(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記PSA部が、前記原料空気から窒素を吸着して高濃度酸素を生成する吸着工程と吸着した窒素を脱離して窒素富化空気を排出する再生工程とが交互に切り替えられる2つのシーブベッドと、
前記圧縮空気を一方の前記シーブベッドに送出するとともに、他方の前記シーブベッドからの窒素富化空気を排出する流路切替部と、を有し、
前記酸素供給部から前記高濃度酸素が放出されていない期間に、2つの前記シーブベッドに前記圧縮空気が供給されないように、前記PSA制御部が前記流路切替部を制御することを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮器。
【背景技術】
【0002】
酸素濃縮器は主として、呼吸器疾患の患者が在宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)において使用されるもので、PSA式と酸素富化膜式が知られている。
図1は、一般的なPSA式の酸素濃縮器の概略構成を示す図である。
図1に示すように、PSA式の酸素濃縮器1は、空気取入部10、空気圧縮部20、PSA部30、酸素貯留部40、及び酸素供給部50を備えている。
【0003】
酸素濃縮器1において、空気取入部10から導入された原料空気は、空気圧縮部20で圧縮されて圧縮空気となり、この圧縮空気がPSA部30に送出される。
PSA部30は、酸素より窒素を早く吸着する性質を有するゼオライト等の吸着剤が充填された2本のシーブベッド(吸着塔)33A、33Bを有している。シーブベッド33A、33Bに圧縮空気が送り込まれて加圧状態になると、窒素及び水分が吸着されて酸素だけが通過し、高濃度酸素が生成される。一方、窒素を吸着したシーブベッド33A、33Bが減圧状態(例えば大気圧)に戻されると、吸着していた窒素が脱離して放出され、シーブベッド33A、33Bの吸着能力が再生される。つまり、PSA部30において、2本のシーブベッド33A、33Bで交互に加圧減圧を繰り返すことにより、連続して高濃度酸素を生成することができる。
【0004】
PSA部30で生成された高濃度酸素は、一旦酸素貯留部40の製品タンク41に貯留された後、圧力調整部(圧力レギュレータ)42により一定圧力に調整される。そして、高濃度酸素は酸素供給部50から一定流量で放出され、当該酸素濃縮器1に接続された鼻カニューラや酸素マスク等を介して使用者(患者)の体内に供給される。
【0005】
また、酸素濃縮器1では、所望の酸素濃度が実現されているかを監視するために、製品タンク41に貯留されている高濃度酸素の濃度を定期的(例えば20分間隔)に計測する必要がある。そのため、従来の酸素濃縮器1では、
図2に示すように製品タンク41から送出された高濃度酸素を圧力調整部42により一定圧力とした後、流量制限オリフィス45を介して酸素センサ43で計測する構成が採用されている(例えば特許文献1)。この酸素濃度の計測には、例えばジルコニア方式の酸素センサが用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図3は、本発明の一実施の形態に係る酸素濃縮器の配管系統の概略構成を示す図である。
図3に示す酸素濃縮器1は、空気取入部10、空気圧縮部20、PSA部30、酸素貯留部40、酸素供給部50を備えたPSA式の酸素濃縮器である。
【0014】
空気取入部10は、原料空気となる外気を筐体内に取り入れる部分で、吸気フィルタ11、ヘパフィルタ12等を備えている。吸気フィルタ11は、筐体に設けられた空気取入口13を介して導入された原料空気からゴミや埃等の空中浮遊粒子を除去する。ヘパフィルタ12は、吸気フィルタ11により除去されなかった微細粒子を除去する。空気取入口13から導入された原料空気は、吸気フィルタ11、ヘパフィルタ12によって濾過され、空気圧縮部20に送出される。
【0015】
空気圧縮部20は、導入された原料空気を圧縮して圧縮空気を生成する、いわゆるコンプレッサである。空気圧縮部20の下流には、温度上昇した圧縮空気を冷却するために放熱効果に優れた冷却パイプ21が配管される。原料空気は空気圧縮部20で圧縮されることにより温度上昇しており、そのままではPSA部30における窒素の吸着効率が低下するため、冷却パイプ21を通過させることにより原料空気を冷却するようになっている。
空気圧縮部20で生成された圧縮空気は、冷却パイプ21において冷却され、PSA部30に送出される。
なお、空気圧縮部20の上流(ヘパフィルタ12の下流)には、空気圧縮部20の動作音に対して消音効果を発揮する膨張型消音器(サイレンサ)を配設するのが望ましい。
【0016】
空気圧縮部20及び冷却パイプ21の近傍には、これらを冷却するための冷却ブロワ70が配設される。冷却ブロワ70は、筐体に設けられた吸気口(図示略)から外気を吸引し、空気圧縮部20及び冷却パイプ21に向けて送風する。送風された冷却風は、筐体に設けられた排気口(図示略)から排気される。なお、冷却ブロワ70の吸気口として、前述の空気取入口13を共用してもよい。
【0017】
PSA部30は、空気圧縮部20で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素を生成し、酸素貯留部40に送出する部分で、流路切替部31、排気サイレンサ32、シーブベッド(吸着塔)33A、33B、パージオリフィス34、均圧弁35、逆止弁36、36等を備えている。
【0018】
流路切替部31は、4つの切替弁SV1〜SV4を備えたマニホールド(多岐管)で構成され、空気圧縮部20で生成された圧縮空気をシーブベッド33A、33Bに交互に送出するとともに、シーブベッド33A、33Bを交互に大気圧に開放して窒素富化空気を排出させる。
切替弁SV1の上流側には冷却パイプ21からの配管が接続され、下流側にはシーブベッド33Aへの配管が接続される。同様に、切替弁SV3の上流側には冷却パイプ21からの配管が接続され、下流側にはシーブベッド33Bへの配管が接続される。
また、切替弁SV2の上流側には切替弁SV1又はシーブベッド33Aからの配管が接続され、下流側には排気サイレンサ32への配管が接続される。同様に、切替弁SV4の上流側には切替弁SV3又はシーブベッド33Bからの配管が接続され、下流側には排気サイレンサ32への配管が接続される。
【0019】
流路切替部31では、切替弁SV1が“開”、切替弁SV2が“閉”とされることにより、空気圧縮部20からシーブベッド33Aに向かう流路が開通される一方で、シーブベッド33Aから排気サイレンサ32に向かう流路が閉鎖される(
図4参照)。同時に、流路切替部31では、切替弁SV3が“閉”、切替弁SV4が“開”とされることにより、空気圧縮部20からシーブベッド33Bに向かう流路が閉鎖される一方で、シーブベッド33Bから排気サイレンサ32に向かう流路が開通される。この場合、空気圧縮部20で生成された圧縮空気がシーブベッド33Aに送出され、シーブベッド33Bからは窒素富化空気が放出されて排気サイレンサ32を介して排気されることとなる。
また、切替弁SV1〜SV4が上記と逆の状態となっている場合は、空気圧縮部20で生成された圧縮空気がシーブベッド33Bに送出され、シーブベッド33Aからは窒素富化空気が放出されて排気サイレンサ32を介して排気されることとなる(
図4参照)。切替弁SV1〜SV4の開閉状態は、例えば10秒間隔で切り替えられる。
【0020】
排気サイレンサ32は、酸素濃縮器1の筐体に設けられた排気口(図示略)に接続され、シーブベッド33A、33Bから放出された窒素富化空気を筐体の外部に排出する際の排気音を消音する。
【0021】
シーブベッド33A、33Bは、流路切替部31を介して送られてきた圧縮空気から窒素を分離し、高濃度酸素を生成する。シーブベッド33A、33Bには、酸素より窒素を早く吸着する性質を有するゼオライト等の吸着剤が充填されている。ゼオライトとは、結晶中に微細孔をもつアルミノ珪酸塩(例えばアルカリ土類金属を含む結晶性含水アルミノ珪酸塩)からなる多孔質材料であり、市販されている各種のゼオライトを使用することができる。
【0022】
シーブベッド33A、33Bは、流路切替部31によって空気圧縮部20からの流路が開通されているとき、圧縮空気が送り込まれて加圧状態となる。このとき、シーブベッド33A、33Bでは、窒素及び水分が吸着され、酸素だけが通過するため、高濃度酸素が生成される(吸着工程)。
シーブベッド33A、33Bで生成される高濃度酸素の濃度は、例えば90%程度に調整される。また、ゼオライトは窒素のみならず水分をも吸着するので、シーブベッド33A、33Bで生成される高濃度酸素は極めて乾燥した状態となる(例えば湿度0.1〜0.2%)。
【0023】
一方、シーブベッド33A、33Bは、流路切替部31によって排気サイレンサ32への流路が開通されているとき、大気圧に開放されて減圧状態となる。このとき、ゼオライトに吸着していた窒素及び水分が脱離され、シーブベッド33A、33Bから窒素富化空気が放出され、排気サイレンサ32を介して排気される。これにより、シーブベッド33A、33Bの吸着能力が再生される(再生工程)。
【0024】
シーブベッド33A、33Bは、逆止弁36、36を介して酸素貯留部40の製品タンク41に接続されている。逆止弁36、36は、製品タンク41に貯留された高濃度酸素がシーブベッド33A、33Bに逆流するのを防止する。
【0025】
また、シーブベッド33A、33Bの下流側は、パージオリフィス34を有する配管で接続されている。一方のシーブベッド33A(又は33B)で生成された高濃度酸素は、逆止弁36を介して酸素貯留部40に送出されるとともに、パージオリフィス34を介して他方のシーブベッド33B(又は33A)に送出される。生成された高濃度酸素の一部が他方のシーブベッド33B(又は33A)に送り込まれることにより、当該シーブベッド33B(又は33A)の再生工程が効率よく行われる。パージオリフィス34のオリフィス径によって、それぞれの流路における高濃度酸素の流量が制御される。
【0026】
また、シーブベッド33A、33Bの下流側は、均圧弁35を有する配管で接続されている。再生工程にあるシーブベッド33A、33Bを吸着工程に切り替える際、減圧(大気圧)下にそのまま圧縮空気を流入させると窒素の吸着効率が悪い。そのため、切替時に均圧弁35が“開”とされ、シーブベッド33A、33Bの圧力が平均化される。
【0027】
酸素貯留部40は、PSA部30で生成された高濃度酸素を一時的に貯留しておく部分で、製品タンク41、酸素センサ43、及び圧力センサ44等を備えている。
【0028】
製品タンク41は、シーブベッド33A、33Bで生成された高濃度酸素を貯留するための容器である。シーブベッド33A、33Bから送出された高濃度酸素を一旦製品タンク41に貯留しておくことにより、高濃度酸素の濃度変動及び圧力変動が抑制されるので、使用者に安定した濃度および流量で高濃度酸素を供給できる。
【0029】
酸素センサ43は、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の濃度を、所定の間隔(例えば20分)で検出する。酸素センサ43には、例えばジルコニア式や超音波式のセンサが好適である。
測定対象となる高濃度酸素の圧力が変動していると正確な測定が困難となるため、従来は、圧力調整部42の下流に流量制限オリフィス45を介して酸素センサ43が接続されていた(
図2参照)。これに対して、本実施の形態の酸素濃縮器1では、製品タンク41の圧力が変動しない期間を設け、このタイミングで酸素濃度を測定するため、圧力調整部を省略することができる。
【0030】
圧力センサ44は、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力を検出する。圧力センサ44による検出結果に基づいて、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力が正常な範囲に保持されているかを確認できる。圧力センサ44は、200kPa程度の圧力を検出可能な測定レンジの比較的広いものであればよく、微少な圧力変動を検出できる程度の精度は要求されない。
【0031】
酸素供給部50は、酸素貯留部40から送出された高濃度酸素を、使用者の呼吸に同調して酸素出口55から放出する部分で、バクテリアフィルタ51、同調弁52、及び圧力センサ53等を備えている。
【0032】
バクテリアフィルタ51は、使用者に清浄な高濃度酸素を供給するために、高濃度酸素に含まれる細菌類を捕集して除菌する。
【0033】
同調弁52は、ポートP1〜P3を有する三方弁で構成され、使用者の呼吸に応じて開通する流路を切り替えるとともに、流路の開度を調整することで使用者に供給する高濃度酸素の流量を制御する。同調弁52のポートP1にバクテリアフィルタ51が接続され、ポートP2に酸素出口55に接続され、ポートP3に圧力センサ53が接続される。
例えば、同調弁52が開いたとき、ポートP1とポートP2を結ぶ流路(第1流路)が開通され、高濃度酸素が酸素出口55から放出される。一方、同調弁52が閉じたとき、ポートP2とポートP3を結ぶ流路(第2流路)が開通され、使用者の呼吸に伴う圧力変動が圧力センサ53によって検出可能となる。
【0034】
圧力センサ53は、使用者の呼吸を検出するためのセンサであり、同調弁52のポートP3に接続されるとともに、同調弁52の下流側(ポートP2と酸素出口55を結ぶ流路)に流量制限オリフィス54を介して接続されている。したがって、同調弁52が“閉”となっている状態(第2流路が開通している状態)では使用者の呼吸に伴って変化する圧力を検出することができ、同調弁52が“開”となっている状態(第1流路が開通している状態)では酸素供給に伴って変化する圧力を検出することができる。
なお、使用者の呼吸に伴う微少な圧力変動を確実に検出するため、圧力センサ53としては、測定レンジが±4kPaのものが好適である。
【0035】
酸素濃縮器1では、圧力センサ53による検出結果に基づいて、同調弁52の開閉状態が制御される。具体的には、同調弁52が“閉”となっている状態で、圧力センサ53により陰圧が検出されると、同調弁52が瞬時に“開”とされ、高濃度酸素の供給が開始される。そして、所定時間(例えば0.08秒)経過後、同調弁52が“閉”とされることにより、所定量の高濃度酸素が放出される。酸素供給部50から放出された高濃度酸素は、酸素出口55に接続された鼻カニューラや酸素マスクを介して使用者に供給される。
なお、高濃度酸素は極めて乾燥した状態となっているので、酸素出口55の上流に、高濃度酸素を加湿するための加湿部を配設してもよい。
【0036】
図5は、本実施の形態に係る酸素濃縮器の制御系統の概略構成を示す図である。
図5に示すように、制御部60は、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、ROM(Read Only Memory)63等を備えている。CPU61は、処理内容に応じたプログラムをROM63から読み出してRAM62に展開し、展開したプログラムと協働して酸素濃縮器1の各ブロックの動作を制御する。
【0037】
具体的に説明すると、制御部60には、酸素貯留部40の酸素センサ43、酸素供給部50の圧力センサ53、温度センサ71、その他の各種センサからの検出信号が入力される。また、制御部60には、操作ボタン等を有する操作部81において、例えば使用者による供給流量の設定が行われた場合に、設定流量を指示する操作信号が入力される。
そして、制御部60は、これらの入力信号に基づいて、例えば空気圧縮部20や冷却ブロワ70の駆動モータの回転数を制御したり、流路切替部31の切替弁SV1〜SV4や同調弁52の開閉状態や開度を制御したりする。このような制御により、酸素濃縮器1から設定流量で高濃度酸素が供給される。
【0038】
また、制御部60は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などからなる表示部82における表示に係る制御や、スピーカ83からの音声出力に係る制御を行う。表示部82及びスピーカ83は、使用者に各種の情報を報知する際に用いられる。
図示を省略するが、酸素濃縮器1に無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)等の通信ネットワークに接続可能なインターフェースを設け、外部機器との間で各種データを送受信できるようにしてもよい。
【0039】
酸素濃縮器1では、製品タンク41に貯留されている高濃度酸素の濃度が、製品タンク41に直接接続された酸素センサ43によって測定される。このとき、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の濃度を酸素センサ43で正確に測定するためには、圧力を一定にする必要がある。しかしながら、酸素濃縮器1においては、高濃度酸素の圧力を一定に調整する圧力調整部が設けられていないため、シーブベッド33A、33Bから送出された高濃度酸素の流入及び使用者の呼吸に伴う高濃度酸素の放出によって、製品タンク41に貯留されている高濃度酸素の圧力は変動することとなる。
そこで、本実施の形態では、酸素供給部50から高濃度酸素が放出されていない期間に、シーブベッド33A、33Bから高濃度酸素が流入するのを一時的に停止させ、このタイミングで酸素センサ43からの検出信号に基づいて酸素濃度を測定する。この処理は、具体的には
図6に示すフローチャートに従って行われる。
【0040】
ここで、酸素供給部50から高濃度酸素が放出されていない期間とは、同調弁52が“閉”とされている期間であり、使用者の呼気期間(空気を吐いている期間)とほぼ一致する。ただし、呼気が始まる前に同調弁52が“閉”となる場合(高濃度酸素の供給時間が短い場合)もあれば、呼気が始まっても同調弁52が“開”となって場合(高濃度酸素の供給時間が長い場合)もある。
【0041】
図6は製品タンク41に貯留されている高濃度酸素の濃度を酸素センサ43で測定する際の酸素濃度測定処理の一例について示すフローチャートで、
図7は酸素濃度測定時の流路切替部31の切替弁SV1〜SV4の開閉状態の一例を示すタイミングチャートである。この酸素濃度測定処理は、CPU61がROM63に格納された所定のプログラムを実行することにより実現される。ここでは、20分間隔で酸素濃度を測定するものとする。
【0042】
図6のステップS101において、制御部60は、前回の酸素濃度測定から20分が経過したか否かを判定する。そして、前回の酸素濃度測定から20分が経過したと判定した場合に、ステップS102に移行する。
【0043】
ステップS102では、使用者の呼吸が安定しているか否かを判定する。そして、使用者の呼吸が安定していると判定した場合はステップS103に移行し、安定していないと判定した場合は安定するまで待機する。使用者の呼吸が安定していない場合に酸素濃度の測定を実行すると、酸素濃度の測定中に高濃度酸素が放出されることにより、製品タンク41に貯留されている高濃度酸素の圧力が変動してしまい、酸素濃度が正確に測定されない虞があるためである。
【0044】
使用者の呼吸が安定しているか否かを判定する手法としては、例えば、呼吸間隔の1分間の移動平均と直前2回の平均を比較し、これらの差によって判断することが考えられる。人間の呼吸間隔が3〜3.75秒(16〜20回/分)であることに鑑みると、呼吸間隔の1分間の移動平均と直前2回の平均の差が200m秒以下の微差であれば、呼吸が極めて安定していると判断してよい。
なお、呼吸間隔の1分間の移動平均と直前2回の平均は、圧力センサ53による呼吸検出に基づいて、例えばRAM62に呼吸間隔を逐一記憶しておくことにより、容易に算出することができる。
【0045】
ステップS103では、呼吸が安定していると判断できた直後の吸気に伴う酸素供給が終了したか否か、すなわち同調弁52が“開”から“閉”に切り替えられたか否かを判定する。そして、次の吸気に伴う酸素供給が終了したと判定した場合に、ステップS104に移行する。
【0046】
ステップS104では、流路切替部31の切替弁SV1〜SV4をすべて“開”とする。つまり、
図7に示すように、切替弁SV1、SV4が“開”、切替弁SV2、SV3が“閉”となっており、シーブベッド33Aが吸着工程、シーブベッド33Bが再生工程にある場合、切替弁SV1、SV4の開閉状態は保持され、切替弁SV2、SV3は“閉”から“開”に切り替えられる。
【0047】
切替弁SV1〜SV4の開閉状態が上述したように制御されると、シーブベッド33A、33Bが大気圧に開放されるため、空気圧縮部20からの圧縮空気は、切替弁SV1、SV3を通過した後、切替弁SV2、SV4を通過して排気されることとなる。つまり、シーブベッド33A、33Bには圧縮空気が流入してこないので、新たに高濃度酸素が生成されることはない。また、逆止弁36、36により、製品タンク41に貯留されている高濃度酸素がPSA部30に逆流することもない。
また、同調弁52が“開”から“閉”に切り替えられた直後は、酸素供給部50から高濃度酸素が放出されていないので、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力は、変動することなく一定に保持されることになる。
【0048】
ステップS105では、酸素センサ43からの検出信号に基づいて、製品タンク41に貯留されている高濃度酸素の濃度を測定する。
図7に示すように、切替弁SV1〜SV4がすべて“開”となっている期間は、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力が一定となるため、酸素濃度を正確に測定することができる。
なお、圧力センサ53によって次の吸気が検出されると、高濃度酸素の供給が開始されるために製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力が変動する。そこで、酸素濃度の測定は、高濃度酸素の供給が開始されるまでに行う必要がある。1回の呼吸が3秒(20回/分)で、吸気時間と呼気時間の比率が1:2であるとすると、同調弁52が“閉”とされた後、2秒以内に酸素濃度が測定されればよいことになる。
【0049】
ステップS106では、流路切替部31の切替弁SV1〜SV4を元の状態に戻し、シーブベッド33A、33Bにおいて吸着工程又は再生工程を再開させる。ここで、切替弁SV1〜SV4の開閉状態は、予め設定された時間(例えば2.6秒)が経過した後切り替わるようにしてもよいし、酸素濃度の測定終了に伴い切り替わるようにしてもよい。また、
図7では、次の吸気が検出される前に切替弁SV1〜SV4の開閉状態が切り替わる場合について示しているが、次の吸気が検出された後に切り替わるようにしても構わない。ただし、シーブベッド33A、33Bにおける吸着工程又は再生工程の効率を考えると、酸素濃度の測定が終了した後、できるだけ早期に切替弁SV1〜SV4の開閉状態を切り替えるのが望ましい。
【0050】
このように、本実施の形態に係る酸素濃縮器1は、原料空気を導入する空気取入部(10)と、空気取入部(10)を介して導入された原料空気から圧縮空気を生成する空気圧縮部(20)と、空気圧縮部(20)で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素を生成するPSA部(30)と、PSA部(30)により生成された高濃度酸素を貯留する酸素貯留部(40)と、酸素貯留部(40)に貯留されている高濃度酸素を、使用者の呼吸に同調して酸素出口(55)から放出する酸素供給部(50)と、酸素貯留部(40)における高濃度酸素の濃度を検出する酸素濃度検出部(酸素センサ43)と、を備えている。
また、酸素供給部(50)から高濃度酸素が放出されていない期間に、PSA部(30)における高濃度酸素の生成を一時的に停止させ、酸素貯留部(40)における圧力を一定に保持するPSA制御部(制御部60、
図6のフローチャート)を備えている。そして、PSA制御部(制御部60)により酸素貯留部(40)の圧力が一定に保持されているときに、酸素濃度検出部(酸素センサ43)が高濃度酸素の濃度を検出する。
【0051】
酸素濃縮器1によれば、酸素貯留部40における高濃度酸素の圧力を一時的に一定とし、このタイミングで酸素濃度を計測するので、酸素濃度を正確に計測することができる。また、酸素貯留部40における高濃度酸素の圧力を一定とするために従来採用されていた圧力調整部や酸素センサ専用のオリフィス管(流量制限オリフィス45)を省略することができるので、酸素濃縮器の小型化・軽量化を図ることができる。
【0052】
また、酸素濃縮器1では、PSA制御部(制御部60)が、酸素供給部(50)において検出された使用者の呼吸間隔が安定しており、かつ、酸素供給部(50)からの高濃度酸素の放出が終了した直後に、PSA部(30)における高濃度酸素の生成を所定時間停止させる。
これにより、酸素貯留部40における高濃度酸素の圧力が確実に一定となる(使用者の呼吸によって変動しない)タイミングで酸素濃度が測定されるので、酸素濃度を正確に測定することができる。
【0053】
また、酸素濃縮器1では、PSA部(30)が、原料空気から窒素を吸着して高濃度酸素を生成する吸着工程と吸着した窒素を脱離して窒素富化空気を排出する再生工程とが交互に切り替えられる2つのシーブベッド(33A、33B)と、圧縮空気を一方のシーブベッド(33A又は33B)に送出するとともに、他方のシーブベッド(33B又は33A)からの窒素富化空気を排出する流路切替部(31)と、を有している。そして、酸素供給部(50)から高濃度酸素が放出されていない期間に、2つのシーブベッド(33A、33B)に圧縮空気が供給されないように、PSA制御部(制御部60)が流路切替部(31)を制御する。
【0054】
具体的には、酸素濃縮器1では、流路切替部(31)が、一方のシーブベッド(33A)への圧縮空気の供給流路を開閉する第1切替弁(SV1)と、この一方のシーブベッド(33A)からの窒素富化空気の排気流路を開閉する第2切替弁(SV2)と、他方のシーブベッド(33B)への圧縮空気の供給流路を開閉する第3切替弁(SV3)と、この他方のシーブベッド(33B)からの窒素富化空気の排気流路を開閉する第4切替弁(SV4)と、を有している。そして、酸素供給部(50)から高濃度酸素が放出されていない期間に、PSA制御部(制御部60)が第1〜第4切替弁(SV1〜SV4)をすべて開状態とする。
これにより、PSA部30が本来有している流路切替部31の切替弁SV1〜SV4を制御するだけで、PSA部30における高濃度酸素の生成を容易に停止させることができる。すなわち、実施の形態に係る酸素濃縮器1を実現するに際し、新たに部品を追加する必要はない。
【0055】
[変形例]
図7に示すように、シーブベッド33A、33Bで行われている吸着/再生工程を一旦停止させ、酸素濃度を測定した後に再開させると、吸着/再生効率が少なからず低下する。そのため、吸着/再生工程の本来の切替タイミングを考慮して、流路切替部31の切替弁SV1〜SV4を制御するのが望ましい。
【0056】
図8は、酸素濃度測定時の流路切替部31の切替弁SV1〜SV4の開閉状態の他の一例を示すタイミングチャートである。
図8に示す例では、患者の呼吸が安定した後、吸着/再生工程の本来の切替タイミングの直前になる吸気タイミングを予測しておく。そして、その吸気に伴う酸素供給が終了した直後に、流路切替部31の切替弁SV1〜SV4をすべて“開”とする。
図8に示すように、切替弁SV1、SV4が“開”、切替弁SV2、SV3が“閉”となっており、シーブベッド33Aが吸着工程、シーブベッド33Bが再生工程にある場合、切替弁SV1、SV4の開閉状態は保持され、切替弁SV2、SV3は“閉”から“開”に切り替えられる。製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力が一定となるので、この期間に酸素センサ43からの検出信号に基づいて酸素濃度を測定する。
【0057】
その後、流路切替部31の切替弁SV1、SV4を“閉”に切り替えて、シーブベッド33Aにおいては再生工程を、シーブベッド33Bにおいては吸着工程を開始させる。つまり、酸素濃度の測定前後で、シーブベッド33A、33Bの吸着/再生工程が切り替わることになる。これにより、シーブベッド33A、33Bにおける吸着/再生効率が損なわれることなく、正確に酸素濃度を測定することができる。
【0058】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、酸素供給部50からの高濃度酸素の放出が終了した後に即座に次の吸気が開始される可能性は低いので、
図6のステップS102の処理を省略してもよい。
また、酸素濃度の測定間隔(実施の形態では20分)は任意に設定することができる。また、酸素濃縮器1の電源をオフするときに、切替弁SV1〜SV4を“開”として酸素濃度を測定してもよい。このとき、空気圧縮部20はオフ状態とし、冷却ブロワ70はオン状態のままとする。そして、測定した酸素濃度に異常があった場合、アラームを出力する。
【0059】
また、酸素濃度を測定する際に、切替弁SV1、SV3を“閉”とすることにより、シーブベッド33A、33Bにおける高濃度酸素の生成を停止させるようにしてもよい。この場合、切替弁SV2、SV4の開閉状態は任意であるが、それまでの吸着/再生工程での状態を保持した方が効率がよい。また、切替弁SV1、SV3を“閉”にすると、空気圧縮部20のコンプレッサ圧が上昇してしまうので、時間的な制約を受ける。つまり、実施の形態で示したように、切替弁SV1〜SV4を全部“開”とする方が、空気圧縮部20のコンプレッサ圧が使用圧力範囲以上に上昇せず、時間的な制約がないので望ましい。
また、実施の形態では、流路切替部31に二方弁からなる4つの切替弁を配設しているが、三方弁からなる2つの切替弁を配設するようにしてもよい。この場合、2つの切替弁をともに“閉”とすることで、シーブベッド33A、33Bにおける高濃度酸素の生成を停止させることができる。
さらに、酸素センサ43は、製品タンク41に直接ではなく、製品タンク41から同調弁52までの配管に配設してもよい。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。