(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719444
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】内燃機関の燃料噴射システム
(51)【国際特許分類】
F02M 55/00 20060101AFI20150430BHJP
F02M 59/34 20060101ALI20150430BHJP
F02M 59/44 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
F02M55/00 B
F02M55/00 C
F02M59/34
F02M59/44 V
F02M59/44 W
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-534230(P2013-534230)
(86)(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公表番号】特表2013-545914(P2013-545914A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2011066410
(87)【国際公開番号】WO2012062508
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2013年4月23日
(31)【優先権主張番号】102010043531.7
(32)【優先日】2010年11月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】ザッシャ アンブロック
【審査官】
赤間 充
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許発明第10154133(DE,C1)
【文献】
特開平11−257188(JP,A)
【文献】
特表2003−515701(JP,A)
【文献】
特開2007−239684(JP,A)
【文献】
特表2012−531557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00〜71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧燃料ポンプ(3)を含み、その高圧領域(5)の前に調量ユニット(7)が接続され、該調量ユニットが貯留容器(2)から搬送される燃料量を供給管(8)を介して前記高圧領域(5)に調量して供給し、前記供給管(8)から、ベンチュリー絞り(19)の狭隘個所(20)の領域で還路(14)に開口しているゼロデリベリ管(18)が分岐している内燃機関用燃料噴射システムにおいて、
前記ベンチュリー絞り(19)が、供給部(21)に、および/または、前記狭隘個所(20)への開口部分に、それぞれ1つのフィルタ(22,23)を有しており、
燃料を前記貯留容器(2)から前記高圧燃料ポンプ(3)の低圧領域(4)と前記調量ユニット(7)の供給部(6)とへ搬送する搬送ポンプ(1)が設けられていて、
前記調量ユニット(7)の供給部(6)から、オーバーフロー弁(12)のオーバーフロー管(11)が分岐していて、
前記オーバーフロー弁(12)が、前記オーバーフロー管(11)内の第1の圧力レベル以降、戻し管(13)を介して前記搬送ポンプ(1)の供給管(15)へ返送し、第2の圧力レベル以降、前記還路(14)へ逆送することを特徴とする前記燃料噴射システム。
【請求項2】
前記それぞれ1つのフィルタ(22,23)がメッシュスクリーンであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項3】
前記それぞれ1つのフィルタ(22,23)がレーザーで作製したスクリーンであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項4】
前記戻し管(13)の開口部と前記搬送ポンプ(1)の供給部との間に絞り個所(16)が設けられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の燃料噴射システム。
【請求項5】
前記搬送ポンプ(1)が歯車ポンプであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の燃料噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧燃料ポンプを含み、その高圧領域の前に調量ユニットが接続され、該調量ユニットが貯留容器から搬送される燃料量を供給管を介して前記高圧領域に調量して供給し、前記供給管から、ベンチュリー絞りの狭隘個所の領域で還路に開口しているゼロデリベリ管が分岐している内燃機関用燃料噴射システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近代のディーゼルエンジンの燃料噴射システムは、今日では主にコモンレール噴射システムとして構成されている。この種のシステムでは、高圧状態にある燃料はシリンダの個々の燃料噴射器によって蓄圧器から取り出され、蓄圧器には、高圧燃料ポンプの高圧領域を介して、高圧状態にある燃料の適当量が供給される。通常は、高圧燃料ポンプの高圧領域の手前に調量ユニットが接続され、該調量ユニットはディーゼルエンジンのそれぞれの作動点で必要な燃料量を調量し、その結果必要量の燃料のみが高圧へ圧縮されて高圧蓄圧器内へ搬送される。しかしながら、特定の作動状態では、高圧蓄圧器に搬送される燃料量がゼロでなければならない。いわゆるゼロデリベリの場合には、高圧燃料ポンプの高圧領域にはもはや調量ユニットを介して燃料が供給されない。しかし、漏れのために、調量ユニットを介して少量の燃料が流動することを完全に抑止することはできない。この理由から、通常は、供給管から高圧燃料ポンプの高圧領域へゼロデリベリ管が分岐し、該デリベリ管を介してこの漏れ量を還路内へ逆送することができる。
【0003】
特許文献1からは、高圧燃料ポンプの高圧領域の手前に調量ユニットが接続されている、この種の内燃機関の燃料噴射システムが知られている。この調量ユニットを介して、その都度圧縮されて高圧蓄圧器へ搬送される燃料量が高圧領域に配分される。この場合調量ユニットには、手前に接続した搬送ポンプを介して貯留容器から低圧状態にある燃料が供給されるが、燃料は調量ユニットに至る前にフィルタユニットを介して案内される。この場合、調量ユニットの供給部からは、オーバーフロー弁を備えたオーバーフロー管と、潤滑剤絞りを備えた潤滑剤管とが分岐している。潤滑剤管により、潤滑と冷却とのために、高圧燃料ポンプの低圧領域に、低圧状態にある燃料が供給される。調量ユニットによる搬送率が低い場合にもまたはゼロデリベリの場合にも調量ユニット手前の圧力を一定に保持するために、オーバーフロー弁とこの中に設けられて弾性力で荷重されているピストンとを介して燃料を特定の圧力レベル以降に燃料噴射システムの還路へ搬送させることができる。
【0004】
さらに、高圧燃料ポンプの高圧領域へ至る調量ユニットの供給管の側には、該供給管から分岐したゼロデリベリ管が設けられ、ゼロデリベリの場合には、それにもかかわらず調量ユニットを介して流動してくる漏れ量をゼロデリベリ管を介して還路内へ搬送することができる。高圧領域の吸込み弁の開弁圧を可能な限り低くするため(このことは、作動中にこれら吸込み弁が比較的早期に開弁する点、および、これと並行してポンプの作動室へ比較的多量の燃料を搬送可能にする点に関して望ましい)、還路内へのゼロデリベリ管の開口部はベンチュリー絞りのように構成されている。この場合、ゼロデリベリ管はこのベンチュリー絞りの狭隘部の領域で還路に開口している。これによって、ゼロデリベリの場合およびその際に燃料がオーバーフロー弁と還路とを介して流動する場合に、ベンチュリー絞り内部の狭隘部の領域に負圧が発生し、この負圧を介して漏れ量がゼロデリベリ管から還路内へ吸い込まれることが達成される。結果的に、ゼロデリベリ管内の圧力はベンチュリー絞りのないシステムに比べて著しく低くなり、その結果望ましくない開弁と高圧領域内への漏れ量の流入とが発生せずに、高圧領域の吸込み弁の開弁圧をより低く選定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第10154133C1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記技術水準から出発して、ゼロデリベリ管の領域での故障発生度が減少している内燃機関の燃料噴射システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の前文から出発して、該請求項1の特徴ある構成要件との関連で解決される。これに続く従属項は本発明のそれぞれの有利な他の構成を示している。
【0008】
本発明は、ベンチュリー絞りが、供給部に、および/または、狭隘部への開口部分に、それぞれ1つのフィルタを有しているという技術的教義を含んでいる。フィルタをベンチュリー絞りの狭隘部手前の供給部、ベンチュリー絞りの狭隘個所への開口部分、或いは、両領域に設けることにより、ベンチュリー絞りに粒子が取り込まれる危険を著しく減少させることができる。というのは、この領域ではベンチュリー絞りの流動径は通常0.1mmないし2mmであり、その結果そこでは粒子が固着し、還路を詰まらせることがあるからである。戻し管が詰まることで、機能が損なわれる。これに対し、本発明に従って少なくとも1つの微細フィルタを設けることにより、粒子取り込みによる故障発生度が著しく少なくなる。
【0009】
これとは異なり、前記特許文献1に記載の燃料噴射システムの場合には、粒子によってベンチュリー絞りが塞がれるために故障が発生することがある。なるほど、調量ユニットおよびオーバーフロー弁の手前に接続されているフィルタによって貯留容器からの粒子が制止されるものの、その後に取り込まれる粒子は除去されない。
【0010】
本発明の他の構成では、それぞれ1つのフィルタはメッシュスクリーンである。これとは択一的に、それぞれ1つのフィルタはレーザーで作製したスクリーンである。両ケースとも、製造コストの低い微細フィルタを構成できる。
【0011】
本発明の1つの構成に対応して、燃料を貯留容器から高圧燃料ポンプの低圧領域と調量ユニットの供給部とへ搬送する搬送ポンプが設けられている。この構成により、調量ユニットにも高圧燃料ポンプの低圧領域にも十分な燃料が供給される。この場合、有利には、調量ユニットの供給部から、オーバーフロー弁のオーバーフロー管が分岐している。この処置により、調量ユニットが調量を行うので、搬送ポンプによって一定に提供される燃料量の過剰部分はオーバーフロー弁を介して戻すことができる。有利には、オーバーフロー弁は、この過剰部分を、オーバーフロー管内の第1の圧力レベル以降、搬送ポンプの供給管へ返送し、第2の圧力レベル以降、還路へ逆送する。これにより、まず搬送ポンプ手前へ戻し、戻し量がこれよりも大きくなったときにはじめて、貯留容器に通じる還路へ搬送させる。これにより、漏れが発生しても、戻し管および貯留容器への燃料の応力除去と、これに引き続き新たに行われる低圧への圧縮とにより、漏れを少なくさせることができる。
【0012】
本発明の他の構成では、戻し管の開口部と搬送ポンプの供給部との間に絞り個所が設けられている。これには、戻し管が搬送ポンプの供給管に開口しているために発生する、搬送ポンプの供給部手前での圧力変動を、十分に減少させることができるという利点がある。
【0013】
本発明の他の有利な構成によれば、搬送ポンプは歯車ポンプである。これによって搬送ポンプの堅牢で信頼性のある実施を実現することができる。
【0014】
次に、本発明を改善する他の解決手段を、図面を用いた本発明の有利な実施形態の説明とともに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の有利な1実施形態による本発明による燃料噴射システムの図である。
【
図2】
図1の燃料噴射システムのベンチュリー絞りの領域の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本発明の有利な実施形態による内燃機関の本発明による燃料噴射システムが図示されている。この実施形態では、有利には歯車ポンプとして実施されている搬送ポンプ1を介して、燃料の形態の流体が貯留容器2から吸い込まれ、低圧領域4と高圧領域5とから構成されている高圧燃料ポンプ3へ搬送される。燃料は(ここではブラックボックスとして図示されているにすぎない)低圧領域4を通過して、可動部材の潤滑および冷却に用いられる。これに続いて燃料は調量ユニット7の供給部6に達する。調量ユニットは内燃機関の作動のために要求される需要に応じて燃料量を調量し、供給管8とその中に配置されている吸込み弁9とを介して(同様に詳細に図示していない)高圧領域5へ供給される。その後、供給された燃料は高圧領域5の内部で当業者に公知の態様で高圧に圧縮され、(ここでは一部しか図示していない)蓄圧器10に供給され、高圧のもとにある燃料は該蓄圧器から内燃機関の作動のために取り出すことができる。
【0017】
さらに
図1からわかるように、調量ユニット7の供給部6から、オーバーフロー弁12を内設したオーバーフロー管11が分岐している。このオーバーフロー弁12は(ここでは図式的に示唆した)ピストンを有し、該ピストンは、オーバーフロー管11内の圧力が第1の圧力レベルに達して以降に、オーバーフロー管11から戻し管13への燃料の流動を可能にし、さらにオーバーフロー管11内の圧力が第2の圧力レベルに達して以降に、貯留容器2に通じる還路14への流動を可能にする。この場合オーバーフロー弁12のピストンは、ばねと戻し管13内で支配的な圧力とによって後方へ荷重されているが、これとは択一的に、還路14との対応的な関連で、前記ばねと還路14内で支配的な圧力とによる後方荷重も考えられる。戻し管13は搬送ポンプ1の供給管15に開口し、その結果オーバーフロー管11内の圧力が第1の圧力レベルに達して以降は、まず供給管15への戻しが行われ、オーバーフロー管11内の圧力がさらに上昇すると、貯留容器2に通じる還路14への戻しも行われる。なお、オーバーフロー管11内の圧力が上昇するのは、搬送ポンプ1によってほぼ一定量の燃料が調量ユニット7へ搬送されるが、該調量ユニットは内燃機関の作動にその都度必要な一部のみを高圧領域5へ転送するからである。
【0018】
最初に、低圧状態にある燃料を戻し管13を介して搬送ポンプ1の供給管15に戻すことにより、燃料噴射システムのロスを低減させることができる。その際の搬送ポンプ1の供給領域における圧力変動を可能な限り少なくするため、戻し管13の開口部と搬送ポンプ1の供給部との間に絞り個所16が設けられている。管路14には、さらに、高圧燃料ポンプ3の低圧領域4から来ている排出管17も開口している。
【0019】
さらに
図1からわかるように、調量ユニット7の後方では、供給管8から高圧領域5へゼロデリベリ管18が分岐している。このゼロデリベリ管18を介して、燃料高圧発生を行うべきでない作動状態の場合に、従って高圧領域5への燃料の供給を行うべきでない作動状態の場合に、調量ユニット7を介して発生する不可避の漏れ量が排出される。漏れ量が排出されなければ、この漏れ量は供給管8内に集積し、特定の量が集積してこれと同時に圧力が生じて以降、吸込み弁9を開弁させ、よって高圧領域5内へ流入することがある。このゼロデリベリ管18は還路14に開口し、この場合還路14はこの開口領域に、
図2に詳細に図示したベンチュリー絞り19を有している。
【0020】
図2からわかるように、ゼロデリベリ管18はベンチュリー絞り19の狭隘個所20で開口している。これにより、調量ユニット7を介してのゼロデリベリの場合に(これは、結果的に、適当量の燃料をオーバーフロー弁12を介して流動させ、よって還路14を介しても流動させる)、管路14内を流動している燃料とこれによって生じるベンチュリー効果とのために、ゼロデリベリ管18からの漏れ燃料が狭隘個所20の領域での負圧形成によって還路14内へ吸い込まれることが達成される。これによってゼロデリベリ管18が好適に空にされ、その結果高圧領域5手前での吸込み弁9の開弁圧を低下させることができるので有利である。
【0021】
本発明による燃料噴射システムの特徴は、ベンチュリー絞り19の供給部21と、狭隘個所20への開口部分とに、それぞれ1つの微細フィルタ22,23を有していることである。これらのフィルタ22と23はそれぞれメッシュスクリーンまたはレーザーで作製したスクリーンとして実施されていてよい。両フィルタ22と23により、ベンチュリー絞り19の狭隘個所20の領域への粒子の取り込みを効果的に阻止することができる。もしそうでなければ、還路14が詰まり、よって内燃機関の燃料噴射システムの機能が著しく阻害されることになる。
【0022】
従って、本発明による構成により、内燃機関の燃料噴射システムの故障発生度を著しく減少させることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 搬送ポンプ
2 貯留容器
3 高圧燃料ポンプ
4 低圧領域
5 高圧領域
6 供給部
7 調量ユニット
8 供給管
11 オーバーフロー管
12 オーバーフロー弁
13 戻し管
14 還路
15 供給管
16 絞り個所
18 ゼロデリベリ管
19 ベンチュリー絞り
20 狭隘個所
21 供給部
22、23 フィルタ