(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、種々の実施形態に係る有機EL表示装置について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置を概略的に示す平面図である。
図1に示すように、有機EL表示装置は、例えば、2型以上のアクティブマトリクス型の表示装置として構成され、有機ELパネル10およびこの有機ELパネル10の動作を制御するコントローラ12を備えている。
【0015】
有機ELパネル10は、ガラス板等の光透過性を有する絶縁基板8、この絶縁基板上にマトリクス状に配列され表示領域11を構成するm×n個の表示画素PX、表示画素の行毎に接続されているとともにそれぞれ独立してm本ずつ設けられた第1走査線Sga(1〜m)、第2走査線Sgb(1〜m)、第3走査線Sgc(1〜m)、第4走査線Sgd(1〜m)、表示画素PXの列毎に接続されたn本の映像信号線X(1〜n)を備えている。また、有機ELパネル10は、表示画素PXの行毎に接続されているとともにそれぞれ独立してm本ずつ設けられた後述するリセット電源配線Vrstと、高電位の電圧電源線PVDDと、低電位の基準電圧電源線PVSSと、を有している。
【0016】
有機ELパネル10は、第1走査線Sga(1〜m)〜第4走査線Sgd(1〜m)を表示画素PXの行毎に順次駆動する走査線駆動回路14a、14b、複数の映像信号配線X(1〜n)を駆動する信号線駆動回路15を備えている。走査線駆動回路14a、14b、および信号線駆動回路15は、表示領域11の外側で絶縁基板8上に一体的に形成され、コントローラ12とともに制御部を構成している。
【0017】
画素部として機能する各表示画素PXは、対向電極(図示せず)間に光活性層(図示せず)を備えた表示素子と、この表示素子に駆動電流を供給する画素回路18と、を含んでいる。表示素子は、例えば自己発光素子であり、本実施形態では、光活性層として少なくとも有機発光層を備えた有機EL素子を用いている。
【0018】
図2に表示画素PXの等価回路を示す。各行において、R(赤)表示用、G(緑)表示用、B(青)表示用の3つ表示画素PXが交互に並んで設けられている。各表示画素PXの画素回路18は、電圧信号からなる映像信号に応じて有機EL素子16の発光を制御する電圧信号方式の画素回路であり、画素スイッチSST、駆動トランジスタDRT、出力スイッチBCT、およびキャパシタとしての保持容量Csを有している。各行の表示画素PXの少なくとも1つは、出力スイッチPCTを有している。本実施形態において、RGB、3つの表示画素PXの内、1つの表示画素PXに出力スイッチPCTが設けられている。更に、走査線駆動回路14aには、複数のリセットスイッチRSTが設けられ、それぞれ各行のリセット電源配線Vrstに接続されている。
【0019】
本実施形態に係る表示装置において、各駆動トランジスタDRT、画素スイッチSST、出力スイッチBCT、出力スイッチPCT、リセットスイッチRSTは、ここでは同一導電型、例えばNチャネル型の薄膜トランジスタにより構成されている。また、駆動トランジスタDRTおよび各スイッチをそれぞれ構成する薄膜トランジスタは、全て同一工程、同一層構造で形成され、例えば、半導体層にIGZO、a−Si、あるいはポリシリコンを用いたトップゲート構造の薄膜トランジスタである。なお、各スイッチは、Nチャネル型に限らず、スイッチとして機能すれば、Pチャネル型としてもよい。
【0020】
画素スイッチSST、駆動トランジスタDRT、出力スイッチPCT、出力スイッチBCT、リセットスイッチRSTの各々は、第1端子、第2端子、および制御端子を有し、本実施形態では、これら第1端子、第2端子、および制御端子をそれぞれソース、ドレイン、ゲートとしている。
【0021】
表示画素PXの画素回路18において、例えば緑(G)表示用の表示画素PXでは、駆動トランジスタDRT、出力スイッチPCT、および出力スイッチBCTは、高電位の電圧電源線PVDDと低電位の基準電圧電源線PVSSとの間で有機EL素子16と直列に接続されている。電圧電源線PVDDは例えば10Vの電位に設定され、基準電圧電源線PVSSは、例えば1.5Vの電位に設定される。電圧電源線PVDDおよび基準電圧電源線PVSSは、信号線駆動回路XDRに接続され、信号線駆動回路XDRから電源電圧を供給される。
【0022】
第1出力スイッチとして機能する出力スイッチPCTは、その第2端子、ここではドレインが電圧電源線PVDDに接続され、第1端子、ここではソースが、駆動トランジスタDRTの第2端子、ここでは、ドレインに接続されている。出力スイッチPCTのゲートは、第1走査線Sga(1〜m)に接続されている。これにより、出力スイッチPCTは、第1走査線Sga(1〜m)からの制御信号PG(1〜m)によりオン(導通状態)、オフ(非導通状態)制御され、有機EL素子16の発光時間を制御する。
【0023】
駆動トランジスタDRTは、そのドレインが出力スイッチPCTのソースおよびリセット電源配線Vrstに接続され、そのソースが出力スイッチBCTを介して有機EL素子16の一方の電極、ここでは、陽極に接続される。有機EL素子16の陰極は、基準電圧電源線PVSSに接続されている。駆動トランジスタDRTは、映像信号に応じた電流量の駆動電流を有機EL素子16に出力する。
図2において、符号Celは、有機EL素子16の寄生容量を示している。
【0024】
なお、出力スイッチPCTは複数の画素回路に共有されているため、例えば、赤(R)、青(B)の表示画素PXにおいては、出力スイッチPCTは設けられておらず、駆動トランジスタDRTは、有機EL素子16とリセット電源配線Vrst配線との間に接続されている。
【0025】
第2出力スイッチとして機能する出力スイッチBCTは、その第1端子、ここではソースが有機EL素子16の一方の電極、ここでは陽極に接続され、その第2端子、ここではドレインが駆動トランジスタDRTのソースに接続されている。出力スイッチBCTのゲートは、発光期間制御用ゲート配線として機能する第2走査線Sgb(1〜m)に接続され、第2走査線Sgb(1〜m)から供給される制御信号BG(1〜m)によりオン、オフ制御される。
【0026】
画素スイッチSSTは、そのソースが映像信号配線X(1〜n)に接続され、そのドレインが駆動トランジスタDRTのゲートに接続されている。画素スイッチSSTのゲートは、信号書き込み制御用ゲート配線として機能する第3走査線Sgc(1〜m)に接続され、第3走査線Sgc(1〜m)から供給される制御信号SG(1〜m)によりオン、オフ制御される。そして、画素スイッチSSTは、制御信号SG(1〜m)に応答して、画素回路18と映像信号配線X(1〜n)との接続、非接続を制御し、対応する映像信号配線X(1〜n)から階調映像電圧信号を画素回路18に取り込む。
【0027】
保持容量Csは、対向する2つの電極を有し、駆動トランジスタDRTのゲートと出力スイッチBCTのソースとの間に接続され、映像信号により決定される駆動トランジスタDRTのゲート制御電位を保持する。
【0028】
1行毎に、走査線駆動回路14bに設けられたリセットスイッチRSTは、駆動トランジスタDRTのドレインとリセット電源Vrstとの間に接続されている。リセットスイッチRSTのゲートは、リセット制御用ゲート配線として機能する第4走査線Sge(1〜m)に接続されている。リセットスイッチRSTは、第4走査線Sge(1〜m)からの制御信号RG(1〜m)に応じてオン(導通状態)、オフ(非導通状態)制御され、駆動トランジスタDRTのソース電位を初期化する。
【0029】
一方、
図1に示すコントローラ12は有機ELパネル10の外部に配置されたプリント回路基板(図示せず)上に形成され、走査線駆動回路14a、14bおよび信号線駆動回路15を制御する。コントローラ12は外部から供給されるデジタル映像信号および同期信号を受け取り、垂直走査タイミングを制御する垂直走査制御信号、および水平走査タイミングを制御する水平走査制御信号を同期信号に基づいて発生する。
【0030】
そして、コントローラ12は、これら垂直走査制御信号および水平走査制御信号をそれぞれ走査線駆動回路14a、14bおよび信号線駆動回路15に供給すると共に、水平および垂直走査タイミングに同期してデジタル映像信号および初期化信号を信号線駆動回路15に供給する。
【0031】
信号線駆動回路15は水平走査制御信号の制御により各水平走査期間において順次得られる映像信号をアナログ形式に変換し、映像信号に応じた赤用映像電圧信号、緑用映像電圧信号、青用映像電圧信号を含む複数階調の階調電圧信号Vsigを複数の映像信号配線X(1〜n)に並列的に供給する。また、信号線駆動回路15は、1水平周期ごとに、初期化電圧信号を複数の映像信号線X(1〜n)に並列的に供給する。
【0032】
走査線駆動回路14a、14bは、シフトレジスタ(図示せず)、出力バッファ(図示せず)等を含み、外部から供給される水平走査スタートパルスを順次次段に転送し、
図1および
図2に示すように、出力バッファを介して各行の表示画素PXに4種類の制御信号、すなわち、制御信号PG(1〜m)、BG(1〜m)、SG(1〜m)、RG(1〜m)を供給する。これにより、第1走査線Sga(1〜m)〜4走査線Sgd(1〜m)は、それぞれ制御信号PG(1〜m)、BG(1〜m)、SG(1〜m)、RG(1〜m)により駆動される。
【0033】
次に、以上のように構成された有機EL表示装置の動作について説明する。
図3は、動作表示時の走査線駆動回路14a、14bの制御信号のタイミングチャートを示している。走査線駆動回14a、14bは、例えば、スタート信号とクロックとから各水平走査期間Hに対応した1水平走査期間の幅のパルスを生成し、そのパルスを制御信号PG(1〜m)、BG(1〜m)、SG(1〜m)、RG(1〜m)として出力する。
【0034】
画素回路18の動作は、リセット動作、閾値オフセットキャンセル(OC)動作、書き込み動作、発光動作に分けられる。
図3に、本実施形態に係る表示装置の駆動方法の一例を説明するためのタイミングチャートを示す。
【0035】
まず、リセット動作を行う。リセット動作では、走査線駆動回路14a、14bから、出力スイッチPCTをオフ状態とするレベル(オフ電位)、ここではローレベルの制御信号PG、出力スイッチBCTをオン状態とするレベル(オン電位)、ここでは、ハイレベルの制御信号BG、画素スイッチSSTをオン状態とするレベル(オン電位)、ここではハイレベルの制御信号SG、リセットスイッチRSTをオン状態とするレベル、ここでは、ハイレベルの制御信号RGが出力される。これにより、出力スイッチPCTがオフ(非導通状態)、出力スイッチBCT、画素スイッチSST、リセットスイッチRSTがオン(導通状態)となり、リセット動作が開始される。
【0036】
リセット期間において、映像信号配線X(1〜n)から出力された初期化電圧信号VINIは、画素スイッチSSTを通して駆動トランジスタDRTのゲートに印加される。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、初期化電圧信号VINIに対応する電位にリセットされ、前フレームの情報が初期化される。初期化電圧信号VINIは、例えば、2Vに設定されている。
【0037】
また、リセット電源配線Vrstから出力されたリセット電圧信号VRSTは、リセットスイッチRSTを通して駆動トランジスタDRTのソース、ドレインに印加される。これにより、駆動トランジスタDRTのソース、ドレインの電位がリセット電圧信号VRSTに対応する電位、例えば、−2Vにリセットされ、前フレームの情報が初期化される。
【0038】
続いて、オフセットキャンセル(OC)動作を行なう。制御信号PGがオン電位(ハイレベル)、制御信号RGがオフ電位(ローレベル)となる。これにより、リセットスイッチRSTがオフ(非導通状態)、出力スイッチPCT、出力スイッチBCT、画素スイッチSST、がオン(導通状態)となり、閾値のオフセットキャンセル動作が開始される。
【0039】
オフセットキャンセル期間において、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、映像信号配線X(1〜n)から出力された初期化電圧信号VINIが画素スイッチSSTを通して印加され、VINIに固定される。
【0040】
また、出力スイッチPCTはオン状態にあるため、電圧電源線PVDDから駆動トランジスタDRTに電流が流れ込む。駆動トランジスタDRTのソース電位は、リセット期間に書き込まれた電位VRSTを初期値とし、駆動トランジスタDRTのドレイン−ソースを通って流れ込む電流分を徐々に減少させながら、駆動トランジスタのTFT特性ばらつきを吸収・補償しつつ、高電位側にシフトしていく。本実施形態では、オフセットキャンセル期間は例えば5μsec程度の時間に設定されている。キャンセル期間終了時点で、駆動トランジスタDRTのソース電位は、VINI−Vthとなる。なお、Vthは駆動トランジスタDRTの閾値電圧である。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート、ソース間電圧は、キャンセル点に到達し、このキャンセル点に相当する電位差が保持容量Csに蓄えられる。
【0041】
続いて、書き込み動作を行う。書き込み動作では、出力スイッチBCTをオフ状態とするローレベルの制御信号BG、画素スイッチSSTをオン状態とするハイレベルの制御信号SGが出力される。これにより、出力スイッチBCT、リセットスイッチRSTがオフ、出力スイッチPCT、画素スイッチSSTがオン(導通状態)となり、書き込み動作が開始される。
【0042】
書き込み期間において、映像信号配線X(1〜n)から画素スイッチSSTを通って駆動トランジスタDRTのゲートに階調映像電圧信号Vsigが書き込まれる。駆動トランジスタDRTのゲート電位は、Vsig(R、G、B)となり、出力スイッチBCTのソース電位は、VINI−Vth+Cs(Vsig−VINI)/(Cs+Cel)となる。
【0043】
これと同時に又はこれに続いて、制御信号SGがローレベル、制御信号BGがハイレベルとなり、発光期間が開始される。発光期間では、電圧電源線PVDDから出力スイッチPCTおよびリセット電源配線Vrstを通して、R、G、Bの各表示画素PXの駆動トランジスタDRTに駆動電流が流れる。
【0044】
駆動トランジスタDRTは、保持容量Csに書込まれたゲート制御電圧に対応した電流量の駆動電流Ieを出力する。この駆動電流Ieが出力スイッチBCTを介して有機EL素子16に供給される。これにより、有機EL素子16が駆動電流Ieに応じた輝度で発光し、発光動作を行う。有機EL素子16は、1フレーム期間後に、再び制御信号BGがオフ電位となるまで発光状態を維持する。
【0045】
上述したリセット動作、オフセットキャンセル動作、書き込み動作、発光動作を順次、各表示画素で繰り返し行うことにより、所望の画像を表示する。
【0046】
上記のように構成された有機EL表示装置によれば、発光期間において、有機EL素子16に流れる電流Ieは、駆動トランジスタDRTの飽和領域の電流値として、
Ie=β×{(Vsig−VINI)×Cel/(Cs+Cel)}
2
β=μ・CelxW/2L、(W:TFTチャネル層のチャネル幅、L:チャネル長)
となり、駆動トランジスタDRTの閾値(Vth)に依存しない値となる。そのため、駆動トランジスタの閾値のばらつきによる影響を排除することができる。a−Si、IGZOといった移動度の小さいTFTを使用した場合でも、駆動ドランジスタの閾値シフトを補正することができ、小型で高精細なアクティブマトリクス型の表示装置およびその駆動方法を提供することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る有機EL表示装置について説明する。なお、第2の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略し、異なる構成部分について、詳細に説明する。
図4は、第2の実施形態に係る有機EL表示装置における表示画素PXの等価回路を示している。前述した第1の実施形態では、映像信号線を通して初期化信号を各画素回路に供給する構成としているが、第2の実施形態では、表示パネルの表示画素の行ごとに初期化電源線Viniを設け、各画素回路18は、初期化電源線から初期化信号を取り込む初期化スイッチISTを備えている。また、表示パネルは、表示画素の行ごとに設けられた第5走査線Sge(1〜m)を有し、この第5走査線により初期化スイッチISTをオンオフ制御する。
【0048】
図4に示すように、複数の表示画素PXが配列する各行において、赤(R)表示用、緑(G)表示用、青(B)表示用の3つ表示画素PXが周期的に並んで設けられている。各表示画素PXの画素回路18は、電圧信号からなる映像信号に応じて有機EL素子16の発光を制御する電圧信号方式の画素回路であり、画素スイッチSST、駆動トランジスタDRT、出力スイッチPCT、出力スイッチBCT、初期化スイッチIST、およびキャパシタとしての保持容量Cs、を有している。出力スイッチPCTは複数の画素回路に共有されている。走査線駆動回路14a、14bのいずれかには、複数のリセットスイッチRSTが設けられ、それぞれ各行のリセット電源配線Vrstに接続されている。
【0049】
本実施形態に係る表示装置において、各駆動トランジスタDRT、画素スイッチSST、出力スイッチBCT、出力スイッチPCT、リセットスイッチRST、初期化スイッチISTは、ここでは同一導電型、例えばNチャネル型の薄膜トランジスタにより構成されている。また、駆動トランジスタDRTおよび各スイッチをそれぞれ構成する薄膜トランジスタは、全て同一工程、同一層構造で形成され、例えば、半導体層にIGZO、a−Si、あるいはポリシリコンを用いたトップゲート構造の薄膜トランジスタである。なお、各スイッチは、Nチャネル型に限らず、スイッチとして機能すれば、Pチャネル型としてもよい。
【0050】
表示画素PXの画素回路18において、駆動トランジスタDRT、出力スイッチPCT、および出力スイッチBCTは、高電位の電圧電源線PVDDと低電位の基準電圧電源線PVSSとの間で有機EL素子16と直列に接続されている。電圧電源線PVDDは例えば10Vの電位に設定され、基準電圧電源線PVSSは、例えば1.5Vの電位に設定される。電圧電源線PVDDおよび基準電圧電源線PVSSは、信号線駆動回路に接続され、信号線駆動回路から電源電圧を供給される。
【0051】
出力スイッチPCTは、ドレインが電圧電源線PVDDに接続され、ソースが駆動トランジスタDRTのドレインに接続されている。出力スイッチPCTのゲートは、第1走査線Sga(1〜m)に接続されている。これにより、出力スイッチPCTは、第1走査線Sga(1〜m)からの制御信号PG(1〜m)によりオン、オフ制御され、有機EL素子16の発光時間を制御する。
【0052】
駆動トランジスタDRTは、そのドレインが出力スイッチPCTのソースおよびリセット電源配線Vrstに接続され、そのソースが出力スイッチBCTを介して有機EL素子16の一方の電極、ここでは、陽極に接続される。有機EL素子16の陰極は、基準電圧電源線PVSSに接続されている。駆動トランジスタDRTは、映像信号に応じた電流量の駆動電流を有機EL素子16に出力する。
図4において、符号Celは、有機EL素子16の寄生容量を示している。
【0053】
出力スイッチBCTは、ソースが有機EL素子16の一方の電極、ここでは陽極に接続され、ドレインが駆動トランジスタDRTのソースに接続されている。出力スイッチBCTのゲートは、発光期間制御用ゲート配線として機能する第2走査線Sgb(1〜m)に接続され、第2走査線Sgb(1〜m)から供給される制御信号BG(1〜m)によりオン、オフ制御される。
【0054】
画素スイッチSSTは、そのソースが映像信号配線X(1〜n)に接続され、そのドレインが駆動トランジスタDRTのゲートに接続されている。画素スイッチSSTのゲートは、信号書き込み制御用ゲート配線として機能する第3走査線Sgc(1〜m)に接続され、第3走査線Sgc(1〜m)から供給される制御信号SG(1〜m)によりオン、オフ制御される。そして、画素スイッチSSTは、制御信号SG(1〜m)に応答して、画素回路18と映像信号配線X(1〜n)との接続、非接続を制御し、対応する映像信号配線X(1〜n)から階調映像電圧信号を画素回路18に取り込む。
【0055】
保持容量Csは、対向する2つの電極を有し、駆動トランジスタDRTのゲートと出力スイッチBCTのソースとの間に接続され、映像信号により決定される駆動トランジスタDRTのゲート制御電位を保持する。
【0056】
1行毎に、走査線駆動回路14bに設けられたリセットスイッチRSTは、駆動トランジスタDRTのドレインとリセット電源Vrstとの間に接続されている。リセットスイッチRSTのゲートは、リセット制御用ゲート配線として機能する第4走査線Sge(1〜m)に接続されている。リセットスイッチRSTは、第4走査線Sge(1〜m)からの制御信号RG(1〜m)に応じてオン、オフ制御され、駆動トランジスタDRTのソース電位を初期化する。
【0057】
初期化スイッチISTは、そのソースが初期化電源配線Viniに接続され、そのドレインが駆動トランジスタDRTのゲートに接続されている。初期化スイッチISTのゲートは、信号書き込み制御用ゲート配線として機能する第5走査線Sge(1〜m)に接続され、走査線駆動回路から第5走査線Sge(1〜m)を通して供給される制御信号IG(1〜m)によりオン、オフ制御される。
【0058】
有機EL表示装置の走査線駆動回路14a、14bは、各行の表示画素PXに5種類の制御信号、すなわち、制御信号PG(1〜m)、BG(1〜m)、SG(1〜m)、RG(1〜m)、IG(1〜m)を供給する。これにより、第1走査線Sga(1〜m)〜5走査線Sge(1〜m)は、それぞれ制御信号PG(1〜m)、BG(1〜m)、SG(1〜m)、RG(1〜m)、IG(1〜m)により駆動される。
第2の実施形態に係る有機EL表示装置の他の構成は、前述した第1の実施形態と同一である。
【0059】
次に、第2の実施形態に係る有機EL表示装置の動作について説明する。
図5は、表示動作時の走査線駆動回路14a、14bの制御信号のタイミングチャートを示している。走査線駆動回14a、14bは、例えば、スタート信号とクロックとから各水平走査期間Hに対応した1水平走査期間の幅のパルスを生成し、そのパルスを制御信号PG(1〜m)、BG(1〜m)、SG(1〜m)、RG(1〜m)、IG(1〜m)として出力する。
【0060】
画素回路18の動作は、リセット動作、閾値オフセットキャンセル(OC)動作、書き込み動作、発光動作に分けられる。まず、リセット動作を行う。リセット動作では、走査線駆動回路14a、14bから、出力スイッチPCTをオフ状態とするレベル(オフ電位)、ここではローレベルの制御信号PG、出力スイッチBCTをオン状態とするレベル(オン電位)、ここではハイレベルの制御信号BG、画素スイッチSSTをオフ状態とするローレベルの制御信号SG、リセットスイッチRSTをオン状態とするハイレベルの制御信号RG、初期化スイッチISTをオン状態とするハイレベルの制御信号IGが出力される。
【0061】
これにより、出力スイッチPCT、画素スイッチSSTがオフ(非導通状態)、出力スイッチBCT、リセットスイッチRST、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、リセット動作が開始される。
【0062】
リセット期間において、初期化電源配線Viniから出力された初期化電圧信号VINIは、初期化スイッチISTを通して駆動トランジスタDRTのゲートに印加される。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、初期化電圧信号VINIに対応する電位にリセットされ、前フレームの情報が初期化される。初期化電圧信号VINIは、例えば、2Vに設定されている。
【0063】
リセット電源配線Vrstから出力されたリセット電圧信号VRSTは、リセットスイッチRSTを通して駆動トランジスタDRTのソース、ドレインに印加される。これにより、駆動トランジスタDRTのソース、ドレインの電位がリセット電圧信号VRSTに対応する電位、例えば、−2Vにリセットされ、前フレームの情報が初期化される。
【0064】
続いて、オフセットキャンセル(OC)動作を行なう。制御信号PGがオン電位(ハイレベル)、制御信号RGがオフ電位(ローレベル)に設定される。これにより、リセットスイッチRST、画素スイッチSSTがオフ(非導通状態)、出力スイッチPCT、出力スイッチBCT、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、閾値のオフセットキャンセル動作が開始される。
【0065】
オフセットキャンセル期間において、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、初期化電源配線から出力され初期化電圧信号VINIが初期化スイッチISTを通して印加され、初期化電位に固定される。
【0066】
出力スイッチPCTはオン状態にあるため、電圧電源線PVDDから駆動トランジスタDRTに電流が流れ込む。駆動トランジスタDRTのソース電位は、リセット期間に書き込まれた電位Vrstを初期値とし、駆動トランジスタDRTのドレイン−ソースを通って流れ込む電流分を徐々に減少させながら、駆動トランジスタのTFT特性ばらつきを吸収・補償しつつ、高電位側にシフトしていく。本実施形態では、オフセットキャンセル期間は例えば10μsec程度の時間に設定されている。キャンセル期間終了時点で、駆動トランジスタDRTのソース電位は、VINI−Vthとなる。なお、Vthは駆動トランジスタDRTの閾値電圧である。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート、ソース間電圧は、キャンセル点に到達し、このキャンセル点に相当する電位差が保持容量Csに蓄えられる。
【0067】
続いて、書き込み動作が行われる。制御信号BGが出力スイッチBCTをオフ電位(ローレベル)、制御信号IGが初期化スイッチISTをオフ電位(ローレベル)、制御信号SGが画素スイッチをオン電位(ハイレベル)に設定される。これによりリセットスイッチRST、出力スイッチBCT、初期化スイッチISTがオフ(非導通状態)、出力スイッチPCT、画素スイッチSSTがオン(導通状態)となり、書き込み動作が開始される。
【0068】
書き込み期間において、映像信号配線X(1〜n)から画素スイッチSSTを通って駆動トランジスタDRTのゲートに映像電圧信号Vsigが書き込まれる。駆動トランジスタDRTのゲート電位はVsig(R、G、B)となり、出力スイッチBCTのソース電位は、VINI−Vth+Cs(Vsig−VINI)/(Cs+Cel)となる。
【0069】
これと同時に又はこれに続いて、制御信号SGがローレベル、制御信号BGがハイレベルに設定され、発光動作が開始される。発光期間では、電圧電源線PVDDから出力スイッチBCTおよびリセット電源配線Vrstを通して、R、G、Bの各表示画素PXの駆動トランジスタDRTに駆動電流が流れる。
【0070】
駆動トランジスタDRTは、保持容量Csに書込まれたゲート制御電圧に対応した電流量の駆動電流Ieを出力する。この駆動電流Ieが有機EL素子16に供給される。これにより、有機EL素子16が駆動電流Ieに応じた輝度で発光し、発光動作を行う。有機EL素子16は、1フレーム期間後に、再び制御信号BGがオフ電位となるまで発光状態を維持する。上述したリセット動作、オフセットキャンセル動作、書き込み動作、発光動作を順次、各表示画素で繰り返し行うことにより、所望の画像を表示する。
【0071】
上記のように構成された有機EL表示装置によれば、発光期間において、有機EL素子16に流れる電流Ieは、駆動トランジスタDRTの飽和領域の電流値として、
Ie=β×{(Vsig−VINI)×Cel/(Cs+Cel)}
2
β=μ・CelxW/2L、(W:チャネル幅、L:チャネル長)
となり、駆動トランジスタDRTの閾値Vthに依存しない値となる。そのため、駆動トランジスタの閾値のばらつきによる影響を排除することができる。a−Si、IGZOといった移動度の小さいTFTを使用した場合でも、駆動ドランジスタの閾値シフトを補正することができ、小型で高精細なアクティブマトリクス型の表示装置およびその駆動方法を提供することができる。
【0072】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る有機EL表示装置について説明する。なお、第3の実施形態において、前述した第2の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略し、異なる構成部分について、詳細に説明する。
図6は、第3の実施形態に係る有機EL表示装置における表示画素PXの等価回路を示している。第3の実施形態では、各画素回路18は、キャパシタとしての保持容量Ckを更に備えている。この保持容量CKは、2つの電極を有し、出力スイッチBCTのソース、電圧電源線PVDD間に接続される。保持容量CKが接続される電源配線は、電圧電源線PVDDに限らず、リセット電源配線Vrst、初期化電源配線Vini等の他の電源配線でもよい。
第3の実施形態において、画素回路18の他の構成、有機EL表示装置の他の構成は、前述した第2の実施形態と同一である。
【0073】
上記のように構成された第3の実施形態に係る有機EL表示装置の動作は、前述した第2の実施形態に係る有機EL表示装置の動作と同一であり、
図5に示した制御信号のタイミングチャートと同様に動作される。すなわち、各画素回路18の動作は、リセット動作、閾値オフセットキャンセル(OC)動作、書き込み動作、発光動作に分けられる。
【0074】
第3の実施形態において、書き込み動作では、制御信号BGが出力スイッチBCTをオフ電位(ローレベル)、制御信号IGが初期化スイッチISTをオフ電位(ローレベル)、制御信号SGが画素スイッチをオン電位(ハイレベル)に設定される。これにより、リセットスイッチRST、出力スイッチBCT、初期化スイッチISTがオフ(非導通状態)、出力スイッチPCT、画素スイッチSSTがオン(導通状態)となり、書き込み動作が開始される。
【0075】
書き込み期間において、映像信号配線X(1〜n)から画素スイッチSSTを通って駆動トランジスタDRTのゲートに映像電圧信号Vsigが書き込まれる。駆動トランジスタDRTのゲート電位は、Vsig(R、G、B)、出力スイッチBCTのソース電位は、VINI−Vth+Cs(Vsig−VINI)/(Cs+Cel+Ck)となる。
【0076】
これと同時に又はこれに続いて、制御信号SGがローレベル、制御信号BGがハイレベルとなり、発光動作が開始される。発光期間では、電圧電源線PVDDから出力スイッチBCTおよびリセット電源配線Vrstを通して、R、G、Bの各表示画素PXの駆動トランジスタDRTに駆動電流が流れる。
【0077】
駆動トランジスタDRTは、保持容量Csに書込まれたゲート制御電圧に対応した電流量の駆動電流Ieを出力する。この駆動電流Ieが有機EL素子16に供給される。これにより、有機EL素子16が駆動電流Ieに応じた輝度で発光し、発光動作を行う。有機EL素子16は、1フレーム期間後に、再び制御信号BGがオフ電位となるまで発光状態を維持する。
【0078】
上記のように構成された有機EL表示装置によれば、発光期間において、有機EL素子16に流れる電流Ieは、駆動トランジスタDRTの飽和領域の電流値として、
Ie=β×{(Vsig−VINI)×(Cel+Ck)/(Cs+Cel+Ck)}
2
β=μ・CoxW/2L、(W:チャネル幅、L:チャネル長)
となり、駆動トランジスタDRTの閾値Vthに依存しない値となる。そのため、駆動トランジスタの閾値のばらつきによる影響を排除することができる。a−Si、IGZOといった移動度の小さいTFTを使用した場合でも、駆動ドランジスタの閾値シフトを補正することができ、小型で高精細なアクティブマトリクス型の表示装置およびその駆動方法を提供することができる。また、電流Ieは、保持容量Csと有機EL素子16の寄生容量Celとの分圧比に応じた値となり、その際、保持容量CKを一定値とすることにより、寄生容量Celのバラツキを保持容量Ckによって調整することができる。これにより、駆動トランジスタDRTの駆動電流を安定した値とすることができる。
【0079】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る有機EL表示装置について説明する。なお、第3の実施形態において、前述した第3の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略し、異なる構成部分について、詳細に説明する。
図7は、第4の実施形態に係る有機EL表示装置における表示画素PXの等価回路を示している。第4の実施形態によれば、保持容量Cs、Ckは駆動トランジスタのソースに接続されており、有機EL素子16の寄生容量Celとは直接的には接続されていない。第4の実施形態において、画素回路18の他の構成、有機EL表示装置の他の構成は、前述した第3の実施形態と同一である。
【0080】
上記のように構成された有機EL表示装置の動作について説明する。
図8は、表示動作時における走査線駆動回路の制御信号のタイミングチャートを示している。画素回路18の動作は、リセット動作、閾値オフセットキャンセル(OC)動作、書き込み動作、発光動作に分けられる。
【0081】
まず、画素回路18は、リセット動作を行う。リセット動作では、走査線駆動回路により、制御信号PGが出力スイッチPCTをオフ状態とするローレベル、制御信号BGが出力スイッチBCTをオフ状態とするローレベル、制御信号SGが画素スイッチSSTをオフ状態とするローレベル、制御信号RGがリセットスイッチRSTをオン状態とするハイレベル、制御信号IGが初期化スイッチISTをオン状態とするハイレベルに設定される。これにより、出力スイッチPCT、画素スイッチSST、出力スイッチBCTがオフ(非導通状態)、リセットスイッチRST、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、リセット動作が開始される。
【0082】
リセット期間において、初期化電源配線Viniから出力された初期化電圧信号VINIは、初期化スイッチISTを通して駆動トランジスタDRTのゲートに印加される。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、初期化電圧信号VINIに対応する電位にリセットされ、前フレームの情報が初期化される。初期化電圧信号VINIは、例えば、2Vに設定されている。
【0083】
また、リセット電源配線Vrstから出力されたリセット電圧信号VRSTは、リセットスイッチRSTを通して駆動トランジスタDRTのソース、ドレインに印加される。これにより、駆動トランジスタDRTのソース、ドレインの電位がリセット電圧信号VRSTに対応する電位、例えば、−2Vにリセットされ、前フレームの情報が初期化される。
【0084】
続いて、オフセットキャンセル動作を行なう。制御信号PGがオン電位(ハイレベル)、制御信号RGがオフ電位(ローレベル)となる。これによりリセットスイッチRST、画素スイッチSST、出力スイッチBCTがオフ(非導通状態)、出力スイッチPCT、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、閾値のオフセットキャンセル動作が開始される。
【0085】
オフセットキャンセル期間において、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、初期化電源配線Viniから出力され初期化電圧信号VINIが初期化スイッチISTを通して印加され、VINIに固定される。
【0086】
また、出力スイッチPCTはオン状態にあるため、電圧電源線PVDDから駆動トランジスタDRTに電流が流れ込む。駆動トランジスタDRTのソース電位は、リセット期間に書き込まれた電位VRSTを初期値とし、駆動トランジスタDRTのドレイン−ソースを通って流れ込む電流分を徐々に減少させながら、駆動トランジスタのTFT特性ばらつきを吸収・補償しつつ、高電位側にシフトしていく。本実施形態では、オフセットキャンセル期間は例えば10μsec程度の時間に設定されている。キャンセル期間終了時点で、駆動トランジスタDRTのソース電位は、VINI−Vthとなる。なお、Vthは駆動トランジスタDRTの閾値電圧である。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート、ソース間電圧は、キャンセル点に到達し、このキャンセル点に相当する電位差が保持容量Csに蓄えられる。
【0087】
続いて、書き込み期間では、制御信号IGが初期化スイッチISTをオフ電位(ローレベル)、制御信号SGが画素スイッチをオン電位(ハイレベル)とする。これにより、リセットスイッチRST、出力スイッチBCT、初期化スイッチISTがオフ(非導通状態)、出力スイッチPCT、画素スイッチSSTがオン(導通状態)となり、書き込み動作が開始される。
【0088】
書き込み期間において、映像信号配線X(1〜n)から画素スイッチSSTを通って駆動トランジスタDRTのゲートに映像電圧信号Vsigが書き込まれる。駆動トランジスタDRTのゲート電位は、Vsig(R、G、B)、駆動トランジスタDRTのソース電位は、VINI−Vth+Cs(Vsig−VINI)/(Cs+Ck)となる。
【0089】
これと同時に又はこれに続いて、制御信号SGがローレベル、制御信号BGがハイレベルとなり、発光期間が開始される。発光期間では、電圧電源線PVDDから出力スイッチBCTおよびリセット電源配線Vrstを通して、R、G、Bの各表示画素PXの駆動トランジスタDRTに駆動電流が流れる。
【0090】
駆動トランジスタDRTは、保持容量Csに書込まれたゲート制御電圧に対応した電流量の駆動電流Ieを出力する。この駆動電流Ieが有機EL素子16に供給される。これにより、有機EL素子16が駆動電流Ieに応じた輝度で発光し、発光動作を行う。有機EL素子16は、1フレーム期間後に、再び制御信号BGがオフ電位となるまで発光状態を維持する。
【0091】
上述したリセット動作、オフセットキャンセル動作、書き込み動作、発光動作を順次、各表示画素で繰り返し行うことにより、所望の画像を表示する。
【0092】
上記のように構成された有機EL表示装置によれば、発光期間において、有機EL素子16に流れる電流Ieは、駆動トランジスタDRTの飽和領域の電流値として、
Ie=β×{(Vsig−VINI)×Ck)/(Cs+Ck)}
2
β=μ・CelxW/2L、(W:チャネル幅、L:チャネル長)
となり、駆動トランジスタDRTの閾値Vthに依存しない値となる。そのため、駆動トランジスタの閾値のばらつきによる影響を排除することができる。a−Si、IGZOといった移動度の小さいTFTを使用した場合でも、駆動ドランジスタの閾値シフトを補正することができ、小型で高精細なアクティブマトリクス型の表示装置およびその駆動方法を提供することができる。また、保持容量Cs,Ckが直接的に有機EL素子16の寄生容量Celに接続されていない為、駆動トランジスタDRTから出力される電流値Ieは、寄生容量Celの受けることなく、保持容量Cs、Ckの分圧比に依存する。そのため、寄生容量Celのバラツキによる駆動電流の変動を抑制することができる。
【0093】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る有機EL表示装置について説明する。なお、第5の実施形態において、前述した第3の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略し、異なる構成部分について、詳細に説明する。
図9は、第5の実施形態に係る有機EL表示装置における表示画素PXの等価回路を示している。有機EL表示装置の有機ELパネルは、表示画素PXの行毎に接続されているとともにそれぞれ独立してm本ずつ設けられた第2走査線Sgb(1〜m)、第3走査線Sgc(1〜m)、第4走査線Sgd(1〜m)、第5走査線Sge(1〜m)、第6走査線Sgf(1〜m)、表示画素PXの列毎に接続されたn本の映像信号配線X(1〜n)を備えている。
【0094】
また、有機ELパネルは、表示画素PXの行毎に接続されている後述するリセット電源配線Vrstと、初期化電源配線Viniと、高電位の電圧電源線PVDDと、低電位の基準電圧電源線PVSSと、を有している。
【0095】
有機ELパネルは、第2走査線Sgb(1〜m)〜第6走査線Sgf(1〜m)を表示画素PXの行毎に順次駆動する走査線駆動回路14a、14b、複数の映像信号配線X(1〜n)を駆動する信号線駆動回路を備えている。走査線駆動回路14a、14b、および信号線駆動回路は、表示領域の外側で絶縁基板上に一体的に形成され、コントローラとともに制御部を構成している。
【0096】
図9に示すように、各表示画素PXは、光活性層として少なくとも有機発光層を備えた有機EL素子16と、この表示素子に駆動電流を供給する画素回路18と、を含んでいる。複数の表示画素PXが配列する各行において、赤(R)表示用、緑(G)表示用、青(B)表示用の3つ表示画素PXが周期的に並んで設けられている。
【0097】
電圧信号方式の画素回路18は、画素スイッチSST、駆動トランジスタDRT、出力スイッチBCT、初期化スイッチIST、およびキャパシタとしての保持容量Cs、Ckを有している。走査線駆動回路14a(もしくは走査線駆動回路14b)には、複数のリセットスイッチRSTが設けられ、それぞれ各行のリセット電源配線Vrstに接続されている。走査線駆動回路14a(もしくは走査線駆動回路14b)には、複数の初期化スイッチIST2が設けられ、それぞれ初期化電源配線Viniに接続されている。
【0098】
駆動トランジスタDRT、画素スイッチSST、出力スイッチBCT、リセットスイッチRST、初期化スイッチIST、IST2は、ここでは同一導電型、例えばNチャネル型の薄膜トランジスタにより構成されている。また、駆動トランジスタDRTおよび各スイッチをそれぞれ構成する薄膜トランジスタは、全て同一工程、同一層構造で形成され、例えば、半導体層にIGZO、a−Si、あるいはポリシリコンを用いたトップゲート構造の薄膜トランジスタである。なお、各スイッチは、Nチャネル型に限らず、スイッチとして機能すれば、Pチャネル型としてもよい。
【0099】
表示画素PXの画素回路18において、駆動トランジスタDRTおよび出力スイッチBCTは、高電位の電圧電源線PVDDと低電位の基準電圧電源線PVSSとの間で有機EL素子16と直列に接続されている。電圧電源線PVDDは例えば10Vの電位に設定され、基準電圧電源線PVSSは、例えば1.5Vの電位に設定される。電圧電源線PVDDおよび基準電圧電源線PVSSは、信号線駆動回路XDRに接続され、信号線駆動回路XDRから電源電圧を供給される。
【0100】
駆動トランジスタDRTは、そのドレインが電圧電源線PVDDに接続され、そのソースが後述の出力スイッチBCTを介して間接的に有機EL素子16の一方の電極(ここでは陽極)に接続される。有機EL素子16の陰極は、基準電圧電源線PVSSに接続されている。駆動トランジスタDRTは、映像信号に応じた電流量の駆動電流を有機EL素子16に出力する。符号Celは、有機EL素子16の寄生容量を示している。
【0101】
出力スイッチBCTは、その第1端子、ここではソース、が有機EL素子16の一方の電極、ここでは陽極、に接続され、その第2端子、ここではドレイン、が駆動トランジスタDRTのソースに接続されている。出力スイッチBCTのゲートは、発光期間制御用ゲート配線として機能する第2走査線Sgb(1〜m)に接続され、第2走査線Sgb(1〜m)から供給される制御信号BG(1〜m)によりオン、オフ制御される。
【0102】
画素スイッチSSTは、そのソースが映像信号配線X(1〜n)に接続され、そのドレインが駆動トランジスタDRTのゲートに接続されている。画素スイッチSSTのゲートは、信号書き込み制御用ゲート配線として機能する第3走査線Sgc(1〜m)に接続され、第3走査線Sgc(1〜m)から供給される制御信号SG(1〜m)によりオン、オフ制御される。そして、画素スイッチSSTは、制御信号SG(1〜m)に応答して、画素回路と映像信号配線X(1〜n)との接続、非接続を制御し、対応する映像信号配線X(1〜n)から階調映像電圧信号を画素回路に取り込む。
【0103】
保持容量Csは、駆動トランジスタDRTのゲート、出力スイッチBCTソース間に接続され、映像信号により決定される駆動トランジスタDRTのゲート制御電位を保持する。
【0104】
1行毎に、走査線駆動回路14bに設けられたリセットスイッチRSTは、初期化スイッチISTのドレインとリセット電源Vrstとの間に接続されている。リセットスイッチRSTのゲートは、リセット制御用ゲート配線として機能する第4走査線Sge(1〜m)に接続されている。リセットスイッチRSTは、第4走査線Sge(1〜m)からの制御信号RG(1〜m)に応じてオン(導通状態)、オフ(非導通状態)制御され、駆動トランジスタDRTのソース電位を初期化する。
【0105】
初期化スイッチISTは、そのドレインがリセットスイッチRSTのソースに接続され、そのソースが駆動トランジスタDRTのゲートに接続されている。初期化スイッチISTのゲートは、信号書き込み制御用ゲート配線として機能する第5走査線Sge(1〜m)に接続され、第5走査線Sge(1〜m)から供給される制御信号IG(1〜m)によりオン、オフ制御される。
保持容量Ckは、2つの電極を有し、出力スイッチBCTのソースとリセットスイッチRSTのゲートとの間に接続される。
【0106】
1行毎に、走査線駆動回路に設けられた初期化スイッチIST2は、初期化スイッチISTのドレインと初期化電源配線Viniとの間に接続されている。初期化スイッチIST2のゲートは、初期化制御用ゲート配線として機能する第6走査線Sgf(1〜m)に接続されている。初期化スイッチIST2は、第6走査線Sgf(1〜m)からの制御信号IG2(1〜m)に応じてオン(導通状態)、オフ(非導通状態)制御され、駆動トランジスタDRTのソース電位を初期化する。
【0107】
その他、有機EL表示装置は、前述した第3の実施形態と同様の構成を有し、走査線駆動回路14a、14bおよび信号線駆動回路を制御するコントローラを備えている。コントローラは外部から供給されるデジタル映像信号および同期信号を受け取り、垂直走査タイミングを制御する垂直走査制御信号、および水平走査タイミングを制御する水平走査制御信号を同期信号に基づいて発生する。
【0108】
次に、以上のように構成された有機EL表示装置の動作について説明する。
図10は、表示動作時における走査線駆動回路の制御信号のタイミングチャートを示している。画素回路18の動作は、リセット動作、閾値オフセットキャンセル(OC)動作、書き込み動作、発光動作に分けられる。画素回路18は、まず、リセット動作を行う。
【0109】
図9および
図10に示すように、リセット動作では、走査線駆動回路14a、14bにより、制御信号BGが出力スイッチBCTをオン状態とするレベル(オン電位)、ここではハイレベル、制御信号SGが画素スイッチSSTをオフ状態とするレベル(オフ電位)、ここでは、ローレベル、制御信号RGがリセットスイッチRSTをオン状態とするレベル(オン電位)、ここではハイレベル、制御信号IGが初期化スイッチISTをオン状態とするレベル(オン電位)、ここではハイレベル、制御信号IG2が初期化スイッチIST2をオフ状態とするレベル(オフ電位)、ここではローレベル、に設定される。
【0110】
これにより、画素スイッチSST、初期化スイッチIST2がオフ(非導通状態)、出力スイッチBCT、リセットスイッチRST、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、リセット動作が開始される。
【0111】
リセット期間において、リセット電源配線Vrstから出力されたリセット電圧信号VRSTは、リセットスイッチRST、初期化スイッチISTを通して駆動トランジスタDRTのゲートに印加される。これにより、駆動トランジスタDRTのソース電位は、駆動トランジスタDRTに流れる電流と発光素子16に流れる電流が等しくなる電位Vxに設定される。リセット電圧信号VRSTに対応する電位、例えば、7Vにリセットされ、前フレームの情報が初期化される。
【0112】
続いて、プリオフセットキャンセル(OC)動作を行なう。制御信号SGがオン電位(ハイレベル)、制御信号RGがオフ電位(ローレベル)にそれぞれ設定される。これにより、リセットスイッチRST、初期化スイッチIST2がオフ(非導通状態)、出力スイッチBCT、画素スイッチSST、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、閾値のプリオフセットキャンセル動作が開始される。
【0113】
プリオフセットキャンセル期間において、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、映像信号配線X(1〜n)から出力される初期化電圧信号VINI(Vip)が画素スイッチSSTを通して印加され、VINIに固定される。このとき、駆動トランジスタDRTのソース電位は、Vx‘=Vx+(VINI−Vrst)*Cs/(Cs+Cel+Ck)となる。
【0114】
また、電圧電源線PVDDから駆動トランジスタDRTに電流が流れ込む。駆動トランジスタDRTのソース電位は、リセット期間に設定された電位Vx‘を初期値とし、駆動トランジスタDRTのドレイン−ソースを通って流れ込む電流分を徐々に減少させながら、駆動トランジスタのTFT特性ばらつきを吸収・補償しつつ、高電位側にシフトしていく。本実施形態では、プリオフセットキャンセル期間は例えば5μsec程度の時間に設定されている。
【0115】
続いて、オフセットキャンセル(OC)動作を行なう。制御信号SGがオフ電位(ローレベル)、制御信号IG2がオン電位(ハイレベル)にそれぞれ設定される。これにより、リセットスイッチRST、画素スイッチSSTがオフ(非導通状態)、出力スイッチBCT、初期化スイッチIST2、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、閾値のオフセットキャンセル動作が開始される。
【0116】
オフセットキャンセル期間において、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、初期化電源配線から出力される初期化電圧信号VINIが初期化スイッチIST、初期化2スイッチIST2を通して印加され、VINIに固定される。
【0117】
また、電圧電源線PVDDから駆動トランジスタDRTに電流が流れ込む。駆動トランジスタDRTのソース電位は、駆動トランジスタDRTのドレイン−ソースを通って流れ込む電流分を徐々に減少させながら、駆動トランジスタのTFT特性ばらつきを吸収・補償しつつ、高電位側にシフトしていく。本実施形態では、オフセットキャンセル期間は例えば10μsec程度の時間に設定されている。キャンセル期間終了時点で、駆動トランジスタDRTのソース電位は、VINI−Vthとなる。なお、Vthは駆動トランジスタDRTの閾値電圧である。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート、ソース間電圧は、キャンセル点に到達し、このキャンセル点に相当する電位差が保持容量Csに蓄えられる。
【0118】
続いて、書き込み期間では、制御信号BGが出力スイッチBCTをオフ電位(ローレベル)、制御信号IGが初期化スイッチISTをオフ電位(ローレベル)、制御信号IG2が初期化スイッチIST2をオフ電位(ローレベル)、制御信号SGが画素スイッチをオン電位(ハイレベル)とする。これによりリセットスイッチRST、出力スイッチBCT、初期化スイッチIST、初期化スイッチIST2がオフ(非導通状態)、画素スイッチSSTがオン(導通状態)となり、書き込み動作が開始される。
【0119】
書き込み期間において、映像信号配線X(1〜n)から画素スイッチSSTを通って駆動トランジスタDRTのゲートに階調映像電圧信号Vsigが書き込まれる。駆動トランジスタDRTのゲート電位は、Vsig(R、G、B)、出力スイッチBCTのソース電位は、VINI−Vth+Cs(Vsig−VINI)/(Cs+Cel+Ck)となる。
【0120】
これと同時に又はこれに続いて、制御信号SGがローレベル、制御信号BGがハイレベルとなり、発光期間が開始される。発光期間では、電圧電源線PVDDから出力スイッチBCTおよびリセット電源配線Vrstを通して、R、G、Bの各表示画素PXの駆動トランジスタDRTに駆動電流が流れる。
【0121】
駆動トランジスタDRTは、保持容量Csに書込まれたゲート制御電圧に対応した電流量の駆動電流Ieを出力する。この駆動電流Ieが有機EL素子16に供給される。これにより、有機EL素子16が駆動電流Ieに応じた輝度で発光し、発光動作を行う。有機EL素子16は、1フレーム期間後に、再び制御信号BGがオフ電位となるまで発光状態を維持する。上述したリセット動作、オフセットキャンセル動作、書き込み動作、発光動作を順次、各表示画素で繰り返し行うことにより、所望の画像を表示する。
【0122】
上記のように構成された有機EL表示装置によれば、発光期間において、有機EL素子16に流れる電流Ieは、駆動トランジスタDRTの飽和領域の電流値として、
Ie=β×{(Vsig−VINI)×(Cel+Ck)/(Cs+Cel+Ck)}
2
β=μ・CelxW/2L、(W:チャネル幅、L:チャネル長)
となり、駆動トランジスタDRTの閾値Vthに依存しない値となる。そのため、駆動トランジスタの閾値のばらつきによる影響を排除することができる。また、各画素回路における素子数を低減することが可能となる。これにより、a−Si、IGZOといった移動度の小さいTFTを使用した場合でも、駆動ドランジスタの閾値シフトを補正することができ、小型で高精細なアクティブマトリクス型の表示装置およびその駆動方法を提供することができる。
【0123】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る有機EL表示装置について説明する。なお、第6の実施形態において、前述した第5の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略し、異なる構成部分について、詳細に説明する。
図11は、第6の実施形態に係る有機EL表示装置における表示画素PXの等価回路を示している。第6の実施形態によれば、保持容量Cs、Ckは駆動トランジスタのソースに接続されており、有機EL素子16の寄生容量Celとは直接的には接続されていない。第6の実施形態において、画素回路18の他の構成、有機EL表示装置の他の構成は、前述した第5の実施形態と同一である。
【0124】
上記のように構成された有機EL表示装置の動作について説明する。
図12は、表示動作時における走査線駆動回路の制御信号のタイミングチャートを示している。画素回路18の動作は、リセット動作、プリオフセットキャンセル(OC)動作、閾値オフセットキャンセル(OC)動作、書き込み動作、発光動作に分けられる。
【0125】
まず、画素回路18は、リセット動作を行う。リセット動作では、走査線駆動回路により、制御信号BGが出力スイッチBCTをオン状態とするハイレベル、制御信号SGが画素スイッチSSTをオフ状態とするローレベル、制御信号RGがリセットスイッチRSTをオン状態とするハイレベル、制御信号IGが初期化スイッチISTをオン状態とするハイレベル、制御信号IG2が初期化スイッチIST2をオフ状態とするローレベルに設定される。これにより、画素スイッチSST、初期化スイッチIST2がオフ(非導通状態)、出力スイッチBCT、リセットスイッチRST、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、リセット動作が開始される。
【0126】
リセット期間において、リセット電源配線Vrstから出力されたリセット電圧信号VRSTは、リセットスイッチRST、初期化スイッチISTを通して駆動トランジスタDRTのゲートに印加される。これにより、駆動トランジスタDRTのソース電位は、駆動トランジスタDRTに流れる電流と発光素子に流れる電流が等しくなる電位Vxに設定される。リセット電圧信号VRSTに対応する電位、例えば、7Vにリセットされ、前フレームの情報が初期化される。
【0127】
続いて、プリオフセットキャンセル動作を行なう。制御信号SGがオン電位(ハイレベル)、制御信号BGがオフ電位(ローレベル)、制御信号RGがオフ電位(ローレベル)となる。これにより、リセットスイッチRST、出力スイッチBCT、初期化スイッチIST2がオフ(非導通状態)、画素スイッチSST、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、閾値のプリオフセットキャンセル動作が開始される。
【0128】
プリオフセットキャンセル期間において、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、映像信号配線から出力される初期化電圧信号VINI(Vip)が画素スイッチSSTを通して印加され、VINIに固定される。このとき、駆動トランジスタDRTのソース電位は、Vx‘=Vx+(VINI−Vrst)*Cs/(Cs+Ck)となる。
【0129】
また、電圧電源線PVDDから駆動トランジスタDRTに電流が流れ込む。駆動トランジスタDRTのソース電位は、リセット期間に設定された電位Vx‘を初期値とし、駆動トランジスタDRTのドレイン−ソースを通って流れ込む電流分を徐々に減少させながら、駆動トランジスタのTFT特性ばらつきを吸収・補償しつつ、高電位側にシフトしていく。本実施形態では、プリオフセットキャンセル期間は例えば5μsec程度の時間に設定されている。
【0130】
続いて、オフセットキャンセル動作を行なう。制御信号SGがオフ電位(ローレベル)、制御信号IG2がオン電位(ハイレベル)となる。これにより、リセットスイッチRST、画素スイッチSST、出力スイッチBCTがオフ(非導通状態)、初期化スイッチIST2、初期化スイッチISTがオン(導通状態)となり、閾値のオフセットキャンセル動作が開始される。
【0131】
オフセットキャンセル期間において、駆動トランジスタDRTのゲート電位は、初期化電源配線から出力される初期化電圧信号VINIが初期化スイッチIST、初期化スイッチIST2を通して印加され、VINIに固定される。
【0132】
また、電圧電源線PVDDから駆動トランジスタDRTに電流が流れ込む。駆動トランジスタDRTのソース電位は、駆動トランジスタDRTのドレイン−ソースを通って流れ込む電流分を徐々に減少させながら、駆動トランジスタのTFT特性ばらつきを吸収・補償しつつ、高電位側にシフトしていく。本実施形態では、オフセットキャンセル期間は例えば10μsec程度の時間に設定されている。キャンセル期間終了時点で、駆動トランジスタDRTのソース電位は、VINI−Vthとなる。なお、Vthは駆動トランジスタDRTの閾値電圧である。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート、ソース間電圧は、キャンセル点に到達し、このキャンセル点に相当する電位差が保持容量Csに蓄えられる。
【0133】
続いて、書き込み期間では、制御信号IGが初期化スイッチISTをオフ電位(ローレベル)、制御信号IG2が初期化スイッチIST2をオフ電位(ローレベル)、制御信号SGが画素スイッチをオン電位(ハイレベル)とする。これによりリセットスイッチRST、出力スイッチBCT、初期化スイッチIST、初期化スイッチIST2がオフ(非導通状態)、画素スイッチSSTがオン(導通状態)となり、書き込み動作が開始される。
【0134】
書き込み期間において、映像信号配線X(1〜n)から画素スイッチSSTを通って駆動トランジスタDRTのゲートに階調映像電圧信号Vsigが書き込まれる。駆動トランジスタDRTのゲート電位は、Vsig(R、G、B)、駆動トランジスタDRTのソース電位は、VINI−Vth+Cs(Vsig−VINI)/(Cs+Ck)となる。
【0135】
これと同時に又はこれに続いて、制御信号SGがローレベル、制御信号BGがハイレベルとなり、発光動作が開始される。発光期間では、電圧電源線PVDDから出力スイッチBCTおよびリセット電源配線Vrstを通して、R、G、Bの各表示画素PXの駆動トランジスタDRTに駆動電流が流れる。
【0136】
駆動トランジスタDRTは、保持容量Csに書込まれたゲート制御電圧に対応した電流量の駆動電流Ieを出力する。この駆動電流Ieが有機EL素子16に供給される。これにより、有機EL素子16が駆動電流Ieに応じた輝度で発光し、発光動作を行う。有機EL素子16は、1フレーム期間後に、再び制御信号BGがオフ電位となるまで発光状態を維持する。上述したリセット動作、オフセットキャンセル動作、書き込み動作、発光動作を順次、各表示画素で繰り返し行うことにより、所望の画像を表示する。
【0137】
上記のように構成された有機EL表示装置によれば、発光期間において、有機EL素子16に流れる電流Ieは、駆動トランジスタDRTの飽和領域の電流値として、
Ie=β×{(Vsig−VINI)×(Ck)/(Cs+Ck)}
2
β=μ・CelxW/2L、(W:チャネル幅、L:チャネル長)
となり、駆動トランジスタDRTの閾値Vthに依存しない値となる。そのため、駆動トランジスタの閾値のばらつきによる影響を排除することができる。a−Si、IGZOといった移動度の小さいTFTを使用した場合でも、駆動ドランジスタの閾値シフトを補正することができ、小型で高精細なアクティブマトリクス型の表示装置およびその駆動方法を提供することができる。また、また、保持容量Cs,Ckが直接的に有機EL素子16の寄生容量Celに接続されていない為、駆動トランジスタDRTから出力される電流値Ieは、寄生容量Celの受けることなく、保持容量Cs、Ckの分圧比に依存する。そのため、寄生容量Celのバラツキによる駆動電流の変動を抑制することができる。
【0138】
以上のように、上述した種々の実施形態によれば、TFTの信頼性シフトを抑制し、高精細で表示品位の向上したアクティブマトリクス型の表示装置およびその駆動方法が得られる。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0140】
例えば、上述した第5および第6の実施形態において、画素回路の動作におけるプリオフセットキャンセル動作は省略してもよい。前述した実施形態において、複数のリセット電源配線および複数の初期化電源配線は、画素部の行毎に限らず、列毎に設けられていてもよい。トランジスタおよびスイッチの形状、寸法は、前述した実施形態に限定されることなく、必要に応じて変更可能である。出力スイッチは、1ドットに1つ設ける構成としたが、これに限らず、必要に応じて、複数ドットに1つ設ける構成とすることが可能である。表示画素を構成する自己発光素子は、有機EL素子に限定されず自己発光可能な様々な表示素子を適用可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(1)発光素子と、前記発光素子に駆動電流を供給する画素回路とを含み、基板上にマトリクス状に配設された複数の画素部と、前記画素部の配列する行に沿って配置された複数の走査線と、前記画素部の配列する列に沿って配置された複数の映像信号配線と、前記画素部の配列する行または列に沿って配置された複数のリセット電源配線と、高電位電圧電源線および低電位電圧電源線と、前記複数の走査線に順次制御信号を供給して画素部を行単位で線順次走査する走査線駆動回路と、前記映像信号配線に前記線順次走査に合せて映像電圧信号を供給する信号線駆動回路と、を具備し、
前記画素回路は、第1端子が前記リセット電源配線に接続され、第2端子が前記高電位電圧電源に接続され、制御端子が第1走査線に接続された第1出力スイッチと、第1端子が前記発光素子の陽極に間接的に接続され、第2端子が前記リセット電源配線に接続された駆動トランジスタと、第1端子が前記発光素子の陽極に接続され、第2端子が前記駆動トランジスタの第1端子に接続され、制御端子が第2走査線に接続された第2出力スイッチと、前記駆動トランジスタの制御端子と前記第2出力スイッチの第1端子との間に接続された保持容量と、第1端子が前記映像信号配線に接続され、第2端子が前記駆動トランジスタの制御端子に接続され、制御端子が前記第3走査線に接続され、前記映像信号配線から映像電圧信号を取り込み前記保持容量に保持する画素スイッチと、を備え、
前記走査線駆動回路は、前記リセット電源配線毎に設けられ、第1端子がリセット電源に接続され、第2端子が前記リセット電源配線に接続され、制御端子が第4走査線に接続された複数のリセットスイッチを有する表示装置。
(2)発光素子と、前記発光素子に駆動電流を供給する画素回路とを含み、基板上にマトリクス状に配設された複数の画素部と、前記画素部の配列する行に沿って配置された複数の走査線と、前記画素部の配列する列に沿って配置された複数の映像信号配線と、前記画素部の配列する行または列に沿って配置された複数のリセット電源配線と、高電位電圧電源線および低電位電圧電源線と、前記複数の走査線に順次制御信号を供給して画素部を行単位で線順次走査する走査線駆動回路と、前記映像信号配線に前記線順次走査に合せて映像電圧信号を供給する信号線駆動回路と、を具備し、
前記画素回路は、第1端子が前記リセット電源配線に接続され、第2端子が前記高電位電圧電源に接続され、制御端子が第1走査線に接続された第1出力スイッチと、第1端子が前記発光素子の陽極に間接的に接続され、第2端子が前記リセット電源配線に接続された駆動トランジスタと、第1端子が前記発光素子の陽極に接続され、第2端子が前記駆動トランジスタの第1端子に接続され、制御端子が第2走査線に接続された第2出力スイッチと、前記駆動トランジスタの制御端子と第1端子との間に接続された保持容量と、第1端子が前記映像信号配線に接続され、第2端子が前記駆動トランジスタの制御端子に接続され、制御端子が前記第3走査線に接続され、前記映像信号配線から映像電圧信号を取り込み前記保持容量に保持する画素スイッチと、を備え、
前記走査線駆動回路は、前記リセット電源配線毎に設けられ、第1端子がリセット電源に接続され、第2端子が前記リセット電源配線に接続され、制御端子が第4走査線に接続された複数のリセットスイッチを有する表示装置。