(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の縦枠及び一対の横枠が枠状に組み合わされて形成される枠体と、ワイヤにより互いに連動して上下に移動可能に前記枠体の内側に備えられる上障子及び下障子と、を備える開口部装置であって、
前記縦枠には、前記上障子及び前記下障子をガイドするガイド溝が設けられており、前記上障子又は前記下障子の少なくとも一方のガイド溝は、直線部と傾斜部とを有し、
前記直線部は前記縦枠の長手方向に沿って設けられ、前記傾斜部はその一端が前記直線部の一方の端部に連通するとともに、前記傾斜部の他端は他方のガイド溝の端部に向けて傾斜して延在し、前記上障子及び前記下障子は、該上障子及び下障子から突出して配置され、前記ガイド溝内を移動可能であるガイドを有し、
前記傾斜部を有するガイド溝によりガイドされる前記上障子又は前記下障子は、前記傾斜部を有するガイド溝から他方のガイド溝へ枠を乗り越えて移動する部材が設けられ、
前記上障子及び前記下障子の閉鎖の姿勢で、該上障子と該下障子とが略同一面内に並列して配置されることを特徴とする開口部装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は1つの実施形態にかかる開口部装置1を正面から見た図で、
図1(a)が室内側から見た図、
図1(b)は室外側から見た図である。
図2は
図1にII−IIで示した線に沿った断面図で、紙面右が室内側、紙面左が室外側である。
図3は
図1にIII−IIIで示した線に沿った断面図で、紙面上が室外側、紙面下が室内側である。
図4は
図3と同じ視点で、2枚の障子が開放された姿勢の断面図である。
図1〜
図4及び適宜示す図を参照しつつ開口部装置1について説明する。
【0016】
以下において、「見付方向」とは全体として平板状である開口部装置の該平板状の平面に沿った方向を意味し、開口部装置が建物に取り付けられた姿勢では、建物開口部の開口面に沿った方向を意味する。また、「見付方向内側」とは、見付方向のうち、開口部装置(障子の場合には障子)の中央方向を意味する。従って「見付方向外側」とは見付方向のうち、開口部から離れる方向を意味する。さらに、「見込み方向」とは全体として平板状である開口部装置(障子の場合には障子)の該平板状における厚さ方向を意味し、開口部装置が建物に取り付けられた姿勢では、建物の室内外方向を示す。
【0017】
開口部装置1は、固定枠体10、スイング枠20、上障子30、下障子50、及び隠蔽部材80を備えている。すなわち、開口部装置1には、固定枠体10の枠内に具備されたスイング式に開閉するスイング枠20が設けられ、該スイング枠20内にさらに上げ下げ可能な障子である上障子30及び下障子50が備えられている。
【0018】
固定枠体10は、枠材である固定縦枠11、12、固定上横枠13、及び固定下横枠14が枠状に組み合わされて形成される枠状体である。当該固定枠体10が建物の開口部の縁に沿って取り付けられることにより、開口部装置1が建物に固定される。固定枠体10は、通常の開口部装置に用いられる枠体と同様のものを用いることができる。
【0019】
ここで
図2からわかるように、固定上横枠13の吊元側端部にはスイング枠20に設けられたピボットヒンジのピボット軸6を受け入れる軸受7が具備されている。また、固定下横枠14の吊元側端部には、ピボットヒンジのピボット軸8が配置されている。当該ピボットヒンジを軸としてスイング枠20がスイング式に開閉可能に固定枠体10の枠内に配置される。
【0020】
スイング枠20は、枠体として機能し、一対の縦枠である吊元側縦枠21及び戸先側縦枠24、一対の横枠であるスイング上横枠27及びスイング下横枠28を備え、これらが枠状に組み合わせられて形成されている。スイング枠20は、固定枠体10にスイング式に開閉可能に取り付けられるとともに、上障子30及び下障子50を上げ下げ式に移動可能とするガイド溝も有している。
【0021】
吊元側縦枠21は、長尺の枠材であり、
図3に示した断面を有して形成されている。すなわち、吊元側縦枠21は、長手方向に直交する断面において、軸側枠部材22とガイドレール部材23とが見付方向に配置されて形成されている。
【0022】
軸側枠部材22は、略矩形中空に設けられ、
図3に破線円形で示した部位を軸としてスイング枠20が固定枠体10に対してスイング式に開閉可能とされている。また、軸側枠部材22の室内側で見付方向外側の角部は開閉の際の円滑をはかるために円弧状に形成されている。
【0023】
ガイドレール部材23は、長手方向に直交する断面において、見込み方向に延在する片23aを有し、該片23aの見込み方向両端からは見付方向内側に向けて片23b、23cがそれぞれ立設されている。そして片23bと片23cとの間には、見込み方向に2つのガイド溝23d、23eが配列される。すなわち、室外側のガイド溝23dと室内側のガイド溝23eである。ガイド溝23d、23eの長手方向の形態については、ガイド溝26d、26eの説明のときに述べる。
【0024】
戸先側縦枠24は、長尺の枠材であり、
図3に示した断面を有して形成されている。戸先側縦枠24は、長手方向に直交する断面において、戸先枠部材25とガイドレール部材26とが見付方向に配置されて形成されている。
【0025】
戸先枠部材25は、略矩形中空に設けられた部材である。当該戸先枠部材25には、取っ手15、15が設けられ(
図1も参照)、使用者はここをつかんで上障子30、下障子50を含むスイング枠20をスイング式に開閉させることができる。従って、戸先枠部材25の内部には不図示のラッチ機構や錠装置等が配置されている。
【0026】
ガイドレール部材26は、見込み方向に延在する片26aを有し、該片26aの見込み方向両端からは見付方向内側に向けて片26b、26cのそれぞれが立設されている。そして片26bと片26cとの間には、見込み方向に2つのガイド溝26d、26eが配列される。すなわち、室外側のガイド溝26dと室内側のガイド溝26eである。
【0027】
図5には、ガイドレール部材26の長手方向で、ガイド溝26d、26eの長手方向の形状が表れる図を示した。
図5では紙面左が室外側、紙面右が室内側である。ガイド溝26dは、
図5からわかるように、室外側に設けられ、ガイドレール部材26の長手方向に略平行に上下に設けられる溝である。
ガイド溝26eは、直線部26e’及び傾斜部26e’’を備えている。直線部26e’は、ガイド溝26dよりも見込み方向室内側に、該ガイド溝26dと略平行に形成された溝である。ガイド溝26の傾斜部26e’’は、ガイドレール部材26の下部に配置され、その上端は直線部26e’の下端に連続して設けられる。一方、その下端側は、ガイド溝26dの下端位置にまで延在する。すなわち、傾斜部26e’’は、ガイドレール部材26の長手方向に延在しつつも、下端に向かうに従って見込み方向外側に傾斜するように形成されている。これにより、後述するように、下障子50の下端部を上障子30と同一面内となる位置にまでガイドすることが可能となる。
【0028】
ガイドレール部材26に対向するように設けられた吊元側縦枠21のガイドレール部材23にも、同様のガイド溝23d、23eが具備されている。その態様は上記ガイド溝26d、26eと共通するので、ここでは説明を省略する。
【0029】
ガイドレール部材23、26には、その長手方向中央よりやや上にローラ70、70が備えられる(
図6参照、他方側のローラ70は死角となり見えないが、これは
図6で見えるローラ70と対向する位置に配置されている。)。
図3、
図5では見やすさのため、当該ローラ70、70は省略している。
【0030】
スイング上横枠27は、長尺の枠材であり、
図2に表れる断面を有して形成されている。スイング上横枠27は、長手方向に直交する断面において、矩形中空である中空部27aを有している。中空部27aの見込み方向両端側からは見付方向内側に向けて片27b、27cが延在している。片27bと片27cとの間に上障子30の上端が配置され、これにより閉鎖の姿勢となる。また、中空部27aの室内側面と固定上横枠13とを渡すように不図示のドアクローザが取り付けられ、開閉の際の利用者の利便が図られている。
【0031】
さらに、スイング上横枠27の吊元側端部には
図2に示したようにピボットヒンジのピボット軸6が配置され、固定上横枠13の軸受7と合わせられてスイングの軸となる。
【0032】
スイング下横枠28は、長尺の枠材であり、
図2に表れる断面を有して形成されている。スイング下横枠28は、長手方向に直交する断面において、矩形中空の中空部28aを有している。中空部28aの見込み方向両端側からは見付方向内側に向けて片28b、28cが延在している。片28bと片28cとの間に下障子50の下端が配置され、これにより閉鎖の姿勢となる。また、スイング下横枠28の吊元側端部には
図2に示したようにピボットヒンジの軸受9が配置され、固定下横枠14のピボット軸8と合わせられてスイングの軸となる。
【0033】
次に上障子30、及び下障子50について説明する。
図6には、上障子30及び下障子50に注目した室内側から見た模式的な斜視図を示した。
図6(a)が閉鎖の姿勢、
図6(b)が開放の姿勢の一例を表している。
【0034】
上障子30は、開放の姿勢では下障子50より室外側に配置され、閉鎖の姿勢では開口部装置1の上部に配置される障子である。上障子30は、
図1〜
図4、
図6に表れているように、縦框31、32、上横框33、下横框34を枠状に組み合わせた框体35と、框体35の枠状の内側に配置されるガラスパネル49とを備えている。また框体35の4隅には、上横框33、下横框34を長手方向に延長する方向に突出するガイド(36、36、38、38)が設けられている。ここで、上横框33を延長する方向に設けられたガイドは上部ガイド36、36であり、下横框34を延長する方向に設けられたガイドは下部ガイド38、38である。
【0035】
上部ガイド36、36、及び下部ガイド38、38は、これらガイドが上記吊元側縦枠21、戸先側縦枠24の室外側のガイド溝23d、26d(
図3、
図4参照)内を移動可能とされている。
【0036】
また、
図2〜
図4からわかるように、上障子30のガラスパネル49は、その端部が縦框31、32、上横框33、下横框34にグレージングチャンネルを介して差し込まれて固定されている。
【0037】
下障子50は、開放の姿勢では上障子30より室内側に配置され、閉鎖の姿勢では開口部装置1の下部に配置される障子である。下障子50は、
図1〜
図4及び
図6に表れているように、縦框51、52、上横框53、下横框54を枠状に組み合わせた框体55と、框体55の枠状の内側に配置されるガラスパネル69とを備えている。ここで上横框53には、
図2からわかるように室内側となる位置に把持部53aを具備している。当該把持部53aは、上方に向けて延在し、使用者がここを持って下障子50を操作することができる。その他、閉鎖の姿勢における上障子30との境目を室内視から隠蔽することが可能である。
【0038】
下障子50の上横框53には、該上横框53を延長する方向にラッチ56、56が設けられている。従って、所定の力を付加することにより、その突出量を変えることができる。これにより、後述するように、ガイド溝26dとガイド溝26e(ガイド溝23dとガイド溝23e)との間で、ガイド溝からガイド溝へと下障子50の上端部を円滑に移動させることが可能になる。そして、下障子50の上端部を上障子30と面一である位置と、室内側に突出させた位置と、に移動させることが可能となる。
【0039】
本実施形態では、ラッチ式とし、所定の力を負荷することにより自動に突出量を変えることができる態様とした。これにより使用者の便宜が図られている。ただし、これに限定されるものでなく、手動で突出量を変えられるように形成してもよい。これには、当該部分をスライドさせることにより突出量を大きくし、反対側にスライドさせることにより突出量を小さくする態様を挙げることができる。
【0040】
下横框54を延長する方向には、回動式下部ガイド58、58が設けられている。
図7には、
図6(a)、
図6(b)のうち、一方側の回動式下部ガイド58が配置された部位を拡大した図を示した(
図7(a)、
図7(b))。
図7からわかるように、回動式下部ガイド58は、略L字状である基材58aと、基材58aのL字状の1つの片に回動可能に設けられた回動板58bと、回動板58bの回動軸と同軸に突設された円柱状のガイド部材58cと、を備えている。また、回動板58bには、ガイド部材58cと同じ面側で、他端側となる部位に、ワイヤ係止突起58dが設けられている。
【0041】
このような回動式下部ガイド58は、
図6、
図7からわかるように、L字状である基材58aが、下横框54と縦框51とが形成する角部に配置されて固定されている。このとき、回動板58bが縦框51に沿うように、また、ガイド部材58c、及びワイヤ係止突起58dが見付方向外側に突出するように具備される。ここで、回動板58bは、
図6(b)、
図7(b)からわかるように、室内外方向を含む垂直平面内で回動可能とされている。従って、ガイド部材58cを中心に、該ガイド部材58cの周りをワイヤ係止突起58dが回動可能となっている。
【0042】
また、他方の回動式下部ガイド58も下横框54と縦框52とが形成する角部に設けられる。
【0043】
下障子50のガラスパネル69は、
図2〜
図4からわかるように、その端部が縦框51、52、上横框53、下横框54にグレージングチャンネルを介して差し込まれて固定されている。
【0044】
また、
図6からわかるように、上障子30と下障子50とはローラ70に掛けられたワイヤ73により連結されている。各部材の関係については後で詳しく説明する。
【0045】
図1〜
図4に戻り、隠蔽部材80について説明する。隠蔽部材80はスイング枠20の室外側から被せるように該スイング枠20に取り付けられる部材である。隠蔽部材80は、所定の間隔を有して上下方向に並列される横長矩形の隠蔽板81、81、…を具備している。これにより、室外視から室内を隠蔽し、防犯性や外観の向上を図ることが可能となる。また、隠蔽板81、81、…の室内側には網材(不図示)が張られ、害虫の侵入を防止している。
【0046】
以上のような各部材を有して開口部装置1として構成される。
図1〜
図7を参照しつつ、上障子30、及び下障子50が閉鎖した姿勢における各部材の配置について説明する。
【0047】
滑車を具備するローラ70、70が吊元側縦枠21、戸先側縦枠24の長手方向中央より若干上の部位のそれぞれに取り付けられる(
図6参照。ただし、
図6では一方のローラ70のみが見え、他方のローラ70は死角となって見えない。以下、
図6に表れている側のみについて説明するが、死角側も同様の構造である。)。そしてローラ70の滑車に、ワイヤ73が引っ掛けられ、その一端は、下障子50の回動式下部ガイド58のうち、ワイヤ係止突起58dに取り付けられる(
図7(a)参照)。一方、ワイヤ73の他端は、上障子30の下部ガイド38に固定される。これにより上障子30と下障子50とがワイヤ73により連結され、連動することが可能となる。
【0048】
このように連結された上障子30及び下障子50は、
図2に示したように、スイング枠20の内側に、上下に同一平面内となるように並列される。このとき、上障子30の上部ガイド36、36及び下部ガイド38、38は、スイング枠20のガイド溝23d、26d内に配置される。すなわち、上障子30は、ガイド溝23d、26dに沿って上下に移動することが可能とされている。
一方、下障子50は、
図2、
図5に示したように、下障子50のラッチ56、56は、スイング枠20のガイド溝23d、26d内に配置される。また、回動式下部ガイド58、58は、
図5からよくわかるように、そのガイド部材58c、58cがスイング枠20のガイド溝23e、26eの最下部、すなわち、傾斜部の最下部に配置される。一方、回動式下部ガイド58、58のワイヤ係止突起58d、58dは、スイング枠20のガイド溝23d、26d内に配置される。従って、
図5に示したように、上障子30及び下障子50の閉鎖の姿勢では、ガイド部材58c、58cとワイヤ係止突起58d、58dとは上下に並び、回動板58bが略垂直となる。
【0049】
そして上障子30、下障子50が配置されたスイング枠20がピボットヒンジにより固定枠体10の枠内にスイング式に回動可能に配置される。
【0050】
次に、上障子30及び下障子50が閉鎖した姿勢から、これらを開放する動作をしたときの各部の動きについて説明する。
図8、
図9に説明図を示した。
図8、
図9はそれぞれ垂直方向の断面図であり、
図8(a)、
図9(a)は上障子30、下障子50の姿勢を表し、
図8(b)、
図9(b)はラッチ及びカイド(38、56等)の姿勢や位置を示している。なお、ここでは一方のガイドレール部材26側についてのみ図示及び説明するが、これに対向して配置されているガイドレール部材23側も同様である。
【0051】
図2、
図5で示した上障子30及び下障子50の閉鎖の姿勢から、
図8に示したように下障子50の上横框53に設けられた把持部53aを持って室内側にひく。ここで、下障子50の上部にはラッチ56が配置されているので、
図8(b)のように、当該ラッチ56は、室外側のガイド溝26dから、室内側のガイド溝26eに移動することができる。これにより
図8(a)のように下障子50は、その上端が室内側に倒された姿勢となる。
【0052】
ここで、ラッチの代わりに手動式である部材を用いた場合も、当該部材を手動で突没させることにより同様に下障子50の上部を室内側に倒し、部材をガイド溝26eに配置させることができる。
【0053】
図8に示した姿勢から、下障子50を引き上げる。すると下障子50のラッチ56はガイド溝26e内を移動する。また下障子50の回動式下部ガイド58は、
図9に表れているように、該回動式下部ガイド58のうち、ガイド部材58cは、ガイド溝26e内を移動する。一方、回動式下部ガイド58のうち、ワイヤ係止突起58dはガイド溝26d内を移動する。従って回動式下部ガイド58の回動板58bは
図9(b)からわかるように水平に近い姿勢で上方に移動する。
一方、下障子50が上方に引き上げられたことで、ワイヤ73を介してバランスを保つように上障子30は自重により下方に移動する。これにより、
図9(a)のように、上障子30、及び下障子50が開放の姿勢となる。ここで、
図9(b)からわかるように、回動式下部ガイド58は、ワイヤ係止突起58dがワイヤ73を介して上障子30に引っ張られているので、このワイヤ係止突起58dはガイド部材58cより若干上方である姿勢を維持して上下に移動する。
【0054】
このように、開口部装置1によれば、ワイヤ73で連動して相対的に上下にすれ違うように移動する2枚の障子について、その閉鎖時には障子を同一平面内に配置することが可能となる。これにより、スイング枠20の厚さを薄く抑えることや、閉鎖時の外観の向上を図ることができる。また、上記からわかるように、障子を開放する動作も容易であり、そのための機構も簡易である。
【0055】
そして、スイング枠20の厚さを薄く抑えることができることにより、スイング枠20の室外側において室外側に突出する部材を小さくすることができるので、
図2にBで示した大きさを薄く抑えることも可能となった。
【0056】
さらに、回動式下部ガイド58は、ワイヤ73が万が一切れたときにおいて、上障子30及び下障子50が下まで急激に落下し、ここに何かを挟むといった「挟み」を防止する機能も有する。
図10に説明図を示した。
図10では、
図8(b)や
図9(b)と同様に、ガイドの位置により障子の位置がわかるように表わしている。
図10(a)に示したような上障子30及び下障子50の開放の姿勢において、ワイヤ73が何らかの理由により切れた場合を考える。
図10(a)の状態から
図10(b)に示したようにワイヤ73が切れると、回動式下部ガイド58はワイヤ73からの張力の影響を受けなくなる。すると、ワイヤ係止突起58dが下がり、ガイド部材58cよりも低い位置となる。従って回動板58bは室外側がやや下であるように傾いた姿勢となる(
図10(b)のA)。
【0057】
さらに、
図10(b)にAで示した回動式下部ガイド58の位置及び姿勢で、直線矢印で示したように下障子50が落下する。しかしながら、回動式下部ガイド58の上記姿勢により、該回動式下部ガイド58は、ガイド溝26eの直線部26e’と傾斜部26e’’との間で引っ掛かり、これより下方に移動することができない。従って下障子50はこれより下がらないので「挟み」を防止することができる。
【0058】
一方、上障子30についても、ガイド溝26dには回動式下部ガイド58のワイヤ係止突起58dが存在するので、これより下がることができない。従って、上障子30についても同様に「挟み」を防止することが可能である。
【0059】
このように、回動式下部ガイド58によれば、安全装置として新たな部材を設ける必要はない。ただし、より安全性を向上させる観点から他に安全装置を追加することを妨げるものではない。
【0060】
なお、このように上障子30及び下障子50が落下し、回動式下部ガイド58により「挟み」が防止されるのは、開口部装置に備えられている2つのワイヤ73のいずれもが何らかの理由で切れたときである。
その他、回動式下部ガイド58は、いずれか一方のワイヤ73が切れたときには、これを利用者に気付かせる手段として機能する。すなわち、ワイヤ73の一方が切れたときには、他方のワイヤ73により上障子30及び下障子50は落下することなくそのままの姿勢を維持することができる。しかしながらワイヤ73が切れた側の回動式下部ガイド158は
図10(b)にAで示したような姿勢となっている。
このような状態で利用者が下障子50を操作して閉鎖しようとすると、ワイヤ73が切れた側の回動式下部ガイド58は
図10(b)に示したようにガイド溝26eの直線部26e’と傾斜部26e’’との間で引っ掛かり、下方に移動することができない。これにより利用者は不具合を感知することができる。
【0061】
次に他の実施形態にかかる開口部装置について説明する。
図11には当該他の実施形態にかかる開口部装置のうち、
図7に相当する図を示した。すなわち
図11は、他の実施形態にかかる開口部装置のうち、回動式下部ガイド158を説明する図である。
図11(a)は回動式下部ガイド158の姿勢の1例、
図11(b)は他の例を表している。
【0062】
本実施形態では、回動式下部ガイド158の形態が開口部装置1と異なるのみであり、他の形態は開口部装置1と共通する。そこで、ここでは回動式下部ガイド158について説明し、他の部位は同じ符号を付すとともに説明は省略する。
【0063】
図11(a)、
図11(b)からわかるように、回動式下部ガイド158は、基材158a、ガイド部材158c、回動板158b、及びワイヤ係止突起158dを備えている。
【0064】
基材158aはL字状の部材であり、下横框54と縦框51とが形成する角部が基材158aのL字状に沿うように配置されて固定される。
ガイド部材158cは基材158のうち、縦框51に沿う片に設けられる柱状の部材で、下横框54を延長する方向の見付け方向外側に突出するように具備される。ここでガイド部材158cは、後述する回動板158bの長孔158eを貫通するように細く形成された部位(
図11(a)、
図11(b)では隠蔽されて見えない。)と、
図11(a)、
図11(b)に表れ、ガイド部材158cの先端側を太く形成する部位とを備えている。当該太く形成された先端は長孔158eを貫通することができない太さである。
回動板158bは、その一端側に長孔158eが設けられた板状の部材である。長孔158eには、ガイド部材158cの上記細く形成された部位が貫通するように通されるとともに、ガイド部材158cの太く形成された部位が回動板158bより見付方向外側に配置される。従って、回動板158bはガイド部材158cに対して回動可能とされる。さらに、ガイド部材158cの細く形成された部位が長孔158e内を相対的に移動することにより、回動板158bは長孔158eの長手方向にも移動することができる。
ワイヤ係止部材158dは、回動板158bの面に配置され、ガイド部材158cと同じ方向に突出するように設けられた柱状の部材である。従って、ワイヤ係止部材158dはガイド部材158cの周りを回動可能であるとともに、長孔158eの長さの範囲でガイド部材158cとの距離も変化させることができる。
【0065】
また、他方の回動式下部ガイド158も下横框54と縦框52とが形成する角部に設けられる。
【0066】
図12に回動式下部ガイド158の動きを説明するための図を示した。
図12は、
図5、
図8(b)、
図9(b)と同様の視点からの図である。また、
図12には回動式下部ガイド158の動きを分かり易くするため、移動の過程を複数の回動式下部ガイド158で表し、矢印で移動方向を示している。
図12からわかるように、このような回動式下部ガイド158も、回動式下部ガイド58と同様に、ガイド部材158cがガイド溝26e内を、ワイヤ係止部材158dがガイド溝26d内をそれぞれ移動可能に配置される。
このような通常の状態では、
図12からわかるように、ワイヤ係止突起158dがワイヤ73に引っ張られているので、ワイヤ係止突起158dとガイド部材158cとの距離は、長穴158eの範囲内で最も大きくなる。
【0067】
さらに、回動式下部ガイド158は、ワイヤ73が万が一切れたときにおいて、回動式下部ガイド58と同様に、上障子30及び下障子50が下まで急激に落下し、ここに何かを挟むといった「挟み」を防止する機能も有する。
図13に説明図を示した。
図13は
図10に相当する図である。
図13(a)に示したような上障子30及び下障子50の開放の姿勢において、ワイヤ73が何らかの理由により切れた場合を考える。
図13(a)の状態から
図13(b)に示したようにワイヤ73が切れると、回動式下部ガイド158はワイヤ73からの張力の影響を受けなくなる。すると、ワイヤ係止突起158dが下がり、その際に回動板158bが、長穴158eの作用により室内側に移動し、回動式下部ガイド158は
図13(b)にCで示した姿勢となる。すなわち、ワイヤ係止突起158dはガイド部材158cよりも低い位置となる。従って回動板158bは室外側がやや下であるように傾いた姿勢となる。また、長穴158eの作用により、ワイヤ73が切れる前後でガイド部材158cの長穴158e内における相対的な位置が変わり、ガイド部材158cとワイヤ係止突起158dとの距離が短くなる。
【0068】
さらに、
図13(b)にCで示した回動式下部ガイド158の位置及び姿勢で、直線矢印で示したように下障子50が落下する。しかしながら、回動式下部ガイド158の上記姿勢により、該回動式下部ガイド158は、ガイド溝26eの直線部26e’と傾斜部26e’’との間で引っ掛かり、これより下方に移動することができない。従って下障子50はこれより下がらないので「挟み」を防止することができる。
【0069】
一方、上障子30についても、ガイド溝26dには回動式下部ガイド158のワイヤ係止突起158dが存在するので、これより下がることができない。従って、上障子30についても同様に「挟み」を防止することが可能である。
【0070】
このように、回動式下部ガイド158によっても、安全装置として新たな部材を設ける必要はない。ただし、より安全性を向上させる観点から他に安全装置を追加することを妨げるものではない。
【0071】
なお、このように上障子30及び下障子50が落下し、回動式下部ガイド158により「挟み」が防止されるのは、開口部装置に備えられている2つのワイヤ73のいずれもが何らかの理由で切れたときである。
その他、回動式下部ガイド158は、いずれか一方のワイヤ73が切れたときには、これを利用者に気付かせる手段として機能する。すなわち、ワイヤ73の一方が切れたときには、他方のワイヤ73により上障子30及び下障子50は落下することなくそのままの姿勢を維持することができる。しかしながらワイヤ73が切れた側の回動式下部ガイド158は
図13(b)にCで示したような姿勢となっている。
このような状態で利用者が下障子50を操作して閉鎖しようとすると、ワイヤ73が切れた側の回動式下部ガイド158は
図13(b)に示したようにガイド溝26eの直線部26e’と傾斜部26e’’との間で引っ掛かり、下方に移動することができない。これにより利用者は不具合を感知することができる。
【0072】
ここで、回動式下部ガイドは、ガイド部材とワイヤ係止突起との距離を長くすることにより、障子の開閉がさらに円滑におこなえる。一方で、ガイド部材とワイヤ係止突起との距離が長くなるとワイヤが切れた際に、回動式下部ガイドが
図10(b)の姿勢を取り難くなる傾向にある。
これに対して回動式下部ガイド158によれば、ガイド部材158cとワイヤ係止突起158dとの距離が、長穴158eにより変化可能とされている。従って、通常時には
図12のようにガイド部材158cとワイヤ係止突起158dとの距離が大きく取られ、より円滑な障子の開閉がおこなわれる。一方、ワイヤ73が切れた際には、
図13(b)に示したように、ガイド部材158cとワイヤ係止突起158dとの距離が小さくなるので、より確実に上記した機構が作動し、「挟み」を防止することができる。
【0073】
以上説明した実施形態では、固定枠体の内側に配置されるスイング枠内の上げ下げ障子を備える開口部装置について説明したが、複数の障子が連動して上げ下げされるものであれば適用することができる。すなわち、固定枠体に直接上げ下げ障子が具備されるような上げ下げ窓であってもよい。
【0074】
以上、現時点において最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う開口部装置も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。