(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脱気弁は、前記ペースト容器の開口部側の端部を受容した状態で装着される、中央に貫通孔が形成されたホルダーと、当該ホルダーの貫通孔の内周面との間に形成された微小間隙を介して当該貫通孔内に挿通される軸部を有する弁体とを備えており、
前記弁体は、前記ペースト容器の公転および自転に伴う前記公転用回転板の径方向外方に向かう遠心力の作用により前記微小間隙を閉塞するよう前記ホルダーの内面に当接されてペースト容器の内部空間を密閉する閉位置と、前記ペースト容器の公転および自転に伴う前記公転用回転板の径方向外方に向かう遠心力の作用により前記ホルダーの内面より離間してペースト容器の内部空間と減圧された前記チャンバの内部空間とを前記微小間隙を介して連通させる開位置との間で、摺動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の真空混練脱泡装置。
前記ガス透過膜は、厚さが60μm以上のものにおいて、細孔径が0.02μm以上、20μm以下の範囲内にあるものであることを特徴とする請求項4に記載の真空混練脱泡装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ペースト材料を密閉型のシリンジ状容器に収容した後に、例えばシリンジ状容器内を減圧状態として、ペースト材料の混練、脱泡処理を行う構成のものにおいては、装置の動作中において、脱泡作用によりシリンジ状容器内に放出された気体を、シリンジ状容器の外部に排出することができないため、処理後においても気泡がペースト材料に残る、すなわち、脱泡が不十分であるという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、円筒型のペースト容器内に収容されたペースト材料を均一にしかも十分に混練することができると共に、ペースト材料に混入されている気泡を高い効率で十分に排出(脱泡)することのできる真空混練脱泡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の真空混練脱泡装置は、内部空間が密閉状態または減圧状態とされるチャンバ内において、鉛直方向に伸びる
基準駆動回転軸を中心に水平面内で回転自在に設けられた
公転用回転板と、当該
公転用回転板の周回縁部において鉛直方向に伸びる作動回転軸を中心に自転自在に設けられた、混練、脱泡すべきペースト材料が収容された円筒型のペースト容器を当該ペースト容器の中心軸が前記作動回転軸と斜めに交叉する状態で着脱自在に保持する
容器保持部と、当該
公転用回転板および当該
容器保持部を回転させる駆動機構とを備えており、
前記ペースト容器の、当該ペースト容器内にペースト材料を入れるための開口部には、当該ペースト容器の公転および自転に伴う前記
公転用回転板の径方向外方に向かう遠心力の作用によって、当該ペースト容器の内部空間を前記チャンバの内部空間に開放する脱気弁が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の真空混練脱泡装置においては、前記脱気弁は、前記ペースト容器の開口部側の端部を受容した状態で装着される、中央に貫通孔が形成されたホルダーと、当該ホルダーの貫通孔の内周面との間に形成された微小間隙を介して当該貫通孔内に挿通される軸部を有する弁体とを備えており、
前記弁体は、前記ペースト容器の公転および自転に伴う前記
公転用回転板の径方向外方に向かう遠心力の作用により前記微小間隙を閉塞するよう前記ホルダーの内面に当接されてペースト容器の内部空間を密閉する閉位置と、前記ペースト容器の公転および自転に伴う前記
公転用回転板の径方向外方に向かう遠心力の作用により前記ホルダーの内面より離間してペースト容器の内部空間と減圧された前記チャンバの内部空間とを前記微小間隙を介して連通させる開位置との間で、摺動可能に設けられた構成のものとすることができる。
【0010】
また、本発明の真空混練脱泡装置においては、前記弁体は受圧板をさらに有しており、ペースト容器内に収容されたペースト材料が当該ペースト容器の公転および自転に伴う前記
公転用回転板の径方向外方に向かう遠心力を受けて受圧板を外方に向かって押圧することにより前記閉位置に移動される構成のものとすることができる。
【0011】
本発明の真空混練脱泡装置は、内部空間が密閉状態または減圧状態とされるチャンバ内において、鉛直方向に伸びる
基準駆動回転軸を中心に水平面内で回転自在に設けられた
公転用回転板と、当該
公転用回転板の周回縁部において垂直方向に伸びる作動回転軸を中心に自転自在に設けられた、混練、脱泡すべきペースト材料が収容された円筒型のペースト容器を当該ペースト容器の中心軸が前記作動回転軸と斜めに交叉する状態で着脱自在に保持する
容器保持部と、当該
公転用回転板および当該
容器保持部を回転させる駆動機構とを備えており、
前記ペースト容器の、当該ペースト容器内にペースト材料を入れるための開口部には、前記ペースト容器の内部におけるペースト材料を透過させず、当該ペースト材料から脱泡された気体を透過するペースト不透過性のガス透過膜が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の真空混練脱泡装置においては、前記ガス透過膜は、厚さが60μm以上のものにおいて、細孔径が0.02μm以上、20μm以下の範囲内にあるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の真空混練脱泡装置によれば、基本的には、例えば減圧下において、ペースト容器が公転運動および歳差運動を同時に行うことにより、ペースト容器内のペースト材料に対して十分な混練作用、脱泡作用が得られるので、ペースト容器内のペースト材料をその全体にわたって均一にしかも十分に混練することができ、しかも、ペースト容器の、ペースト材料を入れるための開口部に、遠心力の作用により作動する脱気弁が設けられていることにより、あるいは、ペースト材料不透過性のガス透過膜が設けられていることにより、脱泡作用を受けてペースト容器の内部空間に放出された気体をペースト容器の外部に排出することができてペースト容器内を適正な真空度に維持することができるので、脱泡を高い効率でかつ十分に行うことができ、処理後のペースト材料は、品質の均一性の高いものとなる。
また、所定の処理が行われた後においては、ペースト材料が収容されたペースト容器をそのままの状態で使用することができるので、作業効率を向上させることができると共に、当該ペースト材料が用いられる最終製品の品質を、例えばペースト材料に気体が再び混入されることによって低下させる、などの不具合が生ずることを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る真空混練脱泡装置の一例における基本構成の概略を示す説明用断面図、
図2は、
図1に示す真空混練脱泡装置を鉛直方向上方側から見たときの平面図である。
この真空混練脱泡装置は、内部に密閉された空間を形成する円筒型形状のチャンバ10と、基準駆動回転軸Aとして設定される回転中心軸を中心として回転駆動される公転用駆動回転軸体11がチャンバ10の下壁を気密に貫通して鉛直方向(
図1において上下方向)に伸びるよう配置された駆動モータ18と、この公転用駆動回転軸体11の上端部において、基準駆動回転軸Aに対して垂直な面方向に沿って伸びるよう固定された、水平面内で回転される円板状の公転用回転板15と、この公転用回転板15の周回によって円運動する周回縁部(
図1においては右端縁部)において、作動回転軸B1として設定される回転中心軸が基準駆動回転軸Aと平行に伸びるよう、例えばベアリング(図示せず)を介して公転用回転板15をその厚み方向に貫通して伸びる状態で、設けられた自転用作動回転軸体21と、各々、作動回転軸B2〜B4として設定される回転中心軸が、公転用回転板15における、作動回転軸B1が位置される円周上の位置であって、作動回転軸B1と周方向に互いに等間隔毎に離間した位置において、基準駆動回転軸Aと平行に伸びるよう、基端部が例えばベアリング(図示せず)を介して公転用回転板15に固定された複数の自転用従動回転軸体25と、自転用作動回転軸体21を回転駆動させる自転用作動回転軸体駆動機構30と、自転用作動回転軸体21および自転用従動回転軸体25の各々を同期がとられた状態で回転駆動させる動力伝達機構40と、チャンバ10内を減圧状態、例えば真空状態とするための減圧手段(図示せず)とを備えている。
【0016】
自転用作動回転軸体駆動機構30は、公転用駆動回転軸体11が挿通された状態(公転用駆動回転軸体11と独立した状態)で、チャンバ10の下壁の上面に固定された固定プーリ31と、自転用作動回転軸体21の基端部における、固定プーリ31と同一水平レベル位置に固定された自転用駆動プーリ32と、固定プーリ31と自転用駆動プーリ32とによって例えば平行掛けされた減速タイミングベルト35とにより構成されており、自転用作動回転軸体21を、その回転方向が公転用回転板15の回転方向(
図2において反時計方向)と逆方向(
図2において時計方向)となるよう、回転駆動させる。
【0017】
動力伝達機構40は、各々、公転用回転板15の上方レベル位置において、自転用作動回転軸体21に固定された原動プーリ41、および、自転用従動回転軸体25に固定された従動プーリ42と、原動プーリ41および各々の従動プーリ42によって張設されたタイミングベルト45とにより構成されている。
【0018】
自転用作動回転軸体21および各々の自転用従動回転軸体25は、いずれも、上端部に、ペースト材料が収容された円筒型のペースト容器を着脱自在に保持する容器保持部(図示せず)を有し、これにより、容器保持体が構成されている。ここに、ペースト容器は、例えば軸方向の長さと容器最大内径寸法との比が2.5〜20の範囲内にある軸方向に細長い形態を有するもの(以下、「シリンジ状容器」という。)50であり、この例においては、例えば、シリンジ状容器50の軸方向における一端部に、ペースト材料をシリンジ状容器50内に入れるための開口部を有し、他端部に、混練、脱泡処理がなされたペースト材料を吐出するための小径の吐出部51を有する。
容器保持部は、シリンジ状容器50を、例えば、シリンジ状容器50の吐出部51が鉛直方向下方側に位置されると共に当該シリンジ状容器50の中心軸Cが作動回転軸B1(B2〜B4)と斜めに交叉する状態で、保持するものである。
【0019】
シリンジ状容器50の中心軸Cと作動回転軸B1(B2〜B4)とがなす角度θの大きさは、特に限定されるものではなく、混練、脱泡すべきペースト材料の種類、公転用回転板15の回転速度、シリンジ状容器50の軸方向の長さおよび内径、自転用作動回転軸体21(自転用従動回転軸体25)の自転速度、その他の条件に応じて適宜の範囲において設定することができ、例えば、15〜60度の範囲が好ましく、図示の例においては45度とされている。
【0020】
公転用回転板15の回転速度(シリンジ状容器50の公転速度)は、例えば400〜2000rpmの範囲内で調整可能とされており、公転用回転板15の回転によって回転駆動される自転用作動回転軸体21(自転用従動回転軸体25)の回転速度(シリンジ状容器50の自転速度)は、例えば公転用回転板15の回転速度に対して1/2〜1/10程度の大きさとなるよう設定されている。ここに、シリンジ状容器50の自転速度の調整は、自転用作動回転軸体駆動機構30を構成する固定プーリ31および自転用駆動プーリ32との直径比を調整することにより行うことができる。
また、公転用回転板15の回転速度は、上記範囲内において、例えばペースト材料の温度上昇の程度が2℃/min以下となるよう設定されていることが好ましい。
【0021】
而して、上記の構成の真空混練脱泡装置において用いられるシリンジ状容器50の一端側の開口部には、遠心力の作用により作動される脱気弁が設けられている。
図3(A)および
図3(B)に示すように、脱気弁60は、シリンジ状容器50の一端部に、当該シリンジ状容器50の一端部を受容してシリンジ状容器50の開口部を塞ぐよう着脱自在に装着されるホルダー61と、このホルダー61に対して摺動自在に設けられた弁体65とを備えている。ホルダー61は、例えばゴム材により構成されている。
弁体65は、例えばアルミニウムまたはプラスチックスよりなり、ホルダー61の端壁61Aの中央部に形成された貫通孔62の内周面との間に形成される微小間隙Gを介して貫通孔62内に挿通される軸部66と、この軸部66の上端に連続する、ホルダー61の貫通孔62の内径より大きい外径を有する円板状の係止部67と、軸部66の下端に連続する、ホルダー61の貫通孔62の内径より大きい外径を有する本体部68とを有する。
【0022】
弁体65は、
図3(A)に示すように、自転用作動回転軸体21(自転用従動回転軸体25)の自転によってシリンジ状容器50がその中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aから離間するよう外側に倒れた状態(
図4(A)参照)にあるときに受ける、公転用回転板15の径方向外方へ向かう遠心力Fの作用により、本体部68の上面がホルダー61の端壁61Aの内面に当接されてホルダー61の貫通孔62の内周面と弁体65の軸部66の外周面との間に形成された微小間隙Gを閉塞するよう移動されて、シリンジ状容器50の内部空間Sを閉鎖する閉位置と、
図3(B)に示すように、自転用作動回転軸体21(自転用従動回転軸体25)の自転によってシリンジ状容器50がその中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aに接近するよう内側に倒れた状態(
図4(B)参照)にあるときに受ける、公転用回転板15の径方向外方へ向かう遠心力Fの作用により、本体部68の上面がホルダー61の端壁61Aの内面より離間してシリンジ状容器50の内部空間Sを微小間隙Gを介して減圧されたチャンバ10の内部空間に開放する開位置との間で、摺動可能に設けられている。
【0023】
以下、上記の真空混練脱泡装置の動作について説明する。
混練、脱泡すべきペースト材料Pが収容されたシリンジ状容器50が、自転用作動回転軸体21(自転用従動回転軸体25)における容器保持部に保持され、チャンバ10の内部空間が減圧された状態において、駆動モータ18が駆動されると、公転用駆動回転軸体11が回転してこれに固定された公転用回転板15が水平面内において基準駆動回転軸Aを中心として回転駆動される。
公転用回転板15の回転駆動に伴って、自転用作動回転軸体21および減速タイミングベルト35も公転用回転板15と共に基準駆動回転軸Aの周りを公転するようになるが、固定プーリ31が公転用駆動回転軸体11と独立して固定されているため、自転用作動回転軸体21に固定された自転用駆動プーリ32は、作動回転軸B1を中心として公転用回転板15の回転方向と逆方向に回転することとなる。その結果、自転用作動回転軸体21が作動回転軸B1を中心として回転駆動され、各々の自転用従動回転軸体25がタイミングベルト45により同期がとられた状態で、作動回転軸B2〜B4を中心として回転駆動される。
【0024】
そして、作動回転軸B1〜B4を中心として自転する自転用作動回転軸体21および自転用従動回転軸体25には、シリンジ状容器50がその中心軸Cが作動回転軸B1(B2〜B4)と斜めに交叉する状態で保持されているため、シリンジ状容器50は、基準駆動回転軸Aの周りを公転しながら、自転用作動回転軸体21(自転用従動回転軸体25)の自転により、当該シリンジ状容器50の中心軸Cと作動回転軸B1(B2〜B4)との交叉位置を中心とする歳差運動をするようになる。すなわち、シリンジ状容器50は、基準駆動回転軸Aに関して公転しながら、作動回転軸B1(B2〜B4)に対して一定の角度を有して首振り回転運動をする。
【0025】
シリンジ状容器50がこのような公転運動および歳差運動を同時に行うため、シリンジ状容器50内のペースト材料Pは、公転運動による遠心力の作用を受けながら、同時に歳差運動による作用を受けて、水平方向の二重の回転運動のみでなく、上下方向成分を含む運動を行うようになる。すなわち、
図4(A)に示すように、歳差運動によって中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aから離間するよう外側に倒れた状態にあるときには、シリンジ状容器50内のペースト材料Pには、公転用回転板15の径方向外方に向かう遠心力Fによってシリンジ状容器50の一端側(脱気弁60側)に偏った状態とされるよう上方に移動され、一方、
図4(B)に示すように、歳差運動によって中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aに接近するよう内側に倒れた状態にあるときには、シリンジ状容器50内のペースト材料Pは、公転用回転板15の径方向外方に向かう遠心力Fによってシリンジ状容器50の他端側(吐出部51側)に偏った状態とされるよう下方に移動され、これにより、スパイラル状の混練作用を受ける。
【0026】
また、シリンジ状容器50内のペースト材料Pがスパイラル状の混練作用を受けることにより、ペースト材料Pに混入している気泡は、シリンジ状容器50内の真空界面に激しく接触されるよう脱泡作用を受けてシリンジ状容器50の内部空間Sに放出(脱泡)されることになるが、上記の真空混練脱泡装置においては、シリンジ状容器50に設けられた脱気弁60が、シリンジ状容器50の公転
および自転による公転用回転板15の径方向外方に向かう遠心力Fの作用によって開閉されることにより、ペースト材料Pの脱泡が、シリンジ状容器50内が所定の減圧状態に維持された状態で、行われる。
すなわち、
図3(A)に示すように、歳差運動によってシリンジ状容器50がその中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aから離間するよう外側に倒れた状態にあるときには、シリンジ状容器50の公転運動および歳差運動による公転用回転板15の径方向外方に向かう遠心力Fの作用により、弁体65がその本体部68の上面がホルダー61の端壁61Aの内面に当接されて微小間隙Gを閉塞するよう閉位置に移動されてシリンジ状容器50の内部空間が密閉され、ペースト材料Pがシリンジ状容器50の外部に流出することが防止される。一方、
図3(B)に示すように、歳差運動によってシリンジ状容器50がその中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aに接近するよう内側に倒れた状態にあるときには、シリンジ状容器50の公転運動および歳差運動による公転用回転板15の径方向外方に向かう遠心力Fの作用により、弁体65がその本体部68の上面がホルダー61の端壁61Aの内面より離間するよう開位置に移動されて、シリンジ状容器50の内部空間Sを開放する開位置にあるときには、シリンジ状容器50の内部空間Sが、弁体65の軸部66の外周面とホルダー61の貫通孔62の内周面との間に形成された微小間隙Gを介して、減圧されたチャンバ10の
内部空間に連通され、これにより、ペースト材料Pが脱泡作用を受けることによりシリンジ状容器50の内部空間に当該ペースト材料Pより放出された気体がシリンジ状容器50の外部に排出され、シリンジ状容器50内が所定の減圧状態に維持される。
【0027】
而して、上記の真空混練脱泡装置によれば、基本的には、減圧下において、シリンジ状容器50が公転運動および歳差運動を行うことにより、シリンジ状容器50内のペースト材料Pに対して十分な混練作用、脱泡作用が得られるので、シリンジ状容器50内のペースト材料Pをその全体にわたって均一にしかも十分に混練することができ、しかも、遠心力の作用を受けて作動する脱気弁60がシリンジ状容器50に設けられていることにより、脱泡作用を受けてシリンジ状容器50の内部空間Sに放出された気体をシリンジ状容器50の外部に排出することができてシリンジ状容器50内を適正な減圧状態に維持することができるので、ペースト材料Pの脱泡を高い効率でかつ十分に行うことができ、処理後のペースト材料は、品質の均一性の高いものとなる。
また、所定の処理が行われた後においては、ペースト材料Pが収容されたシリンジ状容器50をそのままの状態で使用することができるので、作業効率を向上させることができると共に、当該ペースト材料Pが用いられる最終製品の品質を例えばペースト材料に気体が再び混入されることによって低下させる、などの不具合が生ずることを回避することができる。
【0028】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る真空混練脱泡装置は、シリンジ状容器50として、ペースト材料Pをシリンジ状容器50内に入れるための一端側の開口部に、ガス抜き機能を有する蓋部材70が設けられた構成のものが用いられる。
蓋部材70は、
図5(A)および
図5(B)に示すように、シリンジ状容器50の一端側の開口部に、当該シリンジ状容器50の一端部を受容してシリンジ状容器50の開口部を塞ぐよう着脱自在に装着される有底円筒状のホルダー61と、このホルダー61の端壁61Aの内面において、端壁61Aの中央位置に形成された貫通孔62を覆うよう設けられた、例えばフィルム状のガス透過膜75とにより構成されている。
【0029】
ガス透過膜75は、シリンジ状容器50の内部におけるペースト材料Pを透過させず、ペースト材料Pから脱泡された気体を透過する性質を有するものであって、例えば高分子分離膜により構成することができる。
【0030】
ガス透過膜75としては、厚みが60μm以上であるものにおいて、細孔径が例えば0.02μm以上、20μm以下の範囲内にあるものが用いられることが好ましい。
【0031】
以下、ガス透過膜75として、細孔径が上記範囲内にあるものが用いられることが好ましい理由を説明する。
例えば、シリンジ状容器50内に収容されるペースト材料Pの最大質量をm〔kg〕、シリンジ状容器50の公転半径(基準駆動回転軸Aと作動回転軸B1(B2〜B4)との距離)をr〔m〕、シリンジ状容器50の公転周波数をf〔Hz〕、シリンジ状容器50の自転角度(シリンジ状容器50の中心軸Cと作動回転軸B1(B2〜B4)とがなす角度)をθ〔°〕とすると、ペースト材料Pに作用される遠心力の最大値F
max〔N〕は、 (式1) F
max=m・r・(2πf)
2cosθ
で示される。従って、シリンジ状容器50の内半径をb〔m〕、遠心力の平均値をF(=F
max/2)とすると、ガス透過膜75に作用される圧力の平均値P〔Pa〕は、
(式2) P=F/(π・b
2)
で示される。
【0032】
一方、ハーゲンポアズイユの法則より、ガス透過膜75の細孔中を流れるペースト材料の流量q〔m
3/s〕は、ガス透過膜75の細孔半径(平均半径あるいは保留粒子半径)をa〔m〕、ガス透過膜75の膜厚をL〔m〕、ペースト材料Pの粘度をη〔Pa・s〕とすると、
(式3) q=(π・a
4・P)/(8・L・η)
で示される。
また、遠心力の作用を受けてペースト材料Pがガス透過膜75の細孔から流れ出ない限界流量q
min〔m
3/s〕は、
混練り時間の最大値t
max〔min〕、公転回転数の最大値をN
max〔rpm〕、ガス透過膜75に作用される遠心力による公転1回転中の加圧時間をtp〔s〕とすると、
(式4) q
min=(π・a
2・L)/(t
max・N
max・tp)
で示される。
従って、q<q
minであれば、ペースト材料Pはガス透過膜75の細孔から排出されないこととなるから、上記(式3)および(式4)より、
(式5) a/L<{8/(P・t
max・N
max・tp)}
1/2・η
1/2
=α・η
1/2
の関係式が導かれる。
【0033】
上記の真空混練脱泡装置においては、例えば、シリンジ状容器50内に収容されるペースト材料Pの最大質量mが5〜50g(シリンジ状容器50の容量の60〜80%)、シリンジ状容器50の公転半径rが80〜120〔mm〕、シリンジ状容器50の公転周波数fが5〜20Hz、シリンジ状容器50の自転角度θが15〜60°、シリンジ状容器50の内半径bが4〜12mm、シリンジ状容器50の公転周期Tが50〜200〔ms〕、公転時間が10分以内、シリンジ状容器50の公転速度と自転速度との比(回転数比)nが1/2〜1/10とされ、従って、最大の遠心力および最大の公転時間の条件で、細孔からペースト材料Pが流れでないαの値は0.37×10
-3以下の大きさとされる。
また、上記の真空混練脱泡装置において処理されるペースト材料Pの粘度の下限値η
minは、例えば0.2Pa・s程度であることから、ガス透過膜75の厚みが60μm以上(最小値L
minが60μm)である場合には、ガス透過膜75における細孔の半径の下限値a
minは、上記式(5)より、a
min=L
min×α
max×η
min(1/2) ≒0.01〔μm〕となり、ガス透過膜75の細孔の下限値は0.02μmとなる。
一方、ガス透過膜75における細孔径の上限値a
maxは、処理されるペースト材料Pが、例えば、ペースト状の熱硬化性樹脂材料中に粒子状の蛍光物質が混入されてなるLED製造用の封止剤などの、液体と粒状体とが混入されたものである場合などにおいて、粒状体(蛍光物質)が細孔から排出されない大きさとされていればよい。例えばLED製造用の封止剤における蛍光物質の粒子径は、通常、例えば10μmより大きいことから、ガス透過膜75における細孔径の上限値a
maxを20μmに設定することができる。
【0034】
このような構成の真空混練脱泡装置においては、
図5(A)に示すように、歳差運動によってシリンジ状容器50がその中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aから離間するよう外側に倒れた状態から、
図5(B)に示すように、歳差運動によってシリンジ状容器50がその中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aに接近するよう内側に倒れた状態に至る過程において、ペースト材料Pに混入している気泡は、シリンジ状容器50内の真空界面に激しく接触されるよう脱泡作用を受けてシリンジ状容器50の内部空間Sに放出(脱泡)される。
そして、シリンジ状容器50の内部空間Sに放出された気体(空気)は、
図5(B)に示す状態から
図5(A)に示す状態に至る過程において、シリンジ状容器50内のペースト材料Pが、シリンジ状容器50の公転運動および歳差運動による公転用回転板15の径方向外方に向かう遠心力Fの作用により、シリンジ状容器50の内部空間Sにおける気体を押圧しながらシリンジ状容器50の軸方向上端側に移動され、これにより、シリンジ状容器50の内部空間Sにおける気体がガス透過膜75を透過して貫通孔62を介してシリンジ状容器50の外部に排出されてシリンジ状容器50内が所定の減圧状態に維持される。ここに、ペースト材料Pに作用される遠心力Fが最大となる状態(
図5(A)に示す状態)においても、ペースト材料Pは、ペースト材料P自体の粘性によって、ガス透過膜75の細孔から排出されることがない。
【0035】
而して、上記の真空混練脱泡装置においても、第1の実施の形態に係る真空混練脱泡装置と同様の効果、すなわち、シリンジ状容器50内のペースト材料Pをその全体にわたって均一にしかも十分に混練することができ、しかも、細孔径が特定の大きさとされたガス透過膜75を備えた蓋部材70がシリンジ状容器50の一端側の開口部に設けられた構成とされていることにより、脱泡作用を受けてシリンジ状容器50の内部空間Sに放出された気体をガス透過膜75を介してシリンジ状容器50の外部に排出することができてシリンジ状容器50内を適正な減圧状態に維持することができるので、ペースト材料Pの脱泡を高い効率でかつ十分に行うことができ、処理後のペースト材料は、品質の均一性の高いものとなる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、第1の実施の形態に係る真空混練脱泡装置においては、シリンジ状容器に設けられる脱気弁は、弁体それ自体の質量に作用する遠心力により作動される構成のものに限定されず、
図6(A)および
図6(B)に示すように、シリンジ状容器50内に収容されたペースト材料Pが遠心力の作用を受けることにより生ずるペースト材料Pによる圧力によって作動される構成のものとすることができる。このような構成においても、上記の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0037】
この脱気弁60Aは、上記の実施例における脱気弁60において、弁体65が本体部68の下端に軸部66Aを介して連続する、シリンジ状容器50の内径より小さい外径を有する円板状の受圧板69をさらに有することの他は、上記の脱気弁60と同一の構成を有する。ここに、弁体65における受圧板69の周面とシリンジ状容器50の内周面との間には、ペースト材料Pより脱気された気体のみを通過させる大きさの微小間隙Kが形成されている。
この脱気弁60Aは、
図6(A)に示すように、自転用作動回転軸体21(自転用従動回転軸体25)の自転によってシリンジ状容器50がその中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aから離間するよう外側に倒れた状態にあるときに、シリンジ状容器50内のペースト材料Pが受ける、公転用回転板15の径方向外方へ向かう遠心力Fの作用によって、弁体65の受圧板69がペースト材料Pによって外方に向かって押圧されることにより、本体部68の上面がホルダー61の端壁61Aの内面に当接されてホルダー61の貫通孔62の内周面と弁体65の軸部66の外周面との間に形成された微小間隙Gを閉塞するよう移動されて、シリンジ状容器50の内部空間Sを閉鎖する閉位置と、
図6(B)に示すように、自転用作動回転軸体21(自転用従動回転軸体25)の自転によってシリンジ状容器50がその中心軸Cの上方が下方より上方側に向かうに従って
基準駆動回転軸Aに接近するよう内側に倒れた状態にあるときに受ける、公転用回転板15の径方向外方へ向かう遠心力Fの作用により、本体部68の上面がホルダー61の端壁61Aの内面より離間してシリンジ状容器50の内部空間を微小間隙Gを介して減圧されたチャンバ10の内部空間に開放する開位置との間で、摺動可能に設けられている。
そして、弁体65が開位置にあるときに、シリンジ状容器50の内部空間Sが、受圧板69の周面とシリンジ状容器の内周面との間に形成された微小間隙K、および、弁体65の軸部66の外周面とホルダー61の貫通孔62の内周面との間に形成された微小間隙Gを介して、減圧されたチャンバ10の内部空間に連通され、これにより、ペースト材料Pが脱泡作用を受けることによりシリンジ状容器50の内部空間Sに放出された気体がシリンジ状容器50の外部に排出されてシリンジ状容器50内が所定の減圧状態に維持される。
【0038】
また、本発明の真空混練脱泡装置においては、シリンジ状容器を保持する容器保持部の数は、特に限定されるものではない。
さらにまた、シリンジ状容器の公転運動と歳差運動が達成される構成であれば、自転用作動回転軸体駆動機構は上記構成のもの限定されるものではなく、例えば遊星歯車機構などにより構成されていてもよく、公転運動と歳差運動との動力源が共通であることも必ずしも必要ではない。