファー工程を言及する。強い細胞壁バリヤーを有さない細胞が宿主細胞として使用される場合、トランスフェクションが、例えばGraham及びVan der Eh, Virology 52 (1978) 546ffにより記載されるようなリン酸カルシウム沈殿方法等により実施される。しかしながら、核注入又はプロトプラスト融合等による細胞中へのDNAの導入のための他の方法がまた使用され得る。原核細胞、又は実質的な細胞壁構成を含む細胞が使用される場合、1つのトランスフェクション方法は、Cohen, F.N等, PNAS 69 (1972) 7110 et seqにより記載されるような、塩化カルシウムを用いるカルシウム処理法である。
【0114】
本明細書において使用される場合、「発現」とは、核酸がmRNAに転写される過程、及び/又は転写されたmRNA(また、転写物としても言及される)がその後ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に翻訳される過程を言及する。転写物及びコードされたポリペプチドは、集合的には、遺伝子生成物として言及される。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、真核細胞における発現は、mRNAのスプライシングを包含し得る。
【0115】
「ベクター」とは、挿入される核酸分子を、宿主細胞中に及び/又は宿主細胞間にトランスファーする、核酸分子、特に自己複製する核酸分子である。この用語は、DNA又はRNAの細胞中への挿入(例えば、染色体組込み)のために主に機能するベクター、DNA又はRNAの複製のために主に機能するベクターの複製、及びDNA又はRNAの転写及び/又は翻訳のために機能する発現ベクターを包含する。一以上の記載されるような機能を提供するベクターもまた包含される。
【0116】
「発現ベクター」とは、適切な宿主細胞中に導入される場合、転写され、そしてポリペプチドに翻訳され得るポリヌクレオチドである。「発現系」とは、所望する発現生成物を生成するために機能することができる発現ベクターから構成される適切な宿主細胞を通常言及する。
【0117】
以下の実施例、配列リスト、及び図は本発明の理解を補助するために提供され、真の範囲は添付の請求の範囲に記載されている。発明の意図することから逸脱することなく、記載される手順において変更がなされてもよいことが理解される。
アミノ酸配列の説明
配列番号:1 軽鎖<Ang-2>
配列番号:2 C末端融合<EGFR>scFvを有するノブ重鎖<Ang-2>
配列番号:3 CH1-CL交換を有する軽鎖<VEGF>
配列番号:4 CH1-CL交換及びC末端融合<IGF-1R>scFvを有するホール重鎖<VEGF>
配列番号:5 C末端融合<EGFR>scFabを有するノブ重鎖<Ang-2>
配列番号:6 CH1-CL交換及びC末端融合<IGF-1R>scFabを有するホール-重鎖<VEGF>
配列番号:7 CH1-CL交換及びC末端融合<EGFR>scFvを有するホール重鎖<VEGF>
配列番号:8 CH1-CL交換を有するホール重鎖<VEGF>
配列番号:9 CH1-CL交換及びC末端融合<EGFR>scFabを有するホール重鎖<VEGF>
配列番号:10 C末端融合<IGF-1R>scFabを有するノブ重鎖<Ang-2>
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】
図1は典型的な順序の可変及び定常ドメインを含む2対の重鎖及び軽鎖を有する、第一の抗原に特異的に結合するCH4を持たない完全長抗体の模式的構造図。
【
図2a】
図2aは抗原に特異的に結合する4つの可能な単鎖Fab断片の模式的構造図。
【
図2b】
図2bは抗原に特異的に結合する単鎖Fv断片の模式的構造図。
【
図3a】
図3a-dは、第二の抗原に特異的に結合する抗体の完全長抗体軽/重鎖における、VL/VHドメイン及び/又はCL/CH1ドメインの交換を特徴とする本発明による異なる三重又は四重特異性抗体の模式的構造図である(CH3ドメインの更なるノブ-インツゥ-ホール修飾を有さないもの及び有するものがある)。
【
図3b】
図3a-dは、第二の抗原に特異的に結合する抗体の完全長抗体軽/重鎖における、VL/VHドメイン及び/又はCL/CH1ドメインの交換を特徴とする本発明による異なる三重又は四重特異性抗体の模式的構造図である(CH3ドメインの更なるノブ-インツゥ-ホール修飾を有さないもの及び有するものがある)。
【
図3c】
図3a-dは、第二の抗原に特異的に結合する抗体の完全長抗体軽/重鎖における、VL/VHドメイン及び/又はCL/CH1ドメインの交換を特徴とする本発明による異なる三重又は四重特異性抗体の模式的構造図である(CH3ドメインの更なるノブ-インツゥ-ホール修飾を有さないもの及び有するものがある)。
【
図3d】
図3a-dは、第二の抗原に特異的に結合する抗体の完全長抗体軽/重鎖における、VL/VHドメイン及び/又はCL/CH1ドメインの交換を特徴とする本発明による異なる三重又は四重特異性抗体の模式的構造図である(CH3ドメインの更なるノブ-インツゥ-ホール修飾を有さないもの及び有するものがある)。
【
図4a】
図4aはアンジオポイエチン2、VEGF−A、EGFR、及びGF−1Rを認識する本発明による四重特異性抗体の模式的構造図であり、四価であり、抗原結合ペプチドとしてジスルフィド安定化単鎖Fv断片を使用する(実施例1)。
【
図4b】
図4bはアンジオポイエチン2、VEGF−A、EGFR、及びGF−1Rを認識する本発明による四重特異性抗体の模式的構造図であり、四価であり、抗原結合ペプチドとして単鎖Fab断片を使用する(実施例1)。
【
図5a】
図5aはアンジオポイエチン2、VEGF−A、及びEGFRを認識する本発明による三重特異性抗体の模式的構造図であり、四価であり、抗原結合ペプチドとしてジスルフィド安定化単鎖Fv断片を使用する(実施例2)。
【
図5b】
図5bはアンジオポイエチン2、VEGF−A、及びEGFRを認識する本発明による三重特異性抗体の模式的構造図であり、四価であり、抗原結合ペプチドとして単鎖Fab断片を使用する(実施例2)。
【
図6】
図6はアンジオポイエチン2、VEGF−A、及びEGFRを認識する本発明による三重特異性抗体の模式的構造図であり、三価であり、抗原結合ペプチドとしてジスルフィド安定化単鎖Fv断片を使用する(実施例3)。
【
図7】
図7はEGFR、IGF−1R、c−Met、及びHER3を認識する本発明による四重特異性抗体の模式的構造図であり、四価であり、抗原結合ペプチドとしてジスルフィド安定化単鎖Fv断片を使用する。
【
図8】
図8はアンジオポイエチン2、VEGF−A、EGFR、及びIGF−1Rを認識する本発明による四重特異性抗体のサイズ排除クロマトグラフィーであり、四価であり、抗原結合ペプチドとして単鎖Fab断片を使用し(実施例1)、高負荷26/60 Superdex 200カラムで行われた。
【
図9】
図9はアンジオポイエチン2、VEGF−A、EGFR、及びIGF−1Rを認識する本発明による四重特異性抗体のSDS-PAGE分析であり、四価であり、抗原結合ペプチドとして単鎖Fab断片を使用し(実施例1)、未変性及び変性状態で行われた。
【
図10】
図10はアンジオポイエチン2、VEGF−A、及びEGFRを認識する本発明による三重特異性抗体のサイズ排除クロマトグラフィーであり、四価であり、抗原結合ペプチドとして単鎖Fab断片を使用し(実施例2)、高負荷26/60 Superdex 200カラムで行われた。
【
図11】
図11はアンジオポイエチン2、VEGF−A、及びEGFRを認識する本発明による四重特異性抗体のSDS-PAGE分析であり、三価であり、抗原結合ペプチドとして単鎖Fab断片を使用し(実施例2)、未変性及び変性状態で行われた。
【0119】
実施例
材料及び一般方法:
ヒト免疫グロブリン軽及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報は、Kabat, E.A.等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に与えられている。抗体鎖のアミノ酸はEU番号付けに従って、番号付けされまた言及される(Edelman, G.M.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 63 (1969) 78-85;Kabat, E.A.等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。
【0120】
組換えDNA技法:
標準的な方法がDNAを操作するために使用され、Sambrook, J.等, Molecular Cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載される。分子生物学的試薬が、製造業者の指示に従い使用された。
【0121】
遺伝子合成:
所望する遺伝子セグメントを、化学合成により製造されたオリゴヌクレオチドから調製した。単一の制限エンドヌクレアーゼ切断部位を両端に有する、600-1800bpの長さ遺伝子セグメントを、PCR増幅を包含するオリゴヌクレオチドのアニーリング及び連結によりアセンブリーし、続いて、例えばKpnI/SacI又はAxI/PacI等の示された制限部位によって、pPCRスクリプト(Stratagene)に基づくpGA4クローニングベクター中にクローン化した。サブクローン化された遺伝子断片のDNA配列を、DNA配列決定により確かめた。遺伝子合成断片を、Geneart (Regensburg, Germany)での得られる規格に従ってオーダーした。
【0122】
DNA配列決定:
DNA配列を、MediGenomix GmbH(Martinsried, Germany) 又はSequiserve GmbH(Vaterstetten, Germany)で実施される二本鎖配列決定により決定した。
【0123】
DNA及びタンパク質配列分析及び配列データ管理:
GCG (Genetics Computer Group, Madison, Wisconsin)のsoftware package version 10.2及びInfomax'のVector NTl Advance suite version 8.0を、配列作成、マッピング、分析、アノテーション及び図解のために使用した。
【0124】
発現ベクター:
記載した抗体の発現のために、CMV-イントロンAプロモーター有り又は無しのcDNA構成又はCMVプロモーター有りのゲノム構成の何れかに基づく一過性発現(例えば、HEK293 EBNA又はHEK293-F)細胞に対する発現プラスミドの変異体が適用された。
抗体発現カセットの他に、ベクターは次のものを含んだ:
−大腸菌においてこのプラスミドの複製を可能にする複製の起点、及び
−大腸菌においてアンピシリン耐性を付与するβ-ラクタマーゼ遺伝子。
【0125】
抗体遺伝子の転写ユニットは次の要素から構成される:
−5’末端のユニーク制限部位、
−ヒトサイトメガロウィルスからの最初期エンハンサー及びプロモーター、
−cDNA構成の場合、続くイントロンA配列、
−ヒト抗体遺伝子の5’-非翻訳領域、
−免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
−cDNAとしての又は免疫グロブリンエキソン-イントロン構成を有するゲノム構成としてのヒト抗体鎖(野生型、又はドメイン交換を有する)、
−ポリアデニル化シグナル配列を有する3’未翻訳領域、及び
−3’末端のユニーク制限部位。
【0126】
下記のような記載される抗体鎖を含んで成る融合遺伝子を、PCR及び/又は遺伝子合成により生成し、例えばそれぞれのベクターにおけるユニーク制限部位を用いて、核酸セグメントの結合により、既知組換え方法及び技法によりアセンブリーした。サブクローン化された核酸配列を、DNA配列決定により確証した。一過性トランスフェクションのために、多量のプラスミドを、形質転換された大腸菌培養物(Nucleobond AX, Macherey-Nagel)からのプラスミド調製物により調製した。
【0127】
細胞培養技法:
標準の細胞培養技法を、Current Protocols in Cell Biology (2000), Bonifacino, J.S., Dasso, M., Harford, J.B., Lippincott-Schwartz, J.及びYamada, K.M. (編), John Wiley & Sons, Incに記載されるように使用した。
三重又は四重特異性抗体を、接着的に増殖するHEK293-EBNAにおける、又は下記のような懸濁液において増殖するHEK29-F細胞における、それぞれの発現プラスミドの一過性同時トランスフェクションにより発現した。
【0128】
HEK293-EBNAシステムにおける一過性トランスフェクション:
三重又は四重特異性抗体を、10%極低(Ultra Low)IgG FCS(ウシ胎児血清, Gibco(登録商標))、2mML-グルタミン (Gibco(登録商標))及び250μg/mlジェネティシン(Gibco(登録商標))が補足されたDMEM(ダルベッコ変性イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)、Gibco(登録商標))において培養された、付着的に増殖するHEK293-EBNA細胞(エプスタイン-バールウィルス核抗原を発現するヒト胎児腎臓細胞系293;ATCC(American type culture collection)寄託番号CRL-10852、ロット959218)におけるそれぞれの発現プラスミド(例えば、H鎖及び修飾されたH鎖、及びその対応するL鎖及び修飾されたL鎖をコードする)の一過性同時トランスフェクションにより発現した。トランスフェクションのために、FuGENE
TM6トランスフェクション 試薬 (Roche Molecular Biochemicals)を、4:1(3:1〜6:1の範囲)のFuGENE
TM試薬(μl):DNA(μg)の比率において使用した。タンパク質を、それぞれ、1:1(等モル)(1:2〜2:1の範囲)のモル比の(修飾された及び野生型)L鎖コードのプラスミド:H鎖コードのプラスミドを用いて、それぞれのプラスミドから発現した。細胞は、3日目で、Lグルタミン(4mM)、グルコース(Sigma)及びNAA(Gibco(登録商標))を供給された。二重特異的抗体含有細胞培養上清液を、遠心分離により、トランスフェクションの5〜11日後、収穫し、そして−20℃で貯蔵した。例えばHEK293細胞におけるヒト免疫グロブリンの組換え発現に関する一般情報は、Meissner, P.等, Biotechnol. Bioeng. 75 (2001) 197-203に与えられる。
【0129】
HEK293-Fシステムにおける一過性トランスフェクション:
三重又は四重特異性抗体を、HEK293-Fシステム(Invitrogen)を用いて、その製造業者の指示に従って、それぞれのプラスミド(例えば、H鎖及び修飾されたH鎖、及びその対応するL鎖及び修飾されたL鎖をコードする)の一過性トランスフェクションにより生成した。手短に言及すると、血清を有さないFreeStyle
TM293発現培地(Invitrogen)を含む、振盪フラスコ又は撹拌された発酵器において増殖するHEK293-F細胞(Invitrogen)を、4種の発現プラスミド及び293フェクチン
TM又はフェクチン(Invitrogen)の混合物によりトランスフェクトした。2Lの振盪フラスコ(Corning)に関しては、HEK293-F細胞を、600mlにおいて1.0E
*6個の細胞/mlの密度で接種し、そして120rpm、8%CO2下でインキュベートした。この後、細胞を、A)それぞれ、H鎖又は修飾されたH鎖、及びその対応するL鎖を等モル比でコードする全プラスミドDNA(1μg/ml)600μgを含むOpti-MEM(Invitrogen)20ml、及びB)20mlのOpti-MEM+1.2mlの293フェクチン又はフェクチン(2μl/ml)の混合物(約42ml)により、約1.5×E
*6個の細胞/mlの細胞密度でトランスフェクトした。グルコース消費に従って、グルコース溶液を、発酵の間、添加した。分泌された抗体を含む上清液を、5〜10日後、収穫し、そして抗体を上清液から直接的に精製するか、又は上清液を凍結し、そして貯蔵した。
【0130】
タンパク質決定:
精製された抗体及び誘導体のタンパク質濃度を、Pace等, Protein Science, 1995, 4, 2411-1423に従うアミノ酸配列に基づいて計算されたモル消衰係数を用いて、280nmでの光学密度(OD)を決定することにより決定した。
【0131】
上清液において抗体濃度決定:
細胞培養上清液における抗体及び誘導体の濃度を、プロテインAアガロースビーズ(Roche)による免疫沈澱法により推定した。60μlのプロテインAアガロースビーズを、TBS-NP40(50mM Tris、pH7.5、150mM NaCl、1% Nonidet-P40)により3度、洗浄した。続いて、1〜15mlの細胞培養上清液を、TBS-NP40において予備-平衡化されたプロテインAアガロースビーズに適用した。室温での1時間のインキュベーションの後、ビーズを、Ultrafree-MC-filterカラム(Amicon)上で、0.5mlのTBS-NP40により1度、0.5mlの2×リン酸緩衝溶液(2×PBS、Roche)により、2度、及び0.5mlの100mMのクエン酸ナトリウム(pH5.0)により、すばやく4度、洗浄した。供給された抗体を、35μlのNuPAGE(商標)LDS サンプル緩衝液 (Invitrogen)の添加により溶出した。サンプルの半分を、それぞれNuPAGE(商標)サンプル還元剤と共に組合すか、又は末還元のままにし、そして70℃で10分間、加熱した。続いて、5-30μlを、4-12% NuPAGE(商標)Bis-Tris SDS-PAGE(Invitrogen)(還元されていないSDS-PAGEのためにはMOPS緩衝液、及び還元されたSDS-PAGEのためには、NuPAGE(商標) 抗酸化ランニング緩衝液添加剤(Invitrogen)と共にMES緩衝液を用いる)に適用し、そしてクーマシーブルーにより染色した。
【0132】
細胞培養上清液における抗体及び誘導体の濃度を、親和性HPLCクロマトグラフィーにより定量的に測定した。手短に言及すると、プロテインAに結合する抗体及び誘導体を含む細胞培養上清液を、200mMのKH2PO4、100mMのクエン酸ナトリウム(pH7.4)を含むApplied Biosystems Poros A/20カラムに適用し、そしてAgilent HPLC1100システム上で、200mMのNaCl、100mMのクエン酸(pH2.5)によりマトリックスから溶出した。溶出されたタンパク質を、UV吸光度及びピーク領域の積分により定量化した。精製された標準のIgG1抗体が、標準として作用した。
【0133】
他方では、細胞培養上清液における抗体及び誘導体の濃度を、Sandwich-IgG-ELISAにより測定した。手短に言及すれば、StreptaWell High Bind Strepatavidin A-96 ウエルマイクロタイタープレート (Roche)を、100μl/ウェルのビオチニル化された抗ヒトIgG捕獲分子F(ab’)2<h-Fcγ>BI(Dianova)により、0.1μg/mlで室温で1時間、又は他方では、4℃で一晩、被覆し、そして続いて、200μl/ウェルのPBS、0.05%Tween(PBST、Sigma)により3度、洗浄した。それぞれの抗体含有細胞培養上清液のPBS(Sigma)中、希釈溶液シリーズ100μlを、ウェル当たり添加し、そして室温でマイクロタイタープレートシェーカー上で1〜2時間インキュベートした。ウェルを、200μl/ウェルのPBSTにより3度、洗浄し、そして結合された抗体を、室温でマイクロタイタープレートシェーカー上で1〜2時間、検出抗体として、0.1μg/mlでの100μlのF(ab’)2<hFcγ>POD(Dianova)により検出した。結合されなかった検出抗体を、200μl/ウェルのPBSTにより3度、洗浄し、そして結合された検出抗体を、100μlのABTS/ウェルの添加により検出した。吸光度の決定を、405nmの測定波長(492nmの参照波長)でTecan Fluor分光計上で実施した。
【0134】
タンパク質精製:
タンパク質を、標準プロトコールに従って、濾過された細胞培養上清液から精製した。手短に言及すると、抗体を、プロテインAセファロースカラム(GE healthcare)に適用し、そしてPBSにより洗浄した。抗体の溶出を、pH2.8で達成し、続いてすぐに、サンプルを中和した。凝集されたタンパク質を、PBS又は20mMのヒスチジン、150mMのNaCl(pH6.0)中、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200, GE Healthcare)により、モノマー抗体から分離した。モノマー抗体画分をプールし、必要なら、例えばMILLIPORE Amicon Ultra (30 MWCO)遠心分離濃縮機を用いて濃縮し、凍結し、そして−20℃〜−80℃で貯蔵した。サンプルの一部を、例えばSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー又は質量分光法による、続くタンパク質の分析及び分析特徴化のために供給する。
【0135】
SDS-PAGE:
NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を、その製造業者の指示に従って使用した。特に、10%又は4〜12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)及びNuPAGE(登録商標)MES(NuPAGE(登録商標)抗酸化剤ランニング緩衝液添加剤により還元されたゲル)又はMOPS(還元されていないゲル)ランニング緩衝液を使用した。
【0136】
分析用サイズ排除クロマトグラフィー:
抗体の凝集及びオリゴマー状態の決定のためのサイズ排除クロマトグラフィー処理を、HPLCクロマトグラフィーにより実施した。手短に言及すると、プロテインA精製された抗体を、Agilent HPLC 1100システム上、300mMのNaCl、50mMのKH2PO4/K2HPO4(pH7.5)中、Tosoh TSKgel G3000SWカラムに、又はDionex HPLC-システム上、2×PBS中、Superdex 200 カラム (GE Healthcare)に適用した。溶出されたタンパク質を、UV吸光度及びピーク領域の積分により定量化した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901が、標準として作用した。
【0137】
質量分光法:
クロスオーバー抗体の全体の脱グリコシル化された質量を、電子噴霧イオン化質量分析(ESI-MS)により、決定し、そして確かめた。手短に言及すると、100μgの精製された抗体を、100mMのKH2PO4/K2HPO4(pH7)中、50mUのN-Glycosidase F (PNGaseF, ProZyme)により、37℃で12〜24時間、2mg/mlまでのタンパク質濃度で脱グリコシル化し、そして続いてSephadex G25カラム(GE Healthcare)上、HPLCにより脱塩した。それぞれのH及びL鎖の質量を、脱グリコシル化及び還元の後、ESI-MSにより決定した。手短に言及すると、115μl中、50μgの抗体を、60μlの1MのTCEP及び50μlの8Mのグアニジン塩酸塩と共にインキュベートし、続いて脱塩した。還元されたH及びL鎖の合計質量及び質量を、NanoMate源を備えたQ-Star Elite MSシステム上でESI-MSにより決定した。
【0138】
IGF-1R、EGFR、HER3、及びc-Met ECD Biacore:
生成された抗体のヒトIGF-1R、EGFR、HER3、及びc-Met ECD(
Extra
cellular
Domains、細胞外ドメイン)への結合をまた、Biacore T100測定機(GE Healthcare Biosciences AB, Uppsala, Sweden)を用いて、表面プラスモン共鳴法により調査した。手短に言及すれば、親和性測定のために、ヤギ-抗-ヒトIgG、JIR 109-005-098抗体を、ヒトECD-Fcタグに対する抗体の提示のためにアミンカップリングを通してCM5チップ上に固定した。結合を、HBS緩衝液(HBS-P(10mM HEPES、150mM NaCl、0.005% Tween20、ph7.4))において25℃で測定した。c-Met、IGF-IR、又はEGFRからのECD(R&D Systems又はインハウス精製された)を、溶液中、種々の濃度で添加した。会合を、80秒〜3分のECD注入により測定し;解離を、HBS緩衝液によりチップ表面を3〜10分間、洗浄することにより測定し、そしてKD値を1:1ラングミュア結合モデルを用いて評価した。低い負荷密度及び捕獲レベルのために、一価のECD結合を得た。負の対照データ(例えば、緩衝液曲線)を、システムイントリンシック基線変動の補正及びノイズシグナル低減のためにサンプル曲線から減算した。Biacore T100 Evaluation Software version 1.1.1を、センサーグラムの分析及び親和性データの計算のために使用した。
図11は、Biacoreアッセイのスキームを示す。
【0139】
ANGPT2及びVEGF結合BIACORE
ヒトANGPT2及びVEGFに対する生成された抗体の結合をまた、BIACORE T100 instrument(GE Healthcare Biosciences AB, Uppsala, Sweden)を使用する表面プラズモン共鳴によって調査した。手短に言及すれば、親和性測定のために、ヤギ<hIgG-Fcg>ポリクローナル抗体を、ヒトANGPT2及びVEGFに対する抗体の提示のためにアミンカップリングを通してCM5又はCM4チップ上に固定した。HBS緩衝液(HBS-P、10mM HEPES、150mM NaCl、0.005% Tween20、pH7.4)中、5mM Ca2+の存在又は非存在下、25℃において結合を測定した。精製したANGPT2-His又はVEGF165/VEGF121-His(R & D Systems又はインハウス精製) を溶液中、種々の濃度で添加した。会合を3分のANGPT2/VEGF注入により測定した;チップ表面をHBS緩衝液で3〜5分間洗浄することによって解離を測定し、そして1:1ラングミュア結合モデルを使用してKD値を推定した。負の対照データ(例えば、緩衝液曲線)を、システムイントリンシック基線変動の補正及びノイズシグナル低減のためにサンプル曲線から減算した。Biacore T100 Evaluation Software version 1.1.1を、センサーグラムの分析及び親和性データの計算のために使用した。
【0140】
BIACOREにおける同時結合
EGFR、IGF-1R、Ang-2及びVEGF又はEGFR、IGF-1R、HER3及びc-Met又はEGFR、Ang-2及びVEGFそれぞれに対する四重及び三重特異性抗体の同時結合。
【0141】
四重又は三重特異性抗体フォーマットの結合は、結合モジュール及び2重特異性抗体が由来する野生型IgGの結合と比較された。これらの分析は、上記のように表面プラズモン共鳴(Biacore)によって実施された。同時結合を示すために、結合特性は、Biacore T100 instrument (Biacore AB, Uppsala)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって分析された。
【0142】
キャプチャー抗ヒトIgG抗体を、アミンカップリング化学を使用してCM5バイオセンサーチップの表面上に固定した。フローセルを、0.1MのN-ヒドロキシスクシンイミド及び0.1Mの3-(N、N-ジメチルアミノ)プロピル-N-エチルカルボジイミドの1:1混合を用いて、流量5μl/分で作動した。抗ヒトIgG抗体を、酢酸ナトリウムに注入し、pH5.0、10μg/ml、約12000RUの面密度となった。参照コントロールフローセルが同じ様に試験されたが、キャプチャー抗体の代わりにビヒクルバッファーを用いた。表面は、1Mのエタノールアミン/HCl、pH8.5の注入でブロックした。多重特異性抗体は、HBS-Pに希釈され、流量5μl/分で注入された。接触時間(association phase)は、1から50nMの濃度の抗体で1分であった。EGFR/IGF-1R/HER3/c-Met-ECD及びAng-2又はVEGFそれぞれが、漸進的増加濃度で注入された。全ての作用は、25°C(標準温度)で実施された。3Mの塩化マグネシウムの再生液が、流量5μl/分で60秒間注入され、各結合サイクル後の非共有結合タンパク質を取り除いた。シグナルは1秒あたり1シグナルの割合で検出された。サンプルは漸進的増加濃度で注入された。
【0143】
実施例1
アンジオポイエチン2、VEGF−A、EGFR、及びIGF−1Rを認識する四重特異性四価抗体の製造、発現、精製、及び特徴付け
第一の例では、アンジオポイエチン2、VEGF−A、EGFR、及びIGF−1Rを認識する四重特異性四価抗体は、可変ドメインを有しアンジオポイエチン2及びVEGFを認識しノブ-インツゥ-ホールを有するCH1/CL(Cカッパ)ドメイン交換抗体であって、EGFRに対するジスルフィド安定化されたscFvを第一重鎖のC末端に、及びIGF−1Rに対するscFvを第二重鎖のC末端に、(G4S)4コネクターを介して融合することによって生成された(
図4a)。それぞれの4抗体鎖の配列が配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、及び配列番号:4に与えられている。
【0144】
第二の例では、アンジオポイエチン2、VEGF−A、EGFR、及びIGF−1Rを認識する四重特異性四価抗体は、可変ドメインを有しアンジオポイエチン2及びVEGFを認識しノブ-インツゥ-ホールを有するCH1/CL(Cカッパ)ドメイン交換抗体であって、EGFRに対するscFvを第一重鎖のC末端に、及びIGF−1Rに対するscFvを第二重鎖のC末端に、(G4S)2コネクターを介して融合することによって生成された(
図4b)。それぞれの4抗体鎖の配列が配列番号:1、配列番号:5、配列番号:3、及び配列番号:6に与えられている。
【0145】
第二の例に類似の更なる実施例では、アンジオポイエチン2、VEGF−A、EGFR、及びIGF−1Rを認識する四重特異性四価抗体は、可変ドメインを有しアンジオポイエチン2及びVEGFを認識しノブ-インツゥ-ホールを有するCH1/CL(Cカッパ)ドメイン交換抗体であって、EGFRに対するscFabを第二重鎖のC末端に、及びIGF−1Rに対するscFabを第一重鎖のC末端に、(G4S)2コネクターを介して融合することによって生成された(
図4bと類似するが、IGF−1Rに対するscFabがノブANG2を結合する重鎖に融合され、またEGFRに対するscFabがホールVEGFを結合する重鎖に融合された)。それぞれの4抗体鎖の配列が配列番号:1、配列番号:3、配列番号:9、及び配列番号:10に与えられている。
【0146】
これらの抗体変異体が、古典分子生物技法による一般的な方法セクションにおいて、上述されたように生成され、また上述のようにHEK293F細胞において一過性に発現された。次いで、それらはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせによって上澄みから精製された。得られた生産物は、質量分析及びSDS-PAGEによる純度、モノマー含有量、及び安定性等の分析特性によって識別のために特徴付けられた。(
図8-9、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:9、及び配列番号:10に基づく)
【0147】
4つの包含抗原(アンジオポイエチン2、VEGF-A、EGFR、及びIGF-1R)に対する4つの抗体特異性の(同時)結合が、上述の方法を使用し、Biacore によって示された。
【0148】
実施例2
アンジオポイエチン2、VEGF-A、及びEGFRを認識する三重特異性四価抗体の製造、発現、精製、及び特徴付け
第一の例では、アンジオポイエチン2、VEGF-A、及びEGFRを認識する三重特異性四価抗体は、可変ドメインを有しアンジオポイエチン2及びVEGFを認識しノブ-インツゥ-ホールを有するCH1/CL(Cカッパ)ドメイン交換抗体であって、EGFRに対するジスルフィド安定化されたscFvを、2つの重鎖のC末端部に(G4S)4コネクターを介して融合することによって生成された(
図5a)。それぞれの4抗体鎖の配列が配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、及び配列番号:7に与えられている。
【0149】
第二の例では、アンジオポイエチン2、VEGF-A、EGFR、及びIGF−1Rを認識する三重特異性四価抗体は、可変ドメインを有しアンジオポイエチン2及びVEGFを認識しノブ-インツゥ-ホールを有するCH1/CL(Cカッパ)ドメイン交換抗体であって、EGFRに対する2つのscFabを、2つの重鎖のC末端部に(G4S)2コネクターを介して融合することによって生成された(
図5b)。それぞれの4抗体鎖の配列が配列番号:1、配列番号:5、配列番号:3、及び配列番号:9に与えられている。
【0150】
これらの抗体変異体が、古典分子生物技法による一般的な方法セクションにおいて、上述されたように生成され、また上述のようにHEK293F細胞において一過性に発現された。次いで、それらはプロテイン質Aアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせによって上澄みから精製された。得られた生産物は、質量分析及びSDS-PAGEによる純度、モノマー含有量、及び安定性等の分析特性によって識別のために特徴付けられた。(
図10-11、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:3、及び配列番号:9に基づく)。
3つの包含抗原(アンジオポイエチン2、VEGF-A、及びEGFR)に対する4つの抗体特異性の(同時)結合が、上述の方法を使用し、Biacore によって示された。
【0151】
実施例3
アンジオポイエチン2、VEGF-A、及びEGFRを認識する三重特異性三価抗体の製造、発現、精製、及び特徴付け
【0152】
第一の例では、アンジオポイエチン2、VEGF-A、EGFR、及びIGF-1Rを認識する三重特異性三価抗体は、可変ドメインを有しアンジオポイエチン2及びVEGFを認識しノブ-インツゥ-ホールを有するCH1/CL(Cカッパ)ドメイン交換抗体であって、EGFRに対するジスルフィド安定化されたscFvを、2つの重鎖のC末端部に(G4S)4コネクターを介して融合することによって生成された(
図6)。それぞれの4抗体鎖の配列が配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、及び配列番号:8に与えられている。
【0153】
これらの抗体変異体が、古典分子生物技法による一般的な方法セクションにおいて、上述されたように生成され、また上述のようにHEK293F細胞において一過性に発現された。次いで、それらはタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせによって上澄みから精製された。得られた生産物は、質量分析及びSDS-PAGEによる純度、モノマー含有量、及び安定性等の分析特性によって識別のために特徴付けられた。
3つの包含抗原(アンジオポイエチン2、VEGF-A、及びEGFR)に対する4つの抗体特異性の(同時)結合が、上述の方法を使用し、Biacore によって示された。