【実施例1】
【0016】
[本発明の構成]
<1>姿勢変更装置の概要
姿勢変更装置10は、搬送中に被搬送物40の姿勢を強制的に変更するための装置である。
姿勢変更装置10は、水平軸を中心に回転する一対の上部スクリュー20、20と、水平軸を中心に回転する1本の下部スクリュー30と、からなる。
2本の上部スクリュー20、20は、互いに略平行して進行方向へ伸びる。
下部スクリュー30は、2本の上部スクリュー20、20の中間位置であって、上部スクリュー20、20の下方に位置する。
2本の上部スクリュー20、20と下部スクリュー30は平行である。
2本の上部スクリュー20、20と下部スクリュー30との間には、これらの延伸方向に被搬送物40の搬送経路が形成される。
下部スクリュー30の前後部には公知のベルトコンベアが配置してある。
【0017】
<1.1>入口部、変更部、出口部
姿勢変更装置10を構成する上部スクリュー20、20及び下部スクリュー30は、被搬送物の搬送方向に沿って、順に入口部A、変更部B、出口部Cを形成している。各部の長さは、搬送装置10の用途に応じて適宜選択する。
入口部Aは、被搬送物40を変更部Bに搬送する区間である。
変更部Bは、入口部Aと出口部Cの中間に位置し、入口部Aから供給される被搬送物40の姿勢を強制的に変更する区間である。
出口部Cは、変更部Bで姿勢を変更した被搬送物40を搬送する区間である。
【0018】
<2>上部スクリュー
上部スクリュー20、20は、被搬送物40を対向するらせん溝21の間に挟持して搬送する部材である。
上部スクリュー20、20は、下部スクリュー30の上方に左右に1本ずつ、平行して設ける。(
図3、4)
上部スクリュー20、20は、円柱状の軸の周面に形成されたらせん状のらせん溝21を有する。隣り合うらせん溝21の間には突出したらせん状の羽根22を形成している。
上部スクリュー20、20は、下部スクリュー30による被搬送物40の姿勢の変更にあわせて、らせん溝21のピッチと角度を変化するように形成することができる。
上部スクリュー20、20として、例えば合成樹脂製のロッドに溝を形成したものを採用することができる。
上部スクリュー20、20は、らせん溝21の形成方向(左右)と回転方向が異なるだけであり、他の構成は共通である。
【0019】
<3>下部スクリュー
下部スクリュー30は、上部スクリュー20、20と協働して、被搬送物40の下部を保持しながら搬送して被搬送物40の姿勢を変更するためのスクリューである。
下部スクリュー30は、円柱状の軸の周面にその全長に亘って形成されたらせん状のらせん溝31を有する。隣り合うらせん溝31の間には突出したらせん状の羽根32を形成している。
下部スクリュー30として、例えば合成樹脂製のロッドに溝を形成したものを採用することができる。
下部スクリュー30は、本実施例においては、搬送経路の進行方向を基準として右ねじれのらせん溝31を設けたものを採用する。
そして、下部スクリュー30を左に回転させることで、らせん溝31に支持された被搬送物40は搬送経路を進行方向(
図1、2の矢印方向)に向かって搬送される。
尚、下部スクリュー30を、左ねじれのらせん溝31を設けたものとすることもできる。この場合、下部スクリュー30は、右に回転させる。
【0020】
<3.1>第1傾斜面、第2傾斜面
第1傾斜面31a、第2傾斜面31bは、変更部Bの区間において、下部スクリュー30の周面に形成される斜面である。
第1傾斜面31aは、らせん溝31の底面が進行方向前方に傾くことによって形成される。第1傾斜面31aは、被搬送物40の進行に合わせて徐々に立ち上がり、出口部Cにおいて、羽根32の進行方向側の側面となる。
第2傾斜面31bは、変更部Bにおいて第1傾斜面31aの進行方向側に隣り合う面である。
第2傾斜面31bは、羽根32の進行方向手前側の面が進行方向前方に傾くことによって形成される。第2傾斜面31bは、被搬送物40の進行に合わせて徐々に前方に傾き、出口部Cにおいて、らせん溝31の底面になる。
第1傾斜面31a、第2傾斜面31bは、第1傾斜面31aで被搬送物40の底面を支持し、第2傾斜面31bで被搬送物の下部前面を支持しながら、その形状と角度を変化させることによって、被搬送物40の姿勢を強制的に変更する。
【0021】
<4>被搬送物
本実施例では、被搬送物40が、下面より上面の面積が大きい円錐台形状の製品、例えば紙コップである場合について説明する。
被搬送物40の形状は、本例に限定されず、箱型や断面形状が部所ごとに異なる複雑な形状に適用することができる。被搬送物40の形状は問わない。
また、被搬送物40の素材や重量については、紙、金属、樹脂などであってもよく、またその重量の軽重も問わない。
【0022】
[姿勢変更方法]
本発明の姿勢変更装置による姿勢の変更について、
図5を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
本実施例において被搬送物の姿勢の変更とは、水平方向に伸びる生産ラインにおいて、正立状態にある被搬送物を90°倒して横転状態にすることを意味するが、らせん溝の変更方向を反対にすることで、横転状態の被搬送物を正立状態に立ち上げることもできる。
【0024】
<1>被搬送物の変更部への導入
2本の上部スクリュー20、20および下部スクリュー30が所定の方向へ向けて回転する前提において、入口部Aの左方より供給された被搬送物40は正立状態のまま、らせん溝21とらせん溝31に案内されて変更部Bへ向けて搬送される。(40a)
入口部Aにおいて、らせん溝31の底面は、下部スクリュー30の中心軸と略平行な円周面である。
【0025】
<2>被搬送物の姿勢の変更
本実施例では以下の工程で、正立状態から横転状態へと被搬送物40の姿勢を強制的に変更することができる。
被搬送物40が変更部Bに入ると、被搬送物40の下方のらせん溝31の表面が進行に合わせて徐々に前方に傾いて第1傾斜面31aとなり、あわせて被搬送物40の進行方向側の羽根32の進行方向手前側の側面が前方に傾いて第2傾斜面31bとなる。
被搬送物40の進行に伴って、第1傾斜面31aが徐々に立ち上がり、第2傾斜面31bが徐々に前方に倒れる。(40b)
より詳細に説明すると、被搬送物40の進行に伴い、第1傾斜面31aの進行方向手前側の辺が中心軸から径方向に広がる。よって、第1傾斜面31aの下部スクリュー30の中心軸に対する角度が鉛直方向に向かって大きくなる。
つまり、第1傾斜面31aは、傾斜角を次第に垂直に近く立ち上げて形成した傾斜面の表面のように角度が変化する。
一方、第2傾斜面31bは、被搬送物40の進行に伴い、進行方向側、つまり上端側が下部スクリュー30の中心軸に向かって沈む。よって第2傾斜面31bの下部スクリュー30の中心軸に対する角度は鉛直方向から徐々に小さくなる。
これらの動作が同時に行われるため、らせん溝31は、下部スクリュー30の回転に伴って溝の後方が隆起し、前方が沈下するように変形する。(40c)
このため、被搬送物40の底面は隆起した第1傾斜面31aの後端によって後方から持ち上げられ、底面の前方は第1傾斜面31aの前端とともに沈下する。
また、変更部Bにおいて、下部スクリュー30のらせん溝31のピッチが、上部スクリュー20、20のらせん溝21のピッチに対して小さくなる。これによって、下部スクリュー30の進行が遅れて、上部スクリュー20、20による進行が先行する。
この時、第2傾斜面31bが被搬送物40の下部前面を支持するため、被搬送物40は進行につれて徐々に前傾し、横転状態になる。
【0026】
<3>被搬送物の出口部への搬出
前傾が完了して横転状態になった被搬送物40は、上部スクリュー20、20と下部スクリュー30の回転によって出口部Cへと搬送される。(40d)
【0027】
<4>姿勢変更装置の特徴
本願の姿勢変更装置10は、下部スクリュー30に、被搬送物40の側面および底面を支えるように形状が変更するらせん溝31が形成されており、らせん溝31によって被搬送物40の姿勢を変更する。
このため、被搬送物40の姿勢を高速かつ安定した状態で変更することができる。
また、本願の姿勢変更装置10は、変更部Bにおいて、被搬送物40の下部を第1傾斜面31aと第2傾斜面31bによって「点」または「線」で支持する。
この点で、被搬送物40の下部をベルトコンベアや傾斜面等の「面」で支持する従来技術と異なり、搬送、姿勢変更作業において生じる、被搬送物40の下部に生じる摩擦抵抗がきわめて小さい。
そのため、被搬送物40が姿勢変更時に意図しない方向に倒れたり、巻き込む現象が生じにくい。
【0028】
[変形例1]
前述した上部スクリュー20、20はそのらせん溝21の変更部Bの区間に亘って、拡径段差部23を設けてもよい。(
図1、2)
【0029】
<1>拡径段差部
拡径段差部23は、被搬送物40の上部を支持し、姿勢の変更を誘導する部材である。
拡径段差部23は、上部スクリュー20、20のらせん溝21に、周方向に伸びる帯状体であり、らせん溝21底面の進行方向手前側に、羽根22の進行方向側の側面に連続するように形成する。
本変形例においては、拡径段差部23を2段構造とするが、1段または3段以上とすることもできる。複数段にする場合には、被搬送物40の形状に合わせて、らせん溝21の底面から手前側の羽根22に向かって、徐々に拡径するように形成する。
拡径段差部23の径は、らせん溝21の底面の径より大きく、羽根22の径よりも小さい。また、左右の上部スクリュー20、20の拡径段差部23の間隔は、被搬送物40の上端の幅より狭く、下端の幅より広い。
拡径段差部23は、上部スクリュー20、20の変更部Bにおいて形成され、羽根22の進行方向側の側面を始点として、上部スクリュー20、20の進行に伴って徐々に進行方向側へ幅を広げる。
本実施例において、拡径段差部23は、側面を有する帯状体であるが、滑らかな隆起部としてもよい。
【0030】
<2>拡径段差部の機能
拡径段差部23は、被搬送物40が変更部Bに搬送され、下部スクリュー30のらせん溝31によって姿勢を変更させるのに合わせて、羽根22の進行方向側の側面から進行方向へ徐々に張り出す。
ここで、左右の拡径段差部23の間隔は被搬送物40の上端の幅より狭いため、拡径段差部23は、被搬送物40の上部の側面に点または線で接触する。そのため、姿勢を変更する際、被搬送物40が水平方向に振れるのを防ぐことができ、姿勢の変更を潤滑に案内することができる。
そして、拡径段差部23は、下部スクリュー30のらせん溝31の形状の変更と協働して、被搬送物40の上端を進行方向側へ導き、被搬送物40を前傾させる。
拡径段差部23を複数段設けた場合には、径の異なるそれぞれの段が被搬送物40上部の各部分と点または線で接触するため、より潤滑に姿勢を変更させることができる。
また、本変形例の拡径段差部23は、従来の姿勢変更装置のように、被搬送物を背後から羽根の側面を使って押し出すのではなく、側面後方から点または線で接触しながら姿勢の変更を案内するため、上部スクリュー20、20と被搬送物40との間に余分な摩擦抵抗が生じず、被搬送物40の巻き込みや破損を生じにくい。
【実施例2】
【0031】
次に、方形の被搬送物40に対応した実施例2にかかる被搬送物の姿勢変更装置10について説明する。
第1実施例の姿勢変更装置10と同様の構成要素や作用については、その詳細な説明を省略する。
【0032】
[本実施例の構成]
本実施例において、被搬送物の姿勢変更装置10は、水平軸を中心に回転する一対の上部スクリュー20、20と、水平軸を中心に回転する一対の下部スクリュー30、30と、からなる。(
図8)
下部スクリュー30を2本設けることにより、箱型の製品など、方形の被搬送物40を安定した状態で搬送し、姿勢を変更させることができる。
下部スクリュー30、30は、らせん溝31の形成方向(左右)と回転方向が異なるだけであり、他の構成は共通である。
下部スクリュー30、30には、第1実施例と同じくらせん溝31に第1傾斜面31a、31aと第2傾斜面31b、31bとを設けるが、それぞれの形状と角度は対称に形成する。
【0033】
[本実施例の作用]
<1>被搬送物の変更部への導入
2本の上部スクリュー20、20および2本の下部スクリュー30、30を所定の方向へ向けて回転させる。
本実施例では、下部スクリュー30を2本設けるため、方形の被搬送物40の平坦な下面を安定して搬送することができる。
下部をらせん溝31、31に支持された被搬送物40は搬送経路を進行方向(
図6、7の矢印方向)に向かって進み、正立状態のまま、入口部Aから変更部Bへと搬送される。
【0034】
<2>姿勢の変更
被搬送物40が変更部Bに入ると、下部スクリュー30、30は、第1傾斜面31a、31aと第2傾斜面31b、31bとによって被搬送物40の下部を支持し、らせん溝31の変化に伴って、被搬送物40の底面を後方からから持ち上げる。
本実施例では、第1傾斜面31a、31aと第2傾斜面31b、31bとが、被搬送物40の進行に伴って、同じタイミングで同じ形状に変化するため、下面が平坦な被搬送物40の姿勢をより安定して変更することができる。