(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン・プロピレン共重合体から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のシーリング組成物。
充填剤を、前記ゴム成分および前記ポリオレフィンの総量100重量部に対して、1〜100重量部含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のシーリング組成物。
前記充填剤は、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンおよびカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載のシーリング組成物。
前記吸湿性化合物が、シリカゲル、アルミナおよびゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のシーリング組成物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のシーリング組成物は、各種産業製品の封止に用いられ、ゴム成分と、ポリオレフィンとを含有している。
【0026】
ゴム成分は、ブチルゴムと、ポリイソブチレンとを含有している。
【0027】
ブチルゴムは、イソブテン(イソブチレン)および少量のイソプレンの共重合体(イソブチレン・イソプレンゴム)であり、水蒸気バリア性が高いゴム弾性体である。
【0028】
ブチルゴムの不飽和度は、例えば、0.6〜2.5モル%、好ましくは、0.7〜2.0モル%である。ブチルゴムの不飽和度は、ヨウ素吸着法により測定される。
【0029】
また、ブチルゴムのムーニー粘度は、例えば、20〜70(ML
1+8、125℃)、好ましくは、30〜60(ML
1+8、125℃)である。
【0030】
ブチルゴムは、その粘度平均分子量が、例えば、30万〜70万、好ましくは、30万〜50万である。
【0031】
粘度平均分子量は、JIS K 7252 01(2008年)に準拠して、標準ポリスチレンを用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される。なお、後述の粘度平均分子量についても同様である。
【0032】
ポリイソブチレンは、イソブチレンの重合体である。ブチルゴムに高分子量のポリイソブチレンを配合することにより、ブチルゴムの高温における流れ性を向上(改善)することができ、優れた水蒸気バリア性を維持して、温度特性を向上させることができる。
【0033】
ポリイソブチレンは、その粘度平均分子量が、50万〜300万であり、好ましくは、70〜200万、さらに好ましくは、90万〜150万である。
【0034】
ポリイソブチレンの粘度平均分子量が上記した範囲に満たないと、後述する複層ガラス3または太陽電池パネル4の組付時に、液だれを生じる。一方、ポリイソブチレンの粘度平均分子量が上記した範囲を超えると、形状追従性が低下する。
【0035】
ブチルゴムおよびポリイソブチレンの配合割合は、それらの重量基準で、例えば、9/1〜1/6、好ましくは、4/1〜1/3である。
【0036】
ゴム成分の配合割合は、ゴム成分およびポリオレフィンの総量100重量部に対して、40〜90重量部、好ましくは、50〜80重量部である。ゴム成分の配合割合が上記した範囲内にあれば、広い温度領域におけるゴム弾性を維持することにより、水蒸気バリア性が向上する利点がある。
【0037】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン(例えば、線状低密度ポリエチレンなどの低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などが挙げられる。また、ポリオレフィンとして、エチレンまたはプロピレンと、他のα−オレフィンとの共重合体、あるいは、エチレンと、酸素含有エチレン性不飽和単量体との共重合体など挙げられる。
【0038】
α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。酸素含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなどが挙げられる。
【0039】
また、ポリオレフィンが、共重合体である場合には、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0040】
また、ポリオレフィンは、例えば、結晶性ポリオレフィンを含んでいる。
【0041】
また、ポリオレフィンの軟化点(環球法)は、例えば、100〜150℃、好ましくは、110〜140℃である。
【0042】
これらポリオレフィンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0043】
ポリオレフィンのうち、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン・プロピレン共重合体などが挙げられる。
【0044】
ポリレフィンの配合割合は、ゴム成分およびポリオレフィンの総量100重量部に対して、例えば、10〜60重量部、好ましくは、20〜50重量部である。
【0045】
本発明のシーリング組成物にポリオレフィンを配合することにより、ポリオレフィンの軟化点の温度領域までは補強性を示し、そのため、通常の使用温度下では、シーリング組成物からなるシーリング材が変形しにくくなる。一方、ラミネート(後述する上側ガラス層10への設置)などの熱融着時には、ブチルゴムよりも弾性率が低下することにより、混練物(シーリング組成物)の流れ性を調整しやすくする。また、成形時の表面平滑性が向上することができるので、低分子量のワックスなどを添加することなく、シーリング組成物からシール材1を所定形状に成形することができる。
【0046】
本発明のシーリング組成物は、上記した成分を必須成分として含有し、吸湿化合物を任意成分として含有している。
【0047】
吸湿性化合物は、後述する中間層3または封止樹脂層9に含まれる揮発成分または水分を吸着(吸湿、吸水)して、中間層3または封止樹脂層9の性能の低下を有効に防止する乾燥剤であって、任意的にシーリング組成物に配合される。
【0048】
吸湿性化合物としては、例えば、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト(人工ゼオライトであるモレキュラーシーブを含む)、活性炭、ボリア、酸化チタン、セピオライト、活性白土などが挙げられる。
【0049】
好ましくは、吸湿性の観点から、シリカゲル、アルミナ、ゼオライトが挙げられる。
【0050】
これら吸湿性化合物の平均粒子径は、例えば、1nm〜1000μm、好ましくは、10nm〜100μmである。
【0051】
これら吸湿性化合物の配合割合は、ゴム成分およびポリオレフィンの総量100重量部に対して、0〜30重量部(30重量部以下)、好ましくは、0〜20重量部(20重量部以下)である。
【0052】
吸湿化合物の配合割合が上記した範囲を超える場合には、外部の水を過剰に吸水し、しかも、内部(中間層または封止樹脂層)へ水を浸入させてしまう不具合がある。
【0053】
また、本発明のシーリング組成物には、例えば、充填剤、粘着付与剤を配合することができる。
【0054】
充填剤としては、顔料(例えば、無機顔料)などの無機充填剤が挙げられ、具体的には、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウムまたは軽質炭酸カルシウムなど)、タルク、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、酸化マグネシウムなどが挙げられる。好ましくは、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、カーボンブラックが挙げられる。さらに好ましくは、カーボンブラックが挙げられる。充填剤は、単独使用または併用することができる。
【0055】
充填剤の平均粒子径は、例えば、1nm〜1000μm、好ましくは、10nm〜100μmである。
【0056】
充填剤の配合割合は、ゴム成分およびポリオレフィンの総量100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは、1〜10重量部である。充填剤の配合割合が上記した範囲にあれば、補強性を向上させることができる。
【0057】
粘着付与剤としては、例えば、石油系樹脂、炭化水素系樹脂(例えば、C5−炭化水素系樹脂、フェノール系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂など)が用いられる。また、粘着付与剤として、低分子量ポリイソブチレンも挙げられる。低分子量ポリイソブチレンの粘度平均分子量は、例えば、30万未満、具体的には、1〜25万、好ましくは、3〜6万である。粘着付与剤は、単独使用または併用することができる。
【0058】
好ましくは、クマロン系樹脂、低分子量ポリイソブチレンが挙げられる。さらに好ましくは、クマロン系樹脂および低分子量ポリイソブチレンの併用が挙げられる。
【0059】
クマロン系樹脂の軟化点(荷重たわみ法)は、例えば、90〜140℃、好ましくは、100〜130℃である。
【0060】
粘着付与剤の配合割合は、ゴム成分およびポリオレフィンの総量100重量部に対して、1〜60重量部、好ましくは、2〜50重量部である。また、粘着付与剤として、クマロン系樹脂および低分子量ポリイソブチレンが併用またはそれぞれ単独で用いられる場合には、クマロン系樹脂および低分子量ポリイソブチレン配合割合が、それぞれ、例えば、1〜30重量部、好ましくは、2〜20重量部である。
【0061】
さらに、本発明のシーリング組成物には、必要により、例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系)、滑剤、老化防止剤、その他の顔料(有機顔料)、帯電防止剤、可塑剤、熱安定剤、シランカップリング剤(例えば、加水分解性シリル基含有化合物など)、発泡剤、その他の充填剤(有機充填剤)などの添加剤を適宜の割合で添加することができる。
【0062】
そして、本発明のシーリング組成物は、上記した各成分を上記した割合で配合して、加熱して混練して混練物として得ることができる。
【0063】
混練は、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールなどのバッチ式混練機や、2軸混練機などの連続混練機などが用いられる。混練における加熱温度は、例えば、80〜130℃、好ましくは、90〜120℃である。
【0064】
このようにして得られたシーリング組成物は、適宜の形状に成形することにより、シール材を得ることができる。
【0065】
図1は、本発明のシーリング組成物からなるシール材の一実施形態の断面図を示す。
【0066】
次に、本発明のシーリング組成物からなるシール材について、
図1を参照して説明する。
【0067】
上記により得られたシーリング組成物を、例えば、押出機、カレンダーロール、プレス機(熱プレス機)などの成形装置により、加熱して、例えば、シート形状に成形し、得られたシートを離型フィルム2の表面に積層する。好ましくは、押出機、カレンダーロールが用いられ、さらに好ましくは、カレンダーロールが用いられる。
【0068】
このようにしてシール材(第1シール材)1を得る。
【0069】
シール材1は、長手方向に延びる長尺状の広幅平帯状に形成される。なお、シール材1の表面(下面)には、
図1に示すように、離型フィルム2を積層して、それらの積層体をロール状に巻回することもできる。
【0070】
シール材1の厚みは、
図3(d)および
図6(e)が参照されるように、中間層6および封止樹脂層9の寸法によって適宜選択され、例えば、0.3〜2.0mm、好ましくは、0.4〜1.0mmである。
【0071】
また、シール材1の幅(長手方向に対する直交方向長さ)は、例えば、5〜30mm、好ましくは、10〜20mmである。
【0072】
そして、このようにして得られるシール材1は、各種産業製品の封止に用いられる。
【0073】
好ましくは、複層ガラスおよび太陽電池パネルの封止に用いられる。
【0074】
図2は、本発明の複層ガラスの一実施形態(シール材が4枚からなる態様)、
図3は、
図2(a)に示す複層ガラスの製造方法を説明する工程図を示す。
【0075】
なお、
図2(b)において、上側ガラス層10は、シール材1の相対配置を明確に示すため、省略されている。
【0076】
次に、上記したシール材によって周端部が封止される複層ガラスについて、
図2を参照して説明する。
【0077】
図2において、この複層ガラス3は、厚み方向に互いに間隔を隔てて配置される2枚のガラス層としての、上側ガラス層10および下側ガラス層11と、それらの間に設けられ、上側ガラス層10および下側ガラス層11の周端部5の内側に配置される中間層6と、上側ガラス層10および下側ガラス層11の周端部5の間に充填されるシール材1とを備えている。
【0078】
上側ガラス層10は、複層ガラス3の最表面(上面)側に設けられ、平面視略矩形状に形成されている。上側ガラス層10の厚みは、例えば、0.5〜3.2mmである。
【0079】
下側ガラス層11は、複層ガラス3の最裏面(下面)側に設けられ、平面視において、上側ガラス層10と同じ大きさの略矩形状に形成されている。下側ガラス層11の厚みは、例えば、0.5〜3.2mmである。
【0080】
中間層6は、平面視において、上側ガラス層10および下側ガラス層11より小さい略矩形状に形成されている。
【0081】
中間層6を形成する材料は、封止樹脂層9(後述)を形成する材料であり、例えば、特に限定されず、具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリふっ化ビニリデンなどの樹脂が挙げられる。中間層6の厚みは、例えば、0.5〜1mmである。
【0082】
シール材1は、中間層6を封止している。また、シール材1は、
図2(b)に示すように、縦方向に長く延びる平面視略矩形状の2枚の縦シール材13と、各縦シール材13の縦方向両端部に接触し、横方向に長く延びる平面視略矩形状の2枚の横シール材14とを備えている。
【0083】
縦シール材13は、上側ガラス層10および下側ガラス層11の横方向両端部の厚み方向間に充填されている。また、横シール材14は、上側ガラス層10および下側ガラス層11の縦方向端部の厚み方向間に充填されている。
【0084】
次に、上記した複層ガラス3を製造する方法について、
図1および
図3を参照して説明する。
【0085】
この方法では、
図3(a)に示すように、まず、上側ガラス層10を用意する。
【0086】
次いで、
図3(b)に示すように、中間層6としての封止樹脂層9を上側ガラス層10の下面に配置する。
【0087】
封止樹脂層9は、上側ガラス層10の周端部が露出するように、配置する。
【0088】
封止樹脂層9は、後述する圧着前であることから、その厚みT1が、シール材1の厚みT3に対して、例えば、厚く設定され、具体的には、0.4〜2.0mm、好ましくは、0.5〜1.2mmに設定されている。
【0089】
次いで、
図3(c)に示すように、上記した縦シール材13および横シール材14を備えるシール材1を、上記した配置で配置する。シール材1は、必要により、溶融させながら配置(熱融着)する。
【0090】
シール材1の厚みT3は、上記した封止樹脂層9(圧着前の封止樹脂層9)の厚みT1に対して、例えば、薄く、具体的には、50〜90%、好ましくは、60〜80%である。より具体的には、シール材1の厚みT3は、例えば、0.3〜1.6mm、好ましくは、0.4〜0.9mmである。
【0091】
シール材1の厚みT3が上記した範囲を超えると、下側ガラス層11との貼り合わせ時の加工性が低下したり、封止樹脂層9から発生するガス(例えば、EVAから発生する酢酸ガス)および/または空気が抜けずに、気泡が封止樹脂層9に残存する場合がある。
【0092】
一方、シール材1の厚みが上記した範囲に満たないと、複層ガラス3の周端部5のシール性を十分に確保することができない場合がある。
【0093】
その後、この方法では、
図3(d)に示すように、下側ガラス層11を封止樹脂層9およびシール材1に貼着する。
【0094】
下側ガラス層11を封止樹脂層9およびシール材1に貼着するには、下側ガラス層11を封止樹脂層9の下面に接触させて、上方に向けて、下側ガラス層11を圧着する。圧着としては、例えば、熱圧着などが挙げられる。
【0095】
熱圧着の条件は、温度が、例えば、100〜160℃、好ましくは、110〜150℃であり、圧力が、例えば、0.05〜0.5MPa、好ましくは、0.05〜0.2MPaであり、熱圧着時間が、例えば、1〜60分間、好ましくは、10〜30分間である。
【0096】
圧着により、封止樹脂層9が圧縮され、封止樹脂層9(圧着後の封止樹脂層9)の厚みT2とシール材1の厚みT3とが略同一となる。
【0097】
これにより、周端部5に、シール材1が充填された複層ガラス3を得ることができる。
【0098】
そして、上記したシール材1は、常温における形状追従性に優れているので、常温で、上側ガラス層10および下側ガラス層11に設置することができる。そのため、シール材1を溶融させる加熱条件(例えば、100〜160℃、0.05〜0.5MPa、1〜60分の熱圧着条件)でも周端部におけるはみ出しを防止でき、複層ガラス3の周端部5を、確実に封止することができる。
【0099】
また、このシーリング組成物は、絶縁性、防水性、水蒸気バリア性、耐久性に優れていることから、複層ガラス3の周端部5に、優れた絶縁性、防水性、水蒸気バリア性、耐久性を付与することができ、複層ガラス3の性能の低下を有効に防止することができる。
【0100】
なお、上記した説明では、中間層6を樹脂からなる樹脂層(封止樹脂層9)として形成しているが、例えば、空気または不活性気体(例えば、窒素など)からなる空気層として形成することができ、さらには、真空状態(あるいは減圧状態)とした真空層として形成することもできる。
【0101】
図4は、太陽電池モジュール(シール材が1枚からなる態様)の平面図を示す。
【0102】
上記した説明では、シール材1を、4枚の平面視略矩形状のシール材(2枚の縦シール材13および2枚の横シール材14)から形成しているが、例えば、
図4に示すように、1枚のシール材から形成することもできる。
【0103】
シール材1は、例えば、図示しないが、上記した成形装置により、平面視略矩形状に形成し、その後、中央(縦方向中央および横方向中央)を打ち抜き加工することにより得ることができる。
【0104】
図5は、本発明の太陽電池パネルの一実施形態、
図6は、
図5(a)に示す太陽電池パネルの製造方法を説明する工程図、
図7は、
図5に示す太陽電池パネルを備えるフレームレス太陽電池モジュール(第2シール材が設けられたフレームレス太陽電池モジュール)の一部拡大断面図、
図8は、
図5に示す太陽電池パネルを備える太陽電池モジュール(フレームが設けられた太陽電池モジュール)の説明図を示す。
【0105】
次に、上記したシール材によって周端部が封止される太陽電池パネルについて、
図5および
図6を参照して説明する。
【0106】
なお、以降の各図面において、上記した各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0107】
図5において、この太陽電池パネル4は、ガラス層としての上側ガラス層10と、上側ガラス層10と下方に間隔を隔てて配置される支持層としての下側ガラス層11と、上側ガラス層10および下側ガラス層11の間に設けられ、上側ガラス層10および下側ガラス層11の周端部5の内側に配置される太陽電池素子8およびそれを封止する封止樹脂層9と、上側ガラス層10および下側ガラス層11の周端部5の間に充填されるシール材1とを備えている。
【0108】
太陽電池素子8としては、例えば、結晶シリコン系やアモルファスシリコン系などの公知の太陽電池素子が挙げられる。太陽電池素子8は、略矩形平板形状をなし、平面視において、上側ガラス層10および下側ガラス層11の中央部に配置されている。
【0109】
また、太陽電池素子8は、上側ガラス層10の下面に積層されている。太陽電池素子8の厚みは、封止樹脂層9の厚みより薄く、具体的には、例えば、0.15〜0.20mmである。
【0110】
封止樹脂層9は、太陽電池素子8を封止している。
【0111】
シール材1は、封止樹脂層9を封止している。
【0112】
次に、上記した太陽電池パネル4を製造する方法について、
図6を参照して説明する。
【0113】
この方法では、まず、
図6(a)および
図6(b)に示すように、太陽電池素子8を上側ガラス層10の下面に配置する。
【0114】
次いで、
図6(c)に示すように、封止樹脂層9を配置する。
【0115】
封止樹脂層9は、太陽電池素子8を被覆し、かつ、上側ガラス層10の周端部が露出するように、配置する。
【0116】
次いで、
図6(d)に示すように、シール材1を配置する。
【0117】
その後、この方法では、
図6(e)に示すように、下側ガラス層11を封止樹脂層9およびシール材1に貼着する。
【0118】
下側ガラス層11を封止樹脂層9およびシール材1に貼着するには、下側ガラス層11を封止樹脂層9の下面に接触させて、上方に向けて、下側ガラス層11を圧着する。圧着では、例えば、真空(減圧)下で、熱圧着する。
【0119】
これにより、周端部5に、シール材1が充填された太陽電池パネル4を得ることができる。
【0120】
この太陽電池パネル4では、上記した複層ガラス3の作用効果に加えて、発電効率の低下を有効に防止することができる。
【0121】
なお、上記した説明では、本発明の支持層を、下側ガラス層11として説明しているが、例えば、透湿性樹脂などの樹脂からなる下側樹脂層(バックシート)11として形成することもできる。
【0122】
また、上記した
図5の太陽電池パネル4は、フレームを用いないフレームレス太陽電池モジュール12として用いることができ、あるいは、
図8に示すように、フレームを用いる太陽電池モジュール7として用いることもできる。
【0123】
また、
図7に示すように、フレームレス太陽電池モジュール12は、太陽電池パネル4の周端部5に公知のシール材(第2シール材)15が設けられたフレームレス太陽電池モジュール12として用いることもできる。
【0124】
図7において、第2シール材15は、太陽電池パネル4の周端部5において、太陽電池パネル4に向かって内側に開く断面略コ字形状に形成されており、上側ガラス層10の周側面および上面と、第1シール材1の周側面と、下側ガラス層11の周側面および下面とに、連続して形成されている。
【0125】
図8において、この太陽電池モジュール7は、太陽電池パネル4と、太陽電池パネル4の周端部5に設けられるフレーム16と、それらの間に介在される第2シール材15とを備えている。
【0126】
フレーム16は、太陽電池パネル4の各辺に沿って、それぞれ設けられる。フレーム16は、太陽電池パネル4に向かって内側に開く断面略コ字形状に形成されている。フレーム16は、例えば、金属材料(アルミニウムなど)や樹脂材料(アクリル樹脂など)から形成され、好ましくは、金属材料から形成されている。
【0127】
フレーム16は、
図8(b)に示すように、各辺に沿う長手方向端部が互いに接合されて4つの角を形成し、平面視において略矩形枠状となるように組み付けられる。
【実施例】
【0128】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0129】
実施例1〜3および比較例1〜7
表1に記載される各成分を、表1の配合処方に従って、ニーダー(DS1−5GHB−E型、1Lニーダー、6インチオープンロール付き、モリヤマ社製)に一括投入して、120℃で混練し、シーリング組成物を混練物として調製した。
【0130】
次いで、得られた混練物を、カレンダーロール(カレンダーロール4L−8a、日立製作所社製)で、厚さ0.75mmおよび厚さ1.0mmにそれぞれ圧延成形することにより、シーリング組成物からなるシール材を得た。なお、カレンダーロールの圧延条件は、ロール温度を30〜90℃に調製し、上流側ロールのロール速度(R)に対する、それの搬送方向下流側に配置される下流側ロール(R’)の割合(R’/R)を1.1に調整した。
【0131】
その後、シール材の片面に離型フィルムを積層して、ロール状に巻回した(
図1参照)。その後、所定の幅となるように幅方向両端部を切断(幅加工)した。
【0132】
比較例8
表1に記載される成分から、上記と同様に、カレンダーロールによってシール材を得た。
【0133】
【表1】
【0134】
なお、表1の各成分の詳細を以下に記載する。
JSR BUTYL ♯065:ブチルゴム、不飽和度0.8モル%、ムーニー粘度32(ML
1+8、125℃)、JSR社製
JSR BUTYL ♯268:ブチルゴム、不飽和度1.5モル%、ムーニー粘度51(ML
1+8、125℃)、JSR社製
Oppanol B−100EP:ポリイソブチレン、粘度平均分子量110万、BASF社製
DFD−2005:結晶性ポリエチレン、密度0.92g/cm
3、日本ユニカー社製
REXtac2585:非晶性エチレン・プロピレンランダム共重合体、軟化点(ASTM E 28、環球法):129℃、Huntsman社製
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有率33%
ゼオラムF−9:ゼオライト、平均粒子径150μm、東ソー社製
シースト3H:カーボンブラック、平均粒子径27nm、東海カーボン社製
ニップシールVN−3:シリカ、平均粒子径20μm、日本シリカ社製
エスクロンV−120:クマロン系樹脂、軟化点(荷重たわみ温度)120℃、日塗化学社製
H−100W:C5炭化水素系樹脂、Eastman社製
テトラックス4T:ポリイソブチレン、粘度平均分子量4万、新日本石油社製
テトラックス5T:ポリイソブチレン、粘度平均分子量5万、新日本石油社製
イルガノックス1010:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チバ・スペシャリティケミルズ社製
(評価)
各実施例および各比較例で得られたシール材について、(1)耐高温高湿試験、(2)耐吸湿試験、(3)水蒸気バリア性試験A、(4)水蒸気バリア性試験B、(5)耐候性試験A、(6)耐はみ出し性試験、(7)耐収縮性試験、および、(8)耐候性試験Bの各項目について評価した。
【0135】
各評価の詳細を以下に記載する。
(1)耐高温高湿試験
実施例1、2および比較例1、2、8の厚み0.75mmのシール材を、85℃、85%RHの高温高湿器に投入し、所定の投入時間におけるシール材の体積抵抗率を測定した。体積抵抗率は、デジタル超絶縁/微少電流計(型番:DSM−8104、日置電気社製)を用いる二重リング法より測定した。
【0136】
その結果を、
図9に示す。
(2)耐吸湿試験
実施例1、2および比較例1、2の厚み0.75mmのシール材を、85℃、85%RHの高温高湿器に投入し、所定の投入時間におけるシール材の重量変化を測定した。
【0137】
その結果を、
図10に示す。
(3)水蒸気バリア性試験A
実施例1、2および比較例2の厚み0.75mmのシール材について、JIS Z 0208に準拠して、カップ試験(水蒸気バリア性試験A)を実施した。その結果を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
(4)水蒸気バリア性試験B
実施例1および比較例2の厚み0.75mmのシール材について、次に説明する測定装置を用いて、水蒸気バリア性試験Bを実施した。その結果を
図12に示す。
【0140】
すなわち、この測定装置20は、上端部に鍔21が設けられた有底円筒状のカップ22と、鍔21と厚み方向に間隔を隔てて対向配置されるガラス板23とを備えている。カップ22は、アルミ製であり、底壁24の深さが15mm、内径が60mmである。
【0141】
また、測定装置20において、カップ22の底壁24の上面には、吸湿剤25が均一に積層されている。吸湿剤25は、塩化カルシウムからなり、重量が10gである。
【0142】
そして、実施例1および比較例2のシール材1を、鍔21の平面形状に対応するように、幅5mmに切断加工した後、それを鍔21の上面に配置し、その後、ガラス板23をシール材1に、150℃で熱圧着させて、カップ22の円筒内を封止する。その後、この装置20を、40℃、92%RHの高温高湿器に投入し、所定の投入時間における装置20全体の重量変化を測定した。なお、上記の熱圧着時に、シール材1に液だれがないことを確認した。
(5)耐候性試験A(促進耐候性試験)
実施例1、2および各較例1、2、8の厚み0.75mmのシール材を、促進耐候性試験機(スーパーキセノンウェザーメーターSX75、スガ試験機社製)に投入し、照射量180(W/m
2)で照射して、所定の投入時間におけるシール材の体積抵抗率を測定した。その結果を
図13に示す。
(6)耐はみ出し性試験
図14(a)および
図14(b)に示すように、実施例1〜3および比較例1〜8の厚み1.0mmのシール材(1)が上側ガラス層(10)および下側ガラス層(11)によって挟まれた複層ガラス(3)(中間層(6)を備えない)を作製して、耐はみ出し性試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0143】
すなわち、大きさ10×10cm、厚み1.0mmのシール材(1)を、離型フィルム(2)と同じ大きさで、厚み3.2mmの白板強化ガラスからなる上側ガラス層(10)の表面(下面)に貼着した。続いて、離型フィルム(2)をシール材(1)から剥離し、続いて、シール材(1)を、離型フィルム(2)と同じ大きさで、厚み3.2mmの白板強化ガラスからなる下側ガラス層(11)の表面(上面)に貼着して、次いで、真空下で、上側ガラス層(10)および下側ガラス層(11)を圧着した(
図14(a)参照)。なお、真空下での圧着は、下記の圧着装置および圧着条件にて実施した。
【0144】
圧着装置:真空プレス装置(型式:MS−VPF−50、名庄プレス社製)
圧着条件:(1) 真空下で、0.1MPa、常温、9分間、
(2) (1)後、常圧下で、0.1MPa、常温、1分間
その後、上側ガラス層(10)および下側ガラス層(11)を、150℃で、10分間、大気圧下で、加熱した(
図14(b)参照)ときの、上側ガラス層(10)および下側ガラス層(11)の周端部から外側にはみ出したシール材(1)(はみ出し部分)の重量を測定し、シール材(1)の総重量に対するはみ出し部分の重量割合を算出した。そして、はみ出し部分の重量割合から、下記の基準に従って、シール材(1)の耐はみ出し性を評価した。
【0145】
(基準)
○:はみ出し部分の重量割合が5%未満であった。
【0146】
×:はみ出し部分の重量割合が5%以上であった。
(7)耐収縮性試験
(6)の耐はみ出し性試験後の複層ガラス(3)の上側ガラス層(10)および下側ガラス層(11)の周端面と、シール材(1)の周端面とを、厚み方向において面一となるように、はみ出し部分を除去した(
図15(a)参照)。
【0147】
その後、常温で、3日間放置した。
【0148】
そして、シール材(1)の収縮の有無を観察し、下記の基準に従って、耐収縮性を評価した。その結果を表1に示す。
【0149】
○:シール材(1)の周端面が内側に実質的に後退することなく、上側ガラス層(10)および下側ガラス層(11)の周端面と面一であった。
【0150】
×:シール材(1)の周端面が上側ガラス層(10)および下側ガラス層(11)の周端面から内側に後退にしていた。
【0151】
なお、耐収縮性試験の評価が「×」の場合には、平面視におけるシール材(1)の面積が減少するため、水蒸気バリア性が低いことを示す。
【0152】
一方、耐収縮性試験の評価が「○」の場合には、平面視におけるシール材(1)の面積の減少を防止できるため、水蒸気バリア性が優れていることを示す。
(8)耐候性試験B
実施例1〜3および比較例1〜8の厚み0.75mmのシール材について、耐候性試験Bを実施した。その結果を表1に示す。
【0153】
耐候性試験Bの条件を以下に記載する。
【0154】
耐候性試験機:促進耐候性試験機(スーパーキセノンウェザーメーターSX75、スガ試験機社製)
照射量:180(W/m
2)
照射時間:100時間
そして、照射後のシール材を目視にて観察し、下記の基準に従って、耐候性を評価した。
【0155】
○:シール材の表面に変化が認められなかった。
【0156】
×:シール材の表面が亀裂などの変化が認められた。