特許第5719477号(P5719477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5719477-鋼線焼戻し液拭取り装置 図000002
  • 特許5719477-鋼線焼戻し液拭取り装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719477
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】鋼線焼戻し液拭取り装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/46 20060101AFI20150430BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20150430BHJP
   C21D 9/52 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   C21D1/46 E
   C21D1/46 H
   C21D1/18 P
   C21D9/52 103Z
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-513883(P2014-513883)
(86)(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公表番号】特表2014-522448(P2014-522448A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】CN2011084705
(87)【国際公開番号】WO2013097081
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2013年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】513286133
【氏名又は名称】シャンドン ダイ エイ シーオー.,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トウ ヨウ
【審査官】 鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第201447500(CN,U)
【文献】 特開平02−197529(JP,A)
【文献】 特開2008−050645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/02−1/84
C21D 9/52−9/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻を含む鋼線焼戻し液拭取り装置であって、外殻を含み、前記外殻の内壁に保温層が
設置され、前記外殻の中に拭取り空洞部が設置され、焼戻し後の鋼線が前記拭取り空洞部
を通過するための入口と出口が前記外殻の壁に設置され、前記拭取り空洞部の中に拭取り
繊維台が設置され、前記拭取り繊維台に団塊状の焼戻し液拭取り繊維が取り付けられ、前
記焼戻し液拭取り繊維は耐高熱繊維であり、前記焼戻し後の鋼線は焼戻し液拭取り繊維を
通過し、前記拭取り繊維台の底部に焼戻し液の回収装置が設置され、前記外殻の中に加熱
装置が設置されることを特徴とする鋼線焼戻し液拭取り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼線焼戻し液拭取り装置であって、
前記焼戻し液拭取り繊維は、耐高熱炭素繊維、石英ガラス繊維、高シリコンガラス繊維
と珪酸アルミニウムの中の1種以上の組み合わせである。
【請求項3】
請求項2に記載の鋼線焼戻し液拭取り装置であって、
前記焼戻し液拭取り繊維の軟化温度は650℃以上である。
【請求項4】
請求項3に記載の鋼線焼戻し液拭取り装置であって、
前記焼戻し液は水酸化ナトリウムである。
【請求項5】
請求項4に記載の鋼線焼戻し液拭取り装置であって、
前記保温層は前記外殻の内壁にある断熱層を有し、前記断熱層の内壁に耐熱層がある。
【請求項6】
請求項5に記載の鋼線焼戻し液拭取り装置であって、
前記拭取り繊維台の焼戻し液拭取り繊維を支持する子台は最低2個含まれ、前記子台に
前記焼戻し液拭取り繊維が置かれている。
【請求項7】
請求項6に記載の鋼線焼戻し液拭取り装置であって、
前記加熱装置は、前記拭取り繊維台を取り巻く電熱線を含む。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の鋼線焼戻し液拭取り装置であって、
前記焼戻し液の回収装置は、前記拭取り繊維台の下部の積液器を含み、前記外殻に前記
積液器とつながっている焼戻し液の出口が設置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼線表面処理装置、とりわけ鋼線の焼戻しに使用される焼戻し液を除去する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤビードは高強度で、高強靱性、疲労に耐える性能及び優れた直線性を有する。タイヤビードは、主にタイヤの縁に、増強用骨格材料として利用され、一般に、炭素鋼製線材から作られる。タイヤビードの錆を防ぎ、耐熱耐老化性能を高め、タイヤビードとゴムとの結合力をより強化するために、タイヤビードを構成する鋼線として、青銅めっきが施された鋼線が用いられる。鋼線を青銅めっきする前には、鋼線の表面に対して、通常のめっき処理を施す必要がある。めっき処理の前に行う鋼線の表面処理は非常に重要であり、鋼線を焼戻して応力を除去する処理、および、鋼線表面の水洗処理が必要である。タイヤビード表面の清潔度は、めっき層の品質に関わるものである。
【0003】
現在のダイヤビードの鋼線生産業界では、鋼線の応力を取り除くために、熱処理工程において、主に高温鉛ポットを用いた焼戻しを行っている。この焼戻し工程で使用される鉛は揮発しやすく、空気を汚染する。また、コストもかかる。そこで、高温鉛液の代わりに、高温溶解した水酸化ナトリウムを用いる焼戻し技術が提案された。水酸化ナトリウムを用いる方法は、鉛を用いる方法よりもコストを低く抑えることができる。しかしながら、焼戻し中に、水酸化ナトリウムが鋼線の表面に付着しやすい。また、焼戻し後、鋼線に付着した水酸化ナトリウムは凝固する。このため、後の水洗工程において、鋼線表面の水酸化ナトリウムを回収することができず、水酸化ナトリウムの消耗が多くなる。このように、水酸化ナトリウムを用いる方法は、水酸化ナトリウムの消耗と、後の水洗工程での清浄効果に影響を与えている。これらのことも、水酸化ナトリウムを用いた焼戻し技術が普及していない重要な原因の1つである。従来の拭取り工具を使用すると、温度が下がるにしたがって、鋼線表面のアルカリ液が拭取り工具に付着して凝固してしまう。このため、工具を長期にわたって使用することができなくなる。また、従来の方法では、鋼線表面に付着し、凝固した水酸化ナトリウムを除去することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決する技術課題は、鋼線表面の付着物を有効に除去することが可能な鋼線焼戻し液拭取り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術課題を解決するために、本発明の技術方案は以下の通りである。
【0006】
鋼線焼戻し液拭取り装置であって、外殻を含み、前記外殻の内壁に保温層が設置され、前記外殻の中に拭取り空洞部が設置され、焼戻し後の鋼線が前記拭取り空洞部を通過するための入口と出口が前記外殻の壁に設置され、前記拭取り空洞部の中に拭取り繊維台が設置され、前記拭取り繊維台に団塊状の焼戻し液拭取り繊維が取り付けられ、前記焼戻し液拭取り繊維は耐高熱繊維であり、前記焼戻し後の鋼線は、焼戻し液拭取り繊維を通過し、前記拭取り繊維台の底部に焼戻し液の回収装置が設置され、前記外殻の中に加熱装置が設置されることを特徴とする鋼線焼戻し液拭取り装置である。
【0007】
最適な技術方案であって、前記焼戻し液拭取り繊維は、耐高熱炭素繊維、石英ガラス繊維、高シリコンガラス繊維と珪酸アルミニウムの中の1種以上の組み合わせである。
【0008】
最適な技術方案であって、前記焼戻し液拭取り繊維の軟化温度は650℃以上である。
【0009】
最適な技術方案であって、前記焼戻し液は水酸化ナトリウムである。
【0010】
最適な技術方案であって、前記保温層は前記外殻の内壁に断熱層を有し、前記断熱層の内壁に耐熱層がある。
【0011】
最適な技術方案であって、前記拭取り繊維台の焼戻し液拭取り繊維を支持する子台は最低2個含まれ、前記子台に前記焼戻し液拭取り繊維が置かれている。
【0012】
最適な技術方案であって、前記加熱装置は、前記拭取り繊維台を取り巻く電熱線が含まれている。
【0013】
最適な技術方案であって、前記アルカリ液回収装置は、前記拭取り繊維台の下の積液器を含み、前記外殻に前記積液器とつながっている焼戻し液の出口が設置されている。
【0014】
前記技術方案を採用する鋼線焼戻し液拭取り装置は、外殻を含み、前記外殻内壁に保温層が設置され、焼戻し後の鋼線が前記拭取り空洞部を通過するための入口と出口が前記外殻の壁に設置され、前記拭取り空洞部に拭取り繊維台が設置され、前記拭取り繊維台に団塊状の焼戻し液拭取り繊維が取り付けられている。前記焼戻し液拭取り繊維は耐高熱繊維であり、前記焼戻し後の鋼線は、焼戻し液拭取り繊維を通過する。前記拭取り繊維台の底部に、焼戻し液の回収装置が設置されている。前記外殻の中に加熱装置がある。鋼線は高熱焼戻し炉から鋼線焼戻し液拭取り装置に導入される。鋼線面にある水酸化ナトリウムが液状を維持できるように、加熱装置により、拭取り空洞部の温度が維持されている。鋼線が焼戻し液拭取り繊維を通過することにより、液状の水酸化ナトリウムが拭取られ、アルカリ液回収装置に流入する。鋼線とともに焼戻し炉から流出するアルカリ液を回収し、アルカリ液の浪費を回避する。また、鋼線に付着したアルカリ液が、後の水洗工程にもたらす影響を回避する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る構成図である。
図2図1におけるA−A方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面と実施例を参照して、より具体的に本発明について述べる。以下の詳細な説明において、ただ説明という形で、本発明の一実施例について述べる。本発明が属する技術分野の一般的な技術者にとって、本発明は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。そのため、本質的には図面も詳細な説明も、本発明を説明するためのものであり、特許請求の範囲の保護範囲を制限するものではない。
【0017】
図1図2に示すように、鋼線焼戻し液拭取り装置は、外殻1を含み、前記外殻1の内壁に保温層が設置され、前記保温層は、前記外殻1の内壁に緊密に接する断熱層2を有し、前記断熱層2に耐熱層3が設置されている。
【0018】
前記外殻1に拭取り空洞部5があり、焼戻し後の鋼線が前記空洞部5を通過するための入口9と出口10が前記外殻1に設けられている。鋼線の出口10と鋼線の入口9の数量は、具体的な状況により決まるものであり、図2に示すように、本実施例では、20の鋼線の入口9と20の鋼線の出口10が設置されている。
【0019】
前記焼戻し液は水酸化ナトリウム溶液であり、つまり焼戻し液は高温溶解状態のアルカリ液である。前記拭取り空洞部5に拭取り繊維台12が設置され、前記拭取り繊維台12には、団塊状の焼戻し液拭取り繊維6が設置されている。前記焼戻し液拭取り繊維6は耐高熱繊維であり、焼戻し後の鋼線は焼戻し液拭取り繊維6を通過する。前記焼戻し液拭取り繊維6の軟化温度は650℃以上であり、前記焼戻し液拭取り繊維6は耐高熱炭素繊維、石英ガラス繊維、高シリコンガラス繊維と珪酸アルミニウムの中の1種以上の組み合わせである。前記拭取り繊維台12の焼戻し液拭取り繊維6を支持する子台は、最低2個含まれ、前記子台に前記焼戻し液拭取り繊維6が置かれている。図1に示すように、焼戻し液拭取り繊維6の数量は具体的な状況によって決まる。本実施例では、4つの拭取り繊維台12が設置され、4つの焼戻し液拭取り繊維6が設置されている。鋼線が焼戻し液拭取繊維6を通過する途中で、拭取り繊維台12の焼戻し液拭取り繊維6が、鋼線によって元来の位置から離れて形が変わらないようになっている。
【0020】
加熱装置は、前記拭取り繊維台12を取り巻く電熱線4を含む。
【0021】
前記拭取り繊維台12の下に、アルカリ液回収装置が設置されている。前記アルカリ液回収装置は、前記拭取り繊維台12の下方の積液器7を有している。前記積液器7は、前記外殻1と前記保温層の焼戻し液出口8を介して、回収されたアルカリ液を鋼線焼戻し炉に流す。
【0022】
稼働原理
鋼線は、焼戻し炉で焼戻された後、鋼線焼戻し液拭取り装置の中に入る。図1図2に示すように、鋼線は鋼線入口9から拭取り空洞部5に入る。そして、鋼線が焼戻し液拭取り繊維6を通過することで、鋼線表面に付着しているアルカリ液が、焼戻し液拭取り繊維6によって拭取られる。アルカリ液が焼戻し液拭取り繊維6に、一定程度量蓄えられ、徐々に焼戻し液拭取り繊維6から拭取り繊維台12の下の積液器7に垂下する。積液器7のアルカリ液は、焼戻し液出口8を通過し、焼戻し炉に還元される。これにより、鋼線とともに焼戻し炉から流出したアルカリ液を回収して利用することができ、コストが節約される。鋼線表面のアルカリ液は凝固しやすく、拭取りにくい。このため、アルカリ液を液状に維持するために、拭取り空洞部5は、高い温度に昇温されていることが必要である。そこで、拭取り空洞部5の内部には、電熱線4が設置され、鋼線焼戻し液拭取り装置の熱電対11によって、拭取り空洞部5の温度が設定閾値よりも低いことが観察されたときには、電熱線4を加熱する。空洞部5の温度が標準温度に達すると、電熱線4の加熱を停止する。
【0023】
以上、本発明の基本原理、主要な特徴、及び本発明の利点を説明した。本業界の技術者は、本発明を理解することができる。本発明は、前記実施例に制限されるものではなく、前記実施例と明細書の説明は、ただ本発明の原理を説明するためだけのものである。本発明の精神と範囲を逸脱しない範囲で、本発明をさらに様々に変化させ、改善を行うことができる。これらの変化と改善は、本発明の特許請求範囲に含まれる。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって定義される。
【符号の説明】
【0024】
1 外殻
2 断熱層
3 耐熱層
4 電熱線
5 拭取り空洞部
6 焼戻し液拭取り繊維
7 積液器
8 焼戻し液出口
9 鋼線入口
10 鋼線出口
11 熱電対
12 拭取り繊維台
図1
図2