(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水分散型粘着剤組成物に含まれる樹脂成分が(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、およびシリコン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1から5のいずれかに記載の積層光学フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内の位相差値(Re[λ])は、23℃で波長λ(nm)におけるフィルム(層)の面内の位相差値をいう。Re[λ]は、フィルム(層)の厚みをd(nm)としたとき、Re[λ]=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)R45[λ]は、23℃で波長λ(nm)における層(フィルム)の法線方向から45°傾斜させて測定した位相差値をいう。
(4)厚み方向の複屈折率(Δnxz)は、23℃で波長590(nm)におけるフィルム(層)厚み方向の複屈折率をいう。Δnxz=nx−nzによって求められる。
(5)厚み方向の位相差値(Rth[λ])は、23℃で波長λ(nm)におけるフィルム(層)の厚み方向の位相差値をいう。Rth[λ]は、フィルム(層)の厚みをd(nm)としたとき、Rth[λ]=(nx−nz)×dによって求められる。
【0010】
A.積層光学フィルムの全体構成
図1は、本発明の好ましい実施形態による積層光学フィルム10の概略断面図である。積層光学フィルム10は、基材11と位相差層12と下塗り層13と偏光板14とをこの順に有する。位相差層12は、無機層状化合物を含む水分散型粘着剤組成物で形成されている。水分散型粘着剤組成物を用いることにより、無機層状化合物を良好に製膜することができ、得られた位相差層は極めて優れた光学補償機能を有する。また、得られた位相差層は粘着剤層としても機能する。通常、粘着剤層は有機溶剤系の粘着剤で形成されるが、水分散型粘着剤組成物を用いることにより、環境負荷や溶剤コストの削減に寄与する。積層光学フィルム10において、偏光板14と位相差層12との間に下塗り層13が設けられている。下塗り層13を設けることにより、位相差層12と偏光板14との接着力(投錨力)を向上させることができる。図示しないが、本発明の積層光学フィルムは他の位相差層(フィルム)をさらに有していてもよい。以下、各層について説明する。
【0011】
A−1.位相差層
上記位相差層は、上述のとおり、無機層状化合物を含む水分散型粘着剤組成物で形成される。無機層状化合物の具体例としては、粘土系鉱物を挙げることができる。粘土系鉱物は、シリカの4面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を有する2層構造よりなるタイプと、シリカの4面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を両側からサンドイッチした3層構造よりなるタイプに分類される。前者としては、カオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者としてはイオン交換カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ナトリウム4珪素雲母、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、スメクタイト族である。スメクタイト族を用いることにより、透明性により優れた位相差層を得ることができる。
【0012】
上記無機層状化合物は、好ましくは、有機化合物と複合化(疎水化)処理されている。例えば、上記粘土系鉱物は、通常、その表面にSi−O、Si−OHあるいはAl−OHの酸素原子または水酸基が存在し、結晶層間は交換性陽イオンとその水和イオンで占められている。この酸素原子や水酸基と有機化合物を反応させる方法や、交換性陽イオンを有機陽イオンと交換する方法により、有機化合物と複合化することができる。このような処理によって、粘土系鉱物が後述する分散液に配合されたときに、粘土系鉱物の層間にモノマー成分を浸入させて、粘土系鉱物を膨潤させて、粘土系鉱物を確実に分散させることができる。また、透明性に極めて優れた位相差層が得られ得る。
【0013】
上記有機化合物としては、例えば、アミン化合物等が挙げられる。アミン化合物としては、例えば、4級アンモニウム化合物、尿素、ヒドラジン、ドジテルピリジニウム等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、4級アンモニウム化合物である。陽イオン交換を容易に行うことができるからである。4級アンモニウム化合物は、陽イオンとして導入され得る。このような陽イオンとしては、ジメチル・ジオクタデシル・アンモニウムイオン、ジメチル・ベンジル・オクタデシル・アンモニウムイオン、トリオクチル・メチル・アンモニウムイオンなどのようにアルキル基やベンジル基を有したものや、メチル・ジエチル・ポリオキシプロピレン(重合度:25)・アンモニウムイオンなどのように長鎖の置換基を有したものなどが例示される。
【0014】
上記有機化合物と複合化された粘土系鉱物としては、市販品をそのまま用いることができる。市販品としては、例えば、ルーセンタイトシリーズ(コープケミカル社製)が用いられ、より具体的には、ルーセンタイトSPN、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSTNなどが挙げられる。
【0015】
無機層状化合物の各層の厚みは、例えば、0.5〜2nm、具体的には、約1nmである。各層の長さ(最大長さ)は、好ましくは、100nm以下、さらに好ましくは、60nm以下である。各層の長さが100nmを超える場合には、透明性の低下や重合安定性の低下を生じる場合がある。
【0016】
無機層状化合物の配合割合は、後述するモノマー成分100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは30〜180重量部、特に好ましくは40〜150重量部である。具体的には、形成された位相差層における無機層状化合物の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは30〜180重量部、特に好ましくは40〜150重量部である。このような割合で配合することにより、優れた光学補償機能と粘着機能とを十分に兼ね備えた位相差層を得ることができる。無機層状化合物の配合量を調整することにより、所望の光学特性(例えば、厚み方向の複屈折率)を得ることができる。
【0017】
上記水分散型粘着剤組成物に含まれる樹脂成分としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、およびシリコン樹脂等が挙げられる。その中でも、柔軟性、接着性、および耐久性に優れた(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。さらに、反応性にも優れる点で、官能基を含有する(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。
【0018】
上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、任意の適切な(メタ)アクリル系モノマーが用いられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、好ましくは4〜18である。具体例としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、アクリル酸ブチルである。これらは、単独使用または併用することができる。例えば、アクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとを併用することができ、その配合割合(重量比)は、例えば、1/99〜55/45(アクリル酸ブチル/アクリル酸2−エチルヘキシル)、好ましくは、5/95〜60/40である。
【0019】
後述するように、上記(メタ)アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリル系モノマー以外の他の成分を構成成分とし得る。この場合、(メタ)アクリル系モノマーの配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、好ましくは60〜99重量部、さらに好ましくは70〜99重量部、特に好ましくは80〜99重量部である。
【0020】
上記(メタ)アクリル系樹脂の構成成分として、上記成分の他に、他の成分を用いることができる。他の成分としては、好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマー、リン酸基含有ビニルモノマーが用いられる。
【0021】
上記カルボキシル基含有ビニルモノマーを用いることにより、熱架橋させるための架橋点(カルボキシル基)を導入して、位相差層の基板に対する接着性を向上し得る。カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和ジカルボン酸モノエステル;2−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、2−メタクリロイルオキシエチルピロメリット酸などの不飽和トリカルボン酸モノエステル;カルボキシエチルアクリレート(β−カルボキシエチルアクリレートなど)、カルボキシペンチルアクリレートなどのカルボキシアルキルアクリレートなどが挙げられる。また、カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸などの不飽和ジカルボン酸無水物なども挙げられる。これらカルボキシル基含有ビニルモノマーは、単独使用または併用することができる。これらの中でも、好ましくは、アクリル酸やカルボキシエチルアクリレートである。
【0022】
カルボキシル基含有ビニルモノマーのカルボキシル基濃度は、モノマー成分中、例えば、0.05〜1.50ミリモル/g、好ましくは、0.20〜0.90ミリモル/gである。カルボキシル基含有ビニルモノマーのカルボキシル基濃度を、上記した範囲にするには、カルボキシル基含有ビニルモノマーの分子量にもよるが、カルボキシル基含有ビニルモノマーの配合割合を、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.4〜41重量部、好ましくは、1.4〜25重量部に設定する。また、カルボキシル基含有ビニルモノマーの配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、上記したカルボキシル基濃度の範囲内で、例えば、0.5〜15重量部、好ましくは、0.5〜10重量部に設定することもできる。上記した範囲より少ないと、水分散型粘着剤組成物の凝集力が低下する場合がある。上記した範囲より多いと、乳化重合時の安定性および水分散型粘着剤組成物の耐水性が低下する場合がある。
【0023】
なお、上記カルボキシル基含有ビニルモノマーのカルボキシル基濃度は、下記式により算出される。
カルボキシル基濃度[ミリモル/g]=1000×{(カルボキシル基含有ビニルモノマーの配合重量[g])/(カルボキシル基含有ビニルモノマーの分子量[g/モル])}/(モノマー成分重量[g])
【0024】
上記リン酸基含有ビニルモノマーは、例えば、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートリン酸エステルが挙げられる。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を、R
2はポリオキシアルキレン基を、Xはリン酸基またはその塩を示す。)
【0025】
上記R
2で示されるポリオキシアルキレン基は、下記一般式(2)で表される。
【化2】
好ましくは、一般式(2)中、nは1〜4の整数、mは2以上の整数を示す。R
2の具体例としては、ポリオキシエチレン基;ポリオキシプロピレン基;オキシエチレン基およびオキシプロピレン基のランダム、ブロックまたはグラフトユニットなどが挙げられる。オキシアルキレン基の重合度、すなわち、一般式(2)中、mは、好ましくは4以上、通常40以下である。オキシアルキレン基の重合度が高いほど、リン酸基を有する側鎖の運動性が高く、基板と迅速に相互作用し得、水分散型粘着剤組成物の基板への接着性が向上し得る。
【0026】
上記Xで示されるリン酸基またはその塩は、例えば、下記一般式(3)で表される。
【化3】
(一般式(3)中、M
1およびM
2は、それぞれ独立に、水素原子またはカチオンを示す。)
【0027】
上記カチオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム)などの無機カチオン;4級アミン類などの有機カチオンなどが挙げられる。
【0028】
上記リン酸基含有ビニルモノマーとしては、市販品をそのまま用いることができる。市販品としては、例えば、Sipomer PAM−100(ローディア日華社製)、Phosmer PE(ユニケミカル社製)、Phosmer PEH(ユニケミカル社製)、Phosmer PEDM(ユニケミカル社製)などのモノ[ポリ(エチレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル;Sipomer PAM−200(ローディア日華社製)、Phosmer PP(ユニケミカル社製)、Phosmer PPH(ユニケミカル社製)、Phosmer PPDM(ユニケミカル社製)などのモノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステルなどが挙げられる。
【0029】
リン酸基含有ビニルモノマーのリン酸基濃度は、モノマー成分中、例えば、0.01〜0.45ミリモル/g、好ましくは、0.02〜0.20ミリモル/gである。リン酸基含有ビニルモノマーのリン酸基濃度を、上記した範囲にするには、リン酸基含有ビニルモノマーの分子量にもよるが、リン酸基含有ビニルモノマーの配合割合を、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.4〜22重量部、好ましくは、0.8〜10重量部に設定する。また、リン酸基含有ビニルモノマーの配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、上記したリン酸基濃度の範囲内で、例えば、0.5〜20重量部、好ましくは、0.5〜10重量部に設定することもできる。上記した範囲より少ないと、基板への接着力向上の効果が十分に得られない場合がある。上記した範囲より多いと、後述する乳化重合時の安定性が低下したり、水分散型粘着剤組成物の弾性率が過度に高くなることにより接着性が低下したりする場合がある。
【0030】
なお、上記リン酸基含有ビニルモノマーのリン酸基濃度は、下記式により算出される。
リン酸基濃度[ミリモル/g]=1000×{(リン酸基含有ビニルモノマーの配合重量[g])/(リン酸基含有ビニルモノマーの分子量[g/モル])}/(モノマー成分重量[g])
【0031】
上記(メタ)アクリル系樹脂の構成成分として、上記以外の共重合性ビニルモノマーも用いることができる。共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有ビニルモノマー以外の官能基含有ビニルモノマーが挙げられる。具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有ビニルモノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカルボン酸アミドなどのアミド基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルt−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有不飽和モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有不飽和モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有不飽和モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有不飽和モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマーなどが挙げられる。
【0032】
さらに、上記官能基含有ビニルモノマーとしては、多官能性モノマーが挙げられる。多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマーやジビニルベンゼンなどが挙げられる。また、多官能性モノマーとして、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなども挙げられる。
【0033】
さらに、上記共重合性ビニルモノマーとしては、上記官能基含有ビニルモノマーの他に、例えば、スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族系ビニルモノマー;シクロペンチルジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有不飽和モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;塩化ビニルなどのハロゲン原子含有不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのビニル基含有複素環化合物;フッ素(メタ)アクリレートなどの、フッ素原子などのハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0034】
さらに、上記共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーが挙げられる。アルコキシシリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーや、シリコーン系ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0035】
上記シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン;(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0036】
上記シリコーン系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランや、ビニルジアルキルアルコキシシラン;ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシランなどのビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0037】
上記共重合性ビニルモノマーは、単独使用または併用することができる。上記共重合性ビニルモノマーの中でも、好ましくは、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーである。アルコキシシリル基含有ビニルモノマーを用いることにより、ポリマー鎖にアルコキシシリル基が導入され、それら同士の反応により架橋構造を形成することができる。特に水分散型粘着剤組成物では、後述する架橋剤では不均一な架橋構造となるため、端末剥がれが起こり易くなる。しかし、アルコキシシリル基含有モノマーを用いると、均一な架橋構造を形成することができるため、基板への接着固定性を向上させることができる。また、アルコキシシリル基が基板と相互作用して、基板との接着性を高めることができる。
【0038】
共重合性ビニルモノマーの配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、40重量部以下、好ましくは、30重量部以下、さらに好ましくは、20重量部以下である。また、共重合性ビニルモノマーが、官能基含有ビニルモノマーである場合には、その配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.5〜12重量部、好ましくは、1〜8重量部である。また、共重合性ビニルモノマーがアルコキシシリル基含有ビニルモノマーである場合には、その配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部、好ましくは、0.01〜0.1重量部である。アルコキシシリル基含有ビニルモノマーが、上記した範囲より少ないと、アルコキシシリル基による架橋が不足して、水分散型接着剤組成物の凝集力が低下したり、水分散型接着剤組成物と基板との接着性の向上が得られない場合がある。上記した範囲より多いと、乳化重合時の安定性低下や接着性の低下を招く場合がある。
【0039】
上記したモノマー成分のうち、上記したカルボキシル基含有ビニルモノマー、リン酸基含有ビニルモノマーおよび共重合性ビニルモノマーの総量は、その配合割合が、モノマー成分100重量部に対して、1〜40重量部、好ましくは、1〜30重量部である。
【0040】
上記水分散型粘着剤組成物は、好ましくは、上記無機層状化合物と上記樹脂成分を構成するモノマー成分を含む分散液を調製し、次いで、この分散液を乳化させて乳化液を調製し、次いで、この乳化液中のモノマー成分を重合させることにより調製する。
【0041】
上記分散液には、水に不溶性または難溶性で、モノマー成分に可溶性である疎水性化合物を配合させることもできる。疎水性化合物としては、例えば、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの炭素数8〜30の高級アルカン類;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの炭素数8〜30のアルキル基を有する高級アルコール類;ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの炭素数8〜30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;ラウリルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタンなどの炭素数8〜30のアルキル基を有するチオール類;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレートなどのポリマー類などが挙げられる。これら疎水性化合物は、単独使用または併用することができる。これらの中でも、好ましくは、高級アルカン類である。
【0042】
疎水性化合物の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、1〜30重量部である。疎水性化合物を分散液に配合させることにより、上記乳化液中の油滴を、後述するメジアン径に容易に調整することができる。
【0043】
分散液は、例えば、無機層状化合物とモノマー成分と必要により疎水性化合物とを混合し、これらの混合と同時に、または、混合の後に、例えば、ディスパー、ホモミサー、スターラーなどの攪拌装置により攪拌することにより調製する。これにより、無機層状化合物がモノマー成分中に分散され得る。
【0044】
上記乳化液は、例えば、上記した分散液と水と必要により乳化剤とを混合し、これらの混合と同時に、または、混合の後に、乳化装置により乳化させることにより調製する。
【0045】
上記乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。また、乳化剤としては、これらアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤に、プロペニル基やアリルエーテル基などのラジカル重合性官能基(反応性基)が導入されたラジカル重合性(反応性)乳化剤などが挙げられる。これら乳化剤は、単独使用または併用することができる。
【0046】
乳化剤の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.2〜10重量部、好ましくは、0.5〜5重量部である。
【0047】
上記乳化装置の具体例としては、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(PANDA 2K、NIRO−SOAVI社製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)、ナノマイザー(吉田機械興業社製)、TKホモミキサー(プライミクス社製)、TKフィルミックス(プライミクス社製)などが挙げられる。超音波ホモジナイザーでは、使用される超音波の周波数は、例えば、20〜40kHzである。超音波ホモジナイザーでは、超音波照射によるキャビテーション効果によって、油滴が微細化される。高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザーおよびナノマイザーでは、加圧される圧力は、例えば、10〜300MPaである。高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザーおよびナノマイザーでは、分散液と乳化剤と水との混合液を加圧しながら、これを微細孔から吐出させて、かかる吐出において発生するキャビテーション効果および高剪断力の付加により、油滴が微細化される。TKホモミキサーおよびTKフィルミックスは、回転体の高速回転を利用する乳化装置であって、混合液中で回転体が高速回転することにより、高剪断力が混合液に付加されて、油滴が微細化される。これら乳化装置は、単独使用することができ、また、2種以上を組み合わせて多段で使用することもできる。
【0048】
上記乳化液の油滴の体積基準のメジアン径は、好ましくは50〜500nm、さらに好ましくは50〜400nm、特に好ましくは50〜300nmである。油滴のメジアン径が、上記した範囲を超えると、重合安定性が低下して、重合中に凝集するおそれがある。一方、油滴のメジアン径が、上記した範囲に満たないと、無機層状化合物が油滴に取り込まれず、重合中に凝集するおそれがある。
【0049】
なお、上記乳化液における油滴の体積基準のメジアン径は、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定される。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば、LS13
320(ベックマンコールター社製)などが用いられる。測定条件は、レーザー光源がレーザーダイオードおよびタングステンランプであり、波長が450〜900nmである。
【0050】
上記乳化液中のモノマー成分は、代表的には、開始剤の存在下で重合させる。開始剤としては、例えば、水溶性開始剤または油溶性開始剤が用いられる。
【0051】
上記水溶性開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系開始剤(油溶性アゾ系開始剤を除く。);過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤;t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤(油溶性過酸化物系開始剤を除く。);フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せなどのレドックス系開始剤などが挙げられる。上記油溶性開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシドなどの油溶性過酸化物系開始剤;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの油溶性アゾ系開始剤などが挙げられる。これら重合開始剤は、単独使用または併用することができる。これらの中でも、好ましくは、水溶性開始剤、さらに好ましくは、レドックス系開始剤が用いられる。
【0052】
開始剤の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.005〜1重量部である。
【0053】
重合に際し、乳化液に、必要により連鎖移動剤を配合させる。連鎖移動剤を配合させることにより、樹脂成分(固形分)の分子量を調節することができる。連鎖移動剤としては、例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどのメルカプタン類などが挙げられる。これら連鎖移動剤は、単独使用または併用することができる。
【0054】
連鎖移動剤の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.001〜0.5重量部である。
【0055】
重合に際し、開始剤および連鎖移動剤は、予め分散液に溶解させることができ、または、予め水性媒体(例えば、水)に溶解させて、これを乳化液に加えることができ、あるいは、乳化液に直接配合させることができる。なお、開始剤を配合する前、または配合しながら、窒素置換によって、モノマー溶液中の溶存酸素濃度を低減することができる。また、開始剤および連鎖移動剤の配合と同時に、または、配合の前後に、乳化液を、必要により加熱する。加熱温度(重合温度)は、例えば、5〜100℃に設定される。重合時間は、例えば、1〜30時間に設定される。このような重合によって、共重合体のエマルション、すなわち、水分散型粘着剤組成物を得ることができる。この共重合体の体積基準のメジアン径は、油滴の体積基準のメジアン径とほぼ同一となり得る。好ましくは、50〜500nmである。
【0056】
水分散型粘着剤組成物には、必要により、架橋剤が配合されていてもよい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。架橋剤は、油溶性であっても水溶性であってもよい。これら架橋剤は、単独使用または併用することができる。架橋剤の配合割合は、水分散型粘着剤組成物の樹脂成分(固形分)100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部である。
【0057】
水分散型粘着剤組成物は、エマルションの安定性を向上する目的で、例えば、アンモニア水などにより、例えば、pH7〜9、好ましくは、pH7〜8に調整されている。
【0058】
水分散型粘着剤組成物には、必要に応じて、粘度調整剤(例えば、アクリル系増粘剤など)、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料など)、老化防止剤、界面活性剤などの添加剤を、適宜、添加することができる。これら添加剤の配合割合は、特に制限されず、適宜、設定することができる。
【0059】
水分散型粘着剤組成物(固形分)のゲル分率は、例えば、50〜100重量%、好ましくは、70〜100重量%である。ゲル分率が上記した値より低いと、得られた積層光学フィルムを高温高湿の雰囲気下で使用したときに、発泡や剥がれが生じる場合がある。
【0060】
なお、ゲル分率は、水分散型粘着剤組成物を、テフロンシート(登録商標)で被覆し、これを酢酸エチルに7日間浸漬したときに、下記式で算出することができる。
ゲル分率(重量%)=(浸漬後のテフロンシートに付着する水分散型粘着剤組成物の重量/浸漬前の水分散型粘着剤組成物の重量)×100
【0061】
位相差層の形成方法は、B項にて後述する。
【0062】
上記位相差層は、その屈折率異方性がnx=ny>nzの関係を示し得る。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。無機層状化合物はその結晶系が平面構造のため、面内方向にはランダムに、かつ、基材に対して平行に配列し得るからである。位相差層の厚み方向の複屈折率(Δnxz)は、好ましくは0.002〜0.02、さらに好ましくは0.004〜0.02である。無機層状化合物の配合量を調整することにより所望のΔnxzを得ることができる。位相差層の厚み方向の位相差値(Rth[550])は、好ましくは30〜350nm、さらに好ましくは100〜300nmである。
【0063】
位相差層は、好ましくは0.94≦R45[450]/R45[550]≦1.06の関係を有し、さらに好ましくは0.95≦R45[450]/R45[550]≦1.05、特に好ましくは0.96≦R45[450]/R45[550]≦1.04の関係を有する。また、上記位相差層は、好ましくは0.94≦R45[650]/R45[550]≦1.06の関係を有し、さらに好ましくは0.95≦R45[650]/R45[550]≦1.05、特に好ましくは0.96≦R45[650]/R45[550]≦1.04の関係を有する。一般的に、無機系化合物は有機系化合物に比べて全波長領域で屈折率差が増減しにくい傾向にあるため、各波長で位相差が略一定となる波長分散(フラット分散特性)となり易い。無機層状化合物を良好に製膜することにより、波長分散特性がフラット分散である位相差層を得ることができる。
【0064】
位相差層は透明性に優れ得る。位相差層のヘイズは、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%である。ヘイズが5%を超える場合には、目視で白く(白濁して)見え、好ましくない。
【0065】
位相差層の厚みは、任意の適切な値に設定し得る。好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜30μm、特に好ましくは20〜30μmである。このように、水分散型粘着剤組成物を用いることで位相差層の厚みを広範囲で制御することができる。その結果、位相差層の粘着力を容易に制御することができ、さらには、所望の光学特性(例えば、厚み方向の位相差値(Rth))を容易に得ることができる。
【0066】
A−2.偏光板
上記偏光板は、少なくとも偏光子を有し、実用的には、偏光子と該偏光子の少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する。
【0067】
A−2−1.偏光子
上記偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
【0068】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0069】
A−2−2.保護フィルム
上記保護フィルムとしては、偏光板の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムが採用され得る。このようなフィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。上記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であり得る。TAC、ポリイミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ガラス質系ポリマーが好ましく、TACがさらに好ましい。
【0070】
偏光板は、表面処理層をさらに有し得る。表面処理層は、代表的には、上記保護フィルムの上記偏光子が配置されていない側に形成されている。表面処理層の具体例としては、ハードコート処理層、反射防止処理層、スティッキング防止処理層、アンチグレア処理層等が挙げられる。
【0071】
A−3.その他
上記下塗り層は、例えば、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基等を含むポリマーから形成される。好ましくは、オキサゾリン基含有ポリマーである。該ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、スチレン・アクリル系ポリマー等が挙げられる。好ましくは、アクリル系ポリマーである。このようなオキサゾリン基含有ポリマーとしては、一般の市販品が用いられ、エポクロスシリーズ(例えば、エポクロスWS700、日本触媒社製)などが挙げられる。
【0072】
下塗り層の厚みは、任意の適切な値に設定し得る。好ましくは0.05〜10μm、さらに好ましくは0.1〜7.0μmである。
【0073】
上記基材の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、またこれらの積層体などが挙げられる。基材は、離型シートとしても機能し得る。基材の表面には、位相差層からの剥離性を高めるため、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの処理がなされていてもよい。
【0074】
B.製造方法
本発明の積層光学フィルムの製造方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。以下、一つの実施形態について説明する。例えば、位相差層は、予め、基材の片側に形成される。位相差層は、代表的には、上記水分散型粘着剤組成物を基材の片側に塗工して、乾燥させることにより形成される。水分散型粘着剤組成物の塗工方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、ナイフコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法等が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは50〜180℃である。乾燥時間は、好ましくは1〜20分、さらに好ましくは1〜10分である。このように、簡便な方法で、優れた光学特性(例えば、フラット分散特性)を有する位相差層を形成することができる。
【0075】
次に、基材上に形成された位相差層を偏光板に積層する。位相差層は粘着剤層としても機能することから、偏光板に位相差層を直接貼り付けることができ、製造工程を簡略化することができる。ここで、粘着剤層と偏光板とを下塗り層を介して積層してもよい。好ましくは、下塗り層は、予め、偏光板に形成される。下塗り層の形成方法は、例えば、上記ポリマーを溶媒に溶解させた溶液を偏光板に塗工して、乾燥させることにより形成される。上記ポリマーを溶解させる溶媒としては、例えば、水、エタノール等のアルコールが挙げられる。溶液のポリマー濃度としては、好ましくは0.1〜10重量%である。溶液の塗工方法としては、上記水分散型粘着剤組成物の塗工方法と同様の方法が用いられる。乾燥温度は、好ましくは50〜200℃である。乾燥時間は、好ましくは1〜5分である。
【0076】
C.液晶パネル
本発明の液晶パネルは、液晶セルと液晶セルの少なくとも片側に配置された上記積層光学フィルムとを有する。
図2は、本発明の好ましい実施形態による液晶パネル100の概略断面図である。液晶パネル100は、液晶セル20と、液晶セル20の一方の側に配置された本発明の積層光学フィルム10’と、液晶セル20の他方の側に配置された偏光板30と、積層光学フィルム10’と偏光板30との間に配置された第2の位相差層40とを有する。積層光学フィルム10’は、上記基材が剥離され、その位相差層12が液晶セル20に貼着されている。
【0077】
図示例では、第2の位相差層40は、液晶セル20と偏光板30との間に配置されている。第2の位相差層40は、任意の適切な光学特性を有する。第2の位相差層40は、例えば、その屈折率異方性がnx>ny=nzの関係、もしくは、nx>nz>nyの関係を示す。ここで、「ny=nz」は、nyとnzが厳密に等しい場合のみならず、nyとnzが実質的に等しい場合も包含する。本発明の積層光学フィルムを用いることにより、画面コントラストに優れ、カラーシフトが小さい液晶パネルを得ることができる。
【0078】
C−1.液晶セル
上記液晶セル20は、一対の基板21、21’と、基板21、21’間に挟持された表示媒体としての液晶層22とを有する。一方の基板(カラーフィルター基板)には、カラーフィルターおよびブラックマトリクス(いずれも図示せず)が設けられている。他方の基板(アクティブマトリクス基板)には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)(図示せず)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線(図示せず)およびソース信号を与える信号線(図示せず)と、画素電極(図示せず)とが設けられている。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板側に設けてもよい。上記基板21、21’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。上記基板21、21’の液晶層22と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
【0079】
上記液晶セル20の駆動モードとしては、任意の適切な駆動モードを採用し得る。駆動モードの具体例としては、STN(Super Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、VA(Vertical Aligned)モード、OCB(Optically Aligned Birefringence)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード等が挙げられる。好ましくは、VAモードである。
【0080】
D.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、上記液晶パネルを有する。本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。
【実施例】
【0081】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
【0082】
[実施例1]
(分散液の調製)
容器に、アクリル酸ブチル93部、アクリル酸5部、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(PAM−200、プロピレンオキシドの平均重合度約5.0)2部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(KBM−503、信越化学社製)0.05部、ヘキサデカン3部を加えて混合した。次いで、これに、ルーセンタイトSPN(プロピレンオキサイド骨格を有する4級アンモニウム塩で、層間を120モルeq./q100gの割合で疎水化処理したスメクタイト。各層の最大理論長さ50nm。コープケミカル社製)40部を添加し、24時間放置して、ルーセンタイトSPNをモノマー成分に浸漬させて膨張させた。その後、氷浴中にて冷却しながら、超音波分散機(GSD600CVP、ギンセン社製)を用いて、10分間、ルーセンタイトSPNを分散させて、分散液を調製した。
(乳化液の調製)
イオン交換水252部にアニオン性乳化剤ハイテノールLA−16(非反応性乳化剤、第一工業製薬社製)3部を溶解させた水溶液を、上記した分散液に加え、これらを、ホモミキサー(プライミクス社製)を用いて、1分間、6000(1/min)で攪拌し強制乳化し、続いて、高圧ホモジナイザー(PANDA 2K)を用いて、圧力100MPaで、1パス処理して強制乳化し、乳化液を調製した。
(水分散型粘着剤組成物の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌羽根を備えた反応容器に、上記で調製した乳化液を仕込み、次いで、反応容器を窒素置換した。その後、5%過酸化水素水溶液4部および5%アスコルビン酸水溶液2.8部を添加して、20℃にて、24時間、乳化重合させることにより、樹脂固形分27%の共重合体のエマルションを得た。次いで、10%アンモニア水を添加して、pHを8に調整し、水分散型粘着剤組成物を調製した。
(位相差層の形成)
上記で得られた水分散型粘着剤組成物を、基材(ポリエチレンテレフタレート基材、ダイヤホイル MRF38、三菱化学ポリエステル社製)上に、乾燥後の厚みが25±5μmとなるようにファウンテンコーターで塗工した。その後、熱風循環式オーブンで、120℃で、5分間加熱処理して、基材上に位相差層を形成した。
【0083】
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコールフィルム(厚み80μm)を、40℃のヨウ素水溶液中で、元長の5倍に延伸し、その後、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液から引き上げ、50℃で、4分間乾燥させて、偏光子を得た。この偏光子の両側に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを接着して、偏光板を得た。
【0084】
(下塗り層の形成)
エポクロスWS−700(オキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、日本触媒社製)を、水/エタノール(重量比で、1:1)混合溶液で、固形分0.25%となるように希釈し、下塗り層の塗布液を調製した。この塗布液を、マイヤーバー#5を用いて、上記で得られた偏光板の片面に塗工し、40℃で2分間乾燥させて、厚み0.1μmの下塗り層を形成した。
【0085】
(積層光学フィルムの作製)
上記基材上に形成された位相差層を、上記偏光板の下塗り層が形成されている側に貼着して積層光学フィルムを得た。
【0086】
[実施例2]
分散液の調製において、ルーセンタイトSPNの配合量を80部としたこと以外は実施例1と同様にして積層光学フィルムを作製した。
【0087】
(比較例1)
下記の粘着剤組成物で位相差層を形成したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。
(粘着剤組成物の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100重量部、アクリル酸5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.075重量部および2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部を酢酸エチルと共に加えて、窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた。その後、反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量220万のアクリル系ベースポリマーを含有する溶液(固形分濃度:30重量%)を得た。アクリル系ベースポリマー溶液の固形分100重量部に対して、0.6重量部のイソシアネート基を有する架橋剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン株式会社製)と、0.075重量部のγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業株式会社製)と40重量部のルーセンタイトSPNを配合して粘着剤組成物を得た。
(位相差層の形成)
上記で得られた粘着剤組成物を、基材上に、乾燥後の厚みが25±5μmとなるようにファウンテンコーターで塗工した。その後、熱風循環式オーブンで、155℃で、70秒間加熱処理して、基材上に位相差層を形成した。
【0088】
(比較例2)
位相差層として下記のフィルムを用い、位相差層と偏光板とを下記の粘着剤層を介して積層したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。
(位相差層)
機械式攪拌装置、ディーンスターク装置、窒素導入管、温度計及び冷却管を取り付けた反応容器(500mL)内に2,2′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物[クラリアントジャパン(株)製]17.77g(40mmol)及び2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル[和歌山精化工業(株)製]12.81g(40mmol)を加えた。続いて、イソキノリン2.58g(20mmol)をm−クレゾール275.21gに溶解させた溶液を加え、23℃で1時間攪拌して(600rpm)均一な溶液を得た。次に、反応容器を、オイルバスを用いて反応容器内の温度が180±3℃になるように加温し、温度を保ちながら5時間攪拌して黄色溶液を得た。さらに3時間攪拌を行ったのち、加熱及び攪拌を停止し、放冷して室温に戻すと、ポリマーがゲル状となって析出した。
上記反応容器内の黄色溶液にアセトンを加えて上記ゲルを完全に溶解させ、希釈溶液(7重量%)を作製した。この希釈溶液を、2Lのイソプロピルアルコール中に攪拌を続けながら少しずつ加えると、白色粉末が析出した。この粉末を濾取し、1.5Lのイソプロピルアルコール中に投入して洗浄した。さらにもう一度同様の操作を繰り返して洗浄した後、前記粉末を再び濾取した。これを60℃の空気循環式恒温オーブンで48時間乾燥した後、150℃で7時間乾燥して、下記構造式(I)のポリイミドの粉末を、収率85%で得た。上記ポリイミドの重合平均分子量(Mw)は124,000、イミド化率は99.9%であった。
上記ポリイミド粉末をメチルイソブチルケトンに溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(厚み80μm)の表面に、スロットダイコーターにてシート状に均一に流延した。次に、該フィルムを多室型の空気循環式乾燥オーブン内へ投入し、80℃で2分間、135℃で5分間、150℃で10分間と低温から徐々に昇温しながら溶剤を蒸発させた。
このようにして、トリアセチルセルロースフィルム上に厚み3μmの位相差層を得た。この位相差層の光学特性は、nx=ny>nz、Re[550]≒0nm、Rth[550]=120nm、R45[450]/R45[550]=1.06、R45[650]/R45[550]=0.97であった。
【化4】
(粘着剤層)
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100重量部、アクリル酸5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.075重量部および2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部を酢酸エチルと共に加えて、窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた。その後、反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量220万のアクリル系ベースポリマーを含有する溶液(固形分濃度:30重量%)を得た。アクリル系ベースポリマー溶液の固形分100重量部に対して、0.6重量部のイソシアネート基を有する架橋剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン株式会社製)と、0.075重量部のγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業株式会社製)を配合して粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を基材表面にファウンテンコーターで均一に塗工し、155℃で70秒間乾燥し厚み25μmの粘着剤層を形成した。
【0089】
(比較例3)
位相差層として下記のフィルムを用いたこと以外は比較例2と同様にして偏光板を作製した。
(位相差層)
長尺のノルボルネン系樹脂フィルム(JSR株式会社製、商品名ARTONフィルム、厚み100μm)を長手方向に175℃で1.15倍に乾式延伸した後、幅方向(長手方向に直交する方向)に175℃で1.335倍に乾式延伸し、延伸処理後の幅方向長さに対して長手方向長さが0.975倍となるように緩和した。このような処理により、厚み75μmのフィルムを得た。このフィルムの光学特性は、nx=ny>nz、Re[550]≒0nm、Rth[550]=90nm、R45[450]/R45[550]=1.005、R45[650]/R45[550]=0.995であった。
【0090】
各実施例および比較例で得られた位相差層について、以下に示す評価を行った。評価結果を表1にまとめる。
<光学特性>
複屈折率、波長分散特性(R45[450]/R45[550]およびR45[650]/R45[550])等の光学特性は、Axometric社製 製品名「Axoscan」を用いて、23℃で測定した。波長分散特性については、サンプルを法線方向から45°傾斜させて測定した。
なお、比較例2および比較例3については、位相差層(フィルム)のみの光学特性を測定した。
<粘着力>
ガラス板(コーニング社製、コーニング#1737)に、25mm×25mmの寸法で切り取ったサンプル片(基材/位相差層)を貼り付け、2kgのゴムローラーで圧着した。これを58℃、0.5MPaのオートクレーブ中に15分間放置し、25℃に放冷した後、90度剥離接着力(300mm/min)を測定した。
なお、比較例2および比較例3については、粘着剤層の粘着力を測定した。
【0091】
【表1】
【0092】
実施例1および実施例2では、nx=ny>nz、Re[550]≒0nmの光学特性を有する位相差層が得られた。また、表1に示すように、得られた位相差層の波長分散特性はフラット分散であった。
一方、比較例1では、溶剤系の粘着剤を用いて位相差層を形成したが、層分離で白濁してしまい評価できなかった。
実施例1および実施例2の位相差層の粘着力は、比較例2,3の粘着剤層の粘着力に比べてやや劣っていたが、実用上問題のないレベルであった。
以上より、水分散型粘着剤組成物を用いて無機層状化合物を製膜することにより、優れた光学補償機能と粘着機能とを兼ね備えた位相差層を良好に形成することができ、液晶パネルの薄膜化および製造工程の簡略化(低コスト化)が達成されたといえる。