特許第5719443号(P5719443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719443
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】組換え巨大分子製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20150430BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20150430BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20150430BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20150430BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20150430BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20150430BHJP
【FI】
   C12P21/02 C
   !C12N15/00 A
   !C12N1/19
   !C12N1/21
   !C12N5/00 102
   !C12Q1/02
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-530345(P2013-530345)
(86)(22)【出願日】2011年9月23日
(65)【公表番号】特表2013-540438(P2013-540438A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011052911
(87)【国際公開番号】WO2012040550
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2013年3月22日
(31)【優先権主張番号】61/386,513
(32)【優先日】2010年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513050073
【氏名又は名称】ダ・ユー・エンタープライジズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オキーフ,ドナルド
【審査官】 名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0280781(US,A1)
【文献】 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86(1),p.343-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
Thomson Innovation
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i.宿主細胞中での膜透過処理剤の発現を制御する第一の制御配列の機能的制御下の該剤をコードする第一の核酸配列;および
ii.誘導可能なプロモーターを含む第二の制御配列の機能的制御下の巨大分子をコードする第二の核酸配列であって、該制御配列が宿主細胞中での該巨大分子の発現を制御する、該核酸配列
を含んでなる宿主細胞を、該巨大分子の所望の産生レベルを満たすのに十分な選択された細胞密度まで培養する工程;
b)細胞膜の完全な溶解を伴わずに細胞膜の完全性を破壊するように該剤を誘導する環境条件にa)の宿主細胞を曝露して、それにより小分子量化合物の該膜を通る輸送を可能にするが、高エネルギー膜機能を相殺する工程;ならびに
c)破壊された細胞膜を通り輸送し得る成分を含栄養素カクテルおよび化学エネルギー源をb)の細胞に提供する工程であって、該成分が、第二の制御配列のプロモーターを誘導する誘導剤および膜が破壊された宿主細胞中での該巨大分子の発現を可能にする代謝要件を含む、工程を含んでなり、かつ、
該巨大分子が宿主細胞中で発現される、ことを特徴とする宿主細胞中での巨大分子の組換え発現方法。
【請求項2】
a)膜の完全な溶解を伴わずに細胞膜の完全性を破壊し膜透過処理剤と宿主細胞を接触させ、それにより小分子量化合物の該膜を通る輸送を可能にするが、高エネルギー膜機能を相殺する工程であって、該宿主細胞が誘導可能なプロモーターを含制御配列の機能的制御下に巨大分子をコードする核酸配列を含有し、該制御配列が該宿主細胞中での該巨大分子の発現を制御する、工程;
b)破壊された細胞膜を通って輸送し得る成分を含栄養素カクテルおよび化学エネルギー源をa)の細胞に提供する工程であって、該成分が膜を破壊された宿主細胞中での該巨大分子の高められた発現を可能にする代謝要件を含む、工程;
を含んでなる、宿主細胞中での巨大分子の組換え発現を高める方法。
【請求項3】
宿主細胞が、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞および昆虫細胞よりなる群から選択される、請求項1若しくは2に記載の方法。
【請求項4】
膜透過処理剤が、
(a)細菌タンパク質毒素、そのフラグメントおよびそのバリアント、
(b)植物タンパク質毒素、そのフラグメントおよびそのバリアント、
(c)チャンネルタンパク質、
(d)受動輸送タンパク質、酵素、ギャップ結合タンパク質、核孔複合体、膜孔形成タンパク質、ホリン、コリシン、プロテグリン、補体および補体関連タンパク質、膜融合ウイルスタンパク質、それらのフラグメントならびにそれらのバリアント、
(e)界面活性剤、イオノフォア、若しくは浸透圧ストレスを誘導する剤、ならびに
(f)ジフテリア毒素、炭疽菌保護抗原、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、コレラ毒素、黄色ブドウ球菌(S.aureus)α毒素、β−バレル膜孔形成毒素、大腸菌(E.coli)溶血素、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)ι毒素、リステリオリシンOおよび細胞溶解素から選択される(a)の細菌タンパク質毒素、
よりなる群から選択される、請求項1若しくは2に記載の方法。
【請求項5】
巨大分子がタンパク質、DNA若しくはRNAである、請求項1若しくは2に記載の方法。
【請求項6】
核酸配列、第一の核酸配列若しくは第二の核酸配列が、プラスミド、バクテリオファージ若しくはウイルスである輸送ベクター中に独立して存在する、請求項1若しくは2に記載の方法。
【請求項7】
第一の制御配列が構成的プロモーター若しくは誘導可能なプロモーターを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第二の制御配列が第一の制御配列のものと異なるプロモーターを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第二の制御配列の誘導可能なプロモーターがきっちり合うように調節されるプロモーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
程b)の環境条件が、pHを変えること、塩濃度を変えること、浸透圧を変えること、温度を変えること、宿主細胞を光に曝露すること、および宿主細胞を作用剤、生体分子、化学物質若しくはリガンドに曝露することの最低1種を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
環境条件が、pHを変えることがpHを約4ないし6.5に低下させること、または作用剤、生体分子、ならびに、還元剤、酸化剤、酸、塩基、塩、カオトロープ、界面活性剤、および第一の制御配列の誘導可能なプロモーターを誘導する作用剤から選択される化学物質若しくはリガンドを含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
栄養素カクテルが、巨大分子の発現を制御するプロモーターを誘導するための誘導剤、アデノシン三リン酸(ATP)、アミノ酸、リボヌクレオチド、補助因子、デオキシリボヌクレオチド、非天然のアミノ酸、安定化剤、浸透圧調節物質、酸化還元を変える剤、および巨大分子を産生するのに必要な環境因子よりなる群から選択される1種若しくはそれ以上の成分を含んでなる、請求項1若しくは2に記載の方法。
【請求項13】
発現された巨大分子を宿主細胞から回収することをさらに含んでなる、請求項1若しくは2に記載の方法。
【請求項14】
d)各ウェルの宿主細胞を試験試薬で処理する工程;および
e)試験試薬に応答した巨大分子の本質を決定する工程
を、さらに含んでなり、かつ、
宿主細胞がプレートの多ウェル中で培養され、各ウェルの宿主細胞中の第二の核酸配列が異なる巨大分子をコードしており、イン シトウ(in situ)薬物スクリーニングのために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
d)各ウェルの宿主細胞を異なる試験試薬で処理する工程;および
e)巨大分子での応答を誘導した試験試薬の本質を決定する工程、
を、さらに含んでなり、かつ、宿主細胞がプレートの多ウェル中で培養され、イン シトウ(in situ)薬物スクリーニングのために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
試験試薬で細胞を処理する前に細胞を溶解する工程を、さらに含んでなる、請求項14若しくは15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
組換え巨大分子は製薬学および生物工学研究にとってかなり興味深く、そして核酸(リボおよびデオキシリボ核酸)ならびにタンパク質双方を包含する。これらのうち、組換えタンパク質はそれらの多様性および多数の用途のため最も大きな注目を集めている。製薬学および生物工学研究のある局面は組換え巨大分子の製造に依存する。こうした組換え巨大分子は、限定されるものでないが、細菌細胞(例えば大腸菌(Escherichia
coli))、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を挙げることができる多様な宿主細胞中で製造される。多くの例において、組換え巨大分子は異種宿主細胞、すなわち該巨大分子の天然の供給源と異なる宿主細胞中で製造される。例えば、ヒト脳下垂体からの分泌タンパク質である生物工学薬物ヒト成長ホルモンは細菌、大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)で組換え製造される。こうした異種宿主細胞系は所望の組換え巨大分子を常に成功裏に産生するわけではない。多くの場合、所望のタンパク質は異種宿主細胞中で誤って折り畳まれる可能性がある(すなわち、それはその天然の構造を有さず、従って非機能性である)か、または、不溶性であるか、毒性であるか、凝集されているか若しくは分解されている形態で発現され得る。しばしば、組換え巨大分子は異種宿主細胞中で不十分な量で単に産生される。改変組換えタンパク質若しくは組換え融合タンパク質は、それらの非天然の組成により同種宿主細胞系であっても生産の難題を提起することもある。
【0002】
組換え巨大分子製造の上で述べられた難題に取り組むための普遍的一アプローチは代替宿主細胞系の使用である。しかしながら、誤って折り畳まれたタンパク質のようなある種の巨大分子製造の問題点は宿主細胞系での産生後に対処され、それは労働集約的であり得、ならびに全部のタンパク質に効果的であるわけではない。加えて、これらの問題に対処することは一般にタンパク質特異的な方法であり、低いスループットをもたらす。ある種の巨大分子製造の問題への別の対処方法は無細胞タンパク質発現系の使用を必要とする。これらの系の実際的な一限界はそれらがスケーラブルでないことである。無細胞発現系のタンパク質製造限界は一般に50ミリグラム若しくは未満であり、そしてしばしば、製造限界はたった数ミリグラムである。加えて、細胞抽出液および溶細胞液の保存はタンパク質を製造するそれらの能力の減少につながる。これらの系はまた有意量の核酸を製造する意味のある能力も有さず、従って必須のDNA鋳型の供給を提供するための第二の系を必要とする。
【発明の概要】
【0003】
一局面において、宿主細胞中での巨大分子の組換え発現方法が提供される。本方法は、膜透過処理剤をコードする核酸配列および所望の巨大分子をコードする核酸配列(双方の配列は別個の制御配列の制御下)を含有する宿主細胞を、適する細胞密度が達せられるまで培養することを含んでなる。この工程の間に膜透過処理剤が細胞内で産生される。一局面において、該方法は、細胞膜の完全な溶解を伴わずに細胞膜の完全性を破壊するように膜透過処理剤を誘導する環境条件に該宿主細胞を曝露することを必要とする。その後、該細胞に、破壊された細胞膜を通って輸送し得る小分子量成分を含有する栄養素カクテルを提供する。これらの成分は、該巨大分子の発現を制御するプロモーターを誘導する誘導剤、および膜が破壊された宿主細胞中での該巨大分子の発現を可能にする十分な代謝要件を包含し得る。本方法は、該巨大分子が宿主細胞内で正しいコンホメーションでかつ/若しくは所望の量で発現されることを可能にする。ある態様において、該細胞をいずれかの誘導環境条件および栄養素カクテルと接触する前に濃縮する。他の態様において、該細胞を、栄養素カクテルとの接触および該巨大分子の発現の誘導後に溶解し、そして該巨大分子を収集する。
【0004】
別の局面において、宿主細胞中での巨大分子の組換え発現を高める方法が提供される。本方法は、厳しく調節されるプロモーターの制御下に巨大分子をコードする核酸配列を含有する宿主細胞(その細胞は適する細胞密度に達している)を膜透過処理剤と接触させることを必要とする。該剤は細胞培養物に外的に適用され、そして細胞膜の完全な溶解を伴わずに該膜の完全性を破壊する。その後、該細胞に、破壊された細胞膜を通って輸送し得る小分子量成分を含有する栄養素カクテルを提供する。これらの成分は該巨大分子の発現を制御するプロモーターを誘導する誘導剤、および膜が破壊された宿主細胞中での該巨大分子の発現を可能にする十分な代謝要件を包含し得る。本方法は、該巨大分子が該宿主細胞内で正しいコンホメーションでかつ/若しくは所望の量で発現されることを可能にする。ある態様において、細胞を膜透過処理剤および栄養素カクテルとの接触前に濃縮する。他の態様において、該細胞は、栄養素カクテルとの接触および該巨大分子の発現の誘導後に溶解しかつ該巨大分子を収集する。
【0005】
なお別の局面において、in situ薬物スクリーニング方法は、上述されたところの所望の巨大分子の組換え発現の1種若しくは他の方法の使用を必要とする。一局面において、該方法は、上述されたところの双方の核酸配列を含有する宿主細胞をミニウェルプレートの各ウェル中で培養することを必要とする。一態様において、各ウェルは同一巨大分子をコードする核酸配列を含有する。別の態様において、各ウェルは異なる類似の巨大分子をコードする核酸配列、例えばバリアント巨大分子のライブラリーの1メンバーを含有する。別の態様において、各ウェルは異なる巨大分子をコードする核酸配列、例えばゲノムライブラリーを含有する。各ウェル中のこれらの宿主細胞をその後、上で示されたところの細胞膜の完全な溶解を伴わずに該膜の完全性を破壊するように細胞中での膜透過処理剤の発現を誘導するのに適する環境条件に曝露する。各ウェル中で、宿主細胞を上述された栄養素カクテルの存在下で培養して、各ウェルの宿主細胞中での該巨大分子の発現をもたらす。各ウェルが同一の発現される巨大分子を含有する一態様において、異なる試験試薬を各ウェルに適用する。各ウェルが異なる巨大分子バリアント若しくは異なる巨大分子を発現する別の態様において、同一の試験試薬を各ウェルに適用する。慣習的アッセイ、例えばELISA、質量分析などのその後の使用が、一態様において単一試験試薬に応答した巨大分子の本質、若しくは他の局面において同一巨大分子での応答を誘導した試験試薬の本質の決定を可能にする。
【0006】
なお別の局面において、in situ薬物スクリーニングは、上述された外的に適用される膜透過処理剤/巨大分子製造方法の使用を必要とする。本局面において、該スクリーニングは、場合によっては他の環境条件とともに外的に適用される膜透過処理剤に各ウェル中の細胞を曝露することをさらに必要とする。その後、試験試薬(1種若しくは複数)を該ウェルに適用しかつ本明細書に挙げられると同一の様式でアッセイする。
【0007】
これらの方法の他の局面および利点は、その好ましい態様の以下の詳細な記述でさらに記述される。
【0008】
[発明の詳細な記述]
本発明は、不適切な構造、毒性、不溶性、新規構成要素若しくは不十分な量により宿主細胞系で製造することがそうでなければ困難でありうる組換え巨大分子の製造方法である。以下で詳細に記述される該方法は、所望の組換え巨大分子を製造することが可能な宿主細胞を膜透過処理剤で処理して宿主細胞の膜の完全性を破壊すること、次いで所望の組換え巨大分子の製造に十分な条件に該宿主細胞を曝露することを必要とする。
【0009】
I.巨大分子の組換え製造方法
本明細書に記述される方法により、選択された巨大分子が発現される宿主細胞の細胞膜
を、該巨大分子が大量にかつ正しいコンホメーションで発現されることを可能にするように計画的に操作する。
【0010】
細胞の膜の完全性は、その透過性障壁(細胞の内部への分子の輸送を制御する)、その分画化機能(細胞が外的環境と異なる内的環境を維持することを可能にする)、およびエネルギー産生のためのその能力(細胞にその代謝活動のためのエネルギー源を提供する)を維持するために必要である。これらの機能の全ては、細胞が巨大分子産生を包含するその代謝活動を維持するために必要である。細胞の膜の完全性が十分に損なわれるとすれば、巨大分子産生は停止するとみられる。
【0011】
細胞膜の透過性障壁は、ある種の分子が、2種の基礎的機構すなわち能動および受動輸送により細胞内部に入ることを可能にする。能動輸送は、細胞内部への特定の分子の進入を助長するための選択的輸送複合体の助けを借りて濃度勾配に抗して(低から高濃度)分子を輸送することが可能な、エネルギーを必要とする過程である。こうした輸送複合体は特異的かつ飽和性であり、そして従って細胞膜を横切って多様な分子を送達するそれらの能力が制限される。他方、受動輸送はエネルギー源を必要とせず、そして一般に濃度勾配の下方に(高から低濃度)分子を輸送するようにのみはたらく。受動輸送は、しばしば2種の基礎的機構すなわち単純拡散と促進拡散の一方により細胞膜を横切って水以外の分子を運搬する。単純拡散において分子は高濃度の領域から低濃度の領域へのランダム運動により動く。
【0012】
しかしながら、細胞膜の存在を伴い、全部の分子が等しく膜を横切って拡散するわけではない。細胞膜を横切る単純拡散の制限的基準は分子の大きさ、電荷若しくは可溶性を包含し得る。他方、促進拡散は、細胞膜を横切って濃度勾配の下方に分子を移動するために選択的複合体を利用する。
【0013】
現存する輸送機構の多様性にもかかわらず、細胞の膜の選択的透過性により、全部の分子が細胞の内部への等しい到達手段を有するわけではない。本方法により、細胞の膜の選択性を低下させることは、挿入された巨大分子の発現系の発現を高めるという目的上、より多様な分子が細胞の膜を横切って細胞内部に拡散することを可能にする。
【0014】
細胞膜は、細胞が外的環境と異なる内的環境を維持することもまた可能にする。これら2種の環境を分離することは、タンパク質合成、核酸合成およびエネルギー生成を包含するその多くの代謝反応に伝導性の最適な細胞内環境を細胞が創成することを可能にする。細胞外環境に対する細胞内環境の特定の差異は、pH、塩濃度、モル浸透圧濃度、溶質濃度および酸化還元電位を包含する。本明細書に詳細に記述される本方法により、細胞の膜の完全性を破壊することは細胞の内的および外的環境の間の平衡を可能にする。
【0015】
最後に、細胞膜は、膜を横切るpHの差異および膜電位(膜を横切る電荷の差異)の双方を維持することにより細胞にポテンシャルエネルギー源を提供し得る。電荷の差異がプロトンの分離による場合、該ポテンシャルエネルギーはプロトン駆動力と称される。ある種の細胞中で、プロトン駆動力は、細胞の極めて重要な化学エネルギー源であるATPの産生に間接的に寄与し得る。本方法は、膜を透過処理することにより膜電位を喪失させ、それにより、高エネルギー膜機能を相殺する。宿主細胞の代謝活動はそれにより、栄養素カクテル中で提供される代替エネルギー源により外的に提供される。
【0016】
本方法は選択された巨大分子の産生を高めるように細胞膜透過性を操作する。本発明の一態様は宿主細胞中での巨大分子の組換え発現方法を提供する。該方法は、巨大分子の所望の産生レベルを満たすのに十分な細胞密度まで培養することを含んでなり、宿主細胞は、該宿主細胞中での膜透過処理剤の発現を制御する第一の制御配列の機能的制御下の該剤
をコードする第一の核酸配列;およびきっちり合うように調節されるプロモーターを含んでなる第二の制御配列の機能的制御下の該巨大分子をコードする第二の核酸配列を含有し、該第二の制御配列は宿主細胞中での該巨大分子の発現を制御する。
【0017】
本態様において、該方法は、細胞膜の完全な溶解を伴わずに細胞膜の完全性を破壊するように膜透過処理剤を誘導する環境条件に宿主細胞を曝露し、それにより、小分子量化合物の該膜を通る輸送を可能にする。本態様において、該方法は、破壊された細胞膜を通って輸送し得る成分を含んでなる栄養素カクテルの存在下で宿主細胞を培養することを包含し、該成分は、第二の制御配列のプロモーターを誘導する誘導剤および膜が破壊された宿主細胞中での該巨大分子の発現を可能にする代謝要件を含んでなる。
【0018】
本発明の別の局面は、宿主細胞中での巨大分子の組換え発現を高める方法を提供する。該方法は、細胞膜の完全な溶解を伴わずに該膜の完全性を破壊しかつ小分子量化合物の該膜を通る輸送を可能にする膜透過処理剤と適する細胞密度の宿主細胞を接触させることを含んでなり、該宿主細胞は、きっちり合うように調節されるプロモーターを含んでなる制御配列の機能的制御下に巨大分子をコードする核酸配列を含有し、該制御配列は宿主細胞中の該巨大分子の発現を制御する。
【0019】
該方法はさらに、破壊された細胞膜を通って輸送し得る成分を含んでなる栄養素カクテルの存在下で宿主細胞を培養することを含んでなり、該成分は、膜を破壊された宿主細胞中での該巨大分子の高められた発現を可能にする代謝要件を含んでなる。
【0020】
II.巨大分子製造方法の成分
本明細で別の方法で定義されない限り、本明細書で使用される技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によりおよび公表された本文への参照により普遍的に理解されると同一の意味するところを有する。本明細若しくは請求の範囲の多様な態様が多様な環境下で「含んでなる」言語を使用して提示される一方、関連する一態様は「よりなる」若しくは「より本質的になる」言語を使用してもまた記述されうる。「ある(a若しくはan)」という用語が1つ若しくはそれ以上を指し、例えば「ある化合物(a compound)」は1種若しくはそれ以上の化合物を表すことが理解されることに注目されるべきである。であるから、「ある(a)」(若しくは「ある(an)」)、「1つ若しくはそれ以上」および「最低1つ」という用語は本明細書で互換性に使用される。
【0021】
A.宿主細胞
「宿主細胞」という用語により、組換えベクターの受容体として使用され得る若しくは使用された原核微生物若しくは単細胞の実体としての培養された真核生物細胞株由来の細胞を意味している。該用語はトランスフェクトされた元の細胞の子孫を包含する。単一親細胞の子孫は、偶発的若しくは計画的突然変異により、必ずしも形態が完全に同一またはゲノム若しくは全DNAが元の親に相補的でないかもしれないことが理解される。所望の生合成酵素をコードするヌクレオチド配列の存在のような関連する特性により特徴付けられるために親に十分に類似である親細胞の派生物/子孫は、該定義に包含されかつ上の用語により包括される。適切な宿主細胞は当業者により容易に選択されうる。本方法で有用な宿主細胞は細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞および昆虫細胞を包含する。
【0022】
本方法で有用な適する宿主細胞若しくは細胞株は細菌細胞を包含する。例えば、大腸菌(E.coli)の多様な株(例えばHB101、MC1061、MM294、W3110、BL21および以下の実施例で使用される株)は生物工学の分野で宿主細胞として公知である。枯草菌(B.subtilis)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)および他の桿菌などの多様な株もまた本方法で使用する。ヒト293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)
、サル細胞株COS−1およびVero、骨髄腫細胞株NSO、またはSwiss、Balb−c若しくはNIHマウス由来のマウス3T3細胞のような哺乳動物細胞を使用する。別の適する哺乳動物細胞株はCV−1細胞株である。なお他の適する哺乳動物宿主細胞ならびにトランスフェクション、培養、増幅、スクリーニング、製造および精製方法は当該技術分野で既知である。(例えばGethingとSambrook、1981 Nature、293:620−625、若しくは、あるいは、Kaufmanら、1985
Mol.Cell.Biol.、5(7):1750−1759、若しくはHowleyら、米国特許第4,419,446号明細書を参照されたい)。当業者に既知の酵母細胞の多くの株もまた本発明のポリペプチドの発現のための宿主細胞として利用可能である。他の真菌細胞もまた発現系として使用する。あるいは、ヨトウガ(Spodoptera frugipedera)(Sf9)細胞のような昆虫細胞を使用しうる。
【0023】
B.膜透過処理剤(「剤」)
細胞膜の透過性に影響を及ぼしかつ適切な条件下で細胞膜を完全に溶解することなく細胞の膜の完全性を破壊し得る多数の分子実体若しくは環境条件が既知である。本発明で有用な膜透過処理剤の一覧は、細胞膜と相互作用することが既知の細菌のタンパク質毒素およびそれらのバリアント(例えばジフテリア毒素、炭疽菌保護抗原、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、コレラ毒素、黄色ブドウ球菌(S.aureus)α毒素、β−バレル膜孔形成毒素、大腸菌(E.coli)溶血素、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)ι毒素、リステリオリシンO、細胞溶解素);細胞膜と相互作用することが既知の植物タンパク質毒素およびそれらのバリアント(例えばリシン、アブリン、モデシン);チャンネルタンパク質(例えばイオンチャンネル、電位制御チャンネル、化学制御チャンネル、非制御チャンネル(unregulated channel));受動輸送タンパク質;ペプチドを包含する小型膜孔形成分子(small pore forming molecule)(例えばナイスタチン、アンホテリシンB、グラミシジンA、アラメシシン);酵素(例えばリパーゼ);ギャップ結合タンパク質;核孔複合体;膜孔形成タンパク質(例えばポリン)およびホリン;コリシン(例えばコリシンE1、コリシンE3、コリシンA、コリシンIa、コリシンY);プロテグリン;補体および補体関連タンパク質(例えばパーフォリン);膜融合ウイルスタンパク質(例えばヘマグルチニン);Bcl−2タンパク質;SDS、Triton−X、CHAPS、デオキシコール酸、n−オクチル−B−D−グルピラノシド、TWEENおよびTriton−Xを包含する洗剤;イオノフォア;グリセロール、ポリエチレングリコールおよびデキストランを包含する浸透圧ストレス試薬;前に列挙されたペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質のバリアントを制限なしに包含する。「バリアント」により、改変されていない「前駆体」若しくは「親」核酸、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質に比較して、それらが核酸若しくはアミノ酸の欠失であれ挿入であれ付加であれ若しくは置換であれアミノ酸若しくは核酸配列中の変化を有する核酸、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質を意味している。改変されていない前駆体若しくは親は、天然に存在する、すなわち野生型の核酸、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質、またはバリアント核酸、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質であり得る。改変されていないタンパク質の配列は、親配列の1個若しくはそれ以上の核酸若しくはアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入により前駆体若しくは親配列に「由来」する。
【0024】
ジフテリア毒素(DT)およびそのある種の分子バリアントは細胞膜中に条件依存性の孔を形成することが可能なタンパク質である。DTタンパク質は3個の構造ドメインすなわち触媒(C)、転位(T)および受容体結合(R)ドメインを含有する。DTタンパク質が、軽度に酸性の環境(約pH4〜5.5)にその後曝露される培養物中の付着哺乳動物細胞(例えばサル細胞、チャイニーズハムスター細胞)にRドメインにより結合される場合、該タンパク質はコンホメーション変化を受け、近傍の細胞膜に挿入するTドメイン
中の潜在的アミノ酸配列を露出させる。Tドメインの膜挿入は、Cドメインに細胞膜を横断させかつ細胞の内部に進入させるのに十分に細胞の膜の完全性を破壊する。膜破壊のレベルは使用されるDTの濃度および曝露pHの双方に依存する。適切な濃度のDTでは膜挿入および破壊は細胞を溶解しない。
【0025】
本発明の一態様において、膜透過処理剤はジフテリア毒素である。別の態様において、膜透過処理剤は弱毒化ジフテリア毒素である。本発明の別の態様において、膜透過処理剤はDT−E148Sである。DT−E148SはCドメインの活性のおよそ500倍の減弱を含有するジフテリア毒素(DT)の低毒性バリアントである。リーダー配列とともに大腸菌(E.coli)にクローン化される場合、該タンパク質は細胞膜周辺腔に分泌される。こうした細胞を酸性環境(約pH4〜6.5)に曝露する場合、細胞膜周辺腔のpHが低下し、そして周辺質のDT−E148Sタンパク質の部分が大腸菌(E.coli)細胞膜に挿入する。この挿入が、能動輸送、膜電位およびイオン不透過性を包含する内膜の多数の機能を破壊する。膜機能の破壊は細胞膜の完全性の喪失を示し、それでもなお、顕微鏡観察は細胞が溶解されていないがしかしなおインタクトであることを示す。さらに、該細胞は細胞質酵素のような大型分子を保持するが、しかし該細胞は小型の紫外光吸収分子に対し自由に透過可能となる。
【0026】
本明細書に記述される方法で有用なDT毒素のバリアントは文献に記述されている。本発明で有用なこれらのバリアントのいくつかは、触媒活性を低下しかつWilsonら、Biochemistry 29:p.8643−8651(1990)に記述されているE148D、E148Q、E148Sを包含するCドメインバリアントを制限なしに包含する。位置148のグルタミン酸を変えるバリアントがとりわけ望ましい。本発明の方法で有用な他のバリアントは、触媒活性を低下しかつBlankeら、Biochemistry 33:p.5155−5161(1994)に記述されているH21A、H21D、H21L、H21Q、H21Rを包含する。なお他のDTバリアントは、残基148、148−147、148−146、148−145若しくは148−144が欠失されて低下された触媒活性をもたらすものを包含する。Killeenら、PNAS 89:p.6207−6209(1992)を参照されたい。なお他のDTバリアントは、Greenfieldら、Science 274、p.209−219(1987)に記述されるとおり毒素の結合を低下しかつ従ってその毒性を低下するS508FおよびS525Fを包含するRドメインバリアントを包含する。なお他のバリアントは、Shenら、Journal of Biological Chemistry 269:p.29077−29084(1994)により記述されるところの受容体結合を低下するK516AおよびF530Aを包含する。なお他のバリアントは、Louieら、Molecular Cell 1:p.67−78(1997)に記述されるところの以下の残基すなわちS381、H384、H391、R462、D465、D467、S506、D507、Q515、K516、D519、K526、A430、L433、I464、V468、F470、L512、N524、F530、S508、S528およびS505の1個若しくはそれ以上に突然変異および/若しくは欠失をもつDTを包含する。なお他のバリアントは、Zhanら、Biochemistry 34:p.4856−4863(1995)にさらに記述されるアミノ酸202−378を包含するDTフラグメントを包含するTドメインバリアントを包含する。本発明で有用ななお他のバリアントは交差反応物質(CRM)(交差反応性は免疫交差反応性と定義する)と称されるDTのバリアントを包含する。本発明で有用なCRMは、それを低毒性にするG52E突然変異を含有するCRM197;およびRドメインを欠くがしかしTドメインを有しかつ膜を破壊することが可能であるDTの切断変異体であるCRM45を制限なしに包含する。本発明で有用な他のバリアントはRドメインを欠くDTバリアントを包含する。
【0027】
膜透過処理剤が宿主細胞により発現される一態様において、該剤は好ましくはタンパク
質である。あるいは、該剤が外的に適用される別の態様において、膜透過処理剤は非タンパク質性化合物である。一態様において、該宿主細胞により発現されうる膜透過処理剤は、あるいは外的に供給してもよい。例えば、膜透過処理剤DTは哺乳動物細胞に外的に供給しうる。こうした場合、適用されるDTの量は宿主細胞株およびpHに依存することができる。例えば、より多いDTをより高いpHで供給することができるが、しかしより少ないDTをより低いpH値で必要とすることができる。一態様において、10−6ないし10−9モル濃度のDTを供給することができる。一態様において、大腸菌(E.coli)および酵母のような微生物宿主細胞について、標準的酵素および化学的処置を使用して宿主の細胞壁を部分的に若しくは完全に除去して浸透圧で安定化させ得るスフェロプラストを生じさせることが望ましい。外的膜透過処理剤例えばDTをその後適用する。一態様において、DTは10−4ないし10−8モル濃度の濃度で適用する。別の態様において、膜透過処理剤はコリシンであり、そして該剤は10−6ないし10−9モル濃度の濃度で大腸菌(E.coli)に適用する。
【0028】
C.小分子量化合物
これらの方法で共発現される若しくは外的に適用される透過処理剤の透過処理作用の結果は、ある種の小分子量分子が今や細胞膜を自由に横切って輸送し得ることである。こうした小分子量化合物は大きさが約50ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約75ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約100ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約150ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約200ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約250ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約350ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約450ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約550ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約650ないし約2000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約50ないし約1750ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約50ないし約1500ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約50ないし約1250ダルトンの間の範囲にある。一態様において、該小分子量化合物は大きさが約50ないし約1000ダルトンの間の範囲にある。一態様において、透過処理された細胞膜を通過し得る化合物は、約30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、175、200、225、250、300、350、400、450、500、550、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400若しくは2500ダルトンである。
【0029】
D.巨大分子
本発明の発現系を使用して製造しうる巨大分子は、ポリペプチドおよびタンパク質を包含するペプチド、DNAならびにRNAを制限なしに包含する。目的の巨大分子の機能は本方法により制限されない。本発明で有用なタンパク質は、疾患のための治療的剤(例えばインスリン、インターフェロン、インターロイキン、ペプチドホルモン、抗血管新生ペプチド)のような生物活性分子;受容体、チャンネル、脂質、細胞質タンパク質および膜タンパク質のような特定の細胞標的に結合しかつそれらに影響を及ぼすペプチド;ならびに特定物質(例えば生物学的組織、生体分子)に対する親和性を有するペプチドなどを制限なしに包含する。本発明の方法を使用して発現しうる核酸は、DNA、RNA、アンチセンスDNA、mRNA、tRNA、rRNA、tmRNA、siRNA、miRNA、
アンチセンスRNA、ncRNA、snRAN、snoRNAおよびdsRNAを制限なしに包含する。
【0030】
本発明の他の有用な巨大分子は治療的生成物を包含する。これらは、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGFα、アクチビン、インヒビンを包含するトランスフォーミング増殖因子αスーパーファミリーのいずれか1種、若しくは骨形成因子(BMP)BMP1−15のいずれか、増殖因子のヘレグルイン(heregluin)/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1種、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT−3およびNT−4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、セマホリン/コラプシンのファミリーのいずれか1種、ネツリン−1およびネツリン−2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグならびにチロシン水酸化酵素を制限なしに包含するホルモンならびに増殖および分化因子を包含する。
【0031】
他の有用な巨大分子は、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1からIL−25(例えばIL−2、IL−4、IL−12およびIL−18を包含する)、単球走化性タンパク質、白血病阻害因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、βおよびγ、幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドのようなサイトカインおよびリンホカインを制限なしに包含する免疫系を調節するタンパク質を包含する。免疫系により産生される遺伝子産物もまた本発明で有用である。これらは、免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHC分子、ならびに工作された免疫グロブリンおよびMHC分子を制限なしに包含する。有用な巨大分子は、補体調節タンパク質、補体調節タンパク質(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2およびCD59のような補体調節タンパク質もまた包含する。
【0032】
なお他の有用な巨大分子は、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質および免疫系タンパク質の受容体のいずれか1種を包含する。本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、高密度リポタンパク質(HDL)受容体、超低密度リポタンパク質(VLDL)受容体およびスカベンジャー受容体を包含するコレステロール調節および/若しくは脂質調節のための受容体を包含する。本発明は、グルココルチコイド受容体およびエストロゲン受容体、ビタミンD受容体ならびに他の核受容体を包含するステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーのような遺伝子産物もまた包含する。加えて、有用な遺伝子産物は、jun、fos、max、mad、血清応答因子(SRF)、AP−1、AP2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETSボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAATボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS結合タンパク質、STAT、GATAボックス結合タンパク質例えばGATA−3ならびにウィングドへリックスタンパク質のフォークヘッドファミリーのような転写因子を包含する。
【0033】
他の有用な巨大分子は、カルバモイル合成酵素I、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸(arginosuccinate)合成酵素、アルギノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸加水分解酵素、フェニルアラニン水酸化酵素、α−1アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルフォビリノーゲン脱アミノ酵素、シスタチオン(cystathione)β合成酵素、分枝状鎖ケト酸脱炭酸酵素、アルブミン、イソバレリルcoA脱水素酵素、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoA脱水素酵素、インスリン、β−グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシレート(pyruvate carboxylate)、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシン脱炭酸酵素、H−タンパク質、T−タンパク質、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)配列およびジストロフィン遺伝子産物(例えばミニ若しくはマイクロジストロフィン)を包含する。なお他の有用な巨大分子は、酵素の不十分な活性から生じる多様な状態で有用である酵素補充療法で有用でありうるような酵素を包含する。例えば、マンノース−6−リン酸を含有する酵素をリソソーム蓄積症の治療で利用しうる(例えば適する遺伝子はβ−グルクロニダーゼ(GUSB)をコードするものを包含する)。なお他の有用な巨大分子は、血友病B(第IX因子を包含する)ならびに血友病A(第VIII因子、ならびにヘテロ二量体のL鎖およびH鎖ならびにB欠失ドメインのようなそのバリアントを包含する)を包含する血友病の処置に使用されるものを包含する。
【0034】
上述されたタンパク質のいずれかをコードする核酸配列は、組換え法を使用して、若しくはそれを包含することが既知のベクターから該配列を派生させることにより得ることができる。さらに、所望の配列は、cDNA若しくはゲノムDNAのフェノール抽出およびPCRのような標準的技術(例えばSambrookらを参照されたい)を使用して、それを含有する細胞および組織から直接単離し得る。ヌクレオチド配列はクローン化されるよりはむしろ合成でもまた製造し得る。完全な配列は、標準的方法により製造されかつ完全なコーディング配列に集成されるオーバーラップオリゴヌクレオチドから集成し得る(例えば、Edge、Nature 292:757(1981);Nambariら、Science、223:1299(1984);およびJayら、J.Biol.Chem.259:6311(1984)を参照されたい。
【0035】
他の有用な巨大分子は、挿入、欠失若しくはアミノ酸置換を含有する天然に存在しないアミノ酸配列を有するキメラ若しくはハイブリッドポリペプチドのような天然に存在しないポリペプチドを包含する。他の型の天然に存在しない遺伝子配列は、標的の過剰発現を低下させるのに使用し得る、アンチセンス分子およびリボザイムのような触媒核酸を包含する。
【0036】
適する巨大分子は当業者により容易に選択されうる。
【0037】
E.核酸配列、分子若しくは輸送ベクターの集成
本明細書に記述される方法での使用のため、選択された巨大分子および膜透過処理剤の一方若しくは双方を、核酸配列若しくは分子として、選択された宿主細胞に感染、形質転換若しくはトランスフェクトする。例えば、一方法において、第一の核酸配列は、宿主細胞中での膜透過処理剤の発現を制御する第一の制御配列の機能的制御下に該剤をコードする。別の態様において、核酸配列(どの方法が使用されるかに依存して第二の核酸配列若しくは分子と称されうる)は、厳しく調節されるプロモーターを含んでなる制御配列(若しくは第二の制御配列)の機能的制御下に巨大分子をコードし、該制御配列は該宿主細胞での該巨大分子の発現を制御する。
【0038】
巨大分子若しくは細胞透過処理剤をコードする核酸配列は、当該技術分野で公知である技術を使用して適切な発現ベクターにクローン化される。例えば上で引用されたSamb
rookを参照されたい。本明細書で使用されるところの「プラスミド」、「ベクター」、「輸送ベクター」および「発現ベクター」という用語は、細胞の中心的代謝の一部でなくかつ通常は環状二本鎖DNA分子の形態の遺伝子をしばしば運搬する染色体外因子を指す。こうした因子は、プロモーターフラグメントおよび選択された遺伝子産物のDNA配列を適切な3’非翻訳配列と一緒に細胞中に導入することが可能である独特の構築物に多数のヌクレオチド配列が結合され若しくは組換えられている、いずれかの供給源に由来する自己複製配列、ゲノム組み込み配列、一本鎖若しくは二本鎖のDNA若しくはRNAの直鎖状若しくは環状のファージ若しくはヌクレオチド配列でありうる。
【0039】
こうしたベクターは、昆虫、例えばバキュロウイルス発現、または酵母、真菌、細菌若しくはウイルス発現系を包含する当該技術分野で既知の慣習的ベクター型のなかから選択される。その多数の型が当該技術分野で既知である他の適切な発現ベクターもまた本目的上使用し得る。こうした発現ベクターを得る方法は公知である。本発明の一態様において、第一の核酸配列若しくは第二の核酸配列は、プラスミド、バクテリオファージ若しくはウイルスである輸送ベクター中に独立に存在する。好ましい一態様において、ベクターは選択可能なマーカー例えば抗生物質耐性遺伝子をもつプラスミドである。上で引用されたSambrookら;Millerら、1986 Genetic Engineering、8:277−298およびその中で引用される参考文献を参照されたい。
【0040】
巨大分子をコードする核酸配列および剤をコードする核酸配列の挿入を必要とする本発明の第一の方法において、別個の選択可能なマーカーを含有するプラスミドを利用することが必要でありうる。第一のプラスミド中で第一の選択可能なマーカーを利用することにより、形質転換/トランスフェクトされた細胞を該選択剤を含有する培地で培養若しくは蒔くことができる。一態様において、選択剤は抗生物質若しくは抗真菌剤である。別の態様において、第二の選択可能なマーカーを第二のプラスミドに包含する。第二の選択剤を利用することにより双方のプラスミドを含有する宿主細胞を選択することが可能である。最終的な結果は2種のDNAセグメントを含有する宿主細胞である。すなわち、1セグメントは膜透過処理剤として作用するタンパク質をコードし、そして第二のセグメントは製造のための所望の巨大分子をコードする。
【0041】
該プラスミドベクターは、宿主細胞中での剤若しくは巨大分子の発現を制御する制御配列もまた包含する。本発明のいくつかの態様において、プラスミド(または巨大分子若しくは剤をコードする配列を運搬する他のベクター)は、真核生物および/若しくは原核生物における該ミニ遺伝子の複製を可能にする配列ならびにこれらの系のための選択マーカーを包含する。これらは、該プラスミドベクターで形質転換若しくはトランスフェクトされた細胞中でのその転写、翻訳および/若しくは発現を可能にする様式で該剤若しくは巨大分子をコードする配列に操作可能に連結されている慣習的調節領域を包含する。一態様において、第一のプラスミドは、該宿主細胞での該剤の発現を制御する制御配列の機能的制御下に膜透過処理剤をコードする核酸配列を包含する。本明細書で使用されるところの「効果的制御」は、核酸配列が発現調節すなわち制御配列とともに該制御配列が目的の核酸配列の発現を制御するようなこうした方法で配置されていることを意味している。制御配列は目的の核酸と隣接していることができるか、または、制御配列はトランスで若しくは目的の核酸を制御するための距離にあることができる。
【0042】
別の態様において、第一若しくは第二のプラスミドは、誘導可能なプロモーターを含んでなる第二の制御配列の機能的制御下に巨大分子をコードする核酸配列を包含し、該制御配列は該宿主細胞中での該巨大分子の発現を制御する。なお別の態様において、誘導可能なプロモーターは厳しく調節されるプロモーターである。
【0043】
制御配列は、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライ
シングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに所望の場合はコードされる産物の分泌を高める配列を包含する。天然、構成的、誘導可能および/若しくは組織特異的であるプロモーターを包含する多数の発現制御配列が当該技術分野で既知でありかつ利用されうる。
【0044】
本発明で有用な制御配列は目的の巨大分子および共発現の場合は膜透過処理剤の配列の発現を駆動することが可能ないかなるプロモーターも包含する。これは、限定されるものでないが、ウイルスプロモーター、細菌プロモーター、植物プロモーター、合成プロモーター、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、発達特異的プロモーター、誘導可能なプロモーター、軽度に調節されるプロモーター、厳しく調節されるプロモーターおよび病因若しくは疾患関連のプロモーターを挙げることができる。多数のこうした有用なプロモーターは、組換えタンパク質発現に関する慣習的本文若しくは多様な既知の学術刊行物に見出しうる。適するプロモーターおよびエンハンサー、選択可能なマーカー遺伝子、複製起点、アンプリコン、ならびにプラスミドベクターの他の慣習的成分の一覧は、例えば上で引用されたSambrookおよび本明細書に引用することにより組み込まれる他者のような刊行物に見出しうる。
【0045】
本発明のある態様において、第一のプラスミドのプロモーターは「漏出性」プロモーター、例えば誘導する剤若しくは条件の非存在下で変動可能なレベルの発現を表す誘導可能なプロモーターである。本発明の他の態様において、第一の制御配列は構成的プロモーターを含んでなる。本発明の他の態様において、第一の制御配列は誘導可能なプロモーターを含んでなる。本発明の別の態様において、第二の制御配列は第一の制御配列のものと異なるプロモーターを含んでなる。一態様において、第二の制御配列は第一の制御配列のものと異なる誘導可能なプロモーターを含んでなる。本発明のいくつかの態様において、剤の発現は不要な細胞毒性若しくは溶解を予防するように低い。
【0046】
一態様において、第一のプラスミドのプロモーターは構成的プロモーター、例えば、このプラスミドで形質転換された宿主細胞が該プラスミド成分を構成的に産生しているようにほとんどの時間にほとんどの細胞型で遺伝子を発現させるプロモーターである。例えば、巨大分子を発現するプラスミドで有用であるある種の構成的プロモーターは、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によってはRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によってはCMVエンハンサーを伴う)(例えばBoshartら、Cell、41:521−530(1985)を参照されたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターおよびEF1αプロモーター(Invitrogen)を制限なしに包含する。
【0047】
本発明のある態様において、第一若しくは第二または双方のプラスミド(1種若しくは複数)のプロモーターは、誘導可能若しくは調節可能であることができ、例えば、ある剤、生体分子、化学物質、リガンド、光若しくは何らかのその他の刺激との細胞の曝露若しくは処理後に核酸配列の発現を引き起こす。誘導可能なプロモーターおよび誘導可能な系は、Invitrogen、ClontechおよびAriadを制限なしに包含する多様な商業的供給源から入手可能である。多くの他の系が記述されておりかつ当業者により容易に選択され得る。こうした誘導可能なプロモーターの制限しない一覧は、PR 1−aプロモーター、原核生物リプレッサー−オペレーター系、および米国特許第7091038号明細書に詳細に記述されるような高等真核生物転写活性化系を包含する。こうしたプロモーターは、大腸菌(E.coli)からのテトラサイクリン(「Tet」)および乳糖(「Lac」)リプレッサー−オペレーター系を包含する。他の誘導可能なプロモー
ターは、全部当業者に既知の、トウモロコシの干ばつで誘導可能なプロモーター;バレイショからの寒冷、干ばつおよび高塩で誘導可能なプロモーター、アラビドプシス(Arabidopsis)の老化で誘導可能なプロモーター、SAG 12、ならびにLEC1、LEC2、FUS3、AtSERK1およびAGL15の胚形成関連プロモーターを包含する。なお他の誘導可能なプロモーターは、亜鉛で誘導可能なヒツジメタロチオニン(metallothionine)(MT)プロモーターおよびデキサメサゾン(Dex)で誘導可能なマウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーターを包含する。他の誘導可能な系は、T7ポリメラーゼプロモーター系(第WO 98/10088号明細書);エクジソン昆虫プロモーター(Noら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346−3351(1996))、テトラサイクリンで抑制可能な系(Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547−5551(1992))、テトラサイクリンで誘導可能な系(Gossenら、Science、268:1766−1769(1995)、Harveyら、Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512−518(1998)もまた参照されたい)を包含する。他の系は、FK506二量体、カストラジオール(castradiol)を使用するVP16若しくはp65、ジフェノールムリスレロン(murislerone)、RU486で誘導可能な系(Wangら、Nat.Biotech.、15:239−243(1997)およびWangら、Gene Ther.、4:432−441(1997))ならびにラパマイシンで誘導可能な系(Magariら、J.Clin.Invest.、100:3865−2872(1997))を包含する。なお他のプロモーターはrhaTプロモーター(Giacaloneら、BioTechniques、40(3):355−63(2006)を包含する。厳しく調節されるプロモーターは、誘導する剤若しくは条件の非存在下でいかなる検出可能な発現も可能にしないかまたは第二の試薬若しくは条件を使用して抑制されることが可能である誘導可能なプロモーターである。一態様において、巨大分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている制御配列は厳しく調節されるプロモーターである。
【0048】
本発明のさらなる一態様において、選択された核酸配列を含有するベクター若しくはプラスミドは、本明細書に記述されるものを包含するいずれかの適する方法により宿主細胞に送達される。本発明のいずれかの態様を構築するのに使用される方法は核酸操作の当業者に既知であり、そして遺伝子工学、組換え工学および合成技術を包含する。例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーを参照されたい。一態様において、巨大分子若しくは剤をコードする核酸配列を含有するプラスミド(1種若しくは複数)を、カルシウム、ルビジウム若しくはマグネシウムのような金属陽イオンの塩化物塩を使用して宿主細胞に移す。別の態様において、巨大分子若しくは剤をコードする核酸配列を含有するプラスミド(1種若しくは複数)は電気穿孔法を使用して宿主細胞に移す。
【0049】
F.トランスフェクトされた宿主細胞の培養
本発明の一利点は、それがスケーラブルかつ大量の組換え巨大分子を製造することが可能であることである。本方法により、宿主細胞は、外的に膜透過処理剤での処理または細胞内で産生される膜透過処理剤の誘導若しくは活性化の前に、慣習的手段により高細胞密度まで増殖させる。従って、十分な量の組換え巨大分子が、宿主細胞の細胞密度を調節することにより得られる。
【0050】
本明細書に記述される方法のいずれの態様においても、上述された核酸配列若しくは分子の一方若しくは双方を含有する宿主細胞を、該巨大分子の所望の製造レベルを満たすのに十分な所望の細胞密度まで培養する。一態様において、細胞密度は、該巨大分子の製造に適すると考えられるものが0.3ないし100のOD595に対応するである。一態様
において、細胞密度は、該巨大分子の製造に適すると考えられるものが0.3ないし3.0のOD595に対応するである。一態様において、細胞密度は、該巨大分子の製造に適すると考えられるものが20ないし100のOD595に対応するである。一態様において、該巨大分子の製造に適すると考えられる細胞密度は50〜100のOD595に対応する。一態様において、該巨大分子の製造に適すると考えられる細胞密度は75〜100のOD595に対応する。一態様においてOD595は0.3である。一態様においてOD595は0.4である。一態様においてOD595は0.5である。一態様においてOD595は0.6である。一様においてOD595は0.7である。一態様においてOD595は0.8である。一態様においてOD595は0.9である。一態様においてOD595は1.0である。一態様においてOD595は2.0である。一態様においてOD595は3.0である。一態様においてOD595は4.0である。一態様においてOD595は5.0である。一態様においてOD595は6.0である。一態様においてOD595は7.0である。一態様においてOD595は最低20である。一態様においてOD595は30である。一態様においてOD595は40である。一態様においてOD595は50である。一態様においてOD595は60である。一態様においてOD595は70である。一態様においてOD595は80である。一態様においてOD595は90である。一態様においてOD595は100である。いくつかの態様において、細胞は、細胞膜が透過処理される場合に最適代謝機能を確保するために対数増殖期の間に収集する。
【0051】
該方法のいずれにおいても、培養条件は使用されている宿主細胞の型に依存し、そして当業者により容易に決定され得る。例えば、一態様において、宿主細胞が大腸菌(E.coli)である場合、該細胞をLB培地中37℃で最適に増殖させる。いくつかの態様において、細胞を室温で増殖させることが望ましいかもしれない。いくつかの態様において、細胞は大スケールで、例えば発酵槽中で増殖させる。別の態様において、宿主細胞がヒトHEK293細胞である場合、該細胞はダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中37℃で5%COで最適に増殖する。インキュベーション時間は当業者により容易に決定されうる。一態様において、細胞は一夜例えば8〜14時間から培養する。
【0052】
この培養段階の間に、好ましくは厳しく調節されるプロモーターの制御下の巨大分子が検出可能なレベルまで発現されないことが望ましい。この培養段階は細胞膜の近傍の透過処理剤の蓄積を可能にする。例えば、細菌宿主細胞中でこの培養段階は細胞膜周辺腔の該剤の蓄積を可能にする。
【0053】
これらの方法の一態様において、宿主細胞は、所望の密度まで一旦培養されればいずれかの誘導する環境条件および栄養素カクテルの存在下で該細胞を培養することの前に濃縮若しくは収集してよい。細胞の収集技術は当該技術分野で公知である。簡潔には、一態様において、形質転換された細胞を適切な選択抗生物質を含有する寒天板に蒔いた後に、単一コロニーを選択しかつ適切な培地中で一夜増殖させる。該培地をその後プラスチック製遠心瓶中に注ぎ、そして5,000rpmで15分間遠心して細胞をペレットにする。上清をその後捨てる。細胞をその後所望の量の培地若しくは緩衝液に再懸濁する。別の態様において、形質転換された哺乳動物細胞を適切な大きさのフラスコに播種する。細胞を適切な培地中所望の温度例えば37℃で増殖させ、そして所望のレベルのコンフルエンシーに達せさせる。付着細胞の場合、培地をその後吸引し、そして細胞をトリプシンの使用を伴い若しくは伴わずにフラスコから剥離しかつ所望の容量の培地に再懸濁する。浮遊細胞の場合、細胞を含有する培地を遠心沈降し、そしてペレットにされた細胞を適切な容量の培地若しくは緩衝液に再懸濁する。
【0054】
G.透過処理活性を誘発する環境条件
該方法の一態様において、所望の密度の若しくは場合によっては遠心沈降されかつ培地
の除去により濃縮された宿主細胞を、細胞膜の完全な溶解を伴わずに細胞膜の完全性を破壊するように膜透過処理剤を誘導する環境条件に曝露する。この破壊が小分子量化合物の該膜を通る輸送を可能にする。膜透過処理剤は宿主細胞を溶解してはならないが、しかし代わりに宿主細胞の膜を大きさについてのみ選択的にする。すなわち、該膜は大型分子例えば酵素について障壁のままであるがしかし多様な小分子量化合物は宿主細胞中に容易に動き得る。
【0055】
膜透過処理剤が細胞内に含有されるプラスミドによりコードされている該方法の一態様において、環境条件を、宿主細胞内に蓄積した該剤の透過処理活性を誘発するように変える。巨大分子の発現を制御するプラスミドのみが該宿主細胞により運搬される別の態様において、環境条件は、外的に適用された透過処理剤を伴う宿主細胞を最適に付加的な環境条件と接触させることを包含する。
【0056】
本明細書に記述される製造方法により、透過処理剤の透過処理活性を誘発する環境条件は、以下の条件、すなわちpHを変えること、塩濃度を変えること、浸透圧を変えること、温度を変えること、宿主細胞を光に曝露すること、および宿主細胞を剤、生体分子、化学物質若しくはリガンドに曝露することの最低1種を包含する。
【0057】
本明細書に記述される方法の一態様において、pHを変えることはpHを約4ないし6.5に低下させることを含んでなる。一態様において、pHを培養段階の中性のpHからより低いpHに低下させる。例えば、一態様においてpHを約4に低下する。
【0058】
別の態様においてpHは約4.5に低下する。別の態様においてpHを約5.0に低下する。別の態様においてpHを約5.5に低下する。別の態様においてpHを約6.0に低下する。別の態様においてpHを約6.5に低下する。4と6.5の中間のなお他のpH値をこの段階の環境条件として選択してよい。
【0059】
本明細書に記述される方法の別の態様において、環境条件を生じる剤、生体分子、化学物質若しくはリガンドは、還元剤、酸化剤、酸、塩基若しくは塩を制限なしに包含する。本発明で使用しうる還元剤の例は、NADH、アセトアルデヒド、β−メルカプトエタノールおよびジチオスレイトールを制限なしに包含する。本発明で使用しうる酸化剤の例は、NAD、HおよびMnOを制限なしに包含する。本発明で使用しうる酸の例は酢酸、塩酸、硫酸などを制限なしに包含する。
【0060】
別の態様において、環境条件を生じる剤、生体分子、化学物質若しくはリガンドはカオトロープを包含する。本発明で有用でありうるカオトロピック剤の例は、尿素、チオ尿素、塩化グアニジニウムおよび過塩素酸リチウムを制限なしに包含する。
【0061】
別の態様において、環境条件を生じる剤、生体分子、化学物質若しくはリガンドは界面活性剤を包含する。本発明で有用でありうる界面活性剤の例は、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポロキサマー若しくはラウリル硫酸ナトリウムを制限なしに包含する。
【0062】
別の態様において、環境条件を生じる剤、生体分子、化学物質若しくはリガンドは、膜透過処理剤が宿主細胞内の誘導可能なプロモーターの制御下にある場合に第一の制御配列の誘導可能なプロモーターを誘導する剤を包含する。誘導可能なプロモーターを誘導する剤は選択されるプロモーターに特異的である。誘導剤の選択は当該技術の熟練内に十分にある。本発明で使用しうる誘導剤は、IPTG、アルコール、テトラサイクリン、ステロイド、金属および他の化合物を制限なしに包含する。
【0063】
宿主細胞が透過処理剤を発現しない該方法の態様において、環境条件は、上述されたも
ののような膜透過処理剤に宿主細胞を曝露することをさらに包含する。上で項目別に述べられたところのものを生じる他の環境条件若しくは剤は、場合によっては、透過処理剤と同時に、若しくは該透過処理剤が適用された後短時間例えば5ないし30分以内に宿主細胞と接触させうる。
【0064】
いくつかの態様において、膜透過処理剤の量、濃度若しくは活性を最適化することが望ましいことができる。膜透過処理剤の有効性は膜機能を検査することにより評価しうる。一態様において、これはプロリン輸送、膜電位若しくは86Rb流出を検査することにより達成される。約95%のプロリン輸送、膜電位若しくは86Rb保持の低下は膜が透過処理されたことを示す。透過処理のレベルの決定は、例えば実施例4に詳細に記述されるところの巨大分子製造の量の評価を包含しうる。
【0065】
H.栄養素カクテル
細胞の膜の完全性が上述された方法の遂行により一旦破壊されれば、宿主細胞の正常な代謝活動が損なわれる。膜透過処理剤により損なわれる宿主細胞の膜の透過性障壁を伴い、宿主細胞の内部環境は宿主細胞の外的環境と釣り合うことができる。であるから、該方法は、宿主細胞の環境に栄養素のカクテルを補充して、目的の特定の巨大分子を産生することの一助となる細胞内環境を創成するように宿主細胞の内側を変えることを必要とする。該方法は細胞の外的環境を調節することにより細胞の内的環境を制御することを必要とする。該カクテルは、所望の巨大分子を産生するために必要とされる代謝反応を宿主細胞が実施するのに必要とされる栄養素を包含する。
【0066】
従って、本明細書に記述される方法の全部の態様において、宿主細胞は、その細胞膜が上述されたとおり一旦透過処理されれば、破壊された細胞膜を通って輸送し得る成分を含んでなる栄養素カクテルの存在下で培養される。これらの成分は、第二の制御配列のプロモーターおよび膜が破壊された宿主細胞での巨大分子の発現を可能にする他の代謝要件を誘導する誘導剤を包含する。一態様において、栄養素カクテルは完全限定培地を含んでなり、各成分の濃度および正体は特別に選ばれる。別の態様において、栄養素カクテルは所望の成分(例えばヌクレオチド)を補充された標準培地(例えばLB培地)を含んでなる。当業者は所望の特定の条件に基づき適切なカクテルを決定し得る。
【0067】
一態様において、栄養素カクテルはpH4〜10の間の特定のpHおよび約10ないし500mMの塩濃度にある。いくつかの態様において、塩濃度は、その間の濃度値を包含する約50ないし150mMである。いくつかの態様において、pHは、その間のpH値を包含する約7.0ないし7.5である。
【0068】
本明細書に記述される方法で使用される栄養素カクテルは、透過処理された細胞膜を通って輸送されてコードされる巨大分子の発現に必要な成分および条件を細胞に供給し得る1種若しくはそれ以上の成分を含んでなる。
【0069】
一態様において、カクテルの不可欠の一成分は巨大分子の発現を制御するプロモーターを誘導するための誘導剤(例えばrhaTプロモーターを誘導するためのL−ラムノース)である。界面活性を添加して膜の透過性を増大させてもよい。なお他の成分は、塩、化学的エネルギー源例えばアデノシン三リン酸(ATP)、安定化剤、アミノ酸、リボヌクレオチド、補助因子、デオキシリボヌクレオチドおよび非天然のアミノ酸を制限なしに包含する。巨大分子を産生するのに必要ななお他の小分子若しくは環境因子は、トリメチルアミンN−オキシド(TMAO)、ジメチルスルホニオプロピオナート、トリメチルグリシン、サルコシンを包含する浸透圧調節物質;ならびに酸化型および還元型グルタチオンのような酸化還元を変える試薬を制限なしに包含する。当業者は、宿主細胞の正体、巨大分子および培養物の他の条件に依存して栄養素カクテルの他の小分子成分を容易に選択し
うる。
【0070】
いくつかの態様において、栄養素カクテル中の浸透圧調節物質(1種若しくは複数)および/または安定化剤の濃度は0.1mMから1Mまでの範囲にある。他の態様において、栄養素カクテル中の浸透圧調節物質(1種若しくは複数)および/または安定化剤の濃度は1mMから1Mまでの範囲にある。他の態様において、該カクテル中の塩、化学的エネルギー源例えばアデノシン三リン酸(ATP)、安定化剤、アミノ酸、リボヌクレオチド、補助因子、デオキシリボヌクレオチドおよび/若しくは誘導剤の濃度は0.1nMから1mMまでの範囲にある。なお他の態様において、これらの成分の濃度は1nMから.5mMまでの範囲にある。一態様において該濃度は1nMである。
【0071】
栄養素カクテルが透過処理された宿主細胞に一旦提供されれば、該細胞を、一態様において、通常は20〜40℃の間の適する温度で細胞に巨大分子を代謝させるのに十分な時間、培養若しくは保持する。一態様において、十分な時間は一夜すなわち例えば約8時間である。他の適する時間は1ないし4時間、5〜10時間、12〜24時間若しくはより長時間を包含する。これらの方法に従って、巨大分子がそれにより該宿主細胞中で発現される。
【0072】
いずれの方法のなお他の態様も、発現された巨大分子を宿主細胞から回収するための慣習的段階を使用し得る。発現された巨大分子の回収技術は当該技術分野で公知であり、そしてゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相HPLC、アフィニティーおよび免疫アフィニティークロマトグラフィー、ならびに金属キレートアフィニティークロマトグラフィーを包含する。例えば、Sambrook、Molecular Cloning、第3版(2001)およびSimpsonら(編)、Basic Methods in Protein Purification and Analysis:A Laboratory Manual(2008)を参照されたい。ポリペプチドおよびタンパク質に関して、多様な技術を使用する精製の容易さを見込むために発現されたタンパク質に「タグをつける」多くの発現系が利用可能である。アフィニティータグは、アフィニティー技術を使用して、それらの粗生物学的供給源からそれらが精製され得るようにタンパク質に付属される。クロマトグラフィータグは、特定の一分離技術全体で多様な分離を提供するようにタンパク質のクロマトグラフィー特性を変えるのに使用される。エピトープタグは、高親和性抗体が多くの異なる種で確実に産生され得るために選ばれる短いペプチド配列である。これらは通常ウイルス遺伝子由来であり、これがそれらの高免疫反応性を説明する。これらのタグはウエスタンブロッティングおよび免疫沈降実験にとりわけ有用であるとは言え、それらはアフィニティークロマトグラフィーを使用する精製を可能にするための抗体精製でもまた使用を見出す。本発明で有用な特別のタンパク質タギング系は、ポリヒスチジンタグ(HIS)、カルモジュリン結合タンパク質(CBP)、CYD(共有の、にもかかわらず解離可能なNorpDペプチド)、Strep II、FLAG、HPC(プロテインCのH鎖)ペプチドタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)およびマルトース結合タンパク質(MBP)系を制限なしに包含する。エピトープタグはV5タグ、c−mycタグおよびHAタグを包含する。当業者は適切な巨大分子回収方法を容易に選択し得る。
【0073】
本明細書に記述される教示を考えれば、当業者は、巨大分子および細胞透過処理剤の選択に基づき、該巨大分子の製造を最適化することを達成するように、該方法で使用される全部の試薬の濃度および量を容易に調節し得ならびに時間および温度条件を調節し得る。宿主細胞、巨大分子および透過処理剤の選択に基づき、本発明の教示を考えれば、当業者は、培養条件、栄養素カクテル成分の選択、環境条件の選択、該方法で使用される成分の量および濃度ならびに該方法の他のパラメータを、当該技術分野の知識を使用して最適化
し得る。例えば、実施例4に記述されるアッセイを使用して、いずれの選択される系の最適な透過性も容易に決定し得る。
【0074】
上に示されたとおり、本発明は既知の発現系を上回るいくつかの利点を提供する。慣習的な無細胞発現系と異なり、現在記述される方法はDNA鋳型(ここで巨大分子はタンパク質若しくはポリペプチドである)を調製するための第二の系を必要としない。該鋳型が宿主細胞増殖の間に複製されるためである。加えて、長期間の宿主細胞の低温保存は十分に確立された技術であるため、保存の間に本発明の巨大分子を産生する能力の低下が存在しない。本発明の別の利点は、それがスケーラブルかつ大量の組換え巨大分子を産生することが可能であることである。宿主細胞系は膜透過処理剤での処理前に慣習的手段により高細胞密度まで増殖させ得る。従って、十分な量の組換え巨大分子を、宿主細胞の細胞密度を調節することにより得ることができる。さらに、該細胞を巨大分子の誘導前に濃縮し得るため、使用される試薬の量を大きく低減しうる。
【0075】
本明細書に記述される方法は、その正しい構造を得る組換え巨大分子の一助となる宿主細胞の内側の条件を創成する。該細胞の内的環境は該細胞の外的環境を調節することにより制御し得る。膜透過処理剤により損なわれる宿主細胞の膜の透過性障壁で、宿主細胞の内部環境は該宿主細胞の外的環境と釣り合うことができる。従って、宿主細胞の内的pH、モル浸透圧濃度、酸化還元電位若しくは安定化剤の濃度は、宿主細胞の外的環境を変化させることにより調節し得る。適切な環境を提供することは正しい構造をもつ巨大分子のin situ製造を可能にする。
【0076】
III.薬物スクリーニング法
本発明のさらなる一利点は、それがin situ薬物スクリーニングを見込むことができることである。例えば、適切に改変された組換えタンパク質のライブラリーを、上述された製造方法を使用して宿主細胞系中で製造し得る。上の方法で記述されたところの宿主細胞内での巨大分子の産生後に、該宿主細胞を、損なわれた宿主細胞の膜を通過するとみられる多様な小分子薬物で処理し得る。こうした小型薬物は、一態様において、改変された組換え巨大分子例えばタンパク質に結合することが望ましいものである。該スクリーニング法の他の態様において、他の小型薬物は、何らかのシグナル伝達事象若しくは発現される巨大分子の別の活性を誘発するよう設計されたものである。慣習的方法をその後使用して、該小型薬物に結合された組換え分子例えばタンパク質を含有する宿主細胞を同定する。他の慣習的方法は、該巨大分子の産生レベル若しくは他の活性などを測定するよう設計されたものである。
【0077】
本明細書で使用されるところの「薬物」という用語は、巨大分子の産生若しくは活性と関連する何らかの特性について評価される製薬学的若しくは非製薬学的化合物若しくは基質を指すことができる。例えば、目的の巨大分子は産業酵素(例えばキシラナーゼ)若しくは診断的酵素(例えばDNAポリメラーゼ(PCR酵素))であり得る。本態様において、バリアントのライブラリーを、所望の特性を有するバリアントを求めて大腸菌(E.coli)中で創成する。キシラナーゼについて、基質は多糖β1,4−キシランである。
【0078】
従って、一態様において、in situ薬物スクリーニング方法は、(i)宿主細胞中での膜透過処理剤の発現を制御する第一の制御配列の機能的制御下の該剤をコードする第一の核酸配列;および(ii)誘導可能なプロモーターを含んでなる第二の制御配列の機能的制御下の巨大分子をコードする第二の核酸配列(該制御配列は宿主細胞中での該巨大分子の発現を制御する)を含有する宿主細胞を、ミニウェルプレートの各ウェル中で培養することを包含する。各ウェルの宿主細胞中の第二の核酸配列は異なる巨大分子をコードする。共形質転換された宿主細胞を、該剤の蓄積を可能にする選択された細胞密度まで
培養する。
【0079】
各ウェル中の宿主細胞をその後、膜の完全な溶解を伴わずに細胞膜の完全性を破壊しそしてそれにより小分子量化合物の膜を通る輸送を可能にするように該剤を誘導するのに適する環境条件に曝露する。その後、各ウェル中の宿主細胞を、破壊された細胞膜を通って輸送し得る成分(該成分は各ウェル中の細胞の第二の制御配列のプロモーターを誘導する誘導剤を含んでなる)を含んでなる栄養素カクテル;および各ウェルの膜を破壊された宿主細胞中での該巨大分子の発現を可能にする代謝要件の存在下で培養し、ここで該巨大分子は各ウェルの宿主細胞中で発現される。
【0080】
一態様において、各ウェルを、第二のプロモーターの誘導前に細胞膜を通って輸送し得る小分子量試験試薬で処理する。別の態様において、各ウェルは、第二のプロモーターの誘導後に細胞膜を通って輸送し得る小分子量試験試薬で処理する。別の態様において、各ウェル中の宿主細胞は、該試験試薬で細胞を処理する前に慣習的溶解試薬との接触により完全に溶解してもよい。こうした剤の量は当業者により決定されうるが、しかし一般に約0.01マイクロモル濃度(0.01μM)ないし1mMの間でありうる。試験試薬を添加する目的は、所望の巨大分子の産生に対するその影響を評価するため、または巨大分子および試験試薬の結合の原因である特定の残基(1個若しくは複数)を決定するためである。例えば、一態様において、試験試薬はある巨大分子のある種のバリアントを結合しかつ他者を結合しない。別の態様において、試験試薬は1種の巨大分子バリアントについて培養物中でシグナル事象を誘発することができ、そして他者についてしない。試験試薬の存在に反応する(例えばそれにより結合される)巨大分子バリアントの正体をその後、各ウェル中で産生される巨大分子バリアントを同定かつ/若しくは定量する慣習的アッセイにより決定する。
【0081】
なお別の態様において、該in situ試験方法は、同一の2種のプラスミドによりコトランスフェクトされた同一の宿主細胞を各ウェルが含有する、すなわち同一巨大分子が各ウェル中で発現されることを除き、上のものに類似の段階を必要とする。上述されたとおり、該細胞を慣習的条件との接触により透過処理し、そして栄養素カクテルと接触させる。しかしながら、本態様において、各ウェルをすなわち試験化合物のライブラリーからの異なる試験試薬で処理する。慣習的アッセイをその後使用して、どの試験試薬が該巨大分子の産生に影響したか若しくは該巨大分子に結合したかを、上述されたと同一の様式で決定する。
【0082】
なおさらなる一態様において、第二の製造方法をスクリーニングアッセイで使用しうる。宿主細胞は巨大分子(若しくは巨大分子のバリアント)をコードする核酸配列を含む単一プラスミドのみを含有する。該細胞を、透過処理事象を誘導する外的に適用される透過処理剤および/若しくは環境条件との接触前にマルチウェルプレートの各ウェル中で所望の密度まで培養する。試験試薬のライブラリー(若しくは単一試験試薬)をその後、各ウェル中の透過処理された細胞を上で定義されたところの栄養素カクテルと接触させると同時に若しくは時にその後に適用しうる。各ウェルの内容物で実施される慣習的アッセイが、どの試験試薬が単一巨大分子で反応を誘導するか若しくは該巨大分子のどのバリアントが単一試験試薬に応答するかを、上述された様式で決定することができる。
【実施例】
【0083】
IV.実施例
以下の実施例は本発明の組成物および方法の使用を示す。
【実施例1】
【0084】
酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)の製造方法
A.膜透過処理剤および巨大分子の共発現のための2種の核酸分子を含有する宿主細胞の構築
活性部位残基に3塩基対突然変異を含有する(E148S)無傷のジフテリア毒素(DT)遺伝子を膜透過処理剤としてコードしてDT−E148Sと呼ばれるDTの低毒性の弱毒化バージョンをもたらすDNA配列。本核酸配列を、慣習的技術を使用しかつO’KeefeとCollier、PNAS、86:343−6(1989)に記述されるとおり集成する。
【0085】
本配列を、pFIKT7−FlexiTMプラスミドベクター(Promega)に誘導可能なT7プロモーターの後にクローン化する。T7プロモーターはイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導可能であるが、しかしIPTGの非存在下で基礎レベルの発現(漏出発現)を表す。pFIKT7−FlexiTMベクターは、成功裏にトランスフェクトされた大腸菌(E.coli)宿主の同定を見込む選択可能なマーカーkan(カナマイシン耐性のため)を含有する。
【0086】
DT−E148Sを含有するこの「第一の」プラスミド(pDT−E148S)をコンピテントな大腸菌(E.coli)宿主細胞に形質転換し、そして50μg/mlのカナマイシンを含有するLB寒天上で画線しかつ37℃で一夜増殖させる。単一コロニーを選択し、そしてカナマイシンを含有する15mLのLB培地中37℃で15時間増殖させる。細胞をペレットにしかつ次の段階のため使用する。
【0087】
「第二の」プラスミドすなわちpRHAプラスミドはGiacaloneら、2006、Biotechniques、40(3):355−63に記述されたとおり構築する。pRHAプラスミドは、成功裏にトランスフェクトされた大腸菌(E.coli)宿主の同定を見込む選択可能なマーカーamp(アンピシリン耐性のため)を含有する。巨大分子すなわちタンパク質aFGFをコードするDNA配列をpRHAプラスミドにrhaTプロモーターの後にクローン化する。場合によっては該タンパク質を宿主細胞からの後の精製のためGST若しくはヒスチジンタグでタグをつける。rhaTプロモーターは、L−ラムノースの添加により誘導可能かつD−グルコースの存在により抑制される厳しく調節されるプロモーターである。標的巨大分子をコードする核酸配列を含んでなるこの「第二の」プラスミドを、膜透過処理剤DT−E148Sをコードする「第一の」プラスミドを含有する大腸菌(E.coli)細胞に形質転換する。共形質転換された大腸菌(E.coli)宿主細胞をアンピシリンおよびカナマイシンを含有するLB寒天上で画線しかつ37℃で一夜増殖させて、双方のプラスミドを含有する細胞について選択する。単一コロニーを選択しかつアンピシリンおよびカナマイシンを含有する15mLのLB培地中37℃で15時間増殖させる。
【0088】
B.選択された密度までの宿主細胞の培養
大腸菌(E.coli)を、巨大分子の発現を抑制するがしかしDT−E148Sの発現を可能にするように0.2%D−グルコースを補充されているLB培地中で培養する。この時間の間に大腸菌(E.coli)宿主細胞はその漏出プロモーターのためDT−E148Sを発現しておりかつそのリーダー配列によりそれを該細胞の細胞膜周辺腔に局在化している。宿主細胞が、該巨大分子の産生を最大にするために一般に選択される細胞密度である1.0のOD595という選択された細胞密度に達する場合に、大腸菌(E.coli)宿主細胞を収集しかつ培地を捨てる。
【0089】
C.宿主細胞の透過処理
細胞をその後、透過処理剤が細胞膜の完全な溶解を伴わずに細胞膜の完全性を破壊することを誘導する環境条件に曝露する。本実験において、細胞を酸性緩衝液(コハク酸ナトリウム)に再懸濁してpHを約5.0に約5分間低下させる。理論により拘束されること
を願わず、酸性培地が、宿主細胞を完全に溶解することを伴わずに細胞膜にそれが挿入しかつその完全性を破壊することを可能にする、周辺質のDT−E148S分子中のコンホメーション変化を誘導する。細胞膜のこの破壊がそれにより、小分子量化合物例えば約50ないし2000ダルトンの小分子の膜を通る輸送を可能にする。
【0090】
D.巨大分子の製造
透過処理が生じた後に、酸性緩衝液をLB、ならびに、rhaTプロモーターを誘導するL−ラムノースならびに透過処理された細胞の代謝および膜を破壊された細胞中のタンパク質aFGFの産生に必要とされる他の小分子化合物を包含する栄養素カクテルと交換する。これらの分子は破壊された細胞膜を通り輸送し得る大きさのものである。この場合のこうした成分はATP、アミノ酸およびリボヌクレオチドを包含する。各成分を約1mMの濃度まで添加する。誘導される細胞を37℃で一夜保つ。細胞をペレットにしかつ溶解し、そして巨大分子タンパク質aFGFを慣習的クロマトグラフィー法を使用して精製する。
【実施例2】
【0091】
線維芽細胞増殖因子20(FGF−20)の製造方法
A.巨大分子の発現のための核酸分子を含有する宿主細胞の構築
Giacaloneら、2006、Biotechniques、40(3):355−63に記述されるとおり構築されたpRHAプラスミドは、成功裏にトランスフェクトされた大腸菌(E.coli)宿主の同定を見込む選択可能なマーカーamp(アンピシリン耐性のため)を含有する。巨大分子すなわちタンパク質FGF−20をコードするDNA配列をpRHAプラスミドにrhaTプロモーターの後にクローン化する。場合によっては、該タンパク質を宿主細胞からの後の精製のためGST若しくはヒスチジンタグでタグをつける。rhaTプロモーターは、L−ラムノースの添加により誘導可能かつD−グルコースの存在により抑制される厳しく調節されるプロモーターである。標的巨大分子をコードする核酸配列を含んでなるこのプラスミドをコンピテントな大腸菌(E.coli)細胞に形質転換する。形質転換された大腸菌(E.coli)宿主細胞を50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天上で画線し、そして該プラスミドを含有する細胞について選択するため37℃で一夜増殖させる。単一コロニーを選択しかつアンピシリンを含有する15mLのLB培地中37℃で15時間増殖させる。細胞をペレットにしかつ次の段階のため使用する。
【0092】
B.選択された密度までの宿主細胞の培養
該大腸菌(E.coli)を、巨大分子の発現を抑制するため0.2%D−グルコースを補充されているLB培地中で培養する。宿主細胞が、巨大分子の産生を最大化するために一般に選択される細胞密度である1.0のOD595という選択された細胞密度に達する場合に、大腸菌(E.coli)宿主細胞を収集しかつ培地を捨てる。
【0093】
C.宿主細胞の透過処理
細胞をその後、細胞膜の完全な溶解を伴わずに細胞膜の完全性を破壊するのに十分な環境条件下で外的に添加された透過処理剤コリシンYに曝露する。本実験において、収集された大腸菌(E.coli)をその後中性緩衝液に再懸濁し、そして2μg/mLの透過処理剤コリシンYで約5分間処理する。この処理が、宿主細胞を完全に溶解することを伴わずに細胞膜の完全性を破壊する。細胞膜のこの破壊がそれにより小分子量化合物例えば約50ないし2000ダルトンの小分子の膜を通る輸送を可能にする。
【0094】
D.巨大分子の製造
透過処理が生じた後に、中性緩衝液を、LB、ならびにrhaTプロモーターを誘導するL−ラムノースならびに透過処理された細胞の代謝および膜を破壊された細胞中のタン
パク質FGF−20の産生に必要とされる他の小分子化合物を包含する栄養素カクテルと交換する。これらの分子は破壊された細胞膜を通り輸送し得る大きさのものである。この場合のこうした成分は約1mMの濃度で添加されるATP、アミノ酸およびリボヌクレオチドを包含する。誘導された細胞を37℃に一夜保つ。細胞をペレットにしかつ溶解し、そして巨大分子タンパク質FGF−20を慣習的クロマトグラフィー法を使用して精製する。
【実施例3】
【0095】
in situ薬物スクリーニング
A.膜透過処理剤および巨大分子の共発現のための2種の核酸分子を含有する宿主細胞の構築
コンピテントな大腸菌(E.coli)宿主細胞を実施例1に記述されたところのプラスミドpDT−E148Sでトランスフェクトする。タンパク質5−α還元酵素のバリアントを得かつ実施例1に記述されたとおりpRHAプラスミドにrhaTプロモーターの後に個別にクローン化して、それによりコードされるタンパク質5−α還元酵素バリアント中でのみ異なるpRHAプラスミドのライブラリーを提供する。タンパク質バリアントコーディング配列を含有する各プラスミドを、pDT−E148Sを含有する大腸菌(E.coli)細胞に形質転換する。形質転換された細胞を、双方のプラスミドを含有する細胞について選択するためアンピシリンおよびカナマイシンを含有するLB寒天上で画線しかつ37℃で一夜増殖させる。各バリアントを運搬する宿主細胞の単一コロニーを選択しかつアンピシリンおよびカナマイシンを含有する15mLのLB培地中37℃で15時間増殖させる。
【0096】
B.選択された密度までの宿主細胞の培養
バリアント大腸菌(E.coli)宿主細胞を96ウェルプレートに蒔き、各プレートは異なるバリアントを含有する。ウェル中の各大腸菌(E.coli)を、巨大分子バリアントの発現を抑制するがしかし宿主細胞の周辺質に蓄積するDT−E148Sの発現を許容するため0.2%D−グルコースを補充されているLB培地中で培養する。宿主細胞が1.0のOD595という選択された細胞密度に達する場合に、大腸菌(E.coli)宿主細胞を収集しかつ培地を捨てる。
【0097】
C.宿主細胞の透過処理
各ウェル中の細胞を酸性緩衝液(コハク酸ナトリウム)に再懸濁してpHを約5.0に約5分間低下させる。理論により拘束されることを願わず、酸性培地が、宿主細胞を完全に溶解することを伴わずに細胞膜にそれが挿入しかつその完全性を破壊することを可能にする周辺質のDT−E148S分子中のコンホメーション変化を誘導する。細胞膜のこの破壊がそれにより、小分子量化合物例えば約50ないし2000ダルトンの小分子の膜を通る輸送を可能にする。
【0098】
D.巨大分子の製造
透過処理が生じた後に、各ウェル中の酸性緩衝液をLB、ならびに、rhaTプロモーターを誘導するL−ラムノースならびに透過処理された細胞の代謝および膜を破壊された細胞中でのタンパク質5−α還元酵素の産生に必要とされる他の小分子化合物を包含する栄養素カクテルと交換する。これらの分子は破壊された細胞膜を通り輸送し得る大きさのものである。この場合のこうした成分はATP、アミノ酸およびリボヌクレオチドを包含し、これを約1mMの濃度で添加する。
【0099】
また破壊された細胞膜を通り輸送し得る、約0.01マイクロモル濃度ないし1mMの試験試薬すなわち小分子量化合物例えばフィナステリドもまた各ウェルに添加する。
【0100】
誘導された細胞を37℃で一夜保つ。細胞をペレットにしかつ溶解し、そして巨大分子タンパク質5−α還元酵素をクロマトグラフィータグを使用して精製する。試験試薬がタンパク質5−α還元酵素のバリアントを結合することが可能であった場合、該試験試薬は質量分析により検出されることができる。質量分析は結合バリアントを同定するのにもまた使用することができる。
【0101】
本薬物スクリーニング方法は、当業者が、試験試薬に応答したバリアント巨大分子の正体を決定することを可能にする。
【0102】
本実験の別の態様において、同一巨大分子を各ウェル中で発現させるが、しかし、各ウェルは、どの試験試薬が該巨大分子を結合するかを同定するために異なる試験試薬と接触させる。
【実施例4】
【0103】
細胞透過性の測定
上の実施例のいずれについても、以下の既知かつ公表されている手順は、細胞透過処理剤の適用若しくは発現後に細胞膜の透過性の程度を試験するのに使用しうる一方法の一例である。これらの手順はとりわけO’KeefeとCollier、PNAS、86:343−6(1989)により詳細に記述されている。当業者は本明細書に記述される方法の最適化においてこれら若しくは同様の手順を使用しうる。
【0104】
細胞を顕微鏡で見て細胞が溶解されていないことを確認する。
【0105】
A.膜電位。
形質転換された大腸菌(E.coli)細胞を1.0のOD595までL培地中で増殖させる。細胞を遠心沈降しかつ1mlあたり3×10細胞の濃度まで2mMトリス・HCl/50mM NaCl、pH7.0に再懸濁する。各実験点について、細胞を50mM NaClを含有する多様なpH値の5mM緩衝液に1:10希釈する。この点から細胞を温度調節された磁気的に攪拌されるキュベット中で37℃に保つ。以下の緩衝液すなわちPipes(pH7.0および6.5)、Mes(pH6.0)ならびにクエン酸ナトリウム/コハク酸ナトリウム(pH5.5および5.0)を個々のキュベットに添加する。細胞(pH特異的緩衝液を含有する)を1minインキュベートし、そしてその後100mMトリス−HCl(pH7.5)にもたらす。1分後にヨウ化3,3’−ジプロピルチアジカルボシアニン(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)を1μg/mlの最終濃度まで添加する。シグナルが安定化した場合に測定される蛍光をpH7.0での蛍光により除算して相対蛍光を得る。蛍光は645nmでの励起および668nmでの測定を用いSLM AMINCO(イリノイ州アーバナ)SPF−500C蛍光分光計で測定する。双方のスリットを5mmに設定する。
【0106】
B.プロリン輸送。
無カリウムM9培地(リン酸ナトリウムをリン酸カリウムの代わりに用いる)中で一夜増殖させた細胞を同一培地で1:100希釈する。5hr増殖させた後に該細胞を1.0のOD595まで増殖培地に再懸濁する。0.1mLの細胞を、4.8μCi(1Ci=37GBq)のL−[2,3,4,5−H]プロリンを含有する多様なpH値(上と同一)の1.9mlの20mM緩衝液に添加する。37℃で10min後に該細胞をMillipore HAフィルターで濾過し、そして5mlの無カリウムM9塩で洗浄する。フィルターを乾燥しかつOCS(Amersham)に溶解し、そして放射活性をシンチレーションカウンターで測定する。
【0107】
C.86Rb流出。
細胞を輸送アッセイについてのとおり増殖させる。1.0のOD595まで再懸濁した後に該細胞を86RbCl(20μCi/ml)の存在下37℃で1hrインキュベートする。0.1mlの細胞をその後多様なpH値の1.9mlの20mM緩衝液(上と同一)に添加しそして37℃で10minインキュベートする。該細胞をその後、洗浄緩衝液に前浸漬されたMillipore HAフィルターで濾過する。フィルターを10mM
RbClを補充された5mlのM9塩で洗浄しかつ乾燥し、そして放射活性をガンマカウンターで測定する。
【0108】
D.膜透過の測定
上のアッセイのいずれかでの95%超の活性の低下は、本明細書に記述される方法により、細胞膜が、該膜の完全な溶解を伴わずに小分子量化合物の輸送に十分に透過処理されたことを示す。
【0109】
上の明細で引用された全部の文書は引用することにより本明細書に組み込まれる。本発明は特定の態様および実施例に関して記述された一方、改変が本発明の技術思想から離れることなくなされ得ることが評価される。例えば、当業者は、とりわけ、所望の特性をもつ試験試薬を同定するために本発明の宿主細胞および方法を使用する、他のin situ薬物スクリーニングプロトコル、他の巨大分子、他の栄養素カクテルおよび検出アッセイを容易に選択しうる。
【0110】
こうした改変は付属として付けられる請求の範囲の範囲内にあることを意図している。